Raw scans for Vol. 8?

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Smidge204
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Raw scans for Vol. 8?

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Does anyone know if raw scans for the Japanese version of volume 8 are available anywhere? It would be useful for us editors...

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BaKaFiSh
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Maybe... :roll:
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SomeGuy
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This did not just occur and I do not exist

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 涼宮《すずみや》ハルヒの憤慨《ふんがい》 (S 168-8 Y514 14211 角川スニーカー文庫)

 作/谷川《たにがわ》流《ながる》
 兵庫県在住。2003年、第8回スニーカー大賞 <大賞> を『涼宮ハルヒの憂鬱』で受賞し、デビューを果たす。また、電撃文庫より『学校を出よう!』『電撃!! イージス5』『絶望系閉じられた世界』の著作がある。趣味はバイクと麻雀。人生艱難辛苦中。今一番欲しいものはポジティブな思考と昔読んでまた再読したいと思っているんだけどタイトルも作者名も思い出せない本を「それはこれだよ」と言って差し出してくれる人もしくは装置。

 カバー・口絵・本文イラスト/いとうのいぢ

 カバー・口絵・本文デザイン/中《なか》デザイン事務所《じむしょ》

涼宮ハルヒが暇《ひま》を持て余してたらそれこそ天地が逆になる騒ぎだろうが、むやみに目を輝かせるのも困った状況ではある。それというのも生徒会長なるお方が、生徒会はSOS団の存在自体を認めないなどと言いだしやがったからで、意外な強敵の出現にやおら腕章を付け替えたハルヒ “編集長 ”の号令一下、俺たちSOS団の面々はなぜか文集の原稿執筆などという苦行の真っ最中なわけだ。天上天下唯我独尊[#「唯我独尊」に傍点]「涼宮ハルヒ」シリーズ第8弾!

[#改ページ]

 涼宮ハルヒの憤慨 CONTENTS

 編集長★一直線!
 ワンダリング・シャドウ

 あとがき

[#改ページ]

 編集長★一直線!

「没《ぼつ》ね」
 ハルヒはにべもなく言ってのけると、原稿《げんこう》を突《つ》き返した。
「ダメですかあ」
 朝比奈《あさひな》さんは悲鳴に似た声を上げ、
「ものすごく考えたんですけど……」
「うん、ダメ。ぜんぜん。なんかこう、ピンとくるもんがないのよね」
 団長机にふんぞり返ったハルヒは、耳に上に差した赤いボールペンを手に取ると、
「まずこの導入部分がありきたりすぎるわ。 “昔々あるところに…… ”なんて、何の新鮮味《しんせんみ》もないありふれた書き出しよ。もっとヒネりなさい。冒頭《ぼうとう》部分はキャッチーにしないとね。ファーストインプレッションが肝心《かんじん》なの」
「でも、」
 朝比奈さんはおずおずと、
「童話っていうのはそういうもんじゃないかと……」
「その発想が古いのよ」
 どこまでも偉《えら》そうにハルヒはダメを出す。
「発想の転換《てんかん》が必要なの。あれ、これどっかで聞いたなぁって思ったら、まず逆を考えるわけ。そしたら新しいものが生まれてくるかもしれないじゃない」
 俺たちがどんどん本流から取り残されているような気がするのは、そんなハルヒの思考システムのせいじゃないかね。俊足《しゅんそく》ランナーを一塁《いちるい》に出してしまったピッチャーの牽制《けんせい》モーションじゃあるまいし、逆をつけばいいってもんじゃないと思うが。
「とにかくこれは没」
 わざわざ赤ペンでコピー用紙の原稿の上に「リテイク」と書き入れ、机の横の段ボール箱にひらりと落とした。元はミカンを満載《まんさい》していた箱の中には、今は焼却《しょうきゃく》炉《ろ》行きが決定している紙屑《かみくず》が山を成している。
「新しいの書いてきてちょうだい」
「うう」
 肩《かた》を落とした朝比奈さんがすごすごと自分の席に戻《もど》ってくる。非常に可哀想《かわいそう》である。鉛筆《えんぴつ》を握《にぎ》りしめて頭を抱《かか》える姿に猛烈《もうれつ》な同情心とシンパシーがわく。

<img src="08_007.jpg">

 ふと、まったくの無気配を感じてテーブルの隅《すみ》に目を転じると、そこには部室の風景としては貴重なことに、読書をしていない長門《ながと》の姿があった。
「…………」
 沈黙《ちんもく》したままノートパソコンのディスプレイを見つめて凝固《ぎょうこ》する長門だったが、数秒おきにキーボードに触《ふ》れて何かを打ち込み、また固まってから、パタパタとキーを打つ。で、また置物になる。
 長門が触《さわ》っているのはゲーム対戦の賞品としてコンピュータ研から巻き上げたノートパソコンだ。ちなみに俺と古泉《こいずみ》の前にも同じものがあって、大して考えることもなかろうにすでにCPU冷却《れいきゃく》ファンは頭脳を冷やすべくやかましく回転していた。古泉の指が軽快に動いている様子とキーパンチの音がやけに気に障《さわ》る。こいつはいいよ、書くことが決まっているからな。
 機械に対して食わず嫌《ぎら》いを表明する朝比奈さんだけはコピー用紙に自前の字を書き込んでいたが、俺とシンクロしたかのように今はすっかり手が止まっている。
 そうとも。書くこともないのに文字なんか打てるか。
「さ、みんなも!」
 ハルヒだけが異常に元気だった。
「ちゃっちゃと原稿上げて、編集に取りかからないと製本に間に合わないわよ。ピッチを上げるのピッチを。ちょっと考えればすぐに書けるでしょ? 何も大長編書いて文学賞に応募《おうぼ》しようってわけじゃないんだから」
 上機嫌《じょうきげん》なハルヒの顔からは、例によってどこから発生したのか解《わか》りようのない自信のみが花咲《はなさ》いていた。今にも虫を食いそうだ。
「キョン、全然手が動いていないわよ。そうやってパソコンの画面を睨《にら》んでいるだけじゃ文章は生まれないわ。とにかくまず書いてみる、それから印刷してあたしに見せる、でもってあたしが面白《おもしろ》いと思えば合格で、そうじゃなきゃ没だからね」
 朝比奈さんへの同情は自分自身への憐憫《れんびん》と化した。何だって俺はこんなことをしてないといかんのだ。俺だけじゃない、隣《となり》でうんうん呻《うな》っている朝比奈さんと、向かいで微笑《びしょう》している古泉も、少しは反撃の狼煙《のろし》を上げるべきではないのか。
 まあ、言っても聞きやしないのが涼宮《すずみや》ハルヒというSOS団団長の特性なのだが、それにしてもどうしてこいつがこんな役柄《やくがら》を勝手にやっているのだろう。
 俺の視線は、人の原稿を段ボールに叩《たた》き込みたくてうずうずしているハルヒの笑顔から、その腕《うで》にはまっている腕章《わんしょう》へと移動した。
 いつもは団長、かつて名《めい》探偵《たんてい》とか超《ちょう》監督《かんとく》とか銘打《めいう》たれていたその腕章には、新しい肩書きがマジックでデカデカと書かれている。
 今回はつまり、「編集長」と。

 ことの起こりは数日前に遡《さかのぼ》る。
 年度末の足音がヒタヒタと耳を打つ、三学期のある日のことである。少しは予兆でもあればいいものを、それはのどかであるはずの昼休みに突然《とつぜん》やってきた。
「呼び出し」
 そう言ったのは長門|有希《ゆき》である。その横になぜか古泉|一樹《いつき》のすらりとした姿が伴《ともな》われていた。この二人が並んで俺の教室までやってくるとは、どう考えてもいい予感は一ミクロンもせず、弁当をかき込む作業を中断して廊下《ろうか》までやってきた俺だったが、早くも自分の机に戻りたくなった。
「呼び出しとは?」
 今の俺の状態としか思えない。購買《こうばい》からパン数種類とメロンサワーを抱《かか》えて帰ってきた谷口《たにぐち》が「キョン、おまえのツレが来てんぞ」と言うから出て行ったらこの二人が立っていた。意外性あふれるカップリングであるが、長門が誰《だれ》かと二人きりで行動していたとして、相方に納得《なっとく》がいくような組み合わせなど思いつかないな。
 俺は最初に謎《なぞ》の一言を告げてから無表情に立っている宇宙人っ娘《こ》を眺《なが》め、三秒待ってあきらめてから古泉のハンサム顔を見た。
「説明してもらおうか」
「もちろん、そのつもりで来ましたので」
 古泉は首を伸《の》ばして五組の教室をうかがい、
「涼宮さんは、しばらく戻《もど》りそうにないですか?」
 あいつなら四限が終わるやすぐに飛び出していった。今頃《いまごろ》は食堂でテーブルでも齧《かじ》っているんじゃねえか。
「好都合です。彼女の耳にはあまり入れたくないことなので」
 俺の耳にも入って欲しくない情報の予感がする。
「実はですね」
 古泉は声を深刻な具合に潜《ひそ》めた。その割には楽しそうだな、お前。
「さて、これを楽しいと思うかどうかは人それぞれですが」
「いいから、早く言え」
「生徒会長から召喚《しょうかん》指令が下りました。本日放課後、生徒会室に出頭するようにとの仰《おお》せです。ようするに呼び出しですね」
 ははあ。
 一瞬《いっしゅん》で納得した。
「ついに来たか」
 生徒会長の出頭命令――と聞いて「何でだ?」と思うほど俺は身の程《ほど》知らずではない。この一年、SOS団が校内外問わずに巻き起こした悪行を知らんぷりするには俺は善人すぎるようだ。まず何があったけな。コンピュータ研からパソコンを巻き上げた事件か? いや、あれは昨年秋のゲーム対決で片が付いたはずだ。コンピ研が生徒会に出した訴状《そじょう》は敗戦後まもなく部長氏が無条件で取り下げたと聞いている。
 映画|撮影《さつえい》で無茶をやったせいか? それにしたってずいぶん前だし、文化祭の後に生徒会は改選されたはずだ。今の会長が前会長の積み残した仕事を今になって思い出したとでもいうのか。それとも近所の神社に回ったかもしれない俺たちの人相書きがついに北高《きたこう》まで辿《たど》り着いたのか? 初詣《はつもうで》にあちこち行きすぎたしな。
「しょうがねえな」
 俺は肩《かた》をすくめ、主《あるじ》のいない窓際《まどぎわ》最後尾《さいこうび》の机を見やった。
「ハルヒのことだ、大喜びで会長にくってかかるだろう。相手の態度によっては乱闘《らんとう》になるかもしれん。仲裁《ちゅうさい》役は古泉、お前に任せる」
「違《ちが》います」
 古泉は爽《さわ》やかに否定した。
「呼び出されたのは涼宮さんではありません」
 じゃあ俺か? おいおい、そいつは道理が通らないぜ。いくらハルヒが鯨《くじら》のヒゲで作ったゼンマイのような反発力を持っているからと言って、まだ話が通じそうな俺を矢面《やおもて》に立たせようとするのは卑怯《ひきょう》極《きわ》まる。生徒会が学校側のラジコン人形なのは知っているが、そこまで腰抜《こしぬ》け揃《ぞろ》いだと失望を禁じえない。
「いえ、あなたでもありません」
 何が嬉《うれ》しいのか、古泉はますます爽やかに、
「呼び出しを受けたのは、長門さんただ一人です」
 何だと? ますます不条理じゃないか。何を言っても黙《だま》って聞いてくれるだろうから説教する相手としては適任だが、ただしノーコメントを貫《つらぬ》き通すだろうことも間違いないので達成感もないと思うぞ。
「長門をか? 生徒会長が?」
「目的語と主語はそれであってますよ。そうです。会長さんは長門さんをご指名です」
 その長門は自分のこととは思わないような顔でポツンと立っているだけだった。ただ俺の目が発する驚《おどろ》き光線を受け、わずかに前髪《まえがみ》を揺《ゆ》れさせた。
「どういうことだ? 生徒会長が長門に何の用がある。まさか生徒会の書記職でも与《あた》えようってのか」
「書記ならすでにいますから、もちろん違います」
 さっさと言ってくれ。持って回った言い方をするのはお前のDNAにその手の性質が刻まれているからか。
「失礼。では解《わか》りやすく言いましょう。長門さんが呼ばれた理由は簡単です。文芸部の活動に関する事情|聴取《ちょうしゅ》および、部の今後の存続に関する問題について話し合うためです」
「文芸部? それが――」
 何の関係がある、と言いかけて俺はセリフを飲み込んだ。
「…………」
 長門は身動きせずに廊下《ろうか》の端《はし》を見つめている。
 かつて眼鏡《めがね》がついていた白い顔は表面的にはあの頃《ころ》と無変化だった。ハルヒに引きずられて飛び込んだ部室で、ゆっくり顔を上げた無表情は今でも忘れがたい。
「なるほどな、文芸部か。そうだったな」
 まさしくSOS団は文芸部の部室を長きにわたって根城にすること現在進行形である。そして正式な文芸部員は最初からいた長門だけであり、俺たちは単なる居候《いそうろう》、もしくは不法|占拠《せんきょ》者だ。ハルヒとしてはとっくに占有《せんゆう》権《けん》を確保したつもりだろうが、生徒会はまた別の普遍《ふへん》的でスタンダードな意見を主張するに違いない。
 古泉は俺の表情を読みとったんだろう、
「その話を放課後、会長さんが直々にしようと連絡《れんらく》があったのですよ。まず僕のところにね。長門さんには僕から伝えました」
 なぜお前のところなんだ?
「長門さんに言っても無視されそうだったからでしょうね」
 そうは言っても、お前も俺と同じくらい文芸部の活動とは無関係だろうが。
「そうなんですが、だからと言って話は簡単にはいきそうにないですね。どちらかと言うと余計に悪いでしょう。部員でもないものが文芸部の部室にいて文芸部とはまったく関係ないことに従事しているわけですから、生徒会でなくても不審《ふしん》を覚えて当然……いえ、すでに周知になっているぶん、今までよく見過ごされていたと言うべきです」
 もっともなことを言う古泉はどっちの見方だか解らんようなスマイルぶりだった。
 そりゃあ俺が執行《しっこう》部《ぶ》だったとしてもイチャモンをつけたくなるかもしれんが、だがなぜ今頃になってなんだよ。ものぐさな家主が雨漏《あまも》りをなかなか直そうとしないようにSOS団も生徒会から緩《ゆる》やかに無視されているんじゃなかったのか。
「前生徒会はそうしてくれていました。ですが、今の会長は一筋《ひとすじ》縄《なわ》ではいかないようですよ」
 古泉は白い歯を見せて微笑《ほほえ》み、横目で長門に視線を送った。
 当然、長門は反応しなかったが、ただ廊下の端から俺の足元に焦点《しょうてん》を動かした。なんとなく、迷惑《めいわく》をかけてすまないと言っているようでもあった。
 そしてもちろん、俺は長門に迷惑をまったく感じていない。決まっている。動くたびに空中に迷惑と呼ぶべきものを振《ふ》りまいているヤツは俺の知る限りでは一名のみだ。迷惑とは――。
 俺は虚空《こくう》に息を吐《は》き出して言った。
「いつだってハルヒが持ってくるものなのさ」
 これからこの部室が我々の部室よ、とあいつが叫《さけ》んだあの日からな。
「その涼宮さんには内密にお願いします」
 と、古泉。
「こじれるだけのように思いますからね。ですので放課後、彼女に見つからないように生徒会室まで来てください」
 ああ解った、と言いかけて、危《あや》ういところで気づいた。
「ちょっと待て。どうして俺が行くんだ。指名されてもないのにノコノコ乗り込むほど俺はお調子者じゃないぞ」
 むろん、長門が望むなら同伴《どうはん》するにやぶさかではないが、古泉に頼《たの》まれる筋合いはない。それに、いっそ長門一人で行かせたほうが相手もビビるんじゃないかと思うぞ。
「向こうも心得ていますよ。だから僕がメッセンジャーを拝命することになったのです。このまま長門さんの代理人として全部|請《う》け負ってしまってもいいのですが、のちに不都合が発生しては困りますし、そっちのエージェント業務は僕の仕事に入っていません。そうですねえ、平たく言って、あなたは涼宮さんの代理人ですよ」
「ハルヒ本人に行かせればいいじゃないか」
「本気で言ってるんですか?」
 古泉は大げさなアクションで目を剥《む※》[#「_※」は「剥」の厳密異体字、第3水準1-15-49]いた。
 ヘタな芝居《しばい》に俺は鼻を鳴らして応答する。ちゃんと解っているというなら俺だって解ってるさ。あんな爆弾《ばくだん》女を生徒会に投げ込んだら単なる爆発で済むとは思えん。冬の合宿で見せた長門への気遣《きづか》いを考えたら、生徒会から長門が呼び出しを喰《く》らった――の「生徒会から長門が」の部分だけで即座《そくざ》にすっ飛んでいき、扉《とびら》をぶち破って生徒会室に突貫《とっかん》するならまだしも、間違《まちが》えて職員室か校長室に突撃《とつげき》を敢行《かんこう》するかもしれない。あいつはそれでスッキリするかもしれないが、後で胃を痛めるのは間違いなく俺になる。古泉と違って家庭の事情もないのに転校する気にはなれねえな。
「では、よろしくお願いします」
 古泉は最初から俺の回答など解《わか》っていたと言いたげな微笑みを浮《う》かべ、
「会長には僕のほうから言っておきます。放課後、会長室で会いましょう」
 ハルヒの居ぬ間にを態度で表しつつ、古泉は軽《かろ》やかに長い足を操《あやつ》って五組教室前から去っていった。その後を追うように遠ざかる長門の小さな姿を見るともなしに見ているうちに、俺はつくづく一年度の終わりを実感し始める。
 何だかんだ言って、古泉も長門もSOS団のメンツでいることにすっかり安住しつつあるのかもしれない。仲間同士で共有しつつ、でもハルヒには隠《かく》しておくべきことが月単位で増えていく……。
 いらない感傷だったんだろうな。
 おかげで、どうして古泉が生徒会長の伝書《でんしょ》鳩《ばと》のようなことを普通《ふつう》にしているのか、その疑問に到達《とうたつ》することができなかったからだ。

 ところで、妙《みょう》に勘《かん》のいいハルヒが俺の挙動不審――そんな意識はまったくなかったのだが――に気づいたのは五限|終了《しゅうりょう》時《じ》の休み時間だった。
 尖《とが》ったもので背中をちょいちょいと突《つつ》かれ、背後の席へ振り返った俺に、
「何をそんなにそわそわしてんの?」
 ハルヒはシャープペンを指先で回しながら、
「まるで誰《だれ》かに呼び出しを喰らったみたいな顔をしてるわよ」
 こんな時、虚偽《きょぎ》の含有《がんゆう》率を百パーセントにしてはならないことを俺は学んでいた。
「ああ、岡部《おかべ》に呼び出されたんだ。昼休みにわざわざ俺んところまで来て言いやがった」
 何喰わぬ顔で答える。
「俺の成績に文句と注文があるらしい。学期末試験の結果|次第《しだい》ではその文句が俺の親にまで届きそうな按配《あんばい》だとよ。進学を考えるなら今のうちに心を入れ替《か》えろとか」
 入れ替えようにも心のストックなど俺は持っておらず、ないものを交換《こうかん》することもできないのだが、しょっちゅう言われていることでもあるのでまんざらデタラメでもない。だいたい谷口も似たようなことを同音異句で言われていて、情報交換によって得た結論は、我らが担任教師はそれなりに教え子の行く末を心配している割合親身に感じるに足る先生であるということだった。
 もっとも、谷口なんかが近くにいるせいで、こいつがのんきにやってんだから俺だって大丈夫《だいじょうぶ》だろうとお互《たが》いに思っているところがあり、今ひとつ緊迫《きんぱく》感《かん》を感じるには薄《うす》くもある。まともな成績を保持している国木田《くにきだ》のほうがおかしいんじゃないかと思うときがあるくらいだ。
「へえ?」
 ハルヒは机に肘《ひじ》を立てて顎《あご》を乗せながら、
「あんた、そんなに成績あやしかったっけ。あたしより真面目《まじめ》に授業聞いているように思ってたけど」
 と言いつつ窓の外を眺《なが》めている。流れる雲の速度が風の強さを物語っていた。
 お前の脳みそと一緒《いっしょ》にしないで欲しいね。俺は時空間の歪《ゆが》みも情報爆発もくそったれな灰色空間とも無縁《むえん》な頭の持ち主だ。ハルヒの破天荒《はてんこう》なそれに比べたらミニチュアダックスフント並の可愛《かわい》さだぜ。
「聞いてても解らなきゃ時間の無駄《むだ》にしかならんのさ」
 とだけ俺は言っておいた。胸を張って言うことでもないが。
「ふうん?」
 ハルヒの目はまだ外の風景に据《す》えられていたが、その物言わぬ窓ガラスに言うように、
「なんなら、あたしが勉強見てあげよっか。別にいいわよ。どうせ授業の繰《く》り返しになるだけだろうけど、リー&#1248
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SomeGuy
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Smidge204
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Actually, BaKaFiSh already got my a txt version (with image scans) for Vol. 8. Thanks for the effort, tough... maybe I should've followed up in this thread when I got them >.>

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