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// ………。
 
// ………。
 
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//<pokkari?>, I had free time this afternoon.
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// Pork Curry, and I had free time this afternoon.
 
// ぽっかりと、午後から時間が空いてしまった。
 
// ぽっかりと、午後から時間が空いてしまった。
 
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Revision as of 09:21, 27 January 2008

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<7500> ………
// ………。
<7501> *
// Pork Curry, and I had free time this afternoon.
// ぽっかりと、午後から時間が空いてしまった。
<7502> *
// 予定していた仕事を依頼主が直前になってキャンセルしたためだ。
<7503> \{芳野} *
// \{芳野}「じゃ、お先」
<7504> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「あ、お疲れっす」
<7505> *
// 久々に歩く平日の町は、少しだけどきどきする。
<7506> *
// 学校を途中でふけて、学生服のまま町をうろつく感覚を思い出していた。
<7507> *
// さて、これからどうしよう。
<7508> *
// 家に帰ってもやることはないし…。
<7509> *
// 学生の頃のように、ゲーセンに行って遊ぶ気にもなれない(そもそも遊んでたのは春原だけで、俺は見ていただけだ)。
<7510> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}(そうだな…)
<7511> *
// 早苗さんに会いたい。
<7512> *
// 渚の話も聞いてもらいたいし。
<7513> *
// 歩を古河パンへと向けた。
<7514> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「ちっす」
<7515> \{秋生} *
// \{秋生}「らっしゃい…って、てめぇか」
<7516> \{秋生} *
// \{秋生}「こんな時間にどうした、クビにでもなったか」
<7517> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「たまたま時間が空いたんだ」
<7518> \{秋生} *
// \{秋生}「そっか。ま、なんにもねぇけどよ、とっとと帰れ」
<7519> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「早苗さんは?」
<7520> \{秋生} *
// \{秋生}「町を泣きっ面で徘徊中だ」
<7521> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「また泣かせたのかよ…」
<7522> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「じゃ、可哀想な早苗さんを探してくるよ」
<7523> \{秋生} *
// \{秋生}「ちょっと待てや」
<7524> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「あん?」
<7525> \{秋生} *
// \{秋生}「おめぇ、約束のブツ、持ってきたんだろうな」
<7526> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「ブツって?」
<7527> \{秋生} *
// \{秋生}「かーーーっ!  まさか、てめぇ、忘れちまったなんて言うんじゃねぇだろうなぁ!」
<7528> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「いや、マジでなんのことだか…」
<7529> \{秋生} *
// \{秋生}「写真だよ、写真!  渚の可愛くてちょいエロいウェイトレス姿の写真だよ!」
<7530> *
// この人は変態だ。
<7531> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「いつ誰が、エロいっつったよっ」
<7532> \{秋生} *
// \{秋生}「ちっ…てめぇはそんなことも知らねぇのか、素人かよ…」
<7533> *
// あんたはその筋のプロなのか。
<7534> \{秋生} *
// \{秋生}「いいか、あいつが勤めてるファミレスの制服は、胸元が強調されているので有名なんだよ!」
<7535> \{秋生} *
// \{秋生}「だから、写真が欲しいっつーてんだよっ!  わかったか、馬鹿!」
<7536> \{秋生} *
// \{秋生}「はーっ、くっそーー!  想像するだけでそそるぜぇ~!  見てみてぇ~!」
<7537> *
// 娘に欲情するな。
<7538> \{早苗} *
// \{早苗}「はい?  何を見てみたいんですか?」
<7539> *
// 俺の後ろから早苗さんの声。
<7540> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「ちっす」
<7541> \{早苗} *
// \{早苗}「あら、\m{B}さん。こんにちはっ」
<7542> \{早苗} *
// \{早苗}「今日はどうしましたか」
<7543> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「暇ができたから、早苗さんに会いにきたんです」
<7544> \{早苗} *
// \{早苗}「まぁ、本当ですか。それはうれしいです」
<7545> \{早苗} *
// \{早苗}「でも、その前に秋生さん」
<7546> \{秋生} *
// \{秋生}「なんだ」
<7547> \{早苗} *
// \{早苗}「さっきの話はなんですか?  そそるだとか、見てみたいだとか」
<7548> *
// よからぬ話をしていたと疑っているようだ。
<7549> \{秋生} *
// \{秋生}「ふっ…」
<7550> *
// オッサンがパンのひとつを手に取る。
<7551> \{秋生} *
// \{秋生}「ふはははははははっ!」
<7552> *
// 高笑いと共に、それを地面に叩きつけた。
<7553> *
// ぼんっ!
<7554> *
// 煙が吹きだして、辺り一面が真っ白になる。
<7555> \{秋生} *
// \{秋生}「いくぞ、小僧っ」
<7556> *
// 肩を掴まれて、強引に外に引きずり出された。
<7557> \{秋生} *
// \{秋生}「自分で作ったパンが仇となったな、早苗よ」
<7558> *
// いまだモクモクと噴煙の立つ店先を見て、オッサンが呟く。
<7559> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「どんなパン売ってんだよっ!」
<7560> \{秋生} *
// \{秋生}「今更なに驚いてんだよ、てめぇ」
<7561> *
// …これ以上何も言うまい。
<7562> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「で、なんだよ、俺まで連れてきて」
<7563> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「俺は早苗さんと話をしたいんだよ。戻るぞ」
<7564> \{秋生} *
// \{秋生}「こらこら、てめぇに居てもらわねぇと困るんだよ」
<7565> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「困るって、なんかする気かよ」
<7566> \{秋生} *
// \{秋生}「ああ。これから渚のバイト先にいく」
<7567> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「ひとりで行ってくれ。じゃあな」
<7568> \{秋生} *
// \{秋生}「待てっつーてるだろ!  てめぇも行くんだよっ」
<7569> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「なんで俺が」
<7570> \{秋生} *
// \{秋生}「馬鹿やろーっ、俺みたいな大の男がひとりでファミレス入ってパフェなんて食えるかっ!」
<7571> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「コーヒーでも飲め」
<7572> \{秋生} *
// \{秋生}「あんまり変わんねーよ!」
<7573> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「いや、パフェとコーヒーじゃ、ぜんぜん違うと思うけど…」
<7574> \{秋生} *
// \{秋生}「それにな、おまえが居てくれたほうが、渚が寄ってくるだろ」
<7575> \{秋生} *
// \{秋生}「シャッターチャンス満載というわけだ」
<7576> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「俺じゃなくても、あんたにだって、寄ってくるだろ」
<7577> \{秋生} *
// \{秋生}「馬鹿、俺は今から俺でなくなる」
<7578> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「はぁ?」
<7579> \{秋生} *
// \{秋生}「変装して、おまえの友達、ということにするからな」
<7580> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「なんで…?」
<7581> \{秋生} *
// \{秋生}「んな親馬鹿なところ、見つかりたくねーんだよ、わからねぇか、この気持ちが」
<7582> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「はい、わかんないっす」
<7583> \{秋生} *
// \{秋生}「とにかくだ、世間体もある。隠密にことを運びてぇんだよ」
<7584> \{秋生} *
// \{秋生}「いいな」
<7585> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「………」
<7586> \{秋生} *
// \{秋生}「写真、焼き増ししてやるからな」
<7587> *
// 協力する
<7588> *
// 逃げ出す
<7589> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}(いや…焼き増し写真につられたわけではないぞ…)
<7590> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}(暇だからだ…)
<7591> *
// そう自分を納得させる。
<7592> \{秋生} *
// \{秋生}「おい、変装するから、むこう向いてろ」
<7593> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「ああ…」
<7594> *
// どんな手の込んだ変装をしようというのだろう。
<7595> *
// ………。
<7596> \{秋生} *
// \{秋生}「よし、いいぞ。ばっちりだ」
<7597> *
// この人はアホだ。
<7598> \{秋生} *
// \{秋生}「見ろ、どうだ、わからんだろう」
<7599> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「丸わかりっす」
<7600> *
// 正直、写真の焼き増し、という協力報酬には心が揺れた。
<7601> *
// けど、自分の彼女の写真を隠し撮りするなど、あまりに虚しい…。
<7602> *
// それに、オッサンと行動を共にして、厄介事が起きずに済むはずがなかった。
<7603> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「あ、早苗さん」
<7604> \{秋生} *
// \{秋生}「なにぃっ!?  あの煙幕の中からどうやってっ!?」
<7605> *
// オッサンが慌ててその姿を探している隙に、俺は逃走を計った。
<7606> *
// 住宅地をぐるりと一回りしてきて、また公園に戻ってくる。
<7607> *
// オッサンの姿はなかった。
<7608> *
// 店の中に戻ったのだろうか。
<7609> *
// だとしても、早苗さんが心配だったので、様子を見に行くことにする。
<7610> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「ちーっす…」
<7611> *
// 小さく声をかけて、店内に踏み入る。
<7612> \{早苗} *
// \{早苗}「あ、はいっ」
<7613> *
// 早苗さんが顔を上げて、こっちを見た。
<7614> \{早苗} *
// \{早苗}「あ、\m{B}さん」
<7615> *
// 早苗さんは、ちり取りと箒で、床を掃除しているところだった。
<7616> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「大丈夫っすか」
<7617> \{早苗} *
// \{早苗}「はい、大丈夫ですよっ」
<7618> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「それ、なんだったんすか」
<7619> \{早苗} *
// \{早苗}「きなこです」
<7620> \{早苗} *
// \{早苗}「きなこパンだったんですよ」
<7621> *
// だから、あんなにも噴煙が…
<7622> *
// ていうか、そのまま中に詰まってたんだぁ…。
<7623> \{早苗} *
// \{早苗}「秋生さんは、食べ物を粗末にして、悪い子です」
<7624> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「その…オッサンは?」
<7625> \{早苗} *
// \{早苗}「さぁ、出ていったきりです」
<7626> *
// ひとりで写真を撮りにいったのだろうか。
<7627> \{早苗} *
// \{早苗}「それで、\m{B}さんは、どんな用でしたか」
<7628> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「いや、さっきも言ったように、マジで早苗さんに会いにきただけっすよ」
<7629> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「この時間は、渚も働いてることだし」
<7630> \{早苗} *
// \{早苗}「そうでしたか」
<7631> \{早苗} *
// \{早苗}「それでは何かして、遊びましょうか」
<7632> *
// そのセリフに俺は思わず吹き出してしまう。
<7633> *
// いつまでも、そんな学生のようなセリフが似合う人だ。
<7634> \{早苗} *
// \{早苗}「どうしましたか?」
<7635> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「いや…でも、店を空けてしまったらまずいっすよね」
<7636> \{早苗} *
// \{早苗}「でも、公園ぐらいなら、お客さんが来てもわかるので、いいですよ」
<7637> *
// 本当に、公園に来てしまったが…何をすればいいんだろう。
<7638> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}(ああ、なんか、俺、ドキドキしてる…)
<7639> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}(何したら、喜んでくれるんだろうとか…考えてるよ…)
<7640> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「ええと…」
<7641> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「ブランコしますか」
<7642> \{早苗} *
// \{早苗}「はいっ」
<7643> *
// 大の大人がふたり並んで、ブランコに揺られる。
<7644> \{早苗} *
// \{早苗}「とても楽しいですねっ」
<7645> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}(うわー…本当にブランコなんかで、はしゃいでくれてるよ…)
<7646> \{早苗} *
// \{早苗}「\m{B}さん、足が窮屈ですか?」
<7647> \{早苗} *
// \{早苗}「こうして…ほら、ずっと上げていればうまく乗れますよ」
<7648> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「あ、はい」
<7649> *
// 同じように足を上げると、遠心力を使って大きく揺れてみせた。
<7650> \{早苗} *
// \{早苗}「\m{B}さんはさすが男の子です。とても高くまで上がるんですね」
<7651> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「子供の頃はもっとすごかったっすよ。こう、一周するぐらいまで高く上がってましたよ」
<7652> \{早苗} *
// \{早苗}「今日は挑戦しないんですか」
<7653> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「いや、二度としないですけど」
<7654> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「つーか、ブランコ乗るのも、何年ぶりだか…」
<7655> \{早苗} *
// \{早苗}「たまに乗ってみるのもいいですよ」
<7656> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「早苗さんとなら、そう思えますね」
<7657> *
// 普通の女性なら、馬鹿らしくて見向きもしないことだって、早苗さんなら、そこに楽しみを発見してしまうのだろう。
<7658> *
// 緊張しなくたって、なんだって楽しんでくれるに違いなかった。
<7659> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「次は、鉄棒行きますか」
<7660> \{早苗} *
// \{早苗}「はいっ、逆上がり、わたしできるんですよっ」
<7661> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「俺だって、負けませんよ」
<7662> *
// この感覚…
<7663> *
// …いつか同じように覚えた。あれは、なんだっただろう。
<7664> *
// そうか…渚だ。
<7665> *
// 今の部屋を初めて渚に見せた時…
<7666> *
// あんな汚なくて狭い部屋だったのに、素敵だと言ってくれた。
<7667> *
// 俺みたいな、甲斐性ナシで、女性を楽しませることが下手な奴でも…笑顔で一緒にいてくれる人。
<7668> *
// 渚も、早苗さんも。
<7669> *
// 本当に、俺は素敵な出会いをしたんだと思う。
<7670> \{声} *
// \{声}「やっぱダメだあぁっ!」
<7671> *
// 突然、大声が穏やかな空気を裂いた。
<7672> \{秋生} *
// \{秋生}「小僧っ、てめぇ俺ひとりにやらせるなっ!  恥ずかしくて、入れなかったじゃねぇかよっ!」
<7673> *
// その素敵な出会いから、この人は除外したかった。
<7674> \{早苗} *
// \{早苗}「どこに入るのが恥ずかしいんですか?」
<7675> \{秋生} *
// \{秋生}「うお、早苗っ!  え、いや…」
<7676> \{秋生} *
// \{秋生}「…おもちゃ屋」
<7677> \{早苗} *
// \{早苗}「おもちゃ屋なら、秋生さん、ひとりでも喜んで入っていきます」
<7678> \{早苗} *
// \{早苗}「ふたりで、なんだか、隠し事してませんか?」
<7679> \{秋生} *
// \{秋生}「ぐ…」
<7680> \{秋生} *
// \{秋生}「実はこいつがよ…渚のファミレスで働く姿を見たいけど、ひとりでパフェ頼むのは恥ずかしいって泣きついてきやがってよ…」
<7681> \{早苗} *
// \{早苗}「ふたりで渚の晴れ姿を見に行こうとしてたんですね」
<7682> \{秋生} *
// \{秋生}「だって、こいつが泣きながら頼むんだよぅ」
<7683> \{早苗} *
// \{早苗}「でも今回は、わたしも\m{B}さんと楽しい時間を過ごさせてもらったので、文句言わないことにします」
<7684> \{早苗} *
// \{早苗}「それでは、\m{B}さん」
<7685> *
// 早苗さんがこちらに向き直る。
<7686> \{早苗} *
// \{早苗}「秋生さんをお願いしますね」
<7687> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「はぁ」
<7688> \{秋生} *
// \{秋生}「俺がお願いされたんだよぅ!」
<7689> \{早苗} *
// \{早苗}「はいはい、遅くならないように帰ってきてくださいねっ」
<7690> \{秋生} *
// \{秋生}「こいつが鼻水まき散らしながら、頼むんだよぅ!」
<7691> \{早苗} *
// \{早苗}「はいはいっ、ごめんなさいね、\m{B}さん」
<7692> *
// 早苗さんに見送られ、俺とオッサンは公園を後にする。
<7693> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}(つーか、結局行くのか、俺は…)
<7694> \{秋生} *
// \{秋生}「………」
<7695> *
// オッサンがいきなり立ち止まって、振り向く。
<7696> *
// いつの間にかグラサンをかけていた。
<7697> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「ほら、いくんなら、急ごうぜ」
<7698> \{秋生} *
// \{秋生}「おまえ、今、声をかけようかどうか一瞬迷っただろ」
<7699> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「なんでだよ」
<7700> \{秋生} *
// \{秋生}「俺がいつの間にか変装していたからだ」
<7701> \{秋生} *
// \{秋生}「この人は本当にあの秋生様か?  でも、確かに前を歩いていたからな…でも違ったらどうしよう…」
<7702> \{秋生} *
// \{秋生}「…とひとしきり悩んでから、話しかけたはずだ」
<7703> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「迷いなく急かしていたと思うが」
<7704> \{秋生} *
// \{秋生}「いや、この変装では、簡単に俺とは見抜けないはずだ」
<7705> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「丸わかりだっての」
<7706> \{秋生} *
// \{秋生}「ちっ、てめぇは正体を知ってるからだよ。知らねぇ人が見たら、わかんねぇよ」
<7707> \{秋生} *
// \{秋生}「口調はどうするかな。ラッパー風に言ってみるか」
<7708> \{秋生} *
// \{秋生}「YO!  YO!  俺、MCアキオ  マイク握れば最強のパンヤー」
<7709> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「むちゃくちゃ正体バラしてるんだけど」
<7710> \{秋生} *
// \{秋生}「マジ?  それ、やっべぇよ」
<7711> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「普通にしてればいいんじゃねぇの」
<7712> *
// そもそもこんな変装でバレないわけがない。
<7713> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「とっとといこうぜ」
<7714> \{秋生} *
// \{秋生}「オーケー、ブラザー」
<7715> *
// この角を折れれば、あの見慣れた風景が広がる…はずだった。
<7716> *
// 小、中、高、と12年間、通学路として使っていた道が。
<7717> *
// けど、今は違う。
<7718> *
// 今はもう、別の風景になっているのだ。
<7719> *
// 俺がまだ見たこともない、この町の姿があるのだ。
<7720> \{秋生} *
// \{秋生}「おい、ブラジャー」
<7721> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「誰がブラジャーだっ、ブラザーじゃなかったのか」
<7722> \{秋生} *
// \{秋生}「そうだ、言い間違えた。まだつかないのか、ブラザー」
<7723> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「もう少しだよ」
<7724> *
// 角を折れた。
<7725> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「………」
<7726> *
// 心の準備だって、できてたはずなのに…。
<7727> \{秋生} *
// \{秋生}「へぇ…」
<7728> \{秋生} *
// \{秋生}「ここって、前は木が生い茂ってたはずだよな」
<7729> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「ああ…」
<7730> \{秋生} *
// \{秋生}「すんげぇなぁ、変わるもんだな、おい」
<7731> \{秋生} *
// \{秋生}「人も多いしよ」
<7732> *
// 俺は目の奥に、新しい町の姿を刻み込む。
<7733> *
// そして、今、かつての風景は思い出に変わった。
<7734> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「入るか…」
<7735> *
// 階段を上り、店内に入った。
<7736> \{秋生} *
// \{秋生}「かっ、混んでるなぁ、みんな暇人かっ」
<7737> *
// あんたもな。
<7738> *
// しばらく待たされることになる。
<7739> *
// その間、オッサンは不審な動きで店内を覗き見する。
<7740> \{秋生} *
// \{秋生}「おっ、いたぞっ、渚だ」
<7741> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「マジっ?」
<7742> *
// そう言われると一緒に覗かずにはいられない。
<7743> *
// ああ、悲しき男の習性だ。
<7744> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「どれだ」
<7745> \{秋生} *
// \{秋生}「あれだよ」
<7746> *
// 遠くてよくわからない。
<7747> *
// でも、近い場所を歩くウェイトレスを見て、その制服の可愛さに目を奪われる。
<7748> *
// つーか、そいつは仁科だった。
<7749> \{秋生} *
// \{秋生}「おめぇ、別の女の子に見とれてんじゃねぇよ」
<7750> \{秋生} *
// \{秋生}「俺たちのアイドル、渚ちゃんはどうしたよ」
<7751> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「よくわかんないんだよ、ここからじゃ」
<7752> \{秋生} *
// \{秋生}「ちっ、じゃあ、大人しく待ってろ」
<7753> *
// どか、と椅子に座り直す。
<7754> *
// しばらくして、ウェイトレスがやってきて、俺たちを出迎えた。
<7755> \{渚} *
// \{渚}「いらっしゃいませ」
<7756> *
// つーか、渚だった。
<7757> \{渚} *
// \{渚}「あ、\m{B}くんです」
<7758> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「よぅ」
<7759> *
// かなり恥ずかしい。
<7760> *
// それは渚も同じなようで、顔を赤らめてうつむいてしまう。
<7761> \{渚} *
// \{渚}「いきなり来たら…びっくりします」
<7762> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「いや、悪い。急に暇が出来たんだ。だから連絡のしようもなくてさ…」
<7763> *
// つーか、可愛い。
<7764> \{渚} *
// \{渚}「あ、早く通さないとっ」
<7765> *
// 職務を思い出したらしく、メニューを取りだすと、俺に向かって訊く。
<7766> \{渚} *
// \{渚}「一名様ですね」
<7767> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「いや、二名」
<7768> \{渚} *
// \{渚}「はい?」
<7769> *
// 俺の指さす先、不気味な変装を施した長身の男がひとり。
<7770> \{渚} *
// \{渚}「あ、えっと…」
<7771> *
// 目を細めて、その顔をまじまじと確認する渚。
<7772> \{渚} *
// \{渚}「お友達ですかっ」
<7773> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「アホな子だろ、おまえ!」
<7774> \{渚} *
// \{渚}「えっ?」
<7775> *
// 本当にわかっていないようだ…。
<7776> *
// 自分の父親だというのに。
<7777> \{渚} *
// \{渚}「では、席のほうにご案内しますね」
<7778> *
// 中に通される。
<7779> *
// 渚の後について、空いていた窓際のテーブルのひとつまで歩いてくる。
<7780> \{渚} *
// \{渚}「こちらです。どうぞ」
<7781> *
// 俺とオッサンは向かい合って座る。
<7782> \{渚} *
// \{渚}「こちらメニューになります。ご注文のほうは後ほど伺いに参ります」
<7783> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「ああ、サンキュ」
<7784> *
// メニューを俺たちに渡すと、渚は忙しそうに席を離れていった。
<7785> \{秋生} *
// \{秋生}「見ろ、ばれなかったじゃないか」
<7786> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「ああ、忘れてたよ。あんたの娘が超鈍いことに」
<7787> \{秋生} *
// \{秋生}「いや、あいつは鋭い。もし声を出していたなら気づかれていただろう…」
<7788> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「いやもう、グラサンがなかろうが、別人ですと言い張れば、別人で通るんじゃないかと」
<7789> \{秋生} *
// \{秋生}「んなバカいねぇよ」
<7790> *
// 是非試してみたかった。
<7791> \{秋生} *
// \{秋生}「おまえ、次渚が来たら、会話で引き留めろよ。その間に俺がこいつで激写する」
<7792> *
// 隠し持っていたインスタントカメラを懐から取り出す。
<7793> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「まあ、仕事を邪魔しない程度にはやってみるよ…」
<7794> *
// 別のウェイトレスが、水を持ってくる。
<7795> \{ウェイトレス} *
// \{ウェイトレス}「いらっしゃいませ」
<7796> \{秋生} *
// \{秋生}「ちっ、おまえになんか用はねぇんだよ」
<7797> *
// 丸聞こえだった。
<7798> *
// ウェイトレスは怒った様子で戻っていった。
<7799> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「少しは自重しろ」
<7800> \{秋生} *
// \{秋生}「お、渚が居るぞ。呼んでくれ」
<7801> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「わかってるのか、このオッサン…」
<7802> *
// 渚は呼ばないでも、きてくれた。
<7803> \{渚} *
// \{渚}「お決まりですか」
<7804> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「ああ、そうだな…」
<7805> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「俺、ホット」
<7806> \{渚} *
// \{渚}「はい、ホットコーヒーおひとつですね」
<7807> *
// 渚がくるりと体を反転させて、オッサンのほうを向く。
<7808> \{秋生} *
// \{秋生}「………」
<7809> *
// オッサンは喋らずに黙っていた。
<7810> *
// まじで声を出すとばれると思っているのだ。
<7811> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「こっちの人はパフェ」
<7812> *
// 助け船を出してやる。
<7813> \{渚} *
// \{渚}「パフェはたくさん種類があります。どれにしますか」
<7814> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「一番でかいの」
<7815> \{渚} *
// \{渚}「一番大きいのは、チョコ&ストロベリーミックスパフェ・スペシャルになりますけど、それでよろしいでしょうか?」
<7816> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「よろしい」
<7817> \{秋生} *
// \{秋生}「………」
<7818> \{渚} *
// \{渚}「以上ですね」
<7819> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「ああ」
<7820> \{渚} *
// \{渚}「ありがとうございます。しばらくお待ちください」
<7821> *
// 注文を取り終え、渚が去っていく。
<7822> \{秋生} *
// \{秋生}「よろしいことあるかーーっ!」
<7823> \{秋生} *
// \{秋生}「どうして俺がそんなファンシーな食べ物を食わなきゃならねぇんだよっ!」
<7824> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「パフェって言ってたじゃないか」
<7825> \{秋生} *
// \{秋生}「ちっ、たとえもわからんのか、この小僧は」
<7826> \{秋生} *
// \{秋生}「んな甘いもんが食えるかっ」
<7827> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「とにかく、頼んでしまったんだ。渚の手前だ、ちゃんと食ってやれよ」
<7828> \{秋生} *
// \{秋生}「嫌がらせか、この野郎…」
<7829> *
// その後、料理を運んできたのは、別のウェイトレスだった。
<7830> *
// しばらく渚の姿は見えなかった。
<7831> \{秋生} *
// \{秋生}「ああん?  どうして、渚が来ねぇんだ?」
<7832> \{秋生} *
// \{秋生}「店長呼んでこい、しばくぞ、こら」
<7833> *
// ジャンボパフェを食べながら、悪態をつく不気味な中年男性。
<7834> \{秋生} *
// \{秋生}「これじゃ、激写できねぇじゃねぇかよ」
<7835> *
// +変態風味。
<7836> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「もう、いいじゃんか、見られたんだしよ」
<7837> \{秋生} *
// \{秋生}「娘の晴れ姿を永遠に留めておきたいという親心がわからんかねぇ、この馬鹿は」
<7838> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「じゃ、好きにしてくれ…」
<7839> \{秋生} *
// \{秋生}「なに他人事みたいに言ってんだよ、てめぇだって焼き増し条件でノコノコついてきたくせによ」
<7840> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「ぐ…」
<7841> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「こんな隠し撮りのようなことをやることに気が進まないだけだよっ!」
<7842> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「撮るなら正々堂々と撮ればいいだろっ」
<7843> \{秋生} *
// \{秋生}「んな恥ずかしいことができるかっ」
<7844> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「親ならやれっ!」
<7845> \{秋生} *
// \{秋生}「恥ずいわっ!」
<7846> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「やれっ!」
<7847> \{秋生} *
// \{秋生}「なに他人事みたいに言ってんだよ。てめぇ、早苗に俺をよろしくされてただろうが」
<7848> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「そりゃ、そうだけど…」
<7849> \{秋生} *
// \{秋生}「協力しねぇと、早苗のやつ…おまえに失望するだろうなぁ」
<7850> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「いいよ、別に」
<7851> \{秋生} *
// \{秋生}「ああ、もったいない。もう少しで、恋に発展してたかもしれねぇのに」
<7852> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「ぶっ…するかっ!」
<7853> \{秋生} *
// \{秋生}「するかもしれないだろっ」
<7854> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「しねぇよっ!」
<7855> \{秋生} *
// \{秋生}「しちゃえよっ!」
<7856> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「しちゃわねぇよっ!」
<7857> \{渚} *
// \{渚}「あ、あの」
<7858> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「え…?」
<7859> *
// 気づくと、真横に渚がいた。
<7860> \{渚} *
// \{渚}「他のお客様にご迷惑ですから、お静かにお願いできますか」
<7861> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「あ、ああ、悪い…」
<7862> \{秋生} *
// \{秋生}「この、馬鹿がっ」
<7863> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「あんただろっ」
<7864> \{秋生} *
// \{秋生}「てめぇだっ!」
<7865> \{渚} *
// \{渚}「あの、おふたりともです…」
<7866> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「ああ、悪い…」
<7867> *
// 俺とオッサンは黙り込む。それでようやく、渚が席を離れた。
<7868> \{秋生} *
// \{秋生}「ちっ…」
<7869> *
// オッサンと俺がその背を見送る。
<7870> *
// しかし…しばらく店内を見回していて、気づいたことがある。
<7871> *
// 若い男の客の視線が、頻繁に渚のほうを向いているのだ。
<7872> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}(俺が彼氏として自意識過剰なだけか…?)
<7873> *
// いや、角の席に座る男連中なんて、指までさして、全員で渚の行動を追っているじゃないか。
<7874> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}(制服マジックと言うべきか…あんな格好をすると、渚もモテモテになるんだな…)
<7875> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}(オッサンも、常連客から可愛い可愛いと聞かされて、ここに来てるわけだし…)
<7876> *
// そう考えると、ちょっとした優越感が味わえた。
<7877> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}(てめぇら、その子は俺の嫁だぜ…ふふふ…)
<7878> \{秋生} *
// \{秋生}「へっ、見ろよ、ウチの渚が、一番野郎どもの視線を集めてるぜ」
<7879> \{秋生} *
// \{秋生}「てめぇら、そいつは俺の娘だぜ…ふふふ…」
<7880> *
// バカがここにふたり。
<7881> *
// 角の男連中が、隣を通り過ぎようとした渚を呼び止めた。
<7882> *
// にやけた顔で、渚に話しかけている。
<7883> \{男} *
// \{男}「バイト、何時に終わるの?」
<7884> *
// ナンパだった。
<7885> \{渚} *
// \{渚}「夕方に終わりますけど…」
<7886> \{男} *
// \{男}「お、ちょうどいいね。晩飯おごるから、一緒に食べにいこうよ」
<7887> \{渚} *
// \{渚}「いえ、まっすぐ帰らないといけないですので…」
<7888> \{渚} *
// \{渚}「失礼します」
<7889> *
// 立ち去ろうとした渚の腕を一番手前の男が掴んでいた。
<7890> \{男} *
// \{男}「お家、そんなに厳しいの?」
<7891> *
// 逃げないようにして、強引に話を続けた。
<7892> \{秋生} *
// \{秋生}「ちっ…あいつら、黙って見ておくだけにしておけばいいものを…」
<7893> \{秋生} *
// \{秋生}「よし、しばくか」
<7894> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「ああ」
<7895> *
// 珍しく意気投合。ふたり同時に立ち上がった。
<7896> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「でも、大事(おおごと)にするなよ。店に迷惑かけたら、渚に怒られるぞ」
<7897> \{秋生} *
// \{秋生}「大丈夫だ、脅すだけだよ」
<7898> *
// 確かに、その顔で脅されたら恐い。
<7899> *
// 俺とオッサンは渚を挟む格好で立った。
<7900> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「なぁ、その手、離してやってくんない?」
<7901> \{秋生} *
// \{秋生}「じゃねぇと、あそこチョン切るぞ、てめぇら」
<7902> *
// 相手は三人だったが、面構えの悪いふたりの脅しだ。気圧されたように顔色を変えた。
<7903> \{渚} *
// \{渚}「\m{B}くん、大丈夫です…」
<7904> *
// そう渚は小声で言ってきた。
<7905> \{男} *
// \{男}「ちっ、こんな店、出ようぜっ!」
<7906> *
// 乱暴に立ち上がって、俺たちの脇を抜けていく男ども。
<7907> *
// その時、相手がわざとオッサンの足を踏んだのが見えた。
<7908> *
// 直後…
<7909> *
// ずてん!\shake{3}と大きな音を立てて、男が尻餅をついていた。
<7910> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}(オッサン…足を引っかけ返したな…)
<7911> \{男} *
// \{男}「なにすんだよ、この野郎っ!」
<7912> *
// 案の定、逆上する相手。
<7913> \{秋生} *
// \{秋生}「あぁ、わりぃ、わりぃ、気にせず、帰れ」
<7914> \{男} *
// \{男}「あんたのせいで、こっちは怪我したんだよっ!」
<7915> \{秋生} *
// \{秋生}「だから、謝ってんだろ、小僧がよっ」
<7916> \{男} *
// \{男}「てめぇっ」
<7917> *
// 手が出た。
<7918> *
// オッサンはそれをよけて、また足を引っかけた。
<7919> *
// ガシャン!\shake{3}
<7920> *
// 男は自分たちの座っていたテーブルに倒れ込む。グラスを倒し、水浸しになった。
<7921> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「オッサン!」
<7922> \{秋生} *
// \{秋生}「え?  今の俺か?」
<7923> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「あんた以外に誰がいるっ!」
<7924> \{声} *
// \{声}「どうかされましたかっ」
<7925> *
// 直後、店長らしき男が割って入ってきた。
<7926> *
// すでに相手に向かってくる意気などなくなっていたが。
<7927> *
// 客足が途絶えた閉店間際の時間、俺は店長とテーブルで向かい合っていた。
<7928> *
// オッサンは…
<7929> \{秋生} *
// \{秋生}「厄介事はおまえに任せたっ!  バイバイブーッ!」
<7930> *
// と言い残して、逃げ去っていた。
<7931> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}(あの人は…ったく…)
<7932> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}(怒られるのは俺ひとりかよ…)
<7933> \{店長} *
// \{店長}「ここの店長をしております、土方です」
<7934> *
// 名刺を差し出される。
<7935> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「\m{A}です」
<7936> \{店長} *
// \{店長}「ええと、聞いた話によりますと…」
<7937> \{店長} *
// \{店長}「\m{A}くんの旦那さんということですね」
<7938> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「\m{A}くん?」
<7939> *
// それは俺だ。
<7940> \{店長} *
// \{店長}「ああ…ややこしかったですな」
<7941> \{店長} *
// \{店長}「下の名前は…そう渚くん」
<7942> *
// ああ…渚はこの店長に『\m{A}くん』と呼ばれているのか。
<7943> *
// 俺のほうがまったく慣れていないようで、恥ずかしい。
<7944> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「お騒がせして、すみませんでした」
<7945> \{店長} *
// \{店長}「いやいや、大事な奥さんが、言い寄られていたんですから、心中も穏やかでなかったでしょう」
<7946> \{店長} *
// \{店長}「\m{A}くんは、器量の良い子ですから、以前にも同じようなことがありました」
<7947> \{店長} *
// \{店長}「でも、その時はうまくやり過ごしていましたよ」
<7948> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「そうなんすか…」
<7949> \{店長} *
// \{店長}「ええ、見た目以上に利発な子です」
<7950> \{店長} *
// \{店長}「と言っては、失礼ですかな」
<7951> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「いえ…」
<7952> \{店長} *
// \{店長}「それに履歴を見るかぎり、体が弱いそうですが、ここでの働きぶりはまったく、健康そのものですよ」
<7953> \{店長} *
// \{店長}「いや、健康な人よりも、よく働いてくれています」
<7954> *
// 頑張り屋なあいつらしい…。
<7955> \{店長} *
// \{店長}「ですから、\m{A}さん、心配なさらずとも大丈夫ですよ」
<7956> *
// ああ…そうか。
<7957> *
// それを言いたかったのか、この人は。
<7958> *
// 何も騒ぎを起こした俺を叱るためではない。
<7959> *
// 旦那である俺に安心してもらいたかっただけなのだ。
<7960> *
// いい人だと思った。
<7961> \{店長} *
// \{店長}「それにこう見えても、私、武道の嗜みもございますので」
<7962> *
// 俺が黙っていたからだろう。さらにそう付け加えた。
<7963> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「ああ、はいっ…安心しました」
<7964> *
// 慌てて、答える。
<7965> \{\m{B}} *
// \{\m{B}}「至らない点も多々あると思いますが…あいつをよろしくお願いします」
<7966> *
// 最後にそう頭を下げた。

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