White Album 2/Script/2006
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Speaker | Text | Comment | |||
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Line # | JP | EN | JP | EN | |
1 | 大学の講義を四コマ目で切り上げ、 そして歩くこと…10分。 | ||||
2 | 『三年ぶり』とか『懐かしいな』とか言うには、 あまりにも日常の風景。 | ||||
3 | ただ、自分と反対方向に帰路を急ぐ学生たちの 年齢や服装にノスタルジーを感じることが… | ||||
4 | まぁ、結構年取ったよなと感慨にふけるのが、 そもそもおっさんくさいよな。 | ||||
5 | 春希 | Haruki | 「さて、と」 | ||
6 | 時計を見ると、3時40分。 約束の時間には少し早いけど… | ||||
7 | 小春 | Koharu | 「あ」 | ||
8 | 春希 | Haruki | 「あ」 | ||
9 | と、校舎の方を向いた瞬間。 | ||||
10 | 確率論的にも、期待値的にも。 そしてなにより、因縁的にも… | ||||
11 | きっと会ってしまうだろうと思っていた人物が、 予想通り、俺の目の前に憮然と立っていた。 | ||||
12 | 小春 | Koharu | 「もしかして、わたしに会いに来たんですか?」 | ||
13 | 春希 | Haruki | 「どうしてそう思うんだ?」 | ||
14 | 小春 | Koharu | 「酷いこと言ったりとか、突き放した教え方したりとか、 そもそもわたしのバイト先に突然現れたりとか、 そういうこと謝るつもりなのかなって」 | ||
15 | 春希 | Haruki | 「どの件に関しても、俺の側に非なんか これっぽっちもないと思ってるんだけど…」 | ||
16 | 小春 | Koharu | 「彼女いるくせに」 | ||
17 | 春希 | Haruki | 「いや、それとこれとは関係ないだろ」 | ||
18 | 小春 | Koharu | 「ほらやっぱりいた! いないって言ったくせに嘘ついてた」 | ||
19 | 春希 | Haruki | 「『関係ない』って言っただけで、 肯定したことなんか一度だってないから」 | ||
20 | そしてまた、磁石の同じ極が近づいてしまったら、 起こることはいつもと同じだったり。 | ||||
21 | ……… | .........
| |||
22 | 小春 | Koharu | 「美穂子、一度は登校してきてたのに、 最近また来なくなっちゃったんですよ? …あなたにずっと騙されてたって知ったから」 | ||
23 | 春希 | Haruki | 「人聞きの悪いこと言わないでくれ。 俺は彼女に対して確かに酷い態度を取ったけど、 少なくとも嘘なんかついたことはない」 | ||
24 | 小春 | Koharu | 「だから彼女が…」 | ||
25 | 春希 | Haruki | 「俺に彼女はいない。 そもそも俺は女の子とつきあったりしない。 …そんな資格なんかない」 | ||
26 | 小春 | Koharu | 「資格って…言ってる意味わかりません。 ただ、美穂子を遠ざけるための、 苦し紛れの言い訳にしか聞こえません」 | ||
27 | 春希 | Haruki | 「自分がわからないからって、 俺が言ってることを全否定しないでくれ」 | ||
28 | 小春 | Koharu | 「わかって欲しかったら、きちんとわかるように 説明するべきじゃないでしょうか? それが誠実な態度ってものでしょう?」 | ||
29 | 春希 | Haruki | 「誠実って言葉を軽々しく使うな… それって誰に対しての誠実だよ?」 | ||
30 | 小春 | Koharu | 「もちろん、美穂子に対してです。 あと、ついでにわたしにもそう接してくれると こういう言い争いにはならないと思いますけど?」 | ||
31 | 春希 | Haruki | 「君が怒ってるのは君の勝手じゃないか…」 | ||
32 | 小春 | Koharu | 「先輩が何度も何度も何度もわたしの前に現れては、 しつこく挑発を繰り返すからです」 | ||
33 | 春希 | Haruki | 「どれもこれもいつも偶然だ。 俺は明確な意志を持って君に会いに来たことなんかない」 | ||
34 | ある程度わかってはいたことだけど… | ||||
35 | 小春 | Koharu | 「じゃあ、今日は一体何の用なんです? わたしのクラスに『偶然』教育実習にでも来ましたか?」 | ||
36 | 春希 | Haruki | 「教育実習は来年だよ。 …確かに教員免許も取るつもりだけど」 | ||
37 | 小春 | Koharu | 「ああ良かった。 その頃にはもう卒業してるから、 教室で顔を合わせることはないですね」 | ||
38 | 春希 | Haruki | 「その代わり同じキャンパスを闊歩してるだろ」 | ||
39 | 俺が二人いると、 こんなにもウザいのか… | ||||
40 | 春希 | Haruki | 「…ゲームセットだ。 それじゃ」 | ||
41 | 小春 | Koharu | 「え? ちょっと…待ちなさいよ! まだ話は…」 | ||
42 | 春希 | Haruki | 「4時ちょうどに職員室って約束なんだよ。 遅刻なんてもってのほかだろ?」 | ||
43 | 小春 | Koharu | 「もう4時過ぎてるじゃないですか! 普通、約束の時間の5分前には、いるのが常識…」 | ||
44 | 春希 | Haruki | 「その通りだ。 じゃ、そういうわけで」 | ||
45 | 小春 | Koharu | 「あ」 | ||
46 | 彼女のありがたい許可もいただいたことなので、 俺はさっさと背を向けて、早足で校舎へと向かう。 | ||||
47 | 小春 | Koharu | 「だからちょっと待ってよ! 先輩、わたしに謝りに来たんじゃないんですか!?」 | ||
48 | 春希 | Haruki | 「君に用があるなんて、 最初から一言も言ってないだろ」 | ||
49 | 小春 | Koharu | 「じゃあ何しに来たのよ! もしかして、わたしで暇つぶししてた訳!?」 | ||
50 | ちょっとだけの、出し抜いた優越感と、 かなりの釈然としない思いを抱きながら。 | ||||
51 | 先週のこと、 本気でこっちが悪いって思ってたのか… | ||||
52 | ……… | .........
| |||
53 | 小春 | Koharu | 「はぁっ、はぁっ、はぁぁ…な、なによあいつ。 人を苛つかせるだけ苛つかせておいて、 自分はさっさと逃げ出してっ」 | ||
54 | 孝宏 | Takahiro | 「…なぁ、杉浦」 | ||
55 | 小春 | Koharu | 「何よ!? 言っておくけどわたし今、 ものすごく機嫌悪いんだからね?」 | ||
56 | 孝宏 | Takahiro | 「今の…北原さんだよな?」 | ||
57 | 小春 | Koharu | 「あ~、確かそんな苗字だったかもね。 そんなこと、ありえないくらい興味ないけど!」 | ||
58 | 孝宏 | Takahiro | 「知り合いなのか?」 | ||
59 | 小春 | Koharu | 「まさか! あんたこそ、あいつ知ってる訳?」 | ||
60 | 孝宏 | Takahiro | 「うん、姉ちゃんの彼氏」 | ||
61 | 小春 | Koharu | 「そうなんだ。それはお姉さんもご愁傷様………? 小木曽、あんたのお姉さんって、苗字は和泉?」 | ||
62 | 孝宏 | Takahiro | 「…ウチにそんな複雑な家庭の事情はないけど?」 | ||
63 | 小春 | Koharu | 「………あの男ぉぉぉっ!」 | ||
64 | 諏訪先生 | Suwa-sensei | 「いや~、そうか! 北原は出版社勤めか! まさかお前に取材される日が来るなんてなぁ」 | ||
65 | 春希 | Haruki | 「いや、ただのアルバイトです。今のところ。 卒業は来年度の予定です」 | ||
66 | 久々に会った、あの小うるさかった指導部長は… | ||||
67 | 諏訪先生 | Suwa-sensei | 「ああ、そうだったか。しかし懐かしいな。 お前、トップ合格で入学式のとき挨拶しただろ。 ちゃんと覚えてるぞ?」 | ||
68 | 春希 | Haruki | 「…ありがとうございます」 | ||
69 | 機嫌よく笑顔で当時を懐かしむだけで、 やっぱりこちらを辟易とさせてくれた。 | ||||
70 | 諏訪先生 | Suwa-sensei | 「卒業式の答辞も北原だったよな。 結局三年間トップを守り抜いて…」 | ||
71 | 春希 | Haruki | 「諏訪先生。 今日来たのは、自分の思い出話じゃなくて…」 | ||
72 | それに、最後の期末はトップ10すら脱落してる。 そういう美しくない思い出は忘れてるんだな。 | ||||
73 | 諏訪先生 | Suwa-sensei | 「お~、そうだったそうだった。 職員室でも話題になってたぞ、先週の開桜グラフ」 | ||
74 | 実際、『開桜社の北原』として取材申し込みの メールを送ったときのレスポンスは速かった。 | ||||
75 | もともと、多数のプロを輩出している 峰城大付属音楽科ではあったけど、その中でも久々の スマッシュヒットと言える今回の受賞だったらしい。 | ||||
76 | 諏訪先生 | Suwa-sensei | 「ヨーロッパでも認められるほどになるとはなぁ。 いや、大したもんだ」 | ||
77 | 春希 | Haruki | 「頑張ってるみたいですね、冬馬…」 | ||
78 | 俺の知らない遠い空で… | ||||
79 | 歯を食いしばってるんだろうか? それとも鼻歌交じりなんだろうか? | ||||
80 | 向こうの生活に馴染んでいるだろうか? 日本が恋しくなったりしないんだろうか? | ||||
81 | それとも、日本語なんて忘れてしまっただろうか? こっちでの思い出も記憶さえも、 綺麗さっぱり忘れてしまっただろうか? | ||||
82 | …俺のこと、忘れてしまっただろうか。 | ||||
83 | 諏訪先生 | Suwa-sensei | 「我が校としても鼻が高いよ。 さすがは『音楽科始まって以来の天才』と 言われただけのことはある」 | ||
84 | 春希 | Haruki | 「…はい?」 | ||
85 | 少しばかり、遠くの空に思いを馳せていたせいで、 目の前の人の、話の飛躍についていけなかった。 | ||||
86 | 諏訪先生 | Suwa-sensei | 「確かに、冬馬曜子の血筋と 英才教育のおかげでもあるだろう」 | ||
87 | 諏訪先生 | Suwa-sensei | 「しかし、世界に羽ばたく前の冬馬さんを支えたのは、 この峰城大付属音楽科の実績と伝統に他ならない」 | ||
88 | 春希 | Haruki | 「…冬馬さん?」 | ||
89 | ま、まぁ、卒業生を敬称で呼ぶのは普通…か? | ||||
90 | 諏訪先生 | Suwa-sensei | 「そうそう、第二音楽室にあるピアノを知ってるか? 彼女が在学中に愛用した物なんだが、 実は彼女の母親が寄付したもので」 | ||
91 | 春希 | Haruki | 「ええ、もちろん知ってますけど…」 | ||
92 | 諏訪先生 | Suwa-sensei | 「以前から冬馬曜子と我が校との結びつきは強くてね。 ま、元を正せば冬馬曜子を世界に送り出したのも…」 | ||
93 | 春希 | Haruki | 「先生…」 | ||
94 | 諏訪先生 | Suwa-sensei | 「ん? なんだね?」 | ||
95 | 春希 | Haruki | 「『彼女には苦労させられた』の方が、 読者受けしますよ?」 | ||
96 | 諏訪先生 | Suwa-sensei | 「………は、はは」 | ||
97 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
98 | 諏訪先生 | Suwa-sensei | 「ははは、こりゃ北原に一本取られたな。 確かに、彼女とは色々あったなぁ」 | ||
99 | 春希 | Haruki | 「そうでしたね…」 | ||
100 | 次から次へと出てくる諏訪先生の美辞麗句を 無理やり遮ったのは… | ||||
101 | なんだか、俺の記憶を… 決して消し去ることのできないはずの思い出を、 全否定されてるような気がしたから。 | ||||
102 | 諏訪先生 | Suwa-sensei | 「まぁ、天才肌で気難しいところはあったかな。 でもまぁ、今となっては懐かしい思い出だ」 | ||
103 | 春希 | Haruki | 「そう、なんですか…」 | ||
104 | 諏訪先生 | Suwa-sensei | 「たった3年前のことなのに、 随分昔のように感じられるなぁ」 | ||
105 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
106 | 峰城大付音楽科の誉れ? 恵まれた環境のもとで育まれた天才? | ||||
107 | …誰だよ、それ。 | ||||
108 | 俺が知ってる冬馬は、 そんな大仰で気高い肩書きを持つような、 いつも陽の光に照らされてたような奴じゃない。 | ||||
109 | 音楽科主席入学ながら、普通科ギリギリ卒業という、 当時は都落ちのお手本とまで言われた劣等生で。 | ||||
110 | 最初の一年で、一人も友達ができなくて、 次の一年で、クラスの全員を敵に回して、 最後の一年で…色々あって。 | ||||
111 | 遅刻、無断欠席、居眠りの常習犯で、 先生からも同級生からも腫れ物扱いされて、 しかも一番酷い扱いをしてた人は、今、目の前にいて。 | ||||
112 | それでも本人は何処吹く風で孤高を気取ってて、 それがまた格好良くハマるものだから、 誰もがその奥底の孤独なんか知る由もなくて。 | ||||
113 | 諏訪先生 | Suwa-sensei | 「お、そういえば北原。 あの話はちゃんと紹介するんだろうな?」 | ||
114 | 春希 | Haruki | 「あの話…?」 | ||
115 | 諏訪先生 | Suwa-sensei | 「ほら、学園祭のステージの… 北原も参加してただろう」 | ||
116 | 春希 | Haruki | 「あ、ああ、あれですか… いや、どうでしょう? 大した話じゃないし」 | ||
117 | またしても、話の飛躍についていけなかった。 | ||||
118 | 諏訪先生 | Suwa-sensei | 「もの凄く盛り上がったじゃないか。 今でも付属祭の語り草になってるぞ?」 | ||
119 | 春希 | Haruki | 「そうなんですか…」 | ||
120 | けど今度は、例え順を追って振られても、 受け入れる準備なんかできるわけもない話題で。 | ||||
121 | 諏訪先生 | Suwa-sensei | 「確か当時の記録DVDを生徒会が保存してるはずだ。 後で渡すように言っておこう」 | ||
122 | 春希 | Haruki | 「お気遣いありがとうございます。 でも、多分必要ないと思いますよ?」 | ||
123 | 諏訪先生 | Suwa-sensei | 「そうか? 面白いと思うんだけどな。 今をときめく天才ピアニストが、 学園祭でトランペットやギターを弾いたなんて」 | ||
124 | 春希 | Haruki | 「サックスとベースですけどね…」 | ||
125 | そりゃお薦めだろうな、学校側にしてみれば。 | ||||
126 | 何しろあれこそが、 あいつが参加した唯一の校内行事なんだから。 | ||||
127 | ……… | .........
| |||
128 | 小春 | Koharu | 「ええとね、大学生で、ハタチくらいで、 暗い顔してて、理屈っぽくって、口が悪くて、 でも性格はもっと悪いんだけど…」 | ||
129 | 女子生徒1 | Female Student 1 | 「…途中から内面描写になってるよ」 | ||
130 | 小春 | Koharu | 「…身長は180にちょっと足りないくらい。 やせ気味で、どこにでもいそうな何の変哲もない男で…」 | ||
131 | 女子生徒1 | Female Student 1 | 「いい男?」 | ||
132 | 小春 | Koharu | 「全然! まるっきり大したことない! ………ちょっとカッコいいかも」 | ||
133 | 女子生徒1 | Female Student 1 | 「どっちなのよ?」 | ||
134 | 小春 | Koharu | 「親友の美的感覚を否定する訳にもいかないのよ」 | ||
135 | 女子生徒1 | Female Student 1 | 「なら見てないなぁ… …そもそもさっきから誰にも会ってないし」 | ||
136 | 小春 | Koharu | 「それを先に言ってよ!」 | ||
137 | 小春 | Koharu | 「はぁっ、はぁっ、はぁぁ… ど、どこ行ったのよあの男」 | ||
138 | 小春 | Koharu | 「なんでこの期に及んで第三の女が出てくるのよ…」 | ||
139 | 小春 | Koharu | 「美穂子が卒業できなかったら、 どう責任取るつもりなのよ!?」 | ||
140 | 春希 | Haruki | 「…っ」 | ||
141 | 開け放たれた窓から、 冬の冷たい風が吹き込んでくる。 | ||||
142 | 暖房なんかとっくに切られた第二音楽室に、 あっという間に冷気が満ちていく。 | ||||
143 | 窓の外には、練習を終わろうとしている運動部。 そろそろ赤から藍へと色を染めていく空。 | ||||
144 | そして…真下に目を転じると、 落ちたらただでは済まないコンクリで固められた地面。 | ||||
145 | かずさ | Kazusa | 『北原…何やってんのよこの馬鹿…』 | ||
146 | そっか… 俺、ここにぶら下がったことがあったっけ。 | ||||
147 | 今思えば、なんて馬鹿なことを… って、当時だってそう思ってたことに変わりないけど。 | ||||
148 | それでもあの時は、 『第二音楽室の主』のことで頭がいっぱいだったっけ。 | ||||
149 | あいつは、いつもこのピアノを自由自在に弾いていた。 | ||||
150 | 隣の第一音楽室で悪戦苦闘する俺を嘲笑うかのように、 軽く俺のギターに合わせ、俺を導いてくれた。 | ||||
151 | かずさ | Kazusa | 『邪魔だからいなくなれ』 | ||
152 | かずさ | Kazusa | 『と、こっちがいくら言ったって、 どうせ出ていく気なんかないくせに』 | ||
153 | 記憶がどんなに上書きされても。 | ||||
154 | 何度も何度も『もう忘れた』って、 呪文のように繰り返したとしても。 | ||||
155 | ここにあるこのピアノは… | ||||
156 | あいつがずっと恨んでた母親と、 ずっと繋がっていた唯一の絆は… | ||||
157 | 今もこうして、そんな三年前の記憶を呼び覚ます。 | ||||
158 | ここにかずさが座ってて。 | ||||
159 | 目の前に座ってる俺のことなんか歯牙にもかけず、 ただ楽しそうに、けれどふてくされ気味に。 | ||||
160 | 適当に、そして完璧にピアノを弾いていて… | ||||
161 | 雪菜 | Setsuna | 『まずは第1ヒント。 わたしたちの…』 | ||
162 | かずさ | Kazusa | 『『WHITE ALBUM』…』 | ||
163 | 雪菜 | Setsuna | 『………出逢いの曲と言えば何でしょう? 冬馬さん正解』 | ||
164 | もう片方の俺の隣には、 彼女のピアノに誘われて歌い出す白雪姫。 | ||||
165 | そんな、今まで生きてきた中で一番幸せで、 今まで生きてきた中で一番悲しい日々の記憶。 | ||||
166 | かずさ | Kazusa | 『………嫌なわけないだろ。 楽しくないわけないだろ。 嬉しくないわけないだろ』 | ||
167 | かずさ | Kazusa | 『聞かなきゃわからないのかよ、そんなことまで…っ』 | ||
168 | 雪菜 | Setsuna | 『一緒にいてね、春希くん』 | ||
169 | 雪菜 | Setsuna | 『進学しても、二年になっても、 三年になって、もしも学部が違っても…』 | ||
170 | 小春 | Koharu | 「見つけた!」 | ||
171 | 春希 | Haruki | 「あ…」 | ||
172 | そんな、黄昏に沈み込んでいきそうな思考を遮ったのは… | ||||
173 | 小春 | Koharu | 「また嘘ついてたんですね! 一体あなた、何人の人とつきあって………?」 | ||
174 | 春希 | Haruki | 「君か…」 | ||
175 | さっきまで思い出の中にいた 懐かしい彼女たちと同じ制服姿の、懐かしくない彼女。 | ||||
176 | 小春 | Koharu | 「あ、えと…」 | ||
177 | 春希 | Haruki | 「ごめんな。 関係者でもないのに、勝手に校内をうろついたりして」 | ||
178 | 小春 | Koharu | 「え? あ、はい。 その、そろそろ下校時刻だから戸締まりを…」 | ||
179 | 春希 | Haruki | 「うん、わかってる。 三年前までここの生徒だったし」 | ||
180 | 小春 | Koharu | 「………」 | "........."
| |
181 | 俺は今きっと、悪戯を見つかってばつの悪そうな… | ||||
182 | けれど見つかったことをほっとしてるような、 そんな微妙な表情になってると思う。 | ||||
183 | 春希 | Haruki | 「教室の戸締まりとかも、よくやった。 結構忘れてく奴ら多いんだよな」 | ||
184 | 小春 | Koharu | 「…学年が上になればなるほど、 そういうのってルーズになっていきます」 | ||
185 | 春希 | Haruki | 「そうそう、それとこういう特殊教室。 全然帰る気のない奴らを叩き出したり」 | ||
186 | 小春 | Koharu | 「…どうして第二音楽室に? 今じゃ、ほとんど使われてない教室なのに」 | ||
187 | 春希 | Haruki | 「諏訪先生に鍵を借りたんだ。 返しに行かないと」 | ||
188 | 小春 | Koharu | 「なら預かっておきます」 | ||
189 | 春希 | Haruki | 「ありがとう」 | ||
190 | ほんの少しだけ触れた彼女の指先は、 この教室の冷たい空気に触れて、冷え切っていた。 | ||||
191 | 春希 | Haruki | 「知ってるか? ここのピアノ、ピアニストの冬馬曜子が寄付したんだ」 | ||
192 | そういえば… このコ…杉浦小春のこと、温かいとか冷たいとか、 今まで考えたこともなかったっけ。 | ||||
193 | 小春 | Koharu | 「今、学校中で話題になってます。 ウチの卒業生で、しかも冬馬曜子の娘さんが、 ヨーロッパのコンクールで優勝したって」 | ||
194 | 春希 | Haruki | 「準優勝だよ…惜しかったな」 | ||
195 | 小春 | Koharu | 「………」 | "........."
| |
196 | そりゃ、酷い人間だとか、冷たすぎるとか、 言われても仕方ないかもな、今の俺って。 | ||||
197 | 春希 | Haruki | 「じゃあ、俺はそろそろ帰るよ。 もう暗いし、よかったら駅まで送るけど…」 | ||
198 | 小春 | Koharu | 「まだ用事がありますから。 …大丈夫です。いつもこの時間ですし」 | ||
199 | 春希 | Haruki | 「そう、か」 | ||
200 | 先週よりも自然に出た、 社交辞令でも何でもない言葉。 | ||||
201 | だからだろうか。 彼女の断り方も、不自然なくらいに自然で、 どこにもカドが立たないまま、するっと会話が成り立つ。 | ||||
202 | 春希 | Haruki | 「あ… もしかしたら、またバイト先に顔出すかもしれないけど」 | ||
203 | 小春 | Koharu | 「それが仕事でしたら仕方ありません」 | ||
204 | 春希 | Haruki | 「…それじゃ、お先に」 | ||
205 | 小春 | Koharu | 「はい」 | ||
206 | 廊下は、もう真っ暗だった。 | ||||
207 | だけど今は、この暗さがそれほど嫌じゃない。 | ||||
208 | いつもあの時を思い出すたびに伴う痛みが、 こうしてあの時と同じ景色と混ざりあうことで、 ほんの少しだけ、和らいでいるのかもしれない。 | ||||
209 | ……… | .........
| |||
210 | 小春 | Koharu | 「誤魔化された…」 | ||
211 | 小春 | Koharu | 「けど…なんでだろ」 | ||
212 | 小春 | Koharu | 「なんであんな悲しそうで、 あんな嬉しそうな顔してたんだろ、あいつ…」 |
Script Chart
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Introductory Chapter | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
1001 | 1008 | 1009 | 1010 | 1011 | 1012 | 1013 |
1002 | 1008_020 | 1009_020 | 1010_020 | 1011_020 | 1012_020 | |
1003 | 1008_030 | 1009_030 | 1010_030 | 1011_030 | 1012_030 | |
1004 | 1008_040 | 1010_040 | 1012_030_2 | |||
1005 | 1008_050 | 1010_050 | ||||
1006 | 1010_060 | |||||
1006_2 | 1010_070 | |||||
1007 |
Closing Chapter | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Common | Setsuna | Koharu | Chiaki | Mari | ||||||
2001 | 2011 | 2020 | 2027 | 2301 | 2309 | 2316 | 2401 | 2408 | 2501 | 2510 |
2002 | 2012 | 2021 | 2028 | 2302 | 2310 | 2317 | 2402 | 2409 | 2502 | 2511 |
2003 | 2013 | 2022 | 2029 | 2303 | 2311 | 2318 | 2403 | 2410 | 2503 | 2512 |
2004 | 2014 | 2023 | 2030 | 2304 | 2312 | 2319 | 2404 | 2411 | 2504 | 2513 |
2005 | 2015 | 2024 | 2031 | 2305 | 2313 | 2320 | 2405 | 2412 | 2505 | 2514 |
2006 | 2016 | 2025 | 2032 | 2306 | 2314 | 2321 | 2406 | 2413 | 2506 | 2515 |
2007 | 2017 | 2026 | 2033 | 2307 | 2315 | 2322 | 2407 | 2507 | 2516 | |
2008 | 2018 | 2308 | 2508 | 2517 | ||||||
2009 | 2019 | 2509 | ||||||||
2010 | ||||||||||
Setsuna | Koharu | Chiaki | Mari | |||||||
2031_2 | 2312_2 | 2401_2 | 2504_2 | 2511_2 | ||||||
2031_3 | 2313_2 | 2402_2 | 2507_2 | 2513_2 | ||||||
2031_4 | 2313_3 | 2402_3 |
Coda | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Common | Kazusa (True) | Setsuna (True) | Kazusa (Normal) | ||||||
3001 | 3008 | 3014_2 | 3020 | 3101 | 3107 | 3201 | 3207 | 3901 | 3907 |
3002 | 3009 | 3014_3 | 3021 | 3102 | 3108 | 3202 | 3208 | 3902 | 3908 |
3003 | 3010 | 3015 | 3022 | 3103 | 3109 | 3203 | 3209 | 3903 | 3909 |
3004 | 3011 | 3016 | 3023 | 3104 | 3110 | 3204 | 3210 | 3904 | |
3005 | 3012 | 3017 | 3024 | 3105 | 3111 | 3205 | 3211 | 3905 | |
3006 | 3013 | 3018 | 3106 | 3206 | 3906 | ||||
3007 | 3014 | 3019 | |||||||
Common | Setsuna (True) | Kazusa (Normal) | |||||||
3001_2 | 3210_2 | 3901_2 | 3906_2 | ||||||
3015_2 | 3902_2 | 3907_2 | |||||||
3902_3 | 3907_3 | ||||||||
3904_2 |
Mini After Story and Extra Episode | |||
---|---|---|---|
The Path Back to Happiness | The Path Forward to Happiness | Dear Mortal Enemy | |
6001 | 6101 | 4000 | 4005 |
6002 | 6102 | 4001 | 4006 |
6003 | 6103 | 4002 | 4007 |
6004 | 6104 | 4003 | 4008 |
6005 | 4004 | 4009 |
Novels | |||||
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The Snow Melts, And Until The Snow Falls | The Idol Who Forgot How to Sing | Twinkle Snow ~Reverie~ | After the Festival ~Setsuna's Thirty Minutes~ | His God, Her Savior | |
5000 | 5100 | 5200 | 5205 | 5300 | 5400 |
5001 | 5101 | 5201 | 5206 | 5301 | 5401 |
5002 | 5102 | 5202 | 5207 | 5302 | |
5003 | 5103 | 5203 | 5208 | 5303 | |
5004 | 5104 | 5204 | 5209 |
Short Stories | |||
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Princess Setsuna's Distress and Her Minister's Sinister Plan | Koharu Climate After the Passing of the Typhoon | This isn't the Season for White Album | Todokanai Koi, Todoita |
7000 | 7100 | 7200 | 7300 |