White Album 2/Script/4001
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Text[edit]
Speaker | Text | Comment | |||
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Line # | JP | EN | JP | EN | |
1 | 見上げると、今日も虚ろな空。 五年くらい、わざと目をそらしていた空。 | ||||
2 | 夢のような幸せで辛い日々が、 終わってしまったあとの、空。 | ||||
3 | かずさ | Kazusa | 「…よう」 | ||
4 | 曜子 | Youko | 「…よう」 | ||
5 | 病室のドアを開けると、 ぶっきらぼうな反応があたしを迎える。 | ||||
6 | …まぁ、その前に ぶっきらぼうな問いかけがあったかもしれないけど。 | ||||
7 | かずさ | Kazusa | 「ほら、土産」 | ||
8 | 曜子 | Youko | 「どこで買ってきたのよこれ…」 | ||
9 | 中身のない花瓶だけが飾ってある無味乾燥な個室。 まぁ、患者も見舞客も花に興味がないから仕方ない。 | ||||
10 | かずさ | Kazusa | 「好きだったろ? 冷凍ミカン」 | ||
11 | なにしろ二人とも、花を愛でるくらいなら果物を貪る。 いや、別に糖分だけでもいいんだけど。 | ||||
12 | 曜子 | Youko | 「ちょっとなにこれ凍らせすぎ。 こんなんじゃ皮がむけないわよ」 | ||
13 | かずさ | Kazusa | 「じゃ、あたしがやってやるよ」 | ||
14 | 曜子 | Youko | 「馬鹿いいなさい。 ピアニストが指を黄色くしてどうするのよ」 | ||
15 | かずさ | Kazusa | 「いや、別にいいんじゃないのかそれは…」 | ||
16 | お互い、日本語が通じる唯一の空間で、 思わず肩の力が抜ける。 | ||||
17 | これが一日に一度だけの、 あたしのための、癒しの時間。 | ||||
18 | けれど… | ||||
19 | かずさ | Kazusa | 「………」 | "........."
| |
20 | 曜子 | Youko | 「なに? 人の顔ジロジロ見て」 | ||
21 | かずさ | Kazusa | 「いや、別に」 | ||
22 | また少し、痩せたような気がする。 | ||||
23 | 曜子 | Youko | 「それで、調子はどう?」 | ||
24 | 冷凍ミカンを口の中でもにゅもにゅさせながら、 母さんが思い出したように呟く。 | ||||
25 | かずさ | Kazusa | 「それは見舞客の方の台詞なんだけどな…」 | ||
26 | 曜子 | Youko | 「病人の容態気にして何が面白いのよ。 それよりあんたのピアノよ」 | ||
27 | かずさ | Kazusa | 「まぁ、ぼちぼち…かな」 | ||
28 | あたしもひとかけらを口の中に放り込む。 …と、じゃりっという鈍い音とともに、 固さと冷たさが思いっきり歯に染みた。 | ||||
29 | …効きすぎだろ、うちの冷凍庫。 | ||||
30 | 曜子 | Youko | 「日本公演で大成功を納めた今が売り時だってのに、 いまいち煮え切らないわねぇ」 | ||
31 | かずさ | Kazusa | 「初回公演は大失敗だったろ。 追加公演でなんとか持ち直しただけで」 | ||
32 | 曜子 | Youko | 「終わりよければすべてよし。 …っていうか、最初の失敗があったからこそ、 追加公演の爆上げで興行的には大成功だったわね」 | ||
33 | かずさ | Kazusa | 「いちピアニストとしてはその評価はあまり嬉しくないな。 “弾いてみなきゃわからない”って言われてるみたいで」 | ||
34 | 曜子 | Youko | 「実際弾いてみなきゃわからないんだから しょうがないでしょ。悔しかったらもっと安定しなさい。 一日50時間でも100時間でも弾いて」 | ||
35 | かずさ | Kazusa | 「そんな練習環境を用意できるなら、 是非とも頼むよ社長」 | ||
36 | 曜子 | Youko | 「精神と時の部屋って知ってる? とりあえず理論だけは完成させたからあとは実験ね」 | ||
37 | こうして、いつも通りの会話をしていると、 母さんは、日本にいた頃と… | ||||
38 | いや、来日する前のここでの日々とも、 何ら変わったところがないように見える。 | ||||
39 | けれど… | ||||
40 | かずさ | Kazusa | 「ごめんな」 | ||
41 | 曜子 | Youko | 「そうね。 冷凍ミカンってのは、表面に薄い氷の膜が貼り付く程度で、 皮も中身も微妙な柔らかさが…」 | ||
42 | かずさ | Kazusa | 「あたしのワガママで、 ウィーンに戻らせてしまって…ごめんな」 | ||
43 | 曜子 | Youko | 「…ちゃんとボケに乗ってくれないと困るのよねぇ」 | ||
44 | あたしが日本から逃げ出した一週間後… | ||||
45 | 母さんも、日本での用事を済ませてウィーンに帰ってきた。 | ||||
46 | …なんて、本当は済ませてなんかいなかった。 | ||||
47 | ただ、あたしを守るために、追いかけてきてくれた。 今度こそ、本気で日本を捨ててくれた。 …自分の病気を省みず。 | ||||
48 | “日本で人生を終えたい”という、 ささやかな、けれど最後の希望をうち捨ててまで。 | ||||
49 | かずさ | Kazusa | 「あたし何でもする。好き嫌いしないし、 毎日見舞いに来るし、言いつけだって守る。 だから、だからさ…」 | ||
50 | 曜子 | Youko | 「何度言わせれば気が済むの? ならピアノを弾きなさい。 ぼちぼちとか言ってる暇ないわよ?」 | ||
51 | かずさ | Kazusa | 「母さん…」 | ||
52 | 曜子 | Youko | 「それに、戻ってきたこと後悔してない。 愛する娘のいる場所が、私の故郷。 今なら、そう思えるから…」 | ||
53 | かずさ | Kazusa | 「っ…」 | ||
54 | ウィーンで最初にその事実を知ったとき、 絶望や焦燥や悲嘆が混ざりあう感情の片隅で、 その事実に今さら納得してしまう自分がいた。 | ||||
55 | 母さんが、なぜ日本公演にこだわったのか。 どうして、あたしをあの地で芽吹かせようとしたのか。 | ||||
56 | 本当に、次々と辻褄が合ってしまい、 自分が嫌になった。 | ||||
57 | そんな母親の重い決意を、 子供みたいな失恋で踏みにじってしまった 馬鹿娘に愛想が尽きた。 | ||||
58 | あたしのワガママが。 無理に、母さんをウィーンに連れ戻したことが “その時”を、早めてしまっているのかもしれないことが。 | ||||
59 | かずさ | Kazusa | 「そ、そうだ。 あたしさっき検査受けてきたんだよ、この病院で」 | ||
60 | 曜子 | Youko | 「で、ちゃんとできてた? 私の初孫」 | ||
61 | かずさ | Kazusa | 「ついさっき泣かせるようなこと言っといて、 どうしてシリアスが続かないんだよあんたは」 | ||
62 | 曜子 | Youko | 「あなたにとっては 人生を左右するほどのことじゃなかったっけ?」 | ||
63 | かずさ | Kazusa | 「少なくとも今はそんな話じゃない。 真面目に聞いてくれ」 | ||
64 | ………できて、なかったよ。 | ||||
65 | だから、もうその話はしたくないんだよ。 | ||||
66 | さらっと、流させてくれよ… | ||||
67 | かずさ | Kazusa | 「適合検査だよ。 骨髄移植の」 | ||
68 | 曜子 | Youko | 「………」 | "........."
| |
69 | だからあたしは、 今の自分にできることを一生懸命やるだけ。 | ||||
70 | 親孝行っていう、 たったひとつの、できることを。 | ||||
71 | かずさ | Kazusa | 「結果が出るのもう少し先なんだって。 それまで待ってて欲しいんだ」 | ||
72 | かずさ | Kazusa | 「もし適合したら…いや、きっと大丈夫だよ。 そしたら、母さんのこと、あたしが…」 | ||
73 | 曜子 | Youko | 「………許さないわよ」 | ||
74 | かずさ | Kazusa | 「え…」 | ||
75 | あたしが頑張ると、 大抵、間違った方向に行ってしまうってことは、 経験上、わかってはいたけれど… | ||||
76 | 曜子 | Youko | 「この間から、私の病気について 色々調べてるみたいだったけど、 そんな馬鹿げたこと考えてたのね」 | ||
77 | かずさ | Kazusa | 「馬鹿げたってなんだよ!」 | ||
78 | 曜子 | Youko | 「言葉通りの意味よ。 馬鹿なことしてんじゃないわよ。 馬鹿のくせに」 | ||
79 | それでも、今度ばかりは 自分が間違っていない自信があっただけに、 母さんのその言葉は、少なからずショックだった。 | ||||
80 | かずさ | Kazusa | 「馬鹿なのはそっちだろ! 骨髄移植したらかなりの確率で治るんだろ? それに親族の方が適合する確率高いんだろ?」 | ||
81 | 曜子 | Youko | 「だからなんだって言うのよ」 | ||
82 | かずさ | Kazusa | 「だったら、検査しない方がおかしいだろ? あたしが適合したら、母さんは…」 | ||
83 | 曜子 | Youko | 「もし適合しても、私が絶対に認めない」 | ||
84 | かずさ | Kazusa | 「なんで!?」 | ||
85 | 曜子 | Youko | 「どうしても」 | ||
86 | かずさ | Kazusa | 「そんなの理由にならないだろ!」 | ||
87 | 曜子 | Youko | 「病室で騒ぐのはやめなさい。 追い出されるわよ」 | ||
88 | かずさ | Kazusa | 「騒ぐに決まってるだろ! 目の前に可能性があるってのに、どうしてそんな…」 | ||
89 | 曜子 | Youko | 「あなたに、傷をつけさせたりなんかしない…」 | ||
90 | かずさ | Kazusa | 「え…」 | ||
91 | そう… | ||||
92 | いつも通りの会話をしているときに限っては、 母さんは、何ら変わったところがないように見える。 | ||||
93 | 曜子 | Youko | 「ピアニスト冬馬かずさの身体に、才能に、神経に… 傷を残すような選択は、この私が絶対に許さない」 | ||
94 | かずさ | Kazusa | 「何言ってるんだよ…? そんなの、大丈夫に決まって…」 | ||
95 | 曜子 | Youko | 「ほんの少しのリスクも許さない。 絶対に、あってはならない…」 | ||
96 | かずさ | Kazusa | 「か、母さん…」 | ||
97 | けれどそれは、あくまで『見える』だけで… | ||||
98 | 曜子 | Youko | 「私の、たった一つの希望を奪う権利なんて誰にもない」 | ||
99 | かずさ | Kazusa | 「けどあたしは…っ」 | ||
100 | 曜子 | Youko | 「それがたとえ、あなたが望んだことだとしても、 絶対に、許さない」 | ||
101 | かずさ | Kazusa | 「………」 | "........."
| |
102 | 曜子 | Youko | 「許さないわよ、かずさ…」 | ||
103 | 今の母さんは、あたしを愛しすぎている。 | ||||
104 | あたしに自分の後継者としての姿を思い描いている。 | ||||
105 | もう、自分がいなくなったあとの世界のことを、 思い描いてしまっている… | ||||
106 | ……… | .........
| |||
107 | かずさ | Kazusa | 「あ…」 | ||
108 | 病院を出ると、 虚ろなままの空が、あたしを出迎える。 | ||||
109 | 昼間よりも、ますます行き場をなくしたような、 あたしの心を映し出す、夢の終わりの空。 | ||||
110 | けれど、夢から覚めても、現実は続く。 | ||||
111 | 一生分の望みを叶えてしまったせいで… 天国を垣間見てしまったせいで、 今までよりも、過酷な現実が。 |
Script Chart[edit]
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Introductory Chapter | ||||||
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1001 | 1008 | 1009 | 1010 | 1011 | 1012 | 1013 |
1002 | 1008_020 | 1009_020 | 1010_020 | 1011_020 | 1012_020 | |
1003 | 1008_030 | 1009_030 | 1010_030 | 1011_030 | 1012_030 | |
1004 | 1008_040 | 1010_040 | 1012_030_2 | |||
1005 | 1008_050 | 1010_050 | ||||
1006 | 1010_060 | |||||
1006_2 | 1010_070 | |||||
1007 |
Closing Chapter | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Common | Setsuna | Koharu | Chiaki | Mari | ||||||
2001 | 2011 | 2020 | 2027 | 2301 | 2309 | 2316 | 2401 | 2408 | 2501 | 2510 |
2002 | 2012 | 2021 | 2028 | 2302 | 2310 | 2317 | 2402 | 2409 | 2502 | 2511 |
2003 | 2013 | 2022 | 2029 | 2303 | 2311 | 2318 | 2403 | 2410 | 2503 | 2512 |
2004 | 2014 | 2023 | 2030 | 2304 | 2312 | 2319 | 2404 | 2411 | 2504 | 2513 |
2005 | 2015 | 2024 | 2031 | 2305 | 2313 | 2320 | 2405 | 2412 | 2505 | 2514 |
2006 | 2016 | 2025 | 2032 | 2306 | 2314 | 2321 | 2406 | 2413 | 2506 | 2515 |
2007 | 2017 | 2026 | 2033 | 2307 | 2315 | 2322 | 2407 | 2507 | 2516 | |
2008 | 2018 | 2308 | 2508 | 2517 | ||||||
2009 | 2019 | 2509 | ||||||||
2010 | ||||||||||
Setsuna | Koharu | Chiaki | Mari | |||||||
2031_2 | 2312_2 | 2401_2 | 2504_2 | 2511_2 | ||||||
2031_3 | 2313_2 | 2402_2 | 2507_2 | 2513_2 | ||||||
2031_4 | 2313_3 | 2402_3 |
Coda | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Common | Kazusa (True) | Setsuna (True) | Kazusa (Normal) | ||||||
3001 | 3008 | 3014_2 | 3020 | 3101 | 3107 | 3201 | 3207 | 3901 | 3907 |
3002 | 3009 | 3014_3 | 3021 | 3102 | 3108 | 3202 | 3208 | 3902 | 3908 |
3003 | 3010 | 3015 | 3022 | 3103 | 3109 | 3203 | 3209 | 3903 | 3909 |
3004 | 3011 | 3016 | 3023 | 3104 | 3110 | 3204 | 3210 | 3904 | |
3005 | 3012 | 3017 | 3024 | 3105 | 3111 | 3205 | 3211 | 3905 | |
3006 | 3013 | 3018 | 3106 | 3206 | 3906 | ||||
3007 | 3014 | 3019 | |||||||
Common | Setsuna (True) | Kazusa (Normal) | |||||||
3001_2 | 3210_2 | 3901_2 | 3906_2 | ||||||
3015_2 | 3902_2 | 3907_2 | |||||||
3902_3 | 3907_3 | ||||||||
3904_2 |
Mini After Story and Extra Episode | |||
---|---|---|---|
The Path Back to Happiness | The Path Forward to Happiness | Dear Mortal Enemy | |
6001 | 6101 | 4000 | 4005 |
6002 | 6102 | 4001 | 4006 |
6003 | 6103 | 4002 | 4007 |
6004 | 6104 | 4003 | 4008 |
6005 | 4004 | 4009 |
Novels | |||||
---|---|---|---|---|---|
The Snow Melts, And Until The Snow Falls | The Idol Who Forgot How to Sing | Twinkle Snow ~Reverie~ | After the Festival ~Setsuna's Thirty Minutes~ | His God, Her Savior | |
5000 | 5100 | 5200 | 5205 | 5300 | 5400 |
5001 | 5101 | 5201 | 5206 | 5301 | 5401 |
5002 | 5102 | 5202 | 5207 | 5302 | |
5003 | 5103 | 5203 | 5208 | 5303 | |
5004 | 5104 | 5204 | 5209 |
Short Stories | |||
---|---|---|---|
Princess Setsuna's Distress and Her Minister's Sinister Plan | Koharu Climate After the Passing of the Typhoon | This isn't the Season for White Album | Todokanai Koi, Todoita |
7000 | 7100 | 7200 | 7300 |