Editing White Album 2/Script/4009 (section)

== Text ==
{{WA2ScriptTable}}

{{WA2ScriptLine
|1||
|夏は、終わった。<br>朝と夕に、新しい季節を感じさせる涼風が吹く。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|2||
|けれどまだ、秋は始まらない。<br>昼間に、新しい季節を否定する陽射しが降り注ぐ。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|3|孝宏|Takahiro
|「姉ちゃん？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|4||
|そんな中途半端に寒暖を繰り返す日々は、<br>それでも少しずつ、街に溜まった熱を取り去っていく。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|5||
|そう…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|6||
|わたしが冬の頃から抱いていた熱も、少しずつ。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|7|孝宏|Takahiro
|「開けるぞ？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|8|雪菜|Setsuna
|「…なによ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|9|孝宏|Takahiro
|「なんだよ、いるなら返事しろよ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|10|雪菜|Setsuna
|「いるに決まってるじゃない。<br>窓から脱走でもしてない限り」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|11|孝宏|Takahiro
|「人聞きの悪いこと言うなよ。<br>誰も監禁なんかしてないぞ？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|12||
|『されてるのも同じだよ』
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|13||
|そんな憎まれ口は、<br>この一月でもう飽きるほど口にした。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|14|雪菜|Setsuna
|「それで、なに？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|15|孝宏|Takahiro
|「晩飯、姉ちゃんの分、冷蔵庫に入れてあるから。<br>少しでも腹減ったら食べろって母さんが。<br>
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|16|孝宏|Takahiro
|あ、それとさっきニュースでさ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|17|雪菜|Setsuna
|「いらない。<br>放っておいて」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|18|孝宏|Takahiro
|「いつまでもイジけてんなよ…<br>みんな姉ちゃんのこと心配してんだよ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|19|雪菜|Setsuna
|「………」
|"........."
|}}

{{WA2ScriptLine
|20||
|先月の、あの日以来、わたしは封じ込められた。<br>…家族や周囲の優しさという、檻の中に。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|21||
|夏休みは、酷い体調を引きずったまま、<br>一歩も外に出られなかった。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|22||
|夏休みが明けて、仕事には復帰したものの、<br>しばらくは無理せず、今も残業なしで定時に帰宅してる。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|23||
|上司は、大した説明もなく納得してくれている。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|24||
|…それほどまでに、その頃のわたしの様子は<br>ただごとじゃなかったのかもしれない。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|25|孝宏|Takahiro
|「今日は薬飲んだ？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|26|雪菜|Setsuna
|「…大丈夫だよ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|27|孝宏|Takahiro
|「飲んだから大丈夫ってこと？<br>それとも、飲まなくても大丈夫だって言ってる？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|28|雪菜|Setsuna
|「会社にも普通に行ってるじゃない。<br>全然平気だよ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|29|孝宏|Takahiro
|「でも、週末になると今みたいにガス欠起こすじゃん」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|30|雪菜|Setsuna
|「それは…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|31|雪菜|Setsuna
|もういい。<br>お姉ちゃん寝るから早く出てって」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|32|孝宏|Takahiro
|「まだ九時なんだけど…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|33|雪菜|Setsuna
|「体調が心配だって言うから早く寝るんじゃない。<br>もう、どっちなのよ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|34|孝宏|Takahiro
|「…わかったよ、ごめん。<br>じゃあ、おやすみ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|35|雪菜|Setsuna
|「…っ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|36||
|実際、今のわたしの状態は本当に大したことはない。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|37||
|一時期の急激な体調不良は、<br>夏休み以降、なりを潜めた。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|38||
|朝はまだ少し辛いけれど、<br>ちゃんと出かける時間までには起きられる。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|39||
|変な汗もかかなくなったし、電車も普通に乗れるし、<br>仕事にも大きな支障は出ていない。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|40||
|だからもう、全く問題ない。何もかも元通り。<br>まずは今までの平日を取り戻し、<br>すぐに今までの週末も取り戻す。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|41||
|…けれど、そんなわたしの言い分は、<br>家族には通用しなかった。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|42||
|お父さんは、わたしの週末の外出に反対するようになった。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|43||
|以前と同じ生活に戻れば、同じ症状を繰り返すだけだと。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|44||
|今は無理をしていないから、<br>ストレスになる要因がないから、<br>治ったと勘違いしているだけだと。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|45||
|つまりそれって…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|46||
|お父さんは、わたしのストレスの要因が、<br>週末にあると思っているってこと。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|47||
|………
|.........
|}}

{{WA2ScriptLine
|48||
|孝宏は、今みたいに妙にわたしを気づかうようになった。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|49||
|そりゃ、今までも優しい弟ではあったけれど、<br>今はまるで腫れ物に触るみたいにわたしに接する。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|50||
|いつもの口答えがあからさまに減った。<br>喧嘩なんて、小さいのも大きいのもしなくなった。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|51||
|…だから、竹を割ったような仲直りも減った。<br>なんだか、最近はいつも微妙な雰囲気で会話が終わる。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|52||
|そして、一番辛いのが、お母さんの反応で…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|53||
|わたしの行動を強く否定しない。<br>必要以上に気づかったりもしない。<br>ほんの少し遠くから見つめてくれている。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|54||
|けれど、一度見てしまった…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|55||
|真夜中に喉が渇いて目が覚め、階下に降りたとき、<br>真っ暗な台所で、力なく静かに涙するお母さんの姿を。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|56|雪菜|Setsuna
|「んっ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|57||
|そんなことがあってから、<br>階下に降りるのも億劫になって、<br>週末はほとんど部屋から出ることはなく…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|58||
|だから、たった一駅先の南末次にすら行けずにいる。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|59||
|わざと聞こえるように大きめに足音を立て、<br>今日初めて下りてきたリビングには、<br>もう、誰もいなかった。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|60||
|冷蔵庫を開けると、孝宏の言う通り、<br>夕食のおかずが一人分、ラップにくるまれて<br>真ん中の棚を独占している。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|61||
|けれどわたしは、そっちには触れることなく、<br>九月になってもまだ現役な麦茶のボトルを手に取る。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|62|雪菜|Setsuna
|「んっ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|63||
|テーブルに座り、コップに注いだ麦茶を一気にあおる。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|64||
|冷たいお茶が、喉から胃にかけて染み込み、<br>少しだけお腹に痛みを感じる。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|65||
|そのまま力なく天井を見上げると、<br>誰もいない静かなリビングが、<br>わたしをあざ笑っているかのように思えてしまう。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|66||
|『ほうら、今なら誰も見ていないよ？』
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|67||
|『堂々と出て行けるよ？』
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|68||
|『彼のもとに、行けるんだよ？』
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|69|雪菜|Setsuna
|「っ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|70||
|そうやって、わたしの欺瞞を、突きつける。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|71||
|家族がどうこうなんて、言い訳に過ぎないって。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|72||
|わたしの足が動かないのは、わたしの意志なんだって。<br>ただ、わたし一人が怖がっているだけなんだって…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|73||
|夏休みが終わって。<br>夏が終わって。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|74||
|それでもわたしは、<br>春希くんに追い返されたあの日から、<br>一歩も前に進めていない。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|75||
|誰のせいでもなく、自分の意志で。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|76||
|家族が反対してくれるのをいいことに、<br>家という檻…ではなく籠の中に、保護されている。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|77||
|一度離してしまった彼との距離は、<br>ふたたび詰めるには、<br>とても息苦しく感じるようになった。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|78||
|今すぐ詰めてしまうと、<br>彼に疎まれてしまうかもしれない。<br>わたしが彼を疎んじてしまうかもしれない。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|79||
|彼をさらに深く傷つけてしまうかもしれない。<br>わたしがふたたび傷ついてしまうかもしれない。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|80||
|けれど、このまま離れてしまうと、<br>彼に忘れ去られてしまうかもしれない。<br>彼を忘れ去ってしまうかもしれない。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|81||
|彼が、今よりもっと壊れてしまうかもしれない。<br>逆に、離れたことによって安らいでしまうかもしれない。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|82||
|わたしが、彼を失った喪失感に耐えられないかもしれない。<br>…耐えきって、何事もなかったかのように<br>今までと違う人生を歩むかもしれない。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|83||
|…何もかもが怖い、怖すぎる。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|84||
|わたしは彼を愛してる。<br>そしてわたしは、彼の重荷になっている。<br>それは、どちらも紛れもない本当のこと。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|85||
|じゃあ彼は、わたしを愛してくれているのかな？<br>そして彼は、わたしの重荷になっているのかな？
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|86||
|…わたしは、彼を信じ切れているのかな？
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|87||
|“彼女”みたいに、<br>盲目的に付き従うことができるのかな…？
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|88||
|…こんな、猜疑心の強い女の子、<br>彼に相応しくないのかな。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|89||
|彼女なら、どうなのかな？
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|90||
|もしかして、わたしが悩んでいることなんか、<br>彼女にとっては何の障害にもならないのかな。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|91||
|彼のために何ができるかじゃなくて、<br>彼のために何かをしたいという意志で、<br>わたしは彼女の足元にも及ばないんじゃないかな…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|92||
|ねぇ、どうなの？<br>教えてよ、かず…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|93|ナレーション|
|「冬馬かずさ、新たな世界への挑戦」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|94|雪菜|Setsuna
|「っ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|95|ナレーション|
|「今年の冬に<br>日本で旋風を巻き起こしたあの冬馬かずさが、<br>とうとうヨーロッパにて本格的に活動を再開」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|96|ナレーション|
|「その第一弾は、<br>フランツ・デュプレ・オーケストラとの協演」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|97|ナレーション|
|「ＣＳ東亜では、このコンサートの模様を<br>独占生中継でお送りいたします！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|98|雪菜|Setsuna
|「かず、さ…？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|99||
|『それとさっきニュースでさ…』
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|100||
|………
|.........
|}}

{{WA2ScriptLine
|101|美代子|Miyoko
|「お電話ありがとうございます。<br>こちらは、株式会社冬馬曜子オフィス日本支部です」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|102|美代子|Miyoko
|「大変申し訳ありませんが、<br>現在、当オフィスは業務を休止しております」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|103|美代子|Miyoko
|「お急ぎのご用がありましたら、<br>冬馬曜子オフィス欧州本部に連絡をお願いします。<br>電話番号は…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|104||
|………
|.........
|}}

{{WA2ScriptLine
|105|かずさ|Kazusa
|「どうしちゃったんだよ…美代子さん」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|106||
|もう、三か月も繋がらない。<br>もしかして日本支部、閉鎖してしまったんだろうか。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|107||
|母さんも、相変わらず面会ができない状態のまま、<br>コンサートまで、あと一週間を切った。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|108||
|けれど今、あたしの声は、誰にも届かない…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|109|かずさ|Kazusa
|「はぁ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|110||
|ベッドに身体を横たえると、<br>気持ち悪い疲れが、じわりと全身に染み込む。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|111||
|オケの全体練習は日々激しさを増し、<br>眠る暇もないほど時間に忙殺されている。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|112||
|…あたしと、指揮者と、<br>あと、弦だけは。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|113||
|金管は相変わらずカードに興じ、<br>木管はもう少し近代的に、<br>日本の携帯ゲーム機で通信対戦を楽しみ始めた。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|114||
|けど、誰も注意しないし、誰も怒らない。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|115||
|…なんて、当たり前だ。<br>これで五回目の全体練習なのに、彼らの出番は<br>今までの分を全部合わせても一時間にも満たない。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|116||
|本来なら、彼らの方が怒って来なくなっても当然なのに、<br>あたしの途切れ途切れのピアノと、粘着指揮者の罵倒を<br>さらりと聞き流しつつ日々無駄な時間を消費している。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|117||
|本当に大丈夫なのか？　あのオケ？
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|118||
|…いや、大丈夫じゃないのは、あたしの方か。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|119|かずさ|Kazusa
|「何が駄目なんだよ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|120||
|どう考えても難しい曲じゃない。<br>譜面通りという意味では、<br>未だに一度もミスなんかしてない。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|121||
|…けれど、母さんが生涯で一番弾いた曲。<br>世界各地で、喝采を浴びた曲。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|122||
|つまり、そこにはきっと、<br>譜面に現れない深いニュアンスが隠れている。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|123||
|あの馬鹿指揮者は、それを教えてくれない。<br>ひたすらリテイクを繰り返し、<br>クリアできるまで、決して前に進ませない。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|124||
|もしかして…<br>『自分に流れている血に聞け』<br>とでも言うつもりなんだろうか。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|125||
|全体練習は、あと１回…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|126||
|ここまで準備が進んでいないとなれば、<br>本来なら中止を検討するタイミングだった。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|127||
|それでもこのコンサートは中止にならないし、<br>最終的に誰も損はしないらしい。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|128||
|なぜなら先日、このコンサートに冠スポンサーが付いた。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|129||
|それも、現地の楽器メーカーや雑誌社とかじゃなく、<br>木管たちが今遊んでいるゲーム機を作っている<br>日本の家電メーカーだった。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|130||
|…そう、このコンサートはいつの間にか、<br>あの指揮者の言う通り、<br>『冬馬かずさちゃんのお遊戯発表会』に成り下がった。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|131||
|そして、そんなふうに黒字が保証された途端、<br>奴の態度は豹変した。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|132||
|けれどそれは、あたしに気を使ったり、<br>練習の手を抜くようになったという方向性じゃなくて…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|133|デュプレ|
|「素晴らしい！　さすが日本人だ！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|134|デュプレ|
|「こんな下手なピアニストのために<br>大金をドブに捨てる企業があるとは…<br>私も日本人に生まれたかったね、実に残念だ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|135|デュプレ|
|「彼らはドイツ人のように真面目だと聞いたが、<br>ドイツ人のように倹約家ではないらしいな」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|136|デュプレ|
|「ああいいともいいとも、<br>どれだけでも時間を掛けたまえ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|137|デュプレ|
|「どうせコンサートが延期したとしても、<br>君の優秀なスポンサーが全て何とかしてくれるさ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|138|かずさ|Kazusa
|「………っ！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|139||
|…こんなふうに、<br>あたしを罵倒する方向性にバリエーションが増えただけ。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|140||
|本当にさ…<br>なんで一時期とは言え、あんな奴と…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|141||
|あんた男の趣味悪いよ…母さん。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|142||
|『なぁ、母さん…<br>あたしのピアノって、やっぱりお遊戯なのかな？』
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|143||
|『な～んだ、わかってんじゃない。<br>…あなた自身、自分のピアノに納得できてないってこと』
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|144||
|『………っ』
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|145||
|『ま～そうね。<br>確かに今のあなたのピアノでお金を払うのは<br>日本人くらいね』
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|146||
|『パリに入ってからさ、<br>ピアノとうまく会話できないんだ…』
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|147||
|『普通しないわよそんなキモいこと』
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|148||
|『たとえだろたとえ！<br>…そりゃ、あたしがキモいのは認めるけどさ』
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|149||
|『…で、あなたのピアノちゃんはなんて言ってるの？』
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|150||
|『本物のオケの音に跳ね返される。<br>…まだヴァイオリンしか相手にしてないのに』
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|151||
|『原因に心当たりは？』
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|152||
|『決まってんだろそんなの！<br>…あんたが、いないからだ』
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|153||
|『かずさ…』
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|154||
|『どうしてあたしを護ってくれないんだよ。<br>どうしてあたしにこんな試練を与えるんだよ…』
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|155||
|『…ごめん』
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|156||
|『謝らなくていい。<br>ただ、側にいればいいんだよ…<br>ずっと、あたしを護ってくれればいいんだよ…っ』
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|157||
|『………ごめんね』
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|158||
|………
|.........
|}}

{{WA2ScriptLine
|159|かずさ|Kazusa
|「………っ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|160||
|そうさ…<br>あたしは、キモいんだ。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|161||
|こんなふうに、想像の中でしか人と触れ合えないんだ。<br>好きな人と、話せないんだ…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|162||
|だって、あたしが好きになった人は、<br>みんな、あたしから離れていってしまうから…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|163||
|結局、今あたしの側に残ってくれてるのは、<br>師匠であるフリューゲルの爺さんだけ。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|164||
|けれど、今は話せない。<br>だってあの人には、<br>未だに母さんの状態さえ話せていないのだから。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|165||
|一番の愛弟子が、自分より先に逝くかもって知ったら、<br>長生きする気力を失ってしまうかもしれない。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|166|かずさ|Kazusa
|「ほんっと…友達いないな、あたし」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|167||
|あたしは、今まで世界を拒絶してきた。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|168||
|母さんさえ、ほんの少しの理解者さえ、そして…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|169||
|そんな、とても小さな世界で、<br>ひっそり生きていけるって思ってた。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|170||
|…今になって、<br>そんな自分勝手な願いを押し通そうとした<br>ツケを払わされてるのかな？
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|171||
|二人じゃなくて、三人で…<br>そして、みんなでいようって…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|172||
|そう言ってくれた、親友になろうとしてくれた、<br>“彼女”を裏切った罰が、<br>今になって当たってるのかな？
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|173||
|ねぇ…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|174||
|誰か、聞いてよ。<br>あたしの話を。<br>あたしの、ピアノを。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|175||
|あたしは大丈夫だって、<br>絶対に成功するって、母さんは元気になるって、<br>嘘でもいいから、言ってよ…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|176|かずさ|Kazusa
|「やめろ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|177||
|指が、勝手に動く。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|178||
|とっくにメモリから消した、<br>記憶にしか残っていない番号を押そうとする。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|179||
|でも…あいつはダメだ。<br>だって、誓ったんだ。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|180|かずさ|Kazusa
|「やめろよ…っ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|181||
|もう、二度と会わないって。<br>二度と、話さないって。<br>二度と…愛さないって。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|182||
|あたしは、あたしは…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|183||
|………
|.........
|}}

{{WA2ScriptLine
|184|雪菜|Setsuna
|「冬馬曜子オフィス欧州本部…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|185||
|メモ帳に書き留められた、<br>国番号も含めた長い電話番号。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|186||
|以前、何かの時のためにって登録しておいた<br>『冬馬曜子オフィス東京支部』の留守番電話が<br>ずっと機械的に流している番号。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|187||
|かずさ、頑張ってる…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|188||
|わたしなんかより、ずっと、ずっと頑張ってる…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|189||
|世界に、大きく羽ばたこうとしてる。<br>遠いところの人間になろうとしてる。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|190||
|パリの大舞台に立って、<br>世界的なオーケストラと協演を果たそうとしてる。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|191||
|わたしが地元のライブハウスの舞台にすら立てない<br>ちょうどその時に…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|192||
|…なんて、比べるのもおこがましいけど、<br>けれどそれは、確かに同じ時間での出来事なんだ。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|193|雪菜|Setsuna
|「っ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|194||
|…だからってわたしは、<br>一体何をしようとしてるんだろう？
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|195||
|なぜ、かずさと連絡を取ろうとしているんだろう？<br>彼女と話して、どうしようっていうんだろう？
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|196||
|一世一代の大舞台を控えたかずさに、<br>なんて爆弾を放り込もうとしてるんだろう？
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|197||
|わからない…<br>自分でも、なんでそんなことをしようとしてるのか、<br>よくわからない。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|198|雪菜|Setsuna
|「………」
|"........."
|}}

{{WA2ScriptLine
|199||
|けれど…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|200||
|かずさがこうして健在だってわかった今。<br>努力も、成果も出しているってわかった今。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|201||
|春希くんが、かずさと別れてからずっと苦しんでいる今。<br>日本にいる誰にも、彼を救えないかもしれない今。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|202||
|そしてわたしが、折れてしまいそうな今。<br>彼を、支えきれなくなってしまいそうな、今…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|203||
|もし、わたしたち三人が、<br>お互いの、今の境遇を知ったなら…？
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|204||
|今の彼女は、彼のことをどう思ってるんだろう…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|205||
|努力して、成功して、忙しくて、<br>そんなこと考えてる余裕もない？
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|206||
|そして、今の彼女にとっては、何が幸せなのかな…？
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|207||
|子供の頃からの目標だった、<br>お母さんの後を継ぐことができて、<br>そこにもう、他の幸せが入り込む余地はない？
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|208||
|ううん、本当はわかってる。<br>確信がある。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|209||
|どれだけ有名になっても、<br>世界中の人たちに認められ、愛されたとしても…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|210||
|かずさが本当に愛して欲しいと願っている人は、<br>一握りもいないんじゃないかって。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|211||
|そして、その人たちに愛されることこそが、<br>かずさの、一番の幸せなんじゃないかって。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|212||
|じゃあ、じゃあさ、<br>やっぱり、わたしさえいなければ…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|213||
|わたしが横恋慕しなかったら。<br>わたしが三人の運命の糸を弄んだりしなかったら…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|214||
|春希くんは、壊れたりしなかったのかな？<br>…かずさと、幸せになってたのかな？
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|215||
|そのとき、わたしはどうしてたのかな？
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|216||
|ただ、彼がいない世界で、普通に暮らしてたのかな？
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|217||
|今と同じ家族に囲まれ、今とは少し違う友達に囲まれ、<br>それなりに、幸せだったのかな？
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|218||
|そして春希くんとかずさは、<br>今より幸せになっていたのかな？
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|219||
|春希くんが頼もしい春希くんのままで、<br>かずさが、ただ可愛いかずさのままで、<br>当たり前のように、二人のままで。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|220||
|わたしさえいなければ、<br>何もかも、うまく…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|221|雪菜|Setsuna
|「え…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|222||
|そして、最後の番号をプッシュしようとした直前…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|223||
|机の上の携帯が、先に着信を知らせた。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|224||
|………
|.........
|}}

{{WA2ScriptLine
|225|かずさ|Kazusa
|「どこにかけてんだよ…あたし」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|226||
|絶対に許されない番号。<br>日本で二番目に、かけたらいけない番号。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|227||
|雪菜の、ところ。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|228||
|春希と、日本で幸せに暮らしている…<br>社会の中で、たくさんの人と触れあって生きている。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|229||
|そんな、あたしとは正反対の、憧れのひとのところ。<br>親友だった…初めて、そうなってくれたひと。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|230||
|なのに、あたしがぶち壊した。裏切った。<br>しかも、二度も。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|231||
|どれだけ罵倒されても何も言えない。<br>こっちから連絡を取るなんて、正気の沙汰じゃない。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|232||
|けど、それでも…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|233|かずさ|Kazusa
|「雪菜…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|234||
|声、聞きたい。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|235||
|六年前の空気に触れたい。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|236||
|少しだけでいい…<br>元気を、幸せを分けて欲しい。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|237||
|あいつとの、のろけ話でもいい。<br>………うん、それでもいいんだ…っ。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|238|かずさ|Kazusa
|「………」
|"........."
|}}

{{WA2ScriptLine
|239||
|でも、やっぱり無理だった。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|240||
|ほら、こんなに鳴らしてるのに出ない。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|241||
|きっと彼女は、<br>こんな忌むべき番号なんてアドレス帳から消している。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|242||
|そして、もし着信画面が<br>あたしの名前を表示していたとしても…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|243||
|いや、だからこそ、出てくれるはずなんか…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|244|かずさ|Kazusa
|「あ…っ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|245||
|………
|.........
|}}

{{WA2ScriptLine
|246|雪菜|Setsuna
|「…久しぶり、かずさ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|247|かずさ|Kazusa
|「雪菜…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|248||
|なんて、偶然…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|249|雪菜|Setsuna
|「変えてなかったんだね…番号」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|250|かずさ|Kazusa
|「雪菜も…<br>あたしのアドレス、消してなかったんだ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|251|雪菜|Setsuna
|「消すわけ、ないよ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|252|かずさ|Kazusa
|「…ありがとう」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|253||
|ううん、違う。<br>偶然なのはタイミングだけ。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|254||
|わたしたちがこうしてこの時期に言葉を交わすのは、<br>たぶん、必然…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|255|雪菜|Setsuna
|「本当に、久しぶりだね…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|256|かずさ|Kazusa
|「うん…六年、かな」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|257|雪菜|Setsuna
|「そっか…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|258||
|そういえば、この前の冬…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|259||
|ストラスブールでも、日本でも、<br>わたしたちは、一度も…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|260|雪菜|Setsuna
|「あ、でもコンサートは見たよ。追加公演の方。<br>かずさ、すごかったよ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|261|かずさ|Kazusa
|「………あたしも、ライブ、見たんだ。<br>雪菜、輝いてた」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|262|雪菜|Setsuna
|「ありがとう…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|263||
|でも今は、全然駄目なんだよ。<br>ライブも、出られないんだよ。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|264||
|輝くことなんか、もう、ないんだよ…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|265|雪菜|Setsuna
|「あ、そういえば、かずさ、今パリだよね？<br>だとすると、夕方の…えっと、五時くらい？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|266|かずさ|Kazusa
|「あ、ごめん、そっち夜中だっけ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|267|雪菜|Setsuna
|「ううん大丈夫。<br>今日、土曜だもん。<br>明日お休みだよ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|268|かずさ|Kazusa
|「そっか、そんならよかった…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|269|雪菜|Setsuna
|「そんなことよりもパリだよ！　コンサートだよ！<br>大成功だねかずさ！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|270||
|自分の浮き立つ声が、あからさまに滑ってるのがわかる。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|271||
|駄目だ、こんなの違う。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|272||
|これじゃ、ますます距離が離れてしまう。<br>心が、遠ざかってしまう。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|273||
|こんなんじゃ、話せない。<br>今の春希くんのこと、今のわたしのこと、話せないよ…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|274||
|………
|.........
|}}

{{WA2ScriptLine
|275|かずさ|Kazusa
|「成功なんて…<br>だいたい、コンサートは来週だ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|276||
|違うんだよ、雪菜。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|277||
|今のあたし、全然駄目なんだよ。<br>何もかも失ってしまいそうなんだよ。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|278||
|最後の一葉が、散ってしまいそうなんだよ。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|279|雪菜|Setsuna
|「だって、すっごい有名なオーケストラとの<br>協演なんでしょ？<br>そんなところが組んでくれただけで、もう成功じゃない」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|280|かずさ|Kazusa
|「相手が有名だからこそ、<br>失敗したらもう二度と相手にしてくれなくなるんだぞ。<br>こっちの客のシビアさ、知らないだろ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|281|雪菜|Setsuna
|「それでも大丈夫！<br>できるよ、かずさなら…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|282|かずさ|Kazusa
|「っ…<br>その言葉、軽々しく言うな…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|283|雪菜|Setsuna
|「ぁ………ごめん。<br>わたし、調子に乗って…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|284||
|何やってんだよ…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|285||
|違うだろ。<br>謝るのは、こっちだろ…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|286|かずさ|Kazusa
|「い、いや…こっちこそごめん。<br>怒るところじゃないよな…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|287||
|自分が雪菜になにしたか、わかってるのかよ…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|288||
|謝らないと、先に進めないだろ。<br>話を、聞いてもらえないだろ。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|289||
|挨拶と近況をなぞるだけで終わってしまうだろ。<br>勇気を振り絞って話しかけた目的、果たせないだろ…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|290||
|なのに、どうして怒っちゃうんだよ、あたし。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|291|雪菜|Setsuna
|「ううん…わたしが、不注意だった。<br>言っちゃいけない言葉だった。<br>…本当に、ごめんなさい」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|292|かずさ|Kazusa
|「雪菜…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|293||
|それに…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|294||
|『大丈夫。できるよ、北原なら』
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|295||
|あたしだけじゃなくて、<br>どうして雪菜まで、覚えてるんだよ…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|296||
|………
|.........
|}}

{{WA2ScriptLine
|297|かずさ|Kazusa
|「えっと、それでさ…<br>雪菜の方は、元気でやってるか？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|298|雪菜|Setsuna
|「う、うん！　最近、だいぶ忙しくなってきたよ。<br>二年目にもなると、もう新人扱いじゃないからね」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|299|かずさ|Kazusa
|「レコード会社の広報だっけ？<br>凄いよな、かなりの狭き門なんだろ？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|300|雪菜|Setsuna
|「ううん、そんなこと…<br>
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|301|雪菜|Setsuna
|まぁ、確かに人手は少ないけどね、あはは」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|302||
|だから馬鹿、何言ってるのよ？<br>わたし、何のためにかずさに連絡取ろうとしたのよ。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|303||
|それなのに、嘘までついてどうするのよ。<br>誰が元気なのよ、平気だっていうのよ…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|304|かずさ|Kazusa
|「えと、それでさ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|305|雪菜|Setsuna
|「う、うん」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|306|かずさ|Kazusa
|「………」
|"........."
|}}

{{WA2ScriptLine
|307|雪菜|Setsuna
|「………」
|"........."
|}}

{{WA2ScriptLine
|308||
|そして、話を広げさえしないでどうするのよ。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|309||
|かずさが聞きたいこと、わかってるのに、<br>嘘ついて、秘密にして…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|310||
|春希くんのこと、どうして口に出さないのよ。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|311|かずさ|Kazusa
|「あ、あのさ、雪菜」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|312|雪菜|Setsuna
|「うん…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|313|かずさ|Kazusa
|「………」
|"........."
|}}

{{WA2ScriptLine
|314|雪菜|Setsuna
|「か、かず…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|315|かずさ|Kazusa
|「ごめん…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|316|雪菜|Setsuna
|「え…っ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|317|かずさ|Kazusa
|「あたし、お前に電話できる資格なんかないのに。<br>なのに、こんな厚かましい真似…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|318|雪菜|Setsuna
|「そんなことない！<br>わたし、かずさに謝られることされた覚えなんかないよ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|319|かずさ|Kazusa
|「雪菜…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|320|雪菜|Setsuna
|「何も、ないんだよ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|321||
|まただ…<br>また、やっちゃった。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|322||
|わたしがかずさの謝罪を止めたのは、<br>それが間違っているっていう信念からじゃない。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|323||
|ただ、怖かったから。<br>謝られたら、負けるから。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|324||
|今の春希くんのこと、<br>話さない訳にはいかなくなるから…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|325||
|彼のことを話すために、<br>かずさと連絡を取ろうとしてたのに。<br>…最初から、負けるつもり、だったのに。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|326||
|なのに、足がすくむ。<br>恐怖で思考が停止する。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|327||
|わたしにとって、<br>春希くんにとって、<br>そして、かずさにとって…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|328||
|もしかしたら、<br>新しい幸せを探す道筋になるのかもしれないのに。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|329||
|それなのに、<br>わたしだけに、破滅の道が開かれるのを恐れてる。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|330||
|相変わらず、酷い自己中だね、わたし…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|331||
|………
|.........
|}}

{{WA2ScriptLine
|332|かずさ|Kazusa
|「そっか…あの弟くんも今じゃ峰城大生なんだ。<br>小木曽家はみんな優秀だな」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|333|雪菜|Setsuna
|「優秀だなんて全然。<br>せっかく付属にいたのに推薦すら取れなくて<br>一般入試でギリギリだったんだから」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|334|かずさ|Kazusa
|「…それは、推薦取れなかったどころか、<br>卒業までギリギリだったあたしに対する嫌味か？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|335|雪菜|Setsuna
|「あ～…そういえばそんなこともあったねぇ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|336|かずさ|Kazusa
|「こいつ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|337|雪菜|Setsuna
|「あはは、ごめん。<br>あ、それで話は変わるけどさ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|338|かずさ|Kazusa
|「うん…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|339||
|それからも…<br>あたしたちの会話は、<br>ずっと差し障りのない内容に終始してた。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|340||
|今みたいに、付属の話に繋がっても、<br>そこで勉強会や学園祭の話にはならない。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|341||
|あたしも、コンサートの話になっても、<br>そこから母さんの話に繋げようとしない。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|342||
|久しぶりだから、だろうか。<br>なかなか、雪菜との距離感が掴めない。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|343||
|…なんて、あたしがそういうことできないのは当たり前か。<br>何しろ、二十を過ぎても引きこもりだし。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|344||
|どうしよう…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|345||
|聞きたい…春希のこと。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|346||
|あいつが幸せにしてるか、頑張ってるか、確かめたいんだ。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|347||
|話したい…本当の、今のあたしのこと。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|348||
|母さんのこと、コンサートのこと、将来のこと…<br>少しでいい、聞いてもらいたいんだ。<br>わかってもらいたいんだ。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|349||
|だから…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|350|かずさ|Kazusa
|「えっと、そろそろ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|351|雪菜|Setsuna
|「え？　あ、もうこんな時間か。<br>ごめんねかずさ、忙しいのに長々と喋っちゃって」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|352|かずさ|Kazusa
|「いや…そんなこと」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|353||
|いや、もういい。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|354||
|それを聞くと、また、あたしの罪と、雪菜の傷に触れる。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|355||
|結局、堂々巡りじゃないか。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|356|かずさ|Kazusa
|「ありがとな、雪菜。<br>こんなあたしと話をしてくれて」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|357||
|結局、愚痴もこぼせなかった。<br>悩み、聞いてもらえなかった。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|358||
|春希のこと、聞けなかった。<br>何の成果もなかった。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|359|雪菜|Setsuna
|「…また、かけてね？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|360|かずさ|Kazusa
|「雪菜も」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|361|雪菜|Setsuna
|「うん…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|362||
|ううん、そんなことはない。<br>雪菜と、話せた。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|363||
|謝れなかったけれど、雪菜は受け入れてくれた。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|364||
|お互い、仮面を被ったままだったけれど、<br>仲直り、できてないけれど、<br>それでも笑ってくれた。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|365||
|それだけでいい。<br>これで、明日からまた頑張っていける。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|366|かずさ|Kazusa
|「おやすみ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|367|雪菜|Setsuna
|「おやすみなさい」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|368||
|だから…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|369|かずさ|Kazusa
|「………っ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|370||
|いや…違うだろ。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|371|かずさ|Kazusa
|「雪菜！<br>あたし…っ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|372|雪菜|Setsuna
|「ごめんなさいっ！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|373|かずさ|Kazusa
|「え…？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|374||
|………
|.........
|}}

{{WA2ScriptLine
|375|雪菜|Setsuna
|「ごめんなさい、かずさぁ！<br>わたし、できないかもしれない！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|376|かずさ|Kazusa
|「せ、雪菜…？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|377||
|頭の中が、真っ白に染まった。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|378|雪菜|Setsuna
|「春希くんを…<br>わたしたちの、あのひとを救えないかもしれない！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|379|かずさ|Kazusa
|「な…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|380||
|自分が今、何を叫んでいるのか、よくわからない。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|381|雪菜|Setsuna
|「ごめんなさい、ごめんなさい！<br>あなたに託されたのに！　譲ってもらったのに！<br>このままじゃ護りきれないよぉ…っ！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|382|かずさ|Kazusa
|「なんで…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|383||
|けれど、これだけはわかる。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|384||
|今こうしないと、また、いなくなってしまう。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|385|雪菜|Setsuna
|「う、う、う…<br>うわああああああああああああ～！！！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|386|かずさ|Kazusa
|「なんでそんなことになってんだよ！？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|387||
|春希くんを救うことのできる女神が。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|388||
|わたしに、道を指し示してくれる、しるべが…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|389||
|………
|.........
|}}

{{WA2ScriptLine
|390|かずさ|Kazusa
|「わかってんのか？<br>自分が何をしでかしたか本当にわかってるのか雪菜！？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|391|雪菜|Setsuna
|「うぐ、ひぅっ、う、う…あああああ…っ、<br>ごめ、ごめんっ、許してぇ…っ<br>許してかずさ！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|392|かずさ|Kazusa
|「あたしがどれほど泣いたか！<br>身を切られる思いで諦めたか！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|393|雪菜|Setsuna
|「わかってる！<br>そんなのわかってるよぉ！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|394|かずさ|Kazusa
|「それもこれも、雪菜だから…<br>あいつを救えるのはお前だけだって信じてたから！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|395|雪菜|Setsuna
|「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい！<br>でも、こっちだって辛かったんだよ！<br>苦しかったんだよ！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|396|かずさ|Kazusa
|「だからって諦めるのかよ！<br>あいつを、見捨てるのかよ！？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|397|雪菜|Setsuna
|「けど、けどっ！<br>元はと言えばあなたが諦めるから！<br>彼の手を、離してしまうからっ！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|398|かずさ|Kazusa
|「お前がそれを言うのかぁっ！？<br>最初に取ったのはそっちのくせに！<br>あたしから春希、奪ったくせに！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|399||
|なんだよ、こいつ…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|400|雪菜|Setsuna
|「どうしよう、ねぇどうしようかずさ！？<br>助けて、助けてよぉっ！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|401||
|わかってたけど、<br>なんて自己中なんだよ、この女…っ
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|402|かずさ|Kazusa
|「都合の悪いところだけ無視して<br>悲劇のヒロイン気取るなよ！<br>だいたい、本当に助けて欲しいのはこっちなんだ！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|403|雪菜|Setsuna
|「何言ってるのよ！<br>そっちはヨーロッパでも大活躍してるくせに！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|404||
|本気で、腹が立った。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|405|かずさ|Kazusa
|「違う！　あたしの方がよっぽど辛いんだ！<br>母さんなんかな…<br>あたしの、母さんなんかなぁ…っ！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|406||
|こっちは、愛する人の生死を抱えて、<br>死にもの狂いで戦っているってのに…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|407||
|こいつは、自分の愛した男一人、<br>支えることができなかったなんて…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|408||
|………
|.........
|}}

{{WA2ScriptLine
|409|雪菜|Setsuna
|「う…うああああ…<br>うううううぅあああああああああ～！！！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|410|かずさ|Kazusa
|「だから、どうして雪菜が泣くんだよ！<br>お前には関係のない話じゃないか！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|411|雪菜|Setsuna
|「けど、けど…っ、<br>そんな、お母さんが…そんなぁ！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|412|かずさ|Kazusa
|「お前の母さんじゃない。<br>あたしのだ！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|413|雪菜|Setsuna
|「どうするの？　どうするのよ！？<br>そんな、嫌だよ。<br>どうして今、側にいてあげないのよ！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|414|かずさ|Kazusa
|「母さんが聴きたいって言ったんだ。<br>あたしのコンチェルト、聴きたいって言ったんだ！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|415|雪菜|Setsuna
|「だからって、だからって！<br>一生、後悔することになったら…っ？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|416|かずさ|Kazusa
|「ここで聴かせなければどうせ一生後悔するんだ。<br>どっちか一つしか取れないんだよ！<br>あたしの欲しいものはいつもそうなんだよ！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|417|雪菜|Setsuna
|「っ…それって…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|418|かずさ|Kazusa
|「全部…全部雪菜のせいじゃないか！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|419|雪菜|Setsuna
|「知らないよ！<br>そんなの、全部背負いきれないよ！<br>わたしは春希くんだけだよ！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|420|かずさ|Kazusa
|「やっぱり背負うんじゃないか！<br>春希のこと諦めないんじゃないか！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|421|雪菜|Setsuna
|「当たり前だよぅ！<br>だからかずさのお母さんは、<br>かずさが護りきるんだよ！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|422|かずさ|Kazusa
|「さっきと言ってること違うだろ！<br>お前あいつのこと諦めかけてたじゃないか！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|423|雪菜|Setsuna
|「言ってない！<br>そんなこと言ってないもん！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|424|かずさ|Kazusa
|「いいや言った！<br>五分くらい前にたしかに言った！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|425|雪菜|Setsuna
|「証拠なんかどこにも残ってないよ！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|426|かずさ|Kazusa
|「この嘘つき！　卑怯者！　泥棒猫！<br>返せよ…春希返せよ！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|427|雪菜|Setsuna
|「今そんなこと言ってる場合じゃないじゃん！<br>なんで！　どうしてわたしたち、<br>こんなことになっちゃうのよ…っ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|428|かずさ|Kazusa
|「う、う…うああぁぁぁぁぁぁぁ～！！！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|429|雪菜|Setsuna
|「かずさ、かずさぁ…っ、<br>い、あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁ～！！！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|430||
|自己正当化、理不尽な罵倒、聞こえないふり、<br>大泣き、責任転嫁、悲劇のヒロイン気取り…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|431||
|わたしたちは…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|432||
|おおよそ、女子の喧嘩で嫌われる最低のやり口を、<br>二人とも、惜しみなくつぎ込んだ。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|433||
|………
|.........
|}}

{{WA2ScriptLine
|434|かずさ|Kazusa
|「………」
|"........."
|}}

{{WA2ScriptLine
|435|雪菜|Setsuna
|「………」
|"........."
|}}

{{WA2ScriptLine
|436|かずさ|Kazusa
|「返せよ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|437|雪菜|Setsuna
|「やだ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|438|かずさ|Kazusa
|「返せってば」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|439|雪菜|Setsuna
|「絶対嫌」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|440|かずさ|Kazusa
|「あたし可哀想だろ。<br>同情とかしないのかよ、冷血女」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|441|雪菜|Setsuna
|「何と言われても無駄」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|442|かずさ|Kazusa
|「もうすぐコンサートなんだぞ？<br>それに母さんだって…<br>雪菜なんかより数倍苦しい思いしてるんだぞ？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|443|雪菜|Setsuna
|「他のことならなんでもする。<br>呼ばれたらパリにだってウィーンにだって看病に行く」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|444|かずさ|Kazusa
|「誰が呼ぶか」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|445|雪菜|Setsuna
|「でも彼は返さない。<br>春希くんを、取り戻すんだ、わたし」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|446|かずさ|Kazusa
|「お前にそれができるのかよ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|447|雪菜|Setsuna
|「やるよ…<br>別れることになっても、捨てられることになっても、<br>また、かずさのもとに戻ったとしても…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|448|かずさ|Kazusa
|「………」
|"........."
|}}

{{WA2ScriptLine
|449|雪菜|Setsuna
|「それでも、彼を元の北原春希にするんだよ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|450|かずさ|Kazusa
|「元の…春希」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|451|雪菜|Setsuna
|「真面目で、努力家で、説教くさくて…<br>嘘つきで、裏切り者で、残酷で…<br>ずっと、わたしじゃない女性を愛しているひとだけど…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|452|かずさ|Kazusa
|「…ふん」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|453|雪菜|Setsuna
|「でも、愛する男を救うのは、<br>女として当然の権利だよね」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|454|かずさ|Kazusa
|「あたしのその権利はどうなる」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|455|雪菜|Setsuna
|「藁にすがっても、<br>それこそ恋敵に土下座してでも、成し遂げる」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|456|かずさ|Kazusa
|「…また無視しやがった」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|457|雪菜|Setsuna
|「何度だって言うよ…<br>他のことなら何でもするけど、<br>それでも、彼だけは渡さない」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|458|かずさ|Kazusa
|「そんなの春希が決めることだ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|459|雪菜|Setsuna
|「たとえ簡単に奪われても、<br>あっさり捨てられても、<br>渡さない」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|460|かずさ|Kazusa
|「ふざけるな…っ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|461||
|くそう…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|462||
|前からわかってたことだけど、<br>こいつ、ものすごく強情だ。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|463||
|ほんと、強い…な。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|464||
|ものすごく、憧れる。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|465||
|………
|.........
|}}

{{WA2ScriptLine
|466|かずさ|Kazusa
|「今度こそ、そろそろ切るぞ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|467|雪菜|Setsuna
|「随分と長く話したね…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|468|かずさ|Kazusa
|「今、何時かな？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|469|雪菜|Setsuna
|「わかんない…<br>けど、こっちは明るくなってきたよ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|470|かずさ|Kazusa
|「てことは、４、５時間ってところか？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|471|雪菜|Setsuna
|「馬鹿みたいだね。<br>まるで中学生みたい」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|472||
|そうだな…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|473||
|恋に恋して、気になる男子の話で泣き合う、<br>女子中学生の、親友同士、みたいだ。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|474|かずさ|Kazusa
|「もう、多分二度とかけない」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|475|雪菜|Setsuna
|「そう…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|476||
|そんな、二人の気持ちをぶつけあった、<br>最後で最高で最悪の大喧嘩。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|477||
|もう、あたしと雪菜との間に、<br>思い残すことなんかない。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|478||
|だから雪菜も、いつも通りに引き留めない。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|479||
|あたしたちは、<br>二度と、同じ天を仰がない。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|480|かずさ|Kazusa
|「悔いはない。<br>あたしたちのことを、誰にもとやかく言わせない」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|481|雪菜|Setsuna
|「うん」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|482|かずさ|Kazusa
|「あたしたちの決断は、あたしたちだけのものだ。<br>不幸なんかじゃない。<br>本当は後悔してるけど、悔いなんかない」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|483|雪菜|Setsuna
|「頑張れ…<br>がんばれ、がんばれ、がんばれかずさっ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|484|かずさ|Kazusa
|「頑張れって言うな。<br>無理して倒れたらどうするんだ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|485|雪菜|Setsuna
|「楽しめ、サボれ、遊べっ、<br>そのまま世界一のピアニストになっちゃえ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|486|かずさ|Kazusa
|「言われなくたって、なってやる。<br>お前たちの、手の届かない存在になってやる」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|487|雪菜|Setsuna
|「うんっ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|488|かずさ|Kazusa
|「そして…<br>あたしと絶交したこと、<br>一生後悔すればいい」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|489|雪菜|Setsuna
|「う、う、う…っ<br>かずさぁ…っ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|490|かずさ|Kazusa
|「ざまぁ…みろ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|491|かずさ|Kazusa
|「………さよなら」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|492||
|これが、あたしたちのフィナーレだ。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|493||
|………
|.........
|}}

{{WA2ScriptLine
|494||
|……
|......
|}}

{{WA2ScriptLine
|495||
|…
|...
|}}

{{WA2ScriptLine
|496|雪菜|Setsuna
|「おはよ～」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|497|雪菜の母|Setsuna's Mother
|「あら、今日は随分と早…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|498|雪菜の母|Setsuna's Mother
|……雪菜？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|499|雪菜|Setsuna
|「ん～、なに～？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|500|雪菜の母|Setsuna's Mother
|「………」
|"........."
|}}

{{WA2ScriptLine
|501|雪菜|Setsuna
|「どしたの？　お母さん」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|502|雪菜の母|Setsuna's Mother
|「えっと…眼が赤いわよ？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|503|雪菜|Setsuna
|「昨夜、大喧嘩したからね～」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|504|雪菜の母|Setsuna's Mother
|「喧嘩って…まさか北原さん？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|505|雪菜|Setsuna
|「ううん、友だち。<br>朝まで電話でやり合っちゃった」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|506|雪菜の母|Setsuna's Mother
|「そ、そう」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|507|雪菜|Setsuna
|「お腹空いたな…自分の分だけ先に作っていい？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|508|雪菜の母|Setsuna's Mother
|「え、ええ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|509|雪菜|Setsuna
|「え～と、なんにしようかな～。<br>チンゲンサイと、ウインナーと、え～と…<br>あ、ツナ缶開けていい？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|510|雪菜の母|Setsuna's Mother
|「………」
|"........."
|}}

{{WA2ScriptLine
|511|雪菜|Setsuna
|「…さっきから、どうしたの？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|512|雪菜の母|Setsuna's Mother
|「い、いえ、なんでもないわよ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|513|雪菜|Setsuna
|「もしかして、そんなにまぶた腫れてる？<br>やだなぁ、これは単に徹夜しただけなんだからね？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|514|雪菜の母|Setsuna's Mother
|「本当に…なんでもない、みたい」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|515|雪菜|Setsuna
|「よし、と…<br>それじゃ、次は卵焼きに…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|516|雪菜の母|Setsuna's Mother
|「………」
|"........."
|}}

{{WA2ScriptLine
|517|雪菜|Setsuna
|「ごめんお母さん。<br>突っ立ってるだけなら卵かき混ぜて」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|518|雪菜の母|Setsuna's Mother
|「え？　
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|519|雪菜の母|Setsuna's Mother
|ああ、はいはい」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|520|雪菜|Setsuna
|「それじゃこっちはもう一品…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|521|雪菜の母|Setsuna's Mother
|「………」
|"........."
|}}

{{WA2ScriptLine
|522|雪菜|Setsuna
|「ね、お母さん」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|523|雪菜の母|Setsuna's Mother
|「あ、卵いくつにする？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|524|雪菜|Setsuna
|「ごめんね、色々と。<br>あと、３個で」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|525|雪菜の母|Setsuna's Mother
|「ごめんって…身体のこと？<br>でも、それは仕方のないことだし」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|526|雪菜|Setsuna
|「ううん、これからのこと。<br>一応、先に謝っておこうかなって思って」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|527|雪菜の母|Setsuna's Mother
|「これからって…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|528|雪菜|Setsuna
|「ん、こほんっ、<br>えっとね、大変申し上げにくいんですが」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|529|雪菜|Setsuna
|「あなたの娘の小木曽雪菜は、<br>本日この時間をもちまして、<br>また、聞き分けのないワガママ娘に戻ります」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|530|雪菜の母|Setsuna's Mother
|「雪菜…？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|531|雪菜|Setsuna
|「わたし、やっぱり春希くんを愛してる」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|532|雪菜|Setsuna
|「昔の彼も、今の彼も、そして、未来の彼も、全部。<br>だから、一緒に歩いて行きたいの」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|533|雪菜|Setsuna
|「………それも、できれば一生」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|534|雪菜の母|Setsuna's Mother
|「………」
|"........."
|}}

{{WA2ScriptLine
|535|雪菜|Setsuna
|「そんなわけで、今日から通い妻に戻ります。<br>週末はまたずっと家を空けるけど、ごめんね？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|536|雪菜の母|Setsuna's Mother
|「………」
|"........."
|}}

{{WA2ScriptLine
|537|雪菜|Setsuna
|「何も言わないんだ…<br>それって、ＯＫってこと？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|538|雪菜の母|Setsuna's Mother
|「………お母さんだけでは決められないってことです。<br>お父さんの許しをもらったらね」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|539|雪菜|Setsuna
|「あ～、今日は徹夜明けで疲れてるからお母さんに任せた。<br>わたし、お父さんが起きる前に出かけるから」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|540|雪菜の母|Setsuna's Mother
|「そういうことしたらますます許しが出なくなるわよ？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|541|雪菜|Setsuna
|「そのときは家を出て彼の部屋に転がり込むまでだよ。<br>…実際、彼の回復のためには<br>その方がいいような気もするし」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|542|雪菜の母|Setsuna's Mother
|「…随分と自信満々ね。<br>ついこの間まで、出かけるのも辛くて<br>ぴーぴー泣いてたくせに」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|543|雪菜|Setsuna
|「最初から住んじゃってれば出かけなくて済むもんね。<br>なんでこんな簡単なことに気づかなかったんだろう。<br>馬鹿だよね、わたし」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|544|雪菜の母|Setsuna's Mother
|「雪菜…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|545|雪菜|Setsuna
|「さてと…とりあえずこんなところかな？<br>あとはお弁当箱に詰めるだけ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|546|雪菜の母|Setsuna's Mother
|「朝食じゃなかったの？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|547|雪菜|Setsuna
|「うん…向こうで一緒に食べる」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|548|雪菜の母|Setsuna's Mother
|「………」
|"........."
|}}

{{WA2ScriptLine
|549|雪菜|Setsuna
|「お母さん…<br>あのね、わたしは…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|550|雪菜の母|Setsuna's Mother
|「北原さんに、よろしくね」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|551|雪菜|Setsuna
|「うんっ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|552||
|………
|.........
|}}

{{WA2ScriptLine
|553||
|今まで心配掛けてごめんね、お母さん。<br>これからも心配掛けるけどごめんね、お父さん。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|554||
|わたしはもう、大丈夫。<br>だって、決心がついたから。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|555||
|彼とともに、一生掛けて戦う決心が。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|556||
|………
|.........
|}}

{{WA2ScriptLine
|557||
|今までは、焦ってた。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|558||
|一刻も早く、元の春希くんに戻って欲しいって。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|559||
|真面目で頑張り屋なカッコいい社会人に。<br>わたしを愛してくれる、素敵な男の人に。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|560||
|でもね、でも…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|561||
|完全に、戻らなくてもいいじゃない。<br>一生掛けて、ゆっくり治してもいいじゃない。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|562||
|一生掛けて、ゆっくり振り向かせても、いいじゃない。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|563||
|………
|.........
|}}

{{WA2ScriptLine
|564||
|完治するのが、二人のいまわの際だって、いいじゃない。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|565||
|ついでに、わたしも引きずり込まれても、いいじゃない。<br>って、それはちょ～っとマズいかな？
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|566||
|とにかく、二人でのんびり戦っていこうって。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|567||
|のんびり、愛し合っていこうって。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|568||
|………
|.........
|}}

{{WA2ScriptLine
|569||
|時には無抵抗で、時にはおっかなびっくり、<br>怒らず、焦らず、悲しまず…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|570||
|そんなふうに、激しくなく生きていこうよって。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|571||
|彼に、そう言って、もう一度押しかけ女房するつもり。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|572||
|だから…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|573||
|今まで心配掛けてごめんね、お父さん。<br>これからも心配掛けるけどごめんね、お母さん。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|574||
|雪菜は…不誠実なあの人を。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|575||
|…ううん、わたし以外の女のひとに、<br>ものすごく誠実なあのひとを愛していきます。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|576||
|これからも、ずっと…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|577|雪菜|Setsuna
|「ただ～いま～」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|578|雪菜|Setsuna
|「ごめんね～、随分とご無沙汰しちゃって～。<br>“夏バテ”、ちょ～っと長くかかっちゃいました」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|579|雪菜|Setsuna
|「あ、でも、自分ではもう完全に治したつもりなんで、<br>そろそろ出入り禁止、解いてもらいに来ました～」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|580|雪菜|Setsuna
|「春希くん？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|581|雪菜|Setsuna
|「春希、くん…？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|582|雪菜|Setsuna
|マンションから、南末次の駅を通り過ぎ、<br>峰城大の正門や、付属の正門も通り過ぎ、<br>その先にある、川沿いの土手。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|583|雪菜|Setsuna
|草の上に寝転がると、その匂いが強く鼻を刺激する。<br>まだ、雑草たちは夏の力強さを保ち続けたままらしい。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|584|雪菜|Setsuna
|都内にしては綺麗な川が流れ、草木も多く、<br>だから、そこに流れる朝の風は爽やかで。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|585|雪菜|Setsuna
|そこそこの陽射し、そこそこの涼風、<br>そして、風と川の旋律だけの、そこそこの音。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|586|雪菜|Setsuna
|こんな心地良い場所に寝転がっていれば、<br>そりゃ、数分も経たずに睡魔に魅入られるのは当然のこと。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|587|雪菜|Setsuna
|しかも、今の自分には、<br>奴らの魔力は強すぎて…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|588|雪菜|Setsuna
|ふああ…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|589|雪菜|Setsuna
|………
|.........
|}}

{{WA2ScriptLine
|590|雪菜|Setsuna
|けれど…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|591|雪菜|Setsuna
|そんな俺のまどろみかけた聴覚に、<br>どこかで聴いたような、懐かしい足音が聞こえてくる。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|592|雪菜|Setsuna
|…いや、普段はアスファルトを踏みしめてばかりだから、<br>その音が懐かしいってのは<br>単なる思い込みに過ぎないんだけどな。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|593|雪菜|Setsuna
|「見つけたよ、春希くん…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|594|春希|Haruki
|「見つけて当然だろ。<br>行き先はちゃんとメモに残しといた」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|595||
|けれど、その思い込みは正しく報われて…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|596||
|今、目の前に、<br>ずっと遭いたかったそのひとが、立っていた。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|597|雪菜|Setsuna
|「でも、部屋にいなかったときはびっくりした…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|598|春希|Haruki
|「ここさ、付属の正門から近いだろ？<br>武也がよく学校サボって昼寝してたんだよな。<br>ま、俺は帰りにあいつを起こす役だったけど」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|599||
|けれど、こちらが待ち望んでいたことを隠すために、<br>わざと向こうの問いかけをはぐらかす。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|600|雪菜|Setsuna
|「ここへは、よく来るの？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|601|春希|Haruki
|「最近は、ほとんど毎日」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|602|雪菜|Setsuna
|「外出、できるようになったんだ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|603|春希|Haruki
|「まだ人混みはちょっと辛いけどな。<br>でも、こんな気持ちのいい場所ならさ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|604||
|九月に入ってからほぼ毎日、朝から夕方まで。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|605||
|早朝に家を出て、街をゆっくり歩き、<br>この川沿いの土手で一休みする。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|606||
|日光を浴びて、風に吹かれて。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|607||
|ときには雨に打たれ、慌てて橋の下に逃げ。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|608||
|川の流れを眺め、虫の声を聞き、草の匂いを嗅ぎ…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|609||
|そんなふうに、世界と、ふたたび触れあうようになった。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|610|雪菜|Setsuna
|「どうして…？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|611|春希|Haruki
|「どうしてって…？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|612|雪菜|Setsuna
|「どうして急に、できるようになったの？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|613|春希|Haruki
|「いや、別に急にって訳じゃ。<br>ずっと前から、少しずつは外に出てたし」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|614|雪菜|Setsuna
|「一人、だったのに。<br>わたし、側にいられなかったのに…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|615||
|あぁ…<br>なんでそんな悲壮感漂う口調なのかと思ったら。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|616||
|雪菜の納得のいかない理由って、そういう…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|617|春希|Haruki
|「まぁ、言ってしまえば…時間かな」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|618|雪菜|Setsuna
|「時間…？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|619|春希|Haruki
|「こういうのは、長く付き合っていくつもりで<br>やってくしかないって医者にも言われたし…<br>それを忠実に守ってるだけだよ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|620|雪菜|Setsuna
|「時間…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|621|春希|Haruki
|「どうした？　雪菜」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|622|雪菜|Setsuna
|「それって…それってさ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|623|春希|Haruki
|「ん？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|624|雪菜|Setsuna
|「結局、今までわたしがしてきたことって、<br>まったくの無駄だったってことかな…？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|625|春希|Haruki
|「そんなことはないけどさ…<br>でも、ま、全部が雪菜の力だったってわけじゃないかな」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|626|雪菜|Setsuna
|「………だよね。<br>わたしが来なかった時に限って、<br>こうして回復しちゃってるんだもんね」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|627|春希|Haruki
|「まぁ、結構酷いこと言ってるって自覚はあるけどさ、<br>でも、事実だし」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|628|雪菜|Setsuna
|「…なんだか普段の春希くんっぽい意地悪な言い方」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|629|春希|Haruki
|「じゃあ、普段の俺っぽい説教も一つ。<br>…二度と、俺のために壊れるまで我慢するな。<br>どうせ大した意味はないんだから」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|630|雪菜|Setsuna
|「自分のこと棚に上げてぇ…っ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|631|春希|Haruki
|「そうやって楽に生きようって決めたんだ。<br>だから、流してくれ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|632|雪菜|Setsuna
|「………っ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|633||
|雪菜が、悔しそうに…<br>そして、嬉しそうに歯噛みをするのが見えた。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|634||
|その、押し隠した表情で確信できた。<br>自分が、自分の言動をできているって。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|635||
|北原春希で、いられているって。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|636||
|………
|.........
|}}

{{WA2ScriptLine
|637||
|雪菜が側にいなければ、俺は壊れたままだった。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|638||
|けれど、雪菜がいただけじゃ、<br>やっぱり、俺は壊れたままだったと思う。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|639||
|薬に診療、<br>周囲の理解、尽力、<br>そして、時間の経過。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|640||
|あのときの俺にとって、どれも欠かせないものだけれども、<br>それでも、一番効いたのが、結果的に時間だっただけ。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|641||
|雪菜が一生懸命頑張ったことも、<br>頑張りすぎて途中リタイヤしたことも、<br>そして今日、こうして帰ってきたことも…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|642||
|雪菜にとっては劇的な変化だったかもしれないけど、<br>俺にとっては、長い治療の中の一つのプロセスで。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|643||
|雪菜がいなくなったから症状が悪化したとか、<br>あるいは逆に、雪菜が潰れかけたことを責任に感じて、<br>今まで以上に頑張って克服したとか、そんなことはなく。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|644||
|雪菜の理解や支えは必要だったけれど必須ではなく、<br>雪菜の無理や離脱は痛恨だったけれど致命的ではなく。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|645||
|彼女にとっては、なんとなく釈然としないのもわかるけど、<br>それでも、そうあるべきで、そうでなくちゃならなかった。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|646||
|雪菜は、万能なんかじゃない。<br>スーパーマンじゃ、ないんだ。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|647||
|ただ、俺にとっての…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|648|雪菜|Setsuna
|「ね、春希くん」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|649|春希|Haruki
|「うん？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|650|雪菜|Setsuna
|「かずさがコンサートやるって、知ってる？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|651|春希|Haruki
|「新聞は欠かさず読んでるからな。知ってるよ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|652|雪菜|Setsuna
|「…気になる？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|653|春希|Haruki
|「ならない…訳がないよな。<br>もしそうなら、俺はこんなふうになってない」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|654|雪菜|Setsuna
|「……会いたい？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|655|春希|Haruki
|「…意地悪な質問をするんだな」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|656|雪菜|Setsuna
|「じゃあ、じゃあね…っ、<br>もし、かずさがあなたのこと…っ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|657|春希|Haruki
|「なぁ、雪菜」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|658|雪菜|Setsuna
|「え…？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|659|春希|Haruki
|「お前、何がしたいんだよ？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|660|雪菜|Setsuna
|「な、なにって…<br>その、わたし昨夜、かずさと…っ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|661|春希|Haruki
|「せっかく治りかけてるのに、<br>そんな強いストレスを俺にかけるつもりなのか？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|662|雪菜|Setsuna
|「ストレスって、そんな…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|663|春希|Haruki
|「ストレスの原因は辛く苦しい出来事だけじゃないぞ？<br>病院に付き添ってくれた時、一緒に説明受けただろ？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|664||
|昇格や、結婚…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|665||
|そんな、人生の目的とも言うべき素晴らしい出来事も、<br>劇的である限り、全てがストレスとなって、<br>自らの身体に降りかかる。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|666||
|そんなの、最初の診療の時から<br>ずっと言われてることなのにな。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|667|雪菜|Setsuna
|「け、けど、けどっ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|668|春希|Haruki
|「けど、なんだよ？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|669|雪菜|Setsuna
|「わたし、役立たずなんでしょ？<br>春希くんにとって、意味のない存在なんでしょ？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|670|春希|Haruki
|「極論から極論に走るなぁ、雪菜は。<br>今度、一緒にカウンセリング受けるか？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|671|雪菜|Setsuna
|「だったら、意味のあるひとを…<br>わたしよりも、役に立つひとを、さぁ…っ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|672|春希|Haruki
|「雪菜」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|673|雪菜|Setsuna
|「っ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|674||
|まだ、体にも心にも全然力が入らない。<br>だからその呼びかけは、まるで弱々しいものだった。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|675||
|それでも雪菜は、びくっと身体を震わせて、<br>俺の言葉に反応した。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|676||
|もしかしたら、その一言に込められた<br>俺の強い気持ちを感じ取ってくれたんだろうか。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|677||
|…だとしたら、嬉しいんだけどな。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|678|春希|Haruki
|「雪菜はさ…<br>今日、まっすぐ俺のいるこの場所に来てくれたよな？<br>一月も会ってなかったのに、迷わずにさ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|679|雪菜|Setsuna
|「それは…<br>だって、春希くんが部屋に<br>行き先のメモを残してたから…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|680|春希|Haruki
|「そうさ…<br>俺は、雪菜が来なくなってからの一か月、<br>出かける時はいつも行き先を部屋に残してたんだ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|681|雪菜|Setsuna
|「けど、それが…？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|682|春希|Haruki
|「それってさ、誰が見ることができると思う？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|683|雪菜|Setsuna
|「………ぁ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|684|春希|Haruki
|「たった一人…<br>合い鍵を持っている相手にしか、<br>伝わらないメッセージだよ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|685|雪菜|Setsuna
|「っ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|686||
|携帯やメールでも事足りるかもしれない。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|687||
|けれどそれじゃ、<br>雪菜に余計なプレッシャーを与えてしまう。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|688|雪菜|Setsuna
|「あ、あなたは…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|689|春希|Haruki
|「ん？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|690|雪菜|Setsuna
|「わたしがまた来るって、信じてくれてたの？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|691|春希|Haruki
|「まさか、違うよ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|692||
|一度、雪菜を追い出してしまった俺には、<br>他にもう、繋がる手段がなかった。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|693|春希|Haruki
|「願ってたんだ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|694||
|…そう、雪菜とだけ、繋がりたかったんだ。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|695||
|意味がなくても、役に立たなくても…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|696||
|雪菜が、必要だったんだ。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|697||
|全然万能じゃない、<br>けれど俺のために壊れたりしない、<br>そんな、普通の雪菜が。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|698||
|だって、愛しているから。<br>ただ、それだけだから。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|699||
|………
|.........
|}}

{{WA2ScriptLine
|700||
|……
|......
|}}

{{WA2ScriptLine
|701||
|…
|...
|}}

{{WA2ScriptLine
|702|かずさ|Kazusa
|「なんだ、こりゃ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|703||
|幕の隙間から客席を覗くと、<br>最上階の席まで完全に埋まっていた。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|704||
|…こっちの客は本気でマナーにうるさいから、<br>音だけで観客数を読むことはできなかったんだけど、<br>それでもこの数は想定外だった。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|705||
|まるっきり無名の日本人ピアニストで超満員とか…<br>これがフランツ・デュプレの力って奴か。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|706||
|開演、五分前。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|707||
|つまり今日は、コンサート当日。<br>とうとう本番の日を迎えたってことで…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|708||
|自分でも、自信があるのかないのかわからない。<br>…いや、それって自信が持ててないってことか。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|709||
|何しろ、準備が不足してるのか十分なのか、<br>もう何が何だか…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|710|かずさ|Kazusa
|「あ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|711||
|そして、諸悪の根源が、ぬけぬけとあたしの隣に立つ。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|712||
|まぁ、ピアノコンチェルトなんだから、<br>指揮者とピアニストが並ぶのは当たり前なんだけど。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|713|デュプレ|
|「体調はどうだ？<br>リハの疲れは残していないだろうな？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|714|かずさ|Kazusa
|「よくもまぁそんなこと聞けるもんだ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|715||
|昨日の最終リハーサルは、<br>今までとは別の意味で壮絶を極めた。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|716||
|今回は、さすがに最後ということもあり、<br>ちゃんと通しで弾かせてくれるという配慮はあった。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|717||
|弦だけでなく、<br>初めてフルオーケストラで合わせることができた。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|718||
|けれど、だからといって、<br>この偏執狂のダメ出しが収まるかというと、<br>まるでそんなことはなく…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|719||
|昨日の１８時に始まった最終リハーサルが終わったのは、<br>今日、コンサート当日の１４時…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|720||
|開演まで残り４時間を切ったところで、<br>２０時間にもわたるリハーサルは『時間切れ』となった。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|721||
|つまり、オケのメンバー全員が誰も寝ていない状態で、<br>今から本番に突入するということで…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|722|デュプレ|
|「カズサ、自信はあるかね？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|723|かずさ|Kazusa
|「さあな」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|724||
|で、さんざんそんな嫌がらせまがいの仕打ちをしといて、<br>開演前に出てくる台詞がコレだ…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|725||
|徹夜明け。<br>それなのに練習不足。<br>何しろ一度も通しで弾いてない。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|726||
|これで自信があるなんて言い切れる奴は、<br>とんでもない天才か、とんでもない紙一重…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|727|デュプレ|
|「私は今日、少なくとも今年一番の演奏を約束する」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|728|かずさ|Kazusa
|「え…？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|729||
|そんな、あたしの心中の悪態を見抜いたかのように…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|730||
|というより、そもそもこんな小娘の遠吠えなんか<br>最初から相手にしていないかのように、<br>尊大な指揮者は自信満々だった。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|731|デュプレ|
|「だから君は、今までの人生で最高の演奏をしなさい。<br>今の君なら、できるはずだ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|732|かずさ|Kazusa
|「………はぁ！？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|733||
|しかも、その成功のイメージを、<br>たった今軽くあしらった小娘にまで押しつけてきた。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|734|デュプレ|
|「…それくらいしないと、ヨウコは納得しないだろう？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|735|かずさ|Kazusa
|「え…？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|736||
|それって、まさか…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|737|デュプレ|
|「彼女を…安心させてやりなさい」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|738|かずさ|Kazusa
|「母さんのこと…聞いてたのか？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|739|デュプレ|
|「ああ、フリューゲルからな。<br>今ごろ、病室に巨大スピーカーを持ち込んで、<br>二人でテレビにかじりついている頃だ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|740|かずさ|Kazusa
|「師匠が…？<br>い、いや、それよりも…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|741||
|なんでこの男がそんなことまで知ってる？
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|742||
|あたしの知らないところで、<br>あたしの知らない色んな人たちが、<br>あたしと母さんのために動いてたってことなのか？
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|743||
|もしかして、このコンサート…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|744||
|あたしは、一人で頑張ってた訳じゃないのか…？
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|745|かずさ|Kazusa
|「あんた…いや、マエストロ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|746|デュプレ|
|「なんだね？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|747|かずさ|Kazusa
|「もしかして、あなた本当に、母さんのこと…？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|748|デュプレ|
|「残念ながら、君は私の娘ではない」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|749|かずさ|Kazusa
|「いや、そんなことはわかってるけど…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|750|デュプレ|
|「彼女と知り合った時、君はちょうど一歳だった。<br>…その頃のヨウコは、小さな赤ん坊を抱っこしたまま<br>世界中を回っていたよ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|751|かずさ|Kazusa
|「…そうなのか？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|752|デュプレ|
|「手のかからない子でね、どれだけ泣いていても、<br>ヨウコが弾くとすぐに眠ってしまうんだ。<br>将来絶対ピアニストになると、彼女の自慢の種だった」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|753|かずさ|Kazusa
|「………」
|"........."
|}}

{{WA2ScriptLine
|754|デュプレ|
|「だから、君のことを娘のように思っている演奏家は、<br>世界には結構いるということだ。<br>例えば、この私のように」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|755|かずさ|Kazusa
|「けどあんた、<br>昔あたしを口説こうとしてなかったか？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|756|デュプレ|
|「それはそれ。<br>これはこれだ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|757|かずさ|Kazusa
|「…ああ、そうかい」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|758||
|もう、あまりにも胡散臭すぎて、<br>こいつの言っていることを<br>どこまで信じていいのかわからない。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|759|デュプレ|
|「いつか、父上にも聞かせられるといいな。<br>君のピアノを」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|760|かずさ|Kazusa
|「………ああ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|761||
|けど…<br>実力は、本気で折り紙付きだってことは、<br>この数日間で嫌と言うほど見せつけられた。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|762||
|演奏に関してだけは、この詐欺師の言うことを<br>信じてもいいのかもしれない。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|763||
|あの、無駄にも思えた数日間のうちに、<br>あたしの中に、新たな力が芽生えているのかもしれない。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|764|デュプレ|
|「さて、開幕だ…<br>行くぞ、カズサ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|765|かずさ|Kazusa
|「ああ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|766||
|母さん、爺さん、美代子さん、エマさん…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|767||
|あと、もう、どれだけの数がいるのかわからないけれど、<br>あたしのピアノに関わっている人たち…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|768||
|あたしの大っ嫌いな[R最大の敵^せつな]。<br>そして、もう、二度と逢うことのない…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|769|かずさ|Kazusa
|「っ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|770||
|みんな、あたしのピアノを聴いてくれ…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|771||
|実は、あまり自信はないけれど…<br>たぶん今日が、伝説の、始まりだ。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|772||
|………
|.........
|}}

{{WA2ScriptLine
|773|雪菜|Setsuna
|「始まる、ね」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|774|春希|Haruki
|「ああ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|775||
|モニターの向こうに、あいつがいた。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|776||
|今にも手の届きそうな、<br>けれど数千キロの彼方に、あいつがいた。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|777||
|あの、日本公演の時と同じ黒のドレスを身にまとい、<br>背筋を伸ばして、観客なんかいないかのように、<br>堂々とピアノと対峙する。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|778||
|相変わらず、ステージ映えする奴だ。<br>…一歩部屋に帰ればだらしない格好で寝てばかりのくせに。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|779|雪菜|Setsuna
|「うまく行くといいね。<br>なにもかも」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|780|春希|Haruki
|「行くさ。<br>ピアノであいつが失敗するはずなんかない」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|781|雪菜|Setsuna
|「うん…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|782||
|あの時の衣装、あの時の演奏者、<br>そして、ここにいるのはあの時の観客。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|783||
|まるで、この空間だけが半年前に戻ったような緊張感。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|784||
|けれど…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|785|雪菜|Setsuna
|「ぁ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|786|春希|Haruki
|「………」
|"........."
|}}

{{WA2ScriptLine
|787|雪菜|Setsuna
|「………」
|"........."
|}}

{{WA2ScriptLine
|788||
|あの時とは、違う。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|789||
|距離も、場所も、観客の数も。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|790||
|そしてなにより…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|791||
|今、ここにいる二人の気持ちが<br>裂けてしまいそうだったあの時とは、違う。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|792|雪菜|Setsuna
|「ね、願ってたって…<br>え、えっと、つまり、それって…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|793|春希|Haruki
|「落ち着けよ、雪菜」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|794|雪菜|Setsuna
|「わたしと一緒にいたかったの…っ！？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|795|春希|Haruki
|「………うん」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|796|雪菜|Setsuna
|「ならどうして…っ、<br>どうしてあの時、わたしを追い出したのよ！<br>ずっと、連絡もくれなかったのよ！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|797|春希|Haruki
|「だって、嫌だよ…<br>愛している人が壊れていくのを見るのは…<br>雪菜だって、辛かったんだろ？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|798|雪菜|Setsuna
|「っ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|799|春希|Haruki
|「だから、巻き込むわけにいかなかった。<br>ずっと、縛りつけるわけにいかなかった。<br>…雪菜に、幸せになって欲しかったんだ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|800|春希|Haruki
|「俺のためとか、そういうの関係なく、<br>雪菜が一番幸せになれる道を本気で考えて欲しかった」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|801|春希|Haruki
|「そして、一生懸命考えた上で、雪菜が出した結論が、<br>『俺のもとに帰ってくる』ってなるのを、願ってた」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|802|雪菜|Setsuna
|「なんで、そんなに遠慮するのよ…<br>わたしを、奪おうとしないのよ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|803|雪菜|Setsuna
|「たとえ破滅するってわかってても、<br>わたしと一緒に堕ちていきたいって、思わなかったの？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|804|春希|Haruki
|「ん…やっぱ思わないな。<br>雪菜だって、そういうこと考えるの辛いだろ？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|805|雪菜|Setsuna
|「…かずさなら、無理やり奪うよね？<br>一緒に堕ちても、構わないって思うよね？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|806|春希|Haruki
|「………あいつは、雪菜とは違う」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|807|雪菜|Setsuna
|「………思うんだね」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|808|春希|Haruki
|「これ以上はやめろよ…<br>まだ俺、完治したわけじゃないんだぞ？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|809|雪菜|Setsuna
|「ごめん…っ、<br>でも、でもさ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|810|春希|Haruki
|「もう、どっちがよくて、どっちが悪いじゃない。<br>…違うんだよ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|811|雪菜|Setsuna
|「それでも、それでもさ…っ、<br>わたし、一生かずさに嫉妬し続ける。<br>かずさと自分を比べて、泣いたり怒ったりするよ？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|812|春希|Haruki
|「…あんまり、頑張りすぎるなよ？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|813|雪菜|Setsuna
|「そうだね…<br>じゃあ、のんびり嫉妬する。<br>ゆっくり泣く。だらだら怒るよ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|814|春希|Haruki
|「なんだかなぁ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|815|雪菜|Setsuna
|「………」
|"........."
|}}

{{WA2ScriptLine
|816|春希|Haruki
|「…それじゃ、あと、一言だけ言っとく」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|817|雪菜|Setsuna
|「ん？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|818|春希|Haruki
|「俺、お前のこと、ずっと愛してるんだぞ。<br>…初めて愛してるって言ってから、ずっと」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|819|雪菜|Setsuna
|「春希くん…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|820|春希|Haruki
|「お前を裏切ったときも、<br>あいつに心を奪われたときも、<br>忘れることなんか、できなかったんだぞ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|821|雪菜|Setsuna
|「………」
|"........."
|}}

{{WA2ScriptLine
|822|春希|Haruki
|「………だから、壊れたんだ。<br>お前のせいでも、あるんだ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|823|雪菜|Setsuna
|「そんなの、自業自得だよ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|824|春希|Haruki
|「ああ、自業自得だ。<br>とんでもない責任転嫁だ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|825|雪菜|Setsuna
|「ふふ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|826|春希|Haruki
|「余計に酷いこと言ってるのかもしれないけど、<br>傷口に塩を塗り込んでるのかもしれないけど…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|827|雪菜|Setsuna
|「………」
|"........."
|}}

{{WA2ScriptLine
|828|春希|Haruki
|「けれど、俺が言いたいのは…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|829|雪菜|Setsuna
|「そういえばさ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|830|春希|Haruki
|「ん？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|831|雪菜|Setsuna
|「お前って…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|832|春希|Haruki
|「え？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|833|雪菜|Setsuna
|「さっきから春希くん、わたしのこと、お前って言ってる。<br>ずっと、言ってるよ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|834|春希|Haruki
|「嫌だったか？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|835|雪菜|Setsuna
|「ううん、嫌じゃない。<br>…そんなわけ、ないよ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|836|春希|Haruki
|「そっか」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|837||
|………
|.........
|}}

{{WA2ScriptLine
|838||
|そして…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|839||
|長いんだか短いんだかわからない、<br>かずさと、オーケストラの協演は終わり…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|840||
|ホール中が拍手に包まれている光景が、<br>俺の部屋のテレビに映し出された。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|841||
|それはもう、呆れるくらいの大絶賛で。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|842||
|そして、その歓声に応えるように…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|843||
|日本人の若手ピアニストと、<br>パリの一流指揮者の間に、<br>なんともエスプリの利いたやり取りがあった。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|844||
|椅子から立ち上がり、<br>観衆の割れんばかりの拍手を全身に浴びるかずさ。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|845||
|そこに、力を振り出し切りフラフラとなった<br>指揮者が近づき、自らかずさに手を差し出した。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|846||
|かずさは、いつも通りの仏頂面だったけど、<br>それでも、彼の差しだした手を、<br>これ以上はないほどの敬意をもって握り返した。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|847||
|そこで会場は、今まで以上に大きな拍手と歓声で包まれ…<br>けれど、その感動のシーンだけでは終わらなかった。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|848||
|その後、指揮者が勢い余ってかずさに抱きつきそうになり、<br>けれど彼女は、明らかにそれを予測していた動作で、<br>彼の足を思い切り踏んで撃退した。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|849||
|会場が一番沸いたのは、実はその瞬間だった。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|850||
|…その時の俺の仏頂面を、<br>今度は雪菜がくすくす笑いながら眺めていたのは、<br>また別の話。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|851||
|………
|.........
|}}

{{WA2ScriptLine
|852||
|……
|......
|}}

{{WA2ScriptLine
|853||
|…
|...
|}}

{{WA2ScriptLine
|854|インタビュアー|
|「それでは、冬馬かずささんにお越しいただきました。<br>まずはお疲れさまでした」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|855|かずさ|Kazusa
|「ども…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|856||
|そして、いよいよ放送時間も残り少なくなった頃…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|857||
|テレビ局によるインタビューが始まった。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|858|インタビュアー|
|「大変な絶賛ぶりでした。<br>多くの観客がスタンディングオベーションで<br>送り出してくれましたが…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|859|かずさ|Kazusa
|「あ、ありがとうございます。<br>パリは初めてなので少し不安でしたが、<br>ほっとしています」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|860|インタビュアー|
|「パリもさることながら、<br>ピアノコンチェルトも初披露だとか。<br>その辺りはいかがでしたか？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|861|かずさ|Kazusa
|「ええと…周りが素晴らしい方ばかりでしたので、<br>そのおかげで普段以上のものが出せたと思います。<br>デュプレ氏とオケの皆さんに感謝しています」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|862|インタビュアー|
|「デュプレ氏と言えば、<br>演奏後のあれは…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|863|かずさ|Kazusa
|「…いつも通りの挨拶です。<br>母の代からの古い友人ですから」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|864||
|すげぇ…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|865||
|かずさが、普通にインタビューに応えてる…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|866||
|ちょっと硬いけど、<br>受け答えが定型通りだけど、<br>それでも、形になってる。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|867||
|それに、何よりも驚いたのが、<br>地元テレビ局のローカルな取材とはいえ、<br>かずさが、マスコミに応じたってことで…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|868||
|日本じゃ…<br>俺がマネージャーもどきやってる時じゃ、<br>サインすら引き受けてくれなかったのに…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|869||
|変わったんだ…<br>いや、成長したんだ。<br>あのかずさが…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|870||
|楽器を操るのは天才なくせに、他はからっきしで。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|871||
|人々の注目を浴びすぎるくせに、ひきこもりで。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|872||
|ピアノとプリンさえあれば幸せみたいな、<br>コミュニケーション障害のぐうたらピアニストが…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|873||
|なんだか、寂しくもあり、嬉しくもあり…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|874||
|もう、モニター越しがどうという話じゃなく、<br>本当に、手の届かないところにいるんだなって。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|875||
|なんだよ、俺…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|876||
|こんな、保護者みたいな感覚抱いてどうすんだよ…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|877||
|………
|.........
|}}

{{WA2ScriptLine
|878||
|そうして、かずさのインタビューは、<br>あいつにしては信じられないくらい滞りなく進み…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|879|インタビュアー|
|「それでは最後に、視聴者の皆さんに一言お願いします」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|880||
|いよいよ、あいつが画面から…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|881||
|また、俺の前から消えてしまう時間になった。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|882|かずさ|Kazusa
|「………」
|"........."
|}}

{{WA2ScriptLine
|883|インタビュアー|
|「冬馬さん？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|884||
|けれどあいつは、最後になって、いつもの、<br>ちょっとだけ人に慣れてない冬馬かずさの表情を見せる。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|885||
|少しだけ、何か考えるそぶりを見せ、<br>周囲を見回し、俯き、深呼吸。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|886||
|そして、そこからゆっくりと顔を上げて…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|887|かずさ|Kazusa
|「ざまぁみろ！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|888|インタビュアー|
|「え？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|889|雪菜|Setsuna
|「え…？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|890|春希|Haruki
|「あ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|891||
|最後の最後に、<br>今の彼女にとって、異国の言葉を残した。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|892|かずさ|Kazusa
|「『これからも頑張ります』<br>…って意味の日本語です」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|893|インタビュアー|
|「…なるほど。<br>ありがとうございました！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|894||
|今のは…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|895||
|あの、かずさの挑発は、<br>誰に向けたメッセージだったのか…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|896||
|俺じゃ、ない。<br>いや、俺だけじゃない。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|897||
|多分、それは…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|898|雪菜|Setsuna
|「やっぱり、どうしようもないんだなぁ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|899|春希|Haruki
|「何が？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|900|雪菜|Setsuna
|「わたし、かずさとは永遠に敵同士なんだなって。<br>…あなたのせいで」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|901|春希|Haruki
|「…悪かったな」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|902||
|それはきっと、決別のメッセージ。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|903||
|それも、とびっきりの愛を込めた、特別な。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|904||
|ほんっと、最高に仲悪いな…こいつら。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|905||
|その夜、俺たちは久しぶりに抱きあった。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|906||
|夕凪のような、穏やかで優しい行為だった。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|907||
|………
|.........
|}}

{{WA2ScriptLine
|908|かずさ|Kazusa
|「ふぅっ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|909||
|終わった…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|910|かずさ|Kazusa
|「やった…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|911||
|やり遂げた…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|912|かずさ|Kazusa
|「やった、やったよ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|913||
|あの偏執狂に引っ張られたのは悔しいけど…<br>それでも、間違いなく最高の演奏だった。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|914||
|…まぁ、現時点ではな。<br>あんなのすぐに自力で追い抜くけど、な。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|915||
|それでも…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|916|かずさ|Kazusa
|「さすがに満足だよなぁ、母さん…？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|917||
|親に顔向けできない程度のピアノじゃなかったはずだ。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|918||
|今まで、母さんの前で見せたこともない…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|919||
|日本で、あいつらの前でも見せたこともない、<br>『カッコいいあたし』を見せつけられたはずだ。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|920||
|だから…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|921|かずさ|Kazusa
|「元気、出してくれるよなぁ…っ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|922||
|帰ったらすぐに空港から病院に向かおう。<br>なんて言われるのか楽しみだ。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|923||
|いや、あの人のことだから、<br>『まあまあだったわね』か『まだまだね』の<br>どちらかだと思うけど…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|924||
|だから、言葉じゃなくてその表情や顔色で…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|925||
|どれだけ元気になったかで、判断してやろう。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|926||
|だからお願いだ、神様…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|927||
|あたしたち親子に、もう少しだけ時間をくれ。<br>できれば、あと１００年くらい。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|928|かずさ|Kazusa
|「あ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|929||
|と、そんな神への願いと関係があるのかないのか…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|930||
|携帯に表示されていたのは、<br>今かかってくるには、当然でも不自然でもある名前だった。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|931|かずさ|Kazusa
|「師匠？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|932||
|マーティン・フリューゲル。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|933||
|あたしの師匠にして、母さんの師匠。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|934||
|最近は、もうかなり老いてきたせいで、<br>レッスンもめったに開催しない隠居爺さん。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|935|かずさ|Kazusa
|「そういえばデュプレに聞いたけど、<br>師匠、あんたこのコンサートに一枚噛んで…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|936||
|けれど、相変わらず業界への影響力は計り知れず、<br>この人が本気を出せば、パリの一流オーケストラでも<br>無理やり日程を開けるという、まるで老害のような…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|937|かずさ|Kazusa
|「え…？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|938||
|けれど、そんな怪物老人の聞き取りにくいドイツ語は、<br>お祝いのメッセージとしては、切羽詰まりすぎていて…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|939|かずさ|Kazusa
|「母さんが…？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|940||
|ただ、ある人の名を繰り返すだけで…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|941|かずさ|Kazusa
|「母さんが、なんなんだよ！？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|942||
|『大変だ、ヨウコが、ヨウコが…』
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|943||
|………
|.........
|}}

{{WA2ScriptLine
|944||
|……
|......
|}}

{{WA2ScriptLine
|945||
|…
|...
|}}

{{WA2ScriptLine
|946|かずさ|Kazusa
|「母さんっ！？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|947||
|空港から、タクシーで病院に駆けつけたら、<br>ベッドはもぬけの殻で…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|948||
|病室の床にへたり込んでしまったあたしに、<br>シーツを替えに来た看護師さんが声を掛けてきた。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|949||
|『ああ、ヨウコなら…』
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|950|かずさ|Kazusa
|「なに勝手に退院してんだよ！？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|951||
|その後、自宅に行っても誰もいなくて、<br>方々に連絡しまくり、やっと居場所を突き止めた。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|952||
|全力でピアノと格闘してる、<br>この、数日前まで抜け殻みたいだった女性の…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|953|かずさ|Kazusa
|「母さんってば！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|954|曜子|Youko
|「うるさいわね！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|955|かずさ|Kazusa
|「っ！？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|956||
|こっちに振り向いても、指の動きは止まらない。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|957||
|それどころか、その、行動と同じくらい激しい表情に、<br>思いっきりたじろぐ。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|958||
|何しろ、そこに浮かんでるのは…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|959|曜子|Youko
|「…ちょっとパリで評価されたからって<br>調子に乗ってんじゃないわよ！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|960|かずさ|Kazusa
|「は、はぁ…？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|961||
|怒り、皮肉、執着…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|962|曜子|Youko
|「何よあの程度のピアノ…<br>あんなのオケに引っ張られてるだけじゃない」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|963|かずさ|Kazusa
|「そんなの、あたしが一番わかって…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|964||
|そして、根底にあるのはどう見ても…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|965|曜子|Youko
|「それをまさか自分の実力だとか、<br>そんな痛い勘違いしてるんじゃないでしょうね？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|966|かずさ|Kazusa
|「痛い勘違いしてるのは母さんの方だろ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|967||
|嫉妬、だよな？　これ…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|968|曜子|Youko
|「あ、あんなの、あんなピアノっ！<br>わたしがちょっと本気出せば、<br>余裕で超えてみせるわよ！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|969|かずさ|Kazusa
|「だから、あたしは超えたなんて全然…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|970||
|母さんの居場所を探すために病室からコールバックした時、<br>爺さんは、大げさに嘆きつつ、改めてこう言った。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|971||
|『大変だ、ヨウコが、ヨウコが…』
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|972||
|『………３０歳若返ってしまったよ』
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|973|曜子|Youko
|「余裕…？<br>さすが、英才教育を受けて親の七光でのし上がった<br>お嬢ちゃまは物腰も余裕ですこと」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|974|かずさ|Kazusa
|「それ母親の台詞じゃないだろもう…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|975||
|野望と嫉妬と闘争にまみれ、<br>未熟で、青臭く、荒々しく、<br>若い人間になってしまったと…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|976|曜子|Youko
|「わたしがここまで上り詰めるのに、<br>どれだけかかったと思ってるのよ？<br>初めてのコンチェルトで絶賛とか納得行かない！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|977|かずさ|Kazusa
|「母さん…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|978||
|なんだよそれは…？
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|979|曜子|Youko
|「だから、それを証明してあげるわ…<br>年末のニューイヤーコンサートでね…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|980|かずさ|Kazusa
|「復帰するつもりなのかよ！<br>それも、年内だって？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|981|曜子|Youko
|「もちろん、あなたも出るのよ？<br>同じ会場で、同じ曲弾いて、同じ客に判断してもらうの。<br>…どちらが上かをね！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|982|かずさ|Kazusa
|「おい、待てよ…<br>嫌だよそんなの！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|983||
|親子共演…？
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|984||
|それは夢のような、悪夢のような…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|985|曜子|Youko
|「あら、戦う前から逃げるの？<br>そんなチキンに育てた覚えはないけどねぇ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|986|かずさ|Kazusa
|「都合のいい時だけ母親づらすんなよ！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|987|曜子|Youko
|「この命、燃やし尽くしてあげるわ…<br>あと１００年の命を、あと５０年に削ってでも、<br>あなたには負けないわよ、かずさ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|988|かずさ|Kazusa
|「それ全然削ってないから。寿命だから」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|989||
|しかも相手は、娘のピアノに嫉妬して、本気でやっかんで、<br>自分の病気を忘れて完全復帰をもくろむ、<br>数時間前まで病室のベッドで寝込んでいた女性。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|990||
|思いっきり大人げない、ガチの冬馬曜子…？
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|991||
|一体、何が何だか…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|992|美代子|Miyoko
|「あ～！<br>こんなところにいた～！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|993|かずさ|Kazusa
|「美代子…さん？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|994||
|そんな、真っ白になった頭に、<br>最近では留守電の声でお馴染みの、<br>どこか懐かしい言葉が被さる。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|995||
|本当に、何が何だか…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|996|美代子|Miyoko
|「酷いじゃないですか曜子さん！<br>空港まで迎えをよこすって言ってたのに～！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|997|かずさ|Kazusa
|「え？　え？<br>なんで…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|998||
|ずっと彼女と、日本支部と連絡が取れなかった。<br>だからもう、閉めてしまったのかと思ってた。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|999||
|二度と、会えないのかと、思ってた。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1000|美代子|Miyoko
|「わたし、ちゃんと到着時間も連絡しましたよね？<br>しかも二週間も前に！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1001|曜子|Youko
|「ああ、悪い美代ちゃん。<br>忘れてたわ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1002|美代子|Miyoko
|「忘れてたって…<br>人をヨーロッパ本部にまで引き抜いておいて、<br>いきなり路頭に迷わせる気ですか！？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1003|かずさ|Kazusa
|「本部…？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1004||
|…いや。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1005||
|どうやら日本支部は、<br>確かに閉めてしまったらしい。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1006|美代子|Miyoko
|「かずささ～ん！<br>あなたもお母さんに何とか言ってあげてくださいよ～」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1007|かずさ|Kazusa
|「美代子さん…なんでここに…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1008|美代子|Miyoko
|「あ～、やっぱり本人にも話通ってない～！<br>私なんのために海渡ってきたの～？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1009|かずさ|Kazusa
|「本人って…ちょっと…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1010|曜子|Youko
|「早速だけど美代ちゃん初仕事よ。<br>年末にホール押さえて頂戴。なるべく大きいの！<br>かずさのマネージャー就任なんて後回しでいいから」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1011|かずさ|Kazusa
|「マネージャー…？<br>美代子さんが？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1012|美代子|Miyoko
|「ああもうっ、何が何だかわからない！<br>かずささんの人生のためだって言うから、<br>日本も結婚も捨ててきたのに～！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1013|かずさ|Kazusa
|「な…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1014||
|だから、何が何だかわからないのはこっちの方で…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1015|曜子|Youko
|「別に結婚は捨てなくていいでしょ。<br>こっちでいい男見つければいいじゃない」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1016|美代子|Miyoko
|「あ、ありますかねぇ出会い？<br>いいひと、見つかりますかねぇ…？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1017|かずさ|Kazusa
|「ちょっと…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1018||
|頭が混乱してるのはこっちの方で。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1019||
|だから、変な感情が次から次へと湧き出してくるのも、<br>こっちの方で…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1020|かずさ|Kazusa
|「ふざけんな…ふざけんなよ！<br>なんだよこの茶番は！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1021||
|なんでこんなにたくさんの人たちが、<br>あたしと母さんに、関わってくるんだよ…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1022||
|どうしてこんなにたくさんの人たちが、<br>あたしのために頑張るんだよ、<br>本気出すんだよ、無理…するんだよ？
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1023||
|おかしいだろ、そんなの…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1024|美代子|Miyoko
|「本来なら、それはこっちの台詞なんですけど…<br>まぁ、いっか。<br>これから、よろしくお願いしますね？　かずささん！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1025|かずさ|Kazusa
|「勘弁してくれよ、美代ちゃん…っ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1026||
|『君のことを娘のように思っている人間は、<br>世界には結構いるということだ』
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1027||
|なんだよ、あたし…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1028||
|本当に、馬鹿じゃないのか？
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1029||
|………
|.........
|}}

{{WA2ScriptLine
|1030||
|……
|......
|}}

{{WA2ScriptLine
|1031||
|…
|...
|}}

{{WA2ScriptLine
|1032||
|さよなら、春希。<br>さよなら、雪菜。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1033||
|あたしはこっちで、人と一緒に生きていく。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1034||
|これからも。<br>いや…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1035||
|これからは、かな。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1036||
|冬[W30]が[W30]来[W30]る。[W80]そ[W30]し[W30]て[W30]春[W30]も[W30]来[W30]る。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1037|雪菜|Setsuna
|「ごめんなさいっ！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1038|朋|Tomo
|「………」
|"........."
|}}

{{WA2ScriptLine
|1039|雪菜|Setsuna
|「この間、わたしすごく嫌な態度取ったよね？<br>せっかく朋が好意でライブ誘ってくれたのに」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1040|朋|Tomo
|「雪菜…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1041|雪菜|Setsuna
|「すごく怒ってるのはわかってるんだけど…<br>
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1042|雪菜|Setsuna
|でも、朋なら許してくれるよね？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1043|朋|Tomo
|「なっ、ちょっと雪菜！<br>あなた、わたしのことなめてない？<br>とりあえず謝っとけば許してくれるでしょみたいな～」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1044|雪菜|Setsuna
|「え、えっと…そんなことはないと思うよ？<br>そりゃ、朋の優しさに甘えてるのは認めるけど…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1045|朋|Tomo
|「ぐっ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1046|春希|Haruki
|「なぁ、柳原さん…<br>あまり雪菜を責めないでやって欲しいんだ。<br>元はと言えば、全部俺のせいなんだからさ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1047|朋|Tomo
|「そりゃそうなんだけどさぁ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1048|依緒|Io
|「こらっ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1049|春希|Haruki
|「今度埋め合わせするからさ。<br>そうだ、週末、雪菜を貸し出すとかどうかな？<br>また旅行にでも行ってきたら？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1050|朋|Tomo
|「ぐぅっ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1051|武也|Takeya
|「春希の奴…<br>朋のこと、完全になめてるよな？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1052|依緒|Io
|「いいんじゃない？<br>あの狡猾さ…だいぶ治ってきたのはわかるよ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1053|雪菜|Setsuna
|「それで…こっからは相談なんだけど」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1054|朋|Tomo
|「え～、まだあるの？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1055|雪菜|Setsuna
|「せっかくだから、やっぱり歌いたいな～って。<br>…今日の、１０周年ライブ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1056|朋|Tomo
|「い、今からぁ？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1057|雪菜|Setsuna
|「うん…せっかくのトロイの記念日だし。<br>
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1058|雪菜|Setsuna
|少なからず世話になってる身としては、ねぇ？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1059|朋|Tomo
|「それ、わたしが最初に誘った時の台詞まんまじゃん」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1060|武也|Takeya
|「いいじゃんいいじゃん、<br>こんなお祭り企画、<br>どうせ飛び入り参加もＯＫなんだろ？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1061|朋|Tomo
|「でも、リハってものが…<br>メンバーだって色々準備してきてるし、<br>交渉してみないとなんとも…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1062|雪菜|Setsuna
|「あ、それならもうＯＫもらってる」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1063|依緒|Io
|「さっき楽屋で交渉してきたのよ。<br>メンバー全員一致で大歓迎だって」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1064|朋|Tomo
|「………それと、わたしを通さず直接交渉してるのが<br>気に入らない」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1065|依緒|Io
|「も～、そんなこと言わない。<br>どうせあんたも聴きたいくせに～」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1066|武也|Takeya
|「や～、いい奴だな～、朋は！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1067|朋|Tomo
|「わたしは危険な女なの！<br>甘く見てると男は大火傷するの！<br>そんな安全牌みたいな言い方やめて！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1068|雪菜|Setsuna
|「それじゃ、行ってきま～す！<br>あ～、久しぶりだなぁ、思いっきり歌うぞ～！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1069|依緒|Io
|「カラオケじゃないからね？<br>ライブだからね？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1070|朋|Tomo
|「あ～、待ってよ雪菜！<br>ステージ立つなら楽屋でメイクしてから～！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1071|武也|Takeya
|「あ～あ、せわしないこと」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1072|依緒|Io
|「ま、いいじゃん。<br>ここしばらく、馬鹿騒ぎなんてなかったし。<br>何しろ今日はお祭りなんだしさぁ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1073|武也|Takeya
|「ま、それもそっか…<br>じゃ、俺たちは最前列確保に行くか。<br>春希は？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1074|春希|Haruki
|「俺は…もう帰るわ。<br>もともとお前らに会うために来ただけだし」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1075|依緒|Io
|「なんだよ春希？<br>ライブ見てかないのか？<br>せっかく久しぶりの雪菜のステージなのに」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1076|春希|Haruki
|「まだちょっと人混みは辛くてな…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1077|武也|Takeya
|「そっか…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1078|春希|Haruki
|「無理して悪化させるわけにはいかないからな。<br>頑張って完治して、目標は次のライブだ。<br>その時までに、何が何でも復調してやる」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1079|依緒|Io
|「いや、だから頑張るなって…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1080||
|もう、来ない季節はない。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1081|春希|Haruki
|「…というわけで、今日からこちらの職場に<br>復帰させていただくことになりました」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1082|鈴木|Suzuki
|「………」
|"........."
|}}

{{WA2ScriptLine
|1083|春希|Haruki
|「長い間、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。<br>また、新人に戻った気持ちで一から頑張りますので、<br>皆さんどうかよろしくお願いします」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1084|松岡|Matsuoka
|「………」
|"........."
|}}

{{WA2ScriptLine
|1085|春希|Haruki
|「とはいえ、まだしばらくは<br>色々と無理が利かないことがあるかもしれません。<br>また新しい迷惑をかけてしまうかもしれません」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1086|木崎|Kizaki
|「………」
|"........."
|}}

{{WA2ScriptLine
|1087|春希|Haruki
|「それでも、いずれ必ず、今までのご恩をお返しします。<br>ですから、しばらくは長い目で見ていただけるよう…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1088|鈴木|Suzuki
|「あ～、それさぁ、いつまで続くの？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1089|春希|Haruki
|「え？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1090|浜田|Hamada
|「おい、鈴木…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1091|松岡|Matsuoka
|「いや、ちょっとね。<br>ご挨拶も佳境のところ、申し訳ないんだけどさ、<br>今、入稿間際なんだよね？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1092|木崎|Kizaki
|「俺はそろそろ出張行かないと」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1093|春希|Haruki
|「あ…すいません。<br>その、俺…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1094|鈴木|Suzuki
|「北原君ならわかるっしょ？<br>編集部員がこんな朝っぱらから<br>無駄な時間使ってる余裕ないってことくらいさぁ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1095|春希|Haruki
|「はい…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1096|浜田|Hamada
|「き、北原…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1097|松岡|Matsuoka
|「そんなわけで、はい解散～。<br>さ～皆さん、今日も頑張っていきましょ～」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1098|木崎|Kizaki
|「浜田さん決裁書チェックお願いできますか？<br>出かける前に通しときたいんですよね」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1099|浜田|Hamada
|「だからお前ら、ちょっと…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1100|春希|Haruki
|「いえ、いいんです浜田さ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1101|松岡|Matsuoka
|「てなわけで、続きは今日の２０時からね～。<br>駅前の洋民で～」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1102|春希|Haruki
|「え？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1103|鈴木|Suzuki
|「なにそのショボいチョイス。<br>松っちゃんに任せるんじゃなかったよ幹事…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1104|木崎|Kizaki
|「言ってやるな。<br>給料日前のこいつの財布の中身知ってるだろ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1105|松岡|Matsuoka
|「余計なこと言わない！<br>木崎さん、今日くらいは出先からちゃんと戻ってきてよ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1106|木崎|Kizaki
|「わかってるって。<br>けど藤沢からだから先に始めといて」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1107|鈴木|Suzuki
|「あと、酒は強要はなしだよ？<br>乾杯からウーロン茶ＯＫだよ？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1108|木崎|Kizaki
|「帰宅時間もな。<br>帰ると言ったら潔く送り出すんだぞ？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1109|松岡|Matsuoka
|「それとご厚志の方はまだまだ受け付けてますので、<br>遠慮なく声を掛けてくださいね浜田さん～」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1110|浜田|Hamada
|「無理！<br>俺も給料前でピーピー」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1111|鈴木|Suzuki
|「え～、しぶ～い！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1112|木崎|Kizaki
|「せっかくの北原のめでたい日が台無しだな」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1113|松岡|Matsuoka
|「普通なら編集長に掛け合うくらいやると思うけどな～」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1114|浜田|Hamada
|「やかましい！　はよ散れ！<br>忙しいんじゃなかったのか！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1115|鈴木|Suzuki
|「あ～い、それじゃ業務開始～」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1116|木崎|Kizaki
|「行ってきま～す」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1117|松岡|Matsuoka
|「お仕事お仕事～♪」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1118|浜田|Hamada
|「ふぅ、まったくあいつらときたら…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1119|春希|Haruki
|「………」
|"........."
|}}

{{WA2ScriptLine
|1120|浜田|Hamada
|「どうした？<br>やっぱ久しぶりで戸惑ったか？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1121|春希|Haruki
|「いえ、そうじゃなくて…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1122|浜田|Hamada
|「ん？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1123|春希|Haruki
|「帰って来れたんだなぁって…<br>多分、俺の、ホームグラウンドへ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1124|浜田|Hamada
|「…多分じゃねえよ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1125||
|そして、終わらない季節もない。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1126|雪菜|Setsuna
|「春希、くん…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1127|春希|Haruki
|「なんだよ馬鹿」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1128|雪菜|Setsuna
|「そんなに馬鹿、馬鹿って言われると、<br>ますます馬鹿になっちゃうよ？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1129|雪菜|Setsuna
|「あなたのこと、好きになりすぎて、<br>何をされても嫌いになれなくなっちゃうよ？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1130|春希|Haruki
|「………馬鹿っ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1131|雪菜|Setsuna
|「大丈夫？　寒くない？<br>どこも痛くない？<br>…辛く、ない？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1132|春希|Haruki
|「大丈夫、大丈夫だ…<br>ただ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1133|雪菜|Setsuna
|「ただ…？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1134|春希|Haruki
|「済まないって思ってるだけ。<br>また雪菜のことを好きになってしまって…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1135|雪菜|Setsuna
|「…かずさに？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1136|春希|Haruki
|「雪菜に」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1137|雪菜|Setsuna
|「………」
|"........."
|}}

{{WA2ScriptLine
|1138||
|そんなのは当たり前のこと、ただの自然現象。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1139|孝宏|Takahiro
|「あれ？　北原さんまた来たの？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1140|春希|Haruki
|「夜分恐れ入ります。<br>…ご両親、いるかな？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1141|孝宏|Takahiro
|「そりゃいるけどさぁ…<br>でも、いつも通り出てこないと思うよ？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1142|春希|Haruki
|「そっか…ありがとう。<br>それじゃ、もう少しここで待ってみることにする。<br>…ご近所に変な噂が立っちゃったらごめんな」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1143|孝宏|Takahiro
|「…いや、隣近所もうみんな知ってるし。<br>こないだ隣のおばさんに差し入れもらってたろ？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1144|春希|Haruki
|「見てたんだ、あれ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1145|孝宏|Takahiro
|「なぁ、北原さん…<br>あんた、今度こそ本当に<br>姉ちゃんと結婚する気なんだよな？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1146|春希|Haruki
|「うん」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1147|孝宏|Takahiro
|「………と真顔で即答されても弟としては微妙だけど」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1148|春希|Haruki
|「でも、ご両親が反対する気持ちもわかる。<br>俺、今まで不義理を働いてきたし、病気のこともあるし」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1149|孝宏|Takahiro
|「あんなこと馬鹿正直に言わなきゃよかったんだよ…<br>誰も得しないだろ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1150|春希|Haruki
|「それでも、それが俺だから。<br>家族になる人たちには、<br>隠し事のない俺を見て欲しいから」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1151|孝宏|Takahiro
|「ほんっと、難儀な人だよなぁ。<br>…姉ちゃんといい勝負だよ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1152|春希|Haruki
|「あ、あはは…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1153|雪菜の母|Setsuna's Mother
|「ちょっとあなた…<br>さっきからずっと待ってますよ北原さん」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1154|雪菜の父|Setsuna's Father
|「それが何だって言うんだ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1155|雪菜の母|Setsuna's Mother
|「そろそろ認めてあげても…雪菜のためにも。<br>もう、ああいうことにはならないと思いますけど」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1156|雪菜の父|Setsuna's Father
|「うるさいっ！<br>あんな男の言うことなど信用できるか！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1157|雪菜の母|Setsuna's Mother
|「でも、せめて話を聞くだけでも」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1158|雪菜の父|Setsuna's Father
|「いいや、彼は口が立つから駄目だ。<br>話せば最後、<br>ついつい丸め込まれてしまうに決まっている」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1159|雪菜の母|Setsuna's Mother
|「…こちらの方がよほど年上なんですから、<br>そういう理由で逃げるのは少し情けない気がしますけど」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1160|雪菜の父|Setsuna's Father
|「とにかく今はまだ駄目だ！<br>…もう少し、雪菜が頭を冷やしてからだ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1161|雪菜の母|Setsuna's Mother
|「頭を冷やすもなにも、<br>そんなことばかり言っていたら、<br>雪菜、二度と彼の部屋から帰ってきませんよ？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1162|雪菜の父|Setsuna's Father
|「………っ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1163||
|自分の人生とは関係のない、巡る季節の話。
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|}}

{{WA2ScriptLine
|1164|雪菜|Setsuna
|「ね～、二次会カラオケでいいよね～？<br>とはいえこっちでもう三票押さえたんだけど～」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1165|武也|Takeya
|「あ～、わかったわかった～！<br>政治工作ご苦労さん～！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1166|雪菜|Setsuna
|「りょうか～い。<br>じゃあ、行きつけのお店に電話入れとくね～」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1167|武也|Takeya
|「はいはい…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1168|依緒|Io
|「…で、ちょっと、武也」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1169|武也|Takeya
|「なんだよ？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1170|依緒|Io
|「いつ皆に話すのよ？<br>あたしたちのこと」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1171|武也|Takeya
|「ぐ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1172|依緒|Io
|「今日こそは話すって言ってたじゃん。<br>なのに一次会でも結局切り出さないし」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1173|武也|Takeya
|「いや、けど今さらなぁ？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1174|依緒|Io
|「って、それ半年前から同じこと言ってるじゃん！<br>いい加減ビシっと決めてよ！　男だろ！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1175|武也|Takeya
|「お前の方がよっぽど男らし…
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1176|武也|Takeya
|わかったごめんごめん！<br>その、なんだ、帰り際に…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1177|依緒|Io
|「次カラオケボックスじゃん！<br>他に誰も聞いてないからうってつけじゃん！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1178|武也|Takeya
|「なんだよ！<br>マイク持って大声で告白しろとでも言うのかよ？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1179|依緒|Io
|「いや…それは恥ずかしい、けど…<br>う、うん…悪くないかも」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1180|武也|Takeya
|「マジかお前！<br>なんか色々焦り来てる！？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1181|依緒|Io
|「お前、中学の時からずっとあたし狙ってたくせに！<br>一度寝たら興味失うって本当だったのかよ！？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1182|武也|Takeya
|「どこ情報だそれは！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1183|朋|Tomo
|「あの二人、いつになったら言うんだろうね…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1184|春希|Haruki
|「いいか？<br>聞いたらちゃんと驚いてやるんだぞ？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1185|朋|Tomo
|「え～、めんどくさ～」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1186|雪菜|Setsuna
|「はい、はい、じゃあ、その部屋で。<br>え～と………５名だから５時間でお願いします」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1187|春希＆朋|
|「２時間！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1188||
|だから、一緒に季節を巡っていこう。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1189|浜田|Hamada
|「何度言ったらわかんだよ！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1190|春希|Haruki
|「他誌に奪われたら終わりですよ！？<br>今、ねじ込むしかないんですよ！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1191|浜田|Hamada
|「だから俺には<br>そこまでの予算付ける権限はないって言ってるだろ！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1192|春希|Haruki
|「だからこそ<br>上に掛け合ってくれって言ってるんじゃないですか！<br>副編でも、編集長でも、局長でも、なんなら社長でも！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1193|浜田|Hamada
|「締め切り間際でそんな面倒ごと持ち込むなこの馬鹿！<br>やりたけりゃ自分で交渉してこい！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1194|春希|Haruki
|「………」
|"........."
|}}

{{WA2ScriptLine
|1195|浜田|Hamada
|「な、なんだよ？<br>とにかく、俺は…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1196|春希|Haruki
|「聞きましたね？　松岡さん」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1197|松岡|Matsuoka
|「いや…まぁな」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1198|春希|Haruki
|「聞きましたよね？　鈴木さん」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1199|鈴木|Suzuki
|「あ～、はいはい」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1200|春希|Haruki
|「木崎さんも」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1201|木崎|Kizaki
|「毎度毎度飽きないねあんた方」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1202|浜田|Hamada
|「なんだよ？<br>一体何が言いたいんだよ北原？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1203|春希|Haruki
|「いや、別に。<br>じゃあ、駄目もとで直接交渉してみます。<br>…いいんですよね？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1204|浜田|Hamada
|「やれるもんならやってみやがれ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1205|春希|Haruki
|「…ありがとうございます。<br>では、失礼します」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1206|浜田|Hamada
|「っ…<br>おい、誰かあいつを止めろよ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1207|木崎|Kizaki
|「ここまで完全復活するとは誰が予想しただろうか…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1208|松岡|Matsuoka
|「いや、みんな大体予想してたでしょ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1209|鈴木|Suzuki
|「…まぁね」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1210|木崎|Kizaki
|「あれで体力的には確かに無茶してないんだよなぁ…<br>下っ端のくせに人の使い方が上手すぎる」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1211|松岡|Matsuoka
|「浜田さんとか、デスクとか、直属の上司とか」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1212|鈴木|Suzuki
|「いや、それ一人じゃん」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1213|浜田|Hamada
|「お前ら…<br>
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1214|浜田|Hamada
|まぁいいや。<br>どうせ上が納得するもんか、こんなバクチ企画」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1215|木崎|Kizaki
|「甘く見ない方がいいですよ…あの北原の狡猾さを」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1216|浜田|Hamada
|「ふん、こちとら何年デスクやってると思ってんだ。<br>あの程度の若手なんかにゃ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1217|木崎|Kizaki
|「多分、あいつ知ってんですよ…<br>来週の人事異動の内容」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1218|浜田|Hamada
|「………………………なんだと？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1219|松岡|Matsuoka
|「え、なにそれどゆこと？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1220|鈴木|Suzuki
|「あ、もしかして浜田さん副編昇格？<br>そっか、そしたら扱える予算の額も…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1221|木崎|Kizaki
|「それ“だけ”なら良かったんだけどね…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1222|浜田|Hamada
|「っ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1223|木崎|Kizaki
|「俺、人事に同期いるから聞いたんだけどさ、<br>ウチの部署にアメリカ帰りのエリートが<br>やってくるんだってさ………編集長として」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1224|松岡|Matsuoka
|「ア、アメリカ帰り…？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1225|鈴木|Suzuki
|「へ、編集長？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1226|木崎|Kizaki
|「………」
|"........."
|}}

{{WA2ScriptLine
|1227|松岡|Matsuoka
|「………」
|"........."
|}}

{{WA2ScriptLine
|1228|鈴木|Suzuki
|「………」
|"........."
|}}

{{WA2ScriptLine
|1229|浜田|Hamada
|「………っ、<br>あああああっ！　もうっ！」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1230|松岡|Matsuoka
|「デスク…いや、副編集長」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1231|鈴木|Suzuki
|「昇進おめでとうございます。<br>でも、短い春でしたねぇ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1232||
|冬も、春も、夏も、秋も。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1233||
|どの季節の君も、俺にとっては必要なんだから。
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1234|雪菜|Setsuna
|「もう、あんまり無理しないでよ？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1235|春希|Haruki
|「してないよ？<br>ちゃんと昨日だって日付変わる前に帰ってきただろ？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1236|雪菜|Setsuna
|「ギリッギリ五分前だよ…<br>ほんと、気をつけてよね？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1237|春希|Haruki
|「そういう雪菜だって、<br>俺が帰ってきた時、うたた寝してたじゃないか」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1238|雪菜|Setsuna
|「あ、あれは…<br>週明けにイベントがあって、その準備が忙しくて…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1239|春希|Haruki
|「へぇ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1240|雪菜|Setsuna
|「い、いまはわたしの話じゃ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1241|春希|Haruki
|「大丈夫…<br>何度再発しても、お前が癒してくれる。<br>そのたびに俺は、戻ってくるさ」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1242|雪菜|Setsuna
|「すぐそうやって誤魔化すんだから…<br>まぁ、誤魔化される方も誤魔化される方なんだけど」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1243|春希|Haruki
|「何年経っても変わらないよな、俺たち」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1244|雪菜|Setsuna
|「いい意味でも、悪い意味でもね」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1245|春希|Haruki
|「多分、一生ずっとこのままだよな、二人とも」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1246|雪菜|Setsuna
|「………うん」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1247||
|………
|.........
|}}

{{WA2ScriptLine
|1248|雪菜|Setsuna
|「あ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1249|春希|Haruki
|「どうした雪菜？<br>こっちだぞ？」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1250|雪菜|Setsuna
|「春希くん、あれ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1251|春希|Haruki
|「ああ…」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1252|春希|Haruki
|「…一緒に行こうな」
|
|}}

{{WA2ScriptLine
|1253|雪菜|Setsuna
|「…うん」
|
|}}

{{WA2ScriptTableEnd}}