White Album 2/Script/2308
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Text
Speaker | Text | Comment | |||
---|---|---|---|---|---|
Line # | JP | EN | JP | EN | |
1 | ……… | .........
| |||
2 | 美穂子の母 | Mihoko's Mother | 「ごめんなさいね。 今日もやっぱり気分が優れないみたいで」 | ||
3 | 小春 | Koharu | 「そう、ですか…」 | ||
4 | 美穂子の母 | Mihoko's Mother | 「何か伝言があったら伝えておきますけど?」 | ||
5 | 小春 | Koharu | 「あ、いえ… 昨日、クラス担任と委員長が来たと思うんですが」 | ||
6 | 美穂子の母 | Mihoko's Mother | 「ええ、卒業のこととか… そのことも話したんだけど、 それでも来週から登校できるかどうかは…」 | ||
7 | 小春 | Koharu | 「………」 | "........."
| |
8 | 美穂子の母 | Mihoko's Mother | 「ねぇ杉浦さん。 美穂子、本当に卒業できないのかしら? せっかく大学も推薦もらってるのに…」 | ||
9 | 小春 | Koharu | 「あ、いえ、多分そんなことは… 美穂子、成績いいし、それに私立だから、 少しくらいは融通利くと思うし」 | ||
10 | 美穂子の母 | Mihoko's Mother | 「だといいんですけどねぇ… 昨日、担任の先生が結構難しいみたいなこと言ってて…」 | ||
11 | 小春 | Koharu | 「…諏訪先生、いつも大げさだから。 大丈夫ですよ、きっと」 | ||
12 | 美穂子の母 | Mihoko's Mother | 「そう? ありがとう。 本当にいつもいつも美穂子が世話になって。 私も、杉浦さんにはとても感謝してるのよ」 | ||
13 | 小春 | Koharu | 「っ…」 | ||
14 | 美穂子の母 | Mihoko's Mother | 「これからも美穂子と仲良くしてあげてね? あの子、あなたと一緒にいたくて文学部選んだのよ? これ秘密なんだけどね」 | ||
15 | 小春 | Koharu | 「は…はい…っ、 ずっと、ずっと…一緒です」 | ||
16 | 美穂子の母 | Mihoko's Mother | 「ありがとう… それじゃあね」 | ||
17 | 小春 | Koharu | 「………っ」 | ||
18 | 小春 | Koharu | 「…諦めるなっ!」 | ||
19 | 小春 | Koharu | 「っ…ぅ…ふぅぅ…」 | ||
20 | 小春 | Koharu | 「………バイト、行かなきゃ」 | ||
21 | 春希 | Haruki | 「お、おはよう」 | ||
22 | 小春 | Koharu | 「………」 | "........."
| |
23 | 杉浦の今の心境を考えると、 声をかけるのは心苦しくはあったけど… | ||||
24 | でも、さっきからずっと視界に収まるところにいたのに、 全然気づいてくれなかったからなぁ。 | ||||
25 | 小春 | Koharu | 「どうして…」 | ||
26 | 春希 | Haruki | 「ええと…孝宏君に聞いた」 | ||
27 | 小春 | Koharu | 「へぇぇ…本当に家族ぐるみの付き合いなんですねぇ」 | ||
28 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
29 | 小春 | Koharu | 「ごめんなさい… 今のは余計でした」 | ||
30 | すぐに訂正したとは言え、 その言葉は杉浦らしくない毒に満ちていた。 | ||||
31 | 多分、俺がここにいるのが完全な想定外だったせいで、 俺との会話の持って行き方を見失ってるせいだろう。 | ||||
32 | 春希 | Haruki | 「矢田さん、年が明けてから一度も登校してないって。 大学は受かってるのに卒業の方が心許ないって」 | ||
33 | 小春 | Koharu | 「美穂子の家の場所も小木曽が…?」 | ||
34 | 春希 | Haruki | 「ううん。 塾で教えてたとき、2、3回送ったことがあるんだよ。 …質問に答えてたら遅くなっちゃってね」 | ||
35 | 小春 | Koharu | 「2、3回…」 | ||
36 | ともすると矢田さんは、 『彼女くらいの理解度ならすぐに解けるはず』の問題を、 やたらとてこずることがたまにあったけど。 | ||||
37 | 今となって考えてみれば、それは… | ||||
38 | 春希 | Haruki | 「にしても、やっとわかった」 | ||
39 | 小春 | Koharu | 「何が、ですか?」 | ||
40 | 春希 | Haruki | 「先週、遅刻した理由。 元気がなかった理由。 …それでもバイトに来た理由」 | ||
41 | 小春 | Koharu | 「………」 | "........."
| |
42 | 春希 | Haruki | 「この前も、朝ここに来たから… 門前払いされたから、遅れたんだよな?」 | ||
43 | ここは、グッディーズとは駅を挟んで ちょうど反対側の住宅地。 | ||||
44 | だから、バイトに行く前にちょっと寄ろうと考えて、 けれど、結局どれだけ待っても 矢田さんは部屋から出てきてくれなくて… | ||||
45 | 小春 | Koharu | 「正解。 …と、言いたいところだけど、 半分しか合ってないです、それ」 | ||
46 | 春希 | Haruki | 「あ、あれ? なんで…」 | ||
47 | 小春 | Koharu | 「先週は部屋に上げてくれたんですよ。 話もさせてくれたんですよ」 | ||
48 | 春希 | Haruki | 「え…?」 | ||
49 | 小春 | Koharu | 「けど、余計こじらせちゃったんです、 わたしが強情だったせいで」 | ||
50 | 俺の、一晩かかって思いついた完璧なはずの謎解きは、 結局、一問目から思いっきり不正解だった。 | ||||
51 | 小春 | Koharu | 「…行きましょうか、バイト。 ちょっと走らないと開店に間に合わないかも」 | ||
52 | 春希 | Haruki | 「杉浦…」 | ||
53 | 結局その後、俺たちは二人揃って10分遅刻し、 佐藤たちにさらなる疑念を抱かせることになった。 | ||||
54 | 小春 | Koharu | 「だから、わたしにそんなつもりなんか全然なかった。 ただ、みんなとの卒業旅行の旅費を稼ぐためだったんだ。 本当だからね?」 | ||
55 | 美穂子 | Mihoko | 「………」 | "........."
| |
56 | 小春 | Koharu | 「そこに北原先輩がいたのも完璧に偶然。 たまたまあの先輩が以前から働いてたお店だっただけ。 で、わたしの教育係に任命されちゃって」 | ||
57 | 美穂子 | Mihoko | 「………」 | "........."
| |
58 | 小春 | Koharu | 「…信じられない?」 | ||
59 | 美穂子 | Mihoko | 「…続けて」 | ||
60 | 小春 | Koharu | 「うん…ありがと」 | ||
61 | 美穂子 | Mihoko | 「………」 | "........."
| |
62 | 小春 | Koharu | 「あの日はさ…先輩、お休みの日だったんだ。 本当は、しばらくお店に来ないことになってて、 そのまま接点もなくなるはずだったの」 | ||
63 | 美穂子 | Mihoko | 「そう…」 | ||
64 | 小春 | Koharu | 「けどあの日、突然先輩がお店に現れて… それで、ちょっと様子が変だったから」 | ||
65 | 小春 | Koharu | 「…わたしがそういうのほっとけないタチだって、 美穂子知ってるよね?」 | ||
66 | 美穂子 | Mihoko | 「わたしと友達になったときも、 似たようなきっかけだったよね」 | ||
67 | 小春 | Koharu | 「あ~あの時! 確か班分けのときに美穂子が…」 | ||
68 | 美穂子 | Mihoko | 「…いいよその話は。 それよりも続きを聞かせて」 | ||
69 | 小春 | Koharu | 「…うん。で、あの人も意地張って逃げるもんだから、 わたしも頭に来ちゃって、制服のまま店の外に出て、 駅前追いかけてさぁ」 | ||
70 | 美穂子 | Mihoko | 「最初、小春ちゃんだって信じられなかった。 顔も背格好も髪型も小春ちゃんだったのに」 | ||
71 | 小春 | Koharu | 「あはは…冬の夜の駅前にあの格好はないよねぇ。 我ながら思い返すだけで恥ずかしい」 | ||
72 | 美穂子 | Mihoko | 「でも走り方でわかっちゃった。 体育とかテニス部のときと同じで、 カモシカみたいに跳ねて、速くて、格好良くて」 | ||
73 | 小春 | Koharu | 「美穂子…」 | ||
74 | 美穂子 | Mihoko | 「そして、小春ちゃんらしく堂々と、 先生のこと捕まえて、隣に…」 | ||
75 | 小春 | Koharu | 「だ、だからその時も、 ちょっと話しただけなんだってば! 見てたんならわかるよねぇ?」 | ||
76 | 美穂子 | Mihoko | 「うん… わたしとの電話を切った後、先生と別れて すぐに駅の方に消えていった」 | ||
77 | 小春 | Koharu | 「あれからすぐ帰ったんだよ。 ほら、美穂子が心配するようなこと何もないでしょ?」 | ||
78 | 美穂子 | Mihoko | 「…ならなんで嘘ついたの? まだバイト先だとか、仕事残ってるとか」 | ||
79 | 小春 | Koharu | 「………ごめん。 それだけは、何言っても言い訳になっちゃうね」 | ||
80 | 美穂子 | Mihoko | 「小春ちゃん…」 | ||
81 | 小春 | Koharu | 「うん、わたし、美穂子に嘘ついた。 あなたを傷つける真似、したよ。 …それは認める」 | ||
82 | 美穂子 | Mihoko | 「認めちゃうんだ…嘘ついたこと」 | ||
83 | 小春 | Koharu | 「だって、大切なのはこれからだと思うもん。 …なんて、嘘ついた方が 言うことじゃないのかもしれないけどね」 | ||
84 | 美穂子 | Mihoko | 「これから…?」 | ||
85 | 小春 | Koharu | 「償うよ。許されるためならできるだけのことはする。 だってわたし、こんなことで美穂子とこじれるの、 絶対に嫌だから」 | ||
86 | 美穂子 | Mihoko | 「………」 | "........."
| |
87 | 小春 | Koharu | 「もうすぐ卒業なのに。これからも同じ大学に通うのに。 …親友なのに、ここで友情壊れちゃうなんて悲しいよ」 | ||
88 | 美穂子 | Mihoko | 「あ…」 | ||
89 | 小春 | Koharu | 「美穂子は? もうわたしのこと、もうそんなふうに思えない?」 | ||
90 | 美穂子 | Mihoko | 「それ、は…」 | ||
91 | 小春 | Koharu | 「………」 | "........."
| |
92 | 美穂子 | Mihoko | 「それは…それはぁ…っ」 | ||
93 | 小春 | Koharu | 「うん…」 | ||
94 | 美穂子 | Mihoko | 「わたし…小春ちゃんのこと、信じたい。 また一緒に学校行きたい。 同じ大学にだって進みたいよ…っ」 | ||
95 | 小春 | Koharu | 「…ありがとう、美穂子」 | ||
96 | 美穂子 | Mihoko | 「だから信じたい、信じたいよ! もうお互い二度と嘘つかないって、 誓い合えたらどんなにいいかって…」 | ||
97 | 小春 | Koharu | 「うん、誓おう。 だから美穂子…」 | ||
98 | 美穂子 | Mihoko | 「けど…小春ちゃん、まだ隠してるでしょ!? 先生のこと」 | ||
99 | 小春 | Koharu | 「………え」 | ||
100 | 美穂子 | Mihoko | 「先生が落ち込んでた理由、知ってたんでしょ? 本当は、そのことに小春ちゃん絡んでたんじゃない?」 | ||
101 | 小春 | Koharu | 「美穂子…?」 | ||
102 | 美穂子 | Mihoko | 「わたしと関係ないところで、 先生の秘密、いっぱい知っちゃったんじゃないの?」 | ||
103 | 小春 | Koharu | 「………」 | "........."
| |
104 | 美穂子 | Mihoko | 「だって小春ちゃん、人の話を聞くの上手いもん。 …わたしとは、そういうところ全然違うもん」 | ||
105 | 小春 | Koharu | 「それは、その…」 | ||
106 | 美穂子 | Mihoko | 「ねぇ、親友なら…全部教えてよ。 先生と、何を話したのか、全部」 | ||
107 | 小春 | Koharu | 「ぜん…ぶ?」 | ||
108 | 美穂子 | Mihoko | 「先生って、どんな人なの? どんなことを考えてる? どんな夢を持ってる?」 | ||
109 | 小春 | Koharu | 「………」 | "........."
| |
110 | 美穂子 | Mihoko | 「家族は? 昔はどんな子だった? 子供の頃の写真とか見せてもらったことある?」 | ||
111 | 美穂子 | Mihoko | 「…どんな人のことが好きなの?」 | ||
112 | 小春 | Koharu | 「………」 | "........."
| |
113 | 美穂子 | Mihoko | 「クリスマスの夜のとき… 先生は、何を悩んでたの? どんな話を聞いたの?」 | ||
114 | 美穂子 | Mihoko | 「そのことで、わたし力になれる? 先生と、仲直りできるかな?」 | ||
115 | 小春 | Koharu | 「………」 | "........."
| |
116 | 美穂子 | Mihoko | 「わたし、あんな酷いこと言われたけれど… それでも、まだ…」 | ||
117 | 小春 | Koharu | 「………ょ」 | ||
118 | 美穂子 | Mihoko | 「…小春ちゃん?」 | ||
119 | 小春 | Koharu | 「………無理だよ、美穂子」 | ||
120 | 美穂子 | Mihoko | 「え…」 | ||
121 | 小春 | Koharu | 「そんなの、何も話せない。 話せるわけないってば」 | ||
122 | 美穂子 | Mihoko | 「ど、どうして…? だって、小春ちゃんさっき償うって。 できるだけのことはするって…」 | ||
123 | 小春 | Koharu | 「そっかぁ…『誰に対しての誠実』って、こういうことか。 ほんと、わたしもまだまだだね」 | ||
124 | 美穂子 | Mihoko | 「何を…言ってるの?」 | ||
125 | 小春 | Koharu | 「あのさ美穂子… わたし、もう誰に対しても嘘をつきたくない。 嘘をつくことはできない」 | ||
126 | 美穂子 | Mihoko | 「うん、さっきそう約束したよね。 だから…」 | ||
127 | 小春 | Koharu | 「そして、美穂子以外にも、 これ以上傷つけたくない人がいる」 | ||
128 | 美穂子 | Mihoko | 「それ…って」 | ||
129 | 小春 | Koharu | 「だったら、もう口をつぐむしかないんだ。ごめんね」 | ||
130 | 美穂子 | Mihoko | 「先生の…こと?」 | ||
131 | 小春 | Koharu | 「話せないって…言ったよね?」 | ||
132 | 美穂子 | Mihoko | 「さっきの約束…もう破るの?」 | ||
133 | 小春 | Koharu | 「これは嘘じゃない。 ただ、話せないだけなの。 嘘をつけないなら、そうするしかないの」 | ||
134 | 美穂子 | Mihoko | 「こはる…ちゃ…っ」 | ||
135 | 小春 | Koharu | 「…今日はもう、これ以上話し合うのは無理かな。 またお互い落ち着いたら話し合おう?」 | ||
136 | 美穂子 | Mihoko | 「っ…ぅ、ぅ…」 | ||
137 | 小春 | Koharu | 「今日は帰るよ…わたし。 できれば来週から学校………ごめん、 今言うことじゃないよね。じゃ」 | ||
138 | 美穂子 | Mihoko | 「………嘘つき」 | ||
139 | 小春 | Koharu | 「違うよ」 | ||
140 | 美穂子 | Mihoko | 「小春ちゃんの嘘つき!」 | ||
141 | 小春 | Koharu | 「ここからはもう嘘じゃない」 | ||
142 | 美穂子 | Mihoko | 「だったらどうして…っ!」 | ||
143 | ……… | .........
| |||
144 | …… | ......
| |||
145 | … | ...
| |||
146 | 小春 | Koharu | 「………」 | "........."
| |
147 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
148 | 今日のバイトは、 手しか動いていなかった気がする。 何をやっていたのか正直もう覚えてない。 | ||||
149 | ただ、この瞬間を… 杉浦と二人きりで話せる夜をずっと待って、 夜まで退屈で忙しい時間を過ごしてた。 | ||||
150 | 小春 | Koharu | 「大喧嘩、だったんです。 …わたしたちの間でも初めてってくらい」 | ||
151 | 杉浦の話は、肝心なところは色々とぼかされたけれど… | ||||
152 | それでも、自分が受けた心のダメージについては、 こっちにまで直接跳ね返ってくるくらい、 リアルに伝えてくれた。 | ||||
153 | 小春 | Koharu | 「美穂子の家を出た後、しばらく何も考えられなくて… だからお店への連絡も遅れちゃって。 それに、言い訳もめちゃくちゃになっちゃって」 | ||
154 | …先週の、様子のおかしかった杉浦の、 これが全ての原因だって信じられるくらい。 | ||||
155 | 小春 | Koharu | 「やっちゃいました、わたし… こんなはずじゃ、なかったのに」 | ||
156 | 体の不調じゃなかった。 心の傷だった。 | ||||
157 | …迂闊だな、俺。 ついこの間までの、俺の症状そのものだったのに。 | ||||
158 | 本当に、自分のことばっかりだ。 年上のくせに、男のくせに… | ||||
159 | 春希 | Haruki | 「なぁ、杉浦」 | ||
160 | 小春 | Koharu | 「なんですか?」 | ||
161 | 春希 | Haruki | 「前、矢田さんとのこと話したとき、 言ってたこと覚えてるか?」 | ||
162 | 小春 | Koharu | 「ええ」 | ||
163 | 小春 | Koharu | 『いいえ、これはわたしと美穂子の問題ですから。 ちゃんと二人だけで解決してみせますのでご安心を』 | ||
164 | 春希 | Haruki | 「今でもその気持ちに変わりないか?」 | ||
165 | 小春 | Koharu | 「はい」 | ||
166 | 強… | ||||
167 | ここで即答するのが、 この杉浦小春ってコの凄いところなんだ。 | ||||
168 | 春希 | Haruki | 「今の俺はさ… 去年の暮れの俺に比べて、 格段にお節介になってるって知ってるか?」 | ||
169 | 小春 | Koharu | 「………はい」 | ||
170 | 春希 | Haruki | 「これも、杉浦のおかげだ。 君が立ち直らせてくれたから」 | ||
171 | 小春 | Koharu | 「素直に受け取っておきます。 …ついでに、結構嬉しいです」 | ||
172 | 俺が到底及びもつかない意志の強さと… | ||||
173 | そして、未だ本当の挫折を味わったことのない、 まっすぐに伸びた茎。 | ||||
174 | 春希 | Haruki | 「だからさ…これ以上杉浦が辛い顔してたら、 俺が直接矢田さんと話そうとするかもしれない」 | ||
175 | 小春 | Koharu | 「…当事者がそんなことしたら逆効果です」 | ||
176 | 春希 | Haruki | 「ごめんな、杉浦… 俺を助けるために、彼女とそんなことに」 | ||
177 | 小春 | Koharu | 「そんなの、違う。 ただわたしが…」 | ||
178 | 春希 | Haruki | 「それでも俺、あのときは杉浦が必要だった。 君がいなくちゃダメだった」 | ||
179 | 小春 | Koharu | 「あ………あは、あはは…」 | ||
180 | あんなに悲しいことがあったのに… | ||||
181 | それでも杉浦は、 俺の情けなさが露見した瞬間には、 自分が手に入れた優位を、嬉しそうに笑う。 | ||||
182 | 春希 | Haruki | 「ダメな人間だけど、すごく迷惑かけたけど、感謝してる。 償わなくちゃいけないのは、俺の方だ」 | ||
183 | 小春 | Koharu | 「先輩は…悪くないよ。 本当に、本当に…だってわたしは…」 | ||
184 | 春希 | Haruki | 「杉浦」 | ||
185 | 小春 | Koharu | 「仲直りできるチャンスなんて、何度でもあったのに… なのにわたし、あの子にとんでもないことを…」 | ||
186 | 春希 | Haruki | 「小春!」 | ||
187 | 小春 | Koharu | 「っ!?」 | ||
188 | 春希 | Haruki | 「あ、いや… 今のは」 | ||
189 | しまった… | ||||
190 | とんでもないことをしてしまったのはこっちだ。 | ||||
191 | 小春 | Koharu | 「………」 | "........."
| |
192 | 許してもらってないのに。 認めてもらおうとしてすらいなかったのに。 | ||||
193 | 春希 | Haruki | 「す、すぎ…」 | ||
194 | 小春 | Koharu | 「………」 | "........."
| |
195 | けれど、ここで後退するのは、 最低に最低を上塗りすることになるって… | ||||
196 | 春希 | Haruki | 「いや、小春」 | ||
197 | 小春 | Koharu | 「…春希先輩」 | ||
198 | だから、一緒に踏み越えれば… | ||||
199 | 春希 | Haruki | 「これからも、一緒にバイト頑張ろうな、小春」 | ||
200 | 小春 | Koharu | 「………いいんですか?」 | ||
201 | 春希 | Haruki | 「卒業して、春になっても… 俺たちが、本当の先輩と後輩になった後も」 | ||
202 | 今の杉浦…小春は、 年末の時の俺と同じだから。 | ||||
203 | だったら治療法はよく知ってる。 目の前の女の子が、体を張って教えてくれた。 | ||||
204 | 春希 | Haruki | 「だから、頼りたければ頼ってもいいし、 話したければ、気が向いたときにいつでも 呼んでくれればいい」 | ||
205 | 簡単なことだ… 冬休みの時の小春と、同じ事をすればいい。 | ||||
206 | 春希 | Haruki | 「けど、小春が俺を呼ぶまでは、 余計な介入はしないから」 | ||
207 | ただずっと、側にいてあげれば… | ||||
208 | 小春 | Koharu | 「…わたしを避けてたんじゃなかったんですか?」 | ||
209 | 春希 | Haruki | 「誰がそんなこと言った?」 | ||
210 | 小春 | Koharu | 「………」 | "........."
| |
211 | 避けてたよ。当たり前だろ? | ||||
212 | だって、 こうなることを恐れてたんだから… | ||||
213 | 春希 | Haruki | 「言っておくけど、俺、 本質的には小春と同じだからな?」 | ||
214 | 小春 | Koharu | 「先輩…春希先輩っ」 | ||
215 | 春希 | Haruki | 「さっきはあんなこと言ったけど、 すぐにしつこく干渉していくかもしれないぞ?」 | ||
216 | 小春 | Koharu | 「う、うん…はいっ」 | ||
217 | 春希 | Haruki | 「同じ学部の先輩として、同じ付属の卒業生として、 同じバイト先の先輩として、色々な立場を利用して…」 | ||
218 | 小春 | Koharu | 「それってつまり… 四月からも一緒にバイトしてくれるんですか? わたしの側に、いてくれるんですか?」 | ||
219 | 春希 | Haruki | 「…約束する」 | ||
220 | 小春 | Koharu | 「絶対に? 誓って? 何があっても撤回したりしない?」 | ||
221 | 春希 | Haruki | 「…どうすれば信じる?」 | ||
222 | 小春 | Koharu | 「態度で示してくれれば…」 | ||
223 | 春希 | Haruki | 「た、態度って…」 | ||
224 | まさか…いきなり? | ||||
225 | 小春 | Koharu | 「………なでてください」 | ||
226 | 春希 | Haruki | 「………なに?」 | ||
227 | と、思い切り心臓を抉られそうになった俺は、 次の瞬間、いきなり脱力させられた。 | ||||
228 | 小春 | Koharu | 「わたし、いいこだから… 今までずっと頑張って、いいこにしてきたんだから」 | ||
229 | だって、あの大人びた小春が。 | ||||
230 | 少なくとも去年までは、 誰にも弱みなんか見せなかった小春が。 | ||||
231 | 小春 | Koharu | 「だから、いいこいいこって…してください」 | ||
232 | 春希 | Haruki | 「っ…」 | ||
233 | 小春 | Koharu | 「ひゃんっ」 | ||
234 | 小春の頭を鷲掴みにして、 まるで押さえつけるようにその髪を撫でつける。 | ||||
235 | 『いいこいいこ』って言うには、 あまりにも手荒い祝福だって、わかってる。 | ||||
236 | けど、そんな真似、正気じゃできない。 思いっきり感情入れないと、どうしようもない。 | ||||
237 | 春希 | Haruki | 「小春…この…お前っ」 | ||
238 | 小春 | Koharu | 「せ、先輩…わたし、わたしぃ…っ」 | "S-Senpai... I, I..."
| |
239 | 頭を滅茶苦茶にわしゃわしゃされながら、 それでも小春は心底嬉しそうに目を閉じる。 | ||||
240 | 小春 | Koharu | 「わたし、今… 生まれてきてから、一番弱い自分かもしれないですっ」 | ||
241 | 春希 | Haruki | 「そうかよ…」 | ||
242 | 小春 | Koharu | 「ここ数日で、 一生分の嘘をついちゃったのに、 それなのに、こんなに幸せな気持ちになるなんて…」 | ||
243 | 春希 | Haruki | 「小春…っ」 | ||
244 | 小春 | Koharu | 「絶対に…罰が当たるよぅ、こんなの…っ」 | ||
245 | 小春 | Koharu | 「…今日はもう、これ以上話し合うのは無理かな。 またお互い落ち着いたら話し合おう?」 | ||
246 | 美穂子 | Mihoko | 「っ…ぅ、ぅ…」 | ||
247 | 小春 | Koharu | 「今日は帰るよ…わたし。 できれば来週から学校………ごめん、 今言うことじゃないよね。じゃ」 | ||
248 | 美穂子 | Mihoko | 「………嘘つき」 | ||
249 | 小春 | Koharu | 「違うよ」 | ||
250 | 美穂子 | Mihoko | 「小春ちゃんの嘘つき!」 | ||
251 | 小春 | Koharu | 「ここからはもう嘘じゃない」 | ||
252 | 美穂子 | Mihoko | 「だったらどうして…っ!」 | ||
253 | 美穂子 | Mihoko | 「冬休みの間、一度も連絡してくれなかったの! わたしのこと、放っておいたの!?」 | ||
254 | 小春 | Koharu | 「………ぇ」 | ||
255 | 美穂子 | Mihoko | 「電話するって…帰ったら電話するって言ったじゃない! わたし待ってたのに! 次の日も、その次の日も、年が明けたって!」 | ||
256 | 小春 | Koharu | 「………………っ!?」 | ||
257 | 美穂子 | Mihoko | 「先生と…先生と一緒にいる時間はあんなにあったのに、 わたしとは電話で話す時間すら作ってくれなかった! …わたしを放ってずっと先生の側にいたんじゃないっ!」 | ||
258 | ……… | .........
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Introductory Chapter | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
1001 | 1008 | 1009 | 1010 | 1011 | 1012 | 1013 |
1002 | 1008_020 | 1009_020 | 1010_020 | 1011_020 | 1012_020 | |
1003 | 1008_030 | 1009_030 | 1010_030 | 1011_030 | 1012_030 | |
1004 | 1008_040 | 1010_040 | 1012_030_2 | |||
1005 | 1008_050 | 1010_050 | ||||
1006 | 1010_060 | |||||
1006_2 | 1010_070 | |||||
1007 |
Closing Chapter | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Common | Setsuna | Koharu | Chiaki | Mari | ||||||
2001 | 2011 | 2020 | 2027 | 2301 | 2309 | 2316 | 2401 | 2408 | 2501 | 2510 |
2002 | 2012 | 2021 | 2028 | 2302 | 2310 | 2317 | 2402 | 2409 | 2502 | 2511 |
2003 | 2013 | 2022 | 2029 | 2303 | 2311 | 2318 | 2403 | 2410 | 2503 | 2512 |
2004 | 2014 | 2023 | 2030 | 2304 | 2312 | 2319 | 2404 | 2411 | 2504 | 2513 |
2005 | 2015 | 2024 | 2031 | 2305 | 2313 | 2320 | 2405 | 2412 | 2505 | 2514 |
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2007 | 2017 | 2026 | 2033 | 2307 | 2315 | 2322 | 2407 | 2507 | 2516 | |
2008 | 2018 | 2308 | 2508 | 2517 | ||||||
2009 | 2019 | 2509 | ||||||||
2010 | ||||||||||
Setsuna | Koharu | Chiaki | Mari | |||||||
2031_2 | 2312_2 | 2401_2 | 2504_2 | 2511_2 | ||||||
2031_3 | 2313_2 | 2402_2 | 2507_2 | 2513_2 | ||||||
2031_4 | 2313_3 | 2402_3 |
Coda | |||||||||
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Common | Kazusa (True) | Setsuna (True) | Kazusa (Normal) | ||||||
3001 | 3008 | 3014_2 | 3020 | 3101 | 3107 | 3201 | 3207 | 3901 | 3907 |
3002 | 3009 | 3014_3 | 3021 | 3102 | 3108 | 3202 | 3208 | 3902 | 3908 |
3003 | 3010 | 3015 | 3022 | 3103 | 3109 | 3203 | 3209 | 3903 | 3909 |
3004 | 3011 | 3016 | 3023 | 3104 | 3110 | 3204 | 3210 | 3904 | |
3005 | 3012 | 3017 | 3024 | 3105 | 3111 | 3205 | 3211 | 3905 | |
3006 | 3013 | 3018 | 3106 | 3206 | 3906 | ||||
3007 | 3014 | 3019 | |||||||
Common | Setsuna (True) | Kazusa (Normal) | |||||||
3001_2 | 3210_2 | 3901_2 | 3906_2 | ||||||
3015_2 | 3902_2 | 3907_2 | |||||||
3902_3 | 3907_3 | ||||||||
3904_2 |
Mini After Story and Extra Episode | |||
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The Path Back to Happiness | The Path Forward to Happiness | Dear Mortal Enemy | |
6001 | 6101 | 4000 | 4005 |
6002 | 6102 | 4001 | 4006 |
6003 | 6103 | 4002 | 4007 |
6004 | 6104 | 4003 | 4008 |
6005 | 4004 | 4009 |
Novels | |||||
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The Snow Melts, And Until The Snow Falls | The Idol Who Forgot How to Sing | Twinkle Snow ~Reverie~ | After the Festival ~Setsuna's Thirty Minutes~ | His God, Her Savior | |
5000 | 5100 | 5200 | 5205 | 5300 | 5400 |
5001 | 5101 | 5201 | 5206 | 5301 | 5401 |
5002 | 5102 | 5202 | 5207 | 5302 | |
5003 | 5103 | 5203 | 5208 | 5303 | |
5004 | 5104 | 5204 | 5209 |
Short Stories | |||
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Princess Setsuna's Distress and Her Minister's Sinister Plan | Koharu Climate After the Passing of the Typhoon | This isn't the Season for White Album | Todokanai Koi, Todoita |
7000 | 7100 | 7200 | 7300 |