White Album 2/Script/3015

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1	春希	Haruki	「雪菜…っ」
2	雪菜	Setsuna	「春希く…んぅぅっ…ん、んぷ…」
3			ホテルのエレベーターに乗り、 二人以外に誰も乗っていないのを確かめた瞬間、 俺たちはもう我慢できずに唇を深く吸い合っていた。
4			俺の指は、階数ボタンを押すより先に 雪菜のスーツの中に手を入れ胸をまさぐり、 降りる時には既にシャツのボタンを外してしまっていた。
5	春希	Haruki	「雪菜、雪菜…は、ぁぁ、んぅぅ」
6	雪菜	Setsuna	「は、あむ、むぅぅ…ちゅ、ん、んぷっ… ちゅぅぅ…は、あ、あぁ…ん、くぅ、ぁ…」
7			部屋の扉に鍵を差し込む手が震えてて、 何度も何度も、扉を開けるのに失敗した。
8			その間、雪菜はドアの前に立ち塞がり、 俺の胸にしがみつき、唇に何度も自分を重ね、 鍵穴を探す俺の視界を塞いでた。
9	雪菜	Setsuna	「んぅぅぅ…は、あんっ、ん、ちゅ、んぷぁ… は、はぁ、はぁぁ…あ、んむ、ん、ん…」
10			やっと扉が開き、二人で部屋へなだれ込むと、 俺たちはもう、何にも遠慮することなく、 激しく重なり合った。
11			誰の目も、誰の心も、誰の存在も… 何もかも、意識の外に追いやって。
12	春希	Haruki	「はぁ、はぁ、あ…ぁぁぁ…」
13	雪菜	Setsuna	「春希くん、春希く…んぅぅっ、 はぁ、あ、あ、あ…あああんっ」
14			右手で雪菜に激しい愛撫をしながら、 左手で、やっとのことで電気のスイッチを探り当てる。
15			薄暗いホテルのライトの下に、 スーツのボタンもシャツのボタンも全部外された あられもない雪菜が浮かび上がる。
16	雪菜	Setsuna	「はぁ、はぁ、はぁっ… や、だ…春希くん… 獣、みたいな目」
17	春希	Haruki	「雪菜…だって」
18			ぽかんと開かれた口の周りは唾液が溢れ、 人のことは言えない、とてもいやらしい表情をしてる。
19			俺のことを、とてもいやらしくしてしまう表情を…
20	雪菜	Setsuna	「んっ…ん、んぷ…くぅ…っ、 あ、あ、あ…やぁぁんっ」
21			その、まるで誘っているかのような潤んだ瞳と唇に、 俺はもう、はちきれそうなほど欲情して…
22			雪菜の背中を抱きかかえ、 そのまま、部屋のドアに押しつける。
23			ベッドまでの、たった数メートルの距離すら 今の俺にはもどかしかったから。
24	雪菜	Setsuna	「あ、あ、あっ… い、いぅっ、は、春希くん…ちょっと、待っ…ぁぁんっ」
25			そうして、強くドアに押しつけたまま、 背中から抱きしめ強くのしかかり、 二度と離れないよう全身を密着させる。
26	雪菜	Setsuna	「あ、んっ…ん、くぅ… ああ、あぁぁ…わ、たし…ひぅっ、う、ん…っ」
27			服どころか、靴を脱ぐ余裕すら与えずに…
28	春希	Haruki	「はぁ、は、あぁぁ…すぅぅ…んっ」
29			強く抱きしめ、胸を両手で鷲掴みにして、 大きく息を吸い込みながら、髪の中に顔を埋める。
30			…いつもなら一週間で手に入れることができていた、 優しく、温かく、胸を満たす雪菜の髪の香り。
31			長いお預けの時間を取り戻そうとするかのように、 胸一杯に吸い込んで荒い息を吐く。
32			激しく、冷たく、胸がすく香りの記憶を、 全身から追い出すために。
33	雪菜	Setsuna	「はぁ、あ、はぁぁぁぁ… はぁ、はぁ、はぁ…んっ、ん、ん～っ」
34			髪に軽くキスを重ねると、 俺はそのまま首筋まで下りて、 雪菜のうなじに鼻をこすりつけ、唇で触れる。
35	雪菜	Setsuna	「だ、駄目…そんな、わたし… 今日、ずっと外走り回ってて、汗… やぁんっ、ん、く…はぁぁんっ」
36	春希	Haruki	「そのまま…欲しい。 雪菜の、今のまま…」
37	雪菜	Setsuna	「ん…ゃぁ…あ、あ、あ…あんっ。 そんな、そん…ひぅぅっ、ん、ん～っ」
38			強く音を立ててうなじを吸い、 荒い息と共に、雪菜のそのままの匂いを吸う。
39			雪菜の身体から立ち上るほのかな体臭は、 雪菜が戸惑うよりも遙かに俺の情欲を掻き立てる。
40	春希	Haruki	「はぁ、はぁぁ…ん、ちゅ…んぷ… は、れろ…ちゅ、ちゅぅぅ…」
41	雪菜	Setsuna	「はぁぁんっ、や、あ、あぁ… は、春希くん、そこ…ぉ、ふぁぁっ、あ、んぅ…」
42			この寒い冬に汗なんて… きっと、走り回ったり、緊張したり、テンパったりと、 一生懸命頑張っていたんだろう。
43			だから、今のままの雪菜が尊い。 そんな今のままの雪菜を奪うからこそ、興奮する。
44	雪菜	Setsuna	「んっ、く、くぅぅっ… ひゃぅぅ…ぅんっ、ん、く…ぁ… あ、あ…あああああっ」
45			雪菜の羞恥の声が、どんどん高まっていく。
46			恥ずかしそうな仕草で、恥ずかしそうな反応で… けれど、恥ずかしいほどに激しく。
47			ドアの外に声が漏れていてもおかしくないほどに。
48	春希	Haruki	「ん…は、はぁ…」
49			俺は、そんな高まる雪菜に応えたくて、 高まる自分の欲望に正直に、唇と指先で襲いかかる。
50			うなじを息が続く限り吸い上げると、 唇をそのまま首筋まで滑らせて、 激しいキスと舌の愛撫を繰り返す。
51			雪菜の首がよじれ、こちらを向こうとしても、 ただそこに集中して、肌と匂いの両方を吸い込む。
52	雪菜	Setsuna	「あ、ああ、あああああっ… や、もう…そんな、もう、こんな…ああ、あぁぁ…」
53			心配も、逡巡も、慕情も、そして悔恨も。
54			俺が気の迷いで撒いてしまった種を、 俺の心の中で芽吹かせる訳にはいかなかったから。
55			間違った方向に伸ばしかけた手は、 今ここで軌道修正し、強く雪菜を抱きしめる。
56	雪菜	Setsuna	「は、春希く…ぅぅんっ、んっ、ん、く… あ、熱…熱い…わたし、わたし…へん」
57	春希	Haruki	「俺も…俺もだから、雪菜…」
58	雪菜	Setsuna	「大丈夫… もっと強くても、大丈夫… もっと激しくても、わたし…はぁぁんっ」
59			鷲掴みにしていた雪菜の胸を、 搾るように、さらに強く握りしめ、 俺の手の中で柔らかく形を変える乳房の感触に浸る。
60			シャツを肩まではだけさせ、 剥き出しになったそこに唇と舌と、歯を当てる。
61	雪菜	Setsuna	「はぁ、はぁ、はぁぁ… あ、いぅ、う、あ、あああんっ、ん、くぅっ…」
62			欲望が高まりすぎて、雪菜を気遣えない。 全ての場所に触れないと、我慢がならない。
63	春希	Haruki	「はぁ、あ、あ…ん、んむ… ふぅ、ぅぁ、ぁ…ん、ちゅぷ… せ、雪菜…あぁ、はぁぁ…ぁ」
64			雪菜にまみれないと、忘れられない。
65	雪菜	Setsuna	「あ、ああ、あぁ…もっと、もっと…いいよ… たくさん、痕つけて… 一月ぶん、いっぺんに…はぁぁぁっ、あ、んぅ…」
66			雪菜の匂いと、雪菜の吐息と、雪菜の喘ぎに誘われて、 指先と唇と舌先と顎に、更に大きな力を込める。
67			乳房を強く握りしめながら、 人差し指と中指の間からはみ出している乳首を、 前後に挟み込むように潰して弄ぶ。
68			最初は指の中に隠れていた乳首が、 俺の愛撫につれて、徐々に固くしこり、 その存在を強く膨らませていく。
69	雪菜	Setsuna	「はぁぁっ、あっ、あっ… や、すご、だめ…わたし、しびれて…んぅっ、 は、春希く…あぁぁ、やぁぁんっ」
70			うなじに口づけて、首筋に舌を這わせ、 肩を八重歯で傷つけて…
71	春希	Haruki	「ん、んぷ…は、ぁ…ん、れろ…」
72			そして今度はそのすぐ近くにあった、 真っ赤に染まった耳が、俺を誘ってくる。
73	雪菜	Setsuna	「～～～っ！ あ、あ、あああ…ふぁぁぁぁっ、 い、いぃぃぃっ、う、あぁぁぁんっ、ん、ん～っ」
74			小さな穴に、舌を小さく丸めて差し入れ、 唾液を流し込みながら、かき回しながら奥を目指す。
75			すぐ近くにある雪菜の顔が、 羞恥に目を閉じて、びく、びくと震えるのが、 今度は俺を痺れさせる。
76	雪菜	Setsuna	「ぃぅっ、くすぐった…気持ち、い… はぁっ、あ、や、やぁぁん…ん、く…ぅ」
77			耳だけでなく、全身が赤く染まり、軽く汗ばみ、 うなじから、首筋から、肩口から、 俺をますます狂わせる匂いが湧き出てくる。
78			雪菜の心までは読めないけれど、 少なくともその身体は、全力で俺を誘ってる。
79			だから俺は、ますます雪菜の身体の全てに触れたくなる。 何もかも、求めたくなる。
80	雪菜	Setsuna	「はっ、はぁ、はぁぁっ、あっ、あんっ… や、や、や…あぁぁぁっ」
81			スカートの上から、雪菜の太股やお尻を撫で回す。
82			ただそれだけの愛撫で、雪菜の両脚はぴぃんと突っ張り、 パンプスのかかとが今まで以上に持ち上がる。
83			そうやって、自分でわざわざバランスの悪い体勢を 取ってしまったせいなのか、それとも別の理由なのか、 今度は全身を小刻みに震わせていく。
84	雪菜	Setsuna	「あ、あぁ…あぁぁ…は、春希、くん… お、お願い、お願い…呆れたり、しないで、ね」
85	春希	Haruki	「どうして、そんな…」
86			下に降ろしていった手のひらが、 ようやく雪菜の、ストッキングに包まれた足に触れる。
87			膝裏を指でくすぐるように撫で回すと、 雪菜の揺れがますます大きくなり、息が荒くなる。
88	雪菜	Setsuna	「だ、だって、だって… 春希くん、もうすぐ…」
89	春希	Haruki	「もうすぐ…？」
90			そのまま、股の内側を撫で上げていくと、 指先がスカートを巻き込み、 ゆっくりと雪菜の太股が露わになっていく。
91	雪菜	Setsuna	「ふぁ、ぁ、ぁ…だ、だめ、だめぇ… そこから、そこから先は…」
92	春希	Haruki	「あ…っ」
93	雪菜	Setsuna	「～～～っ」
94			まだ、一番奥に触れてはいなかったはずだった。
95			内股を伝っていった俺の指先が、 とろりとした温かい粘液に触れたときには…
96	春希	Haruki	「雪菜…」
97	雪菜	Setsuna	「ご、ごめんなさい… わたし、こんな…ごめんなさぁい…っ」
98			それは、雪菜を覆っていた下着を染み出し、 その上から包み込んでいたパンストをも漏れ出して、 脚を伝って、垂れ落ちてきたってことで。
99			一体、どれだけの量溢れ出したなら、 こんなところまで垂れてくるんだろうって…
100	雪菜	Setsuna	「く、首筋とか、耳とか… もう、気持ちよくて気持ちよくて…っ、 が、我慢、できなくて…っ」
101	春希	Haruki	「っ…」
102	雪菜	Setsuna	「あっ、や、やぁぁぁぁっ！ だ、だから、今そこに触られると…ああああんっ！」
103			そんな、いやらしい事実と告白に頭を殴られ、 雪菜の理性以上に、俺が飛んでいく。
104			手のひら全体で雪菜のお尻を掴み、 中指だけを立てると、雪菜の中心に当てる。
105			指先がほんの少し触れただけで、 じゅく、と音がするくらい、そこは溢れていた。
106	雪菜	Setsuna	「あ、ああ、あぁぁ…駄目、駄目ぇ… い、今、今は…ああああああああっ！」
107			そんな雪菜の懇願を無視して、立てた中指を ストッキングと下着ごと、雪菜のなかに埋め込む。
108			薄い布と厚い布の抵抗はあったけど、 でも潤滑油は豊富にあったから、 第二関節くらいはそのまま埋まっていった。
109	雪菜	Setsuna	「はぁっ、はぁっ、はぁぁんっ、ん、く… あぁ、あぁぁ…い、いやぁ…ら、あぁ…め…ぇ」
110			…たったそれだけの行為で、 潤滑油は俺の中指を伝い、手の甲にまで垂れ落ちてきた。
111			両脚の震えはますます激しくなり、 雪菜はかかとを地に着けることもできず、 ただ、ドアによりかかって激しい感覚に耐えていた。
112			…だから俺は、 もっと、激しくしたくなる。
113	雪菜	Setsuna	「あ、あ？ な…や、やめ…春希くん見ないで…っ、 あ、ああ、やだ、やだ、やだぁぁぁ…あ～っ！」
114			雪菜の背中から体を離し、 一歩下がって膝をつく。
115			と、俺の顔の前に、 スカートをまくり上げられた雪菜の丸いお尻が、 豊かなボリュームをもって広がっていた。
116			指で感じた通り、そこの中心部からは、 下着やストッキングの色を変えてしまうくらい、 雪菜の体液が流れ出てしまっていた。
117	雪菜	Setsuna	「見ないでってばぁ、あ、や、やだって… こんな、ああ、苛めちゃ…や、ぁぁ…っ」
118			お尻を割るように両手で拡げると、 雪菜の柔肉は俺の手のひらに吸いつくように開き、 濡れそぼった部分を下着の染み越しに見せつける。
119			ストッキングもショーツも、全部粘液で貼りつき、 もう、雪菜のそこの色を隠すことはできていなかった。
120	雪菜	Setsuna	「あぁ、ぁぁぁ…ひっ、ぃ、ぃぅ… だ、だから嫌って…いやぁ…は、ぁぁ…ひぅぅ、う…」
121	春希	Haruki	「苛めて、ない。 恥ずかしがる必要なんか…」
122	雪菜	Setsuna	「だ、だって、だって… まだそこ、触られてもなかったのに…」
123			雪菜の泣き声が頭に染み込んでくる。
124			それは、雪菜から溢れてる液と同じくらい、 俺の興奮を掻き立てるだけ掻き立てて…
125	春希	Haruki	「なら… そんなこと、わからないようにすれば…」
126	雪菜	Setsuna	「あ、あっ！？ あああああっ、あ、あ～っ！」
127	春希	Haruki	「ん…ちゅぷ…ん、はぁ…はあぁぁ…」
128	雪菜	Setsuna	「あぅぁぁぁぁんっ、い、いあぁぁっ、 あ、あっ、やあああぁぁぁぁぁんっ！」
129			指が潜り込んだその穴に、 今度は唾液をたっぷりとまぶした舌を差し入れる。
130			これでもう… 雪菜から出たのか、俺から出たのかわからない。
131	雪菜	Setsuna	「ああっ、ああっ、ああああっ… あ、あぅっ、ん…や、やめ…熱っ、う、あ」
132			俺の舌の愛撫から逃れようと、 雪菜が今まで以上に背伸びをして、 お尻を引っ込めようとする。
133			けれどそこは、俺にがっちりと握られてるせいで、 ただ雪菜の逃げ場をなくしていくだけだった。
134	春希	Haruki	「ん、ちゅぷ…あ、あむ…じゅぷ…ん、んく」
135			舌先で愛撫するだけでは飽きたらず、 唇をくっつけて、二枚の下着越しに垂れてくる液をすする。
136			胸一杯に息を吸い込み、雪菜の女の匂いを堪能する。
137	雪菜	Setsuna	「ああぁぁぁ…そんな、いや、ぁ… だから、恥ずかし…あ、あ、んっ… ずっと歩き回ってて…きたない、のに…」
138	春希	Haruki	「ん、ちゅぷ…んぷ…は、ぁぁ… すぅぅ…ん、んぅ…」
139	雪菜	Setsuna	「だからぁ、まだ、そんなことしないで… せめて、お風呂に…あぁぁぁんっ」
140			甘酸っぱくて、温もっていて、柔らかくて、 震えてて、ぬめってて、蠢いてて…
141			そんな雪菜の蠱惑的な下半身を、 下着越しに五感の全てで感じていく。
142	春希	Haruki	「はぁ、はぁ、はぁぁ…雪菜…」
143	雪菜	Setsuna	「や、やぁ…ぁ…ぁ？ な、なぁ、に？」
144	春希	Haruki	「ごめん、な。 後で、弁償するから」
145	雪菜	Setsuna	「～～～っ！」
146			ナイロンが引き裂かれる高く小さな音が、 雪菜の鼓膜を響かせ、羞恥に震えさせる。
147			けれど俺の方は、破れた先から覗く雪菜の白いお尻と、 ショーツ越しにますますくっきりと浮かび上がった 雪菜の秘所を目の当たりにして、それどころじゃなかった。
148	春希	Haruki	「はぁ、はぁぁ…あ」
149	雪菜	Setsuna	「あ、あ…あああ…っ」
150			雪菜の声が、羞恥と興奮で、 どんどん高く、震えていく。
151			嫌がっているようにも、期待してるようにも、 どっちとも取れる微妙なため息を漏らす。
152	春希	Haruki	「ん…んぅっ」
153	雪菜	Setsuna	「あ、あ、あ、あ、あ…ああああっ！ あ～っ、い、や、や～っ、 はぁぁぁんっ、ん、ん～っ！」
154			けれど俺の方は単純明快で。
155			雪菜の、もっと奥まで… もっと、なかまで感じたいって…
156			もう、歯止めはまるで利いてくれない。
157	雪菜	Setsuna	「あぅぁぁぁぁ…ひぅっ、ん、くぅっ… い、あ、あ…だ、だめ、だめっ…」
158			ストッキングの裂け目に指を入れ、 ショーツをずらして、雪菜の胎内に舌を差し入れる。
159			口の中に雪菜の粘液があっという間に広がり、 さらに舌先を伝ってとめどなく溢れてくる。
160	雪菜	Setsuna	「だめ、だったらぁ… わたし、今日は… そんなことされたら、すぐに…っ」
161	春希	Haruki	「ん…んぅ…んく…ん、んぅ…」
162			雪菜のお尻に顔を埋めるようにして、 そこからこぼれる液を、音を立ててすする。
163			今までも、何度もやってきた行為なのに、 今日は、雪菜の感じ方も、俺の快感も尋常じゃない。
164	雪菜	Setsuna	「あぁっ、ああっ、あんっ… い、いや、ぁ…あぅぁぁぁ…あぅっ、 ん、んぅ、ん～っ、っはぁぁっ、あぁ」
165			雪菜は、もしかしたら、 一月のお預けが効いているのかもしれない。
166			そして俺は、もちろん同じ理由もあるけれど、 もしかしたら、もう一つの… あってはならない理由に後押しされているかもしれない。
167	春希	Haruki	「っ…ん、く…くぅ…っ」
168			そんな、今ここで考えてはいけないことを掻き消さんと、 俺はさらに、雪菜の奥深くまで潜り込む。
169			わざと舌と口で大きな音を立てて、 わざと息を荒々しく吸い込んで、 ますます雪菜の羞恥心を煽る。
170	雪菜	Setsuna	「やめて、やめ…ん、ん、ん～っ！ も、もう…後で…覚えててよぅ…？ こんな、恥ずかし…うあぁぁぁっ」
171			そして、雪菜が狙い通りの反応をすることで、 ますます俺の獣の欲望が目覚めていく。
172			雪菜の奥だけでなく、先端の突起を指先で転がし、 太股の裏の痙攣をますます誘発する。
173			中の肉壁を、舌全体でまんべんなくねぶり、 床にこぼれ落ちるほどに、奔流を搾り出す。
174	雪菜	Setsuna	「ああ、もう、もう…っ、 は、あ、いぁ、ぁ、ぁぁ… だ、だめ、だめ…ちょっと、休ませ…ぃぃぃんっ」
175			そんな雪菜の懇願に耳を貸すわけもなく、 動きをもう少し複雑にして雪菜を苛める。
176			先端の突起を、今度は爪で軽く弾き、 中には舌と同時に息を吹き込み、 空気も含ませて愛撫を続ける。
177	雪菜	Setsuna	「あああぁぁ…ああっ、あああっ… 駄目、なんだってばぁ…」
178			そんな俺の責めに、 雪菜の膝が、徐々に折れてきた。
179			ドアで支えていた身体が、 全身を震わせたまま、 ずるずると滑るように下がってきた。
180	春希	Haruki	「あ…」
181			そして、突然支えを失ったように膝がかくんと折れ、 下半身が、俺の口から強引に逃れていく。
182	雪菜	Setsuna	「はぁっ、はぁっ、はぁっ…あ、はぁぁ… も、もう…立って、られないよぅ」
183	春希	Haruki	「雪菜…」
184			雪菜は、泣きそうな声を上げ、 そのまましゃがみ込んでしまった。
185	雪菜	Setsuna	「はぁっ、はぁっ、あ、あぁ… お、お願い…少しだけ、ほんの少しだけ待って」
186			パンプスのかかとに、 破られたストッキングの隙間から覗く 白いお尻が乗せられている。
187			そこからは、俺の口から差し込まれた唾液と、 雪菜のなかから溢れ出た液とが混ざりあったものが、 床にこぼれ、少しずつ染みを拡げていく。
188	春希	Haruki	「雪菜、でも、でも、俺…」
189			そんな光景を見せられて、 しかもいつも以上に我慢を重ねた現状で。
190			いつもとは違う感情にまで苛まれている俺は、 いつもみたいに雪菜を気遣うことは…
191	雪菜	Setsuna	「今度はわたし… わたしが、春希くんを求める番、だよ」
192	春希	Haruki	「っ…」
193	雪菜	Setsuna	「立って、春希くん… お願い、わたしに………ください」
194			そんな俺の内面を知ってか知らずか…
195			頭を下げ、荒い息を吐いたまま、 雪菜は、俺の袖口を掴んだ。
196			………	.........
197	雪菜	Setsuna	「んっ、ちゅぷ…は、あむ…ん、んぅ… はぁ、はぁ、ぁぁぁ…あ、んむ…んむぅ」
198	春希	Haruki	「～～～っ！ あ、あ、あ、あああああっ」
199			それは、雪菜の懇願によるものか、 俺の欲望の吐露によるものか…
200			俺は、膝をつく雪菜の前に自分から立ったのか、 促されるまま立たされたのかわからないまま、 けれどいつの間にか、それは雪菜の口の中にあった。
201	雪菜	Setsuna	「んぷ、はむ…んむぅ… ちゅぅぅぅ…は、あ、あむ…ん、んぷ、んく…」
202			ファスナーが下りる音も、 雪菜に引きずり出された感触も、 もう頭の中から抜けている。
203			今、目の前で俺のものを夢中で頬張る雪菜の、 何かに取り憑かれたようなうっとりした表情が、 俺の頭の中の記憶を全て吹き飛ばしてしまったから。
204	雪菜	Setsuna	「はぁ、あ、ああ…春希くん…はぁ、はぁぁ… すごく、春希くんの匂い、するよ…？」
205	春希	Haruki	「せ、雪菜、ぁ…」
206			さっきの俺と同じように、 胸一杯に大きく息を吸い込み、 相手の匂いを嗅ぎ、ますます興奮していく。
207			相手の感じるところにしつこく唇と舌を這わせて、 自分のしているはしたない行為を思い、 激しく興奮していく。
208	雪菜	Setsuna	「ん、んく…じゅぷ…あ、んぅ…れろ、は、ぁぁ… ぁぁぁ…おいしい…よ、ぉぉ…んぉぉぅ…んぷ」
209	春希	Haruki	「っ…あ、あ、あ…あぁぁぁぁっ」
210			俺が始めたこと。 雪菜が、覚えたこと。
211			二人で積み上げた、恋人同士の行為。 恋人だけに許される、とても人には言えない行為。
212	雪菜	Setsuna	「ん、ちゅぷっ…は、ちゅぅぅ…んっ、 はぁ、ぁ、ぁぁ…春希くんの、お○ん○ん… わたしの口の中より、熱い、よ」
213			奥まで飲み込んだかと思うと、今度は口の中から抜き取り、 先端にキスを繰り返し、舌先でちろちろと舐め上げる。
214			視線は、もう俺の怒張から離れない。
215			目は垂れ下がり、口の端から唾液を垂らし、 まるで夢の中にいるかのような表情で、 けれど見つめているのは、あんなグロテスクな…
216	雪菜	Setsuna	「ん、んむ…んぷ…ぇろ、ちゅ、ちゅぷ…んぅぅぅ、 んぅ、んっ、ちゅぅぅぅ…んっ、んく…」
217	春希	Haruki	「う、あ、あ…はぁっ、あ、あぅ、ぅぁぁ…」
218			先端に舌を這わせたまま、唇が先っぽだけを含む。
219			上唇と下唇で、柔らかく、けれど強く挟まれて、 中に含まれた部分に、雪菜の舌が回るように絡みつく。
220	雪菜	Setsuna	「ちゅぅぅぅ…ん、んく、んっ… れろ、あ、あむ…んぅぅ…ちゅぷ…ん、んく…」
221			雪菜の喉が大きな音を立てて、 俺をねぶった後の液を飲み込み、 けれどそこに溢れる唾液は乾くことなく俺を浸す。
222	春希	Haruki	「あ、あぁ…雪菜…ぅ、ぁぁ…」
223			そこにいるのは、いつもの… 明るくて朗らかな、誰もが知っている雪菜ではなかった。
224			想像以上に蠱惑的で、暗くて、湿ってて、 信じられないくらい執拗で、淫猥で…
225			そんな、俺と二人きりの時にしか見せない、 俺しか知らない雪菜。
226	雪菜	Setsuna	「んぶっ…ん、んぅ、ん～っ！ あ、んっ…んんっ、んぅぅっ、ん…くぷ…んんんんっ」
227			そんな雪菜の責めにつられて、 いつの間にか、彼女の頭を強く掴んでた。
228			そのまま俺が押しつけたのか、 それとも雪菜が飲み込んだのか…
229			雪菜の口唇は、俺の根本に口づけるくらい、 喉の奥まで深く俺を飲み込んでいた。
230	春希	Haruki	「ああっ、あああっ、ああぅっ… あ、雪菜、雪菜…ふぁ、あぁぁぁっ」
231			雪菜が俺に、秘所を指と舌で愛撫され、 あっという間に耐えられなくなってしまったように、 俺の方も、あっという間に限界を迎えそうだった。
232			一月も離れていたゆえの劣情。 すれ違いを無理やり重ねたゆえの反作用。
233			それに、きっとあるはずなんだ。 …お互いが、和解したことによる安堵も。
234	雪菜	Setsuna	「んむぅぅ、ん、ん～っ！ はぶっ、んっ、んむっ、ん、むぁぁ…あんっ」
235			奥まで飲み込んで、先っぽまで抜き出して…
236			雪菜の動きが、どんどん早く、リズミカルに… 俺を導くような動きに変わっていく。
237	春希	Haruki	「あっ、はぁっ、はぁぁぁぁっ…ぅぅ…っ」
238			雪菜の頭を掴む俺の手がそうさせているのか、 それとも雪菜自らの意志でしているのか…
239			そのぬめりは、俺の根本から先端まで激しく往復し、 空気と水が混ざり合う大きな音を耳に届け、 痺れるような、ひりつくような快感を全身に届ける。
240	雪菜	Setsuna	「んぅっ、んぷっ、はむっ、ん、じゅぅぅぅ…んぶっ、 はぁっ、はぁっ、んむぅぅぅ…んくっ、こくっ…ん…っ」
241			雪菜の喉が大きく動き、 雪菜の視線が、俺を上目遣いで捉え、 雪菜の液が、口からだけでなく、床に垂れる。
242			もう、雪菜を… そんな淫靡な光景を視界に収められるほど、 俺の我慢は保たなくて、思わず天井を見上げる。
243	雪菜	Setsuna	「んくっ、んっ、ちゅぅぅ…んむ、ん、んぅっ… はぁ、は、あ、んむぅぁ…あぷっ、んっ、んっ…」
244	春希	Haruki	「うああぁぁぁ…ぁぁ、ぁ…っ、 はぁっ、あっ、く、くぅぁぁ…ぃぅっ…」
245			けれど、目を逸らしたところで大した効果はなかった。
246			雪菜の舌と唇と喉の感触は、 もう、俺の全身を侵して…いや、犯していたから。
247			強く包み込み、ぬめりを与える唇。 激しくねぶり、ざらりとした刺激を与える舌。 先端を受け止め、更に奥へと誘う喉。
248	雪菜	Setsuna	「んぅっ、んぅっ…んんんんっ？ んっ、くぷ…んぅぅんっ、ん、ん～っ！ はぁっ、は、春希くん…いいよぉ…あ、んん」
249	春希	Haruki	「っ…」
250			気づかれた… 俺が、もう十秒すら保たないって。
251			びくんと膨張した瞬間に、 雪菜の口全部が、俺を受け入れる準備を始めた。
252	雪菜	Setsuna	「ん、んむ…ん～っ！ んんっ、んんっ、あぶっ、ん、んく…んんんっ、 あむっ、ちゅぷっ、あんっ、ん、んくぅっ…」
253			そこからは、もう予定調和。 数秒後の限界に向かって突き進むだけ。
254			奥深く、何度も何度も突き入れて、 雪菜のリズムと、俺のリズムを合わせて。
255	雪菜	Setsuna	「んぅっ、んっ、んっ………けほっ、 あ、あむぅぅっ、んっ、んく…ん～っ！」
256			途中、雪菜は苦しそうに咳き込み、 目尻から少し涙をこぼしながらも、 それでもその激しい動きをやめようとしない。
257	春希	Haruki	「はぁっ、はぁっ、はぁぁぁっ… せ、雪菜…あぁぁぁ…」
258			本当は、気づいてる。
259			それが、全部雪菜の動きじゃなかったって。
260			さっきから、雪菜の頭を掴んでた俺の両手は、 少しずつ、雪菜の動きを凌駕してるって。
261	雪菜	Setsuna	「んんっ！　ん、ん～っ！？ あ、あむ、んぷ…んんっ、ん、く…ぶほっ、 は、あぁ、あああんっ…ん、く…っ」
262			雪菜が飲み込むよりも奥深く喉を突かせ、 雪菜の動きよりも速く往復させ…
263			雪菜の欲望を上回り、 その口中を、無理やり犯そうとする。
264			雪菜の口の中に、俺の膨張を押し込みたい。 雪菜の喉の奥に、俺の迸りを流し込みたい。
265			雪菜の舌を、俺の出したもので真っ白に粘りつかせたい…
266	春希	Haruki	「っっっ…！」
267	雪菜	Setsuna	「んんんんんっ！？ ん、ん～っ、あ、んむっ、けほっ、や、あぁ…ぁぁぁ… はぁぁぁっ、ん、ん…んむぅぅぅっ、ん、ん～っ！」
268			だって雪菜は、俺のものだから。 俺は、雪菜のものなんだから…
269	春希	Haruki	「あ、ああ、あああ… あああああああああ～っ！」
270	雪菜	Setsuna	「んんっ！？　んくっ、ん、んんんんん～っ！ けほっ、お、おぶっ…ん、んぅぅぅぅ…ん～っ、ん…っ」
271			激しく咳き込みながらも…
272			雪菜は、俺の一月分の欲望を、 喉の奥で全部受け止めた。
273			…いや、喉だけで全部は受け止めきれずに、 喉と口と、そして顔を使って受け止めた。
274	雪菜	Setsuna	「けほっ、こほぉっ…う、ん…んく…ぷぁぁっ、 は、は…あああっ！？ あ、あぁ…ぁぁぁ…」
275			喉がこくこくと動き、 口の端からこぼし、 さらに新しい奔流が、顔を白く汚す。
276	春希	Haruki	「あっ、あっ…あぁぁ… はぁ、ぁぁぁ…」
277			次から次へと… とどまることを知らず、雪菜に、射精されていく。
278	雪菜	Setsuna	「は、あ、あ…んく…ちゅぷ…あ、んむ… んぶっ…ぅぁ、あ、けほっ、ごほっ、ん、んぷっ」
279			それを雪菜は、何度も必死に喉で受け止めようとして、 そのたびに咳き込み、結局、顔をどろどろに染めていく。
280			そうやって俺に、 白く、ねっとりと汚されていく雪菜は…
281	雪菜	Setsuna	「はぁ、ご、ごめんね… 全部、受け止めきれなかった…」
282	春希	Haruki	「雪菜…」
283	雪菜	Setsuna	「せめて、春希くんだけでも綺麗に… ん、んちゅ…む、んぅ、ぁ、あむ…」
284	春希	Haruki	「っ…」
285			そんなに酷い目に遭いながらも、 とても、綺麗だった…
286			穢れても、汚されても、 どれだけ辱められても…
287	雪菜	Setsuna	「ん、んむ…ちゅぅぅ…んく、こく… は、あぁ…んむ…れろ…ちゅぷ…は、あぁ…む」
288	春希	Haruki	「雪菜…雪菜ぁ…あ、あ、あ…っ」
289			その美しさをまるで損なうことなく 俺の眼下に佇み、 一心に、いやらしい行為を続けていた。
290			………	.........
291	雪菜	Setsuna	「ね、ねぇ… ベッド、行こう？」
292	春希	Haruki	「………」	"........."
293	雪菜	Setsuna	「春希、くん…」
294	春希	Haruki	「………」	"........."
295	雪菜	Setsuna	「春希くん？ 春希くんってばぁ…」
296	春希	Haruki	「え…なに？」
297			一月ぶりに、雪菜の口のなかに放出して、 虚脱状態になっていた俺は、 しばらく雪菜の言葉を聞き逃していた。
298			…ただ、それだけだった。 視線の先にあったものは、なにも関係なかった。
299	雪菜	Setsuna	「ベッド、行きたいの」
300	春希	Haruki	「あ、え…」
301			雪菜が、ようやく足に力を込めて立ち上がると、 俺の胸に取りすがる。
302	雪菜	Setsuna	「一緒に、服、脱いで… 朝まで、ベッドで抱きあいたいの」
303			スーツもシャツもスカートもしわが寄ってて、 このままだと、明日着ていけなくなりそうだった。
304			何より、もうストッキングとショーツは、 今穿いていることすら、雪菜には…
305	雪菜	Setsuna	「あ、その前に…シャワー、浴びさせて。 わたし、今、ちょっと… 春希くんと、キスできないから…」
306	春希	Haruki	「………」	"........."
307			そして雪菜の顔も、雪菜の口の中も、 俺の射精をいっぱいに受け止めて…
308			だから雪菜の求めは当然で、 二人とも綺麗になって、ゆっくり抱きあって、朝まで…
309	雪菜	Setsuna	「ちょっとだけ… ちょっとだけ、待ってて？ すぐに綺麗にして、あなたの…」
310	春希	Haruki	「嫌、だ…」
311	雪菜	Setsuna	「え…？」
312			なんて悠長なことは、 今の俺にはとても言えなかった。
313	春希	Haruki	「今日はもう、一瞬たりとも離れたくない。 ずっと、雪菜を感じてたい」
314	雪菜	Setsuna	「きゃっ？　あ、え？ で、でも、でも…わたし、今…」
315			そんな、服も身体もそのままの雪菜を、 俺はまた、思いっきり胸に抱く。
316	春希	Haruki	「そのままで、いい…」
317	雪菜	Setsuna	「春希、くん…？」
318	春希	Haruki	「雪菜は、何があっても綺麗だから… だから、そのままで… ずっと、一緒にいてくれ…っ」
319	雪菜	Setsuna	「………ぁ」
320			雪菜を抱きしめながら、 その視線はまた、さっきと同じ場所を向いてしまう。
321	春希	Haruki	「頼む、よ…俺、俺…」
322	雪菜	Setsuna	「………ぅん」
323			ベッドの側に設置されている時計の… 午後８時過ぎの表示を。
324	雪菜	Setsuna	「今は、好きにしていいよ… 春希くんが思うまま、引き裂いていいから」
325	春希	Haruki	「雪菜…っ」
326			かずさのコンサートは、 もう、とっくに始まっていた。
327			………	.........
328	雪菜	Setsuna	「あああああ…あぁぁぁぁぁっ、 あっ、あっ…あ～っ！」
329	春希	Haruki	「っ…」
330			入れた瞬間…
331			雪菜のなかが、びくびくと収縮し、 俺の腕に、ずしりと重い柔らかさが伝わった。
332	雪菜	Setsuna	「あっ、あっ、あっ…ご、ごめんなさい… わたし、こんな…はぁっ、あっ、あぁぁぁ…」
333			片足で自分を支えきることができずに、 雪菜の全体重が俺の腕にかかったから。
334	春希	Haruki	「はぁ、ぁ…大丈夫… 大丈夫だから、雪菜」
335			けど、それもこれも、 雪菜にこんな無理な体位を強いている俺のせいで…
336	春希	Haruki	「だから、動く…な」
337	雪菜	Setsuna	「はぁ、あ、え…も、もう少し…休ませ…っ！？ あっ、あっ、あぁぁぁっ、は、春希くん？ ふぁぁぁっ、あ、や～っ」
338			雪菜を、おもちゃみたいに滅茶苦茶に扱ってる、 けだものと化した俺のせいで…
339	春希	Haruki	「はぁっ、はぁっ、はぁぁぁっ… せ、雪菜…うあ、い、いぃ…ぁ」
340	雪菜	Setsuna	「ああんっ、あああんっ、ふあぁぁんっ！ だ、だめ、まだ、まだ、力が…あぁぁぁっ、 はぁぁぁぁっ、あっ、ん～っ」
341			雪菜をまたドアに強く押しつけ、 片足を持ち上げ、はしたない格好をさせて、 後ろから思い切り突き上げる。
342			大きく開けられたストッキングの穴… そしてずらされたショーツの隙間に俺のものが潜り込み、 ぬめるような湿った音とともに、雪菜の肉がまとわりつく。
343	雪菜	Setsuna	「い、いぁっ、そんな…おく…ふぁぁぁっ、 あっ、あっ、あ～っ！ やめ…ぇ、はぁぁぁぁっ…あ…あぁぁ…」
344			何もかも俺にされるがまま…
345			雪菜は、片足を持ち上げられ、俺とドアに挟まれ、 窮屈なまま激しく突き上げられ、息も絶え絶えに喘ぐ。
346	雪菜	Setsuna	「はぁっ、はぁっ、あんっ、んんっ… ん、く…こんな、こんなぁ…や、うぅ…あぁんっ」
347			視界の端で、雪菜の足を覆うパンプスが、 俺の動きにつれて、ゆらゆらと揺れる。
348			スーツも着たまま、靴も履いたまま… そんな、『よそ行きの雪菜』が、 俺の腕の中で悶えてる。
349			顔を、涙と唾液と… そして、俺の精液にまみれさせながら…
350	雪菜	Setsuna	「あぁぁぁっ、ああっ、あ、んっ… は、春希…ぅむっ！？ ん、ん…ん～っ！」
351			そんな、ぐちゃぐちゃに濡れた雪菜の顔に、 俺の顔を強引に近づけて、唇を重ねた。
352			けど…
353	雪菜	Setsuna	「んっ、んんんっ！ ぷぁぁっ、あ、あ…だめ、だよ…」
354			雪菜はかたく目を閉じ、唇を閉じ、 いやいやをするように首を左右に振り、必死で拒む。
355	春希	Haruki	「どうして…？」
356	雪菜	Setsuna	「だって今、わたしの…その………んんんんっ！？ んっ、んぅ、ん～っ！ は、あむっ、ん、むぅぅぅっ」
357			多分…というか絶対、 雪菜は、俺に汚された顔と口中のことを気にしてる。
358	春希	Haruki	「んん…ん、んぷ…はぁ、あむ…ちゅ…んぅぅ」
359	雪菜	Setsuna	「んっ、んっ、んっ…ら、らめ…わらひ…ひんっ、 ん、ぷぁ…あぁ…はぁぁ…ぷぁぁぁぁっ」
360			俺にされてしまったことが、 俺に嫌な思いをさせないかって、 全然、自分のせいじゃない責任を感じてる。
361	春希	Haruki	「もっと、大きく口開けて、舌出して… 全部、開いて、雪菜…」
362	雪菜	Setsuna	「で、でも、でも………んんんんっ！」
363			だから俺は、解きほぐす。 雪菜の心を、雪菜の羞恥心を。
364			雪菜の、本来持っているいやらしさを…
365	春希	Haruki	「ん…」
366	雪菜	Setsuna	「ん、んぅ…ちゅぷ…は、あ、んむ…」
367			そして雪菜は、とうとう根負けしたのか、 俺の舌と唇を受け入れる。
368			常識や、品性に囚われず、 ただ俺の求めを、愚直に受け入れる。
369	春希	Haruki	「ん、んぅ…あむ…」
370	雪菜	Setsuna	「んっ、んぅっ………んむぅぅっ！？ は、あ、ん、ん～っ、んぅぅぅぅ～っ！」
371			だから俺も、雪菜のことを気遣う優しさを捨てて、 すぐに激しく律動を再開する。
372			雪菜の口中に、ずぶりと舌を差し入れる。 雪菜の胸を、爪痕を残すくらいぎゅっと握る。 雪菜の膣奥に、ぐいぐい自分を押し込んでいく。
373			雪菜に、自分の持てる限りの情欲を叩き込んでいく。
374	雪菜	Setsuna	「うあぁぁっ、ああっ、あ、ん～っ…ん、んぷ… ちゅぷ、ぷぁ、はぁぁ…あ、あ…んんっ」
375			唾液で、汗で、いやらしい液で… 雪菜と繋がるところは、全部べとべとに濡れていく。
376			またしても、ぽたりと床にしずくが落ちる。 けれどそれが、どの液体なのかは、 もう、重なり合いすぎた俺たちにはわからない。
377	雪菜	Setsuna	「んんんんっ、んんっ、ぷぁっ…あ、あ… は、春希く…んぅっ、あっ、やっ、やぁぁぁっ、 も、もっと…ゆっくり…うあぁぁぁんっ」
378			もう、雪菜の懇願の声さえも聞こえない。
379			目に届くのは、ゆらゆら揺れる雪菜の太股、ふくらはぎ、 足先を覆うパンプス。
380			肩まで下ろされたスーツ、 ボタンを全部外されたワイシャツ。 その中で、俺の手に握り潰されている乳房。
381			襲い来る快感と違和感で涙まみれの瞳、 俺の白濁に汚されたままの顔、 唾液の糸で俺と繋がっている唇。
382	雪菜	Setsuna	「あぁぁぁぁっ、ああっ、あっ、んっ、んん… 春希くん…ああ、わたしで、わたし…あぁ…」
383			そして、俺たちの繋がっているところ。
384	雪菜	Setsuna	「わたしで、気持ちよく… わたしだけで、わたしのなかで…っ、 あ………あむ…んむぅぅぅんっ」
385	春希	Haruki	「ん、んむ、あ、あむ…ん、んん…っ」
386	雪菜	Setsuna	「はぁ、あむ…ちゅぅぅぅ…んぷっ、は、はぁ… ああ、いい、気持ち…いい、よね…？」
387	春希	Haruki	「ああ…っ」
388	雪菜	Setsuna	「わたしが、わたしだけが… 春希くんと、こんな… こんな、いやらしいこと…はぁぁんっ、ん、んぅ…」
389	春希	Haruki	「うん…雪菜、 う、あ、あ…あぁぁぁ…っ」
390			気持ちいい…
391			頭がおかしくなってしまうくらいの快感の奔流に、 今、俺も雪菜も激しく流されている。
392			だって、こんなことができるのは、 俺たちが、二人でいるとき、だけだから…
393			雪菜が、雪菜だけが… 俺を、天国に… 俺を、身も心も幸せにしてくれるんだから。
394			だから…何を迷う必要があるんだよ…
395	雪菜	Setsuna	「ああっ、ああっ、ああああっ…！ は、春希くん…愛して…愛してる、よね？」
396	春希	Haruki	「愛してる…愛してる、雪菜…っ」
397			だから、こんな問いかけにだって、 すぐに応えることができる。 俺には、雪菜しかいない。
398	雪菜	Setsuna	「はぁっ、ああ、あ…う、嬉し…ぅぅんっ？ ん、ん～っ、ん、ん、ん…あむ…ちゅ、ぷぁ…」
399			もう、あんな恐ろしい思いをするのはご免だ。
400			自分の気持ちがどこに行ってしまったのか、 完全に見失ってしまうような、 夕暮れの景色の中にはいられない。
401	春希	Haruki	「ん、んぷ…あ、あむ…んぅ…」
402	雪菜	Setsuna	「は、あぁ…ちゅぅぅぅ…んぅ、んぷ…は、あむ… じゅぷ…ん、ちゅぷ…は、あ、あ…んんっ」
403			かずさが…怖い。
404			自分から挑発したくせに、 俺が、追いかけていたはずなのに。
405	春希	Haruki	「雪菜、雪菜…ん、んむ…はぁぁ」
406			あいつの、『今日限り』の言葉が飲み込めない。 『一度だけ』の約束が信じられない。
407	雪菜	Setsuna	「はぁぁ、あむっ、ん、ぷぁ…はぁ、はぁ… は、春希くん…あぁぁ…い、いい…すごい、よ…」
408			だって、あいつは『今日限り』と告げる時、 今にも泣き出してしまいそうな辛そうな顔をする。
409			『一度だけ』の約束とともにした行為の後、 蕩けてしまうかのような嬉しそうな顔をする。
410	春希	Haruki	「俺、俺…」
411	雪菜	Setsuna	「ん…いい、よ。 どこでも、受け止める、から…」
412			あいつの言葉は、あいつが信じてるほど重くない。 あいつの本質は、あいつの母親と何も変わらない。
413			自分の気持ちを、自分で制御なんかできない。 最後の最後には、何もかも巻き込む危うさを持ってる。
414	雪菜	Setsuna	「はぁっ、はぁっ、ああ、ああ…んっ、くぅ…っ、 あっ、あっ、あっ、あっ、あっ…いいっ、い、く…っ」
415			そして俺は… かずさといる時の、俺が怖い。
416	春希	Haruki	「もう、俺… あ、ああ…あく…ぅ」
417	雪菜	Setsuna	「ああああっ、やぁっ、あ、あああんっ、 もう、もう、春希くん…あ、あ、あ…っ」
418			かずさを拒絶できない俺が怖い。 かずさのことを、まだ本気で好きな俺が怖い。
419			俺がかずさに本気で向き合ってしまったら 何が起こるのか、未来が見えなくて怖い…
420	春希	Haruki	「あ、あ、あ…ああ、あぁぁぁ…っ」
421	雪菜	Setsuna	「んっ、んっ、んぅんっ… あああ、あっ、ああ…もう、もう、来て… あああああっ、あっ、あ～っ！」
422			だから俺は、かずさじゃなくて、雪菜に会いに来た。 かずさのピアノじゃなくて、雪菜の声を聴きに来た。
423			今の幸せを… 三年かかってやっと手に入れた幸せを、 絶対に失いたくはなかったから。
424	春希	Haruki	「雪菜…俺、俺…ああああっ」
425	雪菜	Setsuna	「ああああああっ！ ああぁぁぁぁぁぁ～っ！ はぁぁっ、はぁっ、いっ、く…うあ、あぁぁぁ…っ」
426			ギリギリのギリギリまで雪菜のなかに突き入れ、 最後に、思い切り引き抜いた。
427	春希	Haruki	「あ…あ…っ」
428	雪菜	Setsuna	「あぁぁぁ…あっ、あぁぁ…んっ、んく…ぅ… はぁっ、ふぁぁぁっ、あっ…あ、ああ、あ…」
429			抜かれた後の雪菜の入り口は、 俺のが入っていたことを示すように丸く開かれ、 ひくひくと蠢いていた。
430			俺の方も、雪菜のなかに入っていたことを示すように、 辺り構わずまき散らし、ますます雪菜を汚していく。
431			今度は、顔だけじゃなく、身体も、服も…
432	雪菜	Setsuna	「あっ、あっ、あぁぁ… はるき、くぅん…や、ぁ、ん…んぅ…ぅぅぅ…」
433	春希	Haruki	「っ…」
434			雪菜だけでなく、 とうとう俺までも力を失い、 雪菜の太股を抱えたまま、地面に膝をつく。
435	雪菜	Setsuna	「はぁっ、はぁっ、はぁっ…あ、あぁ… すご…かった…ね…ぁ、ぁぁ…」
436			雪菜は、ドアに手をつき、床にぺたんと座り込み、 下を向き荒い息を吐き、肩を大きく上下させる。
437			そのお尻の下からは、 未だにしずくがぽたぽたと垂れ、 床に染みを作っている。
438	春希	Haruki	「雪菜…っ」
439			俺は、たまらなくなって、 背中を向けたままの雪菜を抱きしめる。
440	雪菜	Setsuna	「う、ん…」
441			本当なら、服を汚してしまったことや、 雪菜の身体をめちゃくちゃに扱ってしまったことを、 何よりも早く謝るべきだったんだと思う。
442			なのに俺は… その時の、あまりにもけだもの過ぎる俺は…
443	春希	Haruki	「もっと、もっと………欲しい」
444	雪菜	Setsuna	「春希、くん…？」
445			まだこの夜を終わらせる気は、 まるでなかった。
446			………	.........
447	雪菜	Setsuna	「ああっ、ああんっ、ひぅっ、あ、あ、あ… は、春希くん…わたし、わたし…もう…っ」
448	春希	Haruki	「はぁっ、はぁっ…あ、あぁ…ぁ…っ」
449			あの後…
450			雪菜を抱いて、ベッドに寝かせてからも、 俺は少しも雪菜を休ませたりはしなかった。
451			雪菜が息を整えるよりも早く回復し、 雪菜のなかに突き入れてかき回し、 激しく、絡みあった。
452	雪菜	Setsuna	「あぁぁんっ、んんっ、やぁ、やぁぁぁ… 駄目、だよ…もう、おかしくなっちゃう…よぉ」
453			雪菜が絶頂を迎えたり、俺が果てたりと、 何度か身体を離す機会はあったけれど、 俺は絶対に許さなかった。
454	春希	Haruki	「おかしくなって… もっと、もっと…」
455	雪菜	Setsuna	「ああ、ああ、あぁぁ… う、う～っ、はっ、はっ、はっ… もう、もう…ぃぅぅぅぅっ」
456			今も雪菜は俺に押さえ込まれ、 脚を高く持ち上げられ、 そのまま奥深くまで突き込まれて喘いでる。
457			もう、手も、脚も、身体も… 疲れが限界まで溜まって動けなくて。 けれど、そこに快感だけが襲ってきて…
458	春希	Haruki	「雪菜…俺の、雪菜…」
459	雪菜	Setsuna	「んっ、く、あぁ…う、んっ… わ、わたしの…わたしだけの、春希くん。 ………で、いいんだよ、ね？」
460	春希	Haruki	「………ああ、雪菜。 あっ、あっ、あぁぁっ…」
461	雪菜	Setsuna	「っ…ふぅぅんっ、んんっ、あ、ああ、あぅっ… わたし、わたし…嬉し…やぁぁぁんっ、 あっ、あっ、あっ…まだ、こんなに…ぃぅっ」
462			それでも俺は、持てる力を、考える心を、 今ここで全て捨てようと、 雪菜のなかに潜り込む。
463			何もかも、隠したまま。 俺のしたことも、今の俺の気持ちも全部…
464	雪菜	Setsuna	「あぁぁんっ、んんっ、んんんっ… はぁ、あっ、あぁぁ、春希くん… もっと、もっと…奥…ああああっ」
465			本当は、正直に話しておくべきだった。
466			正直に話した上で、雪菜と仲直りして、 強く抱きしめて、気持ちを確かめて…
467			俺の心がおかしな方向に傾いてしまう前に、 雪菜にすがりつくべきだった。 もっと早く、連絡を取るべきだった。
468	雪菜	Setsuna	「ああ、ああ…すご、う、あ、ああ… わたし、わたし…やんっ、い、こすれ…てっ」
469			かずさが、俺の頬に触れ目を閉じる前。 かずさが、隣に越してくる前。 かずさが、日本にやってくる前。
470			…ストラスブールで再会した夜に、 全てを正直に話しておくべきだった。
471	春希	Haruki	「あ、あ、あ…雪菜…っ」
472			たとえそれでかずさが傷ついても。 曜子さんを落胆させたとしても。
473			それでも、こうしてコンサートをすっぽかすよりは よっぽど傷は浅く済んだはずだった。
474	雪菜	Setsuna	「んんっ、んんっ、く…あ…？ く、来るの？　ねぇ、春希くん、また…っ」
475			結局、何度も何度も迷ってしまったせいで、 もっとも効果的で、もっとも残酷なことをしてしまった。
476	春希	Haruki	「ああ、ああ、ああっ… は、はぁ、ぁぁぁ…っ」
477			かずさの日本で初めての晴れ舞台… あいつが用意してくれた招待席に、俺はいない。
478			それは、俺のあいつに対しての行為の中で、 考えうる限り、もっともあいつを傷つける裏切りだった。
479	雪菜	Setsuna	「んっ、んっ、んっ…あ、あああ、あんっ、 気持ちいい、すごい、よ、ぉ…っ、 ああっ、ああっ、ああっ………深っ、く、あ…」
480			俺の選択は、常に後手後手に回り、 そして得られる結果は最悪だった。
481	春希	Haruki	「ああ…もう…また… あ、あ、あ、あ、あ…う、く、あぁぁぁっ」
482			だってもう… これくらい深くあいつを傷つけなければ… あいつに愛想を尽かされる俺にならなければ…
483	春希	Haruki	「～～～っ！？」
484	雪菜	Setsuna	「あっ、あっ、あ…っ！？ ああああああああああ～っ！」
485			俺は、あいつを振り切る自信がない。
486	春希	Haruki	「あ、あ…っ」
487	雪菜	Setsuna	「い、いあぁぁぁ…ああ…あああああっ、 はぁっ、あっ、あんっ…は、あ、ぁぁ…っ」
488			雪菜の顔も、肌も、服も…
489			もう、俺が染みついていない部分はどこにもなかった。
490	春希	Haruki	「ああ、あぁぁ…っ、 雪菜、あ、ぁぁ…」
491	雪菜	Setsuna	「はぁ、ぁ…ぁぁ…春希、くぅん… ん、ふぅ…はぁぁ…あ、ぁぁ…」
492			あの、清らかな雪菜が、朗らかな雪菜が…
493			俺の激しい獣の本能に引き裂かれ、 あられもない声を上げ、はしたない格好をさせられ、 今、俺の下でべとべとに汚されている。
494			…ただ、俺の迷いを断ち切るためだけに。
495			俺の間違った劣情を昇華するためだけに、 雪菜に、こんな歪んだ征服欲をぶつけたんだ。
496	春希	Haruki	「お、俺、俺…」
497			なのに、なのに…
498	雪菜	Setsuna	「おかえり、春希くん。 ………これで、仲直り、だよね？」
499	春希	Haruki	「っ…」
500			たった今、俺に引き裂かれたばかりの雪菜は。 俺の下に組み敷かれ、身体中汚されたばかりの雪菜は。
501	雪菜	Setsuna	「ごめんね… 今まで色々と、嫌な態度取っちゃって…」
502			清らかで、朗らかな… いつもの、天使のような微笑みを浮かべる。
503	春希	Haruki	「っ…ぅ、ぁ…ぅぁぁ…っ」
504			…俺が、逃げ出したくなってしまうような、微笑みを。
505			………	.........
506	春希	Haruki	「…ごめんな」
507	雪菜	Setsuna	「何が？」
508	春希	Haruki	「スーツ、汚しちゃって… いや、スーツだけじゃなかったけど」
509	雪菜	Setsuna	「ああ、そっち… そんなの全然気にしてないよ。 クリーニング、朝までに間に合うんでしょ？」
510	春希	Haruki	「それでも、さ…」
511			…『そっち』？
512	雪菜	Setsuna	「それに、罰ゲームならさっきしてもらった。 …パンスト、買ってきてくれたもんね」
513	春希	Haruki	「それも………俺のせいだし」
514			雪菜にその罰ゲームを言いつかったとき、 最初は、破いてしまったことが罪なのだと思ってた。 けど実は、微妙に違ってた。
515			『持ってきたパンスト、全部肌色なの。 これじゃ隠せない、春希くんのキスマーク…』
516			…濃い色のストッキングを探すのに、 コンビニを三軒ハシゴした。
517	雪菜	Setsuna	「明日、何時に出る？」
518	春希	Haruki	「１０時過ぎには会社に顔出したいから、 ここは早めに出るつもり…６時くらいかな」
519	雪菜	Setsuna	「そっか… もう、４時間くらいしか眠れないね」
520	春希	Haruki	「ああ…」
521	雪菜	Setsuna	「………」	"........."
522			雪菜を抱いているときにも、 何度か目を奪われたその時計は、 今は、午前２時５分を表示してた。
523	春希	Haruki	「………」	"........."
524			もう、何もかも、終わってた。
525	雪菜	Setsuna	「………」	"........."
526	春希	Haruki	「…なに？」
527	雪菜	Setsuna	「え？」
528	春希	Haruki	「ずっとこっち、見てたから」
529	雪菜	Setsuna	「それは…」
530			俺の胸に顔を埋め、上目遣いで 雪菜はじっと俺の顔を見つめてた。
531			その表情は、 さっきまでの激しい行為の余韻に浸ってるふうでもなく、 仲直り後の甘く蕩けた態度から来てるふうでもなく。
532			どちらかと言えば、悲しそうな… 何かに耐えているような、 この場と状況にそぐわないものだった。
533	雪菜	Setsuna	「明日、外回り辛いなぁって。 脚、パンパンに張っちゃってるから」
534	春希	Haruki	「…悪い、本当に。 色々と無茶した」
535	雪菜	Setsuna	「ううん、いい… 恋人の勲章、だもんね。 仲直りの、しるしだもんね」
536	春希	Haruki	「雪菜…」
537			あれは多分、俺に見せるつもりのなかった 表情なんだと思う。
538			…まるで、今の俺が雪菜に隠れてするもののように。
539	雪菜	Setsuna	「ね、春希くん… わたし、本気で嬉しかったんだよ？」
540	春希	Haruki	「…あんなに酷いことしたのに？」
541	雪菜	Setsuna	「そっちじゃないよぉ… あなたが、何もかも投げ打って、 わたしのところに駆けつけて来てくれたこと」
542			その証拠に、俺に見られてると意識したときの雪菜は、 いつもの、花が咲いたような笑顔を見せてくれる。
543	春希	Haruki	「休み、だったんだよ」
544	雪菜	Setsuna	「それでも、大阪まで… わたしが会いたいと思ったそのときに… わたしの方から連絡する約束だったのに…」
545	春希	Haruki	「ごめんな…約束破って」
546	雪菜	Setsuna	「嬉しすぎる反則だから、いい。 もういいの…」
547	春希	Haruki	「………」	"........."
548			そして、その満面の笑顔をたたえながら…
549			やっぱり雪菜は、 コンサートのことに触れようとしない。
550	雪菜	Setsuna	「寝よ？ 春希くん」
551	春希	Haruki	「あ、ああ…」
552			きゅっと、俺の身体を抱きしめて、 胸に口づけて。
553	雪菜	Setsuna	「おやすみ、なさい」
554	春希	Haruki	「おやすみ…」
555			とうとう雪菜は、最後の最後まで 俺が徹底的に避け続けていた今日という日の意味を、 完全にスルーしてしまった。
556			…なかったことにしていいのか？ このまま、元の日常に戻っていいってことなのか？
557			俺が抱えてる一番大きな罪も、 このまま、事実を隠蔽してしまえば許してくれるのか？
558			そのチャンスを、与えてくれてるのか？
559	雪菜	Setsuna	「………」	"........."
560	雪菜	Setsuna	「………」	"........."
561			それとも、俺が自ら事実を語ることを、 待ってるんだろうか？
562			かずさと過ごしてたって、 かずさに揺れたって。
563			偶然ほんの少し会っただけで、 そのことを話さなかっただけで、 一月近くも引きずってしまうって証明されたのに？
564			そんなこと、本当に望んでるんだろうか？ 今、明らかにお互い隠し事をしてる俺たちが？
565	雪菜	Setsuna	「………」	"........."
566	春希	Haruki	「なぁ、雪菜…まだ起きてる？」
567	雪菜	Setsuna	「…なに？」
568			だったら、俺は… だから俺は…
569	春希	Haruki	「受け取って…もらいたいものがあるんだ」
570			さっき、ベッドの下に隠しておいた、 “それ”を取り出す。
571			一月前、パリで買ってきていた… ストラスブールで渡せなかった…
572	雪菜	Setsuna	「え…」
573			俺の差し出した小箱を前に、雪菜が固まる。
574	春希	Haruki	「仲直りの、しるしに…」
575			それはきっと、あの時の…
576			二年前の俺のプレゼントと、 外箱の造形がそっくりだったから。
577	雪菜	Setsuna	「………開けてもいい？」
578	春希	Haruki	「…うん」
579			あの時は、緊張しかなかった。 額から噴き出した汗が、やけに冷たかった。
580			そして今は…
581	雪菜	Setsuna	「………ぁ」
582	春希	Haruki	「ずっと、そんなオモチャじゃ 雪菜に悪いなって…」
583	雪菜	Setsuna	「………」	"........."
584			多分、雪菜は中身にすぐ気づいたんだと思う。
585			だからその表情に、驚きも戸惑いも少なく、 厳かな、覚悟を決めたような色が浮かんでいたんだと思う。
586	春希	Haruki	「受け取って、欲しい。 できれば『そういう意味』で」
587	雪菜	Setsuna	「春希くん…」
588			雪菜が、チャンスを与えてくれるなら… 俺は、全てを闇に葬り去る。
589			かずさを、全部忘れるんだ…
590	春希	Haruki	「別に、今すぐでなくてもいい。 雪菜の仕事のこともあるし、 俺の稼ぎのことだってあるから」
591			俺には、元から雪菜しかいないんだから。
592	春希	Haruki	「ただ… 俺がそれを望んでいるってことだけは、 覚えておいて欲しいんだ」
593	雪菜	Setsuna	「………」	"........."
594	雪菜	Setsuna	「………しい」
595	春希	Haruki	「え…？」
596	雪菜	Setsuna	「嬉しいよ、春希くん…」
597	春希	Haruki	「雪菜…それって…？」
598	雪菜	Setsuna	「………」	"........."
599	春希	Haruki	「それって… そういう意味だって、取っていいのかな？」
600	雪菜	Setsuna	「………うん」
601	春希	Haruki	「っ…雪菜」
602	雪菜	Setsuna	「春希、くん…」
603			これで、いい。 これしかないんだ。
604			俺たち、一月ほど回り道してしまったけれど…
605			これで、何もかも元通りだ。
606			俺はこの冬、かずさになんか会わなかった。 フランスでも、日本でも。
607			来日も、独占取材も、今日のコンサートも、 全ては遠い、違う世界での出来事だ。
608			あれは、俺の願望が… いや、呪縛が見させた幻なんだ。
609	春希	Haruki	「結婚しよう。 結婚しよう、雪菜…」
610	雪菜	Setsuna	「………はい」
611			思い出は、思い出のまま…
612			美しくて、儚くて… いつか、消えるものだから。
613			………	.........
614	春希	Haruki	「ん…」
615	春希	Haruki	「んぅ…すぅ…」
616			………	.........
617	雪菜	Setsuna	「っ…あ」
618	雪菜	Setsuna	「…キタナイな、わたし」
619	雪菜	Setsuna	「………」	"........."
620	雪菜	Setsuna	「春希くん…」
621	雪菜	Setsuna	「あなたは、卑怯だよ… 本気すぎるよ…」
622	雪菜	Setsuna	「また、わたしを騙そうとするんだね」
623	雪菜	Setsuna	「わたしが『騙して欲しい』って願ったから、 一生懸命、わたしの望み通りに振舞おうとするんだね」
624	雪菜	Setsuna	「そうやって、わたしを堕落させるんだね」
625	雪菜	Setsuna	「だったら、お願い… もう、中途半端はやめて」
626	雪菜	Setsuna	「絶対に、最後まで騙し通して。 わたしにこれ以上、辛い思いをさせないで」
627	雪菜	Setsuna	「ずっとずっと隠し通して、全部秘密にして… 最後の最後にわたしを選んでくれたらそれでいい…」
628	雪菜	Setsuna	「………っ」
629	雪菜	Setsuna	「ねぇ、かずさ…」
630	雪菜	Setsuna	「今さら、返せないよ？ だって…五年だよ？」
631	雪菜	Setsuna	「………」	"........."
632	雪菜	Setsuna	「キタナイな、わたし…」
633	かずさ	Kazusa	『でも結局、 誰もあたしを落とすことなんかできなかった…』
634	春希	Haruki	「………」	"........."
635	かずさ	Kazusa	『だってあたしは、母さんとは全然違ったから。 男に媚びないどころか、いつも敵視してたから』
636			月曜日、朝８時過ぎ…
637			どうしても駅まで送るという雪菜を諭して、 軽いキスとともにホテルを出たのが二時間前。
638			東京へと向かう新幹線の中、 俺は、昨夜の余韻を気合で切り替え、 仕事モードに移行する。
639	かずさ	Kazusa	『一度、思いっきり罵ってやると、 すぐにプライド傷つけられて、 二度と近寄っては来ないんだよ、あの手の連中は』
640	春希	Haruki	「………」	"........."
641			昨夜までは、どうしてもこの声が聴けなくて、 ずっと滞ってしまっていたインタビューのテキスト起こし。
642			今は、雪菜にもらった勇気を奮い起こし、 あいつの、最後のメッセージをテキストへと変換する。
643	かずさ	Kazusa	『あたしより金持ちだからあたしに興味のない奴、 金がなくてもプライドだけは高くて、 あたしの態度が許せなくなった奴…』
644			文字情報になってしまえば、 これはもう、あいつの声じゃなくなる。
645			あいつの、匂いが消えてくれるから。
646	かずさ	Kazusa	『ああ、そうだ… 金の代わりに才能って置き換えても、 当てはまる奴らばっかりだった』
647	春希	Haruki	「………」	"........."
648			ほんの数日前…
649			レコーダーを挟んで、 あいつは俺につまらなそうな表情で色々と語り…
650			俺は、その態度が気にくわなくて、 必死で挑発したり、罠を張ったりしたんだっけ。
651			あいつの、気を引こうとしたんだっけ…
652	かずさ	Kazusa	『そうだよ、あたしもそいつらと同じだ。 プライドが高いだけの屑みたいな人間で、 近づく価値も、口説く値打ちもない』
653	春希	Haruki	「っ…」
654			この後だ。
655			そんな俺の態度に業を煮やしたかずさが、 ほんの一言だけ、ぽろりと漏らした本音。
656			今思えば、この夜から、 俺たちの関係がずれてしまったのかもしれない。
657			取材対象者と取材者から、 単なる、因縁の二人へ。
658			冬馬かずささんと北原記者から、 かずさと、俺へ…
659	かずさ	Kazusa	『ええと… これでいい、はずだよな？』
660	春希	Haruki	「………え？」
661			けれど…
662	かずさ	Kazusa	『春希…聞こえてるか？ ええと…冬馬、かずさです。 ま、わかってるとは思うけどさ』
663			そこから流れてきたのは、 俺が知っているはずのあの言葉じゃなかった。
664	かずさ	Kazusa	『現在、１月２５日、金曜の午後２時。 お前と合流する少し前。 …今から付属に向かうところだよ』
665			それどころか、 俺には録音した覚えのないメッセージ。
666	かずさ	Kazusa	『昨日お前、あたしの部屋にこれ忘れてったろ。 なんて凡ミスだ。まったく呆れる。 仕方ないから、こっそり返しといてやるよ』
667			インタビュアーではなく、インタビューイが仕掛けた、 ほんのちょっとした、イタズラ…
668	かずさ	Kazusa	『けどその前に、ちょっと時間差でメッセージ… お前の返事とか聞くつもりないから電話はしない。 …そのくらいは、許してくれるよな』
669	春希	Haruki	「かず、さ…」
670	かずさ	Kazusa	『ええと…これから先は推定の話になるんだけど…』
671	かずさ	Kazusa	『あたし、さ… 今からお前に、告白する。 そして、玉砕すると思う』
672	春希	Haruki	「～～～っ」
673			イタズラ、じゃなかった。
674			そんな生易しいものじゃ、なかった。
675	かずさ	Kazusa	『わかってるんだ、お前には雪菜がいるって。 だから、あたしを受け入れられないって、 そんなこと最初からわかってるんだ』
676	かずさ	Kazusa	『けどさ、けど… それでも、もう一度だけ、あたしは雪菜を裏切る』
677	かずさ	Kazusa	『春希に、今の本当の想いを伝えられたらって… あたしの五年間、わかってもらえたらって… そんな都合のいい夢が、まだ捨てられないんだ』
678	かずさ	Kazusa	『雪菜にとっては酷い話だけどな… 後で謝っておいてくれよな？　春希』
679	かずさ	Kazusa	『それでさ… もう、聞いたんだよな？ あたしの告白、全部聞いちゃったんだよな？』
680	かずさ	Kazusa	『笑っちゃうだろ？ 全然似合わないだろ？ 馬鹿かお前はって思うよなぁ？』
681	かずさ	Kazusa	『だって、だってさ… あたしみたいなのが…』
682	かずさ	Kazusa	『あたしみたいな、ピアノしか能がない、 他にはなにもできない欠陥品が、 お前みたいな普通の男、好きになるなんてさ…』
683	かずさ	Kazusa	『五年前の、あの時から… ずっとずっと、忘れられないなんてさ…』
684	かずさ	Kazusa	『………なんてな。 今さら言ってもしょうがないことだ。 忘れてくれ』
685	かずさ	Kazusa	『…じゃなかった、今のは嘘だよ。 その時のあたしもそう言っただろ？ お前を、からかっただけだよ』
686	かずさ	Kazusa	『だから、だからさ、春希…』
687	かずさ	Kazusa	『その時のあたしもそう言ったと思うけどさ… コンサート、絶対に来てくれよな？』
688	かずさ	Kazusa	『雪菜と、一緒でもいい。 いや、是非雪菜と一緒に来てくれよ』
689	かずさ	Kazusa	『そしたらあたしは、お前の… お前たちのためだけに、一生懸命弾いてみせるから。 自分でも、最高の演奏ができるって自信があるから』
690	かずさ	Kazusa	『だってあたしは、お前たちの結婚式には行けない。 …距離も、心も、行くには辛すぎるから』
691	かずさ	Kazusa	『だから明日のコンサートが、 お前たちへの、最後のプレゼントになる』
692	かずさ	Kazusa	『来てくれる、だけでいい。 そしたらあたしはもう、お前のこと諦めるから。 その日限りで、お前への想いを昇華するから』
693	かずさ	Kazusa	『だから、その日だけは… コンサートの時だけは、あたしだけを見ててくれ』
694	かずさ	Kazusa	『お願い、します』
695	かずさ	Kazusa	『………追伸』
696	かずさ	Kazusa	『人の寝顔を勝手に撮るな。 お前じゃなかったらぶん殴ってるところだ』
697	かずさ	Kazusa	『じゃあ、な』
698	春希	Haruki	「………」	"........."
699			いつの間にか、再生は止まってた。
700			けれど俺は、ＩＣレコーダーも、ノートＰＣもそのままに、 ただ、俯いたまま微動だにしなかった。
701			上も、向けなかった。 だって、いつ窓を見てしまうかわからなかったから。
702			それほどまでに、 自分の今の顔を見るのが嫌だった。
703			自分の今の心を覗くのが、 とてつもなく、恐ろしかった。

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