Difference between revisions of "Talk:Zero no Tsukaima:Volume14 Chapter1"

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==Orginal Text to help with review and editing ==
 
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<!-- i am now proceeding to translate part 2 of chapter 1...
<!-- This is the first half of chapter 1. If I stand corrected, the original text and the translated are aligned so you know which translated is which RAW text. Right now, I've just roughly translated. I'll move on to the second part of chapter 1. after that, i'll start translating manually to get the structure alright. if you would like to edit even before i do the latter, itd be an honour^^
 
   
 
Please take note of these;
 
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 そればかりか、あの無能王は、自分たちまで茶番の役者に仕立て上げようとしている。
 
 そればかりか、あの無能王は、自分たちまで茶番の役者に仕立て上げようとしている。
 
 包囲? 何を包囲せよというのだ? 包囲して、どうせよというのだ? おそらく自分たちはただの見物人役なのだろう。他国を納得させるための、彩《いろど》りの一部に過ぎない。
 
 包囲? 何を包囲せよというのだ? 包囲して、どうせよというのだ? おそらく自分たちはただの見物人役なのだろう。他国を納得させるための、彩《いろど》りの一部に過ぎない。
 もう我慢がならぬ。決起のときは今である……。 -->
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 もう我慢がならぬ。決起のときは今である……。
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サン・マロンへ向かう途中、東|薔薇《ばら》騎士団は夜を待ってリュティスへと引き返した。夜を徹しての進軍で、四時間後にはこのようにリュティスに舞い戻ることができた。みちみち、協力を取りつけてあった各連隊へ急便を飛ばしながらの早がけであった。
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 親子ほども年の離れた副団長のアルヌルフが近寄り、その耳に顔を近づける。
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「三つの連隊が協力を確約した、との報告がただ今届きました。彼らは朝にはリュティスに到着します」
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「心強いな」
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 カステルモールは、この日初めての笑顔を浮かべた。現王政府に反感を抱く貴族や軍人は少なくない。だが、実際にことを起こすとなれば話は別だ。|謀叛《むほん》人の汚名は誰《だれ》も着たくない。
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 それでも三つの連隊がすぐさま決起に応じた。自分の判断は間違っていなかった。カステルモールがジョゼフの首を上げれば、残りの連中もすぐになびくだろう。
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「三日後にはトリステインに亡命あそばされているシャルロットさまを玉座にお迎えできるな」
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 カステルモールは、いいようにこき使われていた王女の顔を思い出し、首を振った。オルレアン公の優しげな顔を思い出し、胸が熱くなった。
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「……殿下、殿下の御無念を晴らすときがついにやってまいりました。殿下は貧乏貴族の家に生まれたわたくしを、『見込みがある』の一言で騎士団にお引き立てくださいました。
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そのご恩に報いるときが、ついにやってきたのです」
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 カステルモールは顔をあげると、高々と杖《つえ》を掲げた。
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「諸君! 騎士団諸君に告ぐ! 我らはこれより、|纂奪者《さんだつしゃ》より王座を取り返す! そののちに、しかるべきお方にお返しするのだ! 恐れるな! 我らは|叛軍《はんぐん》にあらず! 真のガリア花壇騎士、ガリア義勇軍である!」
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 騎士団から歓声があがった。
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「この石壁の向こうに眠る男こそ、神と始祖と祖国に仇《あだ》なす|謀叛《むほん》人である! 諸君、われに続け!」
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 カステルモールはそう叫ぶと、魔法を唱えて 〝フライ〟 で石壁を飛び越えた。次々に騎士たちはその背に続いた。わらわらと集まってきた警備の兵たちを東|薔薇《ばら》騎士団の騎士たちは魔法で吹き飛ばし、一直線にジョゼフがいるグラン・トロワへと突進していった。
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 ジョゼフは玉座に腰掛けて、オルゴールを聴いていた。
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 ぼんやりと|虚空《こくう》を見つめながら、ゆっくりと腕を持ち上げ、調べを奏でる指揮者のように手を動かす。
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 陶酔しきった表情を浮かべながら始祖の調べに身を委《ゆだ》ねていると、玉座の間に衛士を連れた大臣が飛び込んできた。
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「陛下! 陛下! 大変です! 謀叛です! 謀叛ですぞ!」
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 慌てふためきながら、大臣はジョゼフの玉座に跪《ひぎまず》く。
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「東薔薇騎士団が謀叛を起こしました! 警護の者を|蹴散《けち》らし、このグラン・トロワに侵入いたしました! 今現在、鏡の間で親衛隊が必死の抵抗を続けておりますが多勢に無勢! まもなく防衛線は破られ、ここにやってくるでしょう!」
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 現在宮殿を守る貴族はわずか二十名に過ぎない。代々衛兵をつかさどるベルゲン大公国出身の|傭兵《ようへい》たちが数百名|駐屯《ちゅうとん》していたが、メイジばかりの騎土団が相手では、戦力に数えられようはずもない。例の 〝陰謀〟 で、ほとんどの部隊や騎士団が王都を出払っていた。
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 その隙《すき》をつかれたのだった。
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 絶体絶命のピンチにもかかわらず……、ジョゼフは恍惚《こうこつ》とした表情を崩さない。まるで大臣の叫びが調べの一部とでもいうように、オルゴールの音色に聴き入っていた。
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「陛下! 陛下! 早く地下通路へ! わたしの護衛隊が警護を仕《つかまつ》ります!」
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 その剣幕にやっと気づいたように、ジョゼフは顔をあげる。
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「どうした?」
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「謀叛です! 何度も申し上げているではありませんか!」
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「ああ。そうか。そういえば、そういう可能性もあったな。忘れていたよ」
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 ジョゼフは大きく頷《うなず》くと、ゆっくりと立ち上がる。
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「ではこちらへ!」
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 そう言って案内しようとした大臣をさえぎり、ジョゼフは悠然と玉間の入り口を見つめ
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た。入り口の向こうからは、衛士と謀叛《むほん》の騎士たちの剣戟《けんげき》が響いてくる。その恐ろしい響きで、大臣は腰を抜かし、へたへたと床に崩れ落ちた。
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「ああ、ああ……、終わり、終わりです……」
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 魔法の飛ぶ音や、杖《つえ》同士がぶつかり合う恐ろしい音がぴたりとやんだ。ゆっくりと、勝者が玉間の入り口に姿を現したときも、ジョゼフはじっと立ち続けていた。
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「おや、カステルモールじゃないか。いったいどうした? きみの部隊には、サン・マロンへ向かうよう命じたはずだが」
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 カステルモールはジョゼフの問いに答えず、杖を突きつけた。
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「現ガリア王ジョゼフ一世。神と始祖と正義の名において、貴様を逮捕する」
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「ほう。いったいどんな罪で余を逮捕するつもりなのだ? 国王を裁く法は、ガリアには存在せぬぞ」
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「祖国に対する数々の裏切り行為だ。貴様は王の器ではない」
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 どやどやと東|薔薇《ばら》騎士団の騎士たちが玉間になだれ込み、次々に軍杖《ぐんしょう》をジョゼフに突きつけていく。
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「さあ! 杖を捨てろ!」
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 すると、ジョゼフは大声で笑った。
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「なにがおかしい!」
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「いやぁ、面と向かって『王の器ではない』と言われたのはさすがに初めてなものでな。
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カステルモール、お前はなかなか見所があるじゃないか。正直、ただ頭を下げるしか能のない、おべっかつかいだと思っていた」
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「なめるな! 貴様を欺くための演技に過ぎぬ!」
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「実に余は……、人を見る目というものが欠けているな。お前の言うとおり、まったくもって王の器などではない。真実、お前の叛意すら見抜けなかったのだからな。無能もここに極まれり! だ。あっはっは!」
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 そしてジョゼフは、再び大声で笑う。|呆気《あっけ》にとられた一同を|尻目《しりめ》に、ジョゼフは背中を向けた。
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「どこへ行く!」
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「寝るのだ。いや、そろそろ眠いのでな。話なら、明日にしてくれぬか?」
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 ほんとうにそのつもりのようだ。カステルモールは怒りを通り越し、呆《あき》れてしまった。
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もしかしたらこの王は、本当に頭が弱いのかもしれぬ。
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 だが、赦《ゆる》すわけにはいかない。
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「ジョゼフを拘禁しろ」
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 何人かの騎士たちが、罠《わな》を警戒しながらジョゼフに近づいていく。残りの騎士たちも、呪文《じゅもん》を唱えながらジョゼフに杖《つえ》を突きつけた。副団長のアルヌルフが執事のように近づき、カステルモールに耳打ちする。
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「罠があるかもしれません。ご慎重に」
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 カステルモールは頷《うなず》いた。よもや罠があろうが、八十名からの騎士を止められる罠など存在しない。どんな魔法を使おうが、これだけの手練《てだ》れの騎士に囲まれて、逃げられるわけもない。ジョゼフは今まさに、猟師に捕らえられたウサギだった。
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 だが、騎士がジョゼフの腕に手をかけたとき…、不可思議なことが起こった。
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 すっと、ジョゼフの姿が一瞬で掻《か》き消《き》えたのだ。
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「なんだと?」
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 カステルモールが叫ぶ。騎士たちは反射的に魔法を撃ちはなった。玉座が、立てられた衝立《ついたて》が、玉座の後ろにかけられた緞子《どんす》が、豪華な彫刻がほどこされた鏡が、火や風の魔法を受けてボロボロになっていく。
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 だが、どこにもジョゼフの姿はない。
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 誰《だれ》かがディテクト・マジックを慌てて唱える。なんらかの魔法で隠れたのならば、これですぐに見つかるはず……、だが、玉間のどこにも魔法の反応はない。
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 一人の騎士が、明かり取りの窓から顔を出して叫んだ。
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「あそこにいます!」
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「なに?」
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 カステルモールは騎士を撥《は》ね除《の》け、その窓に飛びついた。
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「おーい、どうしたで なにを探しているのだ?」
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 いったい、どんな技を使ったものか、ジョゼフは中庭の噴水の横に立っていた。騎士たちは青ざめた。魔法のエキスパートの彼らでも、ジョゼフが一瞬で中庭に移動できた理由がわからなかったのである。それができそうな魔法は、唯一風系統の 〝偏在《ユビキタス》〟 であったが、これほど見事に姿を消したり出したりは不可能だ。
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 それに、魔法の才能がないといわれたジョゼフに風のスクウェアが扱えるはずがない。
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 中庭に面した明かり取りの窓は小さく、そこから出ることは不可能だ。カステルモールは焦った声で命令を下した。
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「中庭に回れ! 急げ! あいつを逃がすな!」
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 騎士たちが慌てて駆け出していく。
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 その叫びが届いたのか、中庭のジョゼフは大声で笑った。
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「逃げも隠れもせぬよ! 安心しろ! それより、余は|今宵《こよい》のベッドを変えることにした。
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早く逃げたほうが身のためだぞ」
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「なんだと?」
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 ジョゼフは呪文《じゅもん》を唱え始めた。
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 エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサグサ……
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 かつて聞いたことのないルーンの並びだった。カステルモールは攻撃呪文を唱えるのも忘れ、その呪文に一瞬聞き入ってしまう。
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 オススーヌ・ウリュ・ル・ラド……
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 カステルモールは、背筋にひやりとしたものを感じた。驚く。自分は恐怖している!
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風のスクウェアの自分が……、魔法の才能がないとあざけられ、無能王と呼ばれた王の呪文に恐怖しているのだ。
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 冷静になれ!
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 カステルモールは自分に言い聞かせた。
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 八十人からの騎士を吹き飛ばせる呪文など存在しない。魔法は強力だが、その力には限りがある。ましてや、自分たちは宮殿の中にいるのだ。その自分たちを、中庭からどうやって攻撃しようというのだろう?
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「この無能王が! 自分の心配をしろ!」
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 カステルモールは杖《つえ》を振り上げ、呪文を唱えた。一陣にして巨大な氷の槍《やり》が出来上がる。
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生かして捕らえ、市民たちの前で裁判にかけたかったが、こうなっては致し方ない。
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 それをジョゼフに放とうとした瞬間、ジョゼフがゆっくりと、オーケストラの指揮者が演奏を開始するときのように杖を握り下ろしたのが見えた。
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 ハッタリもいい加減にしろ。
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 無能王め。
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 貴様に扱える呪文など……。
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「な?」
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 ぐらりと床が揺れた。その揺れのおかげで放ったアイス・スピアーの狙《ねら》いがそれ、ジョゼフから離れた地面に突き刺さる。
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「団長殿!」
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 隣に控えたアルヌルフが叫ぶ。カステルモールはそちらに首を向ける。アルヌルフの身体が遠ざかっていく。見ると、床石が大きくずれていくではないか。
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 カステルモールはそこでやっと理解した。
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 宮殿全体が、崩壊しつつあることに。
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「馬鹿《ばか》な! いったいどうやって!」
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 呪文《じゅもん》の見当をつける暇はなかった。見上げたカステルモールの目に、崩れ落ちてきた巨大な天井石が映った。
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 美しい青石で組み上げられたグラン・トロワが、東|薔夜《ばら》騎士団の騎士たちを飲み込みつつ、地響きを立てながら崩壊するさまを、ジョゼフは大声で笑いながら見つめていた。中には反乱勢のみならず、使用人や大臣や、味方の衛士がいたのにもかかわらず、ジョゼフは笑い続けた。
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 大きく土煙が舞い上がり、辺りは唐突に静かになる。
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「これが 〝|爆  発《エクスプロージョン》〟 か。便利な呪文だな。城のつなぎ目を爆破させただけでこの威力。使いようでは、もつと面白いことができそうだな」
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 ジョゼフは手に持った 〝始祖のオルゴール〟 を見つめながらつぶやいた。それから、ポケットから 〝始祖の香炉〟 を取り出した。優しく撫でると、中から芳香が漂ってきた。
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「だが、 〝爆発〟 といえど、おれの一つ目の 〝虚無〟 のすばらしさにはかなわぬわ」
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 中庭に立った自分を見たときの騎士たちの慌てぶりを思い出し、ジョゼフはさらに笑みを浮かべた。
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 そこに慌てふためきながら、護衛の騎士の生き残りが駆け寄ってきた。
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「陛下! よくぞご無事で!」
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 そちらのほうを振り向きもせず、ジョゼフは命令した。
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「人を集めろ。瓦礫《がれき》の中から叛徒《はんと》どもの死体を引きずりだし、リュティスの各街道の門に吊《つ》るせ。朝になってのこのこやってきたバカどもは、それを見て余に逆らう愚を悟るだろう」
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 騎士は地獄の底で悪魔を見たときのような顔でジョゼフを見つめ、すぐに低頭した。
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「……は、はっ!」
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 命令に従うべく、騎士は駆け出していこうとする。
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「待て」
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 呼び止められ、騎士は稲妻に打たれたかのように直立した。あくびをしながら、ジョゼフは騎士の背に告げた。
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「その前にベッドを用意しろ。どこでもかまわん。まったく、眠くてたまらぬわ」
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Revision as of 04:42, 6 June 2010

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