White Album 2/Script/3002: Difference between revisions

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Created page with "{{WA2ScriptTable}} {{WA2ScriptLine |1|武也|Takeya |「それじゃ、週明けから初の海外出張へと旅立つ<br>北原春希君の健康と無事と仕事の失敗..."
 
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{{WA2ScriptLine
|1|武也|Takeya
|「それじゃ、週明けから初の海外出張へと旅立つ<br>北原春希君の健康と無事と仕事の失敗を祈って…」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|2|春希|Haruki
|「おい」
| “Hey.”
|}}
{{WA2ScriptLine
|3|武也|Takeya
|「生意気なんだよ一年目で海外出張なんて。<br>かんぱ~い!」
| “An overseas business trip is cheeky to do by your first year. Cheers!”
|}}
{{WA2ScriptLine
|4|全員|All members
|「かんぱ~い!」
| “Cheers!”
|}}
{{WA2ScriptLine
|5||
|武也の、壮行会に相応しくない音頭とともに、<br>皆のグラスが一斉に傾けられた。
| “By Takeya, an unsuitable leader to the farewell party, everyone’s glass is tilted in unison.”
|}}
{{WA2ScriptLine
|6||
|金曜の夜…
| “Friday night…”
|}}
{{WA2ScriptLine
|7||
|来週から出張だと言うことで、<br>奇跡的に早く帰らせてもらった俺は、<br>久々にいつものメンバーといつもの馬鹿話に興じる。
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|8|雪菜|Setsuna
|「ね、春希くん、なに頼む?<br>わたし冷や奴と揚げ豆腐と豆腐サラダと…」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|9|春希|
|「…冷や奴と揚げ餅とシーザーサラダにしないか?」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|10||
|もちろん、雪菜はいつも通り俺の隣に寄り添い。
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|11|依緒|
|「あ、ほっけと串盛り合わせと牛肉コロッケよろしく。<br>………っ、\k
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|12|依緒|
|と、生追加」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|13|春希|
|「いきなりピッチ上げるな。<br>俺はお前のチキンレースには付き合わんからな」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|14||
|依緒も、相変わらず慣れないヒールで駆けつけてくれた。<br>…って、こいつはそうやってすぐ走ろうとするから、<br>いつまで経ってもヒールと相性が悪いんだろうな。
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|15|武也|
|「あんま飲み過ぎんなよ依緒。<br>もし意識を失ったら、目覚めた時<br>俺が隣で気怠げに煙草吸ってんぞ?」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|16||
|そして、すっかり落ち着いた…<br>というか、意外なことに社会人が板についてる武也も、<br>当然のように俺との友情を続けてくれていた。
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|17||
|こんな、大学時代から…<br>いや、付属時代から変わらない、俺たち四人…
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|18|朋|
|「北原さんわたしシャ○ルのバッグ!<br>後で型番メールするから間違えないでね?」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|19|春希|
|「………日本にだって売ってるし通販でも買えるから」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|20|武也|
|「…なんでお前がここにいるんだよ?」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|21|朋|
|「あ、わたしウーロン茶おかわり。<br>あと、トマトスライスと海藻サラダ。<br>サラダはドレッシング抜きで」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|22|依緒|
|「相変わらず人の話を聞かないコだよね…」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|23||
|…ちょっとだけ訂正。
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|24||
|こんな、大学時代から変わらない…<br>そして、付属時代からちょっとだけ変わった、俺たち五人。
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|25|朋|
|「いいじゃないですか、今日はめでたい日なんですから。<br>実はですねぇ、わたし先月…<br>土壇場でようやく東亜テレビに内定決まったんですよ~」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|26|春希|
|「…マジ?<br>キー局じゃないか」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|27|雪菜|
|「…うん、マジみたい。<br>内定通知、10回くらい見せられたし」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|28||
|あのコンサート以来、<br>いつの間にか俺たちの輪の中に、<br>華やかで刺々しい薔薇が混じるようになっていた。
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|29|武也|
|「意外と粘るな。<br>そろそろ脱ぐ頃だと思ってたんだけど」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|30|依緒|
|「そもそもグラビアアイドルとかやってた人間を<br>よく採用する気になったよねテレビ局が」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|31|朋|
|「ま、そこは普段からたゆまぬ努力の賜と言いますか、<br>可能な限り人脈と弱みは握っておくに限ると言いますか」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|32||
|柳原朋。<br>峰城大学商学部四回生。
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|33||
|二年前のミス峰城は、今でもキャンパス内で、<br>その存在感をケバケバしいほどに示しているらしい。
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|34|武也|
|「…その時の光景が目に浮かぶようだ」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|35|依緒|
|「後でスキャンダルにならなきゃいいけど…」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|36|朋|
|「スキャンダルも話題作りとして利用すればいいんです。<br>どうせ最終目標は早めに退社してフリーになって、<br>女優やアーティストとしても活躍することなんだし」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|37|雪菜|
|「口ではこんなこと言ってるけど、<br>彼女、本当に死に物狂いで努力してたんだよ?<br>ボイストレーニングも、英会話も、もちろん勉強も」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|38|春希|
|「…信じがたいけど、そうらしいな」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|39||
|あれからも柳原朋は、相変わらず雪菜を弄ってた。
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|40||
|けれど、二人の奇妙な友情…<br>というのかもわからない関係は、<br>雪菜が大学を卒業した今も続いている。
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|41||
|小木曽家のホームパーティに何度も顔を出したり、<br>雪菜がレコード会社を希望していると知るや、<br>自分のコネを最大限に利用しようと走り回ったり。
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|42||
|雪菜の歌に更に磨きをかけようと、<br>趣味半分の雪菜以上の本気をもって、<br>一緒にボイストレーニングに通ったり。
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|43||
|さらに今でも“あの歌”をメジャーに売り込もうと、<br>例の人脈とやらにデモCDを配ったりとかもしてるらしく、<br>その執念には雪菜も武也も呆れるばかりだとか。
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|44||
|…いつまで経っても、<br>いい奴なんだか悪い奴なんだかわからない、変な奴。
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|45||
|………
|.........
|}}
{{WA2ScriptLine
|46|武也|
|「だからな、大学で勉強ばっかしてた奴らは<br>結局会社じゃ役に立たないんだよ」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|47|雪菜|
|「そ、そうなの…かな?」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|48|武也|
|「大学生ってのはさ、<br>遊ぶことによって社会と触れあってんだよ。<br>馬鹿やって人との付き合い方がわかってくんだよ」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|49|朋|
|「まぁ、確かに飯塚先輩は<br>七年間馬鹿しかやってこなかったですけど」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|50|武也|
|「…で、そうやってると、<br>自然と社会人としてのスキルが磨かれてくんだって。<br>研究に明け暮れてんなら大学に残った方がよっぽどいい」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|51|依緒|
|「営業の視点だけ、それもたった半年かじっただけで、<br>そんなわかったようなこと言われてもねぇ」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|52|武也|
|「いや基本どの仕事もおんなじだって。<br>やっぱ会社に属する以上、人とコミュニケーションが<br>取れてナンボってとこあるじゃん?」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|53|依緒|
|「けどさぁ、春希は勉強しまくってたけど、<br>十分役に立ってるみたいじゃん?」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|54|武也|
|「こいつはおかしいんだよ。突然変異」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|55|春希|
|「酷い言われようだな、おい」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|56|武也|
|「そもそもこんな根暗でオタクっぽい奴が、<br>大学一のアイドルとらぶらぶだって時点で、<br>何かおかしいってことに気づけよ」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|57|依緒|
|「卑怯だぞ武也…<br>それ言われたら論破のしようがないじゃないか」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|58|春希|
|「…をい」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|59|朋|
|「雪菜が大学一…ってのには、<br>やっぱりまだ異議を唱えたい自分がいるんですけど~」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|60|雪菜|
|「みんなやだなぁ、恥ずかしいからやめてよ…<br>別に、アイドルとかそういうんじゃないよ、全然」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|61|武也|
|「しかも“らぶらぶ”の方は照れないし…」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|62|春希|
|「そういうのを恣意的報道と言うんだ。<br>もうちょっと公平な視点でものを見ろ。<br>使える社会人だって言うんなら」
|
|}}
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|63|雪菜|
|「もしかして春希くん照れてる?」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|64|春希|
|「だから後ろから撃たないで雪菜…」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|65||
|乾杯から1時間…
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|66||
|お酒の注文を三度、四度と重ねるうち、<br>皆の口の方もかなり滑らかになってきて。
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|67||
|俺たちは、昔と同じように、<br>真面目に、適当に、熱く、ゆるく騒ぎ合う。
|
|}}
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|68||
|それは、大学時代の馴れ合いの延長なのか、<br>それとも普段のストレスの発散なのか…
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|69|春希|
|「にしてもさ…<br>俺たちが飲み会の席で仕事の愚痴を言い合うなんてな」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|70|雪菜|
|「五年前からじゃ想像もできなかったよね」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|71|依緒|
|「あたしは一年前でも想像してなかったよ」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|72|朋|
|「わたし正直、まだちょっとついていけてません」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|73|武也|
|「そうか?<br>そういうもんかな…」
|
|}}
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|74|春希|
|「ほら、特に武也。<br>お前、妙に語るようになったよなぁ。<br>仕事とか会社とか社会とか…」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|75|依緒|
|「なんかダサい…」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|76|武也|
|「ダサい人間嫌いかよ?<br>去年まではチャラい人間嫌いだって言ってたくせによ」
|
|}}
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|77|依緒|
|「え? あ、あぁ…ええと…<br>あたしは…その時その時の武也の性格が<br>一番嫌いって言うか…」
|
|}}
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|78|武也|
|「あ~あ~そうですかそうですか。<br>どうすりゃいいんでしょうかね俺は~」
|
|}}
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|79|春希|
|「よせ、武也…」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|80||
|で、やっぱり乾杯から一時間ってことで…
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|81||
|五杯、六杯と重ねていくうちに、<br>普段ならさらりと流す相手の毒舌が、<br>どうしても癇に障ってしまったり…
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|82|依緒|
|「違うよ、春希。<br>…今のはあたしが悪い」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|83|雪菜|
|「依緒…」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|84||
|普段ならギャグっぽく言うべき言葉を、<br>ぼそりと本音っぽく呟いてしまったり、する。
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|85|依緒|
|「あたしさ…<br>実はちょっと嫉妬してるんだ。みんなに」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|86|春希|
|「お前、何を…」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|87|依緒|
|「だってさ…<br>多分、仕事に対して本気で不満持ってるの、<br>この中じゃあたしだけだって気がするもん」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|88|武也|
|「………」
|"........."
|}}
{{WA2ScriptLine
|89|依緒|
|「雪菜は会社でも、やっぱり看板背負ってる。<br>春希は最初から期待値が高くて、しかもそれに応えてる。<br>武也だって、大学時代からは信じられない高評価」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|90||
|毎日、違う場所で過ごし、違う時間に生きて、<br>違う毎日を送ってる俺たちは…
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|91||
|『昔と同じように』ふざけ合うことなんて、<br>もう、二度とできないのかもしれない。
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|92|依緒|
|「朋だって、前途洋々な未来が開けてさ…<br>なんか、あたしだけ…<br>あたしだけ」
|
|}}
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|93|朋|
|「水沢さん…」
|
|}}
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|94||
|依緒は…第一志望だった<br>スポーツ用品メーカーに就職した。
|
|}}
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|95||
|企画職を希望してたけど、なかなか競争率が高いらしく、<br>今は人事部で事務仕事に忙殺される毎日だとか。
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|96||
|つまり、それはきっと、<br>自らが思い描いた将来の姿とは少なからず離れてて…
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|97|依緒|
|「あ~あ、なんだかなぁ。<br>あたし、本当はこんなこと言うつもりなんか…」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|98|武也|
|「嫌ならやめちまえ。<br>別にお前の進む道が一つだなんて決めた奴はいねぇだろ」
|
|}}
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|99|依緒|
|「…なんだって?」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|100|春希|
|「だから、武也…」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|101|武也|
|「自分から変えてやろうとかもしないくせに、<br>与えられたことに不満持ってぶちぶち…誰だよお前」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|102||
|けれど、そんな弱気な依緒を一番見たくない奴は、<br>間違いなくこの中にいるわけで。
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|103|武也|
|「そうだ、なんなら結婚退職しちゃうか?<br>お前の相手になってやってもいいって言う酔狂な奴も、<br>世界中でたった一人くらいならいるかも…」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|104|依緒|
|「………黙れ」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|105|雪菜|
|「い、依緒…」
|
|}}
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|106|依緒|
|「あたしのこと、武也にだけはとやかく言われたくない。<br>…世界中でたった一人、心底気にくわない奴からは」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|107|武也|
|「………久々にやるかぁ?」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|108|依緒|
|「………望むところだね」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|109|春希|
|「あ~あ…」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|110||
|場が、変なふうに盛り上がってしまった。
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|111||
|二人は、昔とは違い、<br>真面目にふざけ、適当に戯言を飛ばし、<br>熱く罵り合い、ゆるく睨み合う。
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|112||
|大学時代の馴れ合いでもなく、<br>普段のストレス発散でもなく。
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|113||
|きっとそれは、付属の頃よりも…<br>俺がまだ、二人と会うよりも前の…
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|114|雪菜|
|「は、春希くん…っ」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|115|朋|
|「北原さん…<br>なんとかしてくださいよ、あの二人…」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|116||
|俺の両隣の二人が、殺伐とした場の空気に押され、<br>心細そうに俺の両袖を掴む。
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|117||
|だから俺は、<br>この不毛な争いに決着をつけるべく…
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|118|春希|
|「すいません、店員さん…」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|119|店員|
|「はい、お伺いしま~す」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|120|春希|
|「飲み物メニュー、いただけますか?」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|121|雪菜&朋|
|「………え?」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|122||
|………
|.........
|}}
{{WA2ScriptLine
|123||
|……
|......
|}}
{{WA2ScriptLine
|124||
|…
|...
|}}
{{WA2ScriptLine
|125|武也|
|「よ~しそんじゃもう一軒行こうかもう一軒~!<br>今度こそ完全決着つけてやるからな~」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|126|雪菜|
|「ちょ、ちょっと武也くん…<br>しっかりして」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|127|朋|
|「…ほんっとおっさんくさくなったなぁ飯塚さん。<br>これでネクタイ頭に巻いてたら完璧」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|128|武也|
|「どこ行こっか雪菜ちゃん?<br>今度はもうちょっと静かに飲めるとこがいいかな~」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|129|雪菜|
|「もう帰った方がいいって。<br>タクシーで家まで送ってあげるから」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|130|武也|
|「何言ってんの? せっかくの週末じゃん。<br>俺たちの夜は、まだまだこれからだ…ってかぁ」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|131|朋|
|「わたし、通りでタクシー捕まえてくるから、<br>雪菜はここでちょっと見てて…」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|132|武也|
|「よし、そんじゃこうしよう。<br>二次会はカラオケってことで。<br>雪菜ちゃん、一人で歌いたいだけ歌っていいからさ」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|133|雪菜|
|「………そ、そう?<br>それじゃあ」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|134|朋|
|「…何流されそうになってんのよ雪菜」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|135|雪菜|
|「い、いい加減わたしだけ呼び捨てはやめてよ!」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|136||
|………
|.........
|}}
{{WA2ScriptLine
|137|依緒|
|「…ごめん」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|138|春希|
|「何が?」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|139|依緒|
|「見苦しいとこ、見せちゃって…」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|140|春希|
|「潰れてないだけマシだ。<br>[R武也^あのバカ]みたいに」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|141||
|とはいえ、潰したのは実質俺だけどな…
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|142||
|睨み合う二人が見せる、やるせない表情は、<br>笑って済ませられる雰囲気を超えていた。<br>…多分、揉め事の本題とは違う方向で。
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|143||
|だから俺は、二人の言葉での争いに、<br>無理やり水を…いや、酒を差した。
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|144||
|俺の提示したルールに、ほっとしたように頷いた二人は、<br>次から次へとやって来るグラスを次から次へと空にした。
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|145||
|厳格な審判は、決してピッチを上げることを許さず、<br>そして1時間にもわたる勝負の末…
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|146||
|結局、両者の腕が審判によって掲げられ、<br>そこで一次会はお開きになった。
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|147|依緒|
|「最近、あいつとは結構あんな風になっちゃうんだよね。<br>だからなるべく二人では会わないようにしてるんだけど」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|148|春希|
|「でも、あいつは会いたがってるんだろ?<br>それも原因の一つなんじゃないのか?」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|149|依緒|
|「…正直、戸惑ってるんだよ。<br>だってあいつ、変わっちゃったんだもん」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|150|春希|
|「誰のために変わったのか、<br>本当はわかってるよな?」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|151|依緒|
|「………」
|"........."
|}}
{{WA2ScriptLine
|152||
|依緒の言う通り、武也は変わった。
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|153||
|大学の時には<br>『○曜日の彼女』なんて言い方が通用するくらい、<br>多彩な女性関係を誇ってた。
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|154||
|それも、俺たち…特に[R誰かさん^いお]に見せつける意図が強く、<br>その件に関してだけは、誰もがあいつのことを<br>痛々しく見ていた部分があった。
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|155||
|けれど今、武也の回りに女の影は微塵もない。
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|156||
|それは本来、喜ぶべきことで…<br>俺たちも、今の武也の公私ともどもの頑張りぶりは、<br>心の底から応援してる。
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|157|依緒|
|「誰のためかなんて知らない。<br>けど、誰のせいかってのは知ってる。<br>…春希のせいだよ」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|158|春希|
|「“せい”って…」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|159||
|仲間うちの、ただ一人を除いて。
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|160|依緒|
|「春希がさ、自分の三年越しの想いを…<br>そして、雪菜の三年越しの想いを実らせちゃったから」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|161|春希|
|「“ちゃった”って…」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|162|依緒|
|「だからさぁ…<br>な~んか、変な影響受けちゃったみたいなんだよねぇ」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|163|春希|
|「それって…俺が悪いって言うのか?」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|164|依緒|
|「ううん、悪くない。<br>むしろあたしだって、とっても嬉しかった。<br>…ずっと雪菜の側で、あの子の涙、見てきたからね」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|165|春希|
|「………」
|"........."
|}}
{{WA2ScriptLine
|166|依緒|
|「けどさぁ…まさかこんなふうに、<br>武也が、あたしたちのケースに当てはめようとするなんて、<br>思いもしなかったんだよねぇ」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|167||
|武也と依緒は、知り合ってもう10年になる。
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|168|依緒|
|「あのさ…<br>あたしたちが春希と知り合う前に、<br>あたしがあいつに何したか知ってる?」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|169|春希|
|「ああ…<br>親友、だから」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|170|依緒|
|「そっか…<br>なら、あたしがためらうのも少しはわかるよね?」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|171|春希|
|「………」
|"........."
|}}
{{WA2ScriptLine
|172|依緒|
|「あんたなら…わかるよね。<br>雪菜のこと、三年も避け続けたあんたなら」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|173||
|俺が武也と知り合ったとき、<br>二人はとっくに腐れ縁だった。
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|174|春希|
|「武也のこと…嫌いか?」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|175|依緒|
|「嫌いな奴と10年一緒にいるほど、<br>あたしは自分の人生を捨ててない」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|176|春希|
|「そう、か」
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|177||
|つまり、俺と雪菜なんかよりよっぽど歴史のある、<br>由緒正しい腐れ縁なんだ。
|
|}}
{{WA2ScriptLine
|178|雪菜|
|「ねぇ、春希く~ん!」
|
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{{WA2ScriptLine
|179|春希|
|「なんだ~?」
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{{WA2ScriptLine
|180|雪菜|
|「あのさぁ、<br>こっち多数決でカラオケって流れになってるんだけど、<br>そっちの二票はどうかなぁ?」
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{{WA2ScriptLine
|181|春希|
|「………だってよ」
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|}}
{{WA2ScriptLine
|182|依緒|
|「………」
|"........."
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{{WA2ScriptLine
|183|春希|
|「勝手にしろ~!」
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|}}
{{WA2ScriptLine
|184|雪菜|
|「りょうか~い!<br>今からお店押さえてきま~す!」
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|}}
{{WA2ScriptLine
|185|朋|
|「行くのは構わないけどさぁ、<br>せめて雪菜が5曲入れる間に1曲くらいは歌わせてよ?」
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|}}
{{WA2ScriptLine
|186|雪菜|
|「デュエットしようよデュエット!<br>あと、コーラス入れてくれてもいいし」
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|}}
{{WA2ScriptLine
|187|朋|
|「…自分が遠慮するという選択肢はないのね」
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|}}
{{WA2ScriptLine
|188|依緒|
|「…ねぇ、春希」
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|}}
{{WA2ScriptLine
|189|春希|
|「ん?」
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|}}
{{WA2ScriptLine
|190||
|大きく手を振る雪菜に、苦笑混じりで振り返しながら、<br>また、依緒がぽつりと呟く。
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|}}
{{WA2ScriptLine
|191|依緒|
|「あんたは、これからどうするの?<br>雪菜とのこと…どうするつもり?」
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|}}
{{WA2ScriptLine
|192|春希|
|「…今さらそんなこと聞くのかよ?」
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|}}
{{WA2ScriptLine
|193||
|それも結構、核心中の核心を。
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|}}
{{WA2ScriptLine
|194|依緒|
|「きっと、あんたらがもう一つ先に進んだら、<br>決定的な結論を出したらさ…<br>武也は、今よりもっと決意を固めると思うんだ」
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|}}
{{WA2ScriptLine
|195|春希|
|「ん…」
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|}}
{{WA2ScriptLine
|196||
|依緒の、武也に関する認識は、<br>傲慢なほどに揺るぎない。
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|}}
{{WA2ScriptLine
|197||
|けどそれは、今のこの二人を見ていたら、<br>誰もが一時間で辿り着く結論でもあったりして。
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|}}
{{WA2ScriptLine
|198|依緒|
|「そしたらさ…<br>あたしの方も、そろそろ腹くくらなくちゃ…」
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|}}
{{WA2ScriptLine
|199|春希|
|「え…?」
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|}}
{{WA2ScriptLine
|200|依緒|
|「ね、春希」
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|}}
{{WA2ScriptLine
|201||
|そして今、依緒は…
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|}}
{{WA2ScriptLine
|202||
|誰もが結構見抜けなかった結論を、<br>さらりと口に出したような気がしないでもなかった。
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|}}
{{WA2ScriptLine
|203|依緒|
|「あんたは…いつ、決心するの?」
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|}}
{{WA2ScriptLine
|204|春希|
|「………」
|"........."
|}}
{{WA2ScriptLine
|205||
|決心…か。
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|}}
{{WA2ScriptLine
|206|依緒|
|「あれから二年、だよね。<br>もう、完全に独り立ちできてるよね。<br>雪菜…待ってるよね?」
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|}}
{{WA2ScriptLine
|207||
|決心なんて…<br>そんなの、とっくの昔にできてる。
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|}}
{{WA2ScriptLine
|208||
|後はタイミングだけ。<br>ただ、それだけなんだ。
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|}}
{{WA2ScriptLine
|209|春希|
|「依緒、俺は…」
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|}}
{{WA2ScriptLine
|210|依緒|
|「クリスマスにヨーロッパかぁ…<br>いいよねぇ、あんたたちはロマンチックで。<br>あたし、有海誘われてんだよ。定番過ぎない?」
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|}}
{{WA2ScriptLine
|211|春希|
|「………それはヤバかったな。<br>出張がなければ俺たちも有海だった」
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|}}
{{WA2ScriptLine
|212|依緒|
|「勘弁してよあんたたち…」
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|}}
{{WA2ScriptLine
|213|春希|
|「しょうがないだろ。<br>あいつ、俺のそっち方面の師匠でもあるんだから」
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|}}
{{WA2ScriptLine
|214||
|そっか。<br>『クリスマスにヨーロッパ』か…
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|}}
{{WA2ScriptLine
|215||
|つまりその“タイミング”ってのは…
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|}}
{{WA2ScriptLine
|216||
|すぐそこにまで、迫ってきてるって、こと。
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|}}
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Revision as of 13:52, 3 June 2016