// Resources for SEEN0813.TXT
// #character '朋也'
#character 'Tomoya'
// #character '河南子'
#character 'Kanako'
// #character '声'
#character 'Voice'
// #character '智代'
#character 'Tomoyo'
// #character '管理人'
#character 'Manager'
// <0000> 何も思いつかないまま、今日も泊めてもらうことになった。
<0000> I’ll be stuck today without having anything to think about。
// <0001> このままずるずると何もしないで、休みが終わるのが恐かった。
<0001> It was scary that the holiday was over without having done anything。
// <0002> 焦りが俺をじっとされてくれない。
<0002> 焦りが俺をじっとされてくれない。
// <0003> 散歩と称して、山道を歩いていた。
<0003> In my mind, I walk along a mountain path。
// <0004> すると、なぜか河南子までついてきた。
<0004> Then for some reason, I came across Kanako。
// <0005> \{朋也}「なんだよ」
<0005> \{Tomoya}「What is it?」
// <0006> \{河南子}「いや、暗い顔してるからさ」
<0006> \{Kanako}「いや、暗い顔してるからさ」
// <0007> \{朋也}「そうか?」
<0007> \{Tomoya}「Is that so?」
// <0008> 言われるまで気がつかなかった。
<0008> I didn’t notice until it was said。
// <0009> \{河南子}「そのまま、どっかから飛び降りちゃうんじゃないかと思って」
<0009> \{Kanako}「そのまま、どっかから飛び降りちゃうんじゃないかと思って」
// <0010> \{朋也}「するかよ…」
<0010> \{Tomoya}「するかよ…」
// <0011> 山道を、何も考えずにぶらぶらと歩いた。
<0011> Without thinking, I aimlessly walked along the mountain path。
// <0012> 崖に行き着く。
<0012> I arrive at a cliff。
// <0013> 街灯がないので危険だ。無闇に歩いてると、本当に落ちそうだ。
<0013> Because there are no streetlights, it’s dangerous. If I am thoughtless and walk, I might actually fall。
// <0014> 底のほうを眺めていると、吸い込まれていきそうになる。.
<0014> When I look towards the bottom, I feel like I’m being sucked in。
// <0015> \{声}「わあぁっ!」\shake{4}
<0015> \{Voice}「Aaah!」\shake{4}
// <0016> \{朋也}「うわあぁっ!」
<0016> \{Tomoya}「うわあぁっ!」
// <0017> 大声と共に肩を掴まれて、飛び上がるほど驚く。
<0017> A loud voice caught me by surprise, making me to jump。
// <0018> \{朋也}「落とす気かっ!」
<0018> \{Tomoya}「落とす気かっ!」
// <0019> \{河南子}「いや、危ないよーって」
<0019> \{Kanako}「いや、危ないよーって」
// <0020> \{朋也}「冗談になってないからな…」
<0020> \{Tomoya}「冗談になってないからな…」
// <0021> どうしていいかわからないままに、月明かりの中を歩く。
<0021> I walk in the moonlight because I don’t know what else to do。
// <0022> \{河南子}「うわー、すごい星空」
<0022> \{Kanako}「Wow, what an amazing starlit sky」
// <0023> 河南子が足を止めて、空を見上げていた。
<0023> Kanako stopped walking and looked up at the sky。
// <0024> \{河南子}「向こうでも結構すごいなって思ってたんだけど」
<0024> \{Kanako}「向こうでも結構すごいなって思ってたんだけど」
// <0025> \{河南子}「けた違いだぁね」
<0025> \{Kanako}「けた違いだぁね」
// <0026> 俺も見上げてみる。
<0026> I also look up at the sky。
// <0027> 確かに降ってきそうなほどの星が瞬いていた。
<0027> 確かに降ってきそうなほどの星が瞬いていた。
// <0028> \{河南子}「あー、ともにも見せてあげたかったなー」
<0028> \{Kanako}「Oh, I wanted to show youー」
// <0029> …鷹文には。
<0029> …鷹文には。
// <0030> \{河南子}「こんなにも星がキレイなんだからさ…」
<0030> \{Kanako}「That the stars are so beautiful …」
// <0031> \{河南子}「元気、だそうよ、ね」
<0031> \{Kanako}「元気、だそうよ、ね」
// <0032> \{朋也}「ああ、そうだな」
<0032> \{Tomoya}「Oh, is that so」
// <0033> こいつなりに元気づけてくれていたのか。
<0033> こいつなりに元気づけてくれていたのか。
// <0034> \{朋也}「でも、結局何もできそうにないからな」
<0034> \{Tomoya}「でも、結局何もできそうにないからな」
// <0035> 未来や希望なんてものが、この俺に作り出せるはずもなかった。
<0035> 未来や希望なんてものが、この俺に作り出せるはずもなかった。
// <0036> どこかの資産家か、お偉いさんならできたのかもしれないが、俺はしがない労働者だ。
<0036> どこかの資産家か、お偉いさんならできたのかもしれないが、俺はしがない労働者だ。
// <0037> できることといったら、壊れた掃除機や洗濯機を直すことぐらいだ。
<0037> できることといったら、壊れた掃除機や洗濯機を直すことぐらいだ。
// <0038> しばらく歩くと、ゴミの山へと辿り着いた。
<0038> しばらく歩くと、ゴミの山へと辿り着いた。
// <0039> 剥き出しの岩に腰かけ、わずかに見える村を眺める。
<0039> 剥き出しの岩に腰かけ、わずかに見える村を眺める。
// <0040> 畑は月光に照らされ、施設の街灯だけが浮かんで見えた。
<0040> 畑は月光に照らされ、施設の街灯だけが浮かんで見えた。
// <0041> \{河南子}「ここにともが住めるようにすればいいんじゃないの?」
<0041> \{Kanako}「ここにともが住めるようにすればいいんじゃないの?」
// <0042> \{朋也}「そんなことはわかってるよ…」
<0042> \{Tomoya}「そんなことはわかってるよ…」
// <0043> \{朋也}「それができないから考えてるんだろうが」
<0043> \{Tomoya}「それができないから考えてるんだろうが」
// <0044> \{河南子}「部屋も余ってたじゃん」
<0044> \{Kanako}「部屋も余ってたじゃん」
// <0045> \{朋也}「学校がないだろ」
<0045> \{Tomoya}「学校がないだろ」
// <0046> \{河南子}「じゃあ、作ればいいじゃん」
<0046> \{Kanako}「じゃあ、作ればいいじゃん」
// <0047> \{朋也}「何を?」
<0047> \{Tomoya}「何を?」
// <0048> \{河南子}「学校」
<0048> \{Kanako}「学校」
// <0049> こともなげに言う河南子に呆れる。
<0049> こともなげに言う河南子に呆れる。
// <0050> 学校を作る
<0050> 学校を作る
// <0051> 別の案を考える
<0051> 別の案を考える
// <0052> \{朋也}「おまえな、馬鹿だろ」
<0052> \{Tomoya}「おまえな、馬鹿だろ」
// <0053> \{河南子}「なんだよ、せっかく考えてあげたのに」
<0053> \{Kanako}「なんだよ、せっかく考えてあげたのに」
// <0054> 河南子は膨れて、来た道を引き返していった。
<0054> 河南子は膨れて、来た道を引き返していった。
// <0055> あれでもあいつなりに考えてくれたのだろう。でも、常識を逸していた。残念ながら応えることができない。
<0055> あれでもあいつなりに考えてくれたのだろう。でも、常識を逸していた。残念ながら応えることができない。
// <0056> ただ、馬鹿という発言だけは余計だったな、と反省する。
<0056> ただ、馬鹿という発言だけは余計だったな、と反省する。
// <0057> 戻ったら謝っておこう。
<0057> 戻ったら謝っておこう。
// <0058> \{朋也}「…おまえな」
<0058> \{Tomoya}「…おまえな」
// <0059> 馬鹿だろ、と続けようとしてやめた。
<0059> 馬鹿だろ、と続けようとしてやめた。
// <0060> なければ作ればいいなんて発想、思いついたとしてもすぐ到底無理だと諦めてしまっていただろう。
<0060> なければ作ればいいなんて発想、思いついたとしてもすぐ到底無理だと諦めてしまっていただろう。
// <0061> でも、俺は今日まで、到底無理だと思えたことも根性だけで実現してきたんだ。
<0061> でも、俺は今日まで、到底無理だと思えたことも根性だけで実現してきたんだ。
// <0062> 連夜の喧嘩に勝ち続けた。
<0062> 連夜の喧嘩に勝ち続けた。
// <0063> 鷹文とのタイピング勝負にも勝った。
<0063> 鷹文とのタイピング勝負にも勝った。
// <0064> みんなであいつの呪いも解いた。
<0064> みんなであいつの呪いも解いた。
// <0065> この場所だって、一枚の手紙から突き止めてみせた。
<0065> この場所だって、一枚の手紙から突き止めてみせた。
// <0066> これまでそうしてきたはずなのに。
<0066> これまでそうしてきたはずなのに。
// <0067> \{朋也}(なんで忘れてたんだろう…)
<0067> \{Tomoya}(なんで忘れてたんだろう…)
// <0068> 河南子の言葉を受け、ようやく思い出せた。
<0068> 河南子の言葉を受け、ようやく思い出せた。
// <0069> \{河南子}「あたしが何?」
<0069> \{Kanako}「あたしが何?」
// <0070> \{河南子}「どうせ、馬鹿だろ、とか言うんだろ」
<0070> \{Kanako}「どうせ、馬鹿だろ、とか言うんだろ」
// <0071> \{朋也}「いや、これでも見直してるんだぞ」
<0071> \{Tomoya}「いや、これでも見直してるんだぞ」
// <0072> \{朋也}「おまえはさ…」
<0072> \{Tomoya}「おまえはさ…」
// <0073> \{朋也}「馬鹿の中の馬鹿だよ」
<0073> \{Tomoya}「馬鹿の中の馬鹿だよ」
// <0074> どぐしっ!
<0074> どぐしっ!
// <0075> 8月13日(金)
<0075> August 13th (Fri)
// <0076> 俺は朝から村をさまよっていた。
<0076> 俺は朝から村をさまよっていた。
// <0077> 昨日の考えが本当にできるかどうか、それを確かめるために。
<0077> 昨日の考えが本当にできるかどうか、それを確かめるために。
// <0078> 住人は施設か、その周囲の民家に住んでいるため、離れた場所には誰も住んでいない。
<0078> 住人は施設か、その周囲の民家に住んでいるため、離れた場所には誰も住んでいない。
// <0079> ひとつずつ、もう打ち捨てられた家々を見て回る。
<0079> ひとつずつ、もう打ち捨てられた家々を見て回る。
// <0080> だが、見つかった家はとても使えそうもなかった。
<0080> だが、見つかった家はとても使えそうもなかった。
// <0081> 朽ちて、天井が抜け落ちていた家。
<0081> 朽ちて、天井が抜け落ちていた家。
// <0082> 床がまったくなく、傾いでしまった家。
<0082> 床がまったくなく、傾いでしまった家。
// <0083> ひとまわりして、俺はやや遠くにあった家の前にいた。
<0083> ひとまわりして、俺はやや遠くにあった家の前にいた。
// <0084> 厳重に戸締りがされているが、人は誰も住んでいない。
<0084> 厳重に戸締りがされているが、人は誰も住んでいない。
// <0085> 古びてはいたが、屋根も、柱もしっかりしている。
<0085> 古びてはいたが、屋根も、柱もしっかりしている。
// <0086> 戸越しに見える中も、それほど痛んではなさそうだ。
<0086> 戸越しに見える中も、それほど痛んではなさそうだ。
// <0087> \{朋也}「…これなら、何とかなるかも」
<0087> \{Tomoya}「…これなら、何とかなるかも」
// <0088> 俺は走って、施設へと戻った。
<0088> 俺は走って、施設へと戻った。
// <0089> 久しぶりに爽快感を覚えていた。
<0089> 久しぶりに爽快感を覚えていた。
// <0090> \{智代}「学校を作る?」
<0090> \{Tomoyo}「学校を作る?」
// <0091> \{朋也}「そうだ。ちょうどいい廃屋があるんだ。誰も住んでいないようだから、それを使わせてもらう」
<0091> \{Tomoya}「そうだ。ちょうどいい廃屋があるんだ。誰も住んでいないようだから、それを使わせてもらう」
// <0092> \{智代}「どうやって」
<0092> \{Tomoyo}「どうやって」
// <0093> \{朋也}「経験を活かして。体動かすぐらいしか能がないからな」
<0093> \{Tomoya}「経験を活かして。体動かすぐらいしか能がないからな」
// <0094> \{智代}「そんなことをしていいのか?」
<0094> \{Tomoyo}「そんなことをしていいのか?」
// <0095> \{朋也}「もちろん許可は取るよ、管理人に」
<0095> \{Tomoya}「もちろん許可は取るよ、管理人に」
// <0096> \{管理人}「学校を作る?」
<0096> \{Manager}「学校を作る?」
// <0097> \{朋也}「ああ。西にあった廃屋を使わせてくれ」
<0097> \{Tomoya}「ああ。西にあった廃屋を使わせてくれ」
// <0098> \{朋也}「後はこちらですべて用意する」
<0098> \{Tomoya}「後はこちらですべて用意する」
// <0099> \{管理人}「学校ねぇ…」
<0099> \{Manager}「学校ねぇ…」
// <0100> \{管理人}「そんなもの作れるのかしら?」
<0100> \{Manager}「そんなもの作れるのかしら?」
// <0101> \{朋也}「作ってやるとも」
<0101> \{Tomoya}「作ってやるとも」
// <0102> \{管理人}「はぁ…」
<0102> \{Manager}「はぁ…」
// <0103> \{朋也}「いいのか?」
<0103> \{Tomoya}「いいのか?」
// <0104> \{管理人}「畑仕事の邪魔にならないんだったら、どうぞお好きに」
<0104> \{Manager}「畑仕事の邪魔にならないんだったら、どうぞお好きに」
// <0105> 到底無理だと思っての返答だろう。
<0105> 到底無理だと思っての返答だろう。
// <0106> 彼女は後悔することになるかもしれない。
<0106> 彼女は後悔することになるかもしれない。
// <0107> 悪いが、俺はとものことを一番に考えて動く。
<0107> 悪いが、俺はとものことを一番に考えて動く。
// <0108> とにかく使えるものを探さなくてはいけない。
<0108> とにかく使えるものを探さなくてはいけない。
// <0109> 俺は朝から、うずたかく積まれたゴミの山と格闘していた。
<0109> 俺は朝から、うずたかく積まれたゴミの山と格闘していた。
// <0110> 最初に見つけたのは蛍光灯の傘だ。
<0110> 最初に見つけたのは蛍光灯の傘だ。
// <0111> 逆富士型という業務用のものだから、室内の灯りに使えそうだ。
<0111> 逆富士型という業務用のものだから、室内の灯りに使えそうだ。
// <0112> 雑巾でふき取ると、若干歪んでいたが十分に使える。
<0112> 雑巾でふき取ると、若干歪んでいたが十分に使える。
// <0113> 広げたビニールシートの上に並べ、掘り起こしに取りかかった。
<0113> 広げたビニールシートの上に並べ、掘り起こしに取りかかった。
// <0114> \{朋也}「智代、見ろっ、黒板があったぞっ」
<0114> \{Tomoya}「智代、見ろっ、黒板があったぞっ」
// <0115> 俺は嬉しさのあまり、思わず声を張り上げてしまう。
<0115> 俺は嬉しさのあまり、思わず声を張り上げてしまう。
// <0116> \{智代}「そうか…」
<0116> \{Tomoyo}「そうか…」
// <0117> けど、智代はそれとは逆に、弱々しく答えた。
<0117> けど、智代はそれとは逆に、弱々しく答えた。
// <0118> \{朋也}「足元に気をつけて、ここまで来てくれないか」
<0118> \{Tomoya}「足元に気をつけて、ここまで来てくれないか」
// <0119> \{朋也}「掘り出すのを手伝ってほしいんだ」
<0119> \{Tomoya}「掘り出すのを手伝ってほしいんだ」
// <0120> \{智代}「あ、ああ」
<0120> \{Tomoyo}「あ、ああ」
// <0121> 真っ直ぐにのぼってこようとする。
<0121> 真っ直ぐにのぼってこようとする。
// <0122> \{朋也}「足元!」
<0122> \{Tomoya}「足元!」
// <0123> 注意するが遅かった。何かの板が智代の体重を載せて滑った。
<0123> 注意するが遅かった。何かの板が智代の体重を載せて滑った。
// <0124> 派手に回転して、赤ん坊のような格好で仰向けになる。
<0124> 派手に回転して、赤ん坊のような格好で仰向けになる。
// <0125> \{朋也}「大丈夫かよっ」
<0125> \{Tomoya}「大丈夫かよっ」
// <0126> 寄っていって、手を伸ばす。
<0126> 寄っていって、手を伸ばす。
// <0127> \{智代}「………」
<0127> \{Tomoyo}「………」
// <0128> 智代は無言のまま、引き上げられる。
<0128> 智代は無言のまま、引き上げられる。
// <0129> \{朋也}「怪我なかったか」
<0129> \{Tomoya}「怪我なかったか」
// <0130> \{智代}「………」
<0130> \{Tomoyo}「………」
// <0131> 智代は答えない。痛みはないようだった。
<0131> 智代は答えない。痛みはないようだった。
// <0132> \{朋也}「どうした?」
<0132> \{Tomoya}「どうした?」
// <0133> \{智代}「…こんなゴミの山で何をしてるんだ」
<0133> \{Tomoyo}「…こんなゴミの山で何をしてるんだ」
// <0134> 我に返ったかのように言われる。
<0134> 我に返ったかのように言われる。
// <0135> \{朋也}「黒板を掘り出す」
<0135> \{Tomoya}「黒板を掘り出す」
// <0136> 平然と答えてやる。
<0136> 平然と答えてやる。
// <0137> \{智代}「どうして」
<0137> \{Tomoyo}「どうして」
// <0138> \{朋也}「学校を作る」
<0138> \{Tomoya}「学校を作る」
// <0139> \{智代}「どうして」
<0139> \{Tomoyo}「どうして」
// <0140> \{朋也}「ともが通うために」
<0140> \{Tomoya}「ともが通うために」
// <0141> \{智代}「ちょっと待て…ともはまだ幼稚園児だぞ」
<0141> \{Tomoyo}「ちょっと待て…ともはまだ幼稚園児だぞ」
// <0142> \{智代}「作るなら…幼稚園じゃないのか…」
<0142> \{Tomoyo}「作るなら…幼稚園じゃないのか…」
// <0143> \{朋也}「俺がここに作りたいのは、未来とか希望とか…そんなのなんだよ」
<0143> \{Tomoya}「俺がここに作りたいのは、未来とか希望とか…そんなのなんだよ」
// <0144> \{朋也}「学校はその象徴だ」
<0144> \{Tomoya}「学校はその象徴だ」
// <0145> \{朋也}「だから学校でいい」
<0145> \{Tomoya}「だから学校でいい」
// <0146> \{智代}「そうか…」
<0146> \{Tomoyo}「そうか…」
// <0147> \{智代}「どうして学校なのかは…まだ理解していないが…」
<0147> \{Tomoyo}「どうして学校なのかは…まだ理解していないが…」
// <0148> \{智代}「朋也は、ともがここで暮らしていけるように、がんばってるんだな」
<0148> \{Tomoyo}「朋也は、ともがここで暮らしていけるように、がんばってるんだな」
// <0149> \{朋也}「そうだ」
<0149> \{Tomoya}「そうだ」
// <0150> \{朋也}「だから、おまえも頑張ってくれよ」
<0150> \{Tomoya}「だから、おまえも頑張ってくれよ」
// <0151> \{朋也}「さっきので怪我はなかったか?」
<0151> \{Tomoya}「さっきので怪我はなかったか?」
// <0152> \{智代}「朋也…」
<0152> \{Tomoyo}「朋也…」
// <0153> \{智代}「話を聞いてほしいんだ…」
<0153> \{Tomoyo}「話を聞いてほしいんだ…」
// <0154> \{朋也}「俺は怪我はなかったか訊いてるんだけどな…」
<0154> \{Tomoya}「俺は怪我はなかったか訊いてるんだけどな…」
// <0155> それでも智代は答えない。
<0155> それでも智代は答えない。
// <0156> \{智代}「とものことなんだが…」
<0156> \{Tomoyo}「とものことなんだが…」
// <0157> 話を続ける。
<0157> 話を続ける。
// <0158> \{智代}「本当に…母親の元に戻すべきなんだろうか?」
<0158> \{Tomoyo}「本当に…母親の元に戻すべきなんだろうか?」
// <0159> ともの母親の話を聞いてから、智代はそのことだけをずっと考えていたのだろう。
<0159> ともの母親の話を聞いてから、智代はそのことだけをずっと考えていたのだろう。
// <0160> \{朋也}「戻すべきだろう」
<0160> \{Tomoya}「戻すべきだろう」
// <0161> 俺は当然のように答える。
<0161> 俺は当然のように答える。
// <0162> \{智代}「そうなのだろうか…」
<0162> \{Tomoyo}「そうなのだろうか…」
// <0163> \{智代}「もしかしたら、それは短絡的かもしれないぞ…?」
<0163> \{Tomoyo}「もしかしたら、それは短絡的かもしれないぞ…?」
// <0164> 恐る恐るといった調子で言葉を紡ぐ。
<0164> 恐る恐るといった調子で言葉を紡ぐ。
// <0165> \{智代}「私はともの立場に立って考えてみたんだ」
<0165> \{Tomoyo}「私はともの立場に立って考えてみたんだ」
// <0166> \{智代}「ともは、母親に捨てられたと思っている」
<0166> \{Tomoyo}「ともは、母親に捨てられたと思っている」
// <0167> \{智代}「…それについて異論はないな?」
<0167> \{Tomoyo}「…それについて異論はないな?」
// <0168> \{朋也}「ああ、いいよ」
<0168> \{Tomoya}「ああ、いいよ」
// <0169> \{智代}「それを知ったあの日、ともは傷つき、泣きはらした」
<0169> \{Tomoyo}「それを知ったあの日、ともは傷つき、泣きはらした」
// <0170> \{智代}「私はずっとそばにいて…なぐさめた」
<0170> \{Tomoyo}「私はずっとそばにいて…なぐさめた」
// <0171> \{智代}「翌日からは泣かなかった」
<0171> \{Tomoyo}「翌日からは泣かなかった」
// <0172> \{智代}「ともは…その悲しみを乗り越えたんだ」
<0172> \{Tomoyo}「ともは…その悲しみを乗り越えたんだ」
// <0173> \{朋也}「乗り越えていない。今も、悲しんでるはずだ」
<0173> \{Tomoya}「乗り越えていない。今も、悲しんでるはずだ」
// <0174> \{智代}「そうか…朋也はそう考えてるんだな」
<0174> \{Tomoyo}「そうか…朋也はそう考えてるんだな」
// <0175> \{朋也}「ああ」
<0175> \{Tomoya}「ああ」
// <0176> \{智代}「まあ、悲しんでいたとしても、だ…」
<0176> \{Tomoyo}「まあ、悲しんでいたとしても、だ…」
// <0177> \{智代}「私という母がいる」
<0177> \{Tomoyo}「私という母がいる」
// <0178> \{智代}「その悲しみも癒えていくと思うんだ」
<0178> \{Tomoyo}「その悲しみも癒えていくと思うんだ」
// <0179> \{朋也}「かもな」
<0179> \{Tomoya}「かもな」
// <0180> \{智代}「うん、きっとそうなる」
<0180> \{Tomoyo}「うん、きっとそうなる」
// <0181> \{智代}「自信はあるんだ」
<0181> \{Tomoyo}「自信はあるんだ」
// <0182> \{智代}「でも、仮に今、ここでともを母親に引き渡したことを考えてみてほしい」
<0182> \{Tomoyo}「でも、仮に今、ここでともを母親に引き渡したことを考えてみてほしい」
// <0183> \{智代}「ともの立場で」
<0183> \{Tomoyo}「ともの立場で」
// <0184> \{智代}「どうなる…?」
<0184> \{Tomoyo}「どうなる…?」
// <0185> \{朋也}「母親との暮らしが取り戻せる」
<0185> \{Tomoya}「母親との暮らしが取り戻せる」
// <0186> \{智代}「その通りだ」
<0186> \{Tomoyo}「その通りだ」
// <0187> \{智代}「しかし…その時間は悲しいことに長くは続かないんだ」
<0187> \{Tomoyo}「しかし…その時間は悲しいことに長くは続かないんだ」
// <0188> \{朋也}「ああ」
<0188> \{Tomoya}「ああ」
// <0189> \{智代}「ともは目の前で母親をなくすことになる」
<0189> \{Tomoyo}「ともは目の前で母親をなくすことになる」
// <0190> \{智代}「この悲しみはどれほどのものだろう…」
<0190> \{Tomoyo}「この悲しみはどれほどのものだろう…」
// <0191> \{智代}「一度失って、そして戻ってきたと思ったのに、また失うんだぞ…」
<0191> \{Tomoyo}「一度失って、そして戻ってきたと思ったのに、また失うんだぞ…」
// <0192> \{智代}「まるで、神様のたちの悪いいたずらのようじゃないか」
<0192> \{Tomoyo}「まるで、神様のたちの悪いいたずらのようじゃないか」
// <0193> \{智代}「悲しみは一度きりでいいじゃないか」
<0193> \{Tomoyo}「悲しみは一度きりでいいじゃないか」
// <0194> \{智代}「なにもそんなにたくさん課さなくてもいいじゃないか」
<0194> \{Tomoyo}「なにもそんなにたくさん課さなくてもいいじゃないか」
// <0195> \{智代}「あんなに小さいのに…」
<0195> \{Tomoyo}「あんなに小さいのに…」
// <0196> \{智代}「そんな不幸に矢継ぎ早に見舞われるなんて…かわいそうじゃないか」
<0196> \{Tomoyo}「そんな不幸に矢継ぎ早に見舞われるなんて…かわいそうじゃないか」
// <0197> \{智代}「もういいじゃないか…もう…」
<0197> \{Tomoyo}「もういいじゃないか…もう…」
// <0198> \{智代}「そもそも、私たちだって知らないまま終わるはずだった…」
<0198> \{Tomoyo}「そもそも、私たちだって知らないまま終わるはずだった…」
// <0199> \{智代}「あんなにも必死に…この場所を突きとめてしまったから…」
<0199> \{Tomoyo}「あんなにも必死に…この場所を突きとめてしまったから…」
// <0200> \{智代}「だから、朋也…」
<0200> \{Tomoyo}「だから、朋也…」
// <0201> \{智代}「私たちも、このまま…」
<0201> \{Tomoyo}「私たちも、このまま…」
// <0202> \{智代}「この場所を去ろう」
<0202> \{Tomoyo}「この場所を去ろう」
// <0203> それが、智代が導き出した答え。
<0203> それが、智代が導き出した答え。
// <0204> けど、俺は…\p違う。
<0204> けど、俺は…\p違う。
// <0205> \{朋也}「俺は…」
<0205> \{Tomoya}「俺は…」
// <0206> \{朋也}「それでも、ふたりは一緒にいるべきだと思う」
<0206> \{Tomoya}「それでも、ふたりは一緒にいるべきだと思う」
// <0207> \{智代}「どうして…」
<0207> \{Tomoyo}「どうして…」
// <0208> \{朋也}「親子だから」
<0208> \{Tomoya}「親子だから」
// <0209> \{朋也}「そうとしか言えない」
<0209> \{Tomoya}「そうとしか言えない」
// <0210> \{智代}「そうか…」
<0210> \{Tomoyo}「そうか…」
// <0211> \{智代}「初めてかもな…」
<0211> \{Tomoyo}「初めてかもな…」
// <0212> \{朋也}「何が」
<0212> \{Tomoya}「何が」
// <0213> \{智代}「ふたりの意見が分かれるなんて…」
<0213> \{Tomoyo}「ふたりの意見が分かれるなんて…」
// <0214> \{朋也}「そうだな…」
<0214> \{Tomoya}「そうだな…」
// <0215> \{智代}「私にも信念がある…」
<0215> \{Tomoyo}「私にも信念がある…」
// <0216> \{智代}「だから、悪いが…手伝えない」
<0216> \{Tomoyo}「だから、悪いが…手伝えない」
// <0217> \{朋也}「そりゃ残念だ」
<0217> \{Tomoya}「そりゃ残念だ」
// <0218> 智代は背を向け、ゴミの山を降りていく。
<0218> 智代は背を向け、ゴミの山を降りていく。
// <0219> 地面に降り立ったところで、俺を振り返った。
<0219> 地面に降り立ったところで、俺を振り返った。
// <0220> \{智代}「………」
<0220> \{Tomoyo}「………」
// <0221> 何か言いたそうにしていたが、結局言わなかった。
<0221> 何か言いたそうにしていたが、結局言わなかった。
// <0222> そのままセミの鳴く木々の間に姿を消した。
<0222> そのままセミの鳴く木々の間に姿を消した。
// <0223> \{朋也}(…親子だからか)
<0223> \{Tomoya}(…親子だからか)
// <0224> 今言った自分のセリフが皮肉めいていて、笑えた。
<0224> 今言った自分のセリフが皮肉めいていて、笑えた。
// <0225> あるいは、もしかしたら…
<0225> あるいは、もしかしたら…
// <0226> 今の俺なら、あの人を受け入れられるのかもしれない。
<0226> 今の俺なら、あの人を受け入れられるのかもしれない。
// <0227> …どちらにしても、それは先の話だ。今はやることがある。
<0227> …どちらにしても、それは先の話だ。今はやることがある。
// <0228> 手を動かすんだ。
<0228> 手を動かすんだ。
// <0229> 軍手を外し、首から下げたタオルで顔を拭いた。
<0229> 軍手を外し、首から下げたタオルで顔を拭いた。
// <0230> 着ていたTシャツを脱ぎ、絞ると、汗が滴り落ちる。
<0230> 着ていたTシャツを脱ぎ、絞ると、汗が滴り落ちる。
// <0231> 陽射しをまともに浴びているため、高地とはいえ暑かった。
<0231> 陽射しをまともに浴びているため、高地とはいえ暑かった。
// <0232> 日射病にならないよう、水を飲んで、また作業へと戻る。
<0232> 日射病にならないよう、水を飲んで、また作業へと戻る。
// <0233> \{朋也}(こんなところ…か)
<0233> \{Tomoya}(こんなところ…か)
// <0234> 掘り起こせたのは黒板と蛍光灯、ぼろぼろの学習机。
<0234> 掘り起こせたのは黒板と蛍光灯、ぼろぼろの学習机。
// <0235> 椅子はパイプ椅子があったが、探せば他にもありそうだ。
<0235> 椅子はパイプ椅子があったが、探せば他にもありそうだ。
// <0236> しかしこれらをどうやって運べばいい?
<0236> しかしこれらをどうやって運べばいい?
// <0237> 黒板は両手を広げたくらいはある大きなものだ。
<0237> 黒板は両手を広げたくらいはある大きなものだ。
// <0238> 何とか山から引きずり出せたが、運ぶとなると一仕事だ。
<0238> 何とか山から引きずり出せたが、運ぶとなると一仕事だ。
// <0239> 俺は一旦、山を降りることにした。
<0239> 俺は一旦、山を降りることにした。
// <0240> \{管理人}「台車ねえ…」
<0240> \{Manager}「台車ねえ…」
// <0241> \{朋也}「何か運べそうなのがあれば助かる」
<0241> \{Tomoya}「何か運べそうなのがあれば助かる」
// <0242> \{管理人}「こんなのでよければあるけど」
<0242> \{Manager}「こんなのでよければあるけど」
// <0243> 出てきたのは古めかしい金属の台車だ。
<0243> 出てきたのは古めかしい金属の台車だ。
// <0244> 動かすとぎしぎしと嫌な音を立てる。
<0244> 動かすとぎしぎしと嫌な音を立てる。
// <0245> \{朋也}「…ないよりマシだな」
<0245> \{Tomoya}「…ないよりマシだな」
// <0246> 先にこっちを修理する必要があった。
<0246> 先にこっちを修理する必要があった。
// <0247> キャスターのベアリングは生きていたので、潤滑油を吹き込み強引に動かす。
<0247> キャスターのベアリングは生きていたので、潤滑油を吹き込み強引に動かす。
// <0248> 歪んでいる台座が軋みの原因だったので、ビスを外し叩いて伸ばすことにした。
<0248> 歪んでいる台座が軋みの原因だったので、ビスを外し叩いて伸ばすことにした。
// <0249> 組み上げてみると、それなりに動くようになった。
<0249> 組み上げてみると、それなりに動くようになった。
// <0250> 修理したことのないものだったが、今まで勉強してきたことの応用で何とかなるものだな。自分のことながら驚く。
<0250> 修理したことのないものだったが、今まで勉強してきたことの応用で何とかなるものだな。自分のことながら驚く。
// <0251> ビニールシートを広げ、庭先に運び出した廃品を並べる。
<0251> ビニールシートを広げ、庭先に運び出した廃品を並べる。
// <0252> 俺はまず、埃だらけの廃屋を掃除するところから始めた。
<0252> 俺はまず、埃だらけの廃屋を掃除するところから始めた。
// <0253> 土間に放置されていた農機具を除け、奥の間に積まれていた古い畳を退かす。
<0253> 土間に放置されていた農機具を除け、奥の間に積まれていた古い畳を退かす。
// <0254> ゴミは庭先の一角にまとめて置くことにした。
<0254> ゴミは庭先の一角にまとめて置くことにした。
// <0255> 掃除をしていて気がついた。
<0255> 掃除をしていて気がついた。
// <0256> たぶん、誰かが最近までこの家を使っていたのだろう。
<0256> たぶん、誰かが最近までこの家を使っていたのだろう。
// <0257> ひどく汚れてはいたが、ところどころ補修された跡があった。
<0257> ひどく汚れてはいたが、ところどころ補修された跡があった。
// <0258> ススを払い、家中を水拭きするだけで、住めそうな家に変わっていった。
<0258> ススを払い、家中を水拭きするだけで、住めそうな家に変わっていった。
// <0259> 掃除が一段落し、次に取りかかったのは配電盤だ。
<0259> 掃除が一段落し、次に取りかかったのは配電盤だ。
// <0260> 電線は家まで繋がっているが、ブレーカーを上げても反応がなかった。
<0260> 電線は家まで繋がっているが、ブレーカーを上げても反応がなかった。
// <0261> \{朋也}(電気が来てないのか…?)
<0261> \{Tomoya}(電気が来てないのか…?)
// <0262> 生憎と電気工事はしたことがない。
<0262> 生憎と電気工事はしたことがない。
// <0263> とはいえ、基礎は勉強させられたから、ある程度は理解していた。
<0263> とはいえ、基礎は勉強させられたから、ある程度は理解していた。
// <0264> 作業を続ける。
<0264> 作業を続ける。
// <0265> 結果はともあれ、今、自分にできることがあることを喜びとして実感していた。
<0265> 結果はともあれ、今、自分にできることがあることを喜びとして実感していた。
// <0266> 学生の頃は、無力で、無気力な自分がいた。
<0266> 学生の頃は、無力で、無気力な自分がいた。
// <0267> 智代をひとりにしたあの八ヶ月は、その自分が招いたものだ。
<0267> 智代をひとりにしたあの八ヶ月は、その自分が招いたものだ。
// <0268> 今は、やれることがある、そしてやろうという気になれる。
<0268> 今は、やれることがある、そしてやろうという気になれる。
// <0269> 誰かのために。
<0269> 誰かのために。
// <0270> 俺はあの日より、人を好きになっていた。
<0270> 俺はあの日より、人を好きになっていた。
// <0271> \{河南子}「うおおっ、こいつマジで作ってやがるっ」
<0271> \{Kanako}「うおおっ、こいつマジで作ってやがるっ」
// <0272> \{河南子}「あたしを馬鹿の中の馬鹿呼ばわりしておいて、それを実行するおまえは、どんな馬鹿だよっ」
<0272> \{Kanako}「あたしを馬鹿の中の馬鹿呼ばわりしておいて、それを実行するおまえは、どんな馬鹿だよっ」
// <0273> \{朋也}「いいよ、なんとでも呼んでくれ」
<0273> \{Tomoya}「いいよ、なんとでも呼んでくれ」
// <0274> \{河南子}「ザ・うんこマン」
<0274> \{Kanako}「ザ・うんこマン」
// <0275> \{朋也}「ごめん、やめてくれ」
<0275> \{Tomoya}「ごめん、やめてくれ」
// <0276> \{河南子}「それよりも見てさ、これー」
<0276> \{Kanako}「それよりも見てさ、これー」
// <0277> 河南子が自慢げに見せびらかすのはアイスだった。
<0277> 河南子が自慢げに見せびらかすのはアイスだった。
// <0278> \{河南子}「村の人がくれたんだよ」
<0278> \{Kanako}「村の人がくれたんだよ」
// <0279> \{河南子}「いい人もいるんだねぇ」
<0279> \{Kanako}「いい人もいるんだねぇ」
// <0280> \{朋也}「ちゃんと礼言ったか?」
<0280> \{Tomoya}「ちゃんと礼言ったか?」
// <0281> \{河南子}「言ったよ。子供扱いすんなよ、もー」
<0281> \{Kanako}「言ったよ。子供扱いすんなよ、もー」
// <0282> \{朋也}「子供みたいなもんじゃないか、おまえ」
<0282> \{Tomoya}「子供みたいなもんじゃないか、おまえ」
// <0283> \{河南子}「んだよ、てめー、誘惑すっぞ」
<0283> \{Kanako}「んだよ、てめー、誘惑すっぞ」
// <0284> \{朋也}「いいから大人しくしておけ」
<0284> \{Tomoya}「いいから大人しくしておけ」
// <0285> \{河南子}「しかし、ここあっついねー、よくいるね、こんなとこ」
<0285> \{Kanako}「しかし、ここあっついねー、よくいるね、こんなとこ」
// <0286> \{河南子}「涼んでこよーっと」
<0286> \{Kanako}「涼んでこよーっと」
// <0287> のんきに来た道を戻っていった。
<0287> のんきに来た道を戻っていった。
// <0288> \{朋也}「これでよし…と」
<0288> \{Tomoya}「これでよし…と」
// <0289> ブレーカーの修理が終わり、電気が通るようになった。
<0289> ブレーカーの修理が終わり、電気が通るようになった。
// <0290> あくまでも応急処置だから、そのうち漏電装置の交換はしなくてはならないだろう。
<0290> あくまでも応急処置だから、そのうち漏電装置の交換はしなくてはならないだろう。
// <0291> 拾ってきた蛍光灯は安定器が壊れていた。
<0291> 拾ってきた蛍光灯は安定器が壊れていた。
// <0292> 簡単な検査しかできなかったが、ほぼ間違いないと思う。
<0292> 簡単な検査しかできなかったが、ほぼ間違いないと思う。
// <0293> だが交換部品が手元にないので、ゴミの山から探し出すしかなかった。
<0293> だが交換部品が手元にないので、ゴミの山から探し出すしかなかった。
// <0294> 暑さも手伝って、一瞬気が遠くなる。
<0294> 暑さも手伝って、一瞬気が遠くなる。
// <0295> \{朋也}「ふぅ…」
<0295> \{Tomoya}「ふぅ…」
// <0296> 深く息をついた後、こんなことぐらいでへこたれるな、と自分を鼓舞し、もう一度ゴミの山に戻った。
<0296> 深く息をついた後、こんなことぐらいでへこたれるな、と自分を鼓舞し、もう一度ゴミの山に戻った。
// <0297> \{管理人}「あ、いたいた」
<0297> \{Manager}「あ、いたいた」
// <0298> ゴミの山に向かう途中、管理人に会った。
<0298> ゴミの山に向かう途中、管理人に会った。
// <0299> \{管理人}「本当に作ってるの?」
<0299> \{Manager}「本当に作ってるの?」
// <0300> \{管理人}「さっきかなちゃんに聞いたんだけど」
<0300> \{Manager}「さっきかなちゃんに聞いたんだけど」
// <0301> \{朋也}「かなちゃん…?」
<0301> \{Tomoya}「かなちゃん…?」
// <0302> 思わず訊き返す。
<0302> 思わず訊き返す。
// <0303> \{管理人}「あなたの連れの子よ」
<0303> \{Manager}「あなたの連れの子よ」
// <0304> \{朋也}「ああ…」
<0304> \{Tomoya}「ああ…」
// <0305> \{朋也}「いつの間にか親しくなってんだな」
<0305> \{Tomoya}「いつの間にか親しくなってんだな」
// <0306> \{管理人}「いろんな人にお菓子せがんでるんだもの」
<0306> \{Manager}「いろんな人にお菓子せがんでるんだもの」
// <0307> \{管理人}「手のかかる子ね。今じゃ村一番の有名人よ」
<0307> \{Manager}「手のかかる子ね。今じゃ村一番の有名人よ」
// <0308> その言葉が嫌味に聞こえなかったのが意外だった。
<0308> その言葉が嫌味に聞こえなかったのが意外だった。
// <0309> \{管理人}「で、話を戻すけど…」
<0309> \{Manager}「で、話を戻すけど…」
// <0310> \{朋也}「ああ。あんたの言葉通り、好きにさせてもらってる」
<0310> \{Tomoya}「ああ。あんたの言葉通り、好きにさせてもらってる」
// <0311> \{管理人}「どうして?」
<0311> \{Manager}「どうして?」
// <0312> \{朋也}「前にも言ったと思うけど、ともがここで…」
<0312> \{Tomoya}「前にも言ったと思うけど、ともがここで…」
// <0313> \{管理人}「あ、ごめん、そうじゃなくてね」
<0313> \{Manager}「あ、ごめん、そうじゃなくてね」
// <0314> \{管理人}「どうして、そこまで有子さんのためにするのかってこと」
<0314> \{Manager}「どうして、そこまで有子さんのためにするのかってこと」
// <0315> \{管理人}「有子さんのお子さん、あなたの彼女の義妹になるのかな」
<0315> \{Manager}「有子さんのお子さん、あなたの彼女の義妹になるのかな」
// <0316> \{管理人}「言い方はわるいんだけど、あなたにとっては他人よ?」
<0316> \{Manager}「言い方はわるいんだけど、あなたにとっては他人よ?」
// <0317> \{朋也}「それがどうかしたか?」
<0317> \{Tomoya}「それがどうかしたか?」
// <0318> \{管理人}「なんで、そんな面倒なことに首を突っ込むのかってこと」
<0318> \{Manager}「なんで、そんな面倒なことに首を突っ込むのかってこと」
// <0319> 俺は黙った。
<0319> 俺は黙った。
// <0320> しばらく考えてから…
<0320> しばらく考えてから…
// <0321> はは、と笑ってしまった。
<0321> はは、と笑ってしまった。
// <0322> \{管理人}「なんで笑うのよ」
<0322> \{Manager}「なんで笑うのよ」
// <0323> \{朋也}「いや、全然考えたことなかったから」
<0323> \{Tomoya}「いや、全然考えたことなかったから」
// <0324> \{朋也}「多分、知り合ったからだな」
<0324> \{Tomoya}「多分、知り合ったからだな」
// <0325> \{朋也}「赤の他人のことまでは考えない。それはそいつの知り合いに任せておく」
<0325> \{Tomoya}「赤の他人のことまでは考えない。それはそいつの知り合いに任せておく」
// <0326> \{朋也}「でも、俺が知ってる奴が苦しんでるなら、何とかしてやりたい」
<0326> \{Tomoya}「でも、俺が知ってる奴が苦しんでるなら、何とかしてやりたい」
// <0327> \{朋也}「こんな俺にできることだったら、してやりたい」
<0327> \{Tomoya}「こんな俺にできることだったら、してやりたい」
// <0328> \{管理人}「どうして?」
<0328> \{Manager}「どうして?」
// <0329> \{朋也}「そうやって考えて生きたら、もっとみんなが幸せになれそうだからな」
<0329> \{Tomoya}「そうやって考えて生きたら、もっとみんなが幸せになれそうだからな」
// <0330> \{管理人}「…そうなの」
<0330> \{Manager}「…そうなの」
// <0331> \{朋也}「たしかに、この施設に迷惑かけてるってのはわかる」
<0331> \{Tomoya}「たしかに、この施設に迷惑かけてるってのはわかる」
// <0332> \{朋也}「それはすまないと思ってる」
<0332> \{Tomoya}「それはすまないと思ってる」
// <0333> \{朋也}「でも、ともは今も苦しんでいる」
<0333> \{Tomoya}「でも、ともは今も苦しんでいる」
// <0334> \{朋也}「母親のことをずっと考えてる」
<0334> \{Tomoya}「母親のことをずっと考えてる」
// <0335> \{朋也}「その母親も、とものことが好きで…」
<0335> \{Tomoya}「その母親も、とものことが好きで…」
// <0336> \{朋也}「だったら、ふたりは一緒にいるべきだ」
<0336> \{Tomoya}「だったら、ふたりは一緒にいるべきだ」
// <0337> \{朋也}「それで、俺にできることを考えてみたら、これだった」
<0337> \{Tomoya}「それで、俺にできることを考えてみたら、これだった」
// <0338> \{朋也}「それだけ」
<0338> \{Tomoya}「それだけ」
// <0339> \{管理人}「本気みたいね」
<0339> \{Manager}「本気みたいね」
// <0340> \{朋也}「当然」
<0340> \{Tomoya}「当然」
// <0341> 管理人は一度肩をすくめてから、大きく息を吐いた。
<0341> 管理人は一度肩をすくめてから、大きく息を吐いた。
// <0342> \{管理人}「…止めようかと思ったけど、あなたの話を聞いてたら無理だと悟っちゃったわ」
<0342> \{Manager}「…止めようかと思ったけど、あなたの話を聞いてたら無理だと悟っちゃったわ」
// <0343> \{朋也}「そりゃ助かる。あんたの相手をしてる時間も惜しかったんだ」
<0343> \{Tomoya}「そりゃ助かる。あんたの相手をしてる時間も惜しかったんだ」
// <0344> ぽん、と管理人は俺の肩を叩いてくれた。
<0344> ぽん、と管理人は俺の肩を叩いてくれた。
// <0345> \{管理人}「でも、せめてお昼ご飯くらいは食べに帰っていらっしゃい。ぶっ倒れるわよ?」
<0345> \{Manager}「でも、せめてお昼ご飯くらいは食べに帰っていらっしゃい。ぶっ倒れるわよ?」
// <0346> \{朋也}「ああ、明日からそうさせてもらうよ」
<0346> \{Tomoya}「ああ、明日からそうさせてもらうよ」
// <0347> ゴミの山から古い蛍光灯についた安定器が何個か見つかった。
<0347> ゴミの山から古い蛍光灯についた安定器が何個か見つかった。
// <0348> テスターで通電を確かめたところ、使えそうなものがあった。
<0348> テスターで通電を確かめたところ、使えそうなものがあった。
// <0349> 記憶を振り絞り、前に覚えた作業を思い出しながら試行錯誤する。
<0349> 記憶を振り絞り、前に覚えた作業を思い出しながら試行錯誤する。
// <0350> 無茶な作業なのは理解できていた。
<0350> 無茶な作業なのは理解できていた。
// <0351> 今すぐ会社に戻って、材料と工具を持ち出したいとさえ思う。
<0351> 今すぐ会社に戻って、材料と工具を持ち出したいとさえ思う。
// <0352> だが、そう簡単には帰れない距離に村はあった。
<0352> だが、そう簡単には帰れない距離に村はあった。
// <0353> それに智代のこともある。
<0353> それに智代のこともある。
// <0354> 俺が帰ると言い出せば、智代もついてくるだろうし、内緒でひとりいなくなるわけにもいかない。
<0354> 俺が帰ると言い出せば、智代もついてくるだろうし、内緒でひとりいなくなるわけにもいかない。
// <0355> \{朋也}(ここで耐えるしかないな…)
<0355> \{Tomoya}(ここで耐えるしかないな…)
// <0356> 学校を作り上げるまでは。
<0356> 学校を作り上げるまでは。
// <0357> 手元が見にくくなり、俺は顔を上げた。
<0357> 手元が見にくくなり、俺は顔を上げた。
// <0358> 山は朱色に染まり、日は山の陰に隠れようとしていた。
<0358> 山は朱色に染まり、日は山の陰に隠れようとしていた。
// <0359> 次第に暗くなり、作業に差し支え始めた。
<0359> 次第に暗くなり、作業に差し支え始めた。
// <0360> 仕方ない。今日は終わりにしよう。
<0360> 仕方ない。今日は終わりにしよう。
// <0361> 俺はまだ使えそうな部品を、同じように山から拾い出した木箱に詰めた。
<0361> 俺はまだ使えそうな部品を、同じように山から拾い出した木箱に詰めた。
// <0362> 持ち手もあり、かき集めた部品同様、これからの修理に役に立ってくれるはずだ。
<0362> 持ち手もあり、かき集めた部品同様、これからの修理に役に立ってくれるはずだ。
// <0363> また、スチール製の棚もけっこう綺麗な形で見つかった。
<0363> また、スチール製の棚もけっこう綺麗な形で見つかった。
// <0364> こういうものも学校には必要だ。
<0364> こういうものも学校には必要だ。
// <0365> 想いが少しずつ形になり始める。
<0365> 想いが少しずつ形になり始める。
// <0366> 手足は疲れで鉛が詰まったように重く感じたが、不思議と辛くなかった。
<0366> 手足は疲れで鉛が詰まったように重く感じたが、不思議と辛くなかった。