// Resources for SEEN0721.TXT
// #character '朋也'
#character 'Tomoya'
// #character '鷹文'
#character 'Takafumi'
// #character '智代'
#character 'Tomoyo'
// <0000> 7月21日(水)
<0000> July 21st (Wed)
// <0001> 俺は飽きることなくパソコンに張りついている鷹文の隣に立つ。
<0001> 俺は飽きることなくパソコンに張りついている鷹文の隣に立つ。
// <0002> \{朋也}「勝負しよう」
<0002> \{Tomoya}「勝負しよう」
// <0003> \{鷹文}「………」
<0003> \{Takafumi}「………」
// <0004> \{朋也}「おまえだよ、おまえ」
<0004> \{Tomoya}「おまえだよ、おまえ」
// <0005> \{鷹文}「…え、僕?」
<0005> \{Takafumi}「…え、僕?」
// <0006> \{朋也}「ああ」
<0006> \{Tomoya}「ああ」
// <0007> \{鷹文}「勝負って?」
<0007> \{Takafumi}「勝負って?」
// <0008> \{朋也}「なんでもいい。おまえの自信があるので来いよ」
<0008> \{Tomoya}「なんでもいい。おまえの自信があるので来いよ」
// <0009> \{鷹文}「え? じゃあ、じゃんけん」
<0009> \{Takafumi}「え? じゃあ、じゃんけん」
// <0010> \{朋也}「ちなみに負けたほうは、勝ったほうの言うこと聞くのな」
<0010> \{Tomoya}「ちなみに負けたほうは、勝ったほうの言うこと聞くのな」
// <0011> \{鷹文}「うわっ、真剣勝負じゃんっ」
<0011> \{Takafumi}「うわっ、真剣勝負じゃんっ」
// <0012> \{朋也}「だから自信があるので来いって言ってんだよ。よく考えて決めろ」
<0012> \{Tomoya}「だから自信があるので来いって言ってんだよ。よく考えて決めろ」
// <0013> \{鷹文}「じゃあ、タイピングにしていい?」
<0013> \{Takafumi}「じゃあ、タイピングにしていい?」
// <0014> \{朋也}「なんだよ、それ」
<0014> \{Tomoya}「なんだよ、それ」
// <0015> \{鷹文}「このキーボードで、どっちが正確に早くキーを叩けるかという競争」
<0015> \{Takafumi}「このキーボードで、どっちが正確に早くキーを叩けるかという競争」
// <0016> 言って、鷹文はパソコンに繋がるキーボードを持ち上げてみせる。
<0016> 言って、鷹文はパソコンに繋がるキーボードを持ち上げてみせる。
// <0017> \{朋也}「そんなの俺、絶対負けるじゃん」
<0017> \{Tomoya}「そんなの俺、絶対負けるじゃん」
// <0018> \{鷹文}「僕の自信があるので来いって言ったじゃん」
<0018> \{Takafumi}「僕の自信があるので来いって言ったじゃん」
// <0019> \{朋也}「いや、そうなんだけどさ…俺に勝ち目がなさすぎるというか…」
<0019> \{Tomoya}「いや、そうなんだけどさ…俺に勝ち目がなさすぎるというか…」
// <0020> \{鷹文}「じゃ、やめる?」
<0020> \{Takafumi}「じゃ、やめる?」
// <0021> \{朋也}「いや…いいよ」
<0021> \{Tomoya}「いや…いいよ」
// <0022> \{朋也}「やるよ、やってやるよ」
<0022> \{Tomoya}「やるよ、やってやるよ」
// <0023> \{鷹文}「オーケー、じゃ、僕からやるよ」
<0023> \{Takafumi}「オーケー、じゃ、僕からやるよ」
// <0024> 鷹文がキーボードを叩き始める。
<0024> 鷹文がキーボードを叩き始める。
// <0025> …惨敗。
<0025> …惨敗。
// <0026> \{鷹文}「話にならないね」
<0026> \{Takafumi}「話にならないね」
// <0027> …まったく。
<0027> …まったく。
// <0028> \{鷹文}「で、なんでも言うこときいてもらえるわけだよね」
<0028> \{Takafumi}「で、なんでも言うこときいてもらえるわけだよね」
// <0029> \{朋也}「…まぁ」
<0029> \{Tomoya}「…まぁ」
// <0030> \{鷹文}「じゃあ、缶コーヒー買ってきて」
<0030> \{Takafumi}「じゃあ、缶コーヒー買ってきて」
// <0031> \{朋也}「パシリかよ…」
<0031> \{Tomoya}「パシリかよ…」
// <0032> \{鷹文}「簡単でしょ。ほらほら」
<0032> \{Takafumi}「簡単でしょ。ほらほら」
// <0033> 自分の浅はかさっぷりを悔いる。
<0033> 自分の浅はかさっぷりを悔いる。
// <0034> 思いつきで行動したら、この様だ。
<0034> 思いつきで行動したら、この様だ。
// <0035> 熱々の缶コーヒーを両手で転がしながら、考える。
<0035> 熱々の缶コーヒーを両手で転がしながら、考える。
// <0036> 巧妙に話を聞き出す方法があるとしても、そんな手は使いたくない。
<0036> 巧妙に話を聞き出す方法があるとしても、そんな手は使いたくない。
// <0037> 深く考えたとしても、このやり方を選んでいたはずだ。
<0037> 深く考えたとしても、このやり方を選んでいたはずだ。
// <0038> なら後は…
<0038> なら後は…
// <0039> 努力するのみ
<0039> 努力するのみ
// <0040> 諦めるしかない
<0040> 諦めるしかない
// <0041> いつものように努力するだけだった。
<0041> いつものように努力するだけだった。
// <0042> 努力が報われる、とは限らない。
<0042> 努力が報われる、とは限らない。
// <0043> タイピングで勝負などと言ってしまったが、勝てるとは思えないくらいの差だった。
<0043> タイピングで勝負などと言ってしまったが、勝てるとは思えないくらいの差だった。
// <0044> それに、過去の話を聞き出してどうなるというのだろうか。
<0044> それに、過去の話を聞き出してどうなるというのだろうか。
// <0045> 結局は、鷹文と河南子の問題なのだ。
<0045> 結局は、鷹文と河南子の問題なのだ。
// <0046> 時間が解決する、ということもある。
<0046> 時間が解決する、ということもある。
// <0047> 手に持った缶コーヒーを見つめながら、考えた。
<0047> 手に持った缶コーヒーを見つめながら、考えた。
// <0048> \{朋也}「…とりあえず夏にホット缶はないよな」
<0048> \{Tomoya}「…とりあえず夏にホット缶はないよな」
// <0049> 俺は意図的に思考を切り替えた。
<0049> 俺は意図的に思考を切り替えた。
// <0050> 諦める理由はいくらでも思いつく、と悪態つく自分を黙らせるために。
<0050> 諦める理由はいくらでも思いつく、と悪態つく自分を黙らせるために。
// <0051> 努力するのみ
<0051> 努力するのみ
// <0052> 真っ向勝負
<0052> 真っ向勝負
// <0053> …努力?
<0053> …努力?
// <0054> 自分の力量はわきまえているつもりだ。
<0054> 自分の力量はわきまえているつもりだ。
// <0055> できることと、できないことがある。
<0055> できることと、できないことがある。
// <0056> 今回は、努力をしても無駄だ。何年かけようが鷹文には勝てるように思えない。すべて徒労に終わる。
<0056> 今回は、努力をしても無駄だ。何年かけようが鷹文には勝てるように思えない。すべて徒労に終わる。
// <0057> それがわかっていたから、力もわいてこなかった。
<0057> それがわかっていたから、力もわいてこなかった。
// <0058> それに、過去の話を聞き出してどうなるというのだろうか。
<0058> それに、過去の話を聞き出してどうなるというのだろうか。
// <0059> 結局は、鷹文と河南子の問題なのだ。
<0059> 結局は、鷹文と河南子の問題なのだ。
// <0060> 時間が解決する、ということもある。
<0060> 時間が解決する、ということもある。
// <0061> 手に持った缶コーヒーを見つめながら、考えた。
<0061> 手に持った缶コーヒーを見つめながら、考えた。
// <0062> しばらくは時間を置こう、と。
<0062> しばらくは時間を置こう、と。
// <0063> 数日後
<0063> 数日後
// <0064> 日を置いても一向に鷹文と河南子の関係は変わらなかった。
<0064> 日を置いても一向に鷹文と河南子の関係は変わらなかった。
// <0065> 焦れた俺は、帰り際、鷹文の前に立ちはだかった。
<0065> 焦れた俺は、帰り際、鷹文の前に立ちはだかった。
// <0066> それで失敗したなら、後は、真っ向勝負。面と向かって聞き出すだけだ。
<0066> それで失敗したなら、後は、真っ向勝負。面と向かって聞き出すだけだ。
// <0067> 家に戻ると、俺は鷹文にコーヒー缶を投げた。
<0067> 家に戻ると、俺は鷹文にコーヒー缶を投げた。
// <0068> \{鷹文}「あ、ありがと」
<0068> \{Takafumi}「あ、ありがと」
// <0069> \{鷹文}「アチチチチチチ!」
<0069> \{Takafumi}「アチチチチチチ!」
// <0070> \{朋也}「いいリアクションをありがとう」
<0070> \{Tomoya}「いいリアクションをありがとう」
// <0071> \{鷹文}「これって地味にイヤガラセのつもり?」
<0071> \{Takafumi}「これって地味にイヤガラセのつもり?」
// <0072> \{朋也}「違うよ」
<0072> \{Tomoya}「違うよ」
// <0073> \{鷹文}「まあ、いいけど」
<0073> \{Takafumi}「まあ、いいけど」
// <0074> \{朋也}「なあ、話があるんだけど」
<0074> \{Tomoya}「なあ、話があるんだけど」
// <0075> \{鷹文}「ん? なに?」
<0075> \{Takafumi}「ん? なに?」
// <0076> \{朋也}「三年前に何があった?」
<0076> \{Tomoya}「三年前に何があった?」
// <0077> \{鷹文}「いきなりなんなの?」
<0077> \{Takafumi}「いきなりなんなの?」
// <0078> \{朋也}「河南子と三年前になにがあった?」
<0078> \{Tomoya}「河南子と三年前になにがあった?」
// <0079> \{鷹文}「…前に話したじゃん」
<0079> \{Takafumi}「…前に話したじゃん」
// <0080> \{朋也}「ああ、お前が車道に飛び込んだってな」
<0080> \{Tomoya}「ああ、お前が車道に飛び込んだってな」
// <0081> \{鷹文}「それだけだよ」
<0081> \{Takafumi}「それだけだよ」
// <0082> \{朋也}「足りないだろ。河南子と何があったんだ」
<0082> \{Tomoya}「足りないだろ。河南子と何があったんだ」
// <0083> \{鷹文}「にぃちゃんには関係ないよ」
<0083> \{Takafumi}「にぃちゃんには関係ないよ」
// <0084> \{朋也}「ある」
<0084> \{Tomoya}「ある」
// <0085> \{鷹文}「…ただ、つきあって別れただけだって」
<0085> \{Takafumi}「…ただ、つきあって別れただけだって」
// <0086> \{鷹文}「何度も言ったけど、もう河南子とは終わったんだよ?」
<0086> \{Takafumi}「何度も言ったけど、もう河南子とは終わったんだよ?」
// <0087> \{鷹文}「よくある話だよ」
<0087> \{Takafumi}「よくある話だよ」
// <0088> \{朋也}「じゃあ、陸上の話だ」
<0088> \{Tomoya}「じゃあ、陸上の話だ」
// <0089> 俺は話の矛先を変えることにした。
<0089> 俺は話の矛先を変えることにした。
// <0090> \{朋也}「恩師の話、してくれないか」
<0090> \{Tomoya}「恩師の話、してくれないか」
// <0091> \{鷹文}「いないよ、そんなの」
<0091> \{Takafumi}「いないよ、そんなの」
// <0092> \{朋也}「いたはずだ。智代から聞いてるんだぞ」
<0092> \{Tomoya}「いたはずだ。智代から聞いてるんだぞ」
// <0093> \{鷹文}「そんな又聞きで、当事者でもないくせに…」
<0093> \{Takafumi}「そんな又聞きで、当事者でもないくせに…」
// <0094> \{鷹文}「あのね、にぃちゃん…」
<0094> \{Takafumi}「あのね、にぃちゃん…」
// <0095> \{鷹文}「僕にだって、触れられたくないことはある」
<0095> \{Takafumi}「僕にだって、触れられたくないことはある」
// <0096> \{鷹文}「キレるときだってある」
<0096> \{Takafumi}「キレるときだってある」
// <0097> \{鷹文}「それが今だよ…」
<0097> \{Takafumi}「それが今だよ…」
// <0098> \{朋也}「…どうするつもりだよ」
<0098> \{Tomoya}「…どうするつもりだよ」
// <0099> \{鷹文}「こうするっ」
<0099> \{Takafumi}「こうするっ」
// <0100> ばきぃっ!
<0100> ばきぃっ!
// <0101> 俺の顔が真横を向いていた。鷹文の渾身の一撃により。
<0101> 俺の顔が真横を向いていた。鷹文の渾身の一撃により。
// <0102> \{朋也}「ってぇなあ…このっ」
<0102> \{Tomoya}「ってぇなあ…このっ」
// <0103> 殴り返したつもりだが、その手応えがない。
<0103> 殴り返したつもりだが、その手応えがない。
// <0104> \{智代}「やめるんだ」
<0104> \{Tomoyo}「やめるんだ」
// <0105> 智代が俺の拳を掴んでいた。
<0105> 智代が俺の拳を掴んでいた。
// <0106> \{智代}「喧嘩はよくない…」
<0106> \{Tomoyo}「喧嘩はよくない…」
// <0107> \{智代}「ずっと、おまえたちは仲良しだったじゃないか…」
<0107> \{Tomoyo}「ずっと、おまえたちは仲良しだったじゃないか…」
// <0108> \{智代}「どうしてこんなことになってるんだ…」
<0108> \{Tomoyo}「どうしてこんなことになってるんだ…」
// <0109> 智代の痛切な声を聞いて、ようやく頭が冷えていく。
<0109> 智代の痛切な声を聞いて、ようやく頭が冷えていく。
// <0110> \{鷹文}「…みんなが楽しかったらいいじゃん」
<0110> \{Takafumi}「…みんなが楽しかったらいいじゃん」
// <0111> \{鷹文}「でしょ…?」
<0111> \{Takafumi}「でしょ…?」
// <0112> \{智代}「もちろんだ」
<0112> \{Tomoyo}「もちろんだ」
// <0113> \{鷹文}「だったら、今のままでいこうよ」
<0113> \{Takafumi}「だったら、今のままでいこうよ」
// <0114> \{鷹文}「それでいいじゃん…」
<0114> \{Takafumi}「それでいいじゃん…」
// <0115> 鷹文が横を向く。
<0115> 鷹文が横を向く。
// <0116> \{鷹文}「じゃあね」
<0116> \{Takafumi}「じゃあね」
// <0117> そのまま、部屋を出ていった。
<0117> そのまま、部屋を出ていった。
// <0118> \{智代}「朋也、反省すべきだ」
<0118> \{Tomoyo}「朋也、反省すべきだ」
// <0119> \{朋也}「ああ、悪い…」
<0119> \{Tomoya}「ああ、悪い…」
// <0120> 日を置いて、俺は鷹文にまた同じ質問を投げかけてみた。
<0120> 日を置いて、俺は鷹文にまた同じ質問を投げかけてみた。
// <0121> それでも頑なに鷹文は、返答を拒み続けた。
<0121> それでも頑なに鷹文は、返答を拒み続けた。
// <0122> やがて、鷹文は次第に家に来なくなった。
<0122> やがて、鷹文は次第に家に来なくなった。
// <0123> 智代を通じて呼びかけてみても、いい返事は戻ってこなかった。
<0123> 智代を通じて呼びかけてみても、いい返事は戻ってこなかった。
// <0124> \{智代}「ちょっと間を置いた方がいい」
<0124> \{Tomoyo}「ちょっと間を置いた方がいい」
// <0125> \{智代}「今はそっとしておいてくれないか」
<0125> \{Tomoyo}「今はそっとしておいてくれないか」
// <0126> \{朋也}「…ああ、わかった」
<0126> \{Tomoya}「…ああ、わかった」
// <0127> 智代は俺を責めないが、鷹文を刺激してしまったことに心を痛めているのは事実だ。
<0127> 智代は俺を責めないが、鷹文を刺激してしまったことに心を痛めているのは事実だ。
// <0128> 俺が余計なことをしなければ…。
<0128> 俺が余計なことをしなければ…。