// Resources for SEEN0710.TXT
// #character '朋也'
#character 'Tomoya'
// #character '声'
#character 'Voice'
// #character '鷹文'
#character 'Takafumi'
// #character '智代'
#character 'Tomoyo'
// #character '女性'
#character 'Woman'
// #character 'とも'
#character 'Tomo'
// <0000> 7月10日(土)
<0000> July 10th (Sat)
// <0001> 翌日は、ともがやってきてから初めての休日。
<0001> 翌日は、ともがやってきてから初めての休日。
// <0002> 俺はずっと、坂上家の前で張っていた。
<0002> 俺はずっと、坂上家の前で張っていた。
// <0003> \{朋也}(むなしい…)
<0003> \{Tomoya}(むなしい…)
// <0004> ドラマじゃあるまいし、目当ての人物が現れる保証もなく、時間を無駄に費やしているだけなのかもしれない。
<0004> ドラマじゃあるまいし、目当ての人物が現れる保証もなく、時間を無駄に費やしているだけなのかもしれない。
// <0005> \{朋也}(ああ、もう3時間も経つのか…)
<0005> \{Tomoya}(ああ、もう3時間も経つのか…)
// <0006> \{声}「大変だね、にぃちゃん」
<0006> \{Voice}「大変だね、にぃちゃん」
// <0007> \{朋也}「ん? 鷹文、どうしたんだ?」
<0007> \{Tomoya}「ん? 鷹文、どうしたんだ?」
// <0008> \{鷹文}「変わるよ。ねぇちゃんのそばにいてあげてよ」
<0008> \{Takafumi}「変わるよ。ねぇちゃんのそばにいてあげてよ」
// <0009> …なんて、展開になるはずもなく。
<0009> …なんて、展開になるはずもなく。
// <0010> あのむっつりオタクは出際にこんなことを言い出してきたのだ。
<0010> あのむっつりオタクは出際にこんなことを言い出してきたのだ。
// <0011> \{鷹文}「ここにマシン置いていい?」
<0011> \{Takafumi}「ここにマシン置いていい?」
// <0012> \{朋也}「ましん? なんだよそれ」
<0012> \{Tomoya}「ましん? なんだよそれ」
// <0013> \{鷹文}「コンピューター」
<0013> \{Takafumi}「コンピューター」
// <0014> \{朋也}「なんで」
<0014> \{Tomoya}「なんで」
// <0015> \{鷹文}「インターネットしたいから」
<0015> \{Takafumi}「インターネットしたいから」
// <0016> \{朋也}「なんで」
<0016> \{Tomoya}「なんで」
// <0017> \{鷹文}「趣味」
<0017> \{Takafumi}「趣味」
// <0018> \{朋也}「自分の家でしろよ」
<0018> \{Tomoya}「自分の家でしろよ」
// <0019> \{鷹文}「うん、してたんだけどね」
<0019> \{Takafumi}「うん、してたんだけどね」
// <0020> \{鷹文}「勉強がおろそかになるって言って、家のマシンは封印されちゃったんだよ」
<0020> \{Takafumi}「勉強がおろそかになるって言って、家のマシンは封印されちゃったんだよ」
// <0021> \{鷹文}「だからこっちで。いいでしょ」
<0021> \{Takafumi}「だからこっちで。いいでしょ」
// <0022> \{朋也}「勉強がおろそかになる。やめとけ」
<0022> \{Tomoya}「勉強がおろそかになる。やめとけ」
// <0023> \{鷹文}「そんなみじんも考えてないこと言わないでよ」
<0023> \{Takafumi}「そんなみじんも考えてないこと言わないでよ」
// <0024> \{鷹文}「にぃちゃんも、ネットできるんだから好都合でしょ」
<0024> \{Takafumi}「にぃちゃんも、ネットできるんだから好都合でしょ」
// <0025> \{朋也}「別に興味ないし」
<0025> \{Tomoya}「別に興味ないし」
// <0026> \{鷹文}「ねぇちゃんはどう?」
<0026> \{Takafumi}「ねぇちゃんはどう?」
// <0027> 鷹文は体を回転させ、矛先を変える。
<0027> 鷹文は体を回転させ、矛先を変える。
// <0028> \{智代}「勉強がおろそかになる。やめておけ」
<0028> \{Tomoyo}「勉強がおろそかになる。やめておけ」
// <0029> \{鷹文}「うわぁ」
<0029> \{Takafumi}「うわぁ」
// <0030> \{智代}「私はそこの男と違って口先だけじゃない。真剣におまえのことを考えてだぞ、鷹文」
<0030> \{Tomoyo}「私はそこの男と違って口先だけじゃない。真剣におまえのことを考えてだぞ、鷹文」
// <0031> \{智代}「インターネットというものは、ハマッたら、毎日夜更かししてしまうものらしいじゃないか」
<0031> \{Tomoyo}「インターネットというものは、ハマッたら、毎日夜更かししてしまうものらしいじゃないか」
// <0032> \{智代}「心配だ」
<0032> \{Tomoyo}「心配だ」
// <0033> \{鷹文}「節度は守るって」
<0033> \{Takafumi}「節度は守るって」
// <0034> \{鷹文}「それに、この機会にねぇちゃんも触ってみるべきだよ」
<0034> \{Takafumi}「それに、この機会にねぇちゃんも触ってみるべきだよ」
// <0035> \{智代}「どうして」
<0035> \{Tomoyo}「どうして」
// <0036> \{鷹文}「なんでとか、どうしてとかが多いふたりだなあ」
<0036> \{Takafumi}「なんでとか、どうしてとかが多いふたりだなあ」
// <0037> \{鷹文}「それはさ、ねぇちゃんだったら、いろんな人の力になれるかもしれないから」
<0037> \{Takafumi}「それはさ、ねぇちゃんだったら、いろんな人の力になれるかもしれないから」
// <0038> \{智代}「ん? どういう意味だ」
<0038> \{Tomoyo}「ん? どういう意味だ」
// <0039> \{鷹文}「ネットは世界中のいろんな人と出会い、交流することができる」
<0039> \{Takafumi}「ネットは世界中のいろんな人と出会い、交流することができる」
// <0040> \{鷹文}「悩みを抱えてる人たちもたくさんいる」
<0040> \{Takafumi}「悩みを抱えてる人たちもたくさんいる」
// <0041> \{鷹文}「そういう人たちに、ねぇちゃんはアドバイスしてあげることができる」
<0041> \{Takafumi}「そういう人たちに、ねぇちゃんはアドバイスしてあげることができる」
// <0042> \{智代}「私はそんな、えらそうなことはしたくない」
<0042> \{Tomoyo}「私はそんな、えらそうなことはしたくない」
// <0043> \{鷹文}「ありゃ…」
<0043> \{Takafumi}「ありゃ…」
// <0044> \{智代}「でも…」
<0044> \{Tomoyo}「でも…」
// <0045> \{智代}「いろんな人たちと出会い、交流できる…それはなんだかいいものだな」
<0045> \{Tomoyo}「いろんな人たちと出会い、交流できる…それはなんだかいいものだな」
// <0046> \{鷹文}「やった、決定だね」
<0046> \{Takafumi}「やった、決定だね」
// <0047> \{智代}「こら、勝手に決定するな。部屋の持ち主にちゃんと承諾を得ろ」
<0047> \{Tomoyo}「こら、勝手に決定するな。部屋の持ち主にちゃんと承諾を得ろ」
// <0048> \{鷹文}「いいよね、にぃちゃん?」
<0048> \{Takafumi}「いいよね、にぃちゃん?」
// <0049> \{朋也}「………」
<0049> \{Tomoya}「………」
// <0050> 結局俺はその後、渋々承諾してしまったのだった。
<0050> 結局俺はその後、渋々承諾してしまったのだった。
// <0051> それは智代の人望が、活かされるのであれば、いいことだと思ったからだ。
<0051> それは智代の人望が、活かされるのであれば、いいことだと思ったからだ。
// <0052> 本人は否定しているが、智代はいろんな人の道しるべとなることができる。
<0052> 本人は否定しているが、智代はいろんな人の道しるべとなることができる。
// <0053> 自分では動くことのできない、あるいは動こうとしない人たちを先導し、道を指し示すことができる。
<0053> 自分では動くことのできない、あるいは動こうとしない人たちを先導し、道を指し示すことができる。
// <0054> 学生時代、一時を共にした俺にはわかるし、鷹文もそのことに気づいている。
<0054> 学生時代、一時を共にした俺にはわかるし、鷹文もそのことに気づいている。
// <0055> 生徒会長を退任した今では、その才は俺のみに向けられているが、インターネットを介せば、たくさんの人たち、これまで以上の人たちに向けられる。
<0055> 生徒会長を退任した今では、その才は俺のみに向けられているが、インターネットを介せば、たくさんの人たち、これまで以上の人たちに向けられる。
// <0056> そもそも俺ひとりが独占するにはもったいない、産まれ持っての資質だ。
<0056> そもそも俺ひとりが独占するにはもったいない、産まれ持っての資質だ。
// <0057> またたくさんの人たちの道しるべとなってくれればいい。
<0057> またたくさんの人たちの道しるべとなってくれればいい。
// <0058> それは智代にとっても有意義なことになるはずだった。
<0058> それは智代にとっても有意義なことになるはずだった。
// <0059> 悪い話のわけがなかった。
<0059> 悪い話のわけがなかった。
// <0060> \{朋也}(でもなんだか、鷹文にまんまと陥れられた気分だな…)
<0060> \{Tomoya}(でもなんだか、鷹文にまんまと陥れられた気分だな…)
// <0061> \{朋也}(電話代とかどうなるんだろ…。すごく大変なんじゃないのか実は…)
<0061> \{Tomoya}(電話代とかどうなるんだろ…。すごく大変なんじゃないのか実は…)
// <0062> ふと現実に戻ると、日傘を差した女性が坂上家の前に立っていることに気づいた。
<0062> ふと現実に戻ると、日傘を差した女性が坂上家の前に立っていることに気づいた。
// <0063> 俺は隣に並んで立つ。そして、横顔を窺った。
<0063> 俺は隣に並んで立つ。そして、横顔を窺った。
// <0064> 写真と同一人物。笑顔でない彼女は、無個性な人形のような存在だった。
<0064> 写真と同一人物。笑顔でない彼女は、無個性な人形のような存在だった。
// <0065> 彼女は俺に気づいて、さっときびすを返す。
<0065> 彼女は俺に気づいて、さっときびすを返す。
// <0066> \{朋也}「ともはここにはいない」
<0066> \{Tomoya}「ともはここにはいない」
// <0067> 俺がそう告げると、彼女は足を止めた。
<0067> 俺がそう告げると、彼女は足を止めた。
// <0068> \{朋也}「俺のアパートにいる。元気だよ」
<0068> \{Tomoya}「俺のアパートにいる。元気だよ」
// <0069> \{女性}「あの…」
<0069> \{Woman}「あの…」
// <0070> 女性が振り返る。
<0070> 女性が振り返る。
// <0071> \{女性}「…あなたは?」
<0071> \{Woman}「…あなたは?」
// <0072> \{朋也}「この家の娘の彼氏」
<0072> \{Tomoya}「この家の娘の彼氏」
// <0073> \{朋也}「今は彼女と、ともの面倒を見てる」
<0073> \{Tomoya}「今は彼女と、ともの面倒を見てる」
// <0074> 俺は彼女から目線を反らし、坂上家に移す。
<0074> 俺は彼女から目線を反らし、坂上家に移す。
// <0075> \{朋也}「この家はさ、いろいろあったんだ」
<0075> \{Tomoya}「この家はさ、いろいろあったんだ」
// <0076> \{朋也}「今更、混乱を持ち込めない」
<0076> \{Tomoya}「今更、混乱を持ち込めない」
// <0077> \{朋也}「だから気づかれる前に引き取った」
<0077> \{Tomoya}「だから気づかれる前に引き取った」
// <0078> \{女性}「………」
<0078> \{Woman}「………」
// <0079> \{女性}「…元気だったらいいんです」
<0079> \{Woman}「…元気だったらいいんです」
// <0080> \{女性}「ありがとうございます」
<0080> \{Woman}「ありがとうございます」
// <0081> そう言って頭を下げた。
<0081> そう言って頭を下げた。
// <0082> \{朋也}「今は元気だよ」
<0082> \{Tomoya}「今は元気だよ」
// <0083> \{朋也}「でもさ、正直、生活費がきついんだ」
<0083> \{Tomoya}「でもさ、正直、生活費がきついんだ」
// <0084> \{女性}「………」
<0084> \{Woman}「………」
// <0085> 彼女は眉間に皺を寄せて、俺の顔をじっと見ていた。俺は話を続ける。
<0085> 彼女は眉間に皺を寄せて、俺の顔をじっと見ていた。俺は話を続ける。
// <0086> \{朋也}「そういうのも含めて、これからはいろんな困難が待ってる」
<0086> \{Tomoya}「そういうのも含めて、これからはいろんな困難が待ってる」
// <0087> \{朋也}「そんな山をさ、俺たちは、三人で乗り越えていく」
<0087> \{Tomoya}「そんな山をさ、俺たちは、三人で乗り越えていく」
// <0088> \{朋也}「まさしく家族のようにさ」
<0088> \{Tomoya}「まさしく家族のようにさ」
// <0089> \{朋也}「そしていつか何にも代え難い、絆が生まれる」
<0089> \{Tomoya}「そしていつか何にも代え難い、絆が生まれる」
// <0090> \{朋也}「それはさ…」
<0090> \{Tomoya}「それはさ…」
// <0091> \{朋也}「血よりも濃いものかもしれない」
<0091> \{Tomoya}「血よりも濃いものかもしれない」
// <0092> \{朋也}「あんたはそれでもいいのか?」
<0092> \{Tomoya}「あんたはそれでもいいのか?」
// <0093> \{女性}「………」
<0093> \{Woman}「………」
// <0094> \{朋也}「そん時になってさ…わがまま言わない?」
<0094> \{Tomoya}「そん時になってさ…わがまま言わない?」
// <0095> \{女性}「…言いません」
<0095> \{Woman}「…言いません」
// <0096> 目に決意がこもっていた。
<0096> 目に決意がこもっていた。
// <0097> \{女性}「あなたがたが、私を責めないのであれば」
<0097> \{Woman}「あなたがたが、私を責めないのであれば」
// <0098> …親子の絆とはこんなものなのか。
<0098> …親子の絆とはこんなものなのか。
// <0099> がっかりした。
<0099> がっかりした。
// <0100> 少しでも動揺してくれれば…俺は説得できたのに。
<0100> 少しでも動揺してくれれば…俺は説得できたのに。
// <0101> そうすることもできなかった。
<0101> そうすることもできなかった。
// <0102> \{女性}「ただひとつお願いがあります。聞いてもらえますか」
<0102> \{Woman}「ただひとつお願いがあります。聞いてもらえますか」
// <0103> \{朋也}「事によるけど」
<0103> \{Tomoya}「事によるけど」
// <0104> \{女性}「あの子の写真を…定期的に頂けませんか」
<0104> \{Woman}「あの子の写真を…定期的に頂けませんか」
// <0105> \{朋也}「わがままだな」
<0105> \{Tomoya}「わがままだな」
// <0106> \{女性}「そうですね…」
<0106> \{Woman}「そうですね…」
// <0107> \{朋也}「じゃあ、こっちもひとつだけお願い」
<0107> \{Tomoya}「じゃあ、こっちもひとつだけお願い」
// <0108> \{朋也}「あいつにもう一度だけ、会ってやってくれ」
<0108> \{Tomoya}「あいつにもう一度だけ、会ってやってくれ」
// <0109> \{朋也}「話をしてやってほしい」
<0109> \{Tomoya}「話をしてやってほしい」
// <0110> \{女性}「………」
<0110> \{Woman}「………」
// <0111> 考えた。
<0111> 考えた。
// <0112> \{女性}「そうすれば…」
<0112> \{Woman}「そうすれば…」
// <0113> \{女性}「もう二度と会わなくていいですか」
<0113> \{Woman}「もう二度と会わなくていいですか」
// <0114> \{朋也}「…ああ」
<0114> \{Tomoya}「…ああ」
// <0115> \{女性}「写真も送ってくれますか」
<0115> \{Woman}「写真も送ってくれますか」
// <0116> \{朋也}「ああ、いいだろ」
<0116> \{Tomoya}「ああ、いいだろ」
// <0117> 一瞬迷ったが、そう答えた。
<0117> 一瞬迷ったが、そう答えた。
// <0118> \{女性}「…わかりました」
<0118> \{Woman}「…わかりました」
// <0119> \{女性}「では、もう一度だけ」
<0119> \{Woman}「では、もう一度だけ」
// <0120> 家に戻ると、部屋の隅にパソコンが設置されていた。
<0120> 家に戻ると、部屋の隅にパソコンが設置されていた。
// <0121> それに向かっているのは、智代だった。
<0121> それに向かっているのは、智代だった。
// <0122> しかも珍しく眼鏡をかけている。
<0122> しかも珍しく眼鏡をかけている。
// <0123> キーボードと、モニターを交互に見ながら、たどたどしくキーを叩いている。
<0123> キーボードと、モニターを交互に見ながら、たどたどしくキーを叩いている。
// <0124> 隣で鷹文が教えていた。
<0124> 隣で鷹文が教えていた。
// <0125> ともも、ぬいぐるみを抱えて、画面に見入っている。
<0125> ともも、ぬいぐるみを抱えて、画面に見入っている。
// <0126> 今はパソコンが主役なようだった。
<0126> 今はパソコンが主役なようだった。
// <0127> 智代は真剣な様子で、帰宅した俺にも気づかかない。
<0127> 智代は真剣な様子で、帰宅した俺にも気づかかない。
// <0128> その背後に立って、モニターを覗き込む。
<0128> その背後に立って、モニターを覗き込む。
// <0129> 画面には…
<0129> 画面には…
// <0130> \ また
<0130> \ また
// <0131> \ 語彙じぇん
<0131> \ 語彙じぇん
// <0132> \ お聞かせ管性¥¥臭さい
<0132> \ お聞かせ管性¥¥臭さい
// <0133> \{智代}「…どうだっ」
<0133> \{Tomoyo}「…どうだっ」
// <0134> \{智代}「うわあっ、臭くなんてないっ」
<0134> \{Tomoyo}「うわあっ、臭くなんてないっ」
// <0135> \{鷹文}「デリートキーも間違ってるよ」
<0135> \{Takafumi}「デリートキーも間違ってるよ」
// <0136> 慌てて、打ち直す。その動きもぎこちない。
<0136> 慌てて、打ち直す。その動きもぎこちない。
// <0137> なんでもできるようでいて、実は結構不器用なところが可愛らしい。
<0137> なんでもできるようでいて、実は結構不器用なところが可愛らしい。
// <0138> \{鷹文}「で、エンターキー」
<0138> \{Takafumi}「で、エンターキー」
// <0139> \{智代}「これでいいのか」
<0139> \{Tomoyo}「これでいいのか」
// <0140> \{鷹文}「うん。後は放っておけばまた返事がついてるよ」
<0140> \{Takafumi}「うん。後は放っておけばまた返事がついてるよ」
// <0141> \{智代}「ふぅ…」
<0141> \{Tomoyo}「ふぅ…」
// <0142> 眼鏡をはずし、伸びをする。
<0142> 眼鏡をはずし、伸びをする。
// <0143> \{朋也}「楽しそうだな」
<0143> \{Tomoya}「楽しそうだな」
// <0144> \{智代}「あ、帰っていたのか。おかえり」
<0144> \{Tomoyo}「あ、帰っていたのか。おかえり」
// <0145> 俺に気づいて、立ち上がる。
<0145> 俺に気づいて、立ち上がる。
// <0146> \{朋也}「おまえのほうがはまって、勉強がおろそかになるんじゃないのか?」
<0146> \{Tomoya}「おまえのほうがはまって、勉強がおろそかになるんじゃないのか?」
// <0147> \{智代}「うん、まあ、初めてだから、最初のうちは夢中になってしまうな。これはやっかいだ」
<0147> \{Tomoyo}「うん、まあ、初めてだから、最初のうちは夢中になってしまうな。これはやっかいだ」
// <0148> \{朋也}「何してたんだ?」
<0148> \{Tomoya}「何してたんだ?」
// <0149> 洋服箪笥の前に立ち、着替えながら訊く。
<0149> 洋服箪笥の前に立ち、着替えながら訊く。
// <0150> \{智代}「いろんな人の人生をかいま見た」
<0150> \{Tomoyo}「いろんな人の人生をかいま見た」
// <0151> \{智代}「それは学校の友達同士では気軽に話題にできないような、ちょっと重いお話だ」
<0151> \{Tomoyo}「それは学校の友達同士では気軽に話題にできないような、ちょっと重いお話だ」
// <0152> \{智代}「インターネットの世界では、みんな別の名前を持って、顔も見えないから、そういう話ができるんだ」
<0152> \{Tomoyo}「インターネットの世界では、みんな別の名前を持って、顔も見えないから、そういう話ができるんだ」
// <0153> \{智代}「みんな意見を交換していた」
<0153> \{Tomoyo}「みんな意見を交換していた」
// <0154> \{智代}「興味があったので、挨拶をして、私なりの見解を述べてみた」
<0154> \{Tomoyo}「興味があったので、挨拶をして、私なりの見解を述べてみた」
// <0155> \{智代}「そうしたらそれに対する返事があったので、またこちらからも返事を書いておいた」
<0155> \{Tomoyo}「そうしたらそれに対する返事があったので、またこちらからも返事を書いておいた」
// <0156> \{智代}「そういや、そろそろ返事が書かれてるんじゃないか?」
<0156> \{Tomoyo}「そういや、そろそろ返事が書かれてるんじゃないか?」
// <0157> \{鷹文}「いや、さっき書き込んだばかりだから」
<0157> \{Takafumi}「いや、さっき書き込んだばかりだから」
// <0158> …無茶苦茶はまってるようだった。
<0158> …無茶苦茶はまってるようだった。
// <0159> \{朋也}「おまえ、ともは。退屈させてたんじゃないのか?」
<0159> \{Tomoya}「おまえ、ともは。退屈させてたんじゃないのか?」
// <0160> \{智代}「あ、とも」
<0160> \{Tomoyo}「あ、とも」
// <0161> 思い出したように、ともを振りかえる。
<0161> 思い出したように、ともを振りかえる。
// <0162> \{智代}「退屈だったか?」
<0162> \{Tomoyo}「退屈だったか?」
// <0163> \{とも}「ううん、ママがたのしそうだったからたのしかった」
<0163> \{Tomo}「ううん、ママがたのしそうだったからたのしかった」
// <0164> \{智代}「そうか、すまないな。ちょっと夢中になりすぎた」
<0164> \{Tomoyo}「そうか、すまないな。ちょっと夢中になりすぎた」
// <0165> \{とも}「こーえんでいっぱいあそんだからいいよー」
<0165> \{Tomo}「こーえんでいっぱいあそんだからいいよー」
// <0166> \{智代}「うん、そうだな。昼間はずっとふたりで公園で遊んだな」
<0166> \{Tomoyo}「うん、そうだな。昼間はずっとふたりで公園で遊んだな」
// <0167> \{智代}「退屈だったら言ってくれ。いつでもともと遊ぶぞ」
<0167> \{Tomoyo}「退屈だったら言ってくれ。いつでもともと遊ぶぞ」
// <0168> \{智代}「私はとものことが大好きだからな」
<0168> \{Tomoyo}「私はとものことが大好きだからな」
// <0169> 言って、その小さな体に覆い被さるように抱きつく。
<0169> 言って、その小さな体に覆い被さるように抱きつく。
// <0170> \{とも}「うんー」
<0170> \{Tomo}「うんー」
// <0171> 智代の性格はよく理解しているつもりだが…。
<0171> 智代の性格はよく理解しているつもりだが…。
// <0172> \{朋也}(本当にひとつのことに懸命になりだすと、周りが見えなくなる奴だよな…)
<0172> \{Tomoya}(本当にひとつのことに懸命になりだすと、周りが見えなくなる奴だよな…)
// <0173> 改めてそのことを痛感させられる。
<0173> 改めてそのことを痛感させられる。
// <0174> \{智代}「鷹文、行儀が悪いぞ」
<0174> \{Tomoyo}「鷹文、行儀が悪いぞ」
// <0175> 夕飯の間も、鷹文はパソコンに向かったままだった。
<0175> 夕飯の間も、鷹文はパソコンに向かったままだった。
// <0176> ウィンナーを頬張りながら、キーを打ち続けていた。
<0176> ウィンナーを頬張りながら、キーを打ち続けていた。
// <0177> \{朋也}「何してんだ、あいつ」
<0177> \{Tomoya}「何してんだ、あいつ」
// <0178> \{智代}「さあ」
<0178> \{Tomoyo}「さあ」
// <0179> \{智代}「何やら昼間、小難しいことを言っていたな」
<0179> \{Tomoyo}「何やら昼間、小難しいことを言っていたな」
// <0180> \{智代}「何かを作っているそうだ」
<0180> \{Tomoyo}「何かを作っているそうだ」
// <0181> \{朋也}「それにインターネットが必要なのか?」
<0181> \{Tomoya}「それにインターネットが必要なのか?」
// <0182> \{智代}「ひとりじゃなくてチームを組んでるそうだ」
<0182> \{Tomoyo}「ひとりじゃなくてチームを組んでるそうだ」
// <0183> \{智代}「その仲間たちが海外にいるらしくて、インターネットを介してじゃないとやりとりができないらしい」
<0183> \{Tomoyo}「その仲間たちが海外にいるらしくて、インターネットを介してじゃないとやりとりができないらしい」
// <0184> \{朋也}「海外…ってことは英語で?」
<0184> \{Tomoya}「海外…ってことは英語で?」
// <0185> \{智代}「だろうな。おまえは苦手なようだが」
<0185> \{Tomoyo}「だろうな。おまえは苦手なようだが」
// <0186> 私にもそれぐらいならできるというように言う。
<0186> 私にもそれぐらいならできるというように言う。
// <0187> 大した姉弟だった。
<0187> 大した姉弟だった。
// <0188> \{朋也}「ゲームかな」
<0188> \{Tomoya}「ゲームかな」
// <0189> \{智代}「そんなところだろうな」
<0189> \{Tomoyo}「そんなところだろうな」
// <0190> \{智代}「ともが遊べるゲームでも作ってもらおうか、な、とも」
<0190> \{Tomoyo}「ともが遊べるゲームでも作ってもらおうか、な、とも」
// <0191> \{とも}「いいよー」
<0191> \{Tomo}「いいよー」
// <0192> 智代とならなんでもいいという感じの無邪気な返事だった。
<0192> 智代とならなんでもいいという感じの無邪気な返事だった。
// <0193> バラエティー番組を見て、楽しく時間を過ごす。
<0193> バラエティー番組を見て、楽しく時間を過ごす。
// <0194> \{鷹文}「じゃ、帰るね」
<0194> \{Takafumi}「じゃ、帰るね」
// <0195> パソコンの電源を落として、鷹文が立ち上がる。
<0195> パソコンの電源を落として、鷹文が立ち上がる。
// <0196> そろそろともも寝ないといけない時間だった。
<0196> そろそろともも寝ないといけない時間だった。
// <0197> 鷹文がいなくなると、ともをお風呂に入れてもらい、寝る準備を始めた。
<0197> 鷹文がいなくなると、ともをお風呂に入れてもらい、寝る準備を始めた。
// <0198> \{智代}「それで…」
<0198> \{Tomoyo}「それで…」
// <0199> \{智代}「どうだった…」
<0199> \{Tomoyo}「どうだった…」
// <0200> 消灯後、ともを寝かしつけてから、智代は口を開く。
<0200> 消灯後、ともを寝かしつけてから、智代は口を開く。
// <0201> その問いかけはともが起きている間は、ずっと堪えていたものだ。
<0201> その問いかけはともが起きている間は、ずっと堪えていたものだ。
// <0202> \{朋也}「会えた」
<0202> \{Tomoya}「会えた」
// <0203> \{智代}「会えたのかっ」
<0203> \{Tomoyo}「会えたのかっ」
// <0204> がばりと上体を起こす。
<0204> がばりと上体を起こす。
// <0205> \{朋也}「落ち着け。ともが起きるぞ」
<0205> \{Tomoya}「落ち着け。ともが起きるぞ」
// <0206> すまない、と言って、また布団をかぶる。
<0206> すまない、と言って、また布団をかぶる。
// <0207> \{智代}「話ができたのか」
<0207> \{Tomoyo}「話ができたのか」
// <0208> \{朋也}「ああ」
<0208> \{Tomoya}「ああ」
// <0209> \{智代}「説得は…」
<0209> \{Tomoyo}「説得は…」
// <0210> \{朋也}「してない」
<0210> \{Tomoya}「してない」
// <0211> \{朋也}「できなかった」
<0211> \{Tomoya}「できなかった」
// <0212> \{朋也}「何を言っても無駄な気がした」
<0212> \{Tomoya}「何を言っても無駄な気がした」
// <0213> \{智代}「そうか…」
<0213> \{Tomoyo}「そうか…」
// <0214> 感情が複雑に入り交じったため息。
<0214> 感情が複雑に入り交じったため息。
// <0215> \{朋也}「定期的に写真が欲しいと言ってきた」
<0215> \{Tomoya}「定期的に写真が欲しいと言ってきた」
// <0216> \{智代}「勝手だ…」
<0216> \{Tomoyo}「勝手だ…」
// <0217> \{智代}「縁を切ったんじゃないのか…」
<0217> \{Tomoyo}「縁を切ったんじゃないのか…」
// <0218> \{智代}「何を一方的に…」
<0218> \{Tomoyo}「何を一方的に…」
// <0219> \{智代}「送るのか…」
<0219> \{Tomoyo}「送るのか…」
// <0220> \{朋也}「ああ、約束した」
<0220> \{Tomoya}「ああ、約束した」
// <0221> \{朋也}「最後にもう一度だけともと会うことを条件に」
<0221> \{Tomoya}「最後にもう一度だけともと会うことを条件に」
// <0222> \{智代}「………」
<0222> \{Tomoyo}「………」
// <0223> \{朋也}「これは俺と、ともとの約束だ」
<0223> \{Tomoya}「これは俺と、ともとの約束だ」
// <0224> \{朋也}「会って話ができるようにする、と」
<0224> \{Tomoya}「会って話ができるようにする、と」
// <0225> \{朋也}「だから、そうした」
<0225> \{Tomoya}「だから、そうした」
// <0226> \{智代}「おまえは…」
<0226> \{Tomoyo}「おまえは…」
// <0227> \{智代}「それでともがまた傷つくことを理解していないのか…」
<0227> \{Tomoyo}「それでともがまた傷つくことを理解していないのか…」
// <0228> \{智代}「この子はもうその人とは会わないほうがいい…」
<0228> \{Tomoyo}「この子はもうその人とは会わないほうがいい…」
// <0229> \{智代}「もういいじゃないか…」
<0229> \{Tomoyo}「もういいじゃないか…」
// <0230> \{智代}「つらいことが多すぎだ…」
<0230> \{Tomoyo}「つらいことが多すぎだ…」
// <0231> その小さな体をそっと抱く。
<0231> その小さな体をそっと抱く。
// <0232> \{智代}「こんなに小さいのに…」
<0232> \{Tomoyo}「こんなに小さいのに…」
// <0233> \{智代}「可哀想じゃないか…」
<0233> \{Tomoyo}「可哀想じゃないか…」
// <0234> \{とも}「ん…」
<0234> \{Tomo}「ん…」
// <0235> ともが目を覚ます。
<0235> ともが目を覚ます。
// <0236> \{とも}「どしたの…」
<0236> \{Tomo}「どしたの…」
// <0237> \{とも}「なにー…?」
<0237> \{Tomo}「なにー…?」
// <0238> \{智代}「すまない…起こしてしまったか…」
<0238> \{Tomoyo}「すまない…起こしてしまったか…」
// <0239> \{智代}「何もない…ともは安心して寝ていればいい」
<0239> \{Tomoyo}「何もない…ともは安心して寝ていればいい」
// <0240> \{とも}「そ…」
<0240> \{Tomo}「そ…」
// <0241> また目を閉じる。
<0241> また目を閉じる。
// <0242> すぐ穏やかな寝息が聞こえてくる。
<0242> すぐ穏やかな寝息が聞こえてくる。
// <0243> \{朋也}「ともが会いたいといったら会わせてやろう」
<0243> \{Tomoya}「ともが会いたいといったら会わせてやろう」
// <0244> \{智代}「………」
<0244> \{Tomoyo}「………」
// <0245> \{智代}「…私は、どうしていればいい」
<0245> \{Tomoyo}「…私は、どうしていればいい」
// <0246> 黙って耐えろ
<0246> 黙って耐えろ
// <0247> おまえは来るな
<0247> おまえは来るな
// <0248> \{朋也}「黙って耐えろ」
<0248> \{Tomoya}「黙って耐えろ」
// <0249> \{朋也}「それだけ」
<0249> \{Tomoya}「それだけ」
// <0250> 一番難しいことだろうけど、それを強いた。智代自身のためにも、乗り越えてほしかった。
<0250> 一番難しいことだろうけど、それを強いた。智代自身のためにも、乗り越えてほしかった。
// <0251> \{智代}「………」
<0251> \{Tomoyo}「………」
// <0252> \{智代}「…うん…」
<0252> \{Tomoyo}「…うん…」
// <0253> \{智代}「わかった…たえる…」
<0253> \{Tomoyo}「わかった…たえる…」
// <0254> 布団に顔を半分埋めて、子供のように答えた。
<0254> 布団に顔を半分埋めて、子供のように答えた。
// <0255> \{朋也}「おまえは来るな」
<0255> \{Tomoya}「おまえは来るな」
// <0256> \{智代}「どうしてっ」
<0256> \{Tomoyo}「どうしてっ」
// <0257> また声が大きいのを諭す。
<0257> また声が大きいのを諭す。
// <0258> \{朋也}「とものことになると、おまえはそうやって、すぐ感情的になる」
<0258> \{Tomoya}「とものことになると、おまえはそうやって、すぐ感情的になる」
// <0259> \{智代}「それはダメなことなのか…? それほど大事に思ってるということじゃないか…」
<0259> \{Tomoyo}「それはダメなことなのか…? それほど大事に思ってるということじゃないか…」
// <0260> \{朋也}「でも、そうなると冷静な話し合いができない」
<0260> \{Tomoya}「でも、そうなると冷静な話し合いができない」
// <0261> \{智代}「その場にいたいんだ」
<0261> \{Tomoyo}「その場にいたいんだ」
// <0262> \{朋也}「ダメだ」
<0262> \{Tomoya}「ダメだ」
// <0263> \{智代}「………」
<0263> \{Tomoyo}「………」
// <0264> \{智代}「…じゃあ、でしゃばらないから…」
<0264> \{Tomoyo}「…じゃあ、でしゃばらないから…」
// <0265> \{朋也}「おまえは自分を押さえつけられないからダメだ」
<0265> \{Tomoya}「おまえは自分を押さえつけられないからダメだ」
// <0266> \{智代}「………」
<0266> \{Tomoyo}「………」
// <0267> \{智代}「わかった…いかない…」
<0267> \{Tomoyo}「わかった…いかない…」
// <0268> 布団に顔を半分埋めて、子供のように答えた。
<0268> 布団に顔を半分埋めて、子供のように答えた。