Tomoyo After:SEEN0715

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// Resources for SEEN0715.TXT

// #character '主婦'
#character 'Housewife'

// #character '朋也'
#character 'Tomoya'

// #character '男'
#character 'Man'

// #character '智代'
#character 'Tomoyo'

// #character '河南子'
#character 'Kanako'

// #character '鷹文'
#character 'Takafumi'

// #character '声'
#character 'Voice'

// #character '影'
#character 'Shadow'

// #character 'とも'
#character 'Tomo'


// <0000> 7月15日(木)
<0000> July 15th (Thu)

// <0001> \{主婦}「ちょっと、ちょっと、どうしたの!?」
<0001> \{Housewife}「ちょっと、ちょっと、どうしたの!?」

// <0002> \{朋也}「あ、いや、大丈夫ですよ」
<0002> \{Tomoya}「あ、いや、大丈夫ですよ」

// <0003> 回収をしていたら、顔見知りにひどく驚かれた。
<0003> 回収をしていたら、顔見知りにひどく驚かれた。

// <0004> 無理もない。頬に湿布を大きく貼り、左目の上も腫れ上がっているため消炎剤とガーゼで覆われているのだ。
<0004> 無理もない。頬に湿布を大きく貼り、左目の上も腫れ上がっているため消炎剤とガーゼで覆われているのだ。

// <0005> \{朋也}「車にぶつかっちゃって」
<0005> \{Tomoya}「車にぶつかっちゃって」

// <0006> さすがに本当のことは言えない。
<0006> さすがに本当のことは言えない。

// <0007> \{主婦}「交通事故!?」
<0007> \{Housewife}「交通事故!?」

// <0008> \{朋也}「いや、そんなたいそうなもんじゃ…」
<0008> \{Tomoya}「いや、そんなたいそうなもんじゃ…」

// <0009> \{朋也}「痛そうに見えるけど、全然平気なんすよ」
<0009> \{Tomoya}「痛そうに見えるけど、全然平気なんすよ」

// <0010> 長袖の作業着でよかったと思う。
<0010> 長袖の作業着でよかったと思う。

// <0011> 盾にした腕もアザだらけだからだ。
<0011> 盾にした腕もアザだらけだからだ。

// <0012> この時期は軽トラに乗っているのも辛いほど暑い。
<0012> この時期は軽トラに乗っているのも辛いほど暑い。

// <0013> 古い車なので、クーラーの効きが悪いのだ。
<0013> 古い車なので、クーラーの効きが悪いのだ。

// <0014> \{朋也}「…あっついなぁ」
<0014> \{Tomoya}「…あっついなぁ」

// <0015> それでも仕事はしないといけない。
<0015> それでも仕事はしないといけない。

// <0016> 俺はダッシュボードに置いていたタオルで顔を拭い、軍手をはめた。
<0016> 俺はダッシュボードに置いていたタオルで顔を拭い、軍手をはめた。

// <0017> その日の帰り。
<0017> その日の帰り。

// <0018> 男が行く先に仁王立ちしていた。
<0018> 男が行く先に仁王立ちしていた。

// <0019> 昨日、手紙を渡して逃げていった奴だ。
<0019> 昨日、手紙を渡して逃げていった奴だ。

// <0020> \{男}「ねぇ」
<0020> \{Man}「ねぇ」

// <0021> \{男}「あんたさ…手紙、渡してくれた?」
<0021> \{Man}「あんたさ…手紙、渡してくれた?」

// <0022> \{朋也}「…渡したよ」
<0022> \{Tomoya}「…渡したよ」

// <0023> \{男}「本当か?」
<0023> \{Man}「本当か?」

// <0024> \{朋也}「けど、すぐその場で破り捨てた」
<0024> \{Tomoya}「けど、すぐその場で破り捨てた」

// <0025> \{朋也}「今の智代はあんなことに興味を示す人間じゃない」
<0025> \{Tomoya}「今の智代はあんなことに興味を示す人間じゃない」

// <0026> \{男}「まぁ、そりゃ少しは話は聞いてるけど…」
<0026> \{Man}「まぁ、そりゃ少しは話は聞いてるけど…」

// <0027> \{男}「困ったな…みんなに怒られるよ…」
<0027> \{Man}「困ったな…みんなに怒られるよ…」

// <0028> \{男}「わかった、相談してくるよ」
<0028> \{Man}「わかった、相談してくるよ」

// <0029> 一体何を誰と相談してくるのか。
<0029> 一体何を誰と相談してくるのか。

// <0030> もめ事に巻き込まれないといいが…。
<0030> もめ事に巻き込まれないといいが…。

// <0031> \{智代}「おかえり」
<0031> \{Tomoyo}「おかえり」

// <0032> 出迎える智代の顔が強張っていた。
<0032> 出迎える智代の顔が強張っていた。

// <0033> また何かあったに違いない。
<0033> また何かあったに違いない。

// <0034> ともを河南子に預けて、夕飯の支度をしながら話を聞く。
<0034> ともを河南子に預けて、夕飯の支度をしながら話を聞く。

// <0035> \{智代}「母親の間で噂されていたのを訊いたんだが…」
<0035> \{Tomoyo}「母親の間で噂されていたのを訊いたんだが…」

// <0036> \{智代}「先生が…不審な男を発見したんだそうだ」
<0036> \{Tomoyo}「先生が…不審な男を発見したんだそうだ」

// <0037> \{智代}「また、ともを連れていこうとしたに違いない…」
<0037> \{Tomoyo}「また、ともを連れていこうとしたに違いない…」

// <0038> \{智代}「明日は学校を休んで、そいつを捕まえてみようと思う」
<0038> \{Tomoyo}「明日は学校を休んで、そいつを捕まえてみようと思う」

// <0039> \{朋也}「そこまでするか…」
<0039> \{Tomoya}「そこまでするか…」

// <0040> \{智代}「そこまでしないと、安心できない」
<0040> \{Tomoyo}「そこまでしないと、安心できない」

// <0041> \{智代}「今日も、授業中、気が気でなかったんだ…」
<0041> \{Tomoyo}「今日も、授業中、気が気でなかったんだ…」

// <0042> \{智代}「絶対にこの手で捕まえる…」
<0042> \{Tomoyo}「絶対にこの手で捕まえる…」

// <0043> こうなった智代を引き留めるのは、不可能だと知っている。
<0043> こうなった智代を引き留めるのは、不可能だと知っている。

// <0044> だから俺は、昨日見聞きしたことをすべて正直に伝えた。
<0044> だから俺は、昨日見聞きしたことをすべて正直に伝えた。

// <0045> だから俺は、手紙を渡してきた男についても正直に伝えた。
<0045> だから俺は、手紙を渡してきた男についても正直に伝えた。

// <0046> \{智代}「そうか…」
<0046> \{Tomoyo}「そうか…」

// <0047> \{智代}「私のせいだったか…」
<0047> \{Tomoyo}「私のせいだったか…」

// <0048> \{智代}「わかった、今夜終わらせよう」
<0048> \{Tomoyo}「わかった、今夜終わらせよう」

// <0049> もう、ともは関係ないんじゃないのか。
<0049> もう、ともは関係ないんじゃないのか。

// <0050> 連中の卑劣なやり方に、かつてないほどの憤りを覚える。
<0050> 連中の卑劣なやり方に、かつてないほどの憤りを覚える。

// <0051> \{智代}「明日は学校を休んで、そいつを捕まえてみようと思う」
<0051> \{Tomoyo}「明日は学校を休んで、そいつを捕まえてみようと思う」

// <0052> \{朋也}「もう一日だけ待て」
<0052> \{Tomoya}「もう一日だけ待て」

// <0053> \{智代}「どうして」
<0053> \{Tomoyo}「どうして」

// <0054> \{朋也}「俺がなんとかするから」
<0054> \{Tomoya}「俺がなんとかするから」

// <0055> \{智代}「なんだ、何か知っているのか」
<0055> \{Tomoyo}「なんだ、何か知っているのか」

// <0056> \{朋也}「心当たりはある」
<0056> \{Tomoya}「心当たりはある」

// <0057> \{朋也}「だから、もう一日待ってくれ」
<0057> \{Tomoya}「だから、もう一日待ってくれ」

// <0058> \{智代}「教えてくれないのか…?」
<0058> \{Tomoyo}「教えてくれないのか…?」

// <0059> すべて教えれば、怒りに任せて、智代が乗り込んでいくことになるだろう。
<0059> すべて教えれば、怒りに任せて、智代が乗り込んでいくことになるだろう。

// <0060> その間、ともはどうする?
<0060> その間、ともはどうする?

// <0061> 俺が守ればいいのか…。
<0061> 俺が守ればいいのか…。

// <0062> でも、そんな中途半端な形で終わらせてしまって…いいのだろうか。
<0062> でも、そんな中途半端な形で終わらせてしまって…いいのだろうか。

// <0063> いい
<0063> いい

// <0064> よくない
<0064> よくない

// <0065> 仕方ない…。
<0065> 仕方ない…。

// <0066> とものことを考えるなら、それが一番いいはずだ…。
<0066> とものことを考えるなら、それが一番いいはずだ…。

// <0067> 悩んだ末、結局昨日の晩起きたことを、すべて智代に伝えた。
<0067> 悩んだ末、結局昨日の晩起きたことを、すべて智代に伝えた。

// <0068> \{智代}「そうか…」
<0068> \{Tomoyo}「そうか…」

// <0069> \{智代}「私のせいだったか…」
<0069> \{Tomoyo}「私のせいだったか…」

// <0070> \{智代}「わかった、今夜終わらせよう」
<0070> \{Tomoyo}「わかった、今夜終わらせよう」

// <0071> 俺が頼まずとも、智代は当然のようにそう決意した。
<0071> 俺が頼まずとも、智代は当然のようにそう決意した。

// <0072> よくないに決まっている。
<0072> よくないに決まっている。

// <0073> それでは学生時代から何も変わらない。信念もなく、怠惰に流されていくだけ。
<0073> それでは学生時代から何も変わらない。信念もなく、怠惰に流されていくだけ。

// <0074> 俺も前に進まないといけないんだ。
<0074> 俺も前に進まないといけないんだ。

// <0075> また同じ過ちを繰り返さないよう。
<0075> また同じ過ちを繰り返さないよう。

// <0076> 智代と胸を張って生きていけるよう。
<0076> 智代と胸を張って生きていけるよう。

// <0077> だから、俺がなんとかする。
<0077> だから、俺がなんとかする。

// <0078> 智代はとものそばにいてくれているんだから。
<0078> 智代はとものそばにいてくれているんだから。

// <0079> だから俺が。
<0079> だから俺が。

// <0080> \{朋也}「………」
<0080> \{Tomoya}「………」

// <0081> 俺は無言で頷いていた。
<0081> 俺は無言で頷いていた。

// <0082> \{智代}「そうか…」
<0082> \{Tomoyo}「そうか…」

// <0083> \{智代}「わかった。もう一日だけ待つ」
<0083> \{Tomoyo}「わかった。もう一日だけ待つ」

// <0084> 夕飯を食べ、洗い物を済ませる。
<0084> 夕飯を食べ、洗い物を済ませる。

// <0085> 部屋に戻ると、それぞれがいつものポジションについている。
<0085> 部屋に戻ると、それぞれがいつものポジションについている。

// <0086> 話す
<0086> 話す

// <0087> 勉強する
<0087> 勉強する

// <0088> 智代
<0088> 智代

// <0089> 鷹文
<0089> 鷹文

// <0090> 河南子
<0090> 河南子

// <0091> 机に向かい、親方から渡された本を開く。
<0091> 机に向かい、親方から渡された本を開く。

// <0092> ………。
<0092> ………。

// <0093> ……。
<0093> ……。

// <0094> \{河南子}「暇だ、暇だーっ、遊ぼうよー」
<0094> \{Kanako}「暇だ、暇だーっ、遊ぼうよー」

// <0095> 河南子が駄々をこね始めた。
<0095> 河南子が駄々をこね始めた。

// <0096> \{朋也}「おまえはともよりガキだな…」
<0096> \{Tomoya}「おまえはともよりガキだな…」

// <0097> \{河南子}「だって、ともと先輩は絵本読んでるし、鷹文はマシンに向かいっぱなしだし」
<0097> \{Kanako}「だって、ともと先輩は絵本読んでるし、鷹文はマシンに向かいっぱなしだし」

// <0098> \{河南子}「同じ暇そうなの、あんただけ」
<0098> \{Kanako}「同じ暇そうなの、あんただけ」

// <0099> \{朋也}「暇そう言うな。仕事で疲れてんだよ、休ませろよ」
<0099> \{Tomoya}「暇そう言うな。仕事で疲れてんだよ、休ませろよ」

// <0100> \{河南子}「そんなぁ、遊ぼうよー」
<0100> \{Kanako}「そんなぁ、遊ぼうよー」

// <0101> \{朋也}「じゃあ、俺が疲れない遊びね。おまえが鷹文に飛びかかって、絞め技で落とす」
<0101> \{Tomoya}「じゃあ、俺が疲れない遊びね。おまえが鷹文に飛びかかって、絞め技で落とす」

// <0102> \{河南子}「了解」
<0102> \{Kanako}「了解」

// <0103> \{鷹文}「ぎゃあああーーっ!」
<0103> \{Takafumi}「ぎゃあああーーっ!」

// <0104> \{朋也}「マジですんなよ」
<0104> \{Tomoya}「マジですんなよ」

// <0105> \{河南子}「え、やらなくていいの?」
<0105> \{Kanako}「え、やらなくていいの?」

// <0106> \{朋也}「いいよ」
<0106> \{Tomoya}「いいよ」

// <0107> \{河南子}「なんだ、つまらん」
<0107> \{Kanako}「なんだ、つまらん」

// <0108> \{朋也}「面白かったのか、今のがおまえには…」
<0108> \{Tomoya}「面白かったのか、今のがおまえには…」

// <0109> \{河南子}「いや、まあ、暇だし」
<0109> \{Kanako}「いや、まあ、暇だし」

// <0110> \{朋也}「じゃあさ、鷹文を笑わせるゲーム」
<0110> \{Tomoya}「じゃあさ、鷹文を笑わせるゲーム」

// <0111> \{河南子}「なにで?」
<0111> \{Kanako}「なにで?」

// <0112> \{朋也}「おまえの笑えない冗談で」
<0112> \{Tomoya}「おまえの笑えない冗談で」

// <0113> \{河南子}「心外ですなぁ、岡崎さん」
<0113> \{Kanako}「心外ですなぁ、岡崎さん」

// <0114> \{河南子}「生徒会長に立候補して、公約のないネタだけの演説で大ウケして当選、その後、職員会議で取り消しをくらった過去を持つあたしですよ?」
<0114> \{Kanako}「生徒会長に立候補して、公約のないネタだけの演説で大ウケして当選、その後、職員会議で取り消しをくらった過去を持つあたしですよ?」

// <0115> \{朋也}「それ自慢顔で言うことじゃないから」
<0115> \{Tomoya}「それ自慢顔で言うことじゃないから」

// <0116> \{河南子}「じゃあ、そん時に披露したギャグをやってやるよ」
<0116> \{Kanako}「じゃあ、そん時に披露したギャグをやってやるよ」

// <0117> やらせる
<0117> やらせる

// <0118> 止める
<0118> 止める

// <0119> \{朋也}「ああ、どうぞ」
<0119> \{Tomoya}「ああ、どうぞ」

// <0120> 立ち上がると、玄関に向けてすたすたと歩いていく。
<0120> 立ち上がると、玄関に向けてすたすたと歩いていく。

// <0121> 下駄箱の前で立ち止まり、壁に向かって手を伸ばす。
<0121> 下駄箱の前で立ち止まり、壁に向かって手を伸ばす。

// <0122> その先にあるのは、この部屋のブレーカーだ。
<0122> その先にあるのは、この部屋のブレーカーだ。

// <0123> 河南子は迷いもなくそれを下ろした。
<0123> 河南子は迷いもなくそれを下ろした。

// <0124> ばちん。
<0124> ばちん。

// <0125> \{声}「わぁ!」
<0125> \{Voice}「わぁ!」

// <0126> \{声}「停電か?」
<0126> \{Voice}「停電か?」

// <0127> \{声}「うああぁぁーっ、まだ保存してないのにぃぃぃーー!」
<0127> \{Voice}「うああぁぁーっ、まだ保存してないのにぃぃぃーー!」

// <0128> 混乱。
<0128> 混乱。

// <0129> 冗談なのだろうか…これは。
<0129> 冗談なのだろうか…これは。

// <0130> \{声}「ぎゃああああぁーーーっ!」
<0130> \{Voice}「ぎゃああああぁーーーっ!」

// <0131> 悲鳴が闇をつんざく。
<0131> 悲鳴が闇をつんざく。

// <0132> \{声}「河南子!?」
<0132> \{Voice}「河南子!?」

// <0133> \{声}「今の叫び声は河南子じゃないか…?」
<0133> \{Voice}「今の叫び声は河南子じゃないか…?」

// <0134> \{声}「うわぁ…」
<0134> \{Voice}「うわぁ…」

// <0135> \{声}「おい、河南子ぉっ!」
<0135> \{Voice}「おい、河南子ぉっ!」

// <0136> \{声}「か、河南子…」
<0136> \{Voice}「か、河南子…」

// <0137> \{声}「………」
<0137> \{Voice}「………」

// <0138> \{声}「死んでる…」
<0138> \{Voice}「死んでる…」

// <0139> \{声}「みんな…\p
<0139> \{Voice}「みんな…\p

// <0140> 河南子が…殺された…」
<0140> 河南子が…殺された…」

// <0141> おまえは誰なんだ。
<0141> おまえは誰なんだ。

// <0142> \{声}「この闇に…何かが潜んでいる…」
<0142> \{Voice}「この闇に…何かが潜んでいる…」

// <0143> \{声}「イタイヨギャー!」
<0143> \{Voice}「イタイヨギャー!」

// <0144> \{声}「た、鷹文!」
<0144> \{Voice}「た、鷹文!」

// <0145> \{声}「え、今の僕だったの?」
<0145> \{Voice}「え、今の僕だったの?」

// <0146> \{朋也}「少しは似せる努力しろよ…」
<0146> \{Tomoya}「少しは似せる努力しろよ…」

// <0147> \{声}「うぅ…鷹文までも犠牲に…」
<0147> \{Voice}「うぅ…鷹文までも犠牲に…」

// <0148> \{声}「え? 僕、死んだの?」
<0148> \{Voice}「え? 僕、死んだの?」

// <0149> \{声}「みんなぁ、ここは、危険だっ、逃げるぞ!」
<0149> \{Voice}「みんなぁ、ここは、危険だっ、逃げるぞ!」

// <0150> \{声}「うっ…」
<0150> \{Voice}「うっ…」

// <0151> \{声}「うあ゛あぁぁあ゛あぁぁぁあ゛あぁぁぁーーーっ!」
<0151> \{Voice}「うあ゛あぁぁあ゛あぁぁぁあ゛あぁぁぁーーーっ!」

// <0152> \{声}「どうした、ともっ!」
<0152> \{Voice}「どうした、ともっ!」

// <0153> \{声}「え? 今のともっ?」
<0153> \{Voice}「え? 今のともっ?」

// <0154> \{声}「も…もみあげがぁーーっ!」
<0154> \{Voice}「も…もみあげがぁーーっ!」

// <0155> \{声}「ぎゃあああーーっ!」
<0155> \{Voice}「ぎゃあああーーっ!」

// <0156> どんな状態だ。
<0156> どんな状態だ。

// <0157> \{声}「み、みんな…」
<0157> \{Voice}「み、みんな…」

// <0158> \{声}「あたいのことはいいからさ…今のうちに…逃げるんだよぉ…」
<0158> \{Voice}「あたいのことはいいからさ…今のうちに…逃げるんだよぉ…」

// <0159> \{朋也}「どうでもいいが、それともなんだよな?」
<0159> \{Tomoya}「どうでもいいが、それともなんだよな?」

// <0160> 直後、電気がつく。智代がブレーカーを上げていた。
<0160> 直後、電気がつく。智代がブレーカーを上げていた。

// <0161> \{智代}「なんだ、つくじゃないか」
<0161> \{Tomoyo}「なんだ、つくじゃないか」

// <0162> \{河南子}「なんつって」
<0162> \{Kanako}「なんつって」

// <0163> \{河南子}「笑えたっしょ」
<0163> \{Kanako}「笑えたっしょ」

// <0164> \{鷹文}「冗談でデータ消されて、笑えるかよぉーっ!」
<0164> \{Takafumi}「冗談でデータ消されて、笑えるかよぉーっ!」

// <0165> 甚大な犠牲者一名。
<0165> 甚大な犠牲者一名。

// <0166> \{朋也}「やな予感がするから、やめろ」
<0166> \{Tomoya}「やな予感がするから、やめろ」

// <0167> \{河南子}「えー、盛り上がるのに」
<0167> \{Kanako}「えー、盛り上がるのに」

// <0168> \{朋也}「勉強の邪魔だ、雑誌でも読んでろ」
<0168> \{Tomoya}「勉強の邪魔だ、雑誌でも読んでろ」

// <0169> \{河南子}「えー」
<0169> \{Kanako}「えー」

// <0170> どん、と低い音が窓の向こうから聞こえた。
<0170> どん、と低い音が窓の向こうから聞こえた。

// <0171> それは合図だ。
<0171> それは合図だ。

// <0172> そのことを俺と、智代だけは知っている。
<0172> そのことを俺と、智代だけは知っている。

// <0173> \{智代}「朋也、ともを頼む」
<0173> \{Tomoyo}「朋也、ともを頼む」

// <0174> \{朋也}「いくのか…」
<0174> \{Tomoya}「いくのか…」

// <0175> ともを俺にひき渡した後、無言で頷く。
<0175> ともを俺にひき渡した後、無言で頷く。

// <0176> \{朋也}「そうか…」
<0176> \{Tomoya}「そうか…」

// <0177> \{鷹文}「出かけるの?」
<0177> \{Takafumi}「出かけるの?」

// <0178> \{河南子}「あ、だったらアイス買ってきてー」
<0178> \{Kanako}「あ、だったらアイス買ってきてー」

// <0179> \{智代}「ああ、みんなのぶん買ってくる」
<0179> \{Tomoyo}「ああ、みんなのぶん買ってくる」

// <0180> 笑みを残して、智代は部屋を去る。
<0180> 笑みを残して、智代は部屋を去る。

// <0181> 俺には待つことしかできない。
<0181> 俺には待つことしかできない。

// <0182> 無力さを痛感する。
<0182> 無力さを痛感する。

// <0183> 今頃は、智代は果たし合いを受けているのだろう。
<0183> 今頃は、智代は果たし合いを受けているのだろう。

// <0184> 大丈夫だろうか…。
<0184> 大丈夫だろうか…。

// <0185> 俺の知っている智代なら、大丈夫だ。
<0185> 俺の知っている智代なら、大丈夫だ。

// <0186> 俺が心配してるのは、自分のことだ。
<0186> 俺が心配してるのは、自分のことだ。

// <0187> こんな俺でも、この先大丈夫なのだろうか。
<0187> こんな俺でも、この先大丈夫なのだろうか。

// <0188> 今、手をこまねいてじっとしている自分に不安を覚える。
<0188> 今、手をこまねいてじっとしている自分に不安を覚える。

// <0189> もし、智代がダメになった時…
<0189> もし、智代がダメになった時…

// <0190> その時に、俺はちゃんと支えているだろうか。
<0190> その時に、俺はちゃんと支えているだろうか。

// <0191> 0時を回った。
<0191> 0時を回った。

// <0192> 鷹文は帰宅し、ともと河南子は床に就いた。
<0192> 鷹文は帰宅し、ともと河南子は床に就いた。

// <0193> なんでも遅すぎる…。
<0193> なんでも遅すぎる…。

// <0194> ただ待つばかりの自分に怒りを覚え、俺は衝動的に部屋を飛び出した。
<0194> ただ待つばかりの自分に怒りを覚え、俺は衝動的に部屋を飛び出した。

// <0195> アパートの門にもたれて智代が立ちつくしていた。
<0195> アパートの門にもたれて智代が立ちつくしていた。

// <0196> \{朋也}「智代…」
<0196> \{Tomoya}「智代…」

// <0197> \{智代}「ああ…朋也か…」
<0197> \{Tomoyo}「ああ…朋也か…」

// <0198> 寄っていって、その体を抱きしめる。
<0198> 寄っていって、その体を抱きしめる。

// <0199> \{朋也}「心配した…」
<0199> \{Tomoya}「心配した…」

// <0200> \{智代}「悪かった…」
<0200> \{Tomoyo}「悪かった…」

// <0201> \{智代}「私は大丈夫だ…」
<0201> \{Tomoyo}「私は大丈夫だ…」

// <0202> \{智代}「ただ、生傷が多いから…みんなを驚かせてしまうと思って…なかなか入っていけなかった…」
<0202> \{Tomoyo}「ただ、生傷が多いから…みんなを驚かせてしまうと思って…なかなか入っていけなかった…」

// <0203> \{智代}「アイスももう溶けてしまった…」
<0203> \{Tomoyo}「アイスももう溶けてしまった…」

// <0204> その手には、コンビニの袋。
<0204> その手には、コンビニの袋。

// <0205> \{智代}「約束したのに、みんなに悪いことした…」
<0205> \{Tomoyo}「約束したのに、みんなに悪いことした…」

// <0206> 泣けた。
<0206> 泣けた。

// <0207> なにをしてたんだ、俺は…。
<0207> なにをしてたんだ、俺は…。

// <0208> 彼女がこんなに傷ついてるのに…。
<0208> 彼女がこんなに傷ついてるのに…。

// <0209> \{智代}「ぜんぶ終わった。もう大丈夫だ…」
<0209> \{Tomoyo}「ぜんぶ終わった。もう大丈夫だ…」

// <0210> \{朋也}「………」
<0210> \{Tomoya}「………」

// <0211> \{智代}「朋也…?」
<0211> \{Tomoyo}「朋也…?」

// <0212> 泣き顔を見られまいと、ずっと抱きしめたままでいた。
<0212> 泣き顔を見られまいと、ずっと抱きしめたままでいた。

// <0213> \{朋也}「鷹文、そろそろ帰れよ、な」
<0213> \{Tomoya}「鷹文、そろそろ帰れよ、な」

// <0214> \{鷹文}「なんかあからさまに、発言が不審だよ…」
<0214> \{Takafumi}「なんかあからさまに、発言が不審だよ…」

// <0215> \{鷹文}「また送ってくよ、とか言って、ついてくるつもりなんじゃないの?」
<0215> \{Takafumi}「また送ってくよ、とか言って、ついてくるつもりなんじゃないの?」

// <0216> \{鷹文}「ま、言われなくても帰るけどさ、もう遅いし」
<0216> \{Takafumi}「ま、言われなくても帰るけどさ、もう遅いし」

// <0217> 言って、パソコンの電源を落とし、立ち上がる。
<0217> 言って、パソコンの電源を落とし、立ち上がる。

// <0218> \{朋也}「あ、送ってくよ」
<0218> \{Tomoya}「あ、送ってくよ」

// <0219> \{鷹文}「うわ、捻りなしっ」
<0219> \{Takafumi}「うわ、捻りなしっ」

// <0220> もう、捻るのも面倒だ。
<0220> もう、捻るのも面倒だ。

// <0221> \{朋也}「先、風呂入ってろな」
<0221> \{Tomoya}「先、風呂入ってろな」

// <0222> 怪訝な顔の智代に強制するように言って、鷹文の背中を押す。
<0222> 怪訝な顔の智代に強制するように言って、鷹文の背中を押す。

// <0223> \{鷹文}「なにやってんのさ」
<0223> \{Takafumi}「なにやってんのさ」

// <0224> \{朋也}「喧嘩」
<0224> \{Tomoya}「喧嘩」

// <0225> \{鷹文}「まじで?」
<0225> \{Takafumi}「まじで?」

// <0226> \{朋也}「かっこいいだろ」
<0226> \{Tomoya}「かっこいいだろ」

// <0227> \{鷹文}「今時、恥ずかしいだけだよ」
<0227> \{Takafumi}「今時、恥ずかしいだけだよ」

// <0228> \{朋也}「そういうな、へこむから」
<0228> \{Tomoya}「そういうな、へこむから」

// <0229> \{影}「あ、来た来た」
<0229> \{Shadow}「あ、来た来た」

// <0230> 黒い影が立ち上がる。
<0230> 黒い影が立ち上がる。

// <0231> \{朋也}「あのさ、最初に言っておくけど…」
<0231> \{Tomoya}「あのさ、最初に言っておくけど…」

// <0232> \{朋也}「こうしておまえらの言うルールに従って、付き合ってんだからさ…」
<0232> \{Tomoya}「こうしておまえらの言うルールに従って、付き合ってんだからさ…」

// <0233> \{朋也}「弱いモノに手出しすんなよ…」
<0233> \{Tomoya}「弱いモノに手出しすんなよ…」

// <0234> 手加減しろってか?という声があがり、失笑が聞こえてくる。
<0234> 手加減しろってか?という声があがり、失笑が聞こえてくる。

// <0235> …ルールなんて、戯れ言だ。それがよくわかった。
<0235> …ルールなんて、戯れ言だ。それがよくわかった。

// <0236> \{朋也}「で、今日はあんた?」
<0236> \{Tomoya}「で、今日はあんた?」

// <0237> いや、こっち、と闇を指さす。
<0237> いや、こっち、と闇を指さす。

// <0238> 木の陰がのそりと動いた。
<0238> 木の陰がのそりと動いた。

// <0239> げんなりするような大男。
<0239> げんなりするような大男。

// <0240> 頭が俺よりひとつ分近くでかい。
<0240> 頭が俺よりひとつ分近くでかい。

// <0241> \{朋也}(絶対勝てねーよ…)
<0241> \{Tomoya}(絶対勝てねーよ…)

// <0242> 心の中はすでに諦めモード。
<0242> 心の中はすでに諦めモード。

// <0243> \{朋也}(智代だったら、こんな岩みたいなのも瞬殺なのかなぁ…)
<0243> \{Tomoya}(智代だったら、こんな岩みたいなのも瞬殺なのかなぁ…)

// <0244> \{朋也}(男、やめてー…)
<0244> \{Tomoya}(男、やめてー…)

// <0245> \{朋也}(なんか漫画みたいに、特別な力、発現しねーかな…)
<0245> \{Tomoya}(なんか漫画みたいに、特別な力、発現しねーかな…)

// <0246> \{朋也}(気、とかさ…)
<0246> \{Tomoya}(気、とかさ…)

// <0247> びゅんっ!
<0247> びゅんっ!

// <0248> 始まっていた。条件反射で最初の攻撃をかわしていた。
<0248> 始まっていた。条件反射で最初の攻撃をかわしていた。

// <0249> さらにかわす。大振りな攻撃のおかげでよけることに集中すれば当たりそうもない。
<0249> さらにかわす。大振りな攻撃のおかげでよけることに集中すれば当たりそうもない。

// <0250> \{声}「どうしたー! 全然当たってねえじゃん!」
<0250> \{Voice}「どうしたー! 全然当たってねえじゃん!」

// <0251> ギャラリーからはやし立てる声が上がった。
<0251> ギャラリーからはやし立てる声が上がった。

// <0252> 男はさらに腕を大振りにする。
<0252> 男はさらに腕を大振りにする。

// <0253> \{朋也}(当たらないけど、こんなの一発もらったら、終わりじゃんっ…)
<0253> \{Tomoya}(当たらないけど、こんなの一発もらったら、終わりじゃんっ…)

// <0254> \{声}「そこで左ショートフック!」
<0254> \{Voice}「そこで左ショートフック!」

// <0255> \{朋也}(…女の声?)
<0255> \{Tomoya}(…女の声?)

// <0256> 言葉通りの左ショートフック。これは避けようもない。
<0256> 言葉通りの左ショートフック。これは避けようもない。

// <0257> どがっ! \shake{3}
<0257> どがっ! \shake{3}

// <0258> ずざーっ!
<0258> ずざーっ!

// <0259> 上下がわからなくなるぐらい、吹っ飛ぶ。
<0259> 上下がわからなくなるぐらい、吹っ飛ぶ。

// <0260> \{河南子}「負けてんじゃん」
<0260> \{Kanako}「負けてんじゃん」

// <0261> 河南子が仰向けに転がる俺を見下ろしていた。
<0261> 河南子が仰向けに転がる俺を見下ろしていた。

// <0262> \{朋也}「今のショートフックって声…おまえ?」
<0262> \{Tomoya}「今のショートフックって声…おまえ?」

// <0263> \{河南子}「はぁ」
<0263> \{Kanako}「はぁ」

// <0264> \{朋也}「どっちの味方だよっ」
<0264> \{Tomoya}「どっちの味方だよっ」

// <0265> \{河南子}「あー、思わず」
<0265> \{Kanako}「あー、思わず」

// <0266> \{河南子}「だって、あんた負けたほうが話が早いじゃん」
<0266> \{Kanako}「だって、あんた負けたほうが話が早いじゃん」

// <0267> \{河南子}「あんなの先輩にかかれば、瞬殺っすよ」
<0267> \{Kanako}「あんなの先輩にかかれば、瞬殺っすよ」

// <0268> \{朋也}「だーかーらー、その間にともが狙われたらどうすんだよっ」
<0268> \{Tomoya}「だーかーらー、その間にともが狙われたらどうすんだよっ」

// <0269> \{河南子}「あの人ならどーにかするよ」
<0269> \{Kanako}「あの人ならどーにかするよ」

// <0270> \{河南子}「最強だもん」
<0270> \{Kanako}「最強だもん」

// <0271> \{朋也}「………」
<0271> \{Tomoya}「………」

// <0272> \{朋也}「…あのさ」
<0272> \{Tomoya}「…あのさ」

// <0273> \{朋也}「ともは弱いんだよ」
<0273> \{Tomoya}「ともは弱いんだよ」

// <0274> \{朋也}「首つかまれたら、それで終わりなんだよ…」
<0274> \{Tomoya}「首つかまれたら、それで終わりなんだよ…」

// <0275> \{朋也}「だからさ…」
<0275> \{Tomoya}「だからさ…」

// <0276> \{朋也}「一番安心できるとこ、置いてんだよ…」
<0276> \{Tomoya}「一番安心できるとこ、置いてんだよ…」

// <0277> \{河南子}「にしては、こっちが不安すぎますが」
<0277> \{Kanako}「にしては、こっちが不安すぎますが」

// <0278> \{朋也}「まだ終わってねぇよっ」
<0278> \{Tomoya}「まだ終わってねぇよっ」

// <0279> 俺は怒りに任せて立ち上がる。
<0279> 俺は怒りに任せて立ち上がる。

// <0280> そいつ、誰だよっ!?という苛立ちの声が飛んでくる。
<0280> そいつ、誰だよっ!?という苛立ちの声が飛んでくる。

// <0281> \{河南子}「観客。そっちもたくさんいるからいいだろー、ぼけ」
<0281> \{Kanako}「観客。そっちもたくさんいるからいいだろー、ぼけ」

// <0282> \{朋也}「おまえ、命知らずな」
<0282> \{Tomoya}「おまえ、命知らずな」

// <0283> \{河南子}「まー、場慣れしてるんで」
<0283> \{Kanako}「まー、場慣れしてるんで」

// <0284> \{朋也}「じゃあ、大人しく見てろ、いいな」
<0284> \{Tomoya}「じゃあ、大人しく見てろ、いいな」

// <0285> 再び、俺は大男に立ち向かう。
<0285> 再び、俺は大男に立ち向かう。

// <0286> 大男は両腕を広げ、俺を捕まえにかかろうとした。
<0286> 大男は両腕を広げ、俺を捕まえにかかろうとした。

// <0287> すばやく横にかわし、その勢いを利用して脇腹に蹴りを入れる。
<0287> すばやく横にかわし、その勢いを利用して脇腹に蹴りを入れる。

// <0288> ずどっ。
<0288> ずどっ。

// <0289> 心地よい衝撃が足首にかかる。いい手ごたえだ。
<0289> 心地よい衝撃が足首にかかる。いい手ごたえだ。

// <0290> が…
<0290> が…

// <0291> ぶんっ。
<0291> ぶんっ。

// <0292> 相手は喰らいながらも、パンチを繰り出してきた。
<0292> 相手は喰らいながらも、パンチを繰り出してきた。

// <0293> 体勢が悪いので、避ける間もなく。
<0293> 体勢が悪いので、避ける間もなく。

// <0294> 気づくと、また、寝転がっていた。
<0294> 気づくと、また、寝転がっていた。

// <0295> \{河南子}「…起きない」
<0295> \{Kanako}「…起きない」

// <0296> \{河南子}「こりゃ負けか」
<0296> \{Kanako}「こりゃ負けか」

// <0297> \{河南子}「おーい、起きないとキスするぞー」
<0297> \{Kanako}「おーい、起きないとキスするぞー」

// <0298> がばり!
<0298> がばり!

// <0299> \{河南子}「そんなに嫌か、おい」
<0299> \{Kanako}「そんなに嫌か、おい」

// <0300> \{朋也}「つー…気失ってたぞ、俺…」
<0300> \{Tomoya}「つー…気失ってたぞ、俺…」

// <0301> また起きあがる。相手のギャラリーからどよめきが。
<0301> また起きあがる。相手のギャラリーからどよめきが。

// <0302> 歩ける。行こう。
<0302> 歩ける。行こう。

// <0303> \{河南子}「まだやるの?」
<0303> \{Kanako}「まだやるの?」

// <0304> やる。
<0304> やる。

// <0305> 先程と同じように、男は俺を捕まえようと正面から迫ってくる。
<0305> 先程と同じように、男は俺を捕まえようと正面から迫ってくる。

// <0306> よく見れば顔面はがら空きだ。
<0306> よく見れば顔面はがら空きだ。

// <0307> タイミングを合わせ、渾身のストレートをお見舞いしてやることにする。
<0307> タイミングを合わせ、渾身のストレートをお見舞いしてやることにする。

// <0308> \{声}「おりゃーーーーっ」
<0308> \{Voice}「おりゃーーーーっ」

// <0309> 相手の雄叫びに被せ、左が顔に食い込んだのをしっかりと見た。
<0309> 相手の雄叫びに被せ、左が顔に食い込んだのをしっかりと見た。

// <0310> 景色が揺れたかと思うと、また空とアスファルトが回転。
<0310> 景色が揺れたかと思うと、また空とアスファルトが回転。

// <0311> そして体中に響く衝撃。
<0311> そして体中に響く衝撃。

// <0312> 俺はぼろ雑巾のように、男の体当たりで吹っ飛ばされていた。
<0312> 俺はぼろ雑巾のように、男の体当たりで吹っ飛ばされていた。

// <0313> \{河南子}「おーい」
<0313> \{Kanako}「おーい」

// <0314> \{朋也}「………」
<0314> \{Tomoya}「………」

// <0315> \{河南子}「あー、ダメだな、こりゃ。もう起きらんないね」
<0315> \{Kanako}「あー、ダメだな、こりゃ。もう起きらんないね」

// <0316> \{河南子}「顔面にツバ落としてみよ」
<0316> \{Kanako}「顔面にツバ落としてみよ」

// <0317> がばり!
<0317> がばり!

// <0318> \{朋也}「うおぉぉぉーーっ!」
<0318> \{Tomoya}「うおぉぉぉーーっ!」

// <0319> 無理に起きたら全身に激痛が走って、もんどり打つ。
<0319> 無理に起きたら全身に激痛が走って、もんどり打つ。

// <0320> \{河南子}「無理すんなよ」
<0320> \{Kanako}「無理すんなよ」

// <0321> \{朋也}「誰が無理させたんだよっ」
<0321> \{Tomoya}「誰が無理させたんだよっ」

// <0322> \{朋也}「あー、いててっ…」
<0322> \{Tomoya}「あー、いててっ…」

// <0323> 立ち上がるが、全身がバラバラになりそうなほど痛い。
<0323> 立ち上がるが、全身がバラバラになりそうなほど痛い。

// <0324> だが、相手も若干でもダメージは受けているのか、その場から動かなかった。
<0324> だが、相手も若干でもダメージは受けているのか、その場から動かなかった。

// <0325> \{朋也}「カウンター入ったってのに、なんで俺が吹っ飛ばされんだよ…」
<0325> \{Tomoya}「カウンター入ったってのに、なんで俺が吹っ飛ばされんだよ…」

// <0326> \{河南子}「体重差」
<0326> \{Kanako}「体重差」

// <0327> \{朋也}「だろうな…」
<0327> \{Tomoya}「だろうな…」

// <0328> \{河南子}「はよ、いけよ」
<0328> \{Kanako}「はよ、いけよ」

// <0329> どすっ!\shake{2}と腰を蹴られ、俺はまたその場に崩れ落ちる。
<0329> どすっ!\shake{2}と腰を蹴られ、俺はまたその場に崩れ落ちる。

// <0330> \{河南子}「うおっ!? あたしがとどめを刺しちまった!」
<0330> \{Kanako}「うおっ!? あたしがとどめを刺しちまった!」

// <0331> \{朋也}「おまえ、どっちの味方だよ…」
<0331> \{Tomoya}「おまえ、どっちの味方だよ…」

// <0332> \{河南子}「いや、チャンスだったからさ」
<0332> \{Kanako}「いや、チャンスだったからさ」

// <0333> \{朋也}「おまえのおかげで、ピンチだよ…」
<0333> \{Tomoya}「おまえのおかげで、ピンチだよ…」

// <0334> \{河南子}「うわ、ほら、向こうさん動き出しますよ」
<0334> \{Kanako}「うわ、ほら、向こうさん動き出しますよ」

// <0335> 俺も慌てて、立ち上がる。
<0335> 俺も慌てて、立ち上がる。

// <0336> 相手は首を二、三回ひねり、不敵にも笑うと向かってきた。
<0336> 相手は首を二、三回ひねり、不敵にも笑うと向かってきた。

// <0337> \{河南子}「あーあ」
<0337> \{Kanako}「あーあ」

// <0338> \{朋也}「誰のせいだよ…」
<0338> \{Tomoya}「誰のせいだよ…」

// <0339> 俺は長期戦を覚悟し、足を踏み出した。
<0339> 俺は長期戦を覚悟し、足を踏み出した。

// <0340> 膝裏に入った蹴りが、鈍い音を立てる。
<0340> 膝裏に入った蹴りが、鈍い音を立てる。

// <0341> 何発目の蹴りかわからない。
<0341> 何発目の蹴りかわからない。

// <0342> しつこいぐらいに相手の膝を蹴り続けたため、動きが格段に鈍くなっていた。
<0342> しつこいぐらいに相手の膝を蹴り続けたため、動きが格段に鈍くなっていた。

// <0343> けど、顔面に何発ももらってるせいか左目が腫れ、距離感が取りにくかった。
<0343> けど、顔面に何発ももらってるせいか左目が腫れ、距離感が取りにくかった。

// <0344> シャツは汗で貼りつき、喘ぐような息しかできていない。
<0344> シャツは汗で貼りつき、喘ぐような息しかできていない。

// <0345> 膝も腰もずいぶん前から悲鳴をあげていた。
<0345> 膝も腰もずいぶん前から悲鳴をあげていた。

// <0346> \{男}「…こ、……このや…ろう」
<0346> \{Man}「…こ、……このや…ろう」

// <0347> 片足を引きずりながら、男が迫ってきた。
<0347> 片足を引きずりながら、男が迫ってきた。

// <0348> 避けたくても足が動かない。
<0348> 避けたくても足が動かない。

// <0349> 攻撃が髪をかすめる。
<0349> 攻撃が髪をかすめる。

// <0350> かろうじて上半身を反らせ、避けた。
<0350> かろうじて上半身を反らせ、避けた。

// <0351> が、バランスを崩し、後ろへとよろけた。
<0351> が、バランスを崩し、後ろへとよろけた。

// <0352> その隙に、相手は俺の胸倉を掴み、体重をかけるようにして押しつぶそうとした。
<0352> その隙に、相手は俺の胸倉を掴み、体重をかけるようにして押しつぶそうとした。

// <0353> とっさの判断で俺は相手の足に自分の足を絡める。
<0353> とっさの判断で俺は相手の足に自分の足を絡める。

// <0354> そのままお互い地面へと落ちた。
<0354> そのままお互い地面へと落ちた。

// <0355> 全身に広がる衝撃。
<0355> 全身に広がる衝撃。

// <0356> 今までの痛みなのか、倒れたダメージなのかまったくわからない。
<0356> 今までの痛みなのか、倒れたダメージなのかまったくわからない。

// <0357> 俺は次の攻撃を避けるために、必死の思いで転がりながら相手から逃れた。
<0357> 俺は次の攻撃を避けるために、必死の思いで転がりながら相手から逃れた。

// <0358> \{朋也}(立たないと…)
<0358> \{Tomoya}(立たないと…)

// <0359> 起き上がるだけでも苦痛だ。
<0359> 起き上がるだけでも苦痛だ。

// <0360> \{朋也}「はぁっ…」
<0360> \{Tomoya}「はぁっ…」

// <0361> 何とか構えると、相手はまだ起きていなかった。
<0361> 何とか構えると、相手はまだ起きていなかった。

// <0362> ただ、大きな体を仰向けに寝かせ、荒い息をしているだけだった。
<0362> ただ、大きな体を仰向けに寝かせ、荒い息をしているだけだった。

// <0363> \{河南子}「おー勝っちゃった」
<0363> \{Kanako}「おー勝っちゃった」

// <0364> ぱらぱらと拍手が起きていた。
<0364> ぱらぱらと拍手が起きていた。

// <0365> \{影}「すごいな、勝ち目ないと思ってたんだが」
<0365> \{Shadow}「すごいな、勝ち目ないと思ってたんだが」

// <0366> \{影}「こいつも、悔しいだろうなあ、打倒坂上で乗り込んできたってのに、その男にのされるなんてな」
<0366> \{Shadow}「こいつも、悔しいだろうなあ、打倒坂上で乗り込んできたってのに、その男にのされるなんてな」

// <0367> \{朋也}「はぁ…」
<0367> \{Tomoya}「はぁ…」

// <0368> 俺はその場に崩れ落ちる。
<0368> 俺はその場に崩れ落ちる。

// <0369> \{男}「あんた、根性あるな」
<0369> \{Man}「あんた、根性あるな」

// <0370> \{声}「いい勝負だったよ」
<0370> \{Voice}「いい勝負だったよ」

// <0371> 口々に俺に声をかけては、影が消えていく。
<0371> 口々に俺に声をかけては、影が消えていく。

// <0372> 今日は終わり、ということだ。
<0372> 今日は終わり、ということだ。

// <0373> \{男}「どうする? 一緒に病院行くか?」
<0373> \{Man}「どうする? 一緒に病院行くか?」

// <0374> 最後に残った何人かが、大男を抱えて言った。
<0374> 最後に残った何人かが、大男を抱えて言った。

// <0375> \{朋也}「いや…いい。ちょっと休んでから帰るよ」
<0375> \{Tomoya}「いや…いい。ちょっと休んでから帰るよ」

// <0376> \{男}「そうか。じゃ、また明日な」
<0376> \{Man}「そうか。じゃ、また明日な」

// <0377> 明日…。
<0377> 明日…。

// <0378> まだ明日があるのか。
<0378> まだ明日があるのか。

// <0379> \{朋也}「いつまで続くんだ、これ」
<0379> \{Tomoya}「いつまで続くんだ、これ」

// <0380> \{河南子}「さぁ」
<0380> \{Kanako}「さぁ」

// <0381> \{朋也}「明日で終わってくれればいいけどな…」
<0381> \{Tomoya}「明日で終わってくれればいいけどな…」

// <0382> \{河南子}「で、今日も同じ嘘つくの?」
<0382> \{Kanako}「で、今日も同じ嘘つくの?」

// <0383> 俺は迷いもなく頷く。
<0383> 俺は迷いもなく頷く。

// <0384> \{智代}「朋也…」
<0384> \{Tomoyo}「朋也…」

// <0385> \{智代}「どうしてまたそんなに顔を腫らせてるんだ…教えてくれ…」
<0385> \{Tomoyo}「どうしてまたそんなに顔を腫らせてるんだ…教えてくれ…」

// <0386> \{朋也}「ああ…実は…」
<0386> \{Tomoya}「ああ…実は…」

// <0387> \{朋也}「こいつにボコられました」
<0387> \{Tomoya}「こいつにボコられました」

// <0388> \{河南子}「ボコりましたが、何か」
<0388> \{Kanako}「ボコりましたが、何か」

// <0389> \{智代}「またかっ、また何かあったのか」
<0389> \{Tomoyo}「またかっ、また何かあったのか」

// <0390> \{河南子}「ああ、聞いてくれっ」
<0390> \{Kanako}「ああ、聞いてくれっ」

// <0391> \{河南子}「いきなりアレをくわえさせられたんだ、ひどいっしょ」
<0391> \{Kanako}「いきなりアレをくわえさせられたんだ、ひどいっしょ」

// <0392> \{智代}「そ、それで…どうしたんだっ」
<0392> \{Tomoyo}「そ、それで…どうしたんだっ」

// <0393> \{河南子}「え?」
<0393> \{Kanako}「え?」

// <0394> \{河南子}「食べた」
<0394> \{Kanako}「食べた」

// <0395> \{智代}「ええっ!? 食べたのかっ!?」
<0395> \{Tomoyo}「ええっ!? 食べたのかっ!?」

// <0396> \{河南子}「うん」
<0396> \{Kanako}「うん」

// <0397> \{智代}「そ…それは…どうなったんだ?」
<0397> \{Tomoyo}「そ…それは…どうなったんだ?」

// <0398> \{河南子}「え?」
<0398> \{Kanako}「え?」

// <0399> \{河南子}「また生えてくんじゃない?」
<0399> \{Kanako}「また生えてくんじゃない?」

// <0400> \{智代}「はえっ!?」
<0400> \{Tomoyo}「はえっ!?」

// <0401> \{智代}「………」
<0401> \{Tomoyo}「………」

// <0402> 引いた目で見られる俺…。
<0402> 引いた目で見られる俺…。

// <0403> \{河南子}「ほら、とも、今日も美味しいアイスおみやげだよーっ」
<0403> \{Kanako}「ほら、とも、今日も美味しいアイスおみやげだよーっ」

// <0404> \{とも}「きょうも!? わーー!!」
<0404> \{Tomo}「きょうも!? わーー!!」

// <0405> \{智代}「………」
<0405> \{Tomoyo}「………」

// <0406> …いや、生えないし、ちゃんとあるから。
<0406> …いや、生えないし、ちゃんとあるから。

// <0407> 布団に潜り込む。すでにともの寝息が聞こえている。
<0407> 布団に潜り込む。すでにともの寝息が聞こえている。

// <0408> \{智代}「どうして喧嘩なんてしてるんだ…」
<0408> \{Tomoyo}「どうして喧嘩なんてしてるんだ…」

// <0409> 耳元で声。
<0409> 耳元で声。

// <0410> \{朋也}「河南子に…」
<0410> \{Tomoya}「河南子に…」

// <0411> \{智代}「嘘はつくな…」
<0411> \{Tomoyo}「嘘はつくな…」

// <0412> \{智代}「相手は河南子じゃないだろ」
<0412> \{Tomoyo}「相手は河南子じゃないだろ」

// <0413> やっぱりばれていた。
<0413> やっぱりばれていた。

// <0414> …まあ、俺の思いつきなんて、所詮浅はかなものだ。
<0414> …まあ、俺の思いつきなんて、所詮浅はかなものだ。

// <0415> ただ、すべてを教えると、智代まで巻き込みかねない。
<0415> ただ、すべてを教えると、智代まで巻き込みかねない。

// <0416> 智代の正義心を考えるなら、絶対に首を突っ込んでくるはずだ。
<0416> 智代の正義心を考えるなら、絶対に首を突っ込んでくるはずだ。

// <0417> \{朋也}「ただ知りたいだけだよ…」
<0417> \{Tomoya}「ただ知りたいだけだよ…」

// <0418> \{朋也}「もし、この先、もっと大きな困難が訪れたとき…」
<0418> \{Tomoya}「もし、この先、もっと大きな困難が訪れたとき…」

// <0419> \{朋也}「それでも、支えていけるか…」
<0419> \{Tomoya}「それでも、支えていけるか…」

// <0420> だから、それだけを伝える。
<0420> だから、それだけを伝える。

// <0421> \{智代}「おまえなら、そうしてくれる…それは信じている」
<0421> \{Tomoyo}「おまえなら、そうしてくれる…それは信じている」

// <0422> \{朋也}「俺もそう信じたいよ…」
<0422> \{Tomoya}「俺もそう信じたいよ…」

// <0423> \{朋也}「でも、言うのと、実際できるかどうかは別だろ…」
<0423> \{Tomoya}「でも、言うのと、実際できるかどうかは別だろ…」

// <0424> \{智代}「………」
<0424> \{Tomoyo}「………」

// <0425> \{智代}「わかった…」
<0425> \{Tomoyo}「わかった…」

// <0426> \{朋也}「だから今はさ…とものそばにいてくれ」
<0426> \{Tomoya}「だから今はさ…とものそばにいてくれ」

// <0427> \{智代}「うん」
<0427> \{Tomoyo}「うん」

Script Chart

June July August After Other
1st SEEN0701 SEEN0801 SEEN5000 SEEN7910
2nd SEEN0702 SEEN5001 SEEN7920
3rd SEEN0803 SEEN5002 SEEN7930
4th SEEN0804 SEEN5003 SEEN7940
6th SEEN0806 BAD END SEEN5004 SEEN7950
SEEN1806 SEEN5005
7th SEEN0707 SEEN0807 SEEN5006
8th SEEN0708 SEEN0808 SEEN5007
9th SEEN0709 SEEN0809 SEEN5010
10th SEEN0710 SEEN1710 SEEN0810 SEEN5011
11th SEEN0711 SEEN0811 SEEN1811 SEEN2811
12th SEEN0712 SEEN0812
13th SEEN0713 SEEN0813 SEEN1813 SEEN2813
14th SEEN0714 SEEN1714 SEEN0814 BAD END BAD END BAD END BAD END
SEEN1814 SEEN2814 SEEN3814 SEEN4814
15th SEEN0715 SEEN1715 SEEN0815
16th SEEN0716 SEEN1716 SEEN0816
17th SEEN0717 SEEN0817
18th SEEN0818
19th SEEN0819
20th BAD END SEEN0820
SEEN0720
21st SEEN0721 SEEN0821
22nd SEEN0722 SEEN0822
23rd SEEN0723 SEEN0823
24th SEEN0724
25th SEEN0725
26th SEEN0726
27th SEEN0727
28th SEEN0628 SEEN0728
29th SEEN0629 SEEN0729
30th SEEN0630
BAD END
SEEN0744