// Resources for SEEN1813.TXT
// #character '朋也'
#character 'Tomoya'
// #character '鷹文'
#character 'Takafumi'
// #character '智代'
#character 'Tomoyo'
// <0000> 何も解決しないまま、今日も泊めてもらうことになった。
<0000> 何も解決しないまま、今日も泊めてもらうことになった。
// <0001> このままずるずると何もしないで、休みが終わるのが恐かった。
<0001> このままずるずると何もしないで、休みが終わるのが恐かった。
// <0002> 焦りが俺をじっとされてくれない。
<0002> 焦りが俺をじっとされてくれない。
// <0003> 散歩と称して、山道を歩いていた。
<0003> 散歩と称して、山道を歩いていた。
// <0004> 鷹文が後ろから追いかけてくる。
<0004> 鷹文が後ろから追いかけてくる。
// <0005> \{朋也}「なんだよ」
<0005> \{Tomoya}「なんだよ」
// <0006> \{鷹文}「暗い顔してるからさ」
<0006> \{Takafumi}「暗い顔してるからさ」
// <0007> \{朋也}「そうか?」
<0007> \{Tomoya}「そうか?」
// <0008> 言われるまで気がつかなかった。
<0008> 言われるまで気がつかなかった。
// <0009> \{鷹文}「ねぇちゃんも心ここにあらずって感じだし」
<0009> \{Takafumi}「ねぇちゃんも心ここにあらずって感じだし」
// <0010> \{鷹文}「ここまできたのに、行き詰まっちゃったね」
<0010> \{Takafumi}「ここまできたのに、行き詰まっちゃったね」
// <0011> \{朋也}「結局何もできそうにないからな…」
<0011> \{Tomoya}「結局何もできそうにないからな…」
// <0012> 未来や希望なんてものが、この俺に作り出せるはずもなかった。
<0012> 未来や希望なんてものが、この俺に作り出せるはずもなかった。
// <0013> どこかの資産家か、お偉いさんならできたのかもしれないが、俺はしがない労働者だ。
<0013> どこかの資産家か、お偉いさんならできたのかもしれないが、俺はしがない労働者だ。
// <0014> できることといったら、壊れた掃除機や洗濯機を直すことぐらいだ。
<0014> できることといったら、壊れた掃除機や洗濯機を直すことぐらいだ。
// <0015> しばらく歩くと、ゴミの山へと辿り着いた。
<0015> しばらく歩くと、ゴミの山へと辿り着いた。
// <0016> 剥き出しの岩に腰掛け、仄かに見える村を眺める。
<0016> 剥き出しの岩に腰掛け、仄かに見える村を眺める。
// <0017> 畑は月光に照らされ、施設の街灯だけが浮かんで見えた。
<0017> 畑は月光に照らされ、施設の街灯だけが浮かんで見えた。
// <0018> それを眠くなるまで、ずっと見ていた。
<0018> それを眠くなるまで、ずっと見ていた。
// <0019> 8月13日(金)
<0019> August 13th (Fri)
// <0020> 翌日は、朝から部屋に籠もりきっていた。
<0020> 翌日は、朝から部屋に籠もりきっていた。
// <0021> \{智代}「朋也…」
<0021> \{Tomoyo}「朋也…」
// <0022> \{智代}「話を聞いてほしいんだ…」
<0022> \{Tomoyo}「話を聞いてほしいんだ…」
// <0023> \{智代}「とものことなんだが…」
<0023> \{Tomoyo}「とものことなんだが…」
// <0024> \{智代}「本当に…母親の元に戻すべきなんだろうか?」
<0024> \{Tomoyo}「本当に…母親の元に戻すべきなんだろうか?」
// <0025> ともの母親の話を聞いてから、智代はそのことだけをずっと考えていたのだろう。
<0025> ともの母親の話を聞いてから、智代はそのことだけをずっと考えていたのだろう。
// <0026> \{朋也}「戻すべきだろう」
<0026> \{Tomoya}「戻すべきだろう」
// <0027> \{智代}「そうなのだろうか…」
<0027> \{Tomoyo}「そうなのだろうか…」
// <0028> \{智代}「もしかしたら、それは短絡的かもしれないぞ…?」
<0028> \{Tomoyo}「もしかしたら、それは短絡的かもしれないぞ…?」
// <0029> 恐る恐るといった調子で言葉を紡ぐ。
<0029> 恐る恐るといった調子で言葉を紡ぐ。
// <0030> \{智代}「私はともの立場に立って考えてみたんだ」
<0030> \{Tomoyo}「私はともの立場に立って考えてみたんだ」
// <0031> \{智代}「ともは、母親に捨てられたと思っている」
<0031> \{Tomoyo}「ともは、母親に捨てられたと思っている」
// <0032> \{智代}「…それについて異論はないな?」
<0032> \{Tomoyo}「…それについて異論はないな?」
// <0033> \{朋也}「ああ、いいよ」
<0033> \{Tomoya}「ああ、いいよ」
// <0034> \{智代}「それを知ったあの日、ともは傷つき、泣きはらした」
<0034> \{Tomoyo}「それを知ったあの日、ともは傷つき、泣きはらした」
// <0035> \{智代}「私はずっとそばにいて…なぐさめた」
<0035> \{Tomoyo}「私はずっとそばにいて…なぐさめた」
// <0036> \{智代}「翌日からは泣かなかった」
<0036> \{Tomoyo}「翌日からは泣かなかった」
// <0037> \{智代}「ともは…その悲しみを乗り越えたんだ」
<0037> \{Tomoyo}「ともは…その悲しみを乗り越えたんだ」
// <0038> \{朋也}「乗り越えていない。今も、悲しんでるはずだ」
<0038> \{Tomoya}「乗り越えていない。今も、悲しんでるはずだ」
// <0039> \{智代}「そうか…朋也はそう考えてるんだな」
<0039> \{Tomoyo}「そうか…朋也はそう考えてるんだな」
// <0040> \{朋也}「ああ」
<0040> \{Tomoya}「ああ」
// <0041> \{智代}「まあ、悲しんでいたとしても、だ…」
<0041> \{Tomoyo}「まあ、悲しんでいたとしても、だ…」
// <0042> \{智代}「私という母がいる」
<0042> \{Tomoyo}「私という母がいる」
// <0043> \{智代}「その悲しみも癒えていくと思うんだ」
<0043> \{Tomoyo}「その悲しみも癒えていくと思うんだ」
// <0044> \{朋也}「かもな」
<0044> \{Tomoya}「かもな」
// <0045> \{智代}「うん、きっとそうなる」
<0045> \{Tomoyo}「うん、きっとそうなる」
// <0046> \{智代}「自信はあるんだ」
<0046> \{Tomoyo}「自信はあるんだ」
// <0047> \{智代}「でも、仮に今、ここでともを母親に引き渡したことを考えてみてほしい」
<0047> \{Tomoyo}「でも、仮に今、ここでともを母親に引き渡したことを考えてみてほしい」
// <0048> \{智代}「ともの立場で」
<0048> \{Tomoyo}「ともの立場で」
// <0049> \{智代}「どうなる…?」
<0049> \{Tomoyo}「どうなる…?」
// <0050> \{朋也}「母親との暮らしが取り戻せる」
<0050> \{Tomoya}「母親との暮らしが取り戻せる」
// <0051> \{智代}「その通りだ」
<0051> \{Tomoyo}「その通りだ」
// <0052> \{智代}「しかし…その時間は悲しいことに長くは続かないんだ」
<0052> \{Tomoyo}「しかし…その時間は悲しいことに長くは続かないんだ」
// <0053> \{朋也}「ああ」
<0053> \{Tomoya}「ああ」
// <0054> \{智代}「ともは目の前で母親をなくすことになる」
<0054> \{Tomoyo}「ともは目の前で母親をなくすことになる」
// <0055> \{智代}「この悲しみはどれほどのものだろう…」
<0055> \{Tomoyo}「この悲しみはどれほどのものだろう…」
// <0056> \{智代}「一度失って、そして戻ってきたと思ったのに、また失うんだぞ…」
<0056> \{Tomoyo}「一度失って、そして戻ってきたと思ったのに、また失うんだぞ…」
// <0057> \{智代}「まるで、神様のたちの悪いいたずらのようじゃないか」
<0057> \{Tomoyo}「まるで、神様のたちの悪いいたずらのようじゃないか」
// <0058> \{智代}「悲しみは一度きりでいいじゃないか」
<0058> \{Tomoyo}「悲しみは一度きりでいいじゃないか」
// <0059> \{智代}「なにもそんなにたくさん課さなくてもいいじゃないか」
<0059> \{Tomoyo}「なにもそんなにたくさん課さなくてもいいじゃないか」
// <0060> \{智代}「あんなに小さいのに…」
<0060> \{Tomoyo}「あんなに小さいのに…」
// <0061> \{智代}「そんな不幸に矢継ぎ早に見舞われるなんて…かわいそうじゃないか」
<0061> \{Tomoyo}「そんな不幸に矢継ぎ早に見舞われるなんて…かわいそうじゃないか」
// <0062> \{智代}「もういいじゃないか…もう…」
<0062> \{Tomoyo}「もういいじゃないか…もう…」
// <0063> \{智代}「そもそも、私たちだって知らないまま終わるはずだった…」
<0063> \{Tomoyo}「そもそも、私たちだって知らないまま終わるはずだった…」
// <0064> \{智代}「あんなにも必死に…この場所を突きとめてしまったから…」
<0064> \{Tomoyo}「あんなにも必死に…この場所を突きとめてしまったから…」
// <0065> \{智代}「だから、朋也…」
<0065> \{Tomoyo}「だから、朋也…」
// <0066> \{智代}「私たちも、このまま…」
<0066> \{Tomoyo}「私たちも、このまま…」
// <0067> \{智代}「この場所を去ろう」
<0067> \{Tomoyo}「この場所を去ろう」
// <0068> それが、智代が導き出した答え。
<0068> それが、智代が導き出した答え。
// <0069> けど、俺は…\p違う。
<0069> けど、俺は…\p違う。
// <0070> \{朋也}「俺は…」
<0070> \{Tomoya}「俺は…」
// <0071> \{朋也}「それでも、ふたりは一緒にいるべきだと思う」
<0071> \{Tomoya}「それでも、ふたりは一緒にいるべきだと思う」
// <0072> \{智代}「どうして…」
<0072> \{Tomoyo}「どうして…」
// <0073> \{朋也}「親子だから」
<0073> \{Tomoya}「親子だから」
// <0074> \{朋也}「そうとしか言えない」
<0074> \{Tomoya}「そうとしか言えない」
// <0075> \{智代}「そうか…」
<0075> \{Tomoyo}「そうか…」
// <0076> 智代は黙ったままの鷹文に目を向ける。
<0076> 智代は黙ったままの鷹文に目を向ける。
// <0077> \{智代}「鷹文はどう思う?」
<0077> \{Tomoyo}「鷹文はどう思う?」
// <0078> \{鷹文}「僕にはねぇちゃんが、ともを手放すことを恐れてるように思えるよ」
<0078> \{Takafumi}「僕にはねぇちゃんが、ともを手放すことを恐れてるように思えるよ」
// <0079> \{智代}「どういうことだ、それは…」
<0079> \{Tomoyo}「どういうことだ、それは…」
// <0080> \{智代}「私はちゃんと説明したはずだぞ…」
<0080> \{Tomoyo}「私はちゃんと説明したはずだぞ…」
// <0081> \{鷹文}「もっともな理由をようやく探し当てた、とばかりにね」
<0081> \{Takafumi}「もっともな理由をようやく探し当てた、とばかりにね」
// <0082> \{智代}「違う…」
<0082> \{Tomoyo}「違う…」
// <0083> \{智代}「言いがかりだ…」
<0083> \{Tomoyo}「言いがかりだ…」
// <0084> \{智代}「おまえたちこそ、どうなんだ」
<0084> \{Tomoyo}「おまえたちこそ、どうなんだ」
// <0085> \{智代}「とものことをちゃんと考えているのか…」
<0085> \{Tomoyo}「とものことをちゃんと考えているのか…」
// <0086> \{智代}「それでいて、そんなことを言うのか…」
<0086> \{Tomoyo}「それでいて、そんなことを言うのか…」
// <0087> \{智代}「おまえたちのほうがおかしい…」
<0087> \{Tomoyo}「おまえたちのほうがおかしい…」
// <0088> \{智代}「絶対におかしい…」
<0088> \{Tomoyo}「絶対におかしい…」
// <0089> 智代は半ば錯乱状態にあった。
<0089> 智代は半ば錯乱状態にあった。
// <0090> \{智代}「いつからおまえたちは、そんなひどい人間になったんだ…」
<0090> \{Tomoyo}「いつからおまえたちは、そんなひどい人間になったんだ…」
// <0091> 智代には、俺と鷹文が、ともを見殺しにするような非道な人間に見えているのだろう。
<0091> 智代には、俺と鷹文が、ともを見殺しにするような非道な人間に見えているのだろう。
// <0092> ある一面ではそうかもしれない。
<0092> ある一面ではそうかもしれない。
// <0093> でも、その考え方は一方的すぎる。
<0093> でも、その考え方は一方的すぎる。
// <0094> それを諭したかったが、俺にはうまく説明できそうもなかった。
<0094> それを諭したかったが、俺にはうまく説明できそうもなかった。
// <0095> \{鷹文}「これからどうするの?」
<0095> \{Takafumi}「これからどうするの?」
// <0096> 智代がお手洗いに姿を消すと、鷹文が訊いてきた。
<0096> 智代がお手洗いに姿を消すと、鷹文が訊いてきた。
// <0097> \{朋也}「思いつかない…」
<0097> \{Tomoya}「思いつかない…」
// <0098> うーん、と鷹文が唸る。
<0098> うーん、と鷹文が唸る。
// <0099> \{朋也}「悪いが出てくる。おまえは智代のことを見ててやってくれないか」
<0099> \{Tomoya}「悪いが出てくる。おまえは智代のことを見ててやってくれないか」
// <0100> \{鷹文}「うん…」
<0100> \{Takafumi}「うん…」