// Resources for SEEN2814.TXT
// #character '管理人'
#character 'Manager'
// #character '朋也'
#character 'Tomoya'
// #character '智代'
#character 'Tomoyo'
// <0000> \{管理人}「暇でしょ?」
<0000> \{Manager}「暇でしょ?」
// <0001> \{朋也}「そりゃ確かに暇なんだが…」
<0001> \{Tomoya}「そりゃ確かに暇なんだが…」
// <0002> 毎日ぶらぶらしていれば、否定もできない。
<0002> 毎日ぶらぶらしていれば、否定もできない。
// <0003> \{管理人}「一宿一飯の恩義って言うじゃない」
<0003> \{Manager}「一宿一飯の恩義って言うじゃない」
// <0004> \{朋也}「わかったよ。直せばいいんだろ?」
<0004> \{Tomoya}「わかったよ。直せばいいんだろ?」
// <0005> 持ち込まれたのはどれも旧式の電化製品ばかり。
<0005> 持ち込まれたのはどれも旧式の電化製品ばかり。
// <0006> \{管理人}「これと、これなんか使えると助かるのよね」
<0006> \{Manager}「これと、これなんか使えると助かるのよね」
// <0007> 管理人はぽんぽんと、机に置かれた家電を示した。
<0007> 管理人はぽんぽんと、机に置かれた家電を示した。
// <0008> 外見は綺麗なミキサーとビデオデッキ。
<0008> 外見は綺麗なミキサーとビデオデッキ。
// <0009> だが、どちらもスイッチを入れても反応がまったくない。
<0009> だが、どちらもスイッチを入れても反応がまったくない。
// <0010> 使えるかどうかわからないが、ひとつずつ試してみることにした。
<0010> 使えるかどうかわからないが、ひとつずつ試してみることにした。
// <0011> \{朋也}「しかし、交換部品のないところで直すのって、ものすごく面倒だな…」
<0011> \{Tomoya}「しかし、交換部品のないところで直すのって、ものすごく面倒だな…」
// <0012> 作業場の倍以上の時間をかけて故障部分を見つけても、そこからが問題だ。
<0012> 作業場の倍以上の時間をかけて故障部分を見つけても、そこからが問題だ。
// <0013> 生きている定格のヒューズやコンデンサを、もう使わない基板から探してこなければならない。
<0013> 生きている定格のヒューズやコンデンサを、もう使わない基板から探してこなければならない。
// <0014> ヒューズは見れば使えるかどうかわかるが、コンデンサは曲者だ。
<0014> ヒューズは見れば使えるかどうかわかるが、コンデンサは曲者だ。
// <0015> 液漏れや肥大してれば壊れてるのがわかるが、一見して大丈夫そうでも使えなかったりする。
<0015> 液漏れや肥大してれば壊れてるのがわかるが、一見して大丈夫そうでも使えなかったりする。
// <0016> また、交換部品を探すのにもゴミの山まで行かないといけない。
<0016> また、交換部品を探すのにもゴミの山まで行かないといけない。
// <0017> それも結構手間な作業だ。
<0017> それも結構手間な作業だ。
// <0018> \{朋也}「…あー、これもダメか」
<0018> \{Tomoya}「…あー、これもダメか」
// <0019> 俺はぼやきながら、作業に没頭した…。
<0019> 俺はぼやきながら、作業に没頭した…。
// <0020> \{智代}「何をやってるんだ、朋也は」
<0020> \{Tomoyo}「何をやってるんだ、朋也は」
// <0021> \{朋也}「ん? 修理」
<0021> \{Tomoya}「ん? 修理」
// <0022> \{智代}「こんなところに来てまで仕事しなくてもいいだろうに」
<0022> \{Tomoyo}「こんなところに来てまで仕事しなくてもいいだろうに」
// <0023> \{朋也}「仕事じゃない、ボランティア」
<0023> \{Tomoya}「仕事じゃない、ボランティア」
// <0024> \{朋也}「おまえにはないのか、そんな気持ちは」
<0024> \{Tomoya}「おまえにはないのか、そんな気持ちは」
// <0025> \{智代}「もちろん、ある。よし、手伝おう」
<0025> \{Tomoyo}「もちろん、ある。よし、手伝おう」
// <0026> \{智代}「何をすればいいかな」
<0026> \{Tomoyo}「何をすればいいかな」
// <0027> そうしてふたり、ここにいる間の時間を献身的に過ごした。
<0027> そうしてふたり、ここにいる間の時間を献身的に過ごした。
// <0028> バッドエンド
<0028> バッドエンド
// <0029> そして今日、俺の夏休みが終わる。
<0029> そして今日、俺の夏休みが終わる。
// <0030> 智代は笑顔で、管理人に向けて手を振っている。
<0030> 智代は笑顔で、管理人に向けて手を振っている。
// <0031> その姿は、なぜか勝ち誇っているように俺には映った。
<0031> その姿は、なぜか勝ち誇っているように俺には映った。
// <0032> 結局この旅はなんだったのだろう?
<0032> 結局この旅はなんだったのだろう?
// <0033> 最初はともを手放した理由を知ることだった。
<0033> 最初はともを手放した理由を知ることだった。
// <0034> 目的は果たした。
<0034> 目的は果たした。
// <0035> けど、納得はいかないままだ。
<0035> けど、納得はいかないままだ。
// <0036> けど、どうすることもできなかった。
<0036> けど、どうすることもできなかった。
// <0037> けど、けど…
<0037> けど、けど…
// <0038> ぐるぐるとあてのない自問自答を続けた。
<0038> ぐるぐるとあてのない自問自答を続けた。
// <0039> 夜もふけた電車の窓は、遠くに民家の明かりがいくつか見えるだけだ。
<0039> 夜もふけた電車の窓は、遠くに民家の明かりがいくつか見えるだけだ。
// <0040> 乗客のいないローカル線の車内に、智代の明るい声だけが響く。
<0040> 乗客のいないローカル線の車内に、智代の明るい声だけが響く。
// <0041> せっかくの夏休みだから、ともと一緒に海へいこう。
<0041> せっかくの夏休みだから、ともと一緒に海へいこう。
// <0042> 花火もしよう、きっと面白いぞ。
<0042> 花火もしよう、きっと面白いぞ。
// <0043> 楽しいこと全部してあげよう。
<0043> 楽しいこと全部してあげよう。
// <0044> その都度、俺は相づちを打つ。
<0044> その都度、俺は相づちを打つ。
// <0045> ああ、そうだな。
<0045> ああ、そうだな。
// <0046> きっと面白いな。
<0046> きっと面白いな。
// <0047> 半ば機械的に頷きながら、ぼんやりと考えた。
<0047> 半ば機械的に頷きながら、ぼんやりと考えた。
// <0048> ともに母親はいない。
<0048> ともに母親はいない。
// <0049> もう、いなくなった。
<0049> もう、いなくなった。
// <0050> だけど、血の繋がりだけが親子ではない。
<0050> だけど、血の繋がりだけが親子ではない。
// <0051> たとえ血が繋がっていても、俺と親父のようになることもある。
<0051> たとえ血が繋がっていても、俺と親父のようになることもある。
// <0052> 俺のそばに智代がいて、真ん中に笑顔のともがいる。
<0052> 俺のそばに智代がいて、真ん中に笑顔のともがいる。
// <0053> 素晴らしく微笑ましい家庭じゃないか。
<0053> 素晴らしく微笑ましい家庭じゃないか。
// <0054> 生活は厳しいが、親子三人、慎ましく暮らせる。
<0054> 生活は厳しいが、親子三人、慎ましく暮らせる。
// <0055> そう、納得できないことなんか、ない。
<0055> そう、納得できないことなんか、ない。
// <0056> なのに…
<0056> なのに…
// <0057> \{智代}「どうした?」
<0057> \{Tomoyo}「どうした?」
// <0058> \{朋也}「ん?」
<0058> \{Tomoya}「ん?」
// <0059> \{智代}「さっきから、ずっと黙ってるぞ」
<0059> \{Tomoyo}「さっきから、ずっと黙ってるぞ」
// <0060> \{朋也}「ああ、これからのことを考えてたんだ」
<0060> \{Tomoya}「ああ、これからのことを考えてたんだ」
// <0061> \{智代}「どんなことだ?」
<0061> \{Tomoyo}「どんなことだ?」
// <0062> \{朋也}「ずっと一緒にいれば、幸せになれるかなって」
<0062> \{Tomoya}「ずっと一緒にいれば、幸せになれるかなって」
// <0063> \{智代}「当然だ。幸せになる。それは間違いない」
<0063> \{Tomoyo}「当然だ。幸せになる。それは間違いない」
// <0064> 智代とは、一度実家に帰るため駅で別れた。
<0064> 智代とは、一度実家に帰るため駅で別れた。
// <0065> 高地とは違い、粘り気を持った夜風に吹かれながら一歩ずつ歩く。
<0065> 高地とは違い、粘り気を持った夜風に吹かれながら一歩ずつ歩く。
// <0066> 今頃、鷹文と河南子が部屋で大騒ぎしてるだろう。
<0066> 今頃、鷹文と河南子が部屋で大騒ぎしてるだろう。
// <0067> 久しぶりに見るともは元気してるだろうか。
<0067> 久しぶりに見るともは元気してるだろうか。
// <0068> ふと、出掛けの言葉を思い出す。
<0068> ふと、出掛けの言葉を思い出す。
// <0069> 土産を買ってなかった。
<0069> 土産を買ってなかった。
// <0070> 仕方なく俺は、近所のスーパーでアイスを買い求めた。
<0070> 仕方なく俺は、近所のスーパーでアイスを買い求めた。
// <0071> 夏休みが終わり、河南子が帰っていった。
<0071> 夏休みが終わり、河南子が帰っていった。
// <0072> 鷹文もあまり姿を見せなくなった。もう一度陸上を始める、とだけ聞いた。
<0072> 鷹文もあまり姿を見せなくなった。もう一度陸上を始める、とだけ聞いた。
// <0073> 土曜の昼下がり、ぼんやりとしている。
<0073> 土曜の昼下がり、ぼんやりとしている。
// <0074> ともは智代の背中にもたれ、絵本を読んでいる。
<0074> ともは智代の背中にもたれ、絵本を読んでいる。
// <0075> 智代の膝を枕代わりにして、テレビを見ていている。そこで、ふと気づいた。
<0075> 智代の膝を枕代わりにして、テレビを見ていている。そこで、ふと気づいた。
// <0076> \{朋也}「…なあ、今日学校はどうしたんだ?」
<0076> \{Tomoya}「…なあ、今日学校はどうしたんだ?」
// <0077> 土曜日は午前中だけ授業のはずだ。今年から変わったのだろうか。
<0077> 土曜日は午前中だけ授業のはずだ。今年から変わったのだろうか。
// <0078> \{智代}「もういいんだ」
<0078> \{Tomoyo}「もういいんだ」
// <0079> \{智代}「私に学校はもう必要ない」
<0079> \{Tomoyo}「私に学校はもう必要ない」
// <0080> \{朋也}「行かないのか?」
<0080> \{Tomoya}「行かないのか?」
// <0081> \{智代}「…朋也がいけと言うなら行くが」
<0081> \{Tomoyo}「…朋也がいけと言うなら行くが」
// <0082> さわり、さわり、と頬を撫でられる。
<0082> さわり、さわり、と頬を撫でられる。
// <0083> \{智代}「折角の休みだ」
<0083> \{Tomoyo}「折角の休みだ」
// <0084> \{智代}「一緒にいてもいいだろう?」
<0084> \{Tomoyo}「一緒にいてもいいだろう?」
// <0085> 無邪気に微笑んでいる。
<0085> 無邪気に微笑んでいる。
// <0086> \{朋也}「…そうだな」
<0086> \{Tomoya}「…そうだな」
// <0087> 頷くしかない。
<0087> 頷くしかない。
// <0088> そのまま、智代は嬉しそうに、俺の上へと圧しかかってきた。
<0088> そのまま、智代は嬉しそうに、俺の上へと圧しかかってきた。
// <0089> 少しずつ生活が変わっていった。
<0089> 少しずつ生活が変わっていった。
// <0090> 智代が学校に行かなくなった。
<0090> 智代が学校に行かなくなった。
// <0091> 押入れに、智代の私服と下着が入るようになった。
<0091> 押入れに、智代の私服と下着が入るようになった。
// <0092> ドライヤーが新しいものに変わり、物干し場には女性ものが掛かるようになった。
<0092> ドライヤーが新しいものに変わり、物干し場には女性ものが掛かるようになった。
// <0093> 一泊が二泊になり、やがて言い方も『帰る』から『行ってくる』になった。
<0093> 一泊が二泊になり、やがて言い方も『帰る』から『行ってくる』になった。
// <0094> そして、自分から誘うようになった。
<0094> そして、自分から誘うようになった。
// <0095> 最初は昼飯を弁当から家で食べるようにしたとき。
<0095> 最初は昼飯を弁当から家で食べるようにしたとき。
// <0096> ともが幼稚園に行った朝のうちに。
<0096> ともが幼稚園に行った朝のうちに。
// <0097> おつかいを頼み、その間に。
<0097> おつかいを頼み、その間に。
// <0098> 狭い風呂へ三人で入り、ともを先に上がらせて。
<0098> 狭い風呂へ三人で入り、ともを先に上がらせて。
// <0099> 次第に緩く、浅ましく。
<0099> 次第に緩く、浅ましく。
// <0100> \{智代}「ん…」
<0100> \{Tomoyo}「ん…」
// <0101> \{智代}「んふっ…」
<0101> \{Tomoyo}「んふっ…」
// <0102> 智代が声を出さずにセックスすることを覚えた。
<0102> 智代が声を出さずにセックスすることを覚えた。
// <0103> 俺はその体を貪る。
<0103> 俺はその体を貪る。
// <0104> 汗まみれになって。
<0104> 汗まみれになって。
// <0105> カーテンの隙間から漏れる月明かり。
<0105> カーテンの隙間から漏れる月明かり。
// <0106> それに照らし出されているのは智代の白い腕。
<0106> それに照らし出されているのは智代の白い腕。
// <0107> その先は、つややかなな黒髪を撫でていた。
<0107> その先は、つややかなな黒髪を撫でていた。
// <0108> その持ち主は小さく寝息を立てている。
<0108> その持ち主は小さく寝息を立てている。
// <0109> どこまでもおだやかに。
<0109> どこまでもおだやかに。
// <0110> その隣で俺たちは貪る。
<0110> その隣で俺たちは貪る。
// <0111> どこまでも卑しく。
<0111> どこまでも卑しく。