White Album 2/Script/2016
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Editing
Translation Notes
Text
Speaker | Text | Comment | |||
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Line # | JP | EN | JP | EN | |
1 | 『レポート提出完了』 | ||||
2 | 『今日はこのままゼミの打ち上げ。 とは言っても四年やM2の先輩たちには、 クリスマスも正月もないんだろうけど』 | ||||
3 | 『それでも、こっちは晴れて冬休み入り。 年末年始は、今やってる二つのバイトに加えて、 短期のバイトも入れるか検討中』 | ||||
4 | 『…これじゃ俺も、クリスマスも正月もないな』 | ||||
5 | 『けど、今のうちに貯金しておかないと。 来年は就職活動でバイトもままならないし』 | ||||
6 | 『雪菜は冬休み、どこか行く? 北海道でスキーとか、逆に沖縄とか。 それとも思い切って海外?』 | ||||
7 | 『…どうかな? そういうのあまり想像できないな。 雪菜って見かけによらず出不精だもんな』 | ||||
8 | 雪菜 | Setsuna | 「クリスマスも正月もない、か。 …そんな完璧にガードしなくてもなぁ」 | ||
9 | 雪菜 | Setsuna | 「せっかくの冬休みなのになぁ」 | ||
10 | 雪菜 | Setsuna | 「はぁぁぁぁ~」 | ||
11 | 雪菜 | Setsuna | 「…あ」 | ||
12 | 千晶 | Chiaki | 「4時35分… まさかの5分遅刻…」 | ||
13 | 千晶 | Chiaki | 「このあたしを待たせるとは、 い~い身分になったものよねぇ」 | ||
14 | ??? | ??? | 「晶子さん?」 | ||
15 | 千晶 | Chiaki | 「…って、あたしが時間通りに来てるのがおかしいのか。 慣れないことするもんじゃないよねぇ」 | ||
16 | ??? | ??? | 「晶子さん…?」 | ||
17 | 千晶 | Chiaki | 「あ~、お腹空いた。 ちっくしょ~、打ち上げでは食べてやる。 あいつのおごりで食べまくってやる~」 | ||
18 | 雪菜 | Setsuna | 「あ、あの~」 | ||
19 | 千晶 | Chiaki | 「え…あ!」 | ||
20 | 雪菜 | Setsuna | 「晶子さん…ですよね? 長瀬晶子さん」 | ||
21 | 千晶 | Chiaki | 「しょうこ…?」 | ||
22 | 雪菜 | Setsuna | 「わたしです、ほら、小木曽雪菜。 覚えてませんか? この前のパーティで」 | ||
23 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
24 | 雪菜 | Setsuna | 「あれ、もしかして人違い…?」 | ||
25 | 千晶 | Chiaki | 「っ! あ、あ~! そうそう晶子! あたしってばそんな名前だったわ~!」 | ||
26 | 雪菜 | Setsuna | 「よ、よかったぁ… 恥ずかしい勘違いしたかと思っちゃった」 | ||
27 | 千晶 | Chiaki | 「ど、ど、どしたの? 今日はもう終わり? それじゃお疲れ…」 | ||
28 | 雪菜 | Setsuna | 「うん、これで今年の講義は全部終わり。 めでたくもあり、めでたくもない冬休みの始まり」 | ||
29 | 千晶 | Chiaki | 「そ、そう…それわよかった… えっと、その…」 | ||
30 | 雪菜 | Setsuna | 「どうしたの? この寒いのに、すごい汗」 | ||
31 | 千晶 | Chiaki | [F16「よくぞ遅刻してくれた春希…」] | ||
32 | 雪菜 | Setsuna | 「ほら、ハンカチどうぞ。 もしかして体調でも悪い? 医務室まで付き添おうか?」 | ||
33 | 千晶 | Chiaki | [F16「さすがのあたしにだって、 ][F16ごまかしきれる状況と、 ][F16そうでない状況があるのよねぇ…」] | ||
34 | 雪菜 | Setsuna | 「え? なに?」 | ||
35 | 千晶 | Chiaki | 「ちょっと疲れたから一刻も早くここから離れない!? …じゃなくて、再会を祝してお茶でも飲みに行かない?」 | ||
36 | ……… | .........
| |||
37 | 春希 | Haruki | 「はぁ、はぁ、はぁ…っ、 やべ、10分遅刻」 | ||
38 | 春希 | Haruki | 「って、あれ?」 | ||
39 | 春希 | Haruki | 「…やっぱり時間通りに来やがらねぇ」 | ||
40 | 女子店員 | Female Clerk | 「お待たせしました。 ストロベリーパフェとマンゴーパフェです。 …ごゆっくりどうぞ」 | ||
41 | 千晶 | Chiaki | 「わ~い、来た来た」 | ||
42 | 雪菜 | Setsuna | 「勢いで頼んじゃったけど、 夕飯前にパフェなんていいのかなぁ」 | ||
43 | 千晶 | Chiaki | 「い~のい~の。 年に一度の忘年会なんだから」 | ||
44 | 雪菜 | Setsuna | 「勢いで頼んじゃったけど、 忘年会にパフェってのも…ま、いいかぁ」 | ||
45 | 千晶 | Chiaki | 「それじゃ、今年もお疲れさまでした。 かんぱ~い」 | ||
46 | 雪菜 | Setsuna | 「わ、こぼれるこぼれる!」 | ||
47 | ……… | .........
| |||
48 | 雪菜 | Setsuna | 「わ、おいし」 | ||
49 | 千晶 | Chiaki | 「やっぱり寒い冬は あったかいお店の中でパフェだよね~」 | ||
50 | 雪菜 | Setsuna | 「コタツに入ってバニラアイスに通じるものがあるよね」 | ||
51 | 千晶 | Chiaki | 「あたしあれ大好き。雪菜は?」 | ||
52 | 雪菜 | Setsuna | 「お徳用パックはいつも常備してるよ。 たまに弟が全部食べちゃって喧嘩になるけどね」 | ||
53 | 千晶 | Chiaki | 「っ…なんて微笑ましい姉弟」 | ||
54 | 雪菜 | Setsuna | 「みんなそうやって笑うけどさぁ、 当事者たちにとっては死活問題なのよね。 『買って来ればいい』ってものじゃないし」 | ||
55 | 千晶 | Chiaki | 「あ~、わかるわかる。 今、コタツの中でこそが食べたい瞬間で、 ちょっと経つとどうでもよくなっちゃうんだよね~」 | ||
56 | 雪菜 | Setsuna | 「そうそう、寒い中コンビニに出かけてもさ、 結局買って帰るのは肉まんだったりして」 | ||
57 | 千晶 | Chiaki | 「当たり前じゃんねぇ。外寒いんだから」 | ||
58 | 雪菜 | Setsuna | 「二つ買ってきてさ、 もちろん全部自分が食べるの。弟の前で」 | ||
59 | 千晶 | Chiaki | 「…気持ちはわかるけど、根暗な復讐だ」 | ||
60 | 雪菜 | Setsuna | 「ん~、やっぱりおいし。 お店に入ってすぐに出てきても駄目なんだよね。 だいぶ体があったまった頃に出てきてもらわないと」 | ||
61 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
62 | 雪菜 | Setsuna | 「? どしたの? わたしの顔、クリームでもついてる?」 | ||
63 | 千晶 | Chiaki | 「結構明るくなったかなって。 この前会った時と比べて」 | ||
64 | 雪菜 | Setsuna | 「…そうかな? 別にそれほど変わらないと思うけどなぁ」 | ||
65 | 千晶 | Chiaki | 「上手いこと行ってるんだ、彼と」 | ||
66 | 雪菜 | Setsuna | 「変わってないって言ってるのに… そもそもこの前から彼がいるなんて一言も…」 | ||
67 | 千晶 | Chiaki | 「あたしはさぁ、もう大変よぉ。 クリスマス合わせで新しい男見つけようって、 手当たり次第コナかけてるんだけどさぁ」 | ||
68 | 雪菜 | Setsuna | 「勝手に納得して 次の話題に進まないで欲しいんだけどなぁ…」 | ||
69 | 携帯アナウンス | Cellphone Voicemail | 「この電話は、現在電波の届かないところにあるか、 電源をお切りになっています」 | ||
70 | 春希 | Haruki | 「何やってんだよあいつは…」 | ||
71 | 現在、5時30分。 | ||||
72 | 打ち上げの場所がわからないって泣き言言うから、 4時半にキャンパスで待ち合わせたのに、 45分過ぎても和泉は現れなかった。 | ||||
73 | まぁ、『いつものこと』と言われれば、 そんなような気がしないでもないかもしれないけど、 それで連絡も取れないなんてのは、俺の常識にはない。 | ||||
74 | 幹事 | Coordinator | 「え~と、それじゃ飲み物行き渡りましたか~?」 | ||
75 | 今までゼミの行事を、課題提出含め全部スルーしてきた 和泉が、初めて打ち上げに参加してもいいってんで、 結構方々に調整で走り回ったんだけどなぁ。 | ||||
76 | あの怠惰で気まぐれなじゃじゃ馬は、 やっぱり誰にも御しきれないんだろうか。 | ||||
77 | …言い方は悪いけど、 俺にだけは懐いてくれてると思ったんだけどな。 | ||||
78 | 幹事 | Coordinator | 「はい、それじゃ乾杯の前に、 荻島先生から一言お願いします」 | ||
79 | ……… | .........
| |||
80 | 千晶 | Chiaki | 「そいでさ、あたし言ってやったわけよ。 その『23時からってのはなんなの?』って」 | ||
81 | 雪菜 | Setsuna | 「お、遅いね」 | ||
82 | 千晶 | Chiaki | 「さっきまで『新入社員だから時間作れる』って 言ってたその口が何を言うかって」 | ||
83 | 雪菜 | Setsuna | 「そ、その日だけ忙しかったんじゃない?」 | ||
84 | 千晶 | Chiaki | 「『その日』がクリスマスイブじゃなかったら、 こっちも納得しないでもなかったんだけどねぇ…」 | ||
85 | 雪菜 | Setsuna | 「あ、あはは…」 | ||
86 | 千晶 | Chiaki | 「結局コイツも掛け持ちかよって、 また一瞬で醒めちゃって。 あたしの方から捨ててやったわよ、あんな男」 | ||
87 | 雪菜 | Setsuna | 「え、ええと…強い、のかな?」 | ||
88 | 千晶 | Chiaki | 「結局、今年のクリスマスもシングル確定~。 あ~あ、もう、やんなっちゃうなぁ」 | ||
89 | 雪菜 | Setsuna | 「…そんなに落ち込まないでよ。 今日で今年の嫌なこと、全部忘れるんでしょ?」 | ||
90 | 千晶 | Chiaki | 「そっか、忘年会だったね。 ま、こうして人に聞いてもらって ウサを晴らすってのもアリか」 | ||
91 | 雪菜 | Setsuna | 「うん、わたしならいつでも相手になるよ。 話聞くだけしかできないけど」 | ||
92 | 千晶 | Chiaki | 「うん、サンキュ。 でも、雪菜はいいよね~」 | ||
93 | 雪菜 | Setsuna | 「え? え? わたし? なんで?」 | ||
94 | 千晶 | Chiaki | 「だぁってぇ、彼と上手く行ってるみたいでさ~」 | ||
95 | 雪菜 | Setsuna | 「う、上手くなんて行ってないよぉ! …じゃなくて、彼がいるなんて言ってないよ…」 | ||
96 | 千晶 | Chiaki | 「ホント自分で気づいてないの? この前と比べて断然明るいよ、今日?」 | ||
97 | 雪菜 | Setsuna | 「…って、どれだけやさぐれてたのよ、この前のわたし」 | ||
98 | 千晶 | Chiaki | 「話してみ話してみ。 あたしは人の幸福話聞いても落ち込まないからさぁ。 …すでにどん底だからこれ以上落ちようがないし」 | ||
99 | 雪菜 | Setsuna | 「だからぁ、わたしはぁ… この前のことだって、たとえ話だって何度も」 | ||
100 | 千晶 | Chiaki | 「あ~たとえ話でいいから、何でもいいから」 | ||
101 | 雪菜 | Setsuna | 「人の言うこと頭から信じてないんだもんなぁ。 ………別に、一進一退だよ」 | ||
102 | 千晶 | Chiaki | 「一進一退?」 | ||
103 | 雪菜 | Setsuna | 「…一度大喧嘩して、 その後メールで仲直りした」 | ||
104 | 千晶 | Chiaki | 「なにそれ? 一進一退じゃん」 | ||
105 | 雪菜 | Setsuna | 「だからそう言ってるのに…」 | ||
106 | 千晶 | Chiaki | 「ん~…なんだかなぁ」 | ||
107 | 雪菜 | Setsuna | 「ご期待に添えなくて悪うございました。 …勝手に期待して勝手にがっかりされても困るよ」 | ||
108 | 千晶 | Chiaki | 「ん~、んぅぅぅ~」 | ||
109 | 雪菜 | Setsuna | 「でも、今は一進一退だけど… もしかしたら、今度こそは前に進めるかも」 | ||
110 | 千晶 | Chiaki | 「ん?」 | ||
111 | 雪菜 | Setsuna | 「…なんてね。 勝手に期待して、勝手にがっかりしても悲しいし、 そういうこと、あまり想像しないようにしてるけど」 | ||
112 | 千晶 | Chiaki | 「………ん~っ」 | ||
113 | 雪菜 | Setsuna | 「晶子さん?」 | ||
114 | 千晶 | Chiaki | 「っ! できた~! ほらほら見て見て! サクランボの茎、口の中で結べたよ?」 | ||
115 | 雪菜 | Setsuna | 「………よかったね」 | ||
116 | ……… | .........
| |||
117 | 男子学生1 | Male Student 1 | 「北原ぁ、和泉さんいつになったら来るんだよ~?」 | ||
118 | 春希 | Haruki | 「すいません…連絡つかなくて」 | ||
119 | 男子学生2 | Male Student 2 | 「彼女が来るってお前が言ったから、 今日帰省する予定をキャンセルして来たんだぞ~?」 | ||
120 | 春希 | Haruki | 「…とっとと帰省すりゃ良かったじゃないですか。 別にそんなもん、飲み会に来る理由にならないでしょ」 | ||
121 | 和泉の打ち上げ出席宣言と結局のすっぽかしは、 男子ゼミ生の間に、結構な波紋を呼んでいたらしい。 | ||||
122 | 男子学生1 | Male Student 1 | 「なに? やっぱお前ら付き合ってんだ? 彼女目当ての俺らウザい?」 | ||
123 | 春希 | Haruki | 「………俺とは関係なしに、 先輩たち、本当にあんなんがいいんですか?」 | ||
124 | 男子学生2 | Male Student 2 | 「だってさぁ…ウチのゼミの中じゃダントツじゃん?」 | ||
125 | 今の台詞は声を潜めて欲しかった。 …正面に女性軍がいるってのに。 | ||||
126 | 男子学生1 | Male Student 1 | 「可愛いと綺麗の中間くらいでさ、 あと、なんか雰囲気あるんだよな」 | ||
127 | ありますね…怠惰な雰囲気が。 | ||||
128 | 前半に関してはコメントしないけど。 | ||||
129 | 男子学生2 | Male Student 2 | 「結構フランクだし、話しやすいし。 一緒にいると楽しそうだって言うか」 | ||
130 | 男子学生1 | Male Student 1 | 「…まぁ、ずっと一緒にいる奴に言っても しょうがないけど」 | ||
131 | 春希 | Haruki | 「なら、先輩たちがあいつのレポート 手伝ってやれば良かったんじゃないですか」 | ||
132 | 好きで一緒にいた訳じゃないのに… | ||||
133 | 男子学生2 | Male Student 2 | 「いや、それはない。俺の卒業がない」 | ||
134 | 春希 | Haruki | 「…ごもっとも」 | ||
135 | まぁ、嫌なら一緒にいない選択肢も、 ないわけじゃなかったんだけどな。 | ||||
136 | 男子学生1 | Male Student 1 | 「それになぁ… もう完全に、北原と和泉は付き合ってるって、 ゼミの中じゃ共通認識になってたし」 | ||
137 | 男子学生2 | Male Student 2 | 「ウチらの代の女たちが聞いてみたら、 本人、ゲラゲラ笑って否定しなかったって」 | ||
138 | 春希 | Haruki | 「それ、全然答えになってないじゃないですか」 | ||
139 | いや… | ||||
140 | 小春 | Koharu | 『心当たりないですか? 大学とか、別のバイト先とかでも、 いつの間にか公認扱いされてたりとか』 | ||
141 | こういうのも、俺のせいなんだろうか。 | ||||
142 | 和泉が俺との関係を否定しないのも、 俺が和泉に曖昧な態度を示してしまうから… | ||||
143 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
144 | あいつとなら、そういう感覚を、 『お互い』抱かないだろうって信じてたけど。 | ||||
145 | そんな信頼、 本当に信頼と呼べる代物なんだろうか…? | ||||
146 | 男子学生1 | Male Student 1 | 「くっそ~、つまらん。 ほら、もっと飲め北原」 | ||
147 | 男子学生2 | Male Student 2 | 「次は俺の番な。 彼女が来ない分、お前が責任取るんだぞ?」 | ||
148 | 春希 | Haruki | 「…俺が救急車で運ばれたら、 先輩たちの就職に良くない影響が出ると思いますけど?」 | ||
149 | 男子学生1 | Male Student 1 | 「…お前、前から思ってたけどヤな奴だな」 | ||
150 | 春希 | Haruki | 「ええ。 女なんか寄ってくる訳ないですよ…」 | ||
151 | ……… | .........
| |||
152 | 雪菜 | Setsuna | 「ん…」 | ||
153 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
154 | 雪菜 | Setsuna | 「れろ…あむ…んむぅ…」 | ||
155 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
156 | 雪菜 | Setsuna | 「ん、あ、あ…はんっ」 | ||
157 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
158 | 雪菜 | Setsuna | 「ぷぁぁっ…駄目だぁ。 やっぱり晶子さんみたいにはいかないよ」 | ||
159 | 千晶 | Chiaki | 「…ごちそうさま」 | ||
160 | 雪菜 | Setsuna | 「どうしたらこんなの口の中で結べるようになるの? いっつも練習してたりする?」 | ||
161 | 千晶 | Chiaki | 「これって、 キスの上手さに通じるものがあるって言うけどね」 | ||
162 | 雪菜 | Setsuna | 「キ、キス…っ?」 | ||
163 | 千晶 | Chiaki | 「…なんてね。 口の中を自由に動かせればこんなの誰だってできるよ」 | ||
164 | 雪菜 | Setsuna | 「普通の人はそれができないんだけど…」 | ||
165 | 千晶 | Chiaki | 「にしても、堪能させていただきました」 | ||
166 | 雪菜 | Setsuna | 「? できなかったのに?」 | ||
167 | 千晶 | Chiaki | 「ううん、雪菜の色っぽい声と仕草をね」 | ||
168 | 雪菜 | Setsuna | 「………え?」 | ||
169 | 千晶 | Chiaki | 「あんなの目の前でやられたら、 男はたまったもんじゃないだろうねぇ」 | ||
170 | 雪菜 | Setsuna | 「な、な、なんのこと…?」 | ||
171 | 千晶 | Chiaki | 「小さくすぼめた唇からちろっと顔を出すピンクの舌とか、 少しだけ苦しそうで少しだけ恍惚とした吐息とか」 | ||
172 | 雪菜 | Setsuna | 「っ…い、いやらしいよ言い方が」 | ||
173 | 千晶 | Chiaki | 「雪菜の仕草の方がよっぽどいやらしいってば。 もう男を誘う要素満載。あたしと色気が違うよ色気が」 | ||
174 | 雪菜 | Setsuna | 「ちょ、ちょっとぉ、やめてよ。 そんなの意識してないってば!」 | ||
175 | 千晶 | Chiaki | [F16「ホント、すっごい勉強になる。 ][F16最高だよお師匠様」] | ||
176 | 雪菜 | Setsuna | 「え?」 | ||
177 | 千晶 | Chiaki | 「雪菜ってさ、会うたびに新発見があるんだよね。 ほんと、見てて面白い」 | ||
178 | 雪菜 | Setsuna | 「わたしには、晶子さんの方が面白いけどなぁ。 話をしてても、全然先が読めないし」 | ||
179 | 千晶 | Chiaki | 「普通の男ならコロっといくに決まってるのにね。 …雪菜の彼って不感症なんじゃないの?」 | ||
180 | 雪菜 | Setsuna | 「…またその話?」 | ||
181 | 千晶 | Chiaki | 「何度も言うけどさぁ、あたしが男だったら、 絶対に放っとかないってこんな理想のコ。 …ううん、雪菜となら女同士でも」 | ||
182 | 雪菜 | Setsuna | 「もう、晶子さんってばぁ」 | ||
183 | 千晶 | Chiaki | 「なぁ、今度のクリスマス、一緒に過ごさないか? 三つ星レストランでフレンチを堪能して、 レインボーブリッジで夜景を眺めて…それからっ」 | ||
184 | 雪菜 | Setsuna | 「逆だよ…感受性が豊かだったんだ」 | ||
185 | 千晶 | Chiaki | 「人のボケに付き合ってくれないし」 | ||
186 | 雪菜 | Setsuna | 「だから、いつまでも傷が癒えないんだ。 …わたしも自分も、許してくれないんだよ」 | ||
187 | 千晶 | Chiaki | 「え…」 | ||
188 | 雪菜 | Setsuna | 「…あ、いけない。 また変なこと喋っちゃった。 彼なんて、いないはずなのにね」 | ||
189 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
190 | 雪菜 | Setsuna | 「そろそろ帰らないと。 今日はありがとね、晶子さん」 | ||
191 | 千晶 | Chiaki | 「あのさ、雪菜」 | ||
192 | 雪菜 | Setsuna | 「ん?」 | ||
193 | 千晶 | Chiaki | 「何年も一人の男を想い続けるって、どういう感じ?」 | ||
194 | 雪菜 | Setsuna | 「………なんのこと?」 | ||
195 | 千晶 | Chiaki | 「心当たりがなければ、別にいいんだけどね。 ただ参考までに聞いてみただけだし」 | ||
196 | 雪菜 | Setsuna | 「………」 | "........."
| |
197 | 千晶 | Chiaki | 「…行こうか。 あたしおごるよ。二人の再会を祝して」 | ||
198 | 雪菜 | Setsuna | 「わたしも祝いたいから、ワリカンでどう?」 | ||
199 | 千晶 | Chiaki | 「…了解」 | ||
200 | 雪菜 | Setsuna | 「行こうか」 | ||
201 | 千晶 | Chiaki | 「うん」 | ||
202 | ……… | .........
| |||
203 | 雪菜 | Setsuna | 「どういう感じかと聞かれても、 そんなのわかんないよ」 | ||
204 | 千晶 | Chiaki | 「…え?」 | ||
205 | 雪菜 | Setsuna | 「だって、その意味を考えたこともないし、 ずっと想い続けようって、努力したこともないんだから。 …ただの結果論だよ」 | ||
206 | 千晶 | Chiaki | 「雪菜…」 | ||
207 | 雪菜 | Setsuna | 「あ、でもさ、逆の努力は何度でもしたかな。 …忘れるための、ね」 | ||
208 | 千晶 | Chiaki | 「…やっぱあんた、男にとって毒だよ」 | ||
209 | ……… | .........
| |||
210 | 春希 | Haruki | 「和泉! お前、今まで携帯も切って何やってたんだよ!」 | ||
211 | 千晶 | Chiaki | 「…ごめん。 ちょっと中てられてた、というか、 ものすごく濃い特訓してた」 | ||
212 | 春希 | Haruki | 「………言ってる意味がわからないんだが?」 | ||
213 | 千晶 | Chiaki | 「…わかんないだろうねぇ」 | ||
214 | 約束の待ち合わせ時間から2時間後… | ||||
215 | 大遅刻の末にかかってきた携帯からは、 なんだか妙に堪能したというか、 そんな、ちょっとぼうっとした和泉の声が聞こえてきた。 | ||||
216 | 春希 | Haruki | 「まぁいいや。場所わかるか? なんなら迎えに行ってもいいけど」 | ||
217 | 千晶 | Chiaki | 「まだやってんの? 打ち上げ」 | ||
218 | 春希 | Haruki | 「店は9時までって話だから、まだ大丈夫だ。 それにどうせ二次会とかもあるんだろうし」 | ||
219 | 千晶 | Chiaki | 「そっか…」 | ||
220 | 春希 | Haruki | 「どうした? もしかして、来れなくなった?」 | ||
221 | 千晶 | Chiaki | 「あ、ううん、 そういう訳じゃないんだけどさ…」 | ||
222 | 春希 | Haruki | 「…和泉?」 | ||
223 | 千晶 | Chiaki | 「ん~…どしよっかなぁ」 | ||
224 | やっぱり今の和泉の態度はどこか変だ。 | ||||
225 | 倦怠感というか、恍惚感というか、 いつも以上にだらりとした言動が、 いつも以上に俺のテンポとずれる。 | ||||
226 | 千晶 | Chiaki | 「春希はさぁ、どうすんの? 一次会終わったら」 | ||
227 | 春希 | Haruki | 「まぁ今日くらいは二次会付き合ってもいいけど」 | ||
228 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
229 | 春希 | Haruki | 「和泉?」 | ||
230 | 千晶 | Chiaki | 「そっち、みんないるんだよねぇ?」 | ||
231 | 春希 | Haruki | 「打ち上げなんだから当たり前だろ。 いつも来ないのはお前くらいだ」 | ||
232 | やっぱ変だ。 | ||||
233 | いつもはテンポはずれるんだけど、 会話の流れはきちんと掴んでて、 そこがまた心地良くさせてくれる奴なのに。 | ||||
234 | 今日は空気を読んでないというか、 俺を相手にしていないというか… | ||||
235 | 千晶 | Chiaki | 「春希さぁ」 | ||
236 | 春希 | Haruki | 「なんだよ?」 | ||
237 | 千晶 | Chiaki | 「抜けて来れない?」 | ||
238 | 春希 | Haruki | 「意味がわからん」 | ||
239 | 千晶 | Chiaki | 「二次会、二人きりでやんない? …って意味なんだけど」 | ||
240 | 春希 | Haruki | 「…意味がわからん」 | ||
241 | 千晶 | Chiaki | 「駄目かなぁ。 会いたいんだけどなぁ、今すぐ」 | ||
242 | 春希 | Haruki | 「っ…だったら今すぐこっちに来いよ。 みんな待ってるんだぞ?」 | ||
243 | 千晶 | Chiaki | 「春希、空気読めてない」 | ||
244 | ほら、空気読めてない。 | ||||
245 | 春希 | Haruki | 「それはお前だ。 なに急に訳のわからんワガママ言ってやがる」 | ||
246 | でも、俺を相手にしていないって方の推測は、 これは大はずれ…なんだろうか? | ||||
247 | 千晶 | Chiaki | 「どうしても駄目? 今でなくちゃいけないんだけど」 | ||
248 | 春希 | Haruki | 「何がだよ? 何言ってるんだ、お前?」 | ||
249 | 『二人きりになりたい』って… 別に、そんな言葉に動揺するような関係じゃない。 | ||||
250 | この一月、何度も部屋に上がり込んできた。 | ||||
251 | 付き合っていないくせに、 何時間も、何十時間も二人きりでいた。 | ||||
252 | それなのに… | ||||
253 | 千晶 | Chiaki | 「ね? いいじゃん。 鉄は熱いうちに打てって言うじゃん…」 | ||
254 | 春希 | Haruki | 「だから、俺にわかるように説明しろ」 | ||
255 | なんで今日に限って、 和泉も、俺も、妙にこだわるんだろう。 | ||||
256 | 1.やっぱりこっち来いよ | Choice | |||
257 | 2.今からそっち行くから | Choice | |||
258 | 春希 | Haruki | 「先輩たち、和泉と飲みたがってるぞ」 | ||
259 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
260 | 和泉がこだわる理由は結局よくわからないけど、 俺が和泉の誘いを断る理由には、 なんとなく心当たりがあった。 | ||||
261 | 春希 | Haruki | 「教授とだって、まともに話したことないだろ? あと一年以上付き合うんだからさ、 そろそろ顔出しといた方がいいんじゃないか?」 | ||
262 | 最近、和泉と上手に付き合えなくなりかけてる。 | ||||
263 | いや、関係的には今まで以上に良好なんだけど、 だからこそ、踏み外してしまいそうというか。 | ||||
264 | 春希 | Haruki | 「俺と飲む機会なんて、 これからだっていくらでもあるし」 | ||
265 | 和泉が『女』になりかけてる。 | ||||
266 | …いや、もしかしたらあっちは変わってないのに、 俺の方がそう感じるようになってしまってるのかも。 | ||||
267 | 千晶 | Chiaki | [F16「ゲームオーバー、か」] | ||
268 | 春希 | Haruki | 「え? 何だって?」 | ||
269 | 千晶 | Chiaki | 「いや、いいわ。 帰る」 | ||
270 | 春希 | Haruki | 「…そっか」 | ||
271 | そんな後ろめたい理由だからこそ、 和泉のその決断を、引き留めることなんかできない。 | ||||
272 | そんな後ろめたい理由だからこそ、 正直に話してしまうこともできない。 | ||||
273 | 千晶 | Chiaki | 「みんなに謝っといてね。 体調が悪くなっちゃったからとか適当な理由つけて」 | ||
274 | 春希 | Haruki | 「任せとけ。 和泉が直接言うならともかく、 俺からの伝聞ならみんな信用する」 | ||
275 | 和泉に指差して笑われるのが嫌だから。 | ||||
276 | 千晶 | Chiaki | 「ひっど… 相変わらず春希は、女に冷たい男だね~」 | ||
277 | 春希 | Haruki | 「…悪いな」 | ||
278 | 和泉が、くすっと笑いながら 受け入れてしまうのが怖いから。 | ||||
279 | 千晶 | Chiaki | 「そんじゃね、おやすみ。 あまり飲み過ぎないようにね」 | ||
280 | 春希 | Haruki | 「大丈夫だ。 俺、酒に関しては飲みたいだけ飲んでも、 絶対に自分で勝手にブレーキかけるから」 | ||
281 | 千晶 | Chiaki | 「70過ぎのおじいさんみたいだよそれ…」 | ||
282 | 春希 | Haruki | 「おやすみ」 | ||
283 | 千晶 | Chiaki | 「ん」 | ||
284 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
285 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
286 | なんとなく湿っぽい雰囲気に後ろ髪を引かれつつ、 俺たちは、会話の終わった受話器を耳に当て続け… | ||||
287 | 千晶 | Chiaki | 「ま、がんばりなよ。 結構めんどいコだよねぇ? ご愁傷様」 | ||
288 | 春希 | Haruki | 「え?」 | ||
289 | 最後に、もう一つだけ訳のわからない謎を残した。 | ||||
290 | ……… | .........
| |||
291 | 『レポート提出お疲れさま。 今は打ち上げの真っ最中なのかな? あまり飲み過ぎないようにね』 | ||||
292 | 『かくいうわたしの方も、 さっきまで友達と打ち上げしてました』 | ||||
293 | 『…って言っても、喫茶店でパフェだけどね』 | ||||
294 | 『相手は、先週知り合った長瀬さん。 相変わらず、美人なのに話すとすごく面白い人で、 二時間くらいお喋りであっという間に過ぎちゃった』 | ||||
295 | 『さてと、春希くんお尋ねの冬休みの予定ですが…』 | ||||
296 | 『む~、出不精はひどいなぁ。 わたし、旅行は嫌いじゃないよ? ただ、あまり忙しなく動くのが苦手なだけで』 | ||||
297 | 『旅先で、ゆっくりお風呂に浸かって、 美味しいご飯食べて、楽しくお喋りできれば大満足』 | ||||
298 | 『あと、移動に疲れないところがいいな。 車に乗っけてもらうとか、駅前すぐの旅館とか、 それに、荷物が重いのも嫌だから一泊くらいで』 | ||||
299 | 『あれ? やっぱり出不精なのかなぁ、わたし』 | ||||
300 | 『…そういえば昔、そんな旅、したよね? 楽しかったよね、すごく』 | ||||
301 | 『ね、春希くん』 | ||||
302 | 『春希くんに比べると、今のわたしは、 無精とか怠け者に見えるかもしれない。 でも、実は微妙に違うんだよ』 | ||||
303 | 『ただ、もう頑張りたくないだけ。 楽に、なりたいだけなの』 | ||||
304 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
305 | 楽に、なりたいだけ、か。 | ||||
306 | 誰なんだろうな。 今まで雪菜に楽をさせなかったのは。 | ||||
307 | ずっと、苦しめ続けていた重罪人は。 | ||||
308 | 男子学生1 | Male Student 1 | 「おい! いつまでメール見てニヤニヤしてんだよ? ちょっと見せてみろ」 | ||
309 | 春希 | Haruki | 「あ…っ!? や、やめろ! …じゃなくてやめてくださいっ!」 | ||
310 | 男子学生2 | Male Student 2 | 「なんだ~? もしかして和泉からか? 打ち上げ抜け出して、二人きりで会おうとか 密約してんじゃないだろうな?」 | ||
311 | 春希 | Haruki | 「ちっ…! 違いますってば! そっちはさっきちゃんと断って…」 | ||
312 | 男子学生1 | Male Student 1 | 「………」 | "........."
| |
313 | 男子学生2 | Male Student 2 | 「………」 | "........."
| |
314 | 春希 | Haruki | 「あ」 | ||
315 | ……… | .........
| |||
316 | 俺の体は、途中から必死でブレーキをかけていた。 | ||||
317 | なのに喉を通る酒はとどまるところを知らず、 救急車とはいかないまでも、 トイレの住人にはなってしまった。 | ||||
318 | 春希 | Haruki | 「じゃあ、今から30分後。 御宿の東口改札で」 | ||
319 | 千晶 | Chiaki | 「…いんだね?」 | ||
320 | 春希 | Haruki | 「この前、おごるって約束したからな」 | ||
321 | 千晶 | Chiaki | 「春希…」 | ||
322 | 多分、二人とも気づいてる。 | ||||
323 | あの時の約束は、和泉が結局泊まってったことで、 とっくに意味のないものになっているって。 | ||||
324 | 春希 | Haruki | 「今度はすっぽかすなよ。 俺、さっき1時間近く待ったんだからな」 | ||
325 | 千晶 | Chiaki | 「さっきのは………わかった。 絶対に行くよ」 | ||
326 | だけど、二人とも蒸し返さないのは、 そんなことをして幸せになる人間が、 誰もいないから。 | ||||
327 | 春希 | Haruki | 「それじゃ、後で」 | ||
328 | 千晶 | Chiaki | 「ん」 | ||
329 | 俺たち二人の間には。 | ||||
330 | ……… | .........
| |||
331 | 千晶 | Chiaki | 「さて、と…」 | ||
332 | 千晶 | Chiaki | 「あたしは、誰?」 | ||
333 | 千晶 | Chiaki | 「わたしです、ほら、小木曽雪菜。 覚えてませんか? この前のパーティで」 | ||
334 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
335 | 千晶 | Chiaki | 「あれと同等以上の女を演じなきゃならないなんて、 なんてハードルの高い男だろうねぇ、春希くん」 | ||
336 | 千晶 | Chiaki | 「…やりがいあるよね」 | ||
337 | 千晶 | Chiaki | 「よしっ! 気合入れて行こう」 | ||
338 | 千晶 | Chiaki | 「お疲れさまでした~! ほ~ら、ぐっといって、ぐっと!」 | ||
339 | 春希 | Haruki | 「あ、ああ…」 | ||
340 | 千晶 | Chiaki | 「んぐ、んぐ… バーテンさん、マンハッタンおかわり~!」 | ||
341 | 春希 | Haruki | 「いきなり店の雰囲気ぶち壊すな」 | ||
342 | 和泉と入ったのは、 今まで飲んでた居酒屋とは完全に趣を変えた、 雰囲気のよさそうなショットバー。 | ||||
343 | …だったのに、肝心の和泉の方は、 居酒屋のテンションだった。 | ||||
344 | 千晶 | Chiaki | 「春希もガンガンいきなよ。 どうせあんたのおごりなんだし~」 | ||
345 | 春希 | Haruki | 「俺はさっきまでしこたま飲んできたんだよ。 …つか、本気で俺に全部おごらせる気か?」 | ||
346 | あの時の約束はとっくに無効になってるって、 蒸し返そうかな… | ||||
347 | なんて半分頭を抱えつつ、 でも俺は、半分胸をなで下ろしていた。 | ||||
348 | 千晶 | Chiaki | 「ほんとお疲れ。 あと、悪かったね無理に連れ出して」 | ||
349 | 春希 | Haruki | 「あとで俺の言い訳を伝授しとくからな。 先輩たちに聞かれた時、ちゃんと口裏合わせろよ」 | ||
350 | 千晶 | Chiaki | 「大丈夫だって。 どうせこれで年明けまで大学行かないし~」 | ||
351 | さっきの電話の和泉がそのまま来られたら、 自分がどう振舞えばいいのか決めかねていた。 | ||||
352 | けどこれは、いつも通りのふざけた飲み会。 | ||||
353 | 俺がつまみを作り、酒を用意して、 和泉は飲んで騒ぐだけの、不公平な宴席。 | ||||
354 | だったら何も遠慮することはない。 散々たかられ、搾り取られた後に、 説教で少しだけ溜飲を下げれば万事解決。 | ||||
355 | そうだよ… だってそれが、俺たちの流儀なんだから。 | ||||
356 | ……… | .........
| |||
357 | 春希 | Haruki | 「なぁ、和泉」 | ||
358 | 目の前に、また新しいグラスが置かれる。 | ||||
359 | 俺がグラスを空けるたびに、 和泉が勝手に追加オーダーを飛ばしてしまうから。 | ||||
360 | …まだ自分の中のブレーキも作動しないのをいいことに、 それを次から次へと空ける俺にも 問題があるかもしれないけど。 | ||||
361 | 千晶 | Chiaki | 「ん~…?」 | ||
362 | 逆に、和泉の方が先に限界が近いのか、 さっきからカクテルに添えられたチェリーを 口に含むだけで、グラスが空かなくなった。 | ||||
363 | …とはいえ、こいつの重ねた杯数に追いつくには、 あと2杯飲む必要があるけど。 | ||||
364 | …ピッチ早。 | ||||
365 | 春希 | Haruki | 「お前さぁ、 学園時代、どんな奴だったわけ?」 | ||
366 | 千晶 | Chiaki | 「…なんでそんなこと聞くの? いきなり」 | ||
367 | 春希 | Haruki | 「別にいきなりじゃないだろ。 前から何度か聞いてたと思うけど?」 | ||
368 | きっかけは、あの『昔のレポート』。 | ||||
369 | 北陸地方の民話なんていう、 かなり資料を探すのも大変そうな、 しかも地味な研究をしていた学生時代。 | ||||
370 | 今の、怠惰で要領良くて人間として軽い和泉は、 いつ形づくられたんだろうって、 失礼な疑問が頭に浮かぶのは当然だと思う。 | ||||
371 | いや、当然だと思うことが失礼に当たるんだろうか? | ||||
372 | 春希 | Haruki | 「確か都立だったよな。 どこだっけ?」 | ||
373 | 千晶 | Chiaki | 「…東有川?」 | ||
374 | 春希 | Haruki | 「ああ、千葉に近い方?」 | ||
375 | にしても、なんで語尾を上げるんだろう。 | ||||
376 | 千晶 | Chiaki | 「話してもいいけどさぁ、 別につまんないよ?」 | ||
377 | 春希 | Haruki | 「お前と話してて、つまらないと思ったことないよ」 | ||
378 | 千晶 | Chiaki | 「っ…」 | ||
379 | 春希 | Haruki | 「あ…ごめん」 | ||
380 | なんか和泉の肩がぴくんと震えたような気がした。 | ||||
381 | だから俺は、自分の吐いた台詞の意味もろくろく考えず、 ただ、その妙な反応に過剰反応を返した。 | ||||
382 | 千晶 | Chiaki | 「ううん、けっこ嬉しいかも」 | ||
383 | 春希 | Haruki | 「あ…」 | ||
384 | 千晶 | Chiaki | 「…謝ろっか?」 | ||
385 | 春希 | Haruki | 「…いや、別に」 | ||
386 | 和泉の右手が、カウンターの上に置かれた俺の左手に、 そっと重ねられる。 | ||||
387 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
388 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
389 | けどそれは、いつもの和泉の悪ふざけ。 | ||||
390 | 軽くつねったり、爪で引っかいたり、 スキンシップだか悪戯だかわからない、 ほんのちょっとしたじゃれ合い。 | ||||
391 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
392 | 春希 | Haruki | 「………っ」 | ||
393 | だから俺は、過剰反応したりしない。 だって、男と女じゃなくて、友達同士の触れ合いだから。 | ||||
394 | 『指相撲やろう? 12345678910!』とか、 『指四の字~』とか『どっちの手が大きいかな?』とか、 そういったレベルの… | ||||
395 | 春希 | Haruki | 「な、なぁ、和泉…」 | ||
396 | 千晶 | Chiaki | 「……謝ろっか?」 | ||
397 | 春希 | Haruki | 「い、いや… 謝らなくてもいいけど、意図を説明して欲しいなと」 | ||
398 | 千晶 | Chiaki | 「なんとなく春希をいじってみたくなっただけ」 | ||
399 | 春希 | Haruki | 「そ、そう…」 | ||
400 | そういったレベルの、はずなんだけど。 | ||||
401 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
402 | 春希 | Haruki | 「っ…」 | ||
403 | なんか、違う…? | ||||
404 | いつもの和泉と、手触りが違う。 …いや、正確に言えば、手触られ、だけど。 | ||||
405 | 千晶 | Chiaki | 「どこにでもいる、普通の女の子だったよ」 | ||
406 | 春希 | Haruki | 「え?」 | ||
407 | 千晶 | Chiaki | 「都立の時代のあたし。 …なに春希? 自分で聞いたことすっかり忘れてる?」 | ||
408 | 春希 | Haruki | 「べ、別に」 | ||
409 | いつもの和泉と、手の動きが違う。 | ||||
410 | 千晶 | Chiaki | 「学校の中じゃ目立たなくて。 だから、同じ学年のコにも覚えててもらえなかったり」 | ||
411 | 春希 | Haruki | 「そ、そう、か」 | ||
412 | つねったり、引っかいたり、 指相撲したり、指四の字したりせずに、 ただ、俺の手の甲に、自分の手のひらを重ねる。 | ||||
413 | その手触りも、繊細で、滑らかで、柔らかくて。 | ||||
414 | いつもの力強さ…って言うか、 俺の照れと躊躇を誘発しないための気遣いがない。 | ||||
415 | でもそれは、いつもより乱暴な訳じゃなく、 ただ、いつもより優しい、 けれどいつもより踏み込んだ触れ合い。 | ||||
416 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
417 | だから、いつもみたいに邪魔そうに振り払えない。 | ||||
418 | 困惑と羞恥と、そして少しの安心感とともに、 ただ、あるがままの状況を受け入れる。 | ||||
419 | ……… | .........
| |||
420 | 千晶 | Chiaki | 「うん、そうだね。 部活はそれなりにやってたかな」 | ||
421 | 春希 | Haruki | 「へぇ…」 | ||
422 | 千晶 | Chiaki | 「結構なもんだったんだよ? 三年の時には、賞ももらったんだから」 | ||
423 | 春希 | Haruki | 「そりゃ凄いな。 何部に入ってた?」 | ||
424 | 千晶 | Chiaki | 「じゃあね…当ててみて?」 | ||
425 | 春希 | Haruki | 「っ…ヒントを」 | ||
426 | 俺の杯数が、和泉に追いついた頃。 | ||||
427 | 和泉の、ぽわっと赤らんだ瞳が、 俺を無遠慮に覗き込む。 | ||||
428 | 千晶 | Chiaki | 「ヒントねぇ…じゃ」 | ||
429 | 和泉は、さっきまで舐めていたさくらんぼの実から、 茎だけ引き抜くと、指ごと口の中に押し込んだ。 | ||||
430 | 春希 | Haruki | 「…それに何の意味があるんだ?」 | ||
431 | 小さくすぼめた唇が自らの指を咥え込み、 軽い唾液の音を響かせる。 | ||||
432 | 千晶 | Chiaki | 「ん~、こんなでどう?」 | ||
433 | 春希 | Haruki | 「口の中で結ぼうってのか?」 | ||
434 | 千晶 | Chiaki | 「ん」 | ||
435 | 和泉は返事の代わりに、 こくんと頷きながら、 口の中をゆっくりと動かし始める。 | ||||
436 | じっと俺を見つめたままで。 | ||||
437 | 春希 | Haruki | 「で、それが出来るとどうなんだ?」 | ||
438 | 千晶 | Chiaki | 「こういうのが役に立つ部だったんだよ。 ほら、よく見てみ?」 | ||
439 | そう言うと和泉は、口を半開きにしたまま、 舌をもごもごと動かし、茎結びを始める。 | ||||
440 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
441 | 千晶 | Chiaki | 「さて、答えは?」 | ||
442 | 春希 | Haruki | 「…え?」 | ||
443 | 千晶 | Chiaki | 「…むぅ」 | ||
444 | 春希 | Haruki | 「…ごめん。 部活だったよな」 | ||
445 | 和泉の喋り方が舌足らずだったから 聞き取れなかった…訳じゃない。 | ||||
446 | 春希 | Haruki | 「ええと…合唱部?」 | ||
447 | 千晶 | Chiaki | 「ぶぶー」 | ||
448 | その、顔と声と息遣いと舌の奏でる音が、 あまりにも艶めかしかったから。 | ||||
449 | 春希 | Haruki | 「それなら…まさか軽音楽部とか。 そういうバンドのボーカルみたいな」 | ||
450 | 千晶 | Chiaki | 「ぶぶー」 | ||
451 | 小さくすぼめた唇からちろっと顔を出すピンクの舌とか、 少しだけ苦しそうで少しだけ恍惚とした吐息とか。 | ||||
452 | 春希 | Haruki | 「…わかった、演劇部だ! あの連中も発声練習よくやってるもんなぁ」 | ||
453 | 千晶 | Chiaki | 「………ぶぶー」 | ||
454 | そんな、和泉とは思えない『色』にあてられて、 俺は、酒だけじゃない、熱い汗を噴き出させ… | ||||
455 | 春希 | Haruki | 「っ…降参。 もういいだろ」 | ||
456 | 和泉の顔を、まともに見ていられなくなり、 だからヒントをこれ以上見ることもかなわず、 あえなく負けを認めた。 | ||||
457 | ……… | .........
| |||
458 | 春希 | Haruki | 「前にも言っただろ。 勉強ばっかで、イベントとか興味なかったって」 | ||
459 | 千晶 | Chiaki | 「それは聞いたけどね」 | ||
460 | クイズ勝負に負けた後は、 当然のように『春希の学園時代は?』が続いた。 | ||||
461 | 春希 | Haruki | 「クラス委員とか、学園祭実行委員とか、裏実行委員とか、 裏方ばっかで、面白いネタなんか何も…」 | ||
462 | 千晶 | Chiaki | 「え~、裏実行委員ってなんか面白そ~だよ。 どんなことすんの?」 | ||
463 | 春希 | Haruki | 「別に大したことはしてないけど。 …付属のミスコン大会の運営くらいで」 | ||
464 | 千晶 | Chiaki | 「え~、ミス峰城大付ってあれだよね? ミス峰城の予備選って言われてるけど、 下手すると本家よりもレベルが高いって言う…」 | ||
465 | 春希 | Haruki | 「いや、俺ただの実行委員だったから、 世間の評判はよく知らないし」 | ||
466 | 千晶 | Chiaki | 「そっか~、それでか~。 春希の女の子を見る目が妙に肥えてるのは~」 | ||
467 | 春希 | Haruki | 「…俺がいつそんなエピソードを披露した?」 | ||
468 | だから俺は、酒のせいで口が軽くなった『ふり』をして、 原点に立ち返って、和泉との軽口を楽しもうとした。 | ||||
469 | 千晶 | Chiaki | 「それでそれで? 春希が委員やってた頃は、誰が優勝したの? その子と親しかった?」 | ||
470 | 春希 | Haruki | 「和泉の知らないコだよ。 確かこの大学にいるけど、俺も詳しくは…」 | ||
471 | あくまで『ふり』だから、 心の中身を全部さらす訳じゃないけれど。 | ||||
472 | 千晶 | Chiaki | 「ふぅん… ねぇ、付き合ったりしなかったの? 裏実行委員の特権を利用して、とか」 | ||
473 | 春希 | Haruki | 「そういうのは思いっきり選挙違反だろ」 | ||
474 | だから途中で辞任したんだっけ… | ||||
475 | 千晶 | Chiaki | 「あ、そいえばさ、 ギター、いつ頃までやってたの? ほら、部屋に飾ってあったやつ」 | ||
476 | 春希 | Haruki | 「………忘れた」 | ||
477 | 心の中をいくら隠し通しても、 自分に反動が返ってくることは避けようがない。 | ||||
478 | そして、心の中を隠し通してるせいで、 相手を責めるわけにも、泣き言を言うわけにもいかない。 | ||||
479 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
480 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
481 | そんな俺の、心の揺らぎに気づいたのか、 和泉がまた、じっと俺の顔を覗き込む。 | ||||
482 | だから俺は、 自分が心を開ききっていないことを隠すため、 さり気なく、その視線から距離を置き… | ||||
483 | 千晶 | Chiaki | 「あのさ、春希」 | ||
484 | 春希 | Haruki | 「…なんだよ?」 | ||
485 | 千晶 | Chiaki | 「あんた、さっきからちっともあたしの方見ないよね?」 | ||
486 | 春希 | Haruki | 「え…」 | ||
487 | なんて、今になって行動したと思ってたのは、 自分の方だけだったみたいだ。 | ||||
488 | 千晶 | Chiaki | 「いっつも『人と話す時は相手の顔を見て喋れ』って、 えっらそうに説教する癖にさ」 | ||
489 | 春希 | Haruki | 「それは、その…悪い」 | ||
490 | そういえば俺は、 さっきからずっと和泉の顔を見ていない。 …ような気がする。 | ||||
491 | 千晶 | Chiaki | 「どしたの? そろそろ酔った?」 | ||
492 | 春希 | Haruki | 「…わからない」 | ||
493 | だって、いやでも感じてしまうから。 | ||||
494 | 千晶 | Chiaki | 「そろそろ帰る? …家まで送ってこっか?」 | ||
495 | 春希 | Haruki | 「やめとく。 …そのまま泊まられそうだ」 | ||
496 | 和泉は、俺の顔を覗き込もうと、 カウンターに顔を伏せ、至近距離で見上げてる。 | ||||
497 | 千晶 | Chiaki | 「…春希ってテレパシー使い?」 | ||
498 | 春希 | Haruki | 「やっぱりかよ…」 | ||
499 | スツールに腰掛けた体は俺の方にずれ、 その柔らかくて温かい体を ぴっとりと俺の脇腹に張りつけてくる。 | ||||
500 | 吐息は、俺の顎あたりに触れるように吐き出し、 唇と舌の奏でる音は、執拗に俺の右耳をねぶる。 | ||||
501 | そして見上げた視線は、 潤んだまま、俺の目の辺りにまっすぐに突き刺さり、 まるで誘っているような… | ||||
502 | 千晶 | Chiaki | 「あ」 | ||
503 | 春希 | Haruki | 「ど、どうした?」 | ||
504 | 千晶 | Chiaki | 「…結べた。 サクランボの茎」 | ||
505 | 春希 | Haruki | 「………そりゃおめでと」 | ||
506 | 千晶 | Chiaki | 「んふふ…記念にあげる」 | ||
507 | 春希 | Haruki | 「いるかそんなの」 | ||
508 | なんて、俺の勘違いと妄想を断ち切ってくれたのは、 やっぱり和泉のなんでもない軽口だった。 | ||||
509 | 千晶 | Chiaki | 「うん、出よか。 あたしもそろそろ終電ヤバいし」 | ||
510 | 春希 | Haruki | 「ああ…あ」 | ||
511 | 千晶 | Chiaki | 「どしたの?」 | ||
512 | 春希 | Haruki | 「…何でもない」 | ||
513 | でも、いくら俺の妄想と勘違いが、 相当に痛いものであったとしても。 | ||||
514 | 今まで、ずっと握り合ったままだった手は、 誰が、どう言い訳すればいいんだろうか… | ||||
515 | ……… | .........
| |||
516 | 千晶 | Chiaki | 「寒いね~」 | ||
517 | 春希 | Haruki | 「うん」 | ||
518 | 千晶 | Chiaki | 「冷えるね~」 | ||
519 | 春希 | Haruki | 「ああ」 | ||
520 | 千晶 | Chiaki | 「意味、同じだね~」 | ||
521 | 春希 | Haruki | 「そうだな」 | ||
522 | 千晶 | Chiaki | 「………ぷっ」 | ||
523 | 和泉の言う通り、 あれだけ飲んでいたにもかかわらず、 外は肌寒く、底冷えして、それって同じ意味だった。 | ||||
524 | 千晶 | Chiaki | 「ね、春希は冬休み、どうするの?」 | ||
525 | 春希 | Haruki | 「またか」 | ||
526 | 千晶 | Chiaki | 「前にも聞いたっけ? 同じ事」 | ||
527 | 春希 | Haruki | 「…気のせいかも」 | ||
528 | 和泉を送るために上がったホームでは、 肌を刺す冷たい空気が、吐息まで白く濁らせ、 一気に酔いを覚ましていく。 | ||||
529 | けれど、そんな寒さの中、 一箇所だけ、温かさが失われない場所がある。 | ||||
530 | 和泉の左手に包まれた、俺の右手。 | ||||
531 | 千晶 | Chiaki | 「別に、会おうとか遊ぼうとか、 あたしの方からは誘わないけどさ…」 | ||
532 | 春希 | Haruki | 「え?」 | ||
533 | 千晶 | Chiaki | 「でも、ま、異様にヒマだったり、 心がどうにも落ち着かなくなっちゃったりした時には、 遠慮なく呼び出してくれていいからね?」 | ||
534 | 春希 | Haruki | 「和泉…」 | ||
535 | そんな、これだけ近づいてしまったのに、 それでもちょっとあっさりめの距離感が、 相変わらず心地良い。 | ||||
536 | 駅アナウンス | Station Announcement | 「6番線、有川行きが参ります。 ご注意ください」 | ||
537 | だから、もうすぐ電車が来て、 俺の体のどこも温かくなくなってしまうことが、 なんだか辛いって、そんな、酷い心配をしてる。 | ||||
538 | 千晶 | Chiaki | 「春希のお望みのあたしが相手するよ? 親友でも、悪友でも…それとも…」 | ||
539 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
540 | そう、そんな心配は酷いこと。 | ||||
541 | また誰をも裏切る、また誰も幸せにしない、 そんな、最低最悪の選択肢。 | ||||
542 | 千晶 | Chiaki | 「それじゃ」 | ||
543 | 春希 | Haruki | 「あ、ああ…」 | ||
544 | 千晶 | Chiaki | 「…春希?」 | ||
545 | 春希 | Haruki | 「っ!? あ、ああ…ごめ…っ」 | ||
546 | そして俺は、 自ら、そんな最低最悪の答えを引き寄せる。 | ||||
547 | 千晶 | Chiaki | 「そうだよねぇ」 | ||
548 | 春希 | Haruki | 「ち…違っ」 | ||
549 | 和泉が、俺の胸に体を寄せる。 | ||||
550 | だって彼女は、 そうするより他になかったから。 | ||||
551 | 千晶 | Chiaki | 「しばらく、会えないもんねぇ」 | ||
552 | 春希 | Haruki | 「和泉ぃ…っ」 | ||
553 | 俺に強く手を握られて、 振りほどくこともできないんだから。 | ||||
554 | 千晶 | Chiaki | 「んふふ…春希ってばさぁ」 | ||
555 | 春希 | Haruki | 「いや、俺…」 | ||
556 | 俺はもう、和泉の 『女っぽくないこと』を必要としていない。 | ||||
557 | 以前みたいに、こいつのこと、 女除けみたいに使う必要だってない。 | ||||
558 | 今の俺は、自分のあるがままを受け入れ、 段々、昔みたいに女性と接することができてきてる。 | ||||
559 | 春希 | Haruki | 「冗談…だよな?」 | ||
560 | 千晶 | Chiaki | 「うん」 | ||
561 | 駅アナウンス | Station Announcement | 「ドアが閉まります。 ご注意ください」 | ||
562 | 春希 | Haruki | 「っ…」 | ||
563 | なのになぜ… | ||||
564 | 今こうして和泉の『女』を受け入れてるんだ、俺? | ||||
565 | 俺が和泉に『女』を求めてるから? それが本当に俺が欲しかったものだったのか? | ||||
566 | どうして? だって俺は… | ||||
567 | 千晶 | Chiaki | 「冗談だけどね」 | ||
568 | 春希 | Haruki | 「………だよ、な」 | ||
569 | 俺は… |
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Introductory Chapter | ||||||
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Closing Chapter | ||||||||||
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Setsuna | Koharu | Chiaki | Mari | |||||||
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2031_4 | 2313_3 | 2402_3 |
Coda | |||||||||
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Common | Kazusa (True) | Setsuna (True) | Kazusa (Normal) | ||||||
3001 | 3008 | 3014_2 | 3020 | 3101 | 3107 | 3201 | 3207 | 3901 | 3907 |
3002 | 3009 | 3014_3 | 3021 | 3102 | 3108 | 3202 | 3208 | 3902 | 3908 |
3003 | 3010 | 3015 | 3022 | 3103 | 3109 | 3203 | 3209 | 3903 | 3909 |
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Common | Setsuna (True) | Kazusa (Normal) | |||||||
3001_2 | 3210_2 | 3901_2 | 3906_2 | ||||||
3015_2 | 3902_2 | 3907_2 | |||||||
3902_3 | 3907_3 | ||||||||
3904_2 |
Mini After Story and Extra Episode | |||
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The Path Back to Happiness | The Path Forward to Happiness | Dear Mortal Enemy | |
6001 | 6101 | 4000 | 4005 |
6002 | 6102 | 4001 | 4006 |
6003 | 6103 | 4002 | 4007 |
6004 | 6104 | 4003 | 4008 |
6005 | 4004 | 4009 |
Novels | |||||
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The Snow Melts, And Until The Snow Falls | The Idol Who Forgot How to Sing | Twinkle Snow ~Reverie~ | After the Festival ~Setsuna's Thirty Minutes~ | His God, Her Savior | |
5000 | 5100 | 5200 | 5205 | 5300 | 5400 |
5001 | 5101 | 5201 | 5206 | 5301 | 5401 |
5002 | 5102 | 5202 | 5207 | 5302 | |
5003 | 5103 | 5203 | 5208 | 5303 | |
5004 | 5104 | 5204 | 5209 |
Short Stories | |||
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Princess Setsuna's Distress and Her Minister's Sinister Plan | Koharu Climate After the Passing of the Typhoon | This isn't the Season for White Album | Todokanai Koi, Todoita |
7000 | 7100 | 7200 | 7300 |