White Album 2/Script/6003
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Translation Notes[edit]
Text[edit]
Speaker | Text | Comment | |||
---|---|---|---|---|---|
Line # | JP | EN | JP | EN | |
1 | 春希 | Haruki | 「かずさ」 | ||
2 | かずさ | Kazusa | 「ん、すぅ……」 | ||
3 | 春希 | Haruki | 「おい、かずさ……いい加減に起きろよ」 | ||
4 | かずさ | Kazusa | 「ん、ん~……?」 | ||
5 | 高層ホテルのどでかい窓から差し込む光は、 すでに部屋中に溢れていた。 | ||||
6 | そんな、隅々まで明るい部屋の中、 未だにベッドの中で目を覚まさない眠り姫。 | ||||
7 | ……まぁ、どこの国へ行っても 変わらない光景ではあるけど。 | ||||
8 | かずさ | Kazusa | 「ふあぁぁぁ~……今、何時ぃ?」 | ||
9 | 春希 | Haruki | 「そろそろ11時」 | ||
10 | まぁ、今さら驚きも嘆きもしない。 ピアノを弾かないかずさなんて、いつもこんなもんだ。 | ||||
11 | かずさ | Kazusa | 「なんでそんな中途半端な時間に起こすんだよ…… 昼飯まで寝かせといてくれよ」 | ||
12 | 春希 | Haruki | 「俺はもう腹減ったの。 すぐ昼飯食いたいの」 | ||
13 | 何しろこっちは起きてからもう5時間くらい経ってる。 いい加減、ずっとこいつの寝顔見てるのも…… いや、飽きないけど、空腹に耐えられないのも本当で。 | ||||
14 | かずさ | Kazusa | 「じゃ、ルームサービスでも頼めばいいじゃん~」 | ||
15 | 春希 | Haruki | 「いいや起きろ。 そろそろ出かけるぞ」 | ||
16 | かずさ | Kazusa | 「どこに~」 | ||
17 | 春希 | Haruki | 「どこへともなく」 | ||
18 | かずさ | Kazusa | 「詩人かお前は」 | ||
19 | 春希 | Haruki | 「久しぶりの日本、満喫するんだろ? ……昨夜、曜子さんと約束したじゃないか」 | ||
20 | かずさ | Kazusa | 「…………」 | ||
21 | まぁ、あれを約束と言うのかといえば微妙だけど、 それでもかずさはあの時、嫌だとは言わなかった。 | ||||
22 | ……まぁ、わかったとも言わなかったんだけど。 | ||||
23 | 春希 | Haruki | 「ラウンジで飯食って、どこ行くか相談しよう? さ、とりあえず着替えて……」 | ||
24 | かずさ | Kazusa | 「行かない。 ずっと寝てる」 | ||
25 | 春希 | Haruki | 「……本っ当に何もすることないんだぞ? 奇跡的に、今年はもう仕事納めちゃったんだぞ?」 | ||
26 | かずさ | Kazusa | 「外出なんて疲れるだけだ。 ずっと春希の……咥えてた方がいいよ」 | ||
27 | 春希 | Haruki | 「っ……それは出かけるよりも疲れる」 | ||
28 | かずさ | Kazusa | 「とにかくあたしは行かないったら行かない。 だから春希、お前もここにいろ。 一緒にくっだらないサスペンスの再放送見よう?」 | ||
29 | 春希 | Haruki | 「くだらないってわかってるなら見るなよ……」 | ||
30 | ここまで子供みたいに駄々をこねてみせても、 かずさは決して『お前ひとりで行ってくればいいんだ』 とは言わない。 | ||||
31 | かずさ | Kazusa | 「だって、あたしには行きたい場所も、 会える人も、いない」 | ||
32 | 曜子 | Youko | 『友達に会ってきたりとか、どう?』 | ||
33 | 曜子さんが最後に漏らしたあの言葉は、 意図的だったのか、わざとだったのか、 それとも意地悪だったのか。 | ||||
34 | ……まぁ、まず間違いなくわかってて言ってたんだよな。 | ||||
35 | 春希 | Haruki | 「でもさ、でも……お前はもう」 | ||
36 | 許されてる、はずなんだ。 | ||||
37 | 半年前のウィーンで。 | ||||
38 | 思いもしなかった来客が。 ありえない再会が。 奇跡の仲直りが。 | ||||
39 | かずさ | Kazusa | 「だからって、さ……」 | ||
40 | 春希 | Haruki | 「会いたくないのか?」 | ||
41 | かずさ | Kazusa | 「会いたいよ! けど、自分から会いには行けないよ」 | ||
42 | 春希 | Haruki | 「かずさ……」 | ||
43 | かずさ | Kazusa | 「いくら彼女が許してくれても、 あたしが自分を許せない」 | ||
44 | かずさ | Kazusa | 「好きだったんだ。 本当に、憧れてたんだ」 | ||
45 | そんなのわかってる。 | ||||
46 | だって、俺なんか、愛してた。 なのに、あんな…… | ||||
47 | かずさ | Kazusa | 「お前はどうなんだよ、春希。 会いに、行けるのかよ?」 | ||
48 | 春希 | Haruki | 「そりゃ、まぁ……」 | ||
49 | かずさには救われて欲しい。 けれど、俺は救われるわけにはいかない。 | ||||
50 | 本当、三年前からずっと成長しないな。 俺も、かずさも。 | ||||
51 | ………… | ||||
52 | かずさ | Kazusa | 「だから、出かけないって言っただろ?」 | ||
53 | 春希 | Haruki | 「ただの散歩だよ。 それならいいだろ?」 | ||
54 | 結局、ぐずるかずさを連れ出すのに、 さらに30分かかり…… | ||||
55 | 簡単に昼食を済ませ、ホテルを出たころには、 冬の弱々しい日差しは、もう真南を過ぎていた。 | ||||
56 | かずさ | Kazusa | 「誰かに会ったらどうすんだよ?」 | ||
57 | 春希 | Haruki | 「お前、ここをどこだと思ってる? 一千万都市だぞ? 花の都大東京だぞ? そんな偶然が起こるとでも思ってるのか?」 | ||
58 | かずさ | Kazusa | 「で、でも、ほら…… 前に来日した時は、結構顔がバレててさぁ」 | ||
59 | 春希 | Haruki | 「大丈夫、もう冬馬かずさブームなんかとっくに去った。 日本人の飽きっぽさを舐めんなよ?」 | ||
60 | かずさ | Kazusa | 「いやそれマネージャー的にはOKなのかよ?」 | ||
61 | 春希 | Haruki | 「それに対策も考えてある。 とにかく、少しくらい付き合ってくれよ」 | ||
62 | かずさ | Kazusa | 「い~や~だ~」 | ||
63 | すっかり目が覚めて、空腹も満たしたかずさは、 それでもまだ動くのを嫌がり、俺の袖を掴んだまま ずるずる引きずられている。 | ||||
64 | それでも俺は、なかば強引に、 かずさを外に、日本の中へと連れ出していく。 | ||||
65 | だって…… | ||||
66 | 春希 | Haruki | 「ほら着いたぞ、まずは最初の観光スポットだ」 | ||
67 | かずさ | Kazusa | 「はぁ? ここって……まだホテルの目の前じゃないか」 | ||
68 | 春希 | Haruki | 「なぁ、かずさ……お前、この景色に見覚えないか?」 | ||
69 | かずさ | Kazusa | 「景色ったって……ただの、御宿の駅前の……」 | ||
70 | 春希 | Haruki | 「……まだあったんだなぁ、この電話ボックス」 | ||
71 | かずさ | Kazusa | 「え?」 | ||
72 | 春希 | Haruki | 「取材の記者から逃げ出してさ、 その時に、財布とか携帯とか全部落っことして」 | ||
73 | かずさ | Kazusa | 「……あっ!?」 | ||
74 | かずさ | Kazusa | 『ほんとになぁ… たった一つ、この番号だけ覚えてるなんて、 あたしって、なんなんだろ』 | ||
75 | 春希 | Haruki | 「拾った百円玉で、お前、このボックスから 俺の携帯にかけてきてさ……」 | ||
76 | かずさ | Kazusa | 「わ~、わ~、わ~! 帰る! やっぱり帰る~!」 | ||
77 | 春希 | Haruki | 「それも、なんか捨て犬みたいに死にそうな声でさ……」 | ||
78 | かずさ | Kazusa | 「お、お前だって死にそうな声だった!」 | ||
79 | 春希 | Haruki | 「当たり前だ。 お前が死にそうな声出してたんだから」 | ||
80 | かずさ | Kazusa | 「っ……」 | ||
81 | 春希 | Haruki | 「慌てて掛けつけてみたら、 お前はびしょ濡れで、ガタガタ震えてて、 なんだよ、やっぱ捨て犬だったじゃん、って」 | ||
82 | かずさ | Kazusa | 「捨てた飼い主が何言ってやがる!」 | ||
83 | 春希 | Haruki | 「だから開き直るなよお前……」 | ||
84 | かずさ | Kazusa | 「お互い様だろ馬鹿野郎…… 今さら歯の浮くようなこと言うな馬鹿野郎」 | ||
85 | 春希 | Haruki | 「そりゃ、いつまで経っても、 こんな陳腐な口説き文句に引っかかる馬鹿がいるからだ」 | ||
86 | かずさ | Kazusa | 「お前だからだ馬鹿野郎……」 | ||
87 | そう、俺は、なかば強引に、 かずさを外に、日本の中へと連れ出していく。 | ||||
88 | だって俺たちは、あの時みたいに 退廃的に二人で堕ちていくことはしないんだ。 | ||||
89 | どれだけ叩かれても、辛くても 外と触れ合って生きていくって…… | ||||
90 | 傷ついて、傷つけられて、 これからも生きていくって、決めたんだから。 | ||||
91 | ………… | ||||
92 | 春希 | Haruki | 「ほら、鏡はこっちだぞ」 | ||
93 | かずさ | Kazusa | 「なるほどね、これが“対策”か…… センスもやり方も、昔と全然変わってないな」 | ||
94 | 春希 | Haruki | 「わざわざ似たようなのを選んだんだよ、全部」 | ||
95 | 春希 | Haruki | 「どうかな……東野和美さん?」 | ||
96 | コームの髪飾りと伊達眼鏡。 それにマフラーと帽子。 | ||||
97 | そして偽名。 | ||||
98 | それが三年前、俺がかずさに与えたもの。 そしてここが、その中でも偽名以外を与えた場所。 | ||||
99 | ホテルから歩いてすぐの、御宿のショッピングモール。 | ||||
100 | 少しばかり店の配置やレイアウトが変わっていたけれど、 あの時買い物をした店たちは、全部残っていた。 | ||||
101 | かずさ | Kazusa | 「しっかし、今さら見返してみても、 全然眼鏡似合わないな、あたし」 | ||
102 | 春希 | Haruki | 「え~、そうか? 髪形も含めて、凄く似合ってると思うけどな」 | ||
103 | かずさ | Kazusa | 「そりゃ、旦那のひいき目って奴だ。 とてもじゃないが真に受けられないね」 | ||
104 | 春希 | Haruki | 「そりゃ、どうも」 | ||
105 | かずさは、俺のセンスや審美眼を散々に貶しておきながら、 その誤認識を、実は心地良く受け止めているみたいだった。 | ||||
106 | 見るからに上機嫌で、 俺が買ったアクセサリを全部つけたまま、 モールの中を、俺より先に歩き始める。 | ||||
107 | かずさ | Kazusa | 「な、春希、そろそろ甘いもの食べに行かないか? ここの地下、確かラスカルがあるんだよ」 | ||
108 | 春希 | Haruki | 「せっかく日本に帰ってきたんだから、 ぜんざいとかどうかな?」 | ||
109 | かずさ | Kazusa | 「よし、それは二軒目な。 じゃ、早速行こう?」 | ||
110 | 春希 | Haruki | 「いや待て、別にはしごしなくてもいいだろ。 プリンなら帰国してからでも食べられるし」 | ||
111 | かずさ | Kazusa | 「……お前、ラスカルのなめらかプリンを舐めてるだろ。 あの舌触りは、ヨーロッパでもなかなかないんだぞ?」 | ||
112 | 春希 | Haruki | 「それが本当かどうかはさておき、寒いだろ。 今はなんかあったかいもん食おうぜ?」 | ||
113 | かずさ | Kazusa | 「だから二軒目に連れてってやるって言ってるだろ。 ワガママな奴だな」 | ||
114 | 春希 | Haruki | 「その台詞はそっくりそのまま返すとして、 だったら、プリンはお土産で持ち帰ればいいだろ」 | ||
115 | かずさ | Kazusa | 「駄目だ。今食べたいんだ。絶対に譲れない。 店で3つ食べて、12個包んでもらうんだ」 | ||
116 | 春希 | Haruki | 「……お前、晩飯食えなくなるぞ?」 | ||
117 | かずさ | Kazusa | 「デザートと食事は別腹だろう。 何言ってるんだお前」 | ||
118 | 春希 | Haruki | 「……もういい、わかった。 好きにしろ」 | ||
119 | かずさ | Kazusa | 「あ、そうだ、ぜんざいであったまったところで、 アイスクリームを食べるとこれがまた……」 | ||
120 | 春希 | Haruki | 「なんでいちいち俺を冷やそうとすんだよ!?」 | ||
121 | 本当に、見るからに上機嫌で…… てか調子に乗りすぎだろ。 | ||||
122 | ………… | ||||
123 | かずさ | Kazusa | 「ん~、やっと調子が出てきた。 さ、こっちだ春希」 | ||
124 | 春希 | Haruki | 「うぷ……」 | ||
125 | ショッピングモールを出て、 ぶらぶらと御宿の街を歩き回る頃には、 俺たちのイニシアチブは完全に逆転していた。 | ||||
126 | かずさ | Kazusa | 「なんだよ、情けないな。 あの程度食べたくらいで食あたりか?」 | ||
127 | 春希 | Haruki | 「あたったのは主に一種類の成分にだけでな……」 | ||
128 | というか今、糖尿の検査したら絶対にヤバい。 | ||||
129 | けど、かずさの方は同じものどころか、 多分、俺の倍の量の砂糖を摂取してるはずだった。 一体どんな消化器官してんだよ…… | ||||
130 | 春希 | Haruki | 「な、なぁ、そろそろホテルに戻らないか? 一緒にくっだらない年末特番のバラエティ見ようぜ?」 | ||
131 | かずさ | Kazusa | 「くだらないってわかってるもの見てどうすんだよ?」 | ||
132 | と、かずさは、腹を押さえてる俺の注進を意に介さず、 どんどん、過酷なコンクリートの階段を上っていく。 | ||||
133 | 春希 | Haruki | 「だ、だから、ちょっと、待っ……」 | ||
134 | かずさ | Kazusa | 「ほら、もう少しだ。 頑張れ春希」 | ||
135 | 春希 | Haruki | 「もう少しって何が……あ」 | ||
136 | そして、登りきったところで その先の建物を見上げると…… | ||||
137 | かずさ | Kazusa | 「相変わらず、でかくて、お高くとまってて、 伝統のカケラも感じられないホールだな」 | ||
138 | 春希 | Haruki | 「そっか……そういえばこっちの方だったな」 | ||
139 | そこは、御宿芸術文化ホール。 | ||||
140 | かずさ | Kazusa | 「へぇ? この場所知ってたのか春希? お前は一度も来たことないと思ってたけどな」 | ||
141 | 春希 | Haruki | 「うぐ……」 | ||
142 | そう、冬馬かずさの、初めての日本公演の…… | ||||
143 | そして、そのすぐ一月後に行われた追加公演の会場。 | ||||
144 | かずさ | Kazusa | 「二回もここで弾いたのに、 お前は一度たりとも聴きに来なかったな」 | ||
145 | 春希 | Haruki | 「それは、その…… ごめん、悪かった」 | ||
146 | チケットは二公演とも即座に完売し、 特に追加公演の方は未だに伝説級の扱いを受けている。 | ||||
147 | そんな貴重なコンサートに、 俺は結局、一度も足を運ぶことができなくて。 | ||||
148 | かずさ | Kazusa | 「いいよ、もう」 | ||
149 | 春希 | Haruki | 「いや、けど」 | ||
150 | かずさ | Kazusa | 「だってさ…… お前があの時、コンサートに来なかったから、 今のあたしたちがあるんだし」 | ||
151 | 春希 | Haruki | 「……うん、そうだな」 | ||
152 | “もしもあの時ああしていれば”なんて、 分かれた枝の先の未来にいない俺たちには、 論ずる意味はない。 | ||||
153 | だって今、俺はかずさと共にいて。 | ||||
154 | そして、一度は捨てた日本の地に、 もう一度、戻ってくることができた。 | ||||
155 | もう、これ以上の結果も、 これ以外の結果もいらない。 | ||||
156 | かずさ | Kazusa | 「ちなみにさ、 ここって母さんもコンサート開いたことあるんだぞ?」 | ||
157 | 春希 | Haruki | 「ああ、知ってる」 | ||
158 | チケットだってもらってた。 結局、その時も行かなかったけどな…… | ||||
159 | かずさ | Kazusa | 「ま、あたしのコンサートの時ほど、 話題にはならなかったけどな」 | ||
160 | 春希 | Haruki | 「その評価に関しては、 今度、親子水入らずで裁定を下すってことで」 | ||
161 | ………… | ||||
162 | 時計は、そろそろ夜の10時を指そうとしていた。 | ||||
163 | かずさ | Kazusa | 「…………」 | ||
164 | 今日一日、本当によく歩き回った。 | ||||
165 | 一度も電車やバスに乗らず、 ただ御宿の街を、ただ記憶を頼りにさまよい、 懐かしがり、はしゃぎ、そして笑いあった。 | ||||
166 | 春希 | Haruki | 「…………」 | ||
167 | けれど、最後のこの場所で。 | ||||
168 | ホテルへと帰る道から一本だけ外れた、 駅前の、タクシー乗り場の近くで。 | ||||
169 | 俺たちの足は自然に止まり、 やがて、口数も少なくなった。 | ||||
170 | かずさ | Kazusa | 「……なぁ」 | ||
171 | 春希 | Haruki | 「ん?」 | ||
172 | かずさ | Kazusa | 「なに、考えてる?」 | ||
173 | 春希 | Haruki | 「別に……」 | ||
174 | かずさ | Kazusa | 「嘘つけ」 | ||
175 | 春希 | Haruki | 「…………」 | ||
176 | 俺たちの顔に浮かぶのは、苦い笑み。 | ||||
177 | 本当に笑っているのかも疑わしいくらい、 歪んで、苦しげで、そして遠くを見るような表情。 | ||||
178 | かずさ | Kazusa | 「馬鹿みたいだったな……あたしたち」 | ||
179 | 春希 | Haruki | 「いや違うね。 馬鹿そのものだった。 超間抜けだった」 | ||
180 | 来るつもり、なかったのに。 | ||||
181 | 懐かしすぎて、痛すぎて。 ここだけは、避けるつもりだったのに。 | ||||
182 | かずさ | Kazusa | 「……ふっ」 | ||
183 | 春希 | Haruki | 「なんだよ、急に」 | ||
184 | かずさ | Kazusa | 「だって、だってさぁ……っ、 今思い出してもさぁ、あはは、あは……」 | ||
185 | 春希 | Haruki | 「笑うなよ」 | ||
186 | かずさ | Kazusa | 「お前、あの時もそんなこと言ってたなぁ。 それも、泣きそうな声でさぁ……あははっ」 | ||
187 | 春希 | Haruki | 「お前は、笑いながら泣いてたっけ」 | ||
188 | かずさ | Kazusa | 「あはははは……言うなっ」 | ||
189 | 春希 | Haruki | 「あはは……」 | ||
190 | そう、ここは俺たちがたくさん泣いた場所。 | ||||
191 | たくさん、初めてを経験した、場所。 | ||||
192 | 初めて、本気で喧嘩をした場所。 | ||||
193 | 初めて、俺が想いをぶつけてしまった場所。 | ||||
194 | 初めて、かずさが想いを漏らしてしまった場所。 | ||||
195 | そして…… | ||||
196 | かずさ | Kazusa | 「なぁ」 | ||
197 | 春希 | Haruki | 「ん?」 | ||
198 | かずさ | Kazusa | 「なぁってば」 | ||
199 | 春希 | Haruki | 「だから、なん……」 | ||
200 | ふと振り向くと、 ずっと俺と同じ方向を……車道の方を見ていたかずさが、 いつの間にか、俺をじっと見つめてた。 | ||||
201 | いや、見つめてた、だけじゃなく…… | ||||
202 | かずさ | Kazusa | 「ん」 | ||
203 | 春希 | Haruki | 「お前、な」 | ||
204 | 求めてた。 | ||||
205 | かずさ | Kazusa | 「今は、あの時より、もっと慣れてるだろ? ……あたしで」 | ||
206 | かずさ | Kazusa | 『なんでそんなに慣れてんだよっ!』 | ||
207 | ここは、二人が初めて、唇を触れ合わせた…… | ||||
208 | いや、本当は二回目だったって、後から聞いたっけ。 | ||||
209 | あの時の俺たちは、間違いだらけだったけれど…… | ||||
210 | それでも、俺たちの関係は、あの時から始まった。 あの時から、お互いの気持ちを、共有した。 | ||||
211 | かずさ | Kazusa | 「だからさ……もっかい、ここでさ」 | ||
212 | 春希 | Haruki | 「見てるぞ、みんな」 | ||
213 | かずさ | Kazusa | 「あの時だって見てた。 でもお前は、した」 | ||
214 | 春希 | Haruki | 「若かったからな」 | ||
215 | かずさ | Kazusa | 「今でも十分若いって。 だからさ、春希」 | ||
216 | 春希 | Haruki | 「子供みたいなワガママ言うな。 いい年してみっともない」 | ||
217 | かずさ | Kazusa | 「なんだよ、あたしだってまだ……んんっ!? ん、んぅ……ん、ぁ」 | ||
218 | 春希 | Haruki | 「ん、ん……かずさ……っ」 | ||
219 | かずさ | Kazusa | 「は、はる……んぅんっ、ん、ちゅ……」 | ||
220 | そして…… | ||||
221 | 俺とかずさは、 道行く人を、道行く車を 視界の隅に捉えておきながら。 | ||||
222 | それでも、彼らが目を背けるほどの、 熱いキスを、交わした。 | ||||
223 | 初めて共犯関係を築いた、この場所で。 |
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Introductory Chapter | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
1001 | 1008 | 1009 | 1010 | 1011 | 1012 | 1013 |
1002 | 1008_020 | 1009_020 | 1010_020 | 1011_020 | 1012_020 | |
1003 | 1008_030 | 1009_030 | 1010_030 | 1011_030 | 1012_030 | |
1004 | 1008_040 | 1010_040 | 1012_030_2 | |||
1005 | 1008_050 | 1010_050 | ||||
1006 | 1010_060 | |||||
1006_2 | 1010_070 | |||||
1007 |
Closing Chapter | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Common | Setsuna | Koharu | Chiaki | Mari | ||||||
2001 | 2011 | 2020 | 2027 | 2301 | 2309 | 2316 | 2401 | 2408 | 2501 | 2510 |
2002 | 2012 | 2021 | 2028 | 2302 | 2310 | 2317 | 2402 | 2409 | 2502 | 2511 |
2003 | 2013 | 2022 | 2029 | 2303 | 2311 | 2318 | 2403 | 2410 | 2503 | 2512 |
2004 | 2014 | 2023 | 2030 | 2304 | 2312 | 2319 | 2404 | 2411 | 2504 | 2513 |
2005 | 2015 | 2024 | 2031 | 2305 | 2313 | 2320 | 2405 | 2412 | 2505 | 2514 |
2006 | 2016 | 2025 | 2032 | 2306 | 2314 | 2321 | 2406 | 2413 | 2506 | 2515 |
2007 | 2017 | 2026 | 2033 | 2307 | 2315 | 2322 | 2407 | 2507 | 2516 | |
2008 | 2018 | 2308 | 2508 | 2517 | ||||||
2009 | 2019 | 2509 | ||||||||
2010 | ||||||||||
Setsuna | Koharu | Chiaki | Mari | |||||||
2031_2 | 2312_2 | 2401_2 | 2504_2 | 2511_2 | ||||||
2031_3 | 2313_2 | 2402_2 | 2507_2 | 2513_2 | ||||||
2031_4 | 2313_3 | 2402_3 |
Coda | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Common | Kazusa (True) | Setsuna (True) | Kazusa (Normal) | ||||||
3001 | 3008 | 3014_2 | 3020 | 3101 | 3107 | 3201 | 3207 | 3901 | 3907 |
3002 | 3009 | 3014_3 | 3021 | 3102 | 3108 | 3202 | 3208 | 3902 | 3908 |
3003 | 3010 | 3015 | 3022 | 3103 | 3109 | 3203 | 3209 | 3903 | 3909 |
3004 | 3011 | 3016 | 3023 | 3104 | 3110 | 3204 | 3210 | 3904 | |
3005 | 3012 | 3017 | 3024 | 3105 | 3111 | 3205 | 3211 | 3905 | |
3006 | 3013 | 3018 | 3106 | 3206 | 3906 | ||||
3007 | 3014 | 3019 | |||||||
Common | Setsuna (True) | Kazusa (Normal) | |||||||
3001_2 | 3210_2 | 3901_2 | 3906_2 | ||||||
3015_2 | 3902_2 | 3907_2 | |||||||
3902_3 | 3907_3 | ||||||||
3904_2 |
Mini After Story and Extra Episode | |||
---|---|---|---|
The Path Back to Happiness | The Path Forward to Happiness | Dear Mortal Enemy | |
6001 | 6101 | 4000 | 4005 |
6002 | 6102 | 4001 | 4006 |
6003 | 6103 | 4002 | 4007 |
6004 | 6104 | 4003 | 4008 |
6005 | 4004 | 4009 |
Novels | |||||
---|---|---|---|---|---|
The Snow Melts, And Until The Snow Falls | The Idol Who Forgot How to Sing | Twinkle Snow ~Reverie~ | After the Festival ~Setsuna's Thirty Minutes~ | His God, Her Savior | |
5000 | 5100 | 5200 | 5205 | 5300 | 5400 |
5001 | 5101 | 5201 | 5206 | 5301 | 5401 |
5002 | 5102 | 5202 | 5207 | 5302 | |
5003 | 5103 | 5203 | 5208 | 5303 | |
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