White Album 2/Script/4003
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Translation Notes[edit]
Text[edit]
Speaker | Text | Comment | |||
---|---|---|---|---|---|
Line # | JP | EN | JP | EN | |
1 | 雪菜 | Setsuna | 「あ…」 | ||
2 | 『今、図書館を出たところ』 | ||||
3 | 『今日は晴れてて気持ちいいし、 このまま散歩がてら歩いて帰る』 | ||||
4 | 『そういえば、そろそろ職場復帰もできそうだ』 | ||||
5 | 『今週末に月一の上司面談だから、 そこで申し出てみようと思う』 | ||||
6 | 『本当に、今までありがとう雪菜。 仕事、忙しいのに色々迷惑掛けた。ごめんな』 | ||||
7 | 『もう、毎週も来てくれなくていいよ。 今週末は雪菜も家でゆっくり休んで』 | ||||
8 | 雪菜 | Setsuna | 「春希くん…」 | ||
9 | 春が過ぎ、暦の上では夏が来ていた。 | ||||
10 | まだ朝夕は涼しいけれど、 日中は思い出したように汗ばむ陽気になったりして、 これからやってくる蒸し暑さに思いを馳せる頃。 | ||||
11 | 『お疲れさま。 でも、あまり無理しないでね。 辛くなったらちゃんとタクシー使ってね』 | ||||
12 | 春希くんは、リハビリを始めた。 | ||||
13 | お医者さんとも相談しながら、少しずつ。 | ||||
14 | まずは週に一度くらい、図書館で日中を過ごし、 静かながらも人に触れ、そして社会に触れる。 | ||||
15 | もちろんそのことも嬉しかったけど、 わたしにとって一番の朗報が、これ。 | ||||
16 | 『でも、確かに今日は歩きたくなるのもわかるよ。 ほんっと、空気が気持ちいいよね』 | ||||
17 | 春希くんが、メールを再開した。 | ||||
18 | しばらく、携帯の電源すら入れられなかったけれど。 今もまだ、電話はかけられないし、出られないけれど。 | ||||
19 | それでもわたしには、わたしだけには、 ふたたび語りかけてくれるようになった。 それが、本当に嬉しい。 | ||||
20 | 『あ、わたしも今、出先からの移動中。 別に仕事サボってメールしてるわけじゃないから』 | ||||
21 | 昔から、彼のメールは、わたしの支えだった。 | ||||
22 | 一日に一度だけ届くメッセージを待ち望んだ日々。 | ||||
23 | 一日に一度だけの約束だったのに、 二通目を、三通目を期待して、 今みたいに返信し続けた日々。 | ||||
24 | 『…移動中に私用メールってのが、 サボってないかというと微妙なところかな? あはは』 | ||||
25 | すれ違ってしまったときも、 拒絶してしまったときも、 そして、絆が傷ついてしまったときも。 | ||||
26 | そのたび、たった一通のメールが、 わたしたちを再び繋げてくれたから。 | ||||
27 | 『それはそうと、もう職場復帰のこと考えてるんだ。 すごいね、だいぶよくなったみたいだね』 | ||||
28 | 『でも、そんなに慌てなくていいよ。 前にも言ったけれど、 ゆっくり、しっかり段階踏んでいこう』 | ||||
29 | 『面談の結果とか、お薬のこととか、 職場の現状とか見てさ、 二人で一緒に考えて決めていこうよ』 | ||||
30 | 『そんなわけで、今週末、やっぱりそっちに行きます。 いろいろ話したいことできたもんね』 | ||||
31 | 『ていうか、 週に一度のわたしの楽しみを奪わないで欲しいな~ 絶対行くからね!』 | ||||
32 | 『それじゃ』 | ||||
33 | 雪菜 | Setsuna | 「週末…か」 | ||
34 | でも… | ||||
35 | 嬉しくもあるけれど、 そんな自分の満足だけに浸ってるわけにはいかない。 | ||||
36 | 今日の彼のメールは、確かに前向きだった。 意欲が、滲み出ていた。 | ||||
37 | けれど、だからこそ不安も感じる。 取り越し苦労だったらいいんだけれど… | ||||
38 | いきなり職場復帰だなんて、 ちょっと判断が早すぎる。 | ||||
39 | もっと色んな人に相談して、冷静に判断しないと。 | ||||
40 | それに、今週末は確か… | ||||
41 | アナウンサー | Announcer | 「続きまして、週末のお天気です」 | ||
42 | アナウンサー | Announcer | 「明日の午後より、 西の方から湿った空気が入り込んできます」 | ||
43 | アナウンサー | Announcer | 「九州、四国地方に引き続き、この週末、 近畿から関東にかけて一気に梅雨入りが予想され…」 | ||
44 | ……… | .........
| |||
45 | 雪菜 | Setsuna | 「ただいま…」 | ||
46 | そして、週末の金曜日… | ||||
47 | 雪菜 | Setsuna | 「春希、くん?」 | ||
48 | 相変わらず閉め切って暗い部屋の中には、 けれど確かに人の気配があった。 | ||||
49 | けれどその気配は、いつも通りのベッドの中ではなく… | ||||
50 | 春希 | Haruki | 「来なくていいって言っただろ」 | ||
51 | ベッドの反対側の、部屋の片隅。 | ||||
52 | 壁にもたれかかり、中空を見上げていた彼の、 いつも以上に力のない声がようやく届く。 | ||||
53 | 雪菜 | Setsuna | 「面談は?」 | ||
54 | 春希 | Haruki | 「………行かなかった」 | ||
55 | 雪菜 | Setsuna | 「そっか」 | ||
56 | 春希 | Haruki | 「雨が… 雨がさ。 ずっと、やまなくて、さ」 | ||
57 | 雪菜 | Setsuna | 「うん、正解。 出なくてよかったよ。 ほら見て、わたしもビショビショで…」 | ||
58 | 春希 | Haruki | 「くそっ、なんで降るんだよ。 こんな大事な日に限ってさ…っ」 | ||
59 | 昨日のメールの文面とは対照的な 口調、声、そして言葉。 | ||||
60 | 今の春希くんは、ほんの少しのきっかけで、 こんなふうに、大きく感情が振れてしまう。 | ||||
61 | 雪菜 | Setsuna | 「お天気は仕方ないよ。 また今度、日を改めて、ね?」 | ||
62 | 彼の隣に腰掛ける。 彼が濡れないように、少しだけ距離を置いて。 | ||||
63 | …彼を怯えさせないように、 息苦しさを感じさせないように、 ほんの少しだけ距離を置いて。 | ||||
64 | 春希 | Haruki | 「けど俺、この前の面談も行かなかった。 これで二か月、会社に顔出してない」 | ||
65 | 雪菜 | Setsuna | 「だからぁ、そんなに急ぐ必要ないって。 ほんっと、春希くんは昔っから慌て者だよね」 | ||
66 | そっと肩に手を置く。 それくらいのスキンシップなら、拒絶されないだろうって。 | ||||
67 | …そんなふうに、 毎日のように変わってしまう彼との距離感を、 今日も、手探りで測る。 | ||||
68 | 春希 | Haruki | 「このままじゃ、みんなに忘れられる。 俺なんか、最初からいなかったことになる」 | ||
69 | 雪菜 | Setsuna | 「そんなわけないって。 みんな、ちゃんと待っててくれるって」 | ||
70 | 春希 | Haruki | 「どうしてそんなことがわかるんだよ… 雪菜に、俺の職場の何が…」 | ||
71 | 雪菜 | Setsuna | 「それは…ほら、わたしも似たような仕事してるし」 | ||
72 | 春希 | Haruki | 「雪菜は…いいよな。 忙しそうでさ」 | ||
73 | 雪菜 | Setsuna | 「ただ仕事が遅いだけだよ。 相変わらず周囲に迷惑かけてばっかり」 | ||
74 | 春希 | Haruki | 「みんなに必要にされてて、いいよな」 | ||
75 | 雪菜 | Setsuna | 「だからぁ、春希くんだって必要とされてるよ。 寄せ書きだってくれたじゃない、みんな」 | ||
76 | 彼のベッドの脇には、 開桜グラフ編集部の人たちが贈ってくれた 色紙が飾られている。 | ||||
77 | なんでも、今はアメリカにいる元上司の人が、 わざわざ声を掛けて集めてくれたんだそうだ。 | ||||
78 | 春希 | Haruki | 「あれはみんなの…二か月も前の気持ちだよ。 俺が、すぐ元気になるって 信じてくれてた頃の気持ちだよ」 | ||
79 | 雪菜 | Setsuna | 「すぐだなんて思ってないよ。 いつか元気になればいいって、そう思ってくれてるよ」 | ||
80 | そう、彼はそれほどまでに、 今の会社に必要とされている。 | ||||
81 | 春希 | Haruki | 「今はどう思ってるかわからないよ… いや、もう、何の感情も持ってないかもしれない」 | ||
82 | ただ、今の彼自身がそれを信じられないだけ。 | ||||
83 | 雪菜 | Setsuna | 「待っててくれるよ… それほどまでに、あなたは今まで結果を出してきた。 絶対、待っててくれるから」 | ||
84 | 春希 | Haruki | 「わかるもんか。 人の気持ちなんて変わるものだろ…」 | ||
85 | 雪菜 | Setsuna | 「ううん、変わらないって」 | ||
86 | 春希 | Haruki | 「いいや、変わる。 だって俺は、二年も一緒だった君を…」 | ||
87 | 雪菜 | Setsuna | 「っ…」 | ||
88 | 春希くんの、自分でも制御できない言葉が、 わたしにも、ちょっとだけ突き刺さる。 | ||||
89 | けれどその痛みは、 多分、彼が意図したものとはちょっとだけ違ってて。 | ||||
90 | 春希 | Haruki | 「ずっと愛していたはずの雪菜を、裏切った…」 | ||
91 | そう、だからだよ… | ||||
92 | だからわたしは信じられるんだよ。 変わらない気持ちが、色褪せない想いがあるってことを。 | ||||
93 | 五年もかずさを忘れなかったあなたが側にいるから、 信じられてしまうんだよ… | ||||
94 | 春希 | Haruki | 「やっぱり、おかしいよ… どうして雪菜は、俺のそばにい続けられるんだよ…」 | ||
95 | 雪菜 | Setsuna | 「だから、それはわたしのワガママで…」 | ||
96 | 春希 | Haruki | 「確かに俺は言ったよ… 『雪菜がいないと生きていけない』って」 | ||
97 | 雪菜 | Setsuna | 「そう、だったかな…」 | ||
98 | 春希 | Haruki | 「けれど、だからって、 こんな俺なんかの側にいちゃ駄目だろ。 生きていけないなら、死ぬべきだろ、俺」 | ||
99 | 雪菜 | Setsuna | 「春希くん…駄目だよ。 そんなこと、冗談でも思っちゃいけないんだってば…っ」 | ||
100 | 春希 | Haruki | 「死んじまえ、俺…っ、 雪菜を、自由にしてやれよ…っ」 | ||
101 | 雪菜 | Setsuna | 「ごめん、ごめんね… あなたを苦しめてしまって、ごめんなさい」 | ||
102 | 春希 | Haruki | 「謝るなよ… ますます俺が惨めになるじゃないか…っ」 | ||
103 | 雪菜 | Setsuna | 「春希くん…」 | ||
104 | 震える彼の体が、今までで一番小さく見える。 | ||||
105 | そんな小さな体を、力一杯抱きしめたい。 重く辛い苦しみを、少しでも和らげたい。 | ||||
106 | けれど、今はできない。 | ||||
107 | だって、わたしの抱擁は、 きっと、彼をいばらの蔓のように、傷つけ絡め取るから。 | ||||
108 | 春が過ぎ、暦の上では夏が来た。 | ||||
109 | そして… | ||||
110 | 暑さとともに、 この、湿っぽく、薄暗い季節がやってきた。 | ||||
111 | ……… | .........
| |||
112 | …… | ......
| |||
113 | … | ...
| |||
114 | 雪菜 | Setsuna | 「………ぁ」 | ||
115 | 目が覚めると、そこは見慣れすぎた天井。 | ||||
116 | 二年間、毎週末見てきた彼の部屋の、じゃない。 生まれてからずっと見てきた、わたしの部屋の天井。 | ||||
117 | 目覚ましを止めて窓を開けると、 やっぱり今日も、昨日と同じ嫌な色の空がわたしを迎える。 | ||||
118 | また今日も、雨… | ||||
119 | 雪菜 | Setsuna | 「ん~」 | ||
120 | 春希くんの部屋で迎えない、週末の朝。 | ||||
121 | そう、結局昨夜は泊まらなかった。 | ||||
122 | 昨日の彼は、わたしが側にいるだけで参ってしまうほどの、 十日に一度くらい陥る、どん底の状態だったから。 | ||||
123 | 雨の音と、空の暗さと、生温い空気にあてられて、 元気も、勇気も奪われてしまっていたから。 | ||||
124 | そんな日は、慰めても、励ましても、優しくしても、 春希くんが力を取り戻すことは、経験上ない。 | ||||
125 | だからわたしは、少しでも彼が安らげる方法… 彼の前から、いなくなることしかできなかった。 | ||||
126 | 雪菜 | Setsuna | 「起きなくちゃ…」 | ||
127 | 休みの日の朝になると、 いつもわたしをベッドに縛り付けようとする 低血圧と戦いながら、ゆっくりと体を起こす。 | ||||
128 | 雪菜 | Setsuna | 「行かなくちゃ…」 | ||
129 | 今日も、春希くんの部屋で彼と過ごすために。 | ||||
130 | あれから、ちゃんと眠れただろうか。 少しは気力を取り戻せただろうか。 | ||||
131 | 食事は摂っただろうか。 | ||||
132 | なにしろ目を離すと、 水すら一滴も飲まずに何日も過ごしていることもあるから そこはきちんと確認しないと。 | ||||
133 | そんな様々な心配事に思いを馳せ、 わたしは着替えるために寝間着に手を掛けて… | ||||
134 | 雪菜 | Setsuna | 「………あれ」 | ||
135 | さっきの、自分の口から出たはずの言葉に、 嫌な感じの違和感を覚えた。 | ||||
136 | 『行かなくちゃ』って、どういうこと…? | ||||
137 | ……… | .........
| |||
138 | 雪菜 | Setsuna | 「じゃあ、出かけてくるね」 | ||
139 | 雪菜の母 | Setsuna's Mother | 「あ、雪菜、今日はお夕飯は?」 | ||
140 | 週末出かけるときは、行き先なんか言わない。 | ||||
141 | そして家族も、今さら行き先なんか聞かない。 | ||||
142 | 雪菜 | Setsuna | 「いらない。 向こうで食べてくるから」 | ||
143 | 雪菜の母 | Setsuna's Mother | 「…今日は帰ってくる?」 | ||
144 | それほどまでに、 わたしの居場所に選択肢なんかない。 | ||||
145 | 雪菜 | Setsuna | 「…わかんない。 どっちにしても一度電話するから」 | ||
146 | 雪菜の母 | Setsuna's Mother | 「そう… 雨降ってるから、滑らないように気をつけなさい」 | ||
147 | 雪菜 | Setsuna | 「うん、わかってる。 それじゃ、行ってきます」 | ||
148 | それが、ここ二年間の、我が家の当たり前の日常。 | ||||
149 | 半年くらい前までは、苦笑交じりにスルーされ、 そして今は、ため息交じりにスルーされる、日常。 | ||||
150 | 雪菜の父 | Setsuna's Father | 「待ちなさい、雪菜」 | ||
151 | 雪菜 | Setsuna | 「お父さん…」 | ||
152 | けれど、今日は… | ||||
153 | 雪菜の父 | Setsuna's Father | 「ちょっと話があるんだ。 母さんも一緒に」 | ||
154 | 雪菜 | Setsuna | 「ごめん、今は急ぐから。 今夜か、できれば明日の夜になんないかな?」 | ||
155 | 雪菜の父 | Setsuna's Father | 「いいや、今でなければ駄目だ。 ちゃんと話してからでないと、外出は認めないぞ」 | ||
156 | 雪菜の母 | Setsuna's Mother | 「あなた…」 | ||
157 | 雪菜 | Setsuna | 「それって…」 | ||
158 | そんな当たり前の停滞した日常に、 湿った風が吹き込んでくる。 | ||||
159 | 今日の、この天気のように。 | ||||
160 | ……… | .........
| |||
161 | 雪菜 | Setsuna | 「それって、もう行くなってこと? 彼のこと、見捨てろってこと!?」 | ||
162 | 雪菜の父 | Setsuna's Father | 「そんなことは言っていないだろう。 わざと話を極端に持って行くのはやめなさい」 | ||
163 | 雪菜 | Setsuna | 「極端なこと言ってるのはお父さんの方だよ!」 | ||
164 | もう、行くなって言われた。 彼と、距離を置けって言われた。 | ||||
165 | 本当は、少し前からそれらしき気配はあった。 とうとう今日、それを口にした。 | ||||
166 | 湿った空気が、ますますわたしに重くまとわりつく。 | ||||
167 | 雪菜 | Setsuna | 「春希くんは、もう家族なんだよ? それなのに、ちょっと病気になったくらいで そんな薄情なこと言い出すなんて酷いよ!」 | ||
168 | 雪菜の父 | Setsuna's Father | 「彼には、本当の家族がいる。 まずはそちらにお願いするというのは筋じゃないか」 | ||
169 | 『彼の問題は彼の家族が解決すべきだ』 それが、お父さんの主張だった。 | ||||
170 | 雪菜の父 | Setsuna's Father | 「逆に、彼の家族の意見を聞かないことの方が 薄情だとも言えるんじゃないのか?」 | ||
171 | 雪菜 | Setsuna | 「何度も説明したじゃない… 春希くんは、お母さんとうまくいってないんだよ…」 | ||
172 | もう、数年間もまともに話したこともない 相手に任せろって… | ||||
173 | 雪菜の父 | Setsuna's Father | 「確かにその話は何度も雪菜から聞いたが、 北原君本人から詳しく聞いたことはない」 | ||
174 | 雪菜 | Setsuna | 「話すことだって辛いんだよ… 今の状態の春希くんに、 そんな精神的負担はかけられないよ」 | ||
175 | わたしにしか話さない… わたしと、もう一人にしか話さない… | ||||
176 | ううん、彼女と、ついでにわたしにしか話さない、 彼の、切り捨てた過去のこと。 | ||||
177 | 雪菜の母 | Setsuna's Mother | 「北原さんの症状は、もしかしたら、 家族関係にも原因があるのかもしれないわね」 | ||
178 | 雪菜の父 | Setsuna's Father | 「だったらなおさら原因を取り除く努力をするべきだろう。 家族との対話が、いいきっかけになるかもしれない」 | ||
179 | 雪菜 | Setsuna | 「悪い方のきっかけになる可能性だってあるよね?」 | ||
180 | お母さんの控えめな助け船は、 お父さんの強めの正論で簡単に霧散する。 | ||||
181 | だから結局、この場はわたしが頑張るしかない。 | ||||
182 | 雪菜 | Setsuna | 「お父さんのいうこと、確かに正しいのかもしれないけど、 口だけで温かみがなさすぎるよ!」 | ||
183 | 雪菜の父 | Setsuna's Father | 「口だけのつもりはない。 私だって、北原君のことは心配している」 | ||
184 | 雪菜 | Setsuna | 「だったら…っ」 | ||
185 | 雪菜の父 | Setsuna's Father | 「だから、できるだけのことはするつもりだ。 …彼の家族と会って話をしてもいい」 | ||
186 | 雪菜 | Setsuna | 「え…」 | ||
187 | 雪菜の母 | Setsuna's Mother | 「あなた、それは…」 | ||
188 | でも、今日のお父さんは手強かった。 | ||||
189 | いつもの、ただ正しく強いだけの説得ではなく、 こちらへの歩み寄りを、思いやりを見せてくれた。 | ||||
190 | …自分そっくりの強情な娘の扱いに悩んだのかもしれない。 | ||||
191 | 雪菜の父 | Setsuna's Father | 「単に、子供の頃の行き違いがもとで 捻れてしまっているだけかもしれない。 一度、母親の真意を確かめる必要があるんじゃないか?」 | ||
192 | 雪菜 | Setsuna | 「お父さん…」 | ||
193 | お父さんの提案は、 わたしがずっと前から考えていたことと同じだった。 | ||||
194 | 雪菜の父 | Setsuna's Father | 「単なる誤解だったら解けばいい。 けれど、もし彼の言う通り、根が深いのであれば、 もっと色々考えていかなければならない」 | ||
195 | 雪菜 | Setsuna | 「色々って、なに?」 | ||
196 | だから、わたしと同じくらい、 彼のことを気に掛けてくれているということ。 | ||||
197 | 雪菜の父 | Setsuna's Father | 「色々は色々だ。 雪菜任せにするのではなく、 家族で支えるという考え方もある」 | ||
198 | 雪菜 | Setsuna | 「他には?」 | ||
199 | 雪菜の父 | Setsuna's Father | 「それは先方ときちんと話をしてからだ。 どうすれば良いのか、もっと真面目に考えるべきだろう」 | ||
200 | 雪菜 | Setsuna | 「………」 | "........."
| |
201 | けれど… | ||||
202 | お父さんには、わたしみたいな迷いがない。 その思いつきを、躊躇しない。 | ||||
203 | 雪菜の父 | Setsuna's Father | 「雪菜。私たちも協力する。 腰を据えてやっていこう。 だから、あまり彼にのめり込むんじゃない」 | ||
204 | 雪菜の父 | Setsuna's Father | 「お前も会社勤めをしてまだ二年だ。 今は自分のことだけでも精一杯だろう?」 | ||
205 | もし、彼の家族を巻き込んで、 春希くんが今よりも悪化してしまったらとか。 | ||||
206 | 家族同士の話し合いがうまく行かず、 本人たちの思惑と関係ないところで、 両家の溝が深まってしまったらとか。 | ||||
207 | そういう、この判断が不正解だったら どうすればいいんだろうという、不安が何一つない。 | ||||
208 | 雪菜 | Setsuna | 「話は…それだけかな? じゃあわたし、そろそろ出かけないと」 | ||
209 | 雪菜の母 | Setsuna's Mother | 「雪菜…」 | ||
210 | …つまり、もしやり方を間違えて 春希くんが、わたしたちの関係が壊れてしまっても… | ||||
211 | 雪菜 | Setsuna | 「お父さんの言ってることは正しいと思う… けれど、正しいだけだよ、そんなの」 | ||
212 | それはきっと、 『仕方ない』とか『縁がなかった』で終わってしまう。 | ||||
213 | 雪菜 | Setsuna | 「そんな理屈通りで人の気持ちがどうにかなるのならさぁ、 そもそも、あんな病気なんてこの世に存在しないよ」 | ||
214 | 雪菜の父 | Setsuna's Father | 「だからって、今のままでは何も進まないじゃないか」 | ||
215 | 雪菜 | Setsuna | 「進むよ! 治るよ! わたしが必ず春希くんを元通りにしてみせるよ!」 | ||
216 | 今のわたしに、そんな悠長で、 リスクの高い選択肢が受け入れられるわけがない。 | ||||
217 | 雪菜 | Setsuna | 「お母さんは…わかってくれるよね?」 | ||
218 | 雪菜の母 | Setsuna's Mother | 「………」 | "........."
| |
219 | だからわたしは、少し卑怯なのはわかっているけど、 数の力で押し切ろうとする。 | ||||
220 | 雪菜 | Setsuna | 「ね、お母さん… もう少しだけ、わたしを信じてよ?」 | ||
221 | さっきから、控えめながらも、 わたしの味方をしてくれていた お母さんを引きずり込むことで。 | ||||
222 | 雪菜の母 | Setsuna's Mother | 「もう少し…もう少しだけなら、 雪菜のやりたいようにやらせてあげても いいかと思います」 | ||
223 | 雪菜 | Setsuna | 「お母さん…っ」 | ||
224 | そして、その目論見はみごとに的中した。 | ||||
225 | 雪菜の父 | Setsuna's Father | 「母さん、しかし…」 | ||
226 | 雪菜の母 | Setsuna's Mother | 「先方の親御さんとの話にしても、 北原さんが望むかどうかはわかりませんし」 | ||
227 | 雪菜 | Setsuna | 「今はまだ無理だよ。 春希くんには判断できないし、させたくない」 | ||
228 | 雪菜の父 | Setsuna's Father | 「だが、いずれ親戚になるのなら、 早かろうが遅かろうが、 こういうことはハッキリさせておいた方が」 | ||
229 | 雪菜の母 | Setsuna's Mother | 「私はその、ちょっと… 今回の件については、お父さんと少し違うんです」 | ||
230 | 雪菜の父 | Setsuna's Father | 「何が違うと言うんだ? 母さんは、雪菜のことが心配じゃないのか?」 | ||
231 | 雪菜の母 | Setsuna's Mother | 「いえ、私も雪菜のことを一番に考えています」 | ||
232 | 雪菜 | Setsuna | 「だから、わたしは平気だよ。 お父さんは心配性過ぎるんだよ」 | ||
233 | 雪菜の母 | Setsuna's Mother | 「だけど、わたしの言いたいことは、違うんです。 …こういうことは、本当は言いたくないのですけれど」 | ||
234 | 的中した、はずだった… | ||||
235 | 雪菜の母 | Setsuna's Mother | 「もし、二人の間に何か問題が起こって、その… 駄目になってしまったら…」 | ||
236 | 雪菜 | Setsuna | 「お…お母さん?」 | ||
237 | だから、その時お母さんの口から出てきた言葉が、 数秒間ほど理解できなかった。 | ||||
238 | 雪菜の母 | Setsuna's Mother | 「そういう場合は、家族同士が知り合いでない方が 後々いいんじゃないかと…」 | ||
239 | 雪菜の父 | Setsuna's Father | 「母さん…?」 | ||
240 | 雪菜 | Setsuna | 「何言ってるのお母さん!?」 | ||
241 | それは、衝撃だった。 | ||||
242 | 味方だと思っていた。 お父さんからわたしを庇ってくれるって信じていた。 | ||||
243 | なのに、今のお母さんの言葉は… | ||||
244 | 雪菜の母 | Setsuna's Mother | 「雪菜、聞いて。 これは、北原さんの病気のことを抜きにしても、 考えておかなくちゃならないことだと思うの」 | ||
245 | 雪菜 | Setsuna | 「ちょっと、待って…?」 | ||
246 | わたしの判断を後押ししてくれた。 お父さんの提案を遮ってくれた。 | ||||
247 | けれどそれは、 わたしが正しいと思ったからでも、 お父さんが間違っていると思ったからでもなく… | ||||
248 | ただ、たまたま思惑が一致しただけ。 | ||||
249 | わたしは家族の横やりで、 二人が危機に陥ることを危惧した。 | ||||
250 | けれどお母さんは、二人が壊れてしまったあとの 家族のしがらみのことを気にしている。 | ||||
251 | 雪菜の母 | Setsuna's Mother | 「あなたもまだ、24なんだし、 一度くらい失敗しても、十分にやり直しの利く…」 | ||
252 | 雪菜 | Setsuna | 「失敗なんかしない! やり直しなんかありえない! わたしは彼と幸せになるの!」 | ||
253 | 雪菜の母 | Setsuna's Mother | 「雪菜…」 | ||
254 | 頭の中が真っ白になる。 けれど視界は真っ暗になる。 そして、首の後ろが灼けるように熱い。 | ||||
255 | 雪菜 | Setsuna | 「なんで? どうして今になって、 そんなこと言い出すのお母さん!?」 | ||
256 | お父さんの命令や忠告よりも、 お母さんの助言や援護の方が、冷たく、鋭かったから。 | ||||
257 | ……… | .........
| |||
258 | 孝宏 | Takahiro | 「姉ちゃん、待てよ」 | ||
259 | 雪菜 | Setsuna | 「ほっといてよ! どうせお母さんに何か言われたんでしょ!」 | ||
260 | 孝宏 | Takahiro | 「この雨の中、傘なしで出かける気かよ… ほら、持ってけよ」 | ||
261 | 雪菜 | Setsuna | 「………っ」 | ||
262 | 激昂したまま荷物を掴んで家を飛び出した瞬間、 天からの大粒の雨が、わたしの全身を容赦なく叩く。 | ||||
263 | 仕方なく踵を返して玄関に戻る。 …と、その踵に履いていたものもただの突っかけだった。 | ||||
264 | 孝宏 | Takahiro | 「母さんはさ…薄々気づいてるんだよ」 | ||
265 | 雪菜 | Setsuna | 「何に」 | ||
266 | 孝宏と目を合わせないまま、傘だけ受け取る。 ついでに下駄箱から新しいレインシューズを取り出す。 | ||||
267 | 孝宏 | Takahiro | 「姉ちゃんと北原さん、 なんかトラブルがあったんじゃないかって。 それも、婚約とか言い出した頃からさ」 | ||
268 | 雪菜 | Setsuna | 「………」 | "........."
| |
269 | 目を合わせないままで、良かった。 今の表情を見られなくて、本当に良かった。 | ||||
270 | 孝宏 | Takahiro | 「北原さんがああなったのだって、 本当はそっちに原因があったんじゃないかって…」 | ||
271 | 雪菜 | Setsuna | 「………ないよ。 トラブルもないし、だから原因もない」 | ||
272 | 孝宏 | Takahiro | 「本当に?」 | ||
273 | 雪菜 | Setsuna | 「本当に決まってる…ずっと愛し合ってるよ。 今までも、今だって、これからも!」 | ||
274 | 孝宏 | Takahiro | 「…だからって弟にそういう直接的なこと言われても、 色々モヤモヤするんだけど」 | ||
275 | 雪菜 | Setsuna | 「余計なこと言い出す孝宏が悪いんじゃない」 | ||
276 | 問題なんか何一つないって言ってるのに、 どうしてうちの家族は、こんなに心配性なんだろう。 | ||||
277 | 孝宏 | Takahiro | 「なぁ、姉ちゃん。 本当に、北原さんと結婚するつもりなのか?」 | ||
278 | 雪菜 | Setsuna | 「どうして今になってそういうこと言い出すのよ。 お母さんも、孝宏も…」 | ||
279 | そして、どうしてうちの家族は、 家族じゃない人間に対して、こうも猜疑心が強いんだろう。 | ||||
280 | 雪菜 | Setsuna | 「二人とも、今まで彼のこと、 ずっと家族みたいにしてくれてたじゃない!」 | ||
281 | 半年前まで、彼は間違いなく家族だったのに。 | ||||
282 | そして、そのことは彼にとっても嬉しい出来事だったのに。 | ||||
283 | 照れくさそうに微笑みながら、 寝物語に聞かせてくれたのに。 | ||||
284 | 孝宏 | Takahiro | 「今だって別に嫌ってなんかいないよ。 けど、このままじゃ姉ちゃんが…」 | ||
285 | 雪菜 | Setsuna | 「わたしが、なに?」 | ||
286 | 孝宏 | Takahiro | 「………」 | "........."
| |
287 | なのに、どうして、こうなっちゃったんだろう… | ||||
288 | 雪菜 | Setsuna | 「大丈夫…春希くんは、すぐによくなるよ。 また、全部元通りになるよ。 春希くんも、うちも」 | ||
289 | 孝宏 | Takahiro | 「もう四か月も経つけど何も変わってないじゃん」 | ||
290 | 雪菜 | Setsuna | 「時間かかるのよ、こういうのは」 | ||
291 | 孝宏 | Takahiro | 「じゃあ、すぐによくなるって嘘じゃん」 | ||
292 | 雪菜 | Setsuna | 「っ! どうしてそういう揚げ足ばっかり取るのよ!」 | ||
293 | 孝宏 | Takahiro | 「あ、いや、ごめん。 ただ、姉ちゃんが一方的に貧乏くじ引いてるみたいな 今の状態に納得がいかないっていうか…」 | ||
294 | 雪菜 | Setsuna | 「そう思うんなら何も言わずに支えてくれるのが 本当の家族ってものじゃないの?」 | ||
295 | 孝宏 | Takahiro | 「それはそうかもしんないけどさ…」 | ||
296 | 雪菜 | Setsuna | 「今が大事な時期なんだよ。 お父さんもお母さんも、 そのことが全然わかってないんだよ」 | ||
297 | お父さんは、彼を家族から家族候補に格下げし。 お母さんは、わたしたちが別れる可能性を否定しなくなり。 孝宏は、彼の誠実を疑うようになり。 | ||||
298 | 雪菜 | Setsuna | 「今こそ慎重に、ゆっくり、 春希くんを支えていかなくちゃならないんだよ」 | ||
299 | もう、春希くんの味方はわたしだけ…なんだろうか。 | ||||
300 | 孝宏 | Takahiro | 「………」 | "........."
| |
301 | 雪菜 | Setsuna | 「何よ? お姉ちゃんの言ったこと、何か間違ってる?」 | ||
302 | 孝宏 | Takahiro | 「別にそうは思わないけどさ… けど、いいのかよ姉ちゃん? その言い方で」 | ||
303 | 雪菜 | Setsuna | 「言い方って、何が…」 | ||
304 | 孝宏 | Takahiro | 「『支えていかなくちゃならない』ってさ、 なんか嫌々でやってるみたいじゃん」 | ||
305 | 雪菜 | Setsuna | 「ぇ…」 | ||
306 | 孝宏 | Takahiro | 「今までの姉ちゃんなら 『支えたい』って言ってたと思うけどな」 | ||
307 | 雪菜 | Setsuna | 「え、え…っ?」 | ||
308 | 『行かなくちゃ…』 | ||||
309 | 『支えていかなくちゃ』 | ||||
310 | 孝宏 | Takahiro | 「俺は、部外者だから そうそうえらそうなことは言えないけどさ…」 | ||
311 | わたしの言葉から、失われかけているものは、なに? | ||||
312 | 強さ? 嬉しさ? 前向きさ? | ||||
313 | 孝宏 | Takahiro | 「北原さんにのめり込むのはいつものことだけどさ… 今度ばっかりは気をつけろよ? …引きずり込まれないようにさ」 | ||
314 | 雪菜 | Setsuna | 「そう思うんならみんなももっと気を使ってよ! お父さんも、お母さんも、孝宏もっ!」 | ||
315 | 孝宏 | Takahiro | 「………」 | "........."
| |
316 | 雪菜 | Setsuna | 「っ…ごめん」 | ||
317 | 孝宏 | Takahiro | 「いや… 俺も言い過ぎてるってわかってるから」 | ||
318 | 雪菜 | Setsuna | 「出かけてくる。 今日、帰らないから」 | ||
319 | じゃあ、わたしの言葉に、染み込んできたものは、なに? | ||||
320 | 雪菜 | Setsuna | 「頑張れ…」 | ||
321 | 疲労? 義務感? 弱々しさ? | ||||
322 | 雪菜 | Setsuna | 「頑張れ、わたし!」 | ||
323 | そういえば… | ||||
324 | 頑張れって… 言っちゃ、いけないん、だっけ… |
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Introductory Chapter | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
1001 | 1008 | 1009 | 1010 | 1011 | 1012 | 1013 |
1002 | 1008_020 | 1009_020 | 1010_020 | 1011_020 | 1012_020 | |
1003 | 1008_030 | 1009_030 | 1010_030 | 1011_030 | 1012_030 | |
1004 | 1008_040 | 1010_040 | 1012_030_2 | |||
1005 | 1008_050 | 1010_050 | ||||
1006 | 1010_060 | |||||
1006_2 | 1010_070 | |||||
1007 |
Closing Chapter | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Common | Setsuna | Koharu | Chiaki | Mari | ||||||
2001 | 2011 | 2020 | 2027 | 2301 | 2309 | 2316 | 2401 | 2408 | 2501 | 2510 |
2002 | 2012 | 2021 | 2028 | 2302 | 2310 | 2317 | 2402 | 2409 | 2502 | 2511 |
2003 | 2013 | 2022 | 2029 | 2303 | 2311 | 2318 | 2403 | 2410 | 2503 | 2512 |
2004 | 2014 | 2023 | 2030 | 2304 | 2312 | 2319 | 2404 | 2411 | 2504 | 2513 |
2005 | 2015 | 2024 | 2031 | 2305 | 2313 | 2320 | 2405 | 2412 | 2505 | 2514 |
2006 | 2016 | 2025 | 2032 | 2306 | 2314 | 2321 | 2406 | 2413 | 2506 | 2515 |
2007 | 2017 | 2026 | 2033 | 2307 | 2315 | 2322 | 2407 | 2507 | 2516 | |
2008 | 2018 | 2308 | 2508 | 2517 | ||||||
2009 | 2019 | 2509 | ||||||||
2010 | ||||||||||
Setsuna | Koharu | Chiaki | Mari | |||||||
2031_2 | 2312_2 | 2401_2 | 2504_2 | 2511_2 | ||||||
2031_3 | 2313_2 | 2402_2 | 2507_2 | 2513_2 | ||||||
2031_4 | 2313_3 | 2402_3 |
Coda | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Common | Kazusa (True) | Setsuna (True) | Kazusa (Normal) | ||||||
3001 | 3008 | 3014_2 | 3020 | 3101 | 3107 | 3201 | 3207 | 3901 | 3907 |
3002 | 3009 | 3014_3 | 3021 | 3102 | 3108 | 3202 | 3208 | 3902 | 3908 |
3003 | 3010 | 3015 | 3022 | 3103 | 3109 | 3203 | 3209 | 3903 | 3909 |
3004 | 3011 | 3016 | 3023 | 3104 | 3110 | 3204 | 3210 | 3904 | |
3005 | 3012 | 3017 | 3024 | 3105 | 3111 | 3205 | 3211 | 3905 | |
3006 | 3013 | 3018 | 3106 | 3206 | 3906 | ||||
3007 | 3014 | 3019 | |||||||
Common | Setsuna (True) | Kazusa (Normal) | |||||||
3001_2 | 3210_2 | 3901_2 | 3906_2 | ||||||
3015_2 | 3902_2 | 3907_2 | |||||||
3902_3 | 3907_3 | ||||||||
3904_2 |
Mini After Story and Extra Episode | |||
---|---|---|---|
The Path Back to Happiness | The Path Forward to Happiness | Dear Mortal Enemy | |
6001 | 6101 | 4000 | 4005 |
6002 | 6102 | 4001 | 4006 |
6003 | 6103 | 4002 | 4007 |
6004 | 6104 | 4003 | 4008 |
6005 | 4004 | 4009 |
Novels | |||||
---|---|---|---|---|---|
The Snow Melts, And Until The Snow Falls | The Idol Who Forgot How to Sing | Twinkle Snow ~Reverie~ | After the Festival ~Setsuna's Thirty Minutes~ | His God, Her Savior | |
5000 | 5100 | 5200 | 5205 | 5300 | 5400 |
5001 | 5101 | 5201 | 5206 | 5301 | 5401 |
5002 | 5102 | 5202 | 5207 | 5302 | |
5003 | 5103 | 5203 | 5208 | 5303 | |
5004 | 5104 | 5204 | 5209 |
Short Stories | |||
---|---|---|---|
Princess Setsuna's Distress and Her Minister's Sinister Plan | Koharu Climate After the Passing of the Typhoon | This isn't the Season for White Album | Todokanai Koi, Todoita |
7000 | 7100 | 7200 | 7300 |