White Album 2/Script/6102
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Speaker | Text | Comment | |||
---|---|---|---|---|---|
Line # | JP | EN | JP | EN | |
1 | 春希 | Haruki | 「それじゃ、行ってきます」 | ||
2 | 雪菜 | Setsuna | 「いい? さっきの約束、絶対だからね?」 | ||
3 | 春希 | Haruki | 「わかってる。 10時までには絶対帰る」 | ||
4 | 雪菜 | Setsuna | 「今日だけは、誰に誘われても 飲んできちゃ駄目だからね?」 | ||
5 | 春希 | Haruki | 「いや、さすがに所帯持ちを今日誘う人はいないだろ」 | ||
6 | 雪菜 | Setsuna | 「夜遅く特ダネが入って来ても 取材に行っちゃ駄目だからね? 先輩とか編集長に押し付けてでも帰ってくるんだよ?」 | ||
7 | 春希 | Haruki | 「っ……ぜ、善処します」 | ||
8 | 雪菜 | Setsuna | 「絶対だよ? 今日中に帰ってこなかったら、 わたし実家に戻っちゃうからね?」 | ||
9 | 春希 | Haruki | 「えっと……わかった。 絶対に、帰ってくるから」 | ||
10 | 雪菜 | Setsuna | 「それじゃ、行ってらっしゃいあなた」 | ||
11 | 春希 | Haruki | 「ああ……行ってきます」 | ||
12 | ………… | ||||
13 | いつもより長い『行ってきます』の後、 いつも通り、俺の唇に軽く雪菜の唇が触れる。 | ||||
14 | 今日の雪菜は、普段よりも随分と念入りで、 そしてある意味理不尽なワガママモードに入っていた。 | ||||
15 | ……けれどまぁ、それも仕方ない。 いや、夫としての度量とかそういうのとは関係なくて。 | ||||
16 | 雪菜がこういうモードに入るのは、たった年に三回。 | ||||
17 | 一つめは、雪菜の誕生日、2月14日。 この日は、まぁ、当然といえば当然だ。 | ||||
18 | 二つめは、4月の俺の誕生日。 別に、俺としてはどうということもないただの日だけど、 多分、一年で一番のご馳走が用意されているのはこの日だ。 | ||||
19 | そして三つめは…… | ||||
20 | それが今日……12月24日。 クリスマスイブ。 | ||||
21 | 普通の夫婦や恋人たちには、 プレゼントやデートのための、 まぁ、そこそこ商業主義に乗せられたメモリアルデー。 | ||||
22 | けれど俺たちには…… まぁ、何年越しかの、因縁の日、だったりして。 | ||||
23 | 北の温泉で、永遠の友情を誓ったり、 海沿いのホテルで、決定的な危機を迎えたり、 欧州の小都市で、ふたたびすれ違いが始まってしまったり。 | ||||
24 | そんな、主に俺の罪ばかりが強調される、 まぁ、ある意味とても重要なメモリアルデー。 | ||||
25 | だから俺は、 今日だけは、雪菜との約束を、 二度と破るわけにはいかない。 | ||||
26 | 今日中に雪菜にふたたび会って、 今日中に、メリークリスマスを告げて、 そして今日中に、俺には雪菜だけだと宣言する。 | ||||
27 | 春希 | Haruki | 「……よしっ!」 | ||
28 | というわけで、職場に辿り着く前に、 もう一度気合を入れ直す。 | ||||
29 | いつもの『仕事頑張ろう』とは真逆の、 とても社会人失格な、確固たる誓いを貫くために。 | ||||
30 | ………… | ||||
31 | 松岡 | Matsuoka | 「北原、こっち上がったからチェック頼むな」 | ||
32 | 鈴木 | Suzuki | 「あ、あとこっちのレイアウトもお願い~」 | ||
33 | 春希 | Haruki | 「その二件、了解いたしました! ……が続いて残念なお知らせです。本日の業務受付は ただ今を持ちまして終了させていただきます」 | ||
34 | ふと編集部の時計を見上げると、 いつの間にか午後8時を指している。 | ||||
35 | 雪菜と約束した『22時までに自宅』を守るには、 そろそろ仕事を収束させていかなくちゃならない時間帯だ。 | ||||
36 | 松岡 | Matsuoka | 「あ~、なにその態度? 一番の新入りのくせに生意気な」 | ||
37 | 鈴木 | Suzuki | 「よりによってイブの夜に そんなあからさまな態度取られると、 イラっとするよね~」 | ||
38 | ……なのだが、二人の先輩方は、 今年のクリスマスはどうやら色々とある……というか、 今年に関しては色々とないみたいだった。 | ||||
39 | 松岡 | Matsuoka | 「なんだ~北原は? さっさと帰って、あの美人の奥さんと イチャイチャクリスマスかぁ?」 | ||
40 | 鈴木 | Suzuki | 「ちょっと洒落になんないもんね~北原君の奥さん。 ナイツレコードの美人広報って業界でも有名なんだよね? なんでこんな堅物に引っかかっちゃったかなぁ」 | ||
41 | 松岡 | Matsuoka | 「やっぱ堅かったんじゃないかな色々と」 | ||
42 | 鈴木 | Suzuki | 「松っちゃん、それわたしが訴えたら 慰謝料がっぽりもらえるレベル」 | ||
43 | 春希 | Haruki | 「……二人とも、そんな無駄話してる暇があったら、 さっさと帰ったらどうですか? だいたい松岡さんだって彼女との約束ないんですか?」 | ||
44 | 松岡 | Matsuoka | 「それなんだよ! なぁ、ちょっと相談に乗ってくれよ北原……」 | ||
45 | 春希 | Haruki | 「え、でも俺、一番の新入りですし」 | ||
46 | 松岡 | Matsuoka | 「家庭持ちの先輩の意見を聞かせて欲しいんだよ! 頼むよ!」 | ||
47 | 春希 | Haruki | 「いや、俺の意見なんて……」 | ||
48 | 松岡 | Matsuoka | 「実はさ、俺、今、彼女にプレッシャーかけられててさ、 今会ったら、何らかの決心しなくちゃならない 状況なんだよね」 | ||
49 | 春希 | Haruki | 「……役に立つかどうか微妙なところなんですが、 なのにそんなクリティカルな事情話していいんですか?」 | ||
50 | 松岡 | Matsuoka | 「年明けにさ、実家に誘われてんだよ? これってマズいよな? 行っちゃったら色々決まっちゃうよな?」 | ||
51 | 春希 | Haruki | 「いや、実家くらい行けばいいでしょう。 もしかしたら、ずっと付き合っていくかもしれないし、 断り続けて悪印象持たれるのも……」 | ||
52 | 松岡 | Matsuoka | 「でも俺、まだそういうつもり、全っ然ないんだよ! 30までは一人でいたいっていうかさぁ……」 | ||
53 | 鈴木 | Suzuki | 「……あ~いるいるこういう煮え切らない男。 俺はまだ自分に自信が持てないんだ~とか、 けど、決してお前に飽きたわけじゃないんだ~とか」 | ||
54 | 松岡 | Matsuoka | 「……鈴木さん、俺に盗聴器仕掛けてる?」 | ||
55 | 鈴木 | Suzuki | 「だいたいさぁ、自信なんて最初からある訳ないじゃん? 未知の領域に飛び込んでいって、一生懸命頑張って、 色々やりながら身につけていくものでしょ?」 | ||
56 | 確かに鈴木さんの意見は正論ではあった。 | ||||
57 | 鈴木 | Suzuki | 「あ~腹立つ! 勇気もその気もない男なんか滅んでしまえばいいのに!」 | ||
58 | 春希 | Haruki | 「鈴木さん、もしかして彼と……」 | ||
59 | 松岡 | Matsuoka | 「……うん、俺が悪かった。 もうこの話はやめよう」 | ||
60 | だが、その正しさをものともしない 実体験っぽいオーラが、その言葉のありがたさを 台無しにしてくれちゃっていたりして。 | ||||
61 | 鈴木 | Suzuki | 「……二人とも、こんな無駄話してる暇があったら、 今年いっぱい、一度も家に帰れないくらいの 仕事あげようか?」 | ||
62 | 春希 | Haruki | 「今日の受付は終了しましたから!」 | ||
63 | 松岡 | Matsuoka | 「お、俺も彼女との約束があるんで! それじゃお疲れ……」 | ||
64 | そんなこんなで、鈴木さんの負のオーラにおののき、 俺と松岡さんが一斉に鞄を持って席を立った瞬間…… | ||||
65 | 何かの予感をはらませた音が、編集部に響いた。 | ||||
66 | 松岡 | Matsuoka | 「……なぁ北原、 お前、『松岡の法則』って知ってるか?」 | ||
67 | 春希 | Haruki | 「知りませんし知りたくもありません」 | ||
68 | 松岡 | Matsuoka | 「俺、いっつもそうなんだよ。大事な用があって 絶対に帰らなくちゃならないときに限って、 狙ったように新しい仕事が舞い込んできて……」 | ||
69 | 鈴木 | Suzuki | 「松っちゃんの場合、 今までほっぽっといた仕事の締切が発覚するだけでしょ」 | ||
70 | 松岡 | Matsuoka | 「とにかく俺が取ると絶対にやばいんだって! まず間違いなく緊急の仕事が舞い込んでくるんだよ。 だからここは俺が取らない方が……」 | ||
71 | いや、鳴っちゃった以上は、 誰がとっても同じ内容になってしまうのでは…… | ||||
72 | 春希 | Haruki | 「す、鈴木さん……」 | ||
73 | 鈴木 | Suzuki | 「あ~忙しい忙しい。 クリスマスなのに仕事終わらないわ男に捨てられるわ、 とても電話なんか取ってる暇ないわね~」 | ||
74 | 男に捨てられたのは忙しい理由にはならないような…… | ||||
75 | 春希 | Haruki | 「とりあえず俺が受けますけど…… 松岡さん、逃げないでくださいよ?」 | ||
76 | と、俺は色々と悲壮な覚悟を決めて、 その、しつこくなり続ける受話器を取った。 | ||||
77 | 春希 | Haruki | 「はい、開桜グラフ編集部……」 | ||
78 | 松岡 | Matsuoka | 「…………」 | ||
79 | 鈴木 | Suzuki | 「…………」 | ||
80 | そして…… | ||||
81 | 春希 | Haruki | 「はい、はい……ええ、わかりました。 それじゃ……」 | ||
82 | 松岡 | Matsuoka | 「き、北原……?」 | ||
83 | 鈴木 | Suzuki | 「結局、なんだった?」 | ||
84 | 春希 | Haruki | 「……先週、違法献金問題で、 ウチにスッパ抜かれた建設大臣がいましたよね?」 | ||
85 | 松岡 | Matsuoka | 「え、いや、ちょっと……」 | ||
86 | 鈴木 | Suzuki | 「そのレベルは……」 | ||
87 | 春希 | Haruki | 「……つい先ほど辞任表明したそうです。 今から記者会見だそうです」 | ||
88 | 松岡 | Matsuoka | 「それここにいるメンバーだけじゃ捌ききれないよ!」 | ||
89 | 春希 | Haruki | 「というわけで編集部全員に連絡取ります! 皆さんご協力お願いします!」 | ||
90 | 松岡 | Matsuoka | 「お、俺たちのクリスマスが~!」 | ||
91 | 春希 | Haruki | 「よかったですね松岡さん! これで堂々と彼女の誘いを断れて!」 | ||
92 | 鈴木 | Suzuki | 「ふ、ふふ、ふふふ…… どうやらわたしの願いを神が聞き入れてくれたようね。 そうよ、クリスマスなんて滅んでしまえばいいのよ~」 | ||
93 | ほら、やっぱり。 『松岡の法則』は一度発動したら止められない…… | ||||
94 | ……いや、本当にどうしよう。 | ||||
95 | ………… | ||||
96 | 春希 | Haruki | 「ごめんなさい! 本っ当~に許して!」 | ||
97 | 目の回る忙しさがほんの一段落つき、 やっと雪菜への連絡が取れたのは、 日付をまたぐ、その瞬間だった。 | ||||
98 | ああ、クリスマスイブが……今、消えた。 | ||||
99 | 春希 | Haruki | 「さっき記者会見が終わったところ。 これから記事書いて、差し替えて…… えっと、多分、3時頃には帰れるかな~と」 | ||
100 | なおこの電話、本当に雪菜が出ているのか定かではない。 | ||||
101 | 春希 | Haruki | 「だからその、今日のところは…… 夕食はラップにくるんで冷蔵庫に入れて、 雪菜はもう寝ていてくれると助かるんだけどな~と」 | ||
102 | 何しろ、繋がってから一度も相手が言葉を発していない。 | ||||
103 | ただ、俺の延々と続く言い訳と謝罪を聞いているだけ…… いや、そもそも聞いているかもわからないんだけど。 | ||||
104 | 雪菜 | Setsuna | 「ふぅっ」 | ||
105 | 春希 | Haruki | 「せ、雪菜!」 | ||
106 | と、途方に暮れそうになったその瞬間、 電話口から、ようやく待ち焦がれた声が聞こえてきた。 | ||||
107 | 雪菜 | Setsuna | 「約束通り、実家に帰らせていただきます」 | ||
108 | 春希 | Haruki | 「雪菜ぁぁぁぁぁぁ~!?」 | ||
109 | ……どうしても回避したかった台詞と共に。 | ||||
110 | 雪菜 | Setsuna | 「……ふふっ、 な~んてね?」 | ||
111 | 春希 | Haruki | 「え……?」 | ||
112 | 雪菜 | Setsuna | 「『先輩も編集長も総動員の特ダネが入る』 っていうのは、お互いさすがに想定してなかったよね」 | ||
113 | 春希 | Haruki | 「いや、そりゃそうだけど……?」 | ||
114 | 雪菜 | Setsuna | 「けどさ、『都内の大型ショップ全店に頭下げて回る』 なんて仕事が入ることも想定してなかったんだよね」 | ||
115 | 春希 | Haruki | 「なんだそりゃ……?」 | ||
116 | 雪菜 | Setsuna | 「昨日発売したウチのソフトに不備が見つかっちゃってね。 おかげで全回収となりました~、あはははは~」 | ||
117 | 春希 | Haruki | 「……いや、ちょっと待て」 | ||
118 | それは今の雪菜みたいに 笑って話せるレベルの話じゃ…… | ||||
119 | 雪菜 | Setsuna | 「この時間になって、どこのお店も閉店しちゃって、 謝るところがなくなっちゃったから、 やっと本社に戻ってきたところ……おかしいでしょ?」 | ||
120 | 春希 | Haruki | 「……あまりに悲惨すぎて、 かける言葉も見つからないな」 | ||
121 | 雪菜 | Setsuna | 「あ~、引かないでよ。 こっちはもう笑うしかないんだから~」 | ||
122 | 春希 | Haruki | 「はは……」 | ||
123 | 今日だけは絶対に早く帰るって約束し合っておいて、 どっちも年に一度レベルのイベントが発生するとか…… | ||||
124 | 雪菜 | Setsuna | 「ね、春希くん」 | ||
125 | 春希 | Haruki | 「ん~?」 | ||
126 | 雪菜 | Setsuna | 「今日、待ち合わせて一緒に帰ろうよ。 そっち終わったら電話ちょうだい」 | ||
127 | 春希 | Haruki | 「俺、始発になるかもしれないぞ?」 | ||
128 | 雪菜 | Setsuna | 「わたしだって似たようなものだよ。 だから、一緒にタクシーで帰ろう?」 | ||
129 | 春希 | Haruki | 「……うん、わかった」 | ||
130 | 本当、どんだけ気の合う夫婦だよ…… | ||||
131 | ………… | ||||
132 | そして、午前三時。 | ||||
133 | 記事も書き、浜田さんのチェックも済ませ、 ヘトヘトになって会社を出た頃には、 外はもう、洒落にならない寒気に覆われていた。 | ||||
134 | 雪菜 | Setsuna | 「お帰り、春希くん」 | ||
135 | けれど、そんな寒空の中、 誰もいない歩道に立ち尽くして俺を待っていた雪菜は、 なんというか、妙に楽しそうな表情をしていた。 | ||||
136 | 春希 | Haruki | 「……本当に仕事だったんだな」 | ||
137 | 雪菜 | Setsuna | 「え~、なにそれ? ちゃんと説明したでしょ? 大トラブルだったって」 | ||
138 | 春希 | Haruki | 「いや、実は俺に気を使って嘘ついてくれたのかなって、 ほんの少しだけ思ってたりして」 | ||
139 | 雪菜 | Setsuna | 「嘘って?」 | ||
140 | 春希 | Haruki | 「本当は、雪菜はとっくに家に帰ってて、 冷めたご馳走眺めて寂しそうにしてたら どうしようって」 | ||
141 | それは、ある意味すごく失礼で、 相手を馬鹿にしたような酷い物言いだったかもしれない。 | ||||
142 | けれど…… | ||||
143 | 雪菜 | Setsuna | 「そうだね、昔はついてたね、そういう嘘」 | ||
144 | ずっとずっと昔…… 俺たちの絆が弱く、脆く、 お互いに、間違った気遣いをしてしまっていたあの頃。 | ||||
145 | 俺を思いやってついたはずの雪菜の嘘は、 後になって俺を苦しめ、 そして、雪菜自身を絶望の底に突き落とした。 | ||||
146 | 雪菜 | Setsuna | 「でも今は、そんな嘘つかないよ。 だって、必要ないもん」 | ||
147 | 春希 | Haruki | 「うん」 | ||
148 | その後も、俺たちは、 ずっと間違い続けてしまった。 | ||||
149 | 間違った気遣いをなくすため、 間違った誓いを立てた。 | ||||
150 | 絶対に守られるべき約束を打ち立てて、 それが破られたとき俺たちは壊れてしまうって、 そんな、強迫観念で互いを縛ろうとした。 | ||||
151 | 雪菜 | Setsuna | 「けど、どうせなら、 春希くん一人に罪をかぶせたかったけどなぁ」 | ||
152 | 春希 | Haruki | 「罪って……」 | ||
153 | 雪菜 | Setsuna | 「どんどん冷めていく料理。 いくら待っても連絡一つよこさない夫。 待ち続ける妻の不安は募るばかり……」 | ||
154 | 春希 | Haruki | 「いや連絡しただろ! 土下座して謝っただろ!」 | ||
155 | 雪菜 | Setsuna | 「え~、本当にした? 土下座」 | ||
156 | 春希 | Haruki | 「見せたかったよなぁあれ…… 俺の誠意が全身から滲み出ててさ」 | ||
157 | だから次に、俺たちは全ての間違いを正した。 | ||||
158 | 絶対に守られるべき約束を打ち立てて、 それが破られたとき…… | ||||
159 | やっぱり、俺たちは俺たちのままだって、 そんなふうに誓いあい……いや、適当に決めあった。 | ||||
160 | 雪菜 | Setsuna | 「ま、こんなとこでずっと喋っててもしょうがないし、 そろそろ行こうか」 | ||
161 | 春希 | Haruki | 「そうだな、じゃタクシー拾って……」 | ||
162 | 雪菜 | Setsuna | 「ね、春希くん…… もう帰るのめんどくさいし、ホテル泊まってかない?」 | ||
163 | 春希 | Haruki | 「え、けど空いてるかなぁ? だって、今日……」 | ||
164 | そう、今日はクリスマスイブ。 そういう宿泊施設が、一年で一番混みあう日。 | ||||
165 | 雪菜 | Setsuna | 「ほら、そろそろ例の6時間も終わりだよ? 出てきてる人いるんじゃない?」 | ||
166 | 春希 | Haruki | 「いや、けど、今から探すのか? 一つ一つ電話かけて?」 | ||
167 | 雪菜 | Setsuna | 「えへへ、実はね……」 | ||
168 | 春希 | Haruki | 「雪菜、お前まさか」 | ||
169 | 雪菜 | Setsuna | 「すぐ裏にあるところなんだけどね? さっき電話したら、ちょうど一部屋空いたところだって」 | ||
170 | 春希 | Haruki | 「…………」 | ||
171 | 雪菜 | Setsuna | 「でね? これは取るしかないってことで、 すでに予約入れちゃってたりして……」 | ||
172 | 春希 | Haruki | 「……明日も仕事だぞ? お互い」 | ||
173 | 雪菜 | Setsuna | 「眠かったら寝るだけでいいよ? わたしも我慢するから」 | ||
174 | 春希 | Haruki | 「無理! 絶対無理! 俺我慢できない!」 | ||
175 | 雪菜 | Setsuna | 「えへへ……じゃ、そういうことで」 | ||
176 | 俺たちはきっと、これからも毎年、同じ約束をする。 | ||||
177 | 一生懸命守ろうとして、けれど時々綻んで、 約束を守れない時もあったりして。 | ||||
178 | そんなときも俺たちは、すぐ仲直りして、 翌日からはまたいつも通り、引きずらずに日々を過ごす。 | ||||
179 | そんな適当なクリスマスを、 雪菜の誕生日を、俺の誕生日を、 これからも過ごしていく。 | ||||
180 | 雪菜 | Setsuna | 「まぁ、終わってからでも二時間くらいは寝られるよ。 じゃ、早く早く」 | ||
181 | もちろん、一睡もしなかった。 するはずがなかった。 |
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Introductory Chapter | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
1001 | 1008 | 1009 | 1010 | 1011 | 1012 | 1013 |
1002 | 1008_020 | 1009_020 | 1010_020 | 1011_020 | 1012_020 | |
1003 | 1008_030 | 1009_030 | 1010_030 | 1011_030 | 1012_030 | |
1004 | 1008_040 | 1010_040 | 1012_030_2 | |||
1005 | 1008_050 | 1010_050 | ||||
1006 | 1010_060 | |||||
1006_2 | 1010_070 | |||||
1007 |
Closing Chapter | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Common | Setsuna | Koharu | Chiaki | Mari | ||||||
2001 | 2011 | 2020 | 2027 | 2301 | 2309 | 2316 | 2401 | 2408 | 2501 | 2510 |
2002 | 2012 | 2021 | 2028 | 2302 | 2310 | 2317 | 2402 | 2409 | 2502 | 2511 |
2003 | 2013 | 2022 | 2029 | 2303 | 2311 | 2318 | 2403 | 2410 | 2503 | 2512 |
2004 | 2014 | 2023 | 2030 | 2304 | 2312 | 2319 | 2404 | 2411 | 2504 | 2513 |
2005 | 2015 | 2024 | 2031 | 2305 | 2313 | 2320 | 2405 | 2412 | 2505 | 2514 |
2006 | 2016 | 2025 | 2032 | 2306 | 2314 | 2321 | 2406 | 2413 | 2506 | 2515 |
2007 | 2017 | 2026 | 2033 | 2307 | 2315 | 2322 | 2407 | 2507 | 2516 | |
2008 | 2018 | 2308 | 2508 | 2517 | ||||||
2009 | 2019 | 2509 | ||||||||
2010 | ||||||||||
Setsuna | Koharu | Chiaki | Mari | |||||||
2031_2 | 2312_2 | 2401_2 | 2504_2 | 2511_2 | ||||||
2031_3 | 2313_2 | 2402_2 | 2507_2 | 2513_2 | ||||||
2031_4 | 2313_3 | 2402_3 |
Coda | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Common | Kazusa (True) | Setsuna (True) | Kazusa (Normal) | ||||||
3001 | 3008 | 3014_2 | 3020 | 3101 | 3107 | 3201 | 3207 | 3901 | 3907 |
3002 | 3009 | 3014_3 | 3021 | 3102 | 3108 | 3202 | 3208 | 3902 | 3908 |
3003 | 3010 | 3015 | 3022 | 3103 | 3109 | 3203 | 3209 | 3903 | 3909 |
3004 | 3011 | 3016 | 3023 | 3104 | 3110 | 3204 | 3210 | 3904 | |
3005 | 3012 | 3017 | 3024 | 3105 | 3111 | 3205 | 3211 | 3905 | |
3006 | 3013 | 3018 | 3106 | 3206 | 3906 | ||||
3007 | 3014 | 3019 | |||||||
Common | Setsuna (True) | Kazusa (Normal) | |||||||
3001_2 | 3210_2 | 3901_2 | 3906_2 | ||||||
3015_2 | 3902_2 | 3907_2 | |||||||
3902_3 | 3907_3 | ||||||||
3904_2 |
Mini After Story and Extra Episode | |||
---|---|---|---|
The Path Back to Happiness | The Path Forward to Happiness | Dear Mortal Enemy | |
6001 | 6101 | 4000 | 4005 |
6002 | 6102 | 4001 | 4006 |
6003 | 6103 | 4002 | 4007 |
6004 | 6104 | 4003 | 4008 |
6005 | 4004 | 4009 |
Novels | |||||
---|---|---|---|---|---|
The Snow Melts, And Until The Snow Falls | The Idol Who Forgot How to Sing | Twinkle Snow ~Reverie~ | After the Festival ~Setsuna's Thirty Minutes~ | His God, Her Savior | |
5000 | 5100 | 5200 | 5205 | 5300 | 5400 |
5001 | 5101 | 5201 | 5206 | 5301 | 5401 |
5002 | 5102 | 5202 | 5207 | 5302 | |
5003 | 5103 | 5203 | 5208 | 5303 | |
5004 | 5104 | 5204 | 5209 |
Short Stories | |||
---|---|---|---|
Princess Setsuna's Distress and Her Minister's Sinister Plan | Koharu Climate After the Passing of the Typhoon | This isn't the Season for White Album | Todokanai Koi, Todoita |
7000 | 7100 | 7200 | 7300 |