White Album 2/Script/7200
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Speaker | Text | Comment | |||
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Line # | JP | EN | JP | EN | |
1 | そこには、たくさんの人が奏でるたくさんの音が飛び交っていた。\k\n 手を振って去っていこうとする男性を泣きながら見送る子供たち。\k\n 額を寄せ合い、いつまで経っても離れようとしないカップル。\k\n お婆さんに急かされ、ぶつぶつ文句を言いながらスーツケースを引くお爺さん。\k\n 見送りの人たちの声援を受け、はしゃいだ面持ちでゲートをくぐっていく若者たち。\k\n そして、天井近くのスピーカーから流れる、地名と時刻と航空会社名と発着便名。\k\n つまりそこは、たくさんの人が行き交い、たくさんの音が飛び交う交通の要所……空港のロビー。 | ||||
2 | 「二時……か」\k\n そんな、いつもより更に賑わっているその場所で、一人静かに独り言を唱えている若い女性。\k\n 周囲に埋没しようにも、はっきりと浮いてしまうほどに艶やかで、そして長い黒髪。\k\n 小さな顔の中に、切れ長の瞳や薄めの唇バランスよく配置した、東洋的な美しさを誇る容姿。\k\n 背は高めで、ウエストは引き締まりつつも豊かな胸を持つモデルのような体型。\k\n なのに、そんな恵まれた肢体を窮屈そうに丸め、椅子の上で体育座りという行儀の悪い格好で、みっともなくも孤高を気取るその態度。\k\n ……そんな、若くもぐうたらっぽく、美しくも偏屈っぽい女性の名は、冬馬かずさ。\k\n これでも、世界で数千万くらいの人には名前を知られているピアニストだったりする。 | ||||
3 | 「そういえば、クリスマスだったな……」\k\n かずさは、ぼうっと空港内のディスプレイや人々の荷物などを見渡し、その混雑の理由と、今の季節に思い至る。\k\n もう、冬になっていた。\k\n 今のこの場所は、冬の空港だった。 | ||||
4 | 冬馬かずさには、空港に、たくさんの思い出がある。\k\n 決裂、想いのぶつけ合い、離別、帰国、そして、新たなる旅立ち。\k\n 捨ててきたり、零れてしまったり、溢れてしまったり、蘇ってきたり……\k\n 成田の、日本のあの空港には、数えきれない切なさが眠っている。\k\n でも、今は。\k\n そして、ここは…… | ||||
5 | 『D②rfte ich mich neben Sie setzen?(隣、よろしいですか?)』\k\n『Wie? ①hm… ja bitte.(え? ああ……どうぞ)』\k\n 中年の婦人が問いかけてきたその言葉も、かずさの口から咄嗟に出たのも、あの時の場所に溢れていた日本の言葉ではなかった。 | ||||
6 | 何故ならここは、ウィーン・シュヴェヒャート国際空港。\k\n 冬馬かずさの、いや、旧姓冬馬かずさの、今の故郷だったから。 | ||||
7 | 『一二時には空港に入ってること。俺も打ち合わせが済み次第行くから』\k\n 朝、目覚めていたら携帯に届いていたメールにふたたび、いや三たび、いやもう何度目か覚えていないけれど、とにかくまた目を通す。\k\n メールだけでなく、昨夜もベッドの中で寝物語のように何度も聞かされた今日の集合時間を、今回、かずさにしては珍しく忠実に守った。\k\n だから、午後二時をちょっと過ぎたあたりの今、彼女はこの空港で、無為に二時間近く過ごしたことになる。\k\n 聞かされている出航時刻は、午後三時ちょうど。\k\n そろそろ搭乗手続きをしないと危ない時間だ。\k\n けれど…… | ||||
8 | 「まったく、いつになったら昼ごはん食べられるんだか」\k\n | ||||
9 | かずさは危機感のまるで感じられない口調で愚痴り、荷物のポケットをまさぐると、ここに着いてから五本目のチョコレートバーを取り出して頬張る。\k\n そんなふうに、口ではぶつぶつと文句を垂れながらも、かずさはまったく怒っても、焦ってもいなかった。\k\n もはや怠惰に飼い慣らされた彼女にとって、時間は有限ではない。\k\n ぼけっと(特定の)人を待つのも、昔は苛ついたものだが、今は違う。\k\n 待つのには、もう慣れた。\k\n キスを交わす前にだって、五時間以上待たされたことがある。\k\n 想いを遂げる前にだって、五年以上待たされた。\k\n あの、甘く辛い、愛しく狂おしい日々を思えば、終わりのある待ちぼうけなんか、痛くもかゆくもありはしない。 | ||||
10 | 『打ち合わせ延長中。もう少し。飛行機には絶対に間に合わせるから!』\k\n「人には早く来させておいて自分が大遅刻するとか……社会人失格だな」\k\n やっと来た次のメールを開き、ほんの少しだけ毒づくと、かずさはさっさと携帯を閉じ、その短い文面を頭の中で何度も反芻する。\k\n 基本的に、かずさはメールの返信をしない。\k\n というかメールを打つことはない。\k\n もう、何年も一緒に暮らしておきながら、かずさはその、“恋人同士のちょっとしたじゃれ合い”の、あまりの心地良さから抜け出せずにいる。 | ||||
11 | 生まれつきの、かつ、甘やかされて更にこじらせためんどくさがりな性分のせいもある。\k\n けれど、それよりも大きいのは、『MOTTAINAI』という日本人の美徳に基づく崇高な精神。\k\n ……どうしても連絡が必要な時に、相手の声を聴かずに済ませることなどあり得ない。\k\n 電話を掛けて、心ゆくまで罵倒して、うんざりするほどの反論と説教を返されて、逆切れして、捨て台詞を残して電話を切って、すぐに後悔して、リダイヤルしようとして、けれど向こうから掛かってきて、歓喜の表情で取って、また長々と説教を聞かされて、最後にほんのちょっとの謝罪をもらって、電話を切って、くすくす笑って、周りに誰もいなければにやけながら笑い転げる。\k\n もう、何年も一緒に暮らしておきながら、かずさはその、“恋人同士のちょっとしたじゃれ合い”の、あまりの心地良さから抜け出せずにいる。 | ||||
12 | 『タクシー捕まえた、あと一五分くらいで着く』\k\n「見込みが甘いんだよ、ば~か」\k\n さっきのメールから一○分くらい後。\k\n 続いて届いたその短いメールに軽くツッコミを入れると、かずさは、何をするでもなくぼうっと空港の天井を見上げて、大慌てで運転手を急かしつつメールを打っているであろう相手のことを思い浮かべる。\k\n 雑誌を読んだり、携帯で音楽を聴いたり、動画を見たりなんかしない。\k\n そんな、頭の中から“彼”を追い出す暇つぶしなんか、馬鹿馬鹿しくてできない。\k\n ただ心と体に、たった一人のことを染み込ませる贅沢を、絶対に譲らない。\k\n 指が鍵盤の上を動いていてもいなくても、かずさの想像の翼がはためく先は大きすぎ、そして狭すぎる。 | ||||
13 | 『あ、そうだ、先に乗っておいてくれ。俺もすぐ追いつくから』\k\n「やなこった」\k\n 続いて届いた追伸のメールを見て、かずさは……やっぱり動かない。\k\n 大切なメールのはずなのに、大事な用事のはずなのに、堂々と無視する。\k\n 空港の時計を見ると、搭乗時間まであと三○分ちょっと。\k\n もう、タイムリミットに近い。\k\n このままかずさが手続きを済ませなければ、乗り遅れは避けられない状況だった。\k\n しかし…… | ||||
14 | 「……なんでここにいるんだよ、かずさ」\k\n「それはだな、お前が間に合わなかったからだよ、春希」 | ||||
15 | 午後三時。\k\n 搭乗ゲートでも機内でもない、相変わらずの空港ロビー。\k\n メールで連絡を取り合っていた二人がようやく再会を果たしたとき、彼らの乗るはずだった便は、ちょうど大空へと羽ばたいていくところだった。\k\n「お前だけでも乗っとけって言っただろ……」\k\n「いいや言ってない。お前は絶対追いつくとしか言ってない」\k\n 椅子の上に体育座りしたままのかずさの前に立ち、いつもの困った表情を浮かべているコート姿の青年の名は、北原春希。\k\n かずさの今の姓と同じ姓を持つ、彼女のマネージャー兼プロモーター。 | ||||
16 | 「俺ならすぐ追いつくって」\k\n「いいや信用できないね。ほら、二年前のニューヨーク、春希の口車に乗って先に現地入りしたら、お前、合流したの公演三○分前だったじゃないか」\k\n「いい加減古いこと覚えてるねお前も……」\k\n かずさとの約束を破り大遅刻したはずの彼は、なのにそれほど悪びれたふうもなく、まるで駄々っ子をあやすかのように半分本気、半分適当で応える。\k\n「あの時、大変だったんだぞ? お前がいないから外に食事にも出られないし、三日三晩ルームサービスで飽きて死ぬかと思った」\k\n「いや出ろよ。英語くらい喋れるだろ……」\k\n 対するかずさも、春希が出国直前の今まで多忙を極めていたのが全部自分のためであることを知っていながら、全ての責任を彼に押し付けて自分は思う存分拗ねている。 | ||||
17 | 「とにかく、そんな訳だから今回の件も全部春希が悪い。あたしが謝ることなんか何一つない」\k\n「いや、だから……いいよ、もう」\k\n なぜなら、二人ともわかっているから。\k\n 相手が自分を本気で怒っていないことを。\k\n そして自分が、相手をすぐ許してしまうに違いないということを。 | ||||
18 | 「とりあえず、二時間後の便にキャンセルが二枚出た……三回乗り継ぐことになるけど」\k\n「席、離れてないだろうな?」\k\n「まぁ、なんとか連番取れたけど……でもエコノミーだぞ?」\k\n「そうか、それは好都合だ」\k\n「何がだよ……」\k\n ファーストクラスなんかを取られると、隣との距離が離れすぎていて、ずっと手を握り合っていることが難しいから。 | ||||
19 | 「余計な出費は控えないといけないだろ。ウチの経営も厳しいし」\k\n ……なんてことは、たとえ相手にバレていたとしても決して口には出さない。\k\n「だったらせめて、さっきの便に一人だけでも乗っておいて欲しかったんだけどな」\k\n いつの間にか空いていたかずさの隣の椅子に、やっと春希が座る。\k\n と、待っていましたとばかりに、かずさは全身を春希の側に傾け、その体を預ける。\k\n もちろん春希の方も、その重みを当然のように受け止め、かずさの頭が載りやすいように肩を空ける。 | ||||
20 | 「そうか、あと二時間もあるのか」\k\n「今日の便が取れただけでも幸運だと思えよ」\k\n「ああ、そうだな……今日のあたしはすごく幸運だ」\k\n「遅刻したのは謝るからこれ以上嫌味はやめてくれ」\k\n「相変わらず器の小さい奴だな」\k\n 嫌味でもなんでもなく、かずさは、本当に今日の幸運を噛み締めていた。 | ||||
21 | 春希を思いながら待つ、二時間の待ちぼうけ。\k\n 春希と一緒に待つ、二時間の待ちぼうけ。\k\n これ以上幸せな時間なんか、この世のどこにも存在しない。 | ||||
22 | 「ところでいいことを教えてやろう春希……今日はクリスマスイブだぞ?」\k\n「さすがにそれくらいは知ってる」\k\n「なのに朝早くから働いてばっかりだ……お前は本当にヨーロッパの人間か?」\k\n「お前がヨーロッパの人間のくせにクリスマス以外の日も働かないからだ」\k\n「せっかくのイブなのに、ずっと飛行機の中だな。このまま日付変更線越えた瞬間にクリスマスが終わったりしてな」\k\n「喜べ、代わりと言っちゃなんだが、きっと機内食がクリスマスバージョンだ」\k\n「なぁ、あたしのチキンとお前のケーキ、交換しないか?」\k\n 二人が交わすのは、周囲から見ても、自分たちで冷静に振り返っても、本当にくだらない、まるっきり実のない会話ばかり。 | ||||
23 | 「あのさ、機内食より先に、今から何か食べようぜ?」\k\n「別に、あたしはお腹すいてない」\k\n「俺は減ってるんだよ……朝から何も食べてないし」\k\n「朝食はとった方がいいぞ。頭の働きが違うらしいからな」\k\n「ここ数年、一度も朝食を作ってくれない人間に言われるとは思わなかったぞ」\k\n「数年前にある奴から『もう朝食は作るな』って言われたのを忠実に守ってるだけだ」\k\n「少しは見返してやろうとか思わないか? そいつを」\k\n「本当は料理なんて簡単だ。けど、あたしの指は大事な仕事道具だから、無駄なことには使わないだけだ」\k\n「まぁ、それを言われちゃ返す言葉もないんだけどさ」\k\n「あたしが指を使うのは、ピアノを弾く時と、お前の背中に爪を立てる時だけだ」\k\n「お前、アレすごく痛いって知ってた……?」\k\n その表情は、緩やかで、ぼけっとしてて、何の緊張感も、かけらの真剣さもない。 | ||||
24 | 「そんなに腹減ってるなら、あたしのチョコバー食べるか?」\k\n「助かる。マジで腹ペコなんだ」\k\n「……本当に食べるのかよ? なんてワガママな奴だ」\k\n「いや、ちょっと待てお前。直前の会話の流れを覚えてるか?」\k\n「だって、あと一本しか残ってなかったんだ……」\k\n「それを半分こして仲良く食べるという殊勝な心掛けはないのか?」\k\n「なぁ春希、想像してみろ。好きなおかずとかお菓子とか、最後に一つ丸ごと食べるイメージトレーニングをしてたとするだろ?」\k\n「いや、しないから」\k\n「それを急に『半分で我慢しろ』とか言われてどう思う?」\k\n「俺なら、相手が困ってるなら迷わず差し出すな」 | ||||
25 | 「嫌だ……どうして最後の一つなのに、たったの半分しか食べられないんだよ。そんな理不尽な世界なんて認めないぞあたしは」\k\n「理不尽なのは今のお前の一連の主張の方だと思うんだけどさ……」\k\n「なんと言われようとこれは渡せない。文句があるなら、お前が売店で何か買って来ればいいんだ」\k\n「わかったよ……ちょっと買い出し行ってくる」\k\n「あ、ついでにこのチョコバーも追加で五本な」\k\n「……お前という奴は」\k\n そう、その表情には、緊張感も、真剣さもなくて……\k\n 二人がこの国で、緩やかな幸せに満ち、変わらない日々を繰り返し、退屈な喧騒を過ごしてきたことを、言葉よりも雄弁に物語る。 | ||||
26 | 「なぁ、かずさ」\k\n「ん?」\k\n それからも二人は、ずっと空港のロビーに並んで座ったまま、ハンバーガーを頬張り、軽口を叩きあい、次々と飛びゆく飛行機をぼうっと眺めつつ時間を潰して……\k\n そしてやっと、空港のアナウンスに自分たちが乗る便の名前が出るようになった頃。\k\n「緊張、してるか?」\k\n「してないよ」\k\n 春希が、今までとは違う、少し神妙な口調で囁きかける。\k\n けれどかずさは、今までと同じように、かけらも真剣さの感じられない態度でひらりと受け流す。 | ||||
27 | 「だって今度の旅行は、コンサートも取材もない。完全オフなんだから、思う存分満喫させてもらうさ」\k\n「そりゃ、そうなんだけどさ……」\k\n「じゃあ、お前の方は緊張してるのか? 春希」\k\n「どうなんだろうな……」\k\n そんなかずさのいつも通りの態度にも、春希はやはりさっきまでと違う態度を崩さない。\k\n そういう、お互いに空気を読みあわないところは、あの頃からたがいに変わっていない。\k\n「二度と戻るはずのない場所だと思ってたから、正直、どういう気持ちで臨んだらいいか、わからない」 | ||||
28 | そう、あの頃から変わっていない。\k\n 空気を読むのをやめ、社会との調和をやめ、甘美な地獄を選択した数年前から。\k\n 愛した人を捨て。\k\n 愛してくれた人たちを捨て。\k\n 生まれた国を捨て。\k\n ただ自分たちの欲望に生きることを望んだ数年前から。 | ||||
29 | 「お前がどういう気持ちで臨むべきかなんて、そんなの決まってる」\k\n「どう、すればいいんだ、俺?」\k\n「アナタハ~、ト~マカズサヲ~、エイエンニ、アイスルコト、チカイマスカ?」\k\n「え?」\k\n「……なんて、怪しげなニホンゴを喋るアメリカ人牧師に対して、笑わずに受け答えできるくらいにはガチガチに緊張してろ」\k\n「……ぷっ、くくく……っ」 | ||||
30 | 周りを壊して。\k\n たくさんの人たちを不幸に陥れ。\k\n 自分たちまでボロボロに傷ついて。\k\n そうして、やっとのことで手に入れたのは、こんなちっぽけな日常。\k\n ……世界の全てを引き替えにしても余りある、本当に、どうでもいい日常。 | ||||
31 | 「お前、今から笑ってどうする? そんなんじゃ本番が思いやられるぞ?」\k\n「は、ははは……っ、いや、けどマジでやるのかなそれ?」\k\n「少なくとも、チャペルは押さえたって母さん言ってたぞ」 | ||||
32 | そして、彼らが捨てたはずの世界が、彼らにふたたび与えてくれたのは、そのどうでもいい日常に、さらに穏やかさを付け足した日常。\k\n 世界を傷つけて。\k\n なのに、勝手に復活した世界に救われて。\k\n 返しきれない恩を受け。\k\n どうしようもないから返すのを諦めて。 | ||||
33 | 「くくく……駄目だ俺、絶対に笑う。大声出してゲラゲラ笑う」\k\n「お前……もし本当に笑ったりしたら蹴り飛ばすぞ?」\k\n「なんだよかずさ、お前ガチかよ?」\k\n「悪いかよ」\k\n「『とっくに籍入れてるのに、今さら式なんてめんどくさいだけだ』って、散々ゴネてたじゃないか」\k\n「そ、それでも、母さんが望んだことだ」\k\n「へぇ」\k\n「お前は、あたしとお前の母親のささやかな願いを無下にするってのか? そこまで薄情な奴だったのか?」\k\n「ふ~ん」\k\n「……なんだよ、さっきから、その含みのある相槌は」 | ||||
34 | 「いや、、全然、嫌じゃなさそうだなって」\k\n「お前は嫌なのかよ……あたしと式挙げるの」\k\n「男はだな、そういうくっだらない質問に『そんなの知るか』って答える権利があるんだよ」\k\n「へ~、男の子ってのはめんどくさい生き物なんだな~」\k\n「そういうお前こそ、どうして今日はそんなに素直なんだよ? ここはベッドの中じゃないぞ?」\k\n「春希、お前……最近、ぶっちゃけるようになったなぁ」\k\n「こちとら、あけすけな極楽トンボと一生付き合っていかなくちゃならないんでね」 | ||||
35 | 北原春希には、北原かずさには、空港に、たくさんの思い出がある。\k\n 決裂、想いのぶつけ合い、離別、帰国、そして、新たなる旅立ち。\k\n 捨ててきたり、零れてしまったり、溢れてしまったり、蘇ってきたり……\k\n 成田の、日本のあの空港には、数えきれない切なさが眠っている。\k\n そして今日、二人は、数年ぶりにその場所へと赴く。\k\n 成田空港へと。\k\n ふたたび、日本の地を踏む。\k\n 力強く、優しく、そしてちょっとだけお節介な、あの世界に戻っていく。\k\n 皆に、二人が永遠の二人であることを誓うために。\k\n どこでも、いつでも、何度でも、誓うために。 | ||||
36 | 「さてと、そろそろゲートも空いてきたし、行くか」\k\n「母さん、元気にしてるかな」\k\n「とりあえず、今は退院して家で暮らしてるってさ」\k\n「そっか……じゃあ今度こそこっちに来てくれるかな?」\k\n「本人が『もう日本から離れたくない』って言ってるけどな」\k\n「家族と一緒の方がいいだろ? そうに決まってる」\k\n「お前の口からその言葉が出てくるとはな……」 | ||||
37 | も[W10]う[W10]、[W10]冬[W10]は[W10]、[W10]ホ[W10]ワ[W10]イ[W10]ト[W10]ア[W10]ル[W10]バ[W10]ム[W10]の[W10]季[W10]節[W10]じ[W10]ゃ[W10]な[W10]い[W10]。\k\n 雪[W10]は[W10]、[W10]涙[W10]の[W10]結[W10]晶[W10]で[W10]も[W10]、[W10]悲[W10]し[W10]み[W10]の[W10]し[W10]ず[W10]く[W10]で[W10]も[W10]な[W10]い[W10]。\k\n | ||||
38 | 「[W10]行[W10]く[W10]ぞ[W10]春[W10]希[W10]![W10] [W10]日[W10]本[W10]へ[W10]![W10]」\k\n「[W10]あ[W10]あ[W10]、[W10]俺[W10]た[W10]ち[W10]の[W10]故[W10]郷[W10]へ[W10]…[W10]…[W10]帰[W10]ろ[W10]う[W10]」\k\n | ||||
39 | 年[W10]甲[W10]斐[W10]も[W10]な[W10]く[W10]、[W10]飽[W10]き[W10]も[W10]せ[W10]ず[W10]、[W10]腕[W10]を[W10]、[W10]し[W10]っ[W10]か[W10]り[W10]と[W10]絡[W10]め[W10]…[W10]…\k\n 二[W10]人[W10]は[W10]、[W10]体[W10]を[W10]寄[W10]せ[W10]合[W10]い[W10]な[W10]が[W10]ら[W10]、[W10]搭[W10]乗[W10]ゲ[W10]ー[W10]ト[W10]へ[W10]と[W10]歩[W10]き[W10]出[W10]す[W10]。 |
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Introductory Chapter | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
1001 | 1008 | 1009 | 1010 | 1011 | 1012 | 1013 |
1002 | 1008_020 | 1009_020 | 1010_020 | 1011_020 | 1012_020 | |
1003 | 1008_030 | 1009_030 | 1010_030 | 1011_030 | 1012_030 | |
1004 | 1008_040 | 1010_040 | 1012_030_2 | |||
1005 | 1008_050 | 1010_050 | ||||
1006 | 1010_060 | |||||
1006_2 | 1010_070 | |||||
1007 |
Closing Chapter | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Common | Setsuna | Koharu | Chiaki | Mari | ||||||
2001 | 2011 | 2020 | 2027 | 2301 | 2309 | 2316 | 2401 | 2408 | 2501 | 2510 |
2002 | 2012 | 2021 | 2028 | 2302 | 2310 | 2317 | 2402 | 2409 | 2502 | 2511 |
2003 | 2013 | 2022 | 2029 | 2303 | 2311 | 2318 | 2403 | 2410 | 2503 | 2512 |
2004 | 2014 | 2023 | 2030 | 2304 | 2312 | 2319 | 2404 | 2411 | 2504 | 2513 |
2005 | 2015 | 2024 | 2031 | 2305 | 2313 | 2320 | 2405 | 2412 | 2505 | 2514 |
2006 | 2016 | 2025 | 2032 | 2306 | 2314 | 2321 | 2406 | 2413 | 2506 | 2515 |
2007 | 2017 | 2026 | 2033 | 2307 | 2315 | 2322 | 2407 | 2507 | 2516 | |
2008 | 2018 | 2308 | 2508 | 2517 | ||||||
2009 | 2019 | 2509 | ||||||||
2010 | ||||||||||
Setsuna | Koharu | Chiaki | Mari | |||||||
2031_2 | 2312_2 | 2401_2 | 2504_2 | 2511_2 | ||||||
2031_3 | 2313_2 | 2402_2 | 2507_2 | 2513_2 | ||||||
2031_4 | 2313_3 | 2402_3 |
Coda | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Common | Kazusa (True) | Setsuna (True) | Kazusa (Normal) | ||||||
3001 | 3008 | 3014_2 | 3020 | 3101 | 3107 | 3201 | 3207 | 3901 | 3907 |
3002 | 3009 | 3014_3 | 3021 | 3102 | 3108 | 3202 | 3208 | 3902 | 3908 |
3003 | 3010 | 3015 | 3022 | 3103 | 3109 | 3203 | 3209 | 3903 | 3909 |
3004 | 3011 | 3016 | 3023 | 3104 | 3110 | 3204 | 3210 | 3904 | |
3005 | 3012 | 3017 | 3024 | 3105 | 3111 | 3205 | 3211 | 3905 | |
3006 | 3013 | 3018 | 3106 | 3206 | 3906 | ||||
3007 | 3014 | 3019 | |||||||
Common | Setsuna (True) | Kazusa (Normal) | |||||||
3001_2 | 3210_2 | 3901_2 | 3906_2 | ||||||
3015_2 | 3902_2 | 3907_2 | |||||||
3902_3 | 3907_3 | ||||||||
3904_2 |
Mini After Story and Extra Episode | |||
---|---|---|---|
The Path Back to Happiness | The Path Forward to Happiness | Dear Mortal Enemy | |
6001 | 6101 | 4000 | 4005 |
6002 | 6102 | 4001 | 4006 |
6003 | 6103 | 4002 | 4007 |
6004 | 6104 | 4003 | 4008 |
6005 | 4004 | 4009 |
Novels | |||||
---|---|---|---|---|---|
The Snow Melts, And Until The Snow Falls | The Idol Who Forgot How to Sing | Twinkle Snow ~Reverie~ | After the Festival ~Setsuna's Thirty Minutes~ | His God, Her Savior | |
5000 | 5100 | 5200 | 5205 | 5300 | 5400 |
5001 | 5101 | 5201 | 5206 | 5301 | 5401 |
5002 | 5102 | 5202 | 5207 | 5302 | |
5003 | 5103 | 5203 | 5208 | 5303 | |
5004 | 5104 | 5204 | 5209 |
Short Stories | |||
---|---|---|---|
Princess Setsuna's Distress and Her Minister's Sinister Plan | Koharu Climate After the Passing of the Typhoon | This isn't the Season for White Album | Todokanai Koi, Todoita |
7000 | 7100 | 7200 | 7300 |