White Album 2/Script/2026
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Translation Notes
Text
Speaker | Text | Comment | |||
---|---|---|---|---|---|
Line # | JP | EN | JP | EN | |
1 | 春希 | Haruki | 「寒…」 | ||
2 | 窓から吹き込む風は、 相変わらず肌を刺すほどに冷たい。 | ||||
3 | 冬休みが空けて三日目。 講義が終わったあとに訪れた研究室は、 室内なのに、外に負けじと底冷えがしていた。 | ||||
4 | この三日間、ここで顔を合わせたゼミ仲間はいない。 | ||||
5 | というのも、冬休みが空けてすぐ、 四年と院生は論文の教授レビューのため、 全員セミナーハウスに篭もってしまっていたから。 | ||||
6 | そんな意味のない研究室に顔を出す酔狂な三年生は、 やっぱり今日も皆無のようだった。 | ||||
7 | …こういう時こそ、 自由を貪る奴が寝袋で転がってるかと思ったのに。 | ||||
8 | ……… | .........
| |||
9 | ここ二日、講義でも研究室でも、和泉の姿を見かけない。 | ||||
10 | まぁ、いつも通りと言えばそうかもしれないけど、 せっかく冬のレポートを間に合わせたくせに、 もう元の木阿弥かよという思いもないでもない。 | ||||
11 | それに… | ||||
12 | 年末のこと、ほんの少し謝りたかったし、 さらにほんの少し、感謝もしたかったんだけどな。 | ||||
13 | にしてもあいつ、本当に進級できるのか? | ||||
14 | 春希 | Haruki | 「………あ、れ?」 | ||
15 | 今… | ||||
16 | ??? | ??? | 「よっ!」 | ||
17 | 春希 | Haruki | 「とっ…」 | ||
18 | 視界の隅に見つけたものを追おうとしたら、 いきなりお馴染みの顔に塞がれた。 | ||||
19 | 武也 | Takeya | 「どした? ぼうっと遠くを眺めて。 すっげー可愛いコでも歩いてた?」 | ||
20 | 春希 | Haruki | 「いや、まぁ…」 | ||
21 | あれが本人だったら、 『すっげー可愛い』のは間違いないんだけど… | ||||
22 | 武也 | Takeya | 「今日はもう講義終わりか?」 | ||
23 | 春希 | Haruki | 「ああ、まぁ…」 | ||
24 | でも、きっと人違いだろう。 | ||||
25 | だって、確かに目が合ったと思ったのに、 何事もなかったかのように華麗にスルーされたし。 | ||||
26 | 武也 | Takeya | 「だったら今からお前んち遊びに行ってもいいか? たまにはアリバイ…じゃなかった。 男同士で友情を深め合うのもいいだろ?」 | ||
27 | 春希 | Haruki | 「いいけどさ。 今日はバイトないし」 | ||
28 | 武也 | Takeya | 「………」 | "........."
| |
29 | 春希 | Haruki | 「なんだよ?」 | ||
30 | 武也 | Takeya | 「いや… お前から一発OKが出たの久しぶりだなって」 | ||
31 | 春希 | Haruki | 「ああ、そっか…俺、付き合い悪かったよな。 ごめん、ここしばらくはちょっと…」 | ||
32 | 武也 | Takeya | 「いや、いい兆候だ。 何しろ自分が根暗で臆病で引きこもりだってこと、 ちゃんと自覚して反省してるみたいだし」 | ||
33 | 春希 | Haruki | 「じゃあな、俺先に帰るから」 | ||
34 | 武也 | Takeya | 「待て! 誉めてるんだから喜べよ!」 | ||
35 | 春希 | Haruki | 「素直に喜べないんだよ。 何しろ根暗だし」 | ||
36 | 武也 | Takeya | 「とりあえず帰りがけに酒とつまみ買ってこうぜ? 今日はとことんまで飲もう? 俺泊まってってもいいよな?」 | ||
37 | 春希 | Haruki | 「いいけど、どれだけ飲んでも6時半起き8時出な。 俺、明日も一コマ目から講義あるし」 | ||
38 | 武也 | Takeya | 「…相変わらず禅寺みたいな宿泊施設だな。 ま、いいや。じゃ帰ろうぜ」 | ||
39 | 春希 | Haruki | 「あ、ああ…」 | ||
40 | 武也 | Takeya | 「…どした? そんなに可愛かったのか?」 | ||
41 | 春希 | Haruki | 「…いや、行こうか」 | ||
42 | 歩き出す武也の背中を追いつつ、 もう一度だけ、“彼女”を見失った方向を振り返る。 | ||||
43 | そこにはもう、誰の姿もなく、 ただ、夕陽が作る影が長く伸びているだけだった。 | ||||
44 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
45 | 雪菜じゃ…なかったよな? | ||||
46 | 慌てて目をそらして逃げたように見えたのは、 俺の被害妄想だよな? | ||||
47 | ……… | .........
| |||
48 | 雪菜 | Setsuna | 「はぁっ、はぁっ、はぁぁ…」 | ||
49 | 雪菜 | Setsuna | 「………っ」 | ||
50 | 雪菜 | Setsuna | 「はぁぁぁぁ~」 | ||
51 | ??? | ??? | 「なんなのその思春期の中学生みたいな行動パターンは」 | ||
52 | 雪菜 | Setsuna | 「っ!?」 | ||
53 | 依緒 | Io | 「今…春希のことずっと見てたよね? で、目が合った瞬間、ダッシュで逃げたよね?」 | ||
54 | 雪菜 | Setsuna | 「い、い、い…依緒」 | ||
55 | 依緒 | Io | 「なんで避けるの?」 | ||
56 | 雪菜 | Setsuna | 「な、なんの…ことかな? わたしはただ…ええと、教室に忘れ物しちゃって」 | ||
57 | 依緒 | Io | 「まさかまだ春希と話してないの? あれから二週間も経ったのに?」 | ||
58 | 雪菜 | Setsuna | 「忘れ物だって言ってるのに…」 | ||
59 | 依緒 | Io | 「春希とのこと、もう嫌になった? あんな奴、二度と顔も見たくない?」 | ||
60 | 雪菜 | Setsuna | 「っ、そんな! どうしてそんな酷いこと言うの依緒!?」 | ||
61 | 依緒 | Io | 「そんな酷いことしてるのは雪菜の方じゃない。 春希はちゃんと気持ちを伝えたよ? どうして答えてあげないの?」 | ||
62 | 雪菜 | Setsuna | 「そ、それは…」 | ||
63 | 依緒 | Io | 「………」 | "........."
| |
64 | 雪菜 | Setsuna | 「だから、わたしは…」 | ||
65 | 依緒 | Io | 「………」 | "........."
| |
66 | 雪菜 | Setsuna | 「要するに…」 | ||
67 | 依緒 | Io | 「………っ」 | ||
68 | 雪菜 | Setsuna | 「早い話が…」 | ||
69 | 依緒 | Io | 「あああああっ! ちっとも早くな~い!」 | ||
70 | 雪菜 | Setsuna | 「きゃっ?」 | ||
71 | 依緒 | Io | 「ちょっと来なさい。 ミーティング!」 | ||
72 | 雪菜 | Setsuna | 「え、え、え…ちょっと、依緒… は、放し、放して…あああああっ」 | ||
73 | 依緒 | Io | 「どういうことよ? もうとっくにくっついてるもんだと思ってたのに…」 | ||
74 | 雪菜 | Setsuna | 「………」 | "........."
| |
75 | 依緒 | Io | 「別れるの?」 | ||
76 | 雪菜 | Setsuna | 「っ…」 | ||
77 | 依緒 | Io | 「じゃあ、より戻す?」 | ||
78 | 雪菜 | Setsuna | 「戻すも何も…わたしたち…」 | ||
79 | 依緒 | Io | 「なら、あたしから春希に伝えようか? 今さら何言ってるんだって。 もう駄目に決まってるでしょって」 | ||
80 | 雪菜 | Setsuna | 「やめて! やめてよ! わたしのこと、そんな簡単に決めつけないで…」 | ||
81 | 依緒 | Io | 「…なんでそんなにウジウジしてんのよ? OKかNGか、たったの二択じゃない」 | ||
82 | 雪菜 | Setsuna | 「だってわたし、春希くんを振っちゃったんだよ? わたしの方から別れようって…言っちゃったんだよ」 | ||
83 | 依緒 | Io | 「本気じゃないんでしょ? そんなこと誰だってわかるわよ」 | ||
84 | 雪菜 | Setsuna | 「でも、言っちゃったのは本当のことなの。 なのに、なのにさ… どうして春希くんは、そんなわたしを好きだなんて…」 | ||
85 | 依緒 | Io | 「好きだから好きだって言うんでしょ。 そんなの決まってんじゃない…」 | ||
86 | 雪菜 | Setsuna | 「わたし、春希くんに本気で酷いことしたんだよ? 自分から強引にホテルに誘っておいて、 最後の最後で拒絶したんだよ?」 | ||
87 | 依緒 | Io | 「…そんなことしたの? 春希、詳しいこと言わなかったけど、 それ、マジで最低かも」 | ||
88 | 雪菜 | Setsuna | 「だからわからない… 怒って当然なんだよ。嫌われて当たり前なんだよ。 なのにどうして…」 | ||
89 | 依緒 | Io | 「そんなの春希に聞かなくちゃわかんないよ。 だから話せって言ってるんじゃないか」 | ||
90 | 雪菜 | Setsuna | 「怖い…」 | ||
91 | 依緒 | Io | 「今までさんざんアタックしてきたくせに。 なのに、どうして今になって…」 | ||
92 | 雪菜 | Setsuna | 「わたし、逃げる彼を追いかけることはできる。 でも、近づいてくる彼を受け入れることができない…」 | ||
93 | 依緒 | Io | 「…何それ? どんだけ残酷な鬼ごっこなのよ」 | ||
94 | 雪菜 | Setsuna | 「また失敗するんじゃないかって… 前以上に傷つくんじゃないかって… 足がすくんでしまうの」 | ||
95 | 依緒 | Io | 「なんて難儀な…」 | ||
96 | 雪菜 | Setsuna | 「変かもしれないけど… わたしね、今まで、 春希くんがわたしを避けてたことに安心してた」 | ||
97 | 依緒 | Io | 「…変だよそれ。 自分で言ってる通り」 | ||
98 | 雪菜 | Setsuna | 「わたしの想いが届かないなら、 もうあれ以上傷つかないんだって。 三年前の辛さを繰り返さずに済むんだって」 | ||
99 | 依緒 | Io | 「………」 | "........."
| |
100 | 雪菜 | Setsuna | 「ちょっと距離を置いて見つめてるだけなら… 辛かったけど、同じくらい幸せだったから耐えられた」 | ||
101 | 依緒 | Io | 「雪菜…」 | ||
102 | 雪菜 | Setsuna | 「けど、微妙に距離が近づくと、 もっと近づきたいって欲望に勝てなくなった」 | ||
103 | 雪菜 | Setsuna | 「もしかしたら、 彼がわたしだけのものになるんじゃないかって、 そんな幻想を持っちゃった」 | ||
104 | 依緒 | Io | 「幻想、なんかじゃ…」 | ||
105 | 雪菜 | Setsuna | 「ううん、幻想だった。 春希くんは決してかずさのことを忘れなかった」 | ||
106 | 雪菜 | Setsuna | 「そのことに気づいたとき、 身体が勝手に、彼のことを拒絶したの」 | ||
107 | 依緒 | Io | 「っ…」 | ||
108 | 雪菜 | Setsuna | 「それが、クリスマスの日にあったこと… わかるでしょ? 彼がそれでも好きでいてくれる理由、ないんだよ」 | ||
109 | 依緒 | Io | 「………だったら、どうするの?」 | ||
110 | 雪菜 | Setsuna | 「どうしようかなぁ… ねぇ、わたしたち、ずっと四人でいられないかな?」 | ||
111 | 依緒 | Io | 「四人、って…」 | ||
112 | 雪菜 | Setsuna | 「春希くんと武也くん、武也くんと依緒、依緒とわたし。 そんなふうに、間接的に繋がる関係でいられないかな?」 | ||
113 | 依緒 | Io | 「…そんなにつかず離れずがいいんなら 勝手にしたら?」 | ||
114 | 雪菜 | Setsuna | 「依緒は、ずっと友達でいてくれる? 武也くんとも、わたしとも」 | ||
115 | 依緒 | Io | 「いいよ、別にそんくらい」 | ||
116 | 雪菜 | Setsuna | 「あ、ありがと…」 | ||
117 | 依緒 | Io | 「…春希が彼女作って家庭作って子供作って、 みんなに家族の自慢話とかしてるときにも、 ニコニコ笑って相槌を打つ自信があるならね」 | ||
118 | 雪菜 | Setsuna | 「~~~っ!」 | ||
119 | 依緒 | Io | 「単なるたとえ話にそこまでショック受けてさ… 雪菜の言ってること、嘘ばっかじゃん。 強がりにもほどがあるじゃん」 | ||
120 | 雪菜 | Setsuna | 「っ…ぅ、ぅぅ…」 | ||
121 | 依緒 | Io | 「あたしだってさ、雪菜がもう少し普通にしてたら こんなこと言わないよ?」 | ||
122 | 雪菜 | Setsuna | 「っ…普通だよ、わたし…」 | ||
123 | 依緒 | Io | 「この三年間で言い寄ってきた三桁の男たちのうち、 一人にでも心が揺れたりとか、せめていい友達にでも なってたら、こんなこと言わなかったよ」 | ||
124 | 雪菜 | Setsuna | 「友達なら…武也くんがいる」 | ||
125 | 依緒 | Io | 「はいダウト。 あたしは『この三年間』って言った。 それより前にできた男友達は無効」 | ||
126 | 雪菜 | Setsuna | 「どうして… どうしてそんな意地悪ばかり言うの依緒は!」 | ||
127 | 雪菜 | Setsuna | 「わたしは間違ってないって、悪くないんだって、 どうして認めてくれないの!」 | ||
128 | 依緒 | Io | 「だって間違ってるからだよ。 少なくとも今の雪菜は 間違いだらけだと思ってるからだよ」 | ||
129 | 雪菜 | Setsuna | 「っ…」 | ||
130 | 依緒 | Io | 「ねぇ雪菜。 あんたがこんなふうに屈折しちゃったのは、 確かに春希のせいだよ」 | ||
131 | 依緒 | Io | 「でもさ、雪菜自身が素直にならなきゃ… 自分の力で、自分を取り戻さなきゃ、 あんたの想いは永久に叶わないよ?」 | ||
132 | 雪菜 | Setsuna | 「………」 | "........."
| |
133 | 依緒 | Io | 「…そんだけ。 色々とキツいことを言ったのは謝るけど、 間違ってたって謝るつもりはないから」 | ||
134 | 雪菜 | Setsuna | 「………」 | "........."
| |
135 | 依緒 | Io | 「じゃあね。 しばらく頭冷やして、もう一度考えてみなよ」 | ||
136 | ……… | .........
| |||
137 | 雪菜 | Setsuna | 「………」 | "........."
| |
138 | 雪菜 | Setsuna | 「誰か…助けてよ」 | ||
139 | 雪菜 | Setsuna | 「あなたは間違ってないんだよって、言ってよ」 | ||
140 | 雪菜 | Setsuna | 「本当は間違ってるなんてわかってるよ! それでもわたしを肯定してよ! 絶対に正しいんだって、誰か言ってよぉ…っ」 | ||
141 | ……… | .........
| |||
142 | 依緒 | Io | 「…って、ずっとそんな調子だったのよ! おかわり!」 | ||
143 | 春希 | Haruki | 「ピッチ速すぎだ、依緒。 飲むか喋るかどっちかにしろ」 | ||
144 | 武也 | Takeya | 「げ…もう酒が尽きた。 買い置きとかないのかよ、春希」 | ||
145 | 春希 | Haruki | 「酔ってるうちに寝ろ。 それが健康的にも経済的にも 俺の精神衛生的にも最善の策だ」 | ||
146 | 一時間前に電話を掛けてきた依緒は、 武也もいると知って気軽に押しかけてきて、 気軽に俺たちのボトルを空けた。 | ||||
147 | 依緒 | Io | 「もうあたし、悔しいやら情けないやら。 三年連続ミス峰城大付属の清純派美少女は 一体どこ行っちゃったのよ…」 | ||
148 | 春希 | Haruki | 「それってもともとが作られたイメージだろ」 | ||
149 | 武也 | Takeya | 「清純派というにはかなりお茶目だったもんな」 | ||
150 | 春希 | Haruki | 「そのくせ結構強情で、妙なところでワガママで。 友達だって、沢山いそうで実は少なくて」 | ||
151 | 武也 | Takeya | 「本当はビビリでさ。 学園祭のリハーサルの時なんか足が震えて、 声が出なくなっちゃってなぁ」 | ||
152 | 春希 | Haruki | 「でも一度開き直ると強いんだよ。 本番の時なんかあの大観衆を前に堂々としててさ。 …うん、あの時の雪菜は凄かった」 | ||
153 | 武也 | Takeya | 「………」 | "........."
| |
154 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
155 | 依緒 | Io | 「はいそこの二人。 昔を思い出して恍惚としてんじゃないの。 あたしは今の雪菜の話をしてんの」 | ||
156 | 俺がさっき見た雪菜の幻には、 ちゃんと実体があったらしかった。 | ||||
157 | そして、その実体を持ってた雪菜は、 依緒の目には、あまりにも弱々しく、 あまりにも後ろ向きに映ったらしかった。 | ||||
158 | 依緒 | Io | 「ねぇ春希… あんた、あれ以来雪菜と連絡取ってなかったの?」 | ||
159 | 武也 | Takeya | 「除夜の鐘を聞きながら、俺たちの目の前でいきなり 『やっぱり雪菜が大好きだ!』って告白したくせに」 | ||
160 | 春希 | Haruki | 「そこまで詳細に説明するな…」 | ||
161 | そして、あの時の俺は、 誰の目にも異様なほど前向きに映ったに違いない… | ||||
162 | 春希 | Haruki | 「…あれが最後だよ。 その後は電話もメールもしてない。 もちろん、向こうからも」 | ||
163 | 依緒 | Io | 「どうして? 告白しちゃったんだから、もう開き直るしかないじゃん。 なんでアタックかけないのよ?」 | ||
164 | 春希 | Haruki | 「できるわけないだろ。 …俺たちの場合」 | ||
165 | そんな簡単に、開き直れる訳なんかない。 | ||||
166 | 好きだという気持ちだけで押し通すには、 俺たちは、遠回りをしすぎた。 | ||||
167 | 俺たちは、好きだとか、でも駄目なんだとか、 もうそういう段階を何度も何度も繰り返してしまったから。 | ||||
168 | だから、お互いが好き合ってるなんて、 そんな初歩的な理由だけじゃ、もう近づけない。 | ||||
169 | 俺と雪菜の間には、 それほど幅がないくせに、 とても深い溝がある。 | ||||
170 | 簡単に飛び越せそうに見えて、 でももし落ちてしまったら、 二度とふたたび這い上がることのできない深い溝が。 | ||||
171 | 依緒 | Io | 「じゃあ、どうすんのよあれ… 完全に天の岩戸に閉じこもっちゃったよ?」 | ||
172 | 春希 | Haruki | 「今はそっとしておいてくれ… 雪菜がお前らに頼ってくるまで、 無理に介入しないで見守っててくれ」 | ||
173 | 武也 | Takeya | 「どうして? お前、元に戻りたいんだろ? 雪菜ちゃんと、やり直したいんだろ?」 | ||
174 | 春希 | Haruki | 「雪菜だってそう思うかどうかはわからない。 多分、今は雪菜にだってわかってないんだと思う」 | ||
175 | 依緒 | Io | 「答えなんて出てるじゃん。 朴念仁のくせに浮気者なんて最低な男を 三年も諦めきれなかったんだよ? あのコは」 | ||
176 | 春希 | Haruki | 「…そうやってお前ら、絶対に俺の味方するだろ? 俺の気持ちを優先しようとするだろ?」 | ||
177 | 表現的にはとても味方してるように聞こえないけど、 今はそういうことを云々する場じゃない。 | ||||
178 | 武也 | Takeya | 「違うなそれは。 俺たちは『春希と雪菜ちゃんの味方』をするんだ。 お前たちが二人でいられることを優先するんだよ」 | ||
179 | 春希 | Haruki | 「ありがと… でもそれが雪菜にとっていいことなのかどうかは、 雪菜自身が決めることだろ?」 | ||
180 | 依緒 | Io | 「けど…」 | ||
181 | 春希 | Haruki | 「それにさ… 今、雪菜を口説いていいのは俺だけだ」 | ||
182 | 武也 | Takeya | 「………」 | "........."
| |
183 | 依緒 | Io | 「………」 | "........."
| |
184 | 春希 | Haruki | 「…って! 除夜の鐘を聞きながら、 お前たちの目の前でそう宣言しただろ俺!」 | ||
185 | 言った俺も相当に恥ずかしかったけど、 聞いた二人が見る見る赤面していくのに耐えきれなかった。 | ||||
186 | 依緒 | Io | 「はぁ…もう、なんだかなぁ」 | ||
187 | 武也 | Takeya | 「春希がそれをもっと早く言ってれば…」 | ||
188 | 依緒 | Io | 「あたしたちだってこんな余計な苦労を 背負い込むこともなかったのにね…」 | ||
189 | 春希 | Haruki | 「………そこの戸棚に料理用の酒が一本入ってるから」 | ||
190 | ……… | .........
| |||
191 | 武也 | Takeya | 「………」 | "........."
| |
192 | 依緒 | Io | 「………」 | "........."
| |
193 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
194 | 二時を回り、酒も回り… | ||||
195 | だいぶ皆のまぶたもレスポンスも重くなってきた。 | ||||
196 | 武也 | Takeya | 「なぁ、春希…」 | ||
197 | 春希 | Haruki | 「ん~?」 | ||
198 | 武也 | Takeya | 「春休みに入ったらさ、 四人でどこか遊びに行かないか?」 | ||
199 | 春希 | Haruki | 「四人…?」 | ||
200 | 依緒 | Io | 「あ~、いいねぇ。 あたしスキーがいいな。 ここにいない誰かは嫌がるかもしれないけど」 | ||
201 | 武也 | Takeya | 「その場合は、 趣味がおばさんくさい美少女に合わせて、 温泉でのんびりするってのもアリだけどな」 | ||
202 | 依緒 | Io | 「四年になっちゃうとそんな暇なくなるもんね。 卒論に、就職活動に…」 | ||
203 | 春希 | Haruki | 「四人…か」 | ||
204 | そんなぼうっとした空気の中の何気ない話題に… | ||||
205 | 実は、ほんの数秒だけ、ついていけなかった。 | ||||
206 | というか、『四人で』という数字に。 | ||||
207 | だって… | ||||
208 | 春希 | Haruki | 「行けると…いいな」 | ||
209 | 今、俺の視界に映っていたものが、 三人だったから。 | ||||
210 | ……… | .........
| |||
211 | 右から、かずさ、雪菜、俺。 | ||||
212 | 舞台に上がる、ほんの数分前。 実行委員が撮っていった、 俺たちがステージ上にいない、唯一の写真 | ||||
213 | マイクを持っていない雪菜と、 キーボードもサックスもベースも弾いてないかずさ。 | ||||
214 | そんな単なるスナップなのに、 ただ一人、俺は空気を読まずにカッコつけてて… | ||||
215 | 春希 | Haruki | 「なぁ、武也」 | ||
216 | 武也 | Takeya | 「ん~?」 | ||
217 | 武也の声が、いよいよヤバくなってきた。 | ||||
218 | ついでにベッドに目をやると、 そこはとっくに依緒に占拠されていた。 | ||||
219 | 春希 | Haruki | 「お前、まだ続けてるか?」 | ||
220 | 武也 | Takeya | 「何を…?」 | ||
221 | 春希 | Haruki | 「お前が俺に教えてくれたんだろ…」 | ||
222 | 写真の中で俺が携えてたものを、 数年ぶりに、両腕に抱えてみる。 | ||||
223 | 武也 | Takeya | 「ああ…もう、やめちゃったなぁ」 | ||
224 | あの時の、学校の備品とは違う、 安物のアコースティックギターだったけど。 | ||||
225 | 武也 | Takeya | 「元々、女引っかけるためのツールでしかなかったし。 今となってはそんなの練習する時間があったら、 合コンに注ぎ込んだ方がよっぽど効率的だ」 | ||
226 | 春希 | Haruki | 「そういう奴だよな、お前は…」 | ||
227 | バンドやるって言い出した時も、 まるっきり同じ理由だったっけ。 ある意味、一本芯の通った奴とも言えるか。 | ||||
228 | 武也 | Takeya | 「そいやお前は妙なこと言ってたよなぁ…」 | ||
229 | 春希 | Haruki | 「だっけ?」 | ||
230 | 武也 | Takeya | 「自分がこの学校にいたっていう証を残したいとか、 今聞いたら爆笑モンの… いや、当時も爆笑したけどさ」 | ||
231 | 春希 | Haruki | 「…うっせ~な」 | ||
232 | そういえば、そんなこと言ってたかも… | ||||
233 | ギターを始めたのも、 作詞なんてものに興味を持ったのも、 メンバーにもなれないのに同好会にしがみついてたのも。 | ||||
234 | 夏休み、鬼教官に特訓を受けたのも、 歌姫を無理やり引きずり込んだのも、 たった一月で、ステージに上がってしまったのも。 | ||||
235 | 最初は、そんな青臭い、 そしてちょっとだけ硬派を気取った理由だったっけ。 | ||||
236 | 武也 | Takeya | 「お前…前から下手だったけど、 今やブランクのせいで素人同然だな」 | ||
237 | 春希 | Haruki | 「うっさい。 チューニングできてないだけだ」 | ||
238 | 武也の言う通り、 まるっきり音の外れたギターを、 ゆっくりとかき鳴らす。 | ||||
239 | 昔みたいに、ひねくれた理由じゃない。 男の子がギターを始める、 純粋な衝動に駆られて。 | ||||
240 | だって、ギターってのは… | ||||
241 | 好きな女の子を口説くための道具だろ? |
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Introductory Chapter | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
1001 | 1008 | 1009 | 1010 | 1011 | 1012 | 1013 |
1002 | 1008_020 | 1009_020 | 1010_020 | 1011_020 | 1012_020 | |
1003 | 1008_030 | 1009_030 | 1010_030 | 1011_030 | 1012_030 | |
1004 | 1008_040 | 1010_040 | 1012_030_2 | |||
1005 | 1008_050 | 1010_050 | ||||
1006 | 1010_060 | |||||
1006_2 | 1010_070 | |||||
1007 |
Closing Chapter | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Common | Setsuna | Koharu | Chiaki | Mari | ||||||
2001 | 2011 | 2020 | 2027 | 2301 | 2309 | 2316 | 2401 | 2408 | 2501 | 2510 |
2002 | 2012 | 2021 | 2028 | 2302 | 2310 | 2317 | 2402 | 2409 | 2502 | 2511 |
2003 | 2013 | 2022 | 2029 | 2303 | 2311 | 2318 | 2403 | 2410 | 2503 | 2512 |
2004 | 2014 | 2023 | 2030 | 2304 | 2312 | 2319 | 2404 | 2411 | 2504 | 2513 |
2005 | 2015 | 2024 | 2031 | 2305 | 2313 | 2320 | 2405 | 2412 | 2505 | 2514 |
2006 | 2016 | 2025 | 2032 | 2306 | 2314 | 2321 | 2406 | 2413 | 2506 | 2515 |
2007 | 2017 | 2026 | 2033 | 2307 | 2315 | 2322 | 2407 | 2507 | 2516 | |
2008 | 2018 | 2308 | 2508 | 2517 | ||||||
2009 | 2019 | 2509 | ||||||||
2010 | ||||||||||
Setsuna | Koharu | Chiaki | Mari | |||||||
2031_2 | 2312_2 | 2401_2 | 2504_2 | 2511_2 | ||||||
2031_3 | 2313_2 | 2402_2 | 2507_2 | 2513_2 | ||||||
2031_4 | 2313_3 | 2402_3 |
Coda | |||||||||
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Common | Kazusa (True) | Setsuna (True) | Kazusa (Normal) | ||||||
3001 | 3008 | 3014_2 | 3020 | 3101 | 3107 | 3201 | 3207 | 3901 | 3907 |
3002 | 3009 | 3014_3 | 3021 | 3102 | 3108 | 3202 | 3208 | 3902 | 3908 |
3003 | 3010 | 3015 | 3022 | 3103 | 3109 | 3203 | 3209 | 3903 | 3909 |
3004 | 3011 | 3016 | 3023 | 3104 | 3110 | 3204 | 3210 | 3904 | |
3005 | 3012 | 3017 | 3024 | 3105 | 3111 | 3205 | 3211 | 3905 | |
3006 | 3013 | 3018 | 3106 | 3206 | 3906 | ||||
3007 | 3014 | 3019 | |||||||
Common | Setsuna (True) | Kazusa (Normal) | |||||||
3001_2 | 3210_2 | 3901_2 | 3906_2 | ||||||
3015_2 | 3902_2 | 3907_2 | |||||||
3902_3 | 3907_3 | ||||||||
3904_2 |
Mini After Story and Extra Episode | |||
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The Path Back to Happiness | The Path Forward to Happiness | Dear Mortal Enemy | |
6001 | 6101 | 4000 | 4005 |
6002 | 6102 | 4001 | 4006 |
6003 | 6103 | 4002 | 4007 |
6004 | 6104 | 4003 | 4008 |
6005 | 4004 | 4009 |
Novels | |||||
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The Snow Melts, And Until The Snow Falls | The Idol Who Forgot How to Sing | Twinkle Snow ~Reverie~ | After the Festival ~Setsuna's Thirty Minutes~ | His God, Her Savior | |
5000 | 5100 | 5200 | 5205 | 5300 | 5400 |
5001 | 5101 | 5201 | 5206 | 5301 | 5401 |
5002 | 5102 | 5202 | 5207 | 5302 | |
5003 | 5103 | 5203 | 5208 | 5303 | |
5004 | 5104 | 5204 | 5209 |
Short Stories | |||
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Princess Setsuna's Distress and Her Minister's Sinister Plan | Koharu Climate After the Passing of the Typhoon | This isn't the Season for White Album | Todokanai Koi, Todoita |
7000 | 7100 | 7200 | 7300 |