White Album 2/Script/2018
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Translation Notes
Text
Speaker | Text | Comment | |||
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Line # | JP | EN | JP | EN | |
1 | 小春 | Koharu | 「はい、今日は必ず来ますから。 シフト表も確認したし、電話もかけました」 | ||
2 | 小春 | Koharu | 「わたしに合わせるよう遅番にしろって言ったから、 夜は閉店までいると思います」 | ||
3 | 小春 | Koharu | 「…まだそんなこと言ってるんですか? いい加減、覚悟を決めてください。 親友のためじゃないですか!」 | ||
4 | 早百合 | Sayuri | 「お~い、小春~」 | ||
5 | 亜子 | Ako | 「ちょっと~、待ちなさいって~」 | ||
6 | 小春 | Koharu | 「あ、ちょっと待ってください。 …なに? どしたの? 今からバイトだから急いでるんだけど」 | ||
7 | 早百合 | Sayuri | 「…二学期もめでたく終わったし、 今からカラオケでも行こうかって誘いに来たんだけど」 | ||
8 | 亜子 | Ako | 「…今からバイトだからって断られたとこ」 | ||
9 | 小春 | Koharu | 「…ゴメン、そういうわけ。 これも卒業旅行のためだから」 | ||
10 | 早百合 | Sayuri | 「ま、そういうことなら仕方ないけどさ、 それにしても、最近付き合い悪くない?」 | ||
11 | 亜子 | Ako | 「バイトなくてもすぐ帰っちゃうよね。 せっかくテストも終わって流しモードだったのにさ」 | ||
12 | 小春 | Koharu | 「あ~、ちょっと年内はね。 もう少ししたら納まるべきところに納まると思うから」 | ||
13 | 早百合 | Sayuri | 「何が?」 | ||
14 | 小春 | Koharu | 「あ、ちょっとごめん。電話の途中だった。 …お待たせしました。はい、じゃあ後はお店で」 | ||
15 | 小春 | Koharu | 「絶対に来てくださいよ? ずっと待ってますから」 | ||
16 | 亜子 | Ako | 「…え」 | ||
17 | 小春 | Koharu | 「お願いです。 二人のためなんです」 | ||
18 | 早百合 | Sayuri | 「な、何が?」 | ||
19 | 小春 | Koharu | 「絶対に、一緒に過ごさなくちゃ駄目なんです。 だって、せっかくのクリスマスなんだから」 | ||
20 | 亜子 | Ako | 「………え」 | ||
21 | 小春 | Koharu | 「はい、はい、それじゃ…失礼します」 | ||
22 | 小春 | Koharu | 「お待たせ。 で、なんの話だったっけ?」 | ||
23 | 早百合 | Sayuri | 「恒例のクリスマスパーティどうするのかなって…」 | ||
24 | 亜子 | Ako | 「…話をする前に結論出ちゃったけどね」 | ||
25 | 小春 | Koharu | 「あ~、ごめん、今年は行けないや。 慈善活動…じゃなかった、バイト入れちゃったから」 | ||
26 | 早百合 | Sayuri | 「………頑張ってね、小春」 | ||
27 | 亜子 | Ako | 「………わたしたち、決して妬んだりしないから」 | ||
28 | 小春 | Koharu | 「そりゃ頑張るけど言ってる意味はわからないよ」 | ||
29 | ……… | .........
| |||
30 | 『ごめん。 なんだか気を使わせちゃったみたいだね』 | ||||
31 | 『24日っていうのは、別に大した意味はないの。 ただ、本当にそこしか空いてなかったから』 | ||||
32 | 『うち、クリスマスパーティは25日なの。 朝からお母さんと一緒にチキン焼いて、 相変わらずジュースのシャンペンで乾杯して』 | ||||
33 | 『お母さんは孝宏に そろそろ彼女連れてきたらって言ってるけど、 どうやら今年もそんな気配はなさそう』 | ||||
34 | 『いたとしても来たがらないかも。 いきなりよその家族の中にぽつんと一人だと、 身の置き所がないもんね』 | ||||
35 | 『そういえば、春希くんは物怖じしなかったね。 最初っからお父さんと堂々と渡り合っちゃって。 頼もしかったけど、とても同い年とは思えなかったなぁ』 | ||||
36 | 『ま、春希くんの方はそれどころじゃなかったのかもね。 あの時は学園祭のことで頭がいっぱいだったもんね』 | ||||
37 | 『…話が脱線しちゃったね。そんなわけで、 明後日はただ暇なだけで、特別な意味は何もないから、 何も気を使わずに、手ぶらでおいでください』 | ||||
38 | 『あ、本だけは忘れないでよ? もともと、それが目的なんだし』 | ||||
39 | 『そんな感じ。 …それでも駄目なら、ハッキリ言ってください』 | ||||
40 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
41 | 『じゃあ、明日の23日は?』 | ||||
42 | なんて、聞ける訳ないよな。 | ||||
43 | 完璧な理論武装に見せかけて、 小さな穴が開いてることをわざと見せつけてるのか、 それとも全然気づいてないだけか。 | ||||
44 | …気づいてないんだろうなぁ。 駆け引きのできるような[R彼女^せつな]じゃないしな。 | ||||
45 | …だから俺たちは、こんなふうになったんだから。 | ||||
46 | 雪菜が、もう少しだけずるかったら。 自分勝手にふるまってくれてれば… | ||||
47 | そしたら俺たちは、 今ごろはずっと二人でいるか、 それとも完全に独りぼっちだったのに。 | ||||
48 | 『わかった。24日。 別に気を使った訳じゃないって。 ただ、その日はバイトを休めなかっただけで』 | ||||
49 | 『終わる時間も読めなかったし、 絶対に夜遅くなるし、迷惑かなって』 | ||||
50 | 『それと、すぐにでも渡したかったから、 少し焦ってたってのもあるかな』 | ||||
51 | 『とにかく明後日な。 行けそうになったら電話する。 でも、わざわざ起きて待ってることないから』 | ||||
52 | …穴、ないよな? | ||||
53 | 春希 | Haruki | 「さてと…戻るか」 | ||
54 | 控え室の時計は、 いつの間にか長針が真上を向いていた。 | ||||
55 | そろそろ現場に復帰しないと、 何かと口うるさい職場後輩の 悪口雑言の餌食になりかねない。 | ||||
56 | 春希 | Haruki | 「あ…」 | ||
57 | 『何時でも大丈夫。 どれだけ遅くなってもいい。 ほんのちょっとの時間しか取れなくてもいい』 | ||||
58 | 『でも、24日のうちに会いたいな』 | ||||
59 | 春希 | Haruki | 「っ…」 | ||
60 | 雪菜の開けてしまった小さな穴は… | ||||
61 | こうして、わざとか天然か微妙に謎なまま、 少しずつ大きく拡がっていく。 | ||||
62 | ……… | .........
| |||
63 | 春希 | Haruki | 「お待たせ杉浦。 それじゃ交代…」 | ||
64 | 小春 | Koharu | 「みんな必死で走り回ってるのに、 いつまで休憩してれば気が済むんですか。 自分さえよければそれでいいんですか?」 | ||
65 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
66 | なりかねない、なんて仮定を使うべきじゃなかった。 | ||||
67 | 小春 | Koharu | 「じゃわたし、10分だけ休憩入ります。 のんびりしてる訳にいかないですから。 冬休みでいつもより賑わってるこんな時に」 | ||
68 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
69 | スキル高いよなぁ…嫌味の。 | ||||
70 | 小春 | Koharu | 「12番テーブルのお客様、オーダーまだです。 よろしくお願いします」 | ||
71 | 春希 | Haruki | 「あ、ああ…」 | ||
72 | 相変わらず、お節介で、親切で、いい奴だけど、 口が悪くて、容赦なくて、ヤな奴だ。 | ||||
73 | …けど、何しろ裏も下心も他意もまるっきりないから、 そんな善意の塊に腹を立ててもしょうがないんだよな。 | ||||
74 | 春希 | Haruki | 「さてと、12番12番」 | ||
75 | それよりも今は、 怠慢によって失った信用を取り戻さないと。 | ||||
76 | 春希 | Haruki | 「お待たせしました。 ご注文お伺い…」 | ||
77 | 武也 | Takeya | 「牛肉の赤ワイン煮込みブルゴーニュ風」 | ||
78 | 依緒 | Io | 「広島風お好み焼き肉玉うどん入り」 | ||
79 | 春希 | Haruki | 「…どっちもあるわけないだろ」 | ||
80 | …他意、ないんだよな? | ||||
81 | ……… | .........
| |||
82 | 春希 | Haruki | 「天使の…なんだって?」 | ||
83 | 武也 | Takeya | 「すっげー泣けるラブストーリーなんだって。 今年の邦画じゃナンバーワンって言われてて」 | ||
84 | 春希 | Haruki | 「本当にラブストーリーなのか? なんか微妙に暗そうなタイトルだけど?」 | ||
85 | 武也 | Takeya | 「ラブストーリーとは言ったが、 ハッピーエンドとは言ってないぞ」 | ||
86 | 閉店まで居座る勢いの迷惑な客を見かね、 頃合いを見計らって控え室の方にご退去願った。 | ||||
87 | その時、また休憩に入ったという誤解にまみれた 冷たい視線が背中に鋭く突き刺さっていたけれど、 ここは俺が泥をかぶるしかないだろう。 | ||||
88 | 春希 | Haruki | 「で、この2枚のチケットがどうしたって?」 | ||
89 | 武也 | Takeya | 「よくぞ聞いてくれた!」 | ||
90 | 春希 | Haruki | 「…やっぱ聞かなかったことにする」 | ||
91 | 武也 | Takeya | 「まぁ待て、今なら2枚で4000円のところ 大奮発して3600円! こんなお得な買い物はそうそう…」 | ||
92 | 春希 | Haruki | 「いや待てよ。 なんで俺に映画のチケットなんか…」 | ||
93 | 依緒 | Io | 「悪い春希。 半額の2000円にしとくから 引き取ってやってくんない?」 | ||
94 | 武也 | Takeya | 「い、依緒?」 | ||
95 | 依緒 | Io | 「実はね、[R武也^コイツ]、本命のコと行くはずだったのよ。 ところが彼女の方が『武也に飽きた』って、 やむにやまれぬ事情で行けなくなっちゃって…」 | ||
96 | 武也 | Takeya | 「依緒ぉぉ…」 | ||
97 | 春希 | Haruki | 「そいつはまたやむにやまれないな…」 | ||
98 | その事実を依緒の口から公表されるという経緯も含めて。 | ||||
99 | にしても、わざわざ人の職場に押しかけて 営業妨害まがいの嫌がらせまでした割には 随分とショボい用件だな… | ||||
100 | 依緒 | Io | 「そういう訳でさ、 この惨めで哀れで情けないクリスマスシングルに、 歳末助け合いの心を少しでも向けてくれたらなって」 | ||
101 | 春希 | Haruki | 「お前が向けてやれよ依緒… たまには二人で行けばいいじゃないか」 | ||
102 | 依緒 | Io | 「冗談じゃない。誰が[R武也^コイツ]なんかと!」 | ||
103 | 武也 | Takeya | [F16「…ちょっと傷ついた」] | ||
104 | 依緒 | Io | [F16「演技よ演技! ][F16…行かないけど」] | ||
105 | 春希 | Haruki | 「お前ら少しは仲良くしろよ。 付属の頃からちっとも変わってないな」 | ||
106 | 武也 | Takeya | 「………」 | "........."
| |
107 | 依緒 | Io | 「………」 | "........."
| |
108 | 春希 | Haruki | 「な、何だよ?」 | ||
109 | こういう時の呆れたような視線だけ、 息ぴったりでシンクロしやがって。 | ||||
110 | 武也 | Takeya | 「頼むよ春希。 金の問題じゃないんだ。 ただ、手元に置いておくのも辛くてな」 | ||
111 | 春希 | Haruki | 「まぁ、そりゃ…」 | ||
112 | 依緒 | Io | 「誰かに売っても、プレゼントしてもいいじゃん。 それに、武也がここまで言ってんだし」 | ||
113 | 春希 | Haruki | 「わかったよ…」 | ||
114 | もう一度『ならお前が買ってやれよ』 という言葉が口をつきかけたけど、 武也の精神衛生上、もう依緒に振るのはやめとこう。 | ||||
115 | 財布を覗くと、 こういう時に限って千円札が潤沢なのがやるせない。 | ||||
116 | 春希 | Haruki | 「ほら、これで飲みにでも行って憂さを晴らせ。 …依緒も付き合ってやれよ?」 | ||
117 | 武也 | Takeya | 「恩に着る!」 | ||
118 | 武也は、俺が差し出した四枚の千円札を、 思いっきり遠慮せずに受け取った。 | ||||
119 | 依緒 | Io | 「まぁ…デートっぽくなければ構わないけど」 | ||
120 | そして依緒は、そのうちの二枚を引き抜くと、 当然のように自分のポケットにねじ込んだ。 | ||||
121 | 俺に返すとか、 そういう気の利いた気配すら見せないのが、 コイツららしいよな… | ||||
122 | 春希 | Haruki | 「映画か…」 | ||
123 | 最後に行ったのはいつだったろうか。 …誰と、だったろうか。 | ||||
124 | 武也 | Takeya | 「あ、それで上映時間は17時からだから」 | ||
125 | 春希 | Haruki | 「なんだよ、1日1回しか上映しないのか。 今年の邦画ナンバーワンじゃなかったのかよ」 | ||
126 | ゼミの知り合いとか、行く奴いるかな。 | ||||
127 | 武也 | Takeya | 「実はリバイバルだからな。 最初は10年近く前に公開されたんだってよ」 | ||
128 | 春希 | Haruki | 「お前、ホント口から出任せばっかり…」 | ||
129 | って、冬休みに入ってたっけ。 | ||||
130 | 今さら映画のチケット押しつけるために 呼び出せる訳もないか。武也じゃあるまいし。 | ||||
131 | 武也 | Takeya | 「ど真ん中のちょい後ろ目で、いい席だぞ。 予約開始日に朝から並んで取ったからな」 | ||
132 | 春希 | Haruki | 「別に席なんかどこでもいいって」 | ||
133 | しょうがない、あいつに電話してみるか。 どうせ暇を持て余してるだろうし。 | ||||
134 | 武也 | Takeya | 「あと、言い忘れてたけど24日しか使えないからな。 無駄にするなよ」 | ||
135 | 春希 | Haruki | 「あ、ああ…」 | ||
136 | 千晶 | Chiaki | 『でも、ま、異様にヒマだったり、 心がどうにも落ち着かなくなっちゃったりした時には、 遠慮なく呼び出してくれていいからね?』 | ||
137 | 待てよ、俺… 一体、何を考えたんだ、今? | ||||
138 | 武也 | Takeya | 「ついでに言っておくと、 展望レストランの方の予約は19時からだから」 | ||
139 | 春希 | Haruki | 「わ、わかった…」 | ||
140 | 千晶 | Chiaki | 『春希のお望みのあたしが相手するよ? 親友でも、悪友でも…それとも…』 | ||
141 | 今、あいつを誘うってことがどういう意味なのか、 理解してるのか…? | ||||
142 | 武也 | Takeya | 「飯塚の名前で2人。 海の見える窓際の席。 料理は1人2万のコースで合計4万な」 | ||
143 | 春希 | Haruki | 「うん…」 | ||
144 | なんでそんなことを思いついたのか、自分でもわからない。 もうすぐクリスマスだからって、浮かれてたのか? | ||||
145 | そんなこと、今の俺に許されるはずがないのに。 | ||||
146 | 編集部の誰かにプレゼントするか。 いつも世話になってるし。 | ||||
147 | 武也 | Takeya | 「実はリバイバルだからな。 最初は10年近く前に公開されたんだってよ」 | ||
148 | 春希 | Haruki | 「お前、ホント口から出任せばっかり…」 | ||
149 | …けど、世話になってるって条件だったら、 一番最初に麻理さんに聞いてみるしかないよな。 | ||||
150 | 俺の初仕事の載った雑誌を買ってくれたお礼とか、 打ち上げに連れて行ってくれたお礼とか、 今まで仕事を叩き込んでくれたお礼とか。 | ||||
151 | …映画のチケット程度じゃ、到底返せそうにないけど。 | ||||
152 | 武也 | Takeya | 「ど真ん中のちょい後ろ目で、いい席だぞ。 予約開始日に朝から並んで取ったからな」 | ||
153 | 春希 | Haruki | 「別に席なんかどこでもいいって」 | ||
154 | けど、麻理さんに2枚渡したら、 あの人は一体誰を誘うんだ? | ||||
155 | 雨宮さん…と恋愛映画に行っても仕方ないし、 彼氏を誘って… | ||||
156 | …やっぱり、渡すなら1枚だけの方が。 | ||||
157 | 武也 | Takeya | 「あと、言い忘れてたけど24日しか使えないからな。 無駄にするなよ」 | ||
158 | 春希 | Haruki | 「あ、ああ…」 | ||
159 | 待て。 なんでそういう考えに辿り着く? | ||||
160 | 俺が麻理さんを映画に誘って、 それから、どうなるって言うんだ? | ||||
161 | 武也 | Takeya | 「ついでに言っておくと、 展望レストランの方の予約は19時からだから」 | ||
162 | 春希 | Haruki | 「わ、わかった…」 | ||
163 | 麻理さんは、いつもみたいに何だかんだ文句を言いつつ、 結構楽しんでくれるかもしれない。 | ||||
164 | で、俺は、そんな普段より明るく 少しだけ無防備な彼女と一緒にいて、 心から安らげるかもしれない。 | ||||
165 | 武也 | Takeya | 「飯塚の名前で2人。 海の見える窓際の席。 料理は1人2万のコースで合計4万な」 | ||
166 | 春希 | Haruki | 「うん…」 | ||
167 | けれど、そんな心地良い時間… 今の俺に許されるんだろうか。 | ||||
168 | 佐藤とか中川さん、興味あるかな。 後で声かけてみるか。 | ||||
169 | 武也 | Takeya | 「実はリバイバルだからな。 最初は10年近く前に公開されたんだってよ」 | ||
170 | 春希 | Haruki | 「お前、ホント口から出任せばっかり…」 | ||
171 | それでも駄目なら、他のバイトの誰かにでも… 半額だってんなら、一人くらいは欲しがるかも。 | ||||
172 | 武也 | Takeya | 「ど真ん中のちょい後ろ目で、いい席だぞ。 予約開始日に朝から並んで取ったからな」 | ||
173 | 春希 | Haruki | 「別に席なんかどこでもいいって」 | ||
174 | そこまでして誰も欲しがらなかったら、 しょうがないから誰か誘って… | ||||
175 | そうだな、例えば… いつも世話になってる後輩とか? | ||||
176 | 武也 | Takeya | 「あと、言い忘れてたけど24日しか使えないからな。 無駄にするなよ」 | ||
177 | 春希 | Haruki | 「あ、ああ…」 | ||
178 | 待て。 なんでそうなる? | ||||
179 | 俺が杉浦を映画にって… そんなの、誘いの言葉すらイメージできない。 | ||||
180 | 武也 | Takeya | 「ついでに言っておくと、 展望レストランの方の予約は19時からだから」 | ||
181 | 春希 | Haruki | 「わ、わかった…」 | ||
182 | それに、もし無謀にもそんな言葉を口にしたら、 『わたしに声かけてる場合ですか!』と、 今まで以上にきつい説教を食らいそうだ。 | ||||
183 | 武也 | Takeya | 「飯塚の名前で2人。 海の見える窓際の席。 料理は1人2万のコースで合計4万な」 | ||
184 | 春希 | Haruki | 「うん…」 | ||
185 | でも、それなら… | ||||
186 | 『わたしに声かけてる場合』じゃないなら、 誰に声をかけてる場合だって言うんだ… | ||||
187 | 武也 | Takeya | 「というわけで、あと4万」 | ||
188 | 春希 | Haruki | 「わかった、ちょっと待っ………待て」 | ||
189 | 依緒 | Io | 「悪い春希。 1割引の3万6千円にしとくから、 引き取ってやってくんない?」 | ||
190 | 春希 | Haruki | 「だから待てって…」 | ||
191 | 武也 | Takeya | 「鬼かよ依緒! それだとさっき取り返したチケット代が まるごと吹っ飛ぶんだぞ?」 | ||
192 | 春希 | Haruki | 「いや、吹っ飛ぶのは俺の…」 | ||
193 | 依緒 | Io | 「親友のためなんだろ? 何みみっちいこと言ってんだよ!」 | ||
194 | 春希 | Haruki | 「何でそうなる? どうして3万6千円が俺のためになるんだ?」 | ||
195 | 武也 | Takeya | 「畜生わかったよ! 清水の舞台…じゃなくて、 有海の海に飛び込んだつもりで、 思い切って3万6千円でOK!」 | ||
196 | 春希 | Haruki | 「OKじゃねえだろ!?」 | ||
197 | ……… | .........
| |||
198 | …… | ......
| |||
199 | … | ...
| |||
200 | 春希 | Haruki | 「…なんてこった」 | ||
201 | 今月のバイト代が一瞬にして消えた。 | ||||
202 | 佐藤 | Satou | 「あ、北原さん、 ちょっと…ってどうしたんすか? なんかふらついてますよ?」 | ||
203 | 春希 | Haruki | 「あまりの後悔に頭が真っ白で…」 | ||
204 | 佐藤 | Satou | 「は、はぁ…?」 | ||
205 | 武也が売りつけた『映画のチケット』は、 まるで注文の多い料理店のように、 徐々に俺を食い物にしていった。 | ||||
206 | 24日の17時からの回のみ有効。 湾岸のショッピングモール内のシネコンのみ有効。 | ||||
207 | オプションとして、有海インテグラルホテルの 展望レストランでのディナー付き。 …ちなみにお値段は映画の10倍。 | ||||
208 | クリスマスのベイエリア。 映画見た後、夜景見ながら食事とか、 なんというカップル向けカスタマイズ… | ||||
209 | こんなターゲットの違いすぎるデートコースなんて、 誰かに売りつけることは当然として、 誰かに譲ることすら俺にはできそうにない。 | ||||
210 | 悪質なマルチに引っかかった後の虚無感が、 じわじわと俺の全身を支配していく。 | ||||
211 | 佐藤 | Satou | 「ええと、ちょっと相談あるんすけど… 後にします?」 | ||
212 | 春希 | Haruki | 「…いや、いいよ、何?」 | ||
213 | それでも、 今度こそ迂闊に生返事だけはしないぞと誓いつつ、 ぐったりと、人の減ってきた店内を眺める。 | ||||
214 | 佐藤 | Satou | 「実はですね、年始なんすけど… 三が日が全然人足りないんすよ」 | ||
215 | 春希 | Haruki | 「そりゃ…大変だな」 | ||
216 | 佐藤 | Satou | 「ええ、やっぱり学生バイト多いからその辺は… 年末はなんとか集まったんですけどねぇ」 | ||
217 | 春希 | Haruki | 「今年も元日から営業?」 | ||
218 | 佐藤 | Satou | 「初詣とか初売りとかで結構賑わいますからね。 本部からも指示が来たし」 | ||
219 | 春希 | Haruki | 「店長いないのになぁ。 大丈夫か?」 | ||
220 | 佐藤 | Satou | 「そこで相談なんすけどね… 北原さん、何とかならないですか? あ、もちろん無理を承知ですから時給の方も…」 | ||
221 | 春希 | Haruki | 「冬休み期間中だけだよな? そのままなし崩し的に続けろってことはないよな?」 | ||
222 | ついさっき騙されたばかりだから、 今、目の前で恐縮している佐藤に対しても、 どうしても少し疑いの目で見てしまう。 | ||||
223 | 佐藤 | Satou | 「もちろん! そろそろ就職活動だってのはわかってますし、 さすがに来月には店長も復帰するでしょうし」 | ||
224 | 春希 | Haruki | 「いいよ… ちょうど今、金が必要になったことだし」 | ||
225 | もはや来月の家賃にさえ、 深刻なダメージが降りかかってきたところだし。 | ||||
226 | 佐藤 | Satou | 「本当っすか? 助かります!」 | ||
227 | 春希 | Haruki | 「いや、こっちこそ…」 | ||
228 | まさに渡りに船。 三が日、朝から晩まで働けば、 なんとか今の損失を取り戻せるかもしれない。 | ||||
229 | けれど… | ||||
230 | 春希 | Haruki | 「…裏はないよな?」 | ||
231 | 佐藤 | Satou | 「他の日は無理を頼んだりしません。 ほんと、三が日だけです」 | ||
232 | 春希 | Haruki | 「絶対だな?」 | ||
233 | もう、生返事で下手な承諾をするようなことはしない。 | ||||
234 | 佐藤 | Satou | 「…妙に用心深いっすね。 何かあったんですか?」 | ||
235 | 春希 | Haruki | 「金の流れが一方通行の友情ってのは、 果たして成立するのかっていう、 根元的な疑問にぶち当たってな」 | ||
236 | 佐藤 | Satou | 「金は友情を壊しますよ?」 | ||
237 | 春希 | Haruki | 「たった今そのことに気づいたところだよ…」 | ||
238 | 4万円もする高い授業料を支払ってな。 | ||||
239 | 佐藤 | Satou | 「じゃあ、シフト入れておきますね。 1日はとりあえず10時からお願いします」 | ||
240 | 春希 | Haruki | 「今度が最後だからな。 年が明けたら、もう電話来ても取らないぞ?」 | ||
241 | 佐藤 | Satou | 「わかってるっす。これ以上無理は言いませんって。 …というわけで、今年はお疲れさまでした。 来年またよろしくお願いします」 | ||
242 | 春希 | Haruki | 「ああ、よろし………今年は?」 | ||
243 | 佐藤 | Satou | 「ええ、次は1月で。 もう今月はシフト全部外しておきましたから」 | ||
244 | 春希 | Haruki | 「…なんで?」 | ||
245 | 佐藤 | Satou | 「北原さんに無理はさせられませんからね。 年内は今いるスタッフで頑張りますよ」 | ||
246 | 春希 | Haruki | 「…俺、今年はもう来なくていいの?」 | ||
247 | 佐藤 | Satou | 「特に今週は全然必要ないっす! ゆっくり休んでくださいね!」 | ||
248 | 春希 | Haruki | 「………?」 | ||
249 | 何故だろう… | ||||
250 | さっきよりよほど注意深く 相手の話を聞いていたはずなのに、 妙に『またやってしまった』という感覚が拭えないのは。 | ||||
251 | ……… | .........
| |||
252 | 春希 | Haruki | 「…はぁ」 | ||
253 | 小春 | Koharu | 「なに老けた顔してるんですか? まだ若いのに」 | ||
254 | 春希 | Haruki | 「…まだいたのか」 | ||
255 | 小春 | Koharu | 「遅番ですから」 | ||
256 | 『遅番はやめろって言っただろ』 | ||||
257 | …なんて、余計な反論はしなかった。 | ||||
258 | 確かに疲れた顔をしてるって自覚があるし、 そんな挑発したら余計疲れるに決まってるし。 | ||||
259 | …そういえば今日は、 杉浦ともほとんど話せなかったな。 | ||||
260 | まぁ、なんだか色々なことがあったし。 | ||||
261 | 雪菜との約束のこと。 武也と依緒の来店のこと。 年明けのシフトのこと。 | ||||
262 | ちょっと脳の考えるスペースが容量オーバーで、 とても、いつも通りの言った言わない的な 不毛な会話を楽しめる余裕なんかなかったから。 | ||||
263 | いや、いつもあの会話を楽しんでる訳じゃ… | ||||
264 | 小春 | Koharu | 「………」 | "........."
| |
265 | 春希 | Haruki | 「な、何だ?」 | ||
266 | 小春 | Koharu | 「暗い」 | ||
267 | 春希 | Haruki | 「それはいつも通りだ」 | ||
268 | 小春 | Koharu | 「ふむ…」 | ||
269 | 疲れてしょぼくれて、 杉浦的に随分と歳を召したように見える俺の顔を、 杉浦がじいっと見上げていた。 | ||||
270 | 心配するような、探りを入れるような、 どっちとも言えない微妙な表情で。 | ||||
271 | 小春 | Koharu | 「掃除、手伝いましょうか?」 | ||
272 | 春希 | Haruki | 「いいよ、もう着替えてるし。 こっちはキッチンの仕事だから。 それより早く帰れ。気をつけてな」 | ||
273 | 小春 | Koharu | 「………」 | "........."
| |
274 | 春希 | Haruki | 「…だからなんだよ?」 | ||
275 | 小春 | Koharu | 「…色々頭が回ってないみたいですね。 そういうときは素直になっちゃえばいいんですよ」 | ||
276 | 春希 | Haruki | 「何のことだよ?」 | ||
277 | 確かに頭が回ってなくて、 ずっと生返事しかできない俺を、 やっぱり杉浦は、じいっと見上げていた。 | ||||
278 | いたわるような、呆れたような、 やっぱり微妙なままの表情で。 | ||||
279 | 小春 | Koharu | 「では、先輩のご命令通りさっさと帰ります。 それじゃ、良いお年を」 | ||
280 | 春希 | Haruki | 「ああ、明るい道通れよ…?」 | ||
281 | かと思えば、その視線をあっさりと外し、 暗い店内に軽い足音を響かせる。 | ||||
282 | 俺に何かの違和感を抱かせつつ。 | ||||
283 | 小春 | Koharu | 「先輩」 | ||
284 | 春希 | Haruki | 「だから何だよ?」 | ||
285 | 小春 | Koharu | 「今度こそ、素直になってくださいよ?」 | ||
286 | 春希 | Haruki | 「………は?」 | ||
287 | 小春 | Koharu | 「でないと、わたしも浮かばれません。 ほんっと、世話の焼ける…」 | ||
288 | 春希 | Haruki | 「え? あ、ちょっと、おい…」 | ||
289 | そして杉浦は、俺の抱いた違和感を、 もう一つ大きな謎で包んでくれやがった。 | ||||
290 | 答え合わせもさせてくれないままで。 | ||||
291 | 春希 | Haruki | 「一体、どういう…」 | ||
292 | 『今度こそ、素直になってくださいよ?』 | ||||
293 | 前に素直じゃなかったのはいつのことだよ? …そんなの、お互いの定番過ぎて絞り込めないだろ。 | ||||
294 | 『でないと、わたしも浮かばれません』 | ||||
295 | どうして杉浦の話になるんだ? 君が一体何をした? | ||||
296 | 『ほんっと、世話の焼ける…』 | ||||
297 | だから、君が一体… | ||||
298 | 春希 | Haruki | 「…あれ?」 | ||
299 | 『良いお年を』 | ||||
300 | 俺が今年、ここにもう来ることがないって… | ||||
301 | さっき決まったばかりの俺のシフトを、 どうしてもう知ってるんだ…? | ||||
302 | 依緒 | Io | 「それじゃ、お疲れさまでした。 あと、ごちそうさま~」 | ||
303 | 武也 | Takeya | 「いやワリカンだから。 俺大損したばっかなんだから」 | ||
304 | 依緒 | Io | 「んく、んく… セコいこと言ってんじゃないの~。 作戦は成功したんだから」 | ||
305 | 武也 | Takeya | 「…おかげで俺は麻衣子にボコられるけどな、明日」 | ||
306 | 依緒 | Io | 「これがきっかけになってくれるといいんだけどね。 あの二人」 | ||
307 | 武也 | Takeya | 「なってくれないと困る。 俺、色んな意味でスケジュール狂いまくりだし」 | ||
308 | 依緒 | Io | 「別にクリスマスだからって豪勢でなくてもいいじゃん。 ファミレスでもラーメン屋でも。 それで文句言う彼女なら別れちゃえって」 | ||
309 | 武也 | Takeya | 「あのなぁ…」 | ||
310 | 依緒 | Io | 「でもあの二人は違う… 無理やりにでもきっかけを作らないと、 普通に話をすることだってできないんだから」 | ||
311 | 武也 | Takeya | 「だから高級ホテルのディナーか。 貧乏性の春希のことだから、 絶対無駄にはできないから」 | ||
312 | 依緒 | Io | 「誰かに売ろうにも、譲ってしまおうにも、 ここまで直前だと、もうほとんど無理だし」 | ||
313 | 武也 | Takeya | 「本当なんだな? あいつらが24日に会う約束してるって」 | ||
314 | 依緒 | Io | 「さっき、何とか雪菜に吐かせた。 絶対に押し込めって、強く言い聞かせておいたよ」 | ||
315 | 武也 | Takeya | 「えげつないね。 …俺に対する仕打ちも含めて。 あれマジで2月前から予約入れてたのに」 | ||
316 | 依緒 | Io | 「文句なら、あんたが紹介してきたあのコに言ってよ。 今回のこと考えたの、全部彼女なんだから」 | ||
317 | 武也 | Takeya | 「さすがは小春希… お節介のためには手段を選ばないところなんか、 ホント師匠にそっくりだぜ」 | ||
318 | 佐藤 | Satou | 「北原さん、閉めますよ?」 | ||
319 | 春希 | Haruki | 「あ、ああ…」 | ||
320 | 確かに、今日は色々なことがあった。 | ||||
321 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
322 | 佐藤 | Satou | 「う~、寒いなぁ。 今年のクリスマスは雪降るかもって話ですよ」 | ||
323 | 春希 | Haruki | 「そっか…」 | ||
324 | 雪菜との約束のこと。 …雪菜との『24日に会う』という約束のこと。 | ||||
325 | 佐藤 | Satou | 「北原さん、歩きでしたよね。 確か、駅の反対側に住んでるって」 | ||
326 | 春希 | Haruki | 「うん…」 | ||
327 | 武也と依緒の来店のこと。 …武也に『24日の映画のチケットその他』を 押しつけられたこと。 | ||||
328 | 佐藤 | Satou | 「俺、裏にバイク止めてあるんで。 それじゃ、失礼しますね」 | ||
329 | 春希 | Haruki | 「あ、ああ、お疲れさま」 | ||
330 | 年明けのシフトのこと。 …年末のシフトがいきなり空っぽになったこと。 つまり…『24日の予定』がなくなったこと。 | ||||
331 | 春希 | Haruki | 「あれ…?」 | ||
332 | たった1日… | ||||
333 | それも数時間のうちに、 何かの条件がもの凄い速さで整いつつあるというのは、 俺の考えすぎだろうか? | ||||
334 | 佐藤 | Satou | 「しつこいようですけど、 来月の三が日頼みますね? それじゃ、良いお年を!」 | ||
335 | 春希 | Haruki | 「良い…お年を…?」 | ||
336 | そういえば… | ||||
337 | さっき、まったく同じ台詞を、 誰かが言ってなかったか? | ||||
338 | 俺の知らないところで、 得体の知れない何かが動いてないか…? | ||||
339 | 1.ま、どうでもいいか | Choice | |||
340 | 2.もしかしてあいつ… | Choice | |||
341 | 依緒 | Io | 「そういえばさ…」 | ||
342 | 武也 | Takeya | 「ん~?」 | ||
343 | 依緒 | Io | 「杉浦小春ちゃんだっけ? あんたがなんとか口説こうと頑張ったけど、 相手はこっちのこと道具としてしか見てなかったコ」 | ||
344 | 武也 | Takeya | 「誰に対しても差し障りのある人物描写はやめろよ」 | ||
345 | 依緒 | Io | 「今回の作戦… あのコにとってのメリットってなんなんだろ?」 | ||
346 | 武也 | Takeya | 「メリット?」 | ||
347 | 依緒 | Io | 「あたしたちと違って、雪菜と親しい訳でもない。 春希とだって、つい最近までいがみ合ってた間柄。 …ここまで介入する意味がないよ」 | ||
348 | 武也 | Takeya | 「ん~、本当にないんじゃないかな? 純粋な親切。言い換えればただのお節介」 | ||
349 | 依緒 | Io | 「そんな…春希じゃあるまいし」 | ||
350 | 武也 | Takeya | 「春希じゃないけど、小春希。 損得勘定で動いてないんだって」 | ||
351 | 依緒 | Io | 「それってつまり…ただ春希のためだけに?」 | ||
352 | 武也 | Takeya | 「は?」 | ||
353 | 依緒 | Io | 「自分のことは何一つ省みず、 春希が幸せになれればそれでいいって…?」 | ||
354 | 武也 | Takeya | 「い、意訳だろそれは…」 | ||
355 | 依緒 | Io | 「あたしだってそう思いたいけどさぁ、 女の子なんだよ? 彼女は」 | ||
356 | 武也 | Takeya | 「けど、まさか。 相手は春希だぞ? あの堅物にそこまでズブズブにハマる女の子が…」 | ||
357 | 依緒 | Io | 「雪菜の時も最初そう言ってたよね、武也。 …冬馬かずさの時だって」 | ||
358 | 武也 | Takeya | 「………」 | "........."
| |
359 | 依緒 | Io | 「………」 | "........."
| |
360 | 武也 | Takeya | 「すいません! バーボンをダブル、ロックで!」 | ||
361 | 依緒 | Io | 「あ~、いいや。 ボトルごと頂戴!」 | ||
362 | ……… | .........
| |||
363 | 春希 | Haruki | 「はぁっ、はぁっ、はぁぁっ…」 | ||
364 | 終電間際の峰ヶ谷駅は、降りる人もまばらで、 だからこそ全力疾走でホームを駆け抜けた俺は、 周囲の人たちに奇異の視線で見られていた。 | ||||
365 | けれど、その視線を向ける人たちの中に、 自分が知る顔はひとつもなく、 俺は予想通り、途方に暮れる。 | ||||
366 | 春希 | Haruki | 「はぁぁぁぁ…っ」 | ||
367 | 膝に手を当てて、がっくりと俯き、 盛大にため息をつく。 | ||||
368 | カラクリに気づいたのは、 ほんの30分前。 | ||||
369 | 佐藤を問い詰め、ついでに罵倒して、 それから駅に向かって全力疾走。 で、次の各駅停車が15分後と知ってまた悪態をつき。 | ||||
370 | ようやく来た電車に飛び乗り、 ガラガラの座席にイライラしながら腰掛け、 ほんの10分を数時間のように感じ。 | ||||
371 | そして10分後、 やっぱり無駄足だったと思い知った。 | ||||
372 | 彼女を追いかけたのは、 店で別れてから20分も後。 | ||||
373 | つまり、何事もなければそのタイム差は埋まらず、 駅から徒歩15分の自宅に、とっくに辿り着いている頃。 | ||||
374 | それでも、無駄足と知りつつも、 追いかけずにいられなかった。 | ||||
375 | 春希 | Haruki | 「杉浦…」 | ||
376 | さっきから、何度も無視され続けてる携帯を、 最後の望みとばかりにリダイヤルする。 | ||||
377 | だって、一言言ってやらなければ気が済まない。 | ||||
378 | 今日一日抱え続けた違和感の正体が、 まさか自分の後輩にして教え子にしてやり手婆による、 あまりにもリスクとコストの高い遠大な罠だったなんて。 | ||||
379 | 春希 | Haruki | 「っ…」 | ||
380 | やっぱり、また出ない。 | ||||
381 | 杉浦のことだから、 電車に乗ってる時に携帯には出ないはずとか、 今まではそういう都合のいい解釈も成り立ったけど。 | ||||
382 | こうして俺も峰ヶ谷に降り立ってしまった以上、 意図的に無視しているとしか… | ||||
383 | 春希 | Haruki | 「………?」 | ||
384 | …どっかで聞いたような着信音だな。 | ||||
385 | 春希 | Haruki | 「着信?」 | ||
386 | 俺がしているのは発信で… | ||||
387 | 小春 | Koharu | 「後ろです、先輩」 | ||
388 | 春希 | Haruki | 「っ!?」 | ||
389 | 繋がった電話から聞こえてきた声は、 俺の真後ろからも直接伝わってきた。 | ||||
390 | 小春 | Koharu | 「良かった。 さすがにこの時間だと、 一人で帰るのちょっと怖いなって思ってたんですよ」 | ||
391 | 春希 | Haruki | 「お、お…お前…っ」 | ||
392 | そんなふうに、 にっこり笑ってぺこりと頭を下げる杉浦に。 | ||||
393 | 俺は、怒鳴るべき言葉をすべて失い、 ただ呆然とその笑顔を眩しく眺めることしかできなかった。 | ||||
394 | ……… | .........
| |||
395 | 春希 | Haruki | 「佐藤に聞いた」 | ||
396 | 小春 | Koharu | 「何をですか?」 | ||
397 | 春希 | Haruki | 「今週、クリスマスも全出勤するから、 俺を休ませろって交渉したんだって?」 | ||
398 | 小春 | Koharu | 「冬休み中に一生懸命稼いでおかないと、 帰りの飛行機代のために 現地でバイトする羽目になりますから」 | ||
399 | 春希 | Haruki | 「俺を来させない理由にはならないだろ…」 | ||
400 | 小春 | Koharu | 「そろそろ先輩に頼れる環境をなんとかしないと、 いつまでたっても自立できませんから」 | ||
401 | 春希 | Haruki | 「武也や依緒を店に呼んだのも、 杉浦が裏で手を回したんだろ?」 | ||
402 | 小春 | Koharu | 「意味がわかりません。 なんでわたしがそんなことする理由があるんです?」 | ||
403 | 春希 | Haruki | 「俺だって意味がわからないよ…」 | ||
404 | 俺と雪菜を仲直りさせるために、 ここまで迂遠で周囲に迷惑を掛けまくって、 ついでに穴だらけの舞台装置を整えるなんて。 | ||||
405 | 緻密で考えなし。 大胆で独善的。 本気で後先考えてない、典型的な策に溺れる策士。 | ||||
406 | 小春 | Koharu | 「誰に何を吹き込まれたか知りませんが、 まさかそんな馬鹿げた噂、本気にしてないですよね?」 | ||
407 | 春希 | Haruki | 「ほんと馬鹿げてる。 もうお節介ってレベルを超えて、 結婚詐欺師に騙されてる女みたいだ」 | ||
408 | 小春 | Koharu | 「…それは酷い男もいたもんですねぇ。 きっと天罰が下りますよ、そいつ」 | ||
409 | 春希 | Haruki | 「馬鹿げた噂なんだろ? だったらそんな男はいやしない」 | ||
410 | 小春 | Koharu | 「………」 | "........."
| |
411 | 春希 | Haruki | 「あ」 | ||
412 | …なんてやり込めたって何のメリットもないだろ。 それどころか、杉浦の口を更に堅くしてしまった。 馬鹿か俺は。 | ||||
413 | …いや、本物の馬鹿は目の前の年下の付属生だ。 『もう俺、こいつ知らん』ってレベルに達してる。 | ||||
414 | 小春 | Koharu | 「っ…」 | ||
415 | 春希 | Haruki | 「寒いか?」 | ||
416 | 小春 | Koharu | 「冬の夜ですから」 | ||
417 | 春希 | Haruki | 「だから遅番はやめておけって」 | ||
418 | 小春 | Koharu | 「そうですね。 しばらくは意味がないからやめておきます」 | ||
419 | 春希 | Haruki | 「意味…?」 | ||
420 | 小春 | Koharu | 「細かいことばかり気にすると嫌われますよ、お互い」 | ||
421 | 春希 | Haruki | 「えっと…」 | ||
422 | それでも、寒そうに両手に息を吹きかける仕草は、 どこをどう切り取っても、物憂げな少女を 絵に描いたように儚くて、そして綺麗だった。 | ||||
423 | 小春 | Koharu | 「そうですね… あくまで噂のレベルに過ぎないんですけど」 | ||
424 | 春希 | Haruki | 「ん?」 | ||
425 | 小春 | Koharu | 「もしもそんな馬鹿げた迷惑行為を、 信念とかいう免罪符のもとに 人の迷惑顧みず強行してる馬鹿なコがいたとしたら…」 | ||
426 | 春希 | Haruki | 「え…」 | ||
427 | 自覚あるんだ… | ||||
428 | 小春 | Koharu | 「それはですね… きっと、もう一度あんな顔して欲しくて、 そして、もうあんな顔してもらいたくないからです」 | ||
429 | 春希 | Haruki | 「やっぱり意味がわからないよ…」 | ||
430 | いつも、筋が通ってるかは別として、 相手にわかりやすく論理的に話そうとする杉浦の、 まるっきり謎かけみたいな感情的な吐露。 | ||||
431 | 小春 | Koharu | 「音楽室から外見てましたよね」 | ||
432 | 春希 | Haruki | 「あ…」 | ||
433 | 久しぶりに付属を訪れた時に、 杉浦に見られてしまったんだっけ。 | ||||
434 | 小春 | Koharu | 「結構、頭の中にこびりついてます。 思い出すとムカついてます。イライラしてきます。 …いてもたってもいられなくなります」 | ||
435 | 春希 | Haruki | 「それは…ごめん」 | ||
436 | 三年前に戻ってる俺を。 あの頃の、雪菜やかずさと話してる俺を。 | ||||
437 | 小春 | Koharu | 「何のことですか? 噂レベルの話を本気にしないでください。痛いですよ」 | ||
438 | 春希 | Haruki | 「ほんとに…ごめん」 | ||
439 | 小春 | Koharu | 「…もういいです」 | ||
440 | その楽しい時間が、 今はもう失われてそこにはないって、 またしても痛感してしまった俺を。 | ||||
441 | ……… | .........
| |||
442 | 小春 | Koharu | 「さて、と」 | ||
443 | 春希 | Haruki | 「え?」 | ||
444 | 小春 | Koharu | 「ここです、わたしの家」 | ||
445 | 春希 | Haruki | 「あ…そか」 | ||
446 | しばらく、ずっと俯いて歩いてたから、 ここが峰ヶ谷のどの辺りなのかもよくわからない。 | ||||
447 | けれど、似たような建て売り住宅の並んだその一角に、 確かに『杉浦』という表札がかかっていた。 | ||||
448 | 小春 | Koharu | 「送ってくれてありがとうございました。 …実は結構嬉しかったです」 | ||
449 | 春希 | Haruki | 「そりゃ…こんな時間だし」 | ||
450 | 小春 | Koharu | 「も一つ実は、最初『早く帰れ』って言われた時、 ちょっとだけムっとしたんですよ?」 | ||
451 | 春希 | Haruki | 「…ごめん、あの時は考えが回ってなかった」 | ||
452 | 小春 | Koharu | 「ま、仕方ないですね。 因果応報みたいなものですから」 | ||
453 | どうして俺の考えが回らないことが 杉浦のせいになるのかは、やっぱり聞かないでおく。 | ||||
454 | 春希 | Haruki | 「それじゃ、お疲れさま」 | ||
455 | 小春 | Koharu | 「はい、良いお年を」 | ||
456 | 春希 | Haruki | 「まだ年内に店に行くかもしれないけど?」 | ||
457 | 小春 | Koharu | 「…先輩?」 | ||
458 | 春希 | Haruki | 「客としてな。 スタッフがチンタラしてたら大声で悪口言ってやる」 | ||
459 | 小春 | Koharu | 「…ご来店、お待ちしております。 精一杯務めさせていただきますので」 | ||
460 | 春希 | Haruki | 「楽しみにしてる」 | ||
461 | 小春 | Koharu | 「それじゃあ… 本当に、わざわざありがとうございました」 | ||
462 | 春希 | Haruki | 「大げさだって。 別に…」 | ||
463 | 小春 | Koharu | 「終電、なくなってること知ってますよね?」 | ||
464 | 春希 | Haruki | 「…さあな」 | ||
465 | 峰ヶ谷駅を降りた時、ちゃんとチェックしてた。 | ||||
466 | 次の下りの各駅停車は10分後。 そして、それをもって本日の最終。 | ||||
467 | 片道15分かかる杉浦の家に送るのに、 少しの迷いもなかった…とは、さすがにいかなかった。 | ||||
468 | 4万飛んでった上にタクシー代かぁ… | ||||
469 | ……… | .........
| |||
470 | …… | ......
| |||
471 | … | ...
| |||
472 | 雪菜 | Setsuna | 「………ありがとう」 | ||
473 | 春希 | Haruki | 「感謝されること何もしてないよ」 | ||
474 | 雪菜 | Setsuna | 「…それもそうだね、ふふ」 | ||
475 | 日付はとっくに変わってた。 けれど雪菜は、やっぱりワンコールで出てくれた。 | ||||
476 | 春希 | Haruki | 「久しぶり」 | ||
477 | 雪菜 | Setsuna | 「久しぶりじゃ、ないよ。 毎日、春希くんとお喋りしてたよ」 | ||
478 | 春希 | Haruki | 「…だな」 | ||
479 | いつも通り普通に… いや、いつも通り、普通じゃいられない態度で。 | ||||
480 | 雪菜 | Setsuna | 「あ、そうだ! あのさ…遅くなっちゃったけど発売おめでとう」 | ||
481 | 春希 | Haruki | 「それってもうメールでお祝いしてもらったって」 | ||
482 | 雪菜 | Setsuna | 「でも、言葉では伝えてなかったから。 …本当におめでとう」 | ||
483 | 春希 | Haruki | 「ありがと。 でも、本当に大したことない記事だから」 | ||
484 | きっと雪菜は、今度直接会った時にも、 また同じ台詞を言ってくれるんだろうな。 | ||||
485 | 『でも、直接は伝えてなかったから』なんて、 言い訳じみた遠慮がちな笑顔とともに。 | ||||
486 | 雪菜 | Setsuna | 「どんなこと書いてあるのかな…楽しみだな。 春希くん、雑誌の名前も教えてくれないんだもん」 | ||
487 | 春希 | Haruki | 「…ごめん。 色々、考えることがあって」 | ||
488 | 雪菜 | Setsuna | 「ううん、直接渡してくれるって言ってくれたから帳消し。 …見るの楽しみ」 | ||
489 | 春希 | Haruki | 「…ありがと」 | ||
490 | 雪菜 | Setsuna | 「ちゃんと会って謝りたいって思ってたし。 この前のこと」 | ||
491 | 春希 | Haruki | 「謝ることなんて何もない」 | ||
492 | 雪菜 | Setsuna | 「わたしがあると思えばあるの。 謝らないと、また始められないの」 | ||
493 | 春希 | Haruki | 「雪菜…」 | ||
494 | 雪菜 | Setsuna | 「春希くん、わたし、わたしね… あの時言ったことは、本心じゃなくって…」 | ||
495 | 春希 | Haruki | 「ストップ。 ちゃんと会って話すんだろ、それ?」 | ||
496 | 雪菜 | Setsuna | 「…そうだね、ごめん」 | ||
497 | 春希 | Haruki | 「謝ることなんて何もない…今は」 | ||
498 | 雪菜 | Setsuna | 「ふふ…そうだったね」 | ||
499 | やっぱり、俺たちはまだ危うい。 | ||||
500 | 電話で話してるだけでも、 ちょっとずつ踏み外しては軌道修正の繰り返し。 | ||||
501 | 足の幅ほどしかない平均台の上を蛇行してるみたいに、 すぐに振り出しに戻ってしまいそうな… | ||||
502 | それどころか、全てを台無しにしてしまいそうな、 そんな危うさを抱えたまま、笑い合ってる。 | ||||
503 | 雪菜 | Setsuna | 「そういえば、24日ごめんね? わたしの方の都合だけでワガママ言っちゃって。 よく考えたら春希くんの都合だってあるのに」 | ||
504 | 春希 | Haruki | 「いや、いいって。 大丈夫、行けるから」 | ||
505 | 雪菜 | Setsuna | 「楽しみ…ね、久しぶりに上がってかない? ケーキくらいはご馳走するよ? …家族よりも先になっちゃうけど」 | ||
506 | 春希 | Haruki | 「あ、いや…」 | ||
507 | だから明後日は、まだ急ぐべきじゃない。 | ||||
508 | 大したことない場所で会って、 短い時間だけ話をして、 ほんの少しだけお互いの距離感を直せばいい。 | ||||
509 | 雪菜 | Setsuna | 「外は寒いよ。 それにお母さんも春希くんに会いたがってたし」 | ||
510 | 春希 | Haruki | 「雪菜…」 | ||
511 | 俺たちは、もっとゆっくり近づいていくべきだ。 この三年間で、何度失敗を繰り返したと思ってるんだ。 | ||||
512 | 俺たちの学生生活は、あと一年残ってる。 この一年間を丸ごと使ったって構やしない。 | ||||
513 | 雪菜 | Setsuna | 「冬休みだし、少しくらい遅くなっても平気。 帰りはお父さんの車で送ってもらえばいいし」 | ||
514 | だって俺は、かつて見てしまったことがある。 | ||||
515 | 雪菜の裸の胸に刻まれた、 まだ塞がらずに化膿していたその傷を。 | ||||
516 | 春希 | Haruki | 「あのさ、実は…」 | ||
517 | 雪菜 | Setsuna | 「ん?」 | ||
518 | 会いたい、けど、まだ一緒にいられない。 俺たちには、圧倒的に時間が足りてない。 | ||||
519 | 春希 | Haruki | 「あ、いや… 結構突拍子もない話なんで、 聞き流して欲しいんだけど」 | ||
520 | 雪菜 | Setsuna | 「なんのこと?」 | ||
521 | …はずなのに。 | ||||
522 | 春希 | Haruki | 「武也からさ… 映画のチケットもらったんだ。 24日限定の」 | ||
523 | 雪菜 | Setsuna | 「映画?」 | ||
524 | 悪意と介入が招き寄せた偶然か、 親切とお節介が押し切った奇跡か。 | ||||
525 | 春希 | Haruki | 「ついでに食事つき。 …それが笑っちゃうことに 有海インテグラルホテルの展望レストランでさ」 | ||
526 | 雪菜 | Setsuna | 「え…」 | ||
527 | 慎重に、ゆっくり。 何の進展もなくても、それは仕方ないって。 | ||||
528 | そんな、ただの逃げと何が違うかわからない 俺のスタンスを否定する強い力が、 俺の口を滑らせる。 | ||||
529 | 春希 | Haruki | 「映画は午後5時から。 レストランの予約が7時から」 | ||
530 | 雪菜 | Setsuna | 「………」 | "........."
| |
531 | 春希 | Haruki | 「い、いや、突然そんなこと言われても、 答えようがないに決まってるよな」 | ||
532 | 雪菜 | Setsuna | 「え…?」 | ||
533 | 春希 | Haruki | 「それに有海で夕食だと帰り遅くなるし、 何言ってんだろうな、俺」 | ||
534 | 雪菜 | Setsuna | 「…っ」 | ||
535 | 春希 | Haruki | 「ごめん、今の忘れてくれ! それじゃ今日のところは…」 | ||
536 | 雪菜 | Setsuna | 「待って!」 | ||
537 | 春希 | Haruki | 「っ…」 | ||
538 | そして、一度滑り落ちてしまった言葉は、 どんなに取り繕っても、 もう取り返しがつかないのは当然で。 | ||||
539 | 雪菜 | Setsuna | 「…絶対行く」 | ||
540 | こんなチケット、 誰かに売ることも、 誰かに譲ることもできないって思ってた。 | ||||
541 | けれど、誰かを誘うことは… | ||||
542 | そうじゃなくて、 たった一人の女の子を誘うことだけは、 一番難しくて、一番簡単なことだって、見透かされてた。 | ||||
543 | ……… | .........
| |||
544 | 雪菜 | Setsuna | 「っ…」 | ||
545 | 雪菜 | Setsuna | 「…誰?」 | ||
546 | 孝宏 | Takahiro | 「俺だけど… 母さんが、おかゆだけでも食えって」 | ||
547 | 雪菜 | Setsuna | 「…ごめん、まだ食欲ない」 | ||
548 | 孝宏 | Takahiro | 「昨日からずっとじゃないか。 胃が痛いなら医者行けよ」 | ||
549 | 雪菜 | Setsuna | 「大丈夫、大丈夫だよ… 明後日までには、必ず治すから」 | ||
550 | 孝宏 | Takahiro | 「明日は食べろよ?」 | ||
551 | 雪菜 | Setsuna | 「うん、母さんに謝っといて」 | ||
552 | 孝宏 | Takahiro | 「わかった…あ、そういえばさ」 | ||
553 | 雪菜 | Setsuna | 「なに?」 | ||
554 | 孝宏 | Takahiro | 「昨日アンサンブル買ってきてたよな? 俺にも見せてよ」 | ||
555 | 雪菜 | Setsuna | 「~っ」 | ||
556 | 孝宏 | Takahiro | 「あれ、俺も買おうと思ったら今日もう売り切れでさ。 いつもはずっと残ってるのに」 | ||
557 | 雪菜 | Setsuna | 「そ…なんだ」 | ||
558 | 孝宏 | Takahiro | 「すっげぇよな冬馬先輩。 音楽誌の表紙飾ってんだもん」 | ||
559 | 雪菜 | Setsuna | 「う、うん…凄いね」 | ||
560 | 孝宏 | Takahiro | 「すぐ返すからさ。 な、頼むよ?」 | ||
561 | 雪菜 | Setsuna | 「…ごめん、どっかやっちゃった」 |
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Introductory Chapter | ||||||
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1001 | 1008 | 1009 | 1010 | 1011 | 1012 | 1013 |
1002 | 1008_020 | 1009_020 | 1010_020 | 1011_020 | 1012_020 | |
1003 | 1008_030 | 1009_030 | 1010_030 | 1011_030 | 1012_030 | |
1004 | 1008_040 | 1010_040 | 1012_030_2 | |||
1005 | 1008_050 | 1010_050 | ||||
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1007 |
Closing Chapter | ||||||||||
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Common | Setsuna | Koharu | Chiaki | Mari | ||||||
2001 | 2011 | 2020 | 2027 | 2301 | 2309 | 2316 | 2401 | 2408 | 2501 | 2510 |
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2009 | 2019 | 2509 | ||||||||
2010 | ||||||||||
Setsuna | Koharu | Chiaki | Mari | |||||||
2031_2 | 2312_2 | 2401_2 | 2504_2 | 2511_2 | ||||||
2031_3 | 2313_2 | 2402_2 | 2507_2 | 2513_2 | ||||||
2031_4 | 2313_3 | 2402_3 |
Coda | |||||||||
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Common | Kazusa (True) | Setsuna (True) | Kazusa (Normal) | ||||||
3001 | 3008 | 3014_2 | 3020 | 3101 | 3107 | 3201 | 3207 | 3901 | 3907 |
3002 | 3009 | 3014_3 | 3021 | 3102 | 3108 | 3202 | 3208 | 3902 | 3908 |
3003 | 3010 | 3015 | 3022 | 3103 | 3109 | 3203 | 3209 | 3903 | 3909 |
3004 | 3011 | 3016 | 3023 | 3104 | 3110 | 3204 | 3210 | 3904 | |
3005 | 3012 | 3017 | 3024 | 3105 | 3111 | 3205 | 3211 | 3905 | |
3006 | 3013 | 3018 | 3106 | 3206 | 3906 | ||||
3007 | 3014 | 3019 | |||||||
Common | Setsuna (True) | Kazusa (Normal) | |||||||
3001_2 | 3210_2 | 3901_2 | 3906_2 | ||||||
3015_2 | 3902_2 | 3907_2 | |||||||
3902_3 | 3907_3 | ||||||||
3904_2 |
Mini After Story and Extra Episode | |||
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The Path Back to Happiness | The Path Forward to Happiness | Dear Mortal Enemy | |
6001 | 6101 | 4000 | 4005 |
6002 | 6102 | 4001 | 4006 |
6003 | 6103 | 4002 | 4007 |
6004 | 6104 | 4003 | 4008 |
6005 | 4004 | 4009 |
Novels | |||||
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The Snow Melts, And Until The Snow Falls | The Idol Who Forgot How to Sing | Twinkle Snow ~Reverie~ | After the Festival ~Setsuna's Thirty Minutes~ | His God, Her Savior | |
5000 | 5100 | 5200 | 5205 | 5300 | 5400 |
5001 | 5101 | 5201 | 5206 | 5301 | 5401 |
5002 | 5102 | 5202 | 5207 | 5302 | |
5003 | 5103 | 5203 | 5208 | 5303 | |
5004 | 5104 | 5204 | 5209 |
Short Stories | |||
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Princess Setsuna's Distress and Her Minister's Sinister Plan | Koharu Climate After the Passing of the Typhoon | This isn't the Season for White Album | Todokanai Koi, Todoita |
7000 | 7100 | 7200 | 7300 |