White Album 2/Script/2022
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Editing
Translation Notes
Text
Speaker | Text | Comment | |||
---|---|---|---|---|---|
Line # | JP | EN | JP | EN | |
1 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
2 | 昨日に引き続き、今日もまた、か… | ||||
3 | やっと眠れるようになって、 めでたく昼夜逆転してる俺の生活リズムが、 ますます狂っていく… | ||||
4 | 春希 | Haruki | 「あ~はいっ! はいはいはいはい…ちょっと待ってろって!」 | ||
5 | 跳ね起きついでに時計に目をやると、8時。 空のこの色から察するに、午後。 | ||||
6 | 起きてると思われても仕方ない時間だな。 どうやら非常識な訪問を怒る訳にもいかないらしい。 | ||||
7 | ま、俺の家に直接押しかける奴なんて、 勧誘や詐欺でもなければ数えるほどもいない。 | ||||
8 | 春希 | Haruki | 「武也かぁ?」 | ||
9 | 千晶 | Chiaki | 「よっ」 | ||
10 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
11 | 千晶 | Chiaki | 「よぉっ!」 | ||
12 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
13 | こいつは…『数えるほど』に含めてなかった。 | ||||
14 | だって、レポートも終わり、 ゼミも終わり、打ち上げも終わり、 そして今年も終わり… | ||||
15 | そんな完璧休日モードの日々に、 平日ですらサボリ魔のこいつが、 まさか大学の近くをうろついてるなんて… | ||||
16 | 千晶 | Chiaki | 「わ、無精髭~! ね~、すりすりさせて~♪」 | ||
17 | 春希 | Haruki | 「ま、ま、待て! 和泉! お前何しに来やがった!?」 | ||
18 | …まぁ、いきなり抱きついて頬をくっつけてくる方は、 ある程度は危惧してたけど。 | ||||
19 | 千晶 | Chiaki | 「何しにきやがったは酷いなぁ。 せっかく女の子が一大決心して来たってのに」 | ||
20 | 春希 | Haruki | 「…そのココロは?」 | ||
21 | 千晶 | Chiaki | 「ん~、ローテーションの一角。 そろそろ泊めてくれる友達のネタが尽きてきて」 | ||
22 | 春希 | Haruki | 「また家に帰ってないのかよ」 | ||
23 | どうやら、和泉家の母子断絶は、 未だにそこそこ深刻なレベルで推移しているらしい。 | ||||
24 | …このネタを使われると、 人のことが言えなくなってしまうので勘弁して欲しい。 | ||||
25 | 千晶 | Chiaki | 「昨日まで泊まってた部屋のコが帰省しちゃってさ。 さすがに暖房の入らない冬休みの研究室も辛くってね~」 | ||
26 | 春希 | Haruki | 「他を当たってくれ他を」 | ||
27 | 千晶 | Chiaki | 「他って言ってもさぁ… あとは同じゼミの知り合いくらいしかいないけど」 | ||
28 | 春希 | Haruki | 「じゃあそっちに」 | ||
29 | 千晶 | Chiaki | 「みんな春希と同じ性別だけど?」 | ||
30 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
31 | 千晶 | Chiaki | 「ま、仕方ないか。ちょっと電話貸してね。 携帯の電池ヤバいことになっちゃっててさぁ。 だからここにも連絡できなかったんだよね~」 | ||
32 | 春希 | Haruki | 「い、いやお前、それは…」 | ||
33 | 千晶 | Chiaki | 「なに?」 | ||
34 | 春希 | Haruki | 「ええと、その…」 | ||
35 | 千晶 | Chiaki | 「ん~?」 | ||
36 | 春希 | Haruki | 「…充電器買えよ」 | ||
37 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
38 | 春希 | Haruki | 「ま、待て! お前、ゼミの男友達なんて顔知ってる程度だろ!」 | ||
39 | 千晶 | Chiaki | 「でも多分泊めてくれるよ? なんなら賭けてみる?」 | ||
40 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
41 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
42 | 春希 | Haruki | 「…そんな危ないことすんな」 | ||
43 | 千晶 | Chiaki | 「んふふ~、 お邪魔しま~す」 | ||
44 | 春希 | Haruki | 「っ…」 | ||
45 | こいつ、ネゴシエーションの才能だけは俺より遙かに上だ。 | ||||
46 | ……… | .........
| |||
47 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
48 | 熱い水流が頭と体の両方を覚ましていく。 | ||||
49 | 石鹸とスポンジで痛くなるくらい全身をこすり、 ついでに皮膚の感覚も取り戻していく。 | ||||
50 | 女を部屋に招き入れ、すぐにシャワーを浴びるという、 ある意味『それっぽい』行動を取ってるのは、 別にそれっぽいことをするつもりとかではなく… | ||||
51 | 和泉に指摘された無精髭の処理と、 その根本原因の解決。 つまり、しばらく風呂に入っていなかったからだ。 | ||||
52 | いくら相手が和泉とは言え、あまりにエチケット違反。 …にしてもあいつ、よくこんな臭くて汚い俺に 平気で抱きついてきやがったな。 | ||||
53 | 別に、あいつの口車に乗った訳でも、 誘惑に屈した訳でもないんだからな。 | ||||
54 | ただ、和泉の場合、嘘のはずの脅し文句を 『ま、いっかぁ』程度の割り切りで 実行したりしそうだからしょうがないんだ。 | ||||
55 | あの日以来、二日連続、二度目の 強制的なコミュニケーション。 | ||||
56 | しかも今度は声だけじゃなく、 直接相手と接してる。 | ||||
57 | 望まないまま、許されないまま… それでも俺の生活は、徐々に元へと戻っていく。 | ||||
58 | 千晶 | Chiaki | 「むぐ、んぐ…」 | ||
59 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
60 | 千晶 | Chiaki | 「ん~、たまにはピザもいいね。 まぁあたしとしては春希の手料理の方が理想だけどさ」 | ||
61 | 春希 | Haruki | 「ちゃんとサラダも食え。 栄養のバランスを考えて食事しろ」 | ||
62 | 千晶 | Chiaki | 「思ったよりも食べるね春希。 ずっと寝てた割には」 | ||
63 | 春希 | Haruki | 「…エネルギーの消費以上に 補給してなかったからな」 | ||
64 | ほぼ四日ぶりの、しかも胃に負担のかかる重い食事は、 何故だかひたすら喉を通った。 | ||||
65 | 正直、美味いかまずいかなんて判断できるほど、 舌の感覚が戻ってきてる訳じゃない。 | ||||
66 | それでも、途中で音を上げるかと思っていた俺の胃は、 なかなか図太くチーズとパイの塊を受け入れた。 | ||||
67 | 千晶 | Chiaki | 「このっ、このぉっ!」 | ||
68 | 春希 | Haruki | 「そんなにタバスコかけるな。 しかも俺の領域にまで侵食してきやがって」 | ||
69 | 昨日から、やっと眠れるようになった。 そして今日、風呂に入った。髭を剃った。 | ||||
70 | こうして、やっと食えるようになった。 というか、食う気になった。 | ||||
71 | 千晶 | Chiaki | 「んぐ、ん…んんっ!?」 | ||
72 | 春希 | Haruki | 「だから一気に詰め込むなと… お茶飲むか?」 | ||
73 | 千晶 | Chiaki | 「ビ…ビール」 | ||
74 | 春希 | Haruki | 「…はいはい」 | ||
75 | 俺がこんなに普通に食えてるのは、多分、 目の前でこうして美味しそうに飯を食う奴がいたから… | ||||
76 | 千晶 | Chiaki | 「ん、んぐ、んぐ、んぐ………ぷはぁっ! うあぁぁぁ~、染みるぅ」 | ||
77 | 春希 | Haruki | 「流し込むだけのために一缶空ける奴があるか。 お前、途中から目的変わってたろ?」 | ||
78 | 不本意ながら、認めざるを得ない。 | ||||
79 | 千晶 | Chiaki | 「あ、最後の一つのピザ、 春希に譲ってあげるよ」 | ||
80 | 春希 | Haruki | 「そうか? じゃあ遠慮なく」 | ||
81 | 千晶 | Chiaki | 「その代わり、 これで半分以上はあんたが食べた計算になるんだから、 ワリカン率は7:3…せめて6:4に!」 | ||
82 | 春希 | Haruki | 「…なんてせせこましい計算してんだ和泉は」 | ||
83 | 千晶 | Chiaki | 「い、いや~、 さすがに外泊を繰り返してたせいで先立つものが…」 | ||
84 | 春希 | Haruki | 「いいよ、ピザ代くらいは俺が全額負担する」 | ||
85 | 千晶 | Chiaki | 「え、マジ? いくつ食べたとか関係なく全部春希のおごり!?」 | ||
86 | 春希 | Haruki | 「…既にビール代も全額負担してるしな」 | ||
87 | 千晶 | Chiaki | 「わ~い、春希太っ腹~、愛してる~! じゃあ最後の一つも遠慮なく…」 | ||
88 | 春希 | Haruki | 「それはスポンサーに譲れ。 資金提供の絶対条件だ」 | ||
89 | 千晶 | Chiaki | 「…なんてせせこましい権利を振りかざすかな春希は」 | ||
90 | 麻理さんに引き続き、和泉までもが、 俺を、もとの世界へと導いてくれている。 | ||||
91 | 千晶 | Chiaki | 「そいえばさ~、 冬休み入ってからどっか遊びに行った?」 | ||
92 | 春希 | Haruki | 「ずっと引きこもり」 | ||
93 | 食事をするのも久しぶりなら、 家事をするのも当然久しぶりだった。 | ||||
94 | カチカチに乾燥してたナイロンタワシ。 最初、こびりついて出なかった台所用洗剤。 ちょっと赤錆の混じってた水。 | ||||
95 | 千晶 | Chiaki | 「あれ? 彼女と遊びに行ったりは?」 | ||
96 | 春希 | Haruki | 「…そもそも俺に彼女がいるって話は 一体どこから来てるんだ?」 | ||
97 | 俺が何もしなかった数日間の傷痕は、 部屋の中の色々なところで見つかった。 | ||||
98 | 千晶 | Chiaki | 「え? 前に言ってなかったっけ?」 | ||
99 | 春希 | Haruki | 「言ってないだろそんなこと。 妙なカマかけるな」 | ||
100 | 千晶 | Chiaki | 「じゃあなに? 春希ってば、 冬休みにどっこも遊びに行く予定ないの?」 | ||
101 | 春希 | Haruki | 「バイトがあるんだよバイトが。俺は忙しいの」 | ||
102 | 千晶 | Chiaki | 「ずっと引きこもってたって言わなかったっけ? しかも、つい10秒ほど前」 | ||
103 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
104 | 例えば… | ||||
105 | こんな初歩的なツッコミすら論破できないくらい、 コミュニケーション能力が低下してたりとか。 | ||||
106 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
107 | 春希 | Haruki | 「何か言ったか?」 | ||
108 | 千晶 | Chiaki | 「さあ?」 | ||
109 | ……… | .........
| |||
110 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
111 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
112 | 千晶 | Chiaki | 「じゃあ、こっち…」 | ||
113 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
114 | 千晶 | Chiaki | 「…違うな、こっちだ」 | ||
115 | 春希 | Haruki | 「あ…っ」 | ||
116 | 千晶 | Chiaki | 「はい上がり~♪ これであたしの何連勝だっけ?」 | ||
117 | 春希 | Haruki | 「くっそ~! 一度はババに手をかけてたのに~!」 | ||
118 | 手元に残った唯一のカードであるジョーカーを放り投げ、 今日の自分の運のなさを嘆く。 | ||||
119 | 食後のババ抜きの戦績は10連敗を含む2勝16敗。 客観的に見ても一方的と言える差がついている。 | ||||
120 | 千晶 | Chiaki | 「だって春希、反応が露骨なんだもん。 そっちにババが行った時点で勝負あったも同然」 | ||
121 | 春希 | Haruki | 「なんでそんなに強いんだよ… 実はカードに印とか付けてないだろな?」 | ||
122 | 確かに勝ったときは、 一度も自分の手元にジョーカーが来ないまま、 最後まで逃げ切ったケースだけだった。 | ||||
123 | 千晶 | Chiaki | 「よくさぁ、『嘘をつくと耳を触る』とか、 そういう癖で見抜くとか言うじゃん」 | ||
124 | 春希 | Haruki | 「…俺にもそういうのがあるのか?」 | ||
125 | 千晶 | Chiaki | 「ううん、そんな単純なモノじゃないって。 人間の反応って奴はさぁ」 | ||
126 | 春希 | Haruki | 「そうなのか?」 | ||
127 | 千晶 | Chiaki | 「仕草や息遣いや口数や顔色やその他諸々… 相手の色んな反応を全部見て総合的に判断しないと」 | ||
128 | 春希 | Haruki | 「そこまで観察してんのかよ…」 | ||
129 | 千晶 | Chiaki | 「それだけじゃないよ。 こっちは逆にそういうの全部コントロールして、 相手に逆の意図を誤解させるように仕向けるの」 | ||
130 | 春希 | Haruki | 「お前… 心理学専攻した方が良かったんじゃないか?」 | ||
131 | あまりにも大げさに聞こえるその人間操作術が、 これだけの連敗を重ねた今となっては、 真実味をもって頭に届く。 | ||||
132 | 最初に和泉が提案してきたポーカーを、 『ギャンブル性の高いゲームは禁止』って 断っておいて本当に良かった… | ||||
133 | 千晶 | Chiaki | 「ん~、理論には興味ないんだよね。 あくまでも実践というか、現場主義というか」 | ||
134 | 春希 | Haruki | 「将来、詐欺師にでもなるつもりかよ」 | ||
135 | 千晶 | Chiaki | 「今でも…似たようなものかもね」 | ||
136 | 春希 | Haruki | 「和泉…?」 | ||
137 | と、観察眼とポーカーフェイスと 人間操作術に長けた同級生は、 ほんの少し自嘲気味に笑った。 | ||||
138 | 千晶 | Chiaki | 「と、それはともかくさ~、 もうちょっと歯応えのある勝負がしたいよあたしは。 何か他に遊ぶものないの?」 | ||
139 | 春希 | Haruki | 「トランプ以外だと…UN○とか?」 | ||
140 | 千晶 | Chiaki | 「相変わらず娯楽の少ない部屋だよねぇ。 あたしの友達でゲーム機持ってないのって 春希くらいだよ」 | ||
141 | 春希 | Haruki | 「文句があるならもう寝ろ。 そして夢の中で一進一退の好勝負でも 繰り広げててくれ」 | ||
142 | 千晶 | Chiaki | 「仕方ないなぁ… じゃあ目標を20連勝に上方修正して ババ抜き続けますか~」 | ||
143 | 春希 | Haruki | 「…お前はどれだけ俺を苦しめれば気が済むんだ?」 | ||
144 | ……… | .........
| |||
145 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
146 | 春希 | Haruki | 「…っ」 | ||
147 | 引いてきたのはダイヤの5… 手持ちのスペードの5と合わせて場に捨てる。 | ||||
148 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
149 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
150 | 和泉は、やはり俺のカードの山から 何度も札を持ち替えると、 しっかりハートの8を引いて場に捨てた。 | ||||
151 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
152 | 春希 | Haruki | 「~っ」 | ||
153 | 続いて、ひときわ気合いを入れて 引いてきたカードはクラブのJ。 手持ちのダイヤのJと合わせて場に… | ||||
154 | …なんて、俺の手の内にババがある以上、 向こうから引いてきたカードが無害なのは自明の理。 | ||||
155 | 今さら言っても仕方のないことだけど、 二人きりのババ抜きって…結構不毛だよなぁ。 | ||||
156 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
157 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
158 | 次に和泉が引いていったのはクラブのK。 …こいつ、本当にババ引かねぇ。 | ||||
159 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
160 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
161 | 俺が引いたのがダイヤの2。 | ||||
162 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
163 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
164 | 和泉が引いたのがハートの9。 | ||||
165 | あと、3枚… | ||||
166 | 千晶 | Chiaki | 「…ねぇ、春希」 | ||
167 | 春希 | Haruki | 「なんだよ?」 | ||
168 | 俺が引いたのがスペードの3。 | ||||
169 | 結局、いつも通り、和泉の二択に持ち込まれた。 残る切り札は、俺のポーカーフェイスのみ… | ||||
170 | 千晶 | Chiaki | 「…する?」 | ||
171 | 春希 | Haruki | 「……しない」 | ||
172 | そのギリギリの駆け引きは、 お互い、カードから目を離さないまま行われた。 | ||||
173 | …カードの方は、二枚ともテーブルの上に、 数字を見せたままこぼれ落ちてしまっていたけれど。 | ||||
174 | 千晶 | Chiaki | 「なんで?」 | ||
175 | 春希 | Haruki | 「お前こそ、なんでそんなこと言うんだ?」 | ||
176 | 二人とも、完全に主語を省略してたけど、 いくら俺でも、この状況でその意味がわからないほど 鈍くはいられないようだった。 | ||||
177 | 千晶 | Chiaki | 「ん~、だって春希落ち込んでるみたいだから、 元気づけてあげようかな~って」 | ||
178 | ………和泉の脚が、 テーブルの下で、俺に触れてくる。 | ||||
179 | 春希 | Haruki | 「お前は… 落ち込んでる暗い男がいたら、いつも、その… そうやって、慰めたりしてるのか?」 | ||
180 | 千晶 | Chiaki | 「ううん、こんなこと言うの初めてだよ。 春希だけだよ」 | ||
181 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
182 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
183 | 春希 | Haruki | 「…何だって?」 | ||
184 | 千晶 | Chiaki | 「ん~、でもどっちが本当の目的なんだろ」 | ||
185 | 春希 | Haruki | 「だから、なんて言ったんだ?」 | ||
186 | 千晶 | Chiaki | 「ね、春希… あたしはまだ、ミイラ取りのままでいられてると思う?」 | ||
187 | 春希 | Haruki | 「肝心なところぼかしたまま話を進めるな」 | ||
188 | 和泉の仕草、息遣い、口数、顔色、その他諸々… | ||||
189 | そのどれを見ても、 さっきと全然違ってないように見えるのは、 俺の観察眼の限界なのか、それとも… | ||||
190 | 千晶 | Chiaki | 「ま、別にそれはいいけどさ…何で駄目?」 | ||
191 | 春希 | Haruki | 「なんでって…俺たちつきあってないだろ」 | ||
192 | そして俺の仕草、息遣い、口数、顔色、その他諸々… | ||||
193 | 千晶 | Chiaki | 「別につきあわなくてもいいんだけど。 ただあたしは、ちょっと春希に深く関わりたいだけで」 | ||
194 | 春希 | Haruki | 「…意味わからん。 それって告白とどう違うんだよ?」 | ||
195 | 自分でも、まったく平常を保ってないと、 自信を持って言える今の精神状態は、 果たして和泉には、どう映ってるんだろうか… | ||||
196 | 千晶 | Chiaki | 「微妙に違うんだけど… ま、どうしても定義がいるんなら、 別にそう取ってもらってもいいよ?」 | ||
197 | 春希 | Haruki | 「お前、なぁ…」 | ||
198 | 勝負は、まだ続いてる。 ひたすら俺に不利な状況のままで。 | ||||
199 | 千晶 | Chiaki | 「別に、軽く考えればいいと思うよ? それこそピザ代ってことにするとかさぁ」 | ||
200 | 春希 | Haruki | 「俺がそういう割り切りできないって知らないか?」 | ||
201 | 千晶 | Chiaki | 「知ってるよ。 それがわかる程度には関わった自信はあるからね」 | ||
202 | 千晶の脚が、ゆっくりと俺の膝をさすってくる。 | ||||
203 | テーブルの上の表情は完全にいつも通りなのに、 テーブルの下ではまるで激情を隠そうとしない。 | ||||
204 | 春希 | Haruki | 「だったら…そろそろ退いてくれ。 俺、お前のこと嫌いじゃないから こういう会話続けるの辛いんだよ」 | ||
205 | その和泉の二面的な行為についていけない俺は、 とっくに駆け引きの勝負では負けている。 | ||||
206 | 観察眼もポーカーフェイスも、 使うことすら放棄してしまっている。 | ||||
207 | 千晶 | Chiaki | 「なら、今からする質問に 真面目に答えたら許してあげる」 | ||
208 | 春希 | Haruki | 「それって…」 | ||
209 | 千晶 | Chiaki | 「ね、春希…あんた今、好きなコいる?」 | ||
210 | 春希 | Haruki | 「………いる」 | ||
211 | それでも… | ||||
212 | 勝負を放棄してでも、 守らなければならない気持ちがあったから。 | ||||
213 | だからこそ、 その質問にだけは、逡巡は許されなかった。 和泉に対しても、そして… | ||||
214 | 千晶 | Chiaki | 「…だったら何で引きこもってたの?」 | ||
215 | 春希 | Haruki | 「振られた、から」 | ||
216 | 千晶 | Chiaki | 「…一進二退、かぁ」 | ||
217 | 春希 | Haruki | 「なんだよその間違った日本語は? しかも意味はそこはかとなく合ってるし…」 | ||
218 | 千晶 | Chiaki | 「でもさ、それって余計あたしの出番じゃない?」 | ||
219 | 春希 | Haruki | 「いや…違うよ」 | ||
220 | 千晶 | Chiaki | 「なんで?」 | ||
221 | 春希 | Haruki | 「うん、まぁ、その…なんて言うか」 | ||
222 | 千晶 | Chiaki | 「それでも、好きだから? 諦められないから?」 | ||
223 | 春希 | Haruki | 「………うん」 | ||
224 | そんな強い決意を抱いてたくせに、 最後、全然締まらなかった。 | ||||
225 | 自分で言えなかった。 最低だった。 | ||||
226 | 千晶 | Chiaki | 「………そっか」 | ||
227 | 春希 | Haruki | 「すまん」 | ||
228 | 千晶 | Chiaki | 「そこ謝るところじゃないから。 別にあたしショック受けてないし」 | ||
229 | 春希 | Haruki | 「うん…」 | ||
230 | けれど、ちゃんと相手には伝わったから。 | ||||
231 | それに、伝えたのが本人じゃなかったから、 今はそれでよしとさせて欲しい。 | ||||
232 | 千晶 | Chiaki | 「ん~、潮時かなぁ」 | ||
233 | いつの間にか、和泉の脚が俺から離れていた。 | ||||
234 | 千晶 | Chiaki | 「モチーフとしては ますます魅力的になっちゃったんだけど、 さすがにもう、追いかけられないよね」 | ||
235 | だらけたように全身の力を抜き、 天井を仰いで、何もかも終わったかのような すがすがしい表情を見せる。 | ||||
236 | それは、今までのポーカーフェイスとは違ってたけど、 だからといってその心情が易々とくみ取れるほど、 和泉の内部構造は簡単じゃなかった。 | ||||
237 | 千晶 | Chiaki | 「これであたしの大いなる野望は終わり… ありがと春希、今まで夢見させてくれて」 | ||
238 | 春希 | Haruki | 「本当にお前の言ってることは訳わからんな」 | ||
239 | 千晶 | Chiaki | 「世の中には知らない方が幸せなこともあるよ? 例えばあたしがとんでもない悪女だとか」 | ||
240 | 春希 | Haruki | 「あるわけないだろそんなこと… それがわかる程度には関わった自信はある」 | ||
241 | 千晶 | Chiaki | 「………ごめんね」 | ||
242 | 和泉がその言葉を漏らした後、 俺たちの間を苦い、けれど優しい沈黙が支配する。 | ||||
243 | さっきまでの激闘を覚えているものは、もういない。 …テーブルの上にまき散らされたカード以外には。 | ||||
244 | ……… | .........
| |||
245 | 春希 | Haruki | 「本当に泊まっていかなくていいのか? もう終電ないだろ?」 | ||
246 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
247 | 春希 | Haruki | 「だからわざと聞こえないように呟くのはよせ」 | ||
248 | 食事も済んで、酒も入って、ゲームに興じて。 | ||||
249 | もう後は寝るだけってところで、 和泉はいきなり帰り支度を始めた。 | ||||
250 | 千晶 | Chiaki | 「さすがに別の女に操立ててる男の部屋に 泊まるのは辛いよ…」 | ||
251 | …まぁ、経緯を考えれば ちっともいきなりじゃないと言えばそうなんだけど。 | ||||
252 | 春希 | Haruki | 「お前らしくないな、和泉」 | ||
253 | 千晶 | Chiaki | 「寝ぼけていつの間にか入っちゃってても悪いし」 | ||
254 | 春希 | Haruki | 「…お前らしいな、和泉」 | ||
255 | 千晶 | Chiaki | 「それじゃ」 | ||
256 | 春希 | Haruki | 「あ、ああ…またな」 | ||
257 | いつもの軽口も、これ以上盛り上がることはなく。 | ||||
258 | 淡々と、ちょっとだけ情緒的に、 俺たちは、軽く手を振りあう。 | ||||
259 | 千晶 | Chiaki | 「………ね、春希?」 | ||
260 | 春希 | Haruki | 「ん?」 | ||
261 | そんな軽い別れに、 少しは寂しさを感じてくれたのか… | ||||
262 | 千晶 | Chiaki | 「あたしはね、 本当はあんたの想いの深さを知ってるよ?」 | ||
263 | 春希 | Haruki | 「え…?」 | ||
264 | 千晶 | Chiaki | 「物語にしても遜色のない、 あんたたちの綺麗な想いを知ってるよ?」 | ||
265 | 春希 | Haruki | 「何…言ってんだ?」 | ||
266 | 和泉は、少し熱めに、 さらに情緒的に目を潤ませる。 | ||||
267 | 千晶 | Chiaki | 「ここまで引っ張ったんだ… どうせなら、最後まで突っ走って 綺麗な物語を綺麗なまま完結させて欲しいな」 | ||
268 | 春希 | Haruki | 「和泉…お前」 | ||
269 | 千晶 | Chiaki | 「そしたら今度こそ…」 | ||
270 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
271 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
272 | けれど、最後の最後まで、 大事なところは声に出さず、 最後の一線を越えないまま。 | ||||
273 | 和泉は、自分の手の内を明かさないまま、 その想いを昇華させてしまった。 | ||||
274 | 千晶 | Chiaki | 「おやすみ、あたしの神様。 あなたを見つめ続けてきたこの数年間、 本当に楽しかったよ」 | ||
275 | 数日間の間違いだろ…それ。 |
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Introductory Chapter | ||||||
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1001 | 1008 | 1009 | 1010 | 1011 | 1012 | 1013 |
1002 | 1008_020 | 1009_020 | 1010_020 | 1011_020 | 1012_020 | |
1003 | 1008_030 | 1009_030 | 1010_030 | 1011_030 | 1012_030 | |
1004 | 1008_040 | 1010_040 | 1012_030_2 | |||
1005 | 1008_050 | 1010_050 | ||||
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1006_2 | 1010_070 | |||||
1007 |
Closing Chapter | ||||||||||
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Common | Setsuna | Koharu | Chiaki | Mari | ||||||
2001 | 2011 | 2020 | 2027 | 2301 | 2309 | 2316 | 2401 | 2408 | 2501 | 2510 |
2002 | 2012 | 2021 | 2028 | 2302 | 2310 | 2317 | 2402 | 2409 | 2502 | 2511 |
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2008 | 2018 | 2308 | 2508 | 2517 | ||||||
2009 | 2019 | 2509 | ||||||||
2010 | ||||||||||
Setsuna | Koharu | Chiaki | Mari | |||||||
2031_2 | 2312_2 | 2401_2 | 2504_2 | 2511_2 | ||||||
2031_3 | 2313_2 | 2402_2 | 2507_2 | 2513_2 | ||||||
2031_4 | 2313_3 | 2402_3 |
Coda | |||||||||
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Common | Kazusa (True) | Setsuna (True) | Kazusa (Normal) | ||||||
3001 | 3008 | 3014_2 | 3020 | 3101 | 3107 | 3201 | 3207 | 3901 | 3907 |
3002 | 3009 | 3014_3 | 3021 | 3102 | 3108 | 3202 | 3208 | 3902 | 3908 |
3003 | 3010 | 3015 | 3022 | 3103 | 3109 | 3203 | 3209 | 3903 | 3909 |
3004 | 3011 | 3016 | 3023 | 3104 | 3110 | 3204 | 3210 | 3904 | |
3005 | 3012 | 3017 | 3024 | 3105 | 3111 | 3205 | 3211 | 3905 | |
3006 | 3013 | 3018 | 3106 | 3206 | 3906 | ||||
3007 | 3014 | 3019 | |||||||
Common | Setsuna (True) | Kazusa (Normal) | |||||||
3001_2 | 3210_2 | 3901_2 | 3906_2 | ||||||
3015_2 | 3902_2 | 3907_2 | |||||||
3902_3 | 3907_3 | ||||||||
3904_2 |
Mini After Story and Extra Episode | |||
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The Path Back to Happiness | The Path Forward to Happiness | Dear Mortal Enemy | |
6001 | 6101 | 4000 | 4005 |
6002 | 6102 | 4001 | 4006 |
6003 | 6103 | 4002 | 4007 |
6004 | 6104 | 4003 | 4008 |
6005 | 4004 | 4009 |
Novels | |||||
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The Snow Melts, And Until The Snow Falls | The Idol Who Forgot How to Sing | Twinkle Snow ~Reverie~ | After the Festival ~Setsuna's Thirty Minutes~ | His God, Her Savior | |
5000 | 5100 | 5200 | 5205 | 5300 | 5400 |
5001 | 5101 | 5201 | 5206 | 5301 | 5401 |
5002 | 5102 | 5202 | 5207 | 5302 | |
5003 | 5103 | 5203 | 5208 | 5303 | |
5004 | 5104 | 5204 | 5209 |
Short Stories | |||
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Princess Setsuna's Distress and Her Minister's Sinister Plan | Koharu Climate After the Passing of the Typhoon | This isn't the Season for White Album | Todokanai Koi, Todoita |
7000 | 7100 | 7200 | 7300 |