White Album 2/Script/2023
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Speaker | Text | Comment | |||
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Line # | JP | EN | JP | EN | |
1 | …… | ......
| |||
2 | 久しぶりに見た外の景色は、 闇に慣れてしまった目にはやたらと眩しかった。 | ||||
3 | 街中の大きすぎる喧騒も、 すれ違う人々の素早すぎる動きも、 世間から取り残された俺には、酷く恐ろしいものに映った。 | ||||
4 | …まぁ、外出してから一時間も経てば、 そんな浦島太郎気分からはめでたく解放されたけど。 | ||||
5 | それからさらに数時間… | ||||
6 | 眩しいようでいて、 実は優しい陽射しでしかなかった空は、 そのままリアルタイムで黒く染まっていった。 | ||||
7 | あてもなく歩き続け、 外と触れあうリハビリが終わったと実感できたとき、 自然と足が向かっていたのがここだった。 | ||||
8 | グッディーズ南末次店。 | ||||
9 | 外から、忙しそうに働く仲間たちを、 さっきからぼうっと眺めてた。 | ||||
10 | 峰城学園が大学、付属とも冬休みに入ったせいか、 いつもより客足は微妙に減っていたけれど、 その分バイトもきっちり減っていた。 | ||||
11 | キッチンもホールも、誰一人手を休めている人はいない。 佐藤も、中川さんも、他の数少ないスタッフも。 | ||||
12 | だから、ここなら… リハビリも、次の段階に進めるかもしれない。 | ||||
13 | 外と触れあうのに慣れたら、 次は、外の中に入り込むリハビリに。 | ||||
14 | 大学が冬休みに入っている以上、 これが、今の時期にできる最後の… | ||||
15 | ??? | ??? | 「先輩」 | ||
16 | 春希 | Haruki | 「うわぁっ!?」 | ||
17 | 小春 | Koharu | 「お店の前を行ったり来たりしないでもらえます? 正直、営業妨害も甚だしいんですけど」 | ||
18 | 春希 | Haruki | 「よ、よ、よ…よぉ、杉浦」 | ||
19 | 小春 | Koharu | 「人の名前をそんなリズミカルに呼ばないでください。 からかってるんですか?」 | ||
20 | 春希 | Haruki | 「い、いや…そんなつもりは」 | ||
21 | からかってるんじゃなくて噛んでるんだけど。 | ||||
22 | 小春 | Koharu | 「今日、バイトお休みですよね? 店長代理にしっかり釘刺されてましたよね?」 | ||
23 | 春希 | Haruki | 「…なんでそのことを知ってる?」 | ||
24 | 小春 | Koharu | 「そうなるようにシフト組んだのはわたしですから。 先輩、年末はプライベートで忙しくなるはずだからって」 | ||
25 | 春希 | Haruki | 「…そうじゃないかとは思ったが、 期待を裏切らない奴」 | ||
26 | 小春 | Koharu | 『良いお年を』 | ||
27 | 先週のバイトの時に埋められていた外堀の、 現場監督がそこにいた… | ||||
28 | 小春 | Koharu | 「子供の頃から周囲の期待に応えられるよう、 いつも頑張ってきましたから」 | ||
29 | 春希 | Haruki | 「…わざと外してるよな? 俺が言ってるのはそういう意味じゃないって、 本当はわかってるくせに」 | ||
30 | 春希 | Haruki | 「杉浦の計略で無理やりな」 | ||
31 | 小春 | Koharu | 「そんなにわたしって信用なりませんか? もう教育期間も終わったし、 十分使えるようになったって自負あるんですけど」 | ||
32 | 春希 | Haruki | 「他の奴らに信用がありすぎるのが厄介なんだよ」 | ||
33 | 小春 | Koharu | 「今年はもう来るなってあれほど言ったのに。 だいたい先輩、今はそれどころじゃ…」 | ||
34 | 春希 | Haruki | 「余計なお世話だ。 だいたいここでは俺の方が先輩… と言うかあらゆる局面で俺の方が先輩だろ」 | ||
35 | 小春 | Koharu | 「で、結局どうだったんです?」 | ||
36 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
37 | 小春 | Koharu | 「話、したんですよね? 仲直りしたんですよね? 彼女と」 | ||
38 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
39 | やっと回り始めた軽口が、 その一言でいきなりエンストを起こす。 | ||||
40 | 小春 | Koharu | 「のろけに来てくれたのなら大歓迎です。 うんざりしながらも、ちゃんと話を聞きます」 | ||
41 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
42 | 小春 | Koharu | 「…先輩?」 | ||
43 | 春希 | Haruki | 「…悪い」 | ||
44 | 小春 | Koharu | 「っ…」 | ||
45 | その一言がやっと俺の喉から絞り出された瞬間、 杉浦の目が大きく見開かれ… | ||||
46 | 小春 | Koharu | 「ど、どうしてですか? わたし、何か致命的なミスしましたか!?」 | ||
47 | 彼女の責任中枢に強い刺激が伝わったらしかった。 | ||||
48 | ……… | .........
| |||
49 | 小春 | Koharu | 「ご注文繰り返させていただきます。 海鮮リゾットのドリンクセット、シーザーサラダ。 以上でよろしいでしょうか?」 | ||
50 | 小春 | Koharu | 「ありがとうございました。 少々お待ちください」 | ||
51 | 小春 | Koharu | 「っ…」 | ||
52 | 小春 | Koharu | 「7番テーブルオーダー入りました! …で、先輩、続き」 | ||
53 | 春希 | Haruki | 「チーズハンバーグ。 12番テーブルに」 | ||
54 | 小春 | Koharu | 「その前に! さっきの話!」 | ||
55 | 春希 | Haruki | 「…別に杉浦に問題があった訳じゃない。 だから何も責任感じることなんか」 | ||
56 | 小春 | Koharu | 「だったらどうして?」 | ||
57 | 春希 | Haruki | 「……そんなの決まってるだろ。 俺と相手の問題だよ」 | ||
58 | 小春 | Koharu | 「先輩… もしかして、また逃げたんですか? 小木曽先輩から」 | ||
59 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
60 | 小春 | Koharu | 「いつまでそんな昔のこと引きずってるんです? いい加減頑張って乗り越えないと…」 | ||
61 | 春希 | Haruki | 「ほら、1番テーブルから呼び出しかかったぞ。 ついでにチーズハンバーグ。12番テーブル」 | ||
62 | 小春 | Koharu | 「っ…」 | ||
63 | 春希 | Haruki | 「ふぅ…」 | ||
64 | 佐藤 | Satou | 「…あの、北原さん。 ヘルプ入ってくれたのはありがたいんすけどねぇ」 | ||
65 | 春希 | Haruki | 「言うな佐藤。 俺だってこんなことになるとは…」 | ||
66 | これが、今の俺にできる最後のリハビリ。 | ||||
67 | 一週間ぶりの仕事は、 やっぱり一時間もあれば勘を取り戻すことができた。 | ||||
68 | ただ、杉浦に捕まった時点で、 本来はこのリハビリは諦めるべきだった。 | ||||
69 | なぜなら… | ||||
70 | 小春 | Koharu | 「1番テーブル追加オーダーです! …いい加減頑張って乗り越えないと、 先輩、二度と好きな人できなくなっちゃいますよ?」 | ||
71 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
72 | 小春 | Koharu | 「…早く反論してください。 わたしだって忙しいんですから」 | ||
73 | 春希 | Haruki | 「…それ以前の問題だったんだ」 | ||
74 | 小春 | Koharu | 「それって、どういう…」 | ||
75 | 春希 | Haruki | 「俺が逃げるとか逃げない以前に、 俺のつけた傷は、もう治りようがないくらい悪化してた」 | ||
76 | 小春 | Koharu | 「あ…」 | ||
77 | 春希 | Haruki | 「当然だよな。 今まで俺がしてきたことを考えたら…」 | ||
78 | 小春 | Koharu | 「彼女の方が…?」 | ||
79 | 春希 | Haruki | 「ん…」 | ||
80 | 小春 | Koharu | 「………」 | "........."
| |
81 | 春希 | Haruki | 「…カウンター」 | ||
82 | 小春 | Koharu | 「っ…」 | ||
83 | 春希 | Haruki | 「………ふぅ」 | ||
84 | 佐藤 | Satou | 「気になるんすよね… こうも堂々と仕事中に内緒話されると」 | ||
85 | 春希 | Haruki | 「だから悪かったって。 今度杉浦がここに来たらちゃんと注意するから」 | ||
86 | 佐藤 | Satou | 「本当に、しっかり言っておいてくださいよ? 皆に聞こえるように話してくれなければ困るって」 | ||
87 | 春希 | Haruki | 「………滅べ」 | ||
88 | 仕事が忙しい最中、 けれど一度お節介モードに入ってしまった杉浦が、 どちらかを切り捨てられるはずもなく。 | ||||
89 | 彼女は、俺を店に連れ込みキッチンに放り込んだ後、 通常の処理能力を、更に5割アップさせた。 | ||||
90 | …その5割分を、俺との会話に割り当てるために。 | ||||
91 | 小春 | Koharu | 「ご注文の品、以上でよろしいでしょうか? では、ごゆっくりどうぞ」 | ||
92 | 小春 | Koharu | 「っ…」 | ||
93 | 中川 | Nakagawa | 「少しは自分もごゆっくりしようよ…」 | ||
94 | 小春 | Koharu | 「18番テーブル、そろそろデザートお願いします! …それで? 何て言われたんですか先輩?」 | ||
95 | 春希 | Haruki | 「………もうちょっとこっちに寄ってくれ」 | ||
96 | あまりにも忙しなく、 あまりにも不躾で、 そして、あまりにも痛い質問だったけど。 | ||||
97 | 小春 | Koharu | 「んしょ…っと。 はいどうぞ」 | ||
98 | 杉浦の上半身がさらにカウンターに乗り出して、 俺の目の前に、白く端正な横顔が向けられる。 | ||||
99 | 正確には、その横顔の後ろにある小さな耳が。 | ||||
100 | 春希 | Haruki | 「あのさ…」 | ||
101 | してることも状況も、あまりにも忙しなくて、 とても深刻な話をしてるようには見えないし思えない。 | ||||
102 | でも、杉浦のあまりの剣幕と真面目な態度に押され、 俺は、自分の気分を重くする代わりに口を軽くする。 | ||||
103 | ……… | .........
| |||
104 | …… | ......
| |||
105 | … | ...
| |||
106 | 小春 | Koharu | 「嘘つき、か」 | ||
107 | 春希 | Haruki | 「まぁね。 その通りだし」 | ||
108 | 小春 | Koharu | 「………」 | "........."
| |
109 | 俺がヘルプに入っていたのは、 年末で早くなっていた閉店時間のおかげで、 たった2時間にも満たなかった。 | ||||
110 | おかげで、就業中に例の密談は終わらず、 杉浦は『真面目にも』閉店後の後片づけを、 自主的に引き受けてきた。 | ||||
111 | もちろん『わたしたち二人』で。 | ||||
112 | 春希 | Haruki | 「今さら謝っただけで償えるなんてさ、 なんて虫のいいこと考えてたんだろうな、俺」 | ||
113 | 小春 | Koharu | 「でも、間違ったことしてません。 先輩、全然間違ったことしてないですよ」 | ||
114 | 春希 | Haruki | 「…ありがと、杉浦。 でも俺、遅すぎたみたいだ」 | ||
115 | 小春 | Koharu | 「………」 | "........."
| |
116 | モップの柄に顎を乗せ、 杉浦がふぅ~っとため息をつく。 | ||||
117 | 春希 | Haruki | 「今まで人を責めたことなんかなかった雪菜だからこそ、 絶対に『心にもあること』なんだってわかっちゃってさ」 | ||
118 | 俺の、そこそこ苦い体験談を飲み込んで、 ほんの少し胸焼けを起こしたみたいだった。 | ||||
119 | 春希 | Haruki | 「それで、痛感した。 俺は今まで、どれだけ彼女を 深く傷つけてきたんだろうって」 | ||
120 | 小春 | Koharu | 「だけど、先輩だって… 先輩だって、十分傷ついてきたじゃないですか」 | ||
121 | 春希 | Haruki | 「それは自業自得だし」 | ||
122 | 小春 | Koharu | 「…そうやって、あまり自分を責めないでください。 そういうの、端から見てて痛いです」 | ||
123 | 春希 | Haruki | 「悪い。 ひどい自己憐憫だよな、これ。 確かにみっともない」 | ||
124 | 小春 | Koharu | 「…わざと外してるんですよね? わたしが言ってるのはそういう意味じゃないって、 本当はわかってるくせに」 | ||
125 | 春希 | Haruki | 「ごめんな。 今、あまり庇われるとやばいんだ。 …信じてしまいたくなるから」 | ||
126 | 小春 | Koharu | 「っ…」 | ||
127 | 予想以上の杉浦の俺への味方ぶりに、 ちょっとだけ反抗的な態度を取ってしまう。 | ||||
128 | 春希 | Haruki | 「俺がしたことはさ… 雪菜を傷つけただけじゃないだろ」 | ||
129 | 小春 | Koharu | 「それって…」 | ||
130 | だって杉浦は、真っ直ぐすぎて気づかない。 | ||||
131 | 春希 | Haruki | 「彼女のことでねじくれてさ… 俺の近くにいる人たちまで無差別に巻き込んで」 | ||
132 | 俺を支持するってことは、 雪菜を否定するってことで。 | ||||
133 | 春希 | Haruki | 「昔なじみや、大学の友達や、バイト先の同僚や、 それに…大事な教え子とか、さ」 | ||
134 | 小春 | Koharu | 「あ…」 | ||
135 | それは今の俺にとっては、 とても辛いことなんだって。 | ||||
136 | 春希 | Haruki | 「たくさんの人、傷つけて、 で、その人の近くにいる人まで傷つけて、 ほんと、どうしようもない負のスパイラルだよな」 | ||
137 | 小春 | Koharu | 「………」 | "........."
| |
138 | 春希 | Haruki | 「杉浦なんか、二重の意味で嫌な思いしただろ?」 | ||
139 | 大事な教え子の親友で、 バイト先の同僚で。 | ||||
140 | 小春 | Koharu | 「今、三重の意味で嫌な思いをしてます」 | ||
141 | 春希 | Haruki | 「ごめんな…」 | ||
142 | そして、仲間以上の存在で。 | ||||
143 | 小春 | Koharu | 「もう…っ」 | ||
144 | そんな大事な杉浦がそのとき放った恨みの声は、 ほんの少しだけ鼻にかかっていた。 | ||||
145 | 小春 | Koharu | 「ね、先輩」 | ||
146 | 春希 | Haruki | 「ん?」 | ||
147 | 小春 | Koharu | 「そんなに…後悔してるんですか? 小木曽先輩のことだけじゃなくて、その…」 | ||
148 | 春希 | Haruki | 「してるよ。 今までの俺、最低だったよな」 | ||
149 | 小春 | Koharu | 「………」 | "........."
| |
150 | 春希 | Haruki | 『何でそんなこと、 “赤の他人”に話さなくちゃならないんだ?』 | ||
151 | 春希 | Haruki | 『どうしてわかってくれなかったんだ? どうして嫌ってくれなかったんだよ…』 | ||
152 | 春希 | Haruki | 「うん…最低だ」 | ||
153 | その時の杉浦が、一般論に混ぜて、 ほんの少しだけ個別論にまで踏み込んでいることも、 ちゃんとわかってた。 | ||||
154 | だからこそ俺は、 彼女と初めて出会ったときとは違う言葉を選んだ。 | ||||
155 | …今の俺にとって、 誠実だと思える言葉を。 | ||||
156 | 小春 | Koharu | 「そっか…後悔してるんだ。 あの時のこと、反省してるんだ」 | ||
157 | 春希 | Haruki | 「酷いこと言ったよな、俺。 ほんと、大人げなかった」 | ||
158 | 小春 | Koharu | 「わたしに関してはお互いさまです。 先輩に、たくさんの酷いこと言いました」 | ||
159 | 春希 | Haruki | 「杉浦の方は売り言葉に買い言葉だよ。 何も悪くなんかない」 | ||
160 | 小春 | Koharu | 「先輩だって…先輩だって」 | ||
161 | 春希 | Haruki | 「杉浦…?」 | ||
162 | 小春 | Koharu | 「わたし、あのときの先輩は確かに許せないけど… でも、今の先輩は許されてもいいと思うんです」 | ||
163 | 春希 | Haruki | 「それは身内びいきって言うんだ。 長いこと同じところで働いてたせいでの勘違いだよ」 | ||
164 | 小春 | Koharu | 「だって先輩、 反省してるって言ったじゃないですか! てことは…改める気があるって、ことですよね?」 | ||
165 | 春希 | Haruki | 「杉浦…」 | ||
166 | 小春 | Koharu | 「わたし、前向きな人ならOKです。 必死に頑張ってる人なら、嫌いになんかなりません」 | ||
167 | 相変わらず、なんて前向きな。 | ||||
168 | 今、俺たちの真上にある雲一つない冷たい星空みたいに、 彼女の向けてくる目は、透き通ってる。 | ||||
169 | 春希 | Haruki | 「…ありがとう。 杉浦がそう言うのなら、そうなのかもしれないな」 | ||
170 | 小春 | Koharu | 「先輩…」 | ||
171 | 彼女が信じる俺なら、 もしかしたら、まだ先があるかもなんて、 そんな前向きな気持ちが芽生えそうになる。 | ||||
172 | 鶏が先か、卵が先か… | ||||
173 | 春希 | Haruki | 「………な、杉浦」 | ||
174 | 小春 | Koharu | 「はい?」 | ||
175 | だったら… | ||||
176 | 春希 | Haruki | 「今からさ… 電話かけて欲しいところがあるんだけど」 | ||
177 | せっかくこの世に生を受けた今の感情を、 そのまま止めてしまうなんてことはしたくない。 | ||||
178 | ……… | .........
| |||
179 | 春希 | Haruki | 「ごめん… こんな夜遅く」 | ||
180 | ??? | ??? | 「………」 | "........."
| |
181 | 小春 | Koharu | 「あ、そ、そうだ! ねぇ、追加でケーキとか頼みませんか? わたし、ちょっとお腹空いちゃった」 | ||
182 | 春希 | Haruki | 「それに、来てくれてありがとう。 本当は、俺の顔なんか見たくもないだろうけど」 | ||
183 | ??? | ??? | 「そ、そんなこと…」 | ||
184 | 小春 | Koharu | 「それともパフェかなぁ? あ、でも今何時かな? 12時超えたら太っちゃうんでしたっけ」 | ||
185 | 春希 | Haruki | 「どうしても、もう一度話をしておかないとって。 …あんな酷い言い方しておいて、 虫のいい話かもしれないけど」 | ||
186 | ??? | ??? | 「あ、あの… その前に、一つだけ教えてください」 | ||
187 | 小春 | Koharu | 「う~ん、悩むなぁ。 ね、皆はどうします?」 | ||
188 | 春希 | Haruki | 「なに?」 | ||
189 | 美穂子 | Mihoko | 「どうして先生と小春ちゃんが 一緒にいるんですか?」 | ||
190 | 小春 | Koharu | 「う…」 | ||
191 | 矢田さんの疑惑の視線が、 遠慮なく、正面の俺と隣の杉浦に注がれる。 | ||||
192 | 杉浦からの電話に20コール目でやっと出た彼女は、 そのすぐ後に代わった俺からの声に、 30秒くらい返事を返すのを忘れた。 | ||||
193 | それでもこうして出てきてくれたのは… それも、夜遅いから明日以降でもと言ったのに、 約束してから10分で駆けつけてくれたのは… | ||||
194 | 美穂子 | Mihoko | 「どうしてこんな夜遅く、二人っきりで…っ」 | ||
195 | 小春 | Koharu | 「あ、あ、あ…あのね、美穂子…」 | ||
196 | 多分、あまり好意的な意味じゃなかったんだと思う。 | ||||
197 | 春希 | Haruki | 「同じバイト先なんだ。 それも、単なる偶然で」 | ||
198 | 美穂子 | Mihoko | 「え?」 | ||
199 | けれど今は、どんなとっかかりでも良かった。 こうして、再び会うことができたのなら。 | ||||
200 | もう一度、チャンスが手に入るのなら。 | ||||
201 | 春希 | Haruki | 「杉浦が卒業旅行のためにバイトを始めたら、 そこが元から俺のバイト先だったってだけ。 …それ以外の理由はないよ」 | ||
202 | 小春 | Koharu | 「え…」 | ||
203 | 春希 | Haruki | 「でも今は、杉浦に感謝してる。 こうして、矢田さんともう一度話せるように、 色々と力を貸してくれたし、励ましてもくれた」 | ||
204 | 美穂子 | Mihoko | 「小春ちゃん…が?」 | ||
205 | 春希 | Haruki | 「ただ、今から俺が話すことに杉浦は関係ないよ。 矢田さんと俺と…もう一人の話だ」 | ||
206 | 小春 | Koharu | 「…っ」 | ||
207 | それに、俺のことだけじゃない。 | ||||
208 | 俺が原因で積み重なってしまった二人の誤解も、 この機会に解きほぐすことができたなら… | ||||
209 | 美穂子 | Mihoko | 「そうなの? 小春ちゃん」 | ||
210 | 小春 | Koharu | 「………先輩がそう言うならそうなんじゃない?」 | ||
211 | 春希 | Haruki | 「杉浦…?」 | ||
212 | 小春 | Koharu | 「っ…! あ、ああ…うん、まぁ…ね。 ごめん美穂子、前もって話しておけばよかったね」 | ||
213 | 美穂子 | Mihoko | 「そんな… だってわたし、この間、小春ちゃんに酷いこと…」 | ||
214 | 小春 | Koharu | 「いいんだってばそんなこと。 わたしたち、言いたいこと言い合ってきたから こうして今まで続いてきたんだし」 | ||
215 | 美穂子 | Mihoko | 「小春ちゃん…」 | ||
216 | 矢田さんの眼鏡越しの瞳が、 ようやく逸らし続けていた隣へと向けられる。 | ||||
217 | 杉浦の方は、その正面からの視線がこそばゆいのか、 ほんの少しだけ上目遣いに応える。 | ||||
218 | 春希 | Haruki | 「とにかくごめん。そういう行き違いも含めて 全部、俺が矢田さんに取った態度のせいだ。 本当に、悪かった」 | ||
219 | 美穂子 | Mihoko | 「あ、え? そ、そんな…」 | ||
220 | 春希 | Haruki | 「あの時の俺はさ、 自分に向けられる好意が怖かったから。 …特に、距離が近ければ近いほど」 | ||
221 | 美穂子 | Mihoko | 「先生…?」 | ||
222 | 春希 | Haruki | 「もちろん、そうなった理由はある。 …少し長くなるけど、もし嫌じゃなかったら、 俺の話を聞いて欲しいんだ」 | ||
223 | 美穂子 | Mihoko | 「………っ」 | ||
224 | 矢田さんは、そうやって頭を下げる俺を、 さっき杉浦を見つめたように、 やはりまっすぐ見つめて… | ||||
225 | そうして小さく、 けれどしっかりと、首を縦に振った。 | ||||
226 | 小春 | Koharu | 「………」 | "........."
| |
227 | ……… | .........
| |||
228 | 三年前の、浮かれてた半年間。 | ||||
229 | 俺に好意を向けてくれた女の子と、 俺が好意を抱いた女の子たちと、 馬鹿みたいに楽しかった学園祭のステージと。 | ||||
230 | そして、そんな夢に浸りきり、たった一つの、 けれど大きな決断をしなかったことに対しての、 強烈なしっぺ返し。 | ||||
231 | 自分が罰を受けたはずなのに、 痛みは全て、一人の女の子が受け止めてしまったこと。 | ||||
232 | 彼女に刺さった棘は、三年経った今でも抜けず、 今でも俺のすぐ近くで、冷たい血を流し続けていること。 | ||||
233 | 春希 | Haruki | 「誰かを好きになることも、 誰かに好きって言われることも、 怖くて、ほんと怖くてさ…」 | ||
234 | 美穂子 | Mihoko | 「先生…」 | ||
235 | 小春 | Koharu | 「………」 | "........."
| |
236 | 春希 | Haruki | 「だから俺、誰にでも平等に接してた。 贔屓もしないし差別もしない。 そうすれば、好きにも嫌いにもなられずにすむって」 | ||
237 | それが、人間関係に対して 臆病で億劫になってしまった俺が辿り着いた、 自分の心を守る術のはずだったのに。 | ||||
238 | 美穂子 | Mihoko | 「でも先生、みんなに好かれてました」 | ||
239 | 小春 | Koharu | 「………」 | "........."
| |
240 | 美穂子 | Mihoko | 「誰にでも一生懸命で、誰にでも厳しくて、 そして、誰にでも優しかったから」 | ||
241 | 小春 | Koharu | 「………」 | "........."
| |
242 | 春希 | Haruki | 「だってそんなの当たり前だろ… 俺、仕事でやってるんだから」 | ||
243 | 美穂子 | Mihoko | 「大学生のバイトの塾講師って、 普通はあんなに一生懸命になったりしません。 …わたしの質問に、一時間以上もつきあってくれたり」 | ||
244 | 春希 | Haruki | 「教え方が上手な先生なら10分で教えられる。 それは俺が未熟だったからだよ」 | ||
245 | 美穂子 | Mihoko | 「でもわたしは嬉しかったんです。 あんなに一生懸命にわたしに向き合ってくれた人、 今まで小春ちゃんしかいなかったから」 | ||
246 | 小春 | Koharu | 「美穂子…」 | ||
247 | 『やっぱり勘違いじゃないのか? それ…』 | ||||
248 | 二度と酷いことは言わないって約束したから、 その、頭に浮かんだ正直な言葉を 口に乗せることはしなかったけど。 | ||||
249 | でも今の俺は、 その勿体なさ過ぎる俺への贔屓目を、 ありがたく受け取る訳にはいかなかった。 | ||||
250 | 春希 | Haruki | 「それでも、そんなに信頼してくれてた矢田さんに 酷いことをしたって事実は変わらない」 | ||
251 | 美穂子 | Mihoko | 「先生…」 | ||
252 | 春希 | Haruki | 「ごめん。本当にごめん。 謝って済む事じゃないのはわかってるけど…」 | ||
253 | 小春 | Koharu | 「み、美穂子! もういいよね? これで、もういいでしょ?」 | ||
254 | 美穂子 | Mihoko | 「小春ちゃん…?」 | ||
255 | 小春 | Koharu | 「北原先輩、すごく後悔してたんだよ。 美穂子と同じくらい、苦しんだんだよ。 わたし、ここ数日ずっと見てきたんだから!」 | ||
256 | 春希 | Haruki | 「いいよ杉浦。 お前は何も言わなくても…」 | ||
257 | 小春 | Koharu | 「だって、だって…っ」 | ||
258 | 美穂子 | Mihoko | 「………」 | "........."
| |
259 | 二人を前に、深々と頭を下げる俺を、 なぜか杉浦が必死で庇う。 | ||||
260 | もしかしたら、矢田さんにとっては、 彼女のその態度は逆効果かもしれないのに。 | ||||
261 | きっと杉浦も、 本当はそんなことわかってるはずなのに。 | ||||
262 | 美穂子 | Mihoko | 「…北原先生」 | ||
263 | 春希 | Haruki | 「うん?」 | ||
264 | 頭を下げ続ける俺と、 俺を庇い続ける杉浦を、 無言のまま、しばらく交互に眺め続けていた矢田さんは。 | ||||
265 | 美穂子 | Mihoko | 「わたしが知りたいのは、 三年前のことじゃありません」 | ||
266 | 小春 | Koharu | 「美穂子…?」 | ||
267 | 美穂子 | Mihoko | 「たった今… わたしに『ごめん』って謝ったあとの、 今の先輩の気持ちが知りたいんです」 | ||
268 | まだ塞がっていないはずの傷を抱えたまま、 また、俺に向かって踏み込んできた。 | ||||
269 | 春希 | Haruki | 「矢田さんのことはいい子だと思ってたよ。 いや、今だってそう思ってる」 | ||
270 | 学校を休むほどのショックを受けた繊細な心に、 どれほど強い鞭を打ったのか、俺にはわからない。 | ||||
271 | 春希 | Haruki | 「俺なんかの拙い授業を一生懸命理解してくれた。 『俺の成果』を実感させてくれた」 | ||
272 | 美穂子 | Mihoko | 「そ、そういうことじゃなくて、その… 一人の女の子として、わたしのこと…」 | ||
273 | 小春 | Koharu | 「み、美穂子…それは…」 | ||
274 | 春希 | Haruki | 「ごめん………俺には好きな人がいる」 | ||
275 | 美穂子 | Mihoko | 「………」 | "........."
| |
276 | 小春 | Koharu | 「………」 | "........."
| |
277 | けど、どうしてもこれだけは言う必要があった。 | ||||
278 | 春希 | Haruki | 「三年前から、ずっと傷つけてきたけど、 一週間前にふられたばかりだけど」 | ||
279 | だって、これを伝えるためだけに、 もう一度会おうって決心したんだから。 | ||||
280 | 春希 | Haruki | 「それでも大好きなひとがいるから」 | ||
281 | 謝りたかったなんて、とんだ詭弁。 | ||||
282 | 春希 | Haruki | 「だから、ごめんなさい… 君の気持ちを受け入れることはできません」 | ||
283 | 俺はただ… 彼女に別れを告げた『本当の理由』を 伝えたかっただけなんだ。 | ||||
284 | ……… | .........
| |||
285 | 美穂子 | Mihoko | 「………」 | "........."
| |
286 | 小春 | Koharu | 「………」 | "........."
| |
287 | 美穂子 | Mihoko | 「………っ」 | ||
288 | 小春 | Koharu | 「気が済んだ?」 | ||
289 | 美穂子 | Mihoko | 「っ…ぃ、ぅぅ」 | ||
290 | 小春 | Koharu | 「…なわけないか。 ごめんね、とどめ刺しちゃって」 | ||
291 | 美穂子 | Mihoko | 「あ…謝られたって仕方ないよ…っ。 こ…小春ちゃんのせいじゃないもん。 小春ちゃんは…全然関係ないもん」 | ||
292 | 小春 | Koharu | 「………うん」 | ||
293 | 美穂子 | Mihoko | 「う、ぅ…ぅぅ…っ」 | ||
294 | 小春 | Koharu | 「ね、美穂子… 今から、カラオケでも行こうか」 | ||
295 | 美穂子 | Mihoko | 「っ…む、無理… 歌えない、よぉ」 | ||
296 | 小春 | Koharu | 「歌わなくていいよ。 ただ、思いっきり泣いちゃおうよ」 | ||
297 | 美穂子 | Mihoko | 「ぃ、ぅぅ…ひくっ」 | ||
298 | 小春 | Koharu | 「今年中に辛いこと全部洗い流しちゃってさ… それで、冬休みが終わったら、一緒に学校行こう?」 | ||
299 | 美穂子 | Mihoko | 「ぅ、ぁ…小春、ちゃぁん」 | ||
300 | 小春 | Koharu | 「仲直りのしるしに、わたしがおごるから。 ね、だから…行こうよ美穂子」 | ||
301 | 美穂子 | Mihoko | 「ぅ、ぅ、ぅ…こ、小春ちゃん… ごめん、ごめんね、わたしぃ…っ」 | ||
302 | 小春 | Koharu | [F16「ついでにさ… ][F16わたしにも、少しだけ貰い泣き、させてよ」] |
Script Chart
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Introductory Chapter | ||||||
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1001 | 1008 | 1009 | 1010 | 1011 | 1012 | 1013 |
1002 | 1008_020 | 1009_020 | 1010_020 | 1011_020 | 1012_020 | |
1003 | 1008_030 | 1009_030 | 1010_030 | 1011_030 | 1012_030 | |
1004 | 1008_040 | 1010_040 | 1012_030_2 | |||
1005 | 1008_050 | 1010_050 | ||||
1006 | 1010_060 | |||||
1006_2 | 1010_070 | |||||
1007 |
Closing Chapter | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Common | Setsuna | Koharu | Chiaki | Mari | ||||||
2001 | 2011 | 2020 | 2027 | 2301 | 2309 | 2316 | 2401 | 2408 | 2501 | 2510 |
2002 | 2012 | 2021 | 2028 | 2302 | 2310 | 2317 | 2402 | 2409 | 2502 | 2511 |
2003 | 2013 | 2022 | 2029 | 2303 | 2311 | 2318 | 2403 | 2410 | 2503 | 2512 |
2004 | 2014 | 2023 | 2030 | 2304 | 2312 | 2319 | 2404 | 2411 | 2504 | 2513 |
2005 | 2015 | 2024 | 2031 | 2305 | 2313 | 2320 | 2405 | 2412 | 2505 | 2514 |
2006 | 2016 | 2025 | 2032 | 2306 | 2314 | 2321 | 2406 | 2413 | 2506 | 2515 |
2007 | 2017 | 2026 | 2033 | 2307 | 2315 | 2322 | 2407 | 2507 | 2516 | |
2008 | 2018 | 2308 | 2508 | 2517 | ||||||
2009 | 2019 | 2509 | ||||||||
2010 | ||||||||||
Setsuna | Koharu | Chiaki | Mari | |||||||
2031_2 | 2312_2 | 2401_2 | 2504_2 | 2511_2 | ||||||
2031_3 | 2313_2 | 2402_2 | 2507_2 | 2513_2 | ||||||
2031_4 | 2313_3 | 2402_3 |
Coda | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Common | Kazusa (True) | Setsuna (True) | Kazusa (Normal) | ||||||
3001 | 3008 | 3014_2 | 3020 | 3101 | 3107 | 3201 | 3207 | 3901 | 3907 |
3002 | 3009 | 3014_3 | 3021 | 3102 | 3108 | 3202 | 3208 | 3902 | 3908 |
3003 | 3010 | 3015 | 3022 | 3103 | 3109 | 3203 | 3209 | 3903 | 3909 |
3004 | 3011 | 3016 | 3023 | 3104 | 3110 | 3204 | 3210 | 3904 | |
3005 | 3012 | 3017 | 3024 | 3105 | 3111 | 3205 | 3211 | 3905 | |
3006 | 3013 | 3018 | 3106 | 3206 | 3906 | ||||
3007 | 3014 | 3019 | |||||||
Common | Setsuna (True) | Kazusa (Normal) | |||||||
3001_2 | 3210_2 | 3901_2 | 3906_2 | ||||||
3015_2 | 3902_2 | 3907_2 | |||||||
3902_3 | 3907_3 | ||||||||
3904_2 |
Mini After Story and Extra Episode | |||
---|---|---|---|
The Path Back to Happiness | The Path Forward to Happiness | Dear Mortal Enemy | |
6001 | 6101 | 4000 | 4005 |
6002 | 6102 | 4001 | 4006 |
6003 | 6103 | 4002 | 4007 |
6004 | 6104 | 4003 | 4008 |
6005 | 4004 | 4009 |
Novels | |||||
---|---|---|---|---|---|
The Snow Melts, And Until The Snow Falls | The Idol Who Forgot How to Sing | Twinkle Snow ~Reverie~ | After the Festival ~Setsuna's Thirty Minutes~ | His God, Her Savior | |
5000 | 5100 | 5200 | 5205 | 5300 | 5400 |
5001 | 5101 | 5201 | 5206 | 5301 | 5401 |
5002 | 5102 | 5202 | 5207 | 5302 | |
5003 | 5103 | 5203 | 5208 | 5303 | |
5004 | 5104 | 5204 | 5209 |
Short Stories | |||
---|---|---|---|
Princess Setsuna's Distress and Her Minister's Sinister Plan | Koharu Climate After the Passing of the Typhoon | This isn't the Season for White Album | Todokanai Koi, Todoita |
7000 | 7100 | 7200 | 7300 |