White Album 2/Script/2408
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Text
Speaker | Text | Comment | |||
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Line # | JP | EN | JP | EN | |
1 | 教授 | Professor | 「ふむ、そうか… 北原君の答案がないので不思議に思ってはいたが」 | ||
2 | 春希 | Haruki | 「すいません。 その頃はほとんど意識がなくて。 気がついたら病院のベッドでした」 | ||
3 | 教授 | Professor | 「いや、謝ることはないよ。むしろ気の毒だったね。 まぁ追試は認めるが、そうなると どれだけ成績が良くても優はちょっと…」 | ||
4 | 春希 | Haruki | 「いえ、もう一度チャンスをいただけるだけで。 じゃあ、日程の方は?」 | ||
5 | 教授 | Professor | 「そうだな、春休みに入ってしまうが、 来週の水曜日ということで」 | ||
6 | 春希 | Haruki | 「ありがとうございます。 本当に、感謝してます」 | ||
7 | 教授 | Professor | 「いや、お大事に。 まだ寒いからね」 | ||
8 | ……… | .........
| |||
9 | 春希 | Haruki | 「ふぅ…」 | ||
10 | 武也 | Takeya | 「どうだった?」 | ||
11 | 春希 | Haruki | 「引き分け… 単位はやるが優はやらんとさ」 | ||
12 | 長かった期末試験も終わり、 未だに冬真っ盛りの気候を先回り、 学生たちの頭だけが一気に春めいてきた二月の中旬。 | ||||
13 | けれど今回だけは、 試験の終わった今日からが、俺の本当の戦いだった。 | ||||
14 | 武也 | Takeya | 「で、今までの成績は?」 | ||
15 | 春希 | Haruki | 「3勝2敗2引き分け。 二つ取りこぼしたな…」 | ||
16 | 先週の診断書を手に教授室を巡り歩き、 落とした科目のリトライをねだる辛く短い旅。 | ||||
17 | 武也 | Takeya | 「いつもなら全部優のはずなのに。 今回はツイてなかったな」 | ||
18 | 春希 | Haruki | 「成績は別にどうでもいいんだけどな。 前期で卒業に必要な単位はもう揃えたし」 | ||
19 | 武也 | Takeya | 「…そうなの?」 | ||
20 | 春希 | Haruki | 「単位が欲しかったんじゃなくて、 俺が欲しかったのは知識で、 それはもう試験を待たずに手に入れてるし」 | ||
21 | 武也 | Takeya | 「じゃあ、何で追試受けるんだ?」 | ||
22 | 春希 | Haruki | 「試験って普通受けたいだろ? 自分の成果が数字になって表れるんだぞ?」 | ||
23 | 武也 | Takeya | 「………お前、ほんと学業方面では頭が下がるよ」 | ||
24 | 春希 | Haruki | 「…うるせ」 | ||
25 | 武也の態度が言外に 『今や私生活では俺といい勝負だけどな』 って呟いてた。 | ||||
26 | 武也 | Takeya | 「さってっと…やぁっと春休みだなぁ」 | ||
27 | 春希 | Haruki | 「俺の春休みはもう少し先」 | ||
28 | 峰城大は、今週末をもって本年度の課程を修了し、 再来週からは、とうとう[R新入生相手の商売^にゅうがくしけん]が始まる。 | ||||
29 | 武也 | Takeya | 「な、春希。 休み入ったらスキー行かね? スノボでもいいけどさ」 | ||
30 | 春希 | Haruki | 「何だよ急に。 この前合コンするって言ってた看護師のコたちと 約束でもしたのか?」 | ||
31 | 武也 | Takeya | 「いやな、ナースのコはやべぇぞ… 忙しいわ時間が不規則だわでストレスが溜まってるから 性欲がとんでもないことに」 | ||
32 | 春希 | Haruki | 「やってきたような事実を言う奴だな…」 | ||
33 | 武也 | Takeya | 「…と、まぁ、そういうめくるめく体験はともかく、 お前、そういう誘いだったら乗るか?」 | ||
34 | 春希 | Haruki | 「いや、俺は…」 | ||
35 | 武也 | Takeya | 「って言うに決まってるからそんなイベントじゃねぇよ。 四人で、レンタカーでも借りてさ」 | ||
36 | 春希 | Haruki | 「…四人?」 | ||
37 | 武也 | Takeya | 「わざとしらばっくれてるだろ? 俺と、お前と、依緒と…」 | ||
38 | 春希 | Haruki | 「日本語おかしいぞ。 しらばっくれてる時はわざとに決まってる」 | ||
39 | 武也 | Takeya | 「雪菜ちゃんと、さ」 | ||
40 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
41 | せっかく上手くはぐらかしたのに、 わざと空気読まない奴… | ||||
42 | 武也 | Takeya | 「ま、趣味がおばさんくさい美少女に合わせて、 温泉でのんびりするってのでもいいけどさ」 | ||
43 | 春希 | Haruki | 「いや、それは…」 | ||
44 | 多分、彼女は承諾しないし、 俺も、絶対に参加しない。 | ||||
45 | そこは、聖地だから。 | ||||
46 | 武也 | Takeya | 「…なぁ、春希。 そろそろ潮時じゃね?」 | ||
47 | 春希 | Haruki | 「…何の」 | ||
48 | 武也 | Takeya | 「ほんのちょっとの気の迷いじゃないか。 彼女だってわかってくれてる」 | ||
49 | 春希 | Haruki | 「だから、何の」 | ||
50 | 武也 | Takeya | 「単なる浮気なんだろ? もう、あれっきりなんだろ?」 | ||
51 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
52 | 武也 | Takeya | 「見舞い、来てくれたんだろ? でもって、あいつは来なかったんだろ? やっぱり」 | ||
53 | 春希 | Haruki | 「…お前、さっきからすっげー恣意的な誘導してるよな」 | ||
54 | 武也 | Takeya | 「一般常識に照らし合わせて意見を述べてると言ってくれ。 それが俺らしくないという批判なら甘んじて受ける」 | ||
55 | 春希 | Haruki | 「武也…」 | ||
56 | 武也 | Takeya | 「雪菜ちゃんほどいい娘はいないし、 瀬能ほど意味不明な女もいねえよ」 | ||
57 | 武也の言うことは、正しさだけで言えば完璧だ。 | ||||
58 | でも、正しいだけで物事を決められたら、 人は誰も、こんなに悩んだりしない。 | ||||
59 | 武也 | Takeya | 「春希、あいつだけは絶対にやめとけ。 あんだけ酷い目に遭ったのに、まだ懲りないのか?」 | ||
60 | …って、俺が女のことで説教するたびに、 目の前の友がいつも呟いてたっけ。 | ||||
61 | 武也 | Takeya | 「付属の頃からああなんだよ。 あの顔であの演技力だろ? 何より同じ演劇部の男がさ…」 | ||
62 | 春希 | Haruki | 「あいつに…惹かれるのか?」 | ||
63 | 武也 | Takeya | 「舞台でちょっと愛を囁かれただけで、 現実との区別がつかなくなって、コロっとな」 | ||
64 | 春希 | Haruki | 「ああ…」 | ||
65 | 俺みたいな奴のことか。 | ||||
66 | 武也 | Takeya | 「けど舞台を降りた後の瀬能は鬼でさ、 相手の勘違いを思いっきり笑い飛ばす訳だ。 …あの演技力でな」 | ||
67 | 春希 | Haruki | 「………ああ」 | ||
68 | やっぱり… 俺みたいな奴のことだった。 | ||||
69 | 武也 | Takeya | 「おかげで演劇部からは男子部員がいなくなって、 三年の時はとうとう一人芝居になっちまった」 | ||
70 | 春希 | Haruki | 「『雨月山の鬼』…」 | ||
71 | 武也 | Takeya | 「…ま、役者が瀬能しかいなかったせいで、 かえって完成度が上がったのは皮肉だけど」 | ||
72 | 春希 | Haruki | 「詳しいんだな、武也」 | ||
73 | 武也 | Takeya | 「俺も被害者の一人なの。 二年の時、あいつ目当てで演劇部に体験入部してな。 …一週間で追い出されたけど」 | ||
74 | 春希 | Haruki | 「………もの凄く納得した」 | ||
75 | 武也 | Takeya | 「あそこまでエグい振り方する奴には、 いまだかつてお目に掛かったことがないぞ。 …おかげで三年で同じクラスになった時は気まずくて」 | ||
76 | 春希 | Haruki | 「自業自得だろ」 | ||
77 | ほんと、自業自得だ。 誰も彼も。 | ||||
78 | 武也 | Takeya | 「ところがあの女はそんなことカケラも覚えてなかった。 …そういう奴だよ」 | ||
79 | 春希 | Haruki | 「そっか」 | ||
80 | 武也 | Takeya | 「あいつにとって、男なんて記号でしかない。 トイレの紳士マーク程度の認識なんだよ」 | ||
81 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
82 | 心の中がそんなに乾いてるくせに、 あんな完璧な“友達のふりした女”が作れるなんて。 | ||||
83 | 何がどんだけ欠けたらそんな天才が生まれるんだ… | ||||
84 | 武也 | Takeya | 「だから春希… 悪いこと言わない。あの女だけは…」 | ||
85 | 春希 | Haruki | 「わかってる、わかってるって。 そのこともちゃんと考えて結論出す…」 | ||
86 | 武也 | Takeya | 「もうあいつと話すなよ? もの凄く演技上手いから、 またコロっと騙されるのがオチだ」 | ||
87 | 春希 | Haruki | 「だから、わかってるってば」 | ||
88 | 本当にわかってるんだって。 …それだけは、受け入れられないってことは。 | ||||
89 | もう一度、あいつに会わなくちゃならないってことは。 | ||||
90 | 直接、あいつの言葉を聞いて、 直接、俺の言葉を伝えないといけないってことは。 | ||||
91 | 別れを告げるにしても、恨み言をこぼすにしても、 泣いてすがりつくにしても、そして… | ||||
92 | 笑われても、馬鹿にされても、からかわれても… | ||||
93 | 俺の今の気持ちを、生のまま全部ぶつけて、 俺たちの決着をつけないと、いけないってことは。 | ||||
94 | 武也 | Takeya | 「どれだけ念押ししても心配なんだよな… お前、どこ飛んでくかわからない女に弱いから」 | ||
95 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
96 | こいつ、やっぱり嫌な親友だ。 | ||||
97 | 上原 | Uehara | 「よし、ちょっと休憩入れよ。 4時から再開な~」 | ||
98 | 千晶 | Chiaki | 「…っ」 | ||
99 | 上原 | Uehara | 「………」 | "........."
| |
100 | 吉田 | Yoshida | 「ふぅ~」 | ||
101 | 上原 | Uehara | 「良くなったじゃん吉田!」 | ||
102 | 吉田 | Yoshida | 「くっそ~… 引きずられてる。あの人に」 | ||
103 | 上原 | Uehara | 「姫がノってくると、皆アレにやられるよな」 | ||
104 | 吉田 | Yoshida | 「ほんと、演技始めると別人だあの人。 ぐいぐい引き込まれる」 | ||
105 | 上原 | Uehara | 「舞台の時はそれでいいけど、 稽古終わったらちゃんと切り替えろよ?」 | ||
106 | 吉田 | Yoshida | 「頭ではわかってるつもりですよ…」 | ||
107 | 上原 | Uehara | 「稽古中の姫の態度に勘違いして プライベートで突っ込んでった奴らがどうなったか… 知らない訳じゃないだろ?」 | ||
108 | 吉田 | Yoshida | 「で、その姫さんはどこに行ったんです? 最後の方、演技に身体がついてきてない みたいだったけど…」 | ||
109 | 上原 | Uehara | 「…多分、今頃トイレで吐いてる」 | ||
110 | 吉田 | Yoshida | 「……大丈夫なんですか?」 | ||
111 | 上原 | Uehara | 「ま、いつものことだ。 稽古始まると限界考えないからな」 | ||
112 | 吉田 | Yoshida | 「あれで夜中はホンの直しもやってんでしょ? 寝てんの?」 | ||
113 | 上原 | Uehara | 「初日の一月前を切ってから寝てる姫を見たことはないな。 ここ三年間でただの一度も」 | ||
114 | 吉田 | Yoshida | 「…バケモノ」 | ||
115 | 上原 | Uehara | 「…舞台がはねた後の一月くらいは、 起きてる姫を見たことはないけどな」 | ||
116 | 吉田 | Yoshida | 「………」 | "........."
| |
117 | 上原 | Uehara | 「ま、いつものこととは言っても、 ちゃんと万全の体制は敷いてるさ」 | ||
118 | 吉田 | Yoshida | 「どんな?」 | ||
119 | 上原 | Uehara | 「お~い、田中、井手。 今日、吉田と三人で居残りな」 | ||
120 | 女性劇団員1 | Female Troupe Member 1 | 「本当にいいんですか? 一応、座長の指示通りに読み込んできましたけど…」 | ||
121 | 女性劇団員2 | Female Troupe Member 2 | 「あ、わたしバッチリです。 とは言っても上がってる第二幕までですけど」 | ||
122 | 上原 | Uehara | 「それでいいよ。 今日はちょっとした顔合わせだけだから」 | ||
123 | 吉田 | Yoshida | 「…どゆことです?」 | ||
124 | 上原 | Uehara | 「ダブルヒロインの、それぞれ代役だ。 姫には内緒だぞ?」 | ||
125 | 吉田 | Yoshida | 「…あんたたち一枚岩だと思ってたけどな」 | ||
126 | 上原 | Uehara | 「ウァトスは、確かに姫あってのものだけど、 姫と心中するつもりまではないよ」 | ||
127 | 千晶 | Chiaki | 「第三幕 第四場、和希の部屋。 部屋の壁にもたれて、窓の外を見上げる和希」 | ||
128 | 千晶 | Chiaki | 「チャイムの音。 反応しない和希。 二度、三度とチャイム鳴り、ドア開く」 | ||
129 | 千晶 | Chiaki | 「雪音、入ってくる。 和希、まだ反応しない」 | ||
130 | 千晶 | Chiaki | 「『和希くん』 振り向く和希。 しかし、すぐにもう一度窓の外に顔を向ける」 | ||
131 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
132 | 千晶 | Chiaki | 「『榛名のところ、行こうよ…』 和希、まだ無反応」 | ||
133 | 千晶 | Chiaki | 「………………」 | ||
134 | 千晶 | Chiaki | 「『二度と会えなくなるかもしれないんだよ? それでも、いいの…?』」 | ||
135 | 千晶 | Chiaki | 「………………………」 | ||
136 | 千晶 | Chiaki | 「違う」 | ||
137 | 千晶 | Chiaki | 「場面も会話も間違ってないんだ… けどなんでだろ…しっくり来ない」 | ||
138 | 千晶 | Chiaki | 「雪音には、どんな葛藤があったんだ? 和希に榛名のことを伝えるのに迷いはなかった? どうして和希の背中を押した?」 | ||
139 | 千晶 | Chiaki | 「和希の裏切りを許したんだろうか? でもそうなると、三年後の態度に繋がらない。 どうして抱え込む?」 | ||
140 | 千晶 | Chiaki | 「三人でいたかったというのは、雪音の本心? でも彼女は、榛名の身代わりを受け入れられなかった。 …矛盾がありすぎる」 | ||
141 | 千晶 | Chiaki | 「和希を愛してるのか、それとも自分を愛してるのか… 優しいのか、気が弱いのか… それとも相手を想う気持ちが弱いのか…」 | ||
142 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
143 | 千晶 | Chiaki | 「~っ!」 | ||
144 | 千晶 | Chiaki | 「わかんなくなっちゃったよ…この偽善者」 | ||
145 | 千晶 | Chiaki | 「あんたさぁ… たかが男のことで、 どうしてこんなにめんどくさく考えるんだ…?」 | ||
146 | 春希 | Haruki | 「取り込み中みたいだな…」 | ||
147 | 千晶 | Chiaki | 「………や、和希。 じゃないや、春希」 | ||
148 | 相手の方が驚くに違いないと思ってた俺の予測は、 出だしからもろくも崩れ去った。 | ||||
149 | …びっくりした。 | ||||
150 | 春希 | Haruki | 「随分遅くまで頑張るんだな。 そろそろ終電やばくないか?」 | ||
151 | 追試の後、部室棟を一つ一つ回って、 やっと見つけた『劇団ウァトス』の小さな看板。 | ||||
152 | ぽつんと一つだけ灯りのついた部室の前で、 もし千晶がいたらどう切り出そうかって、 実は二十分近くも逡巡してた。 | ||||
153 | 千晶 | Chiaki | 「今さら帰るわけないじゃん。 ここはあたしの私室みたいなもんだよ」 | ||
154 | 春希 | Haruki | 「そうなのか?」 | ||
155 | 乱暴したことを謝るべきか、 それとも、この前の続きで、 ずっと嘘をついてたことを強い口調で責めるべきか… | ||||
156 | 千晶 | Chiaki | 「あたしが籠もってるときは絶対に誰も入ってこないよ。 何しろあたしの機嫌を損ねたら、 ここではやってけないからね」 | ||
157 | 春希 | Haruki | 「お前なぁ…」 | ||
158 | 結局、冷静に、丁寧に話をしようということで落ち着き、 やっと決心をつけてドアノブに手を掛けた瞬間、 あろうことか折りたたみ椅子が飛んでくるとは… | ||||
159 | 千晶 | Chiaki | 「で、どしたの春希? ひょっとして陣中見舞いかな?」 | ||
160 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
161 | 結局、日を置いても千晶は何も変わってなかった。 | ||||
162 | 女優・瀬之内晶の本性を晒した日と同じように、 罪悪感も気まずさもなく、 いけしゃあしゃあと、俺に相対する。 | ||||
163 | 俺には、これが演技なのか素なのか、 やっぱり見分ける観察力なんかない。 | ||||
164 | 春希 | Haruki | 「この前は悪かった。 その、俺、少し冷静さを失ってて…痛かったか?」 | ||
165 | だったら、こいつとまともな会話をするためには、 この前のことも含め、俺の方が折れるしかない。 | ||||
166 | 千晶の、本当の言葉を引き出すためには、 こいつがどれだけふざけても、 俺だけでも真剣に向き合わなくちゃいけない。 | ||||
167 | 千晶 | Chiaki | 「…長い話になるかな?」 | ||
168 | 春希 | Haruki | 「それは…千晶次第だよ」 | ||
169 | しばらく俺の目を覗き込んでいた千晶は、 軽くため息をつくと、ふっと全身の力を抜いた。 | ||||
170 | 千晶 | Chiaki | 「だったら、楽な格好させてもらっていいかな? 今日も一日中稽古だったから、だるくって」 | ||
171 | 春希 | Haruki | 「ああ、もちろん」 | ||
172 | やっと俺の本気を感じ取ったんだろうか。 軽い笑みは残したままだったけど、 それでも身体ごと、俺の正面を向いてくれた。 | ||||
173 | そして… | ||||
174 | 千晶 | Chiaki | 「なら春希、そこ座って」 | ||
175 | 春希 | Haruki | 「いや、別に俺は立ったままでも…」 | ||
176 | 千晶 | Chiaki | 「だって… 楽な格好、させてくれるんでしょ?」 | ||
177 | 春希 | Haruki | 「は?」 | ||
178 | ……… | .........
| |||
179 | どうして、こうなるんだろう… | ||||
180 | 千晶 | Chiaki | 「ん~、久しぶりだぁこの感触。気持ちい~! 春希の匂いだぁ」 | ||
181 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
182 | 俺がほんの少し甘い顔をした瞬間を、 千晶は見逃さなかった… | ||||
183 | ますますいつも通り、俺の膝の上で、 俺の部屋にいた時みたいにくつろぎ始める。 | ||||
184 | 千晶 | Chiaki | 「ちょうど煮詰まってイライラしてたんだよね~。 あたしのピンチに颯爽と駆けつけてくれるなんて、 やっぱ春希って最高だ~、愛してる~」 | ||
185 | 春希 | Haruki | 「うるせえよ…」 | ||
186 | 話をする前から馬鹿馬鹿しくなってきた。 ボロ雑巾のように捨てた男にすることじゃないだろ。 | ||||
187 | なに考えてんだよ…じゃなくて、 少しはものを考えろよ。 | ||||
188 | 千晶 | Chiaki | 「そんなに冷たい言い方しなくてもいいじゃん。 …何度も抱きあった仲じゃないかぁ」 | ||
189 | その、何とやらな仲をぶっ壊したのは、 どこのどいつだよ… | ||||
190 | 千晶 | Chiaki | 「久しぶりに春希の顔見て、春希の体に触れたらさぁ、 こう、じわじわ~っと生理的欲求がもたげてきたよ」 | ||
191 | 春希 | Haruki | 「知るか」 | ||
192 | 千晶 | Chiaki | 「あぁ、おなかすいた、眠い…抱かれたい~」 | ||
193 | 春希 | Haruki | 「いい加減にしろ」 | ||
194 | 千晶 | Chiaki | 「てっ!? いったぁぁ~。 も~、なにすんのよ女優の顔に~」 | ||
195 | 千晶が額を押さえつつ涙目で俺を見上げる。 …とても女優などと言えないだらけきった表情のまま。 | ||||
196 | 春希 | Haruki | 「傷なんかつけてない。 それよりもお前、本当に人の話聞く気あるのか?」 | ||
197 | 千晶 | Chiaki | 「だってさ~。 どれも三日くらい前からしてないんだもん」 | ||
198 | 春希 | Haruki | 「せめて食って寝るくらいはしろ。 研究室ではどっちも旺盛なくせに」 | ||
199 | 千晶 | Chiaki | 「あれは冬眠の時期なの~」 | ||
200 | わざとはぐらかしてるのか、 それとも“和泉千晶”を完璧に再現してるのか… | ||||
201 | 春希 | Haruki | 「…チョコなら鞄の中にあるけど?」 | ||
202 | 千晶 | Chiaki | 「あ~ん♪」 | ||
203 | 春希 | Haruki | 「今出すから待ってろ。 大口開けてんな馬鹿っぽい」 | ||
204 | 今のこいつは、あの一月前の、 怠惰でちょっとテンション高いのが俺によく馴染む、 友達と恋人を行ったり来たりしてくれる、あいつだった。 | ||||
205 | ……… | .........
| |||
206 | 千晶 | Chiaki | 「ん、ん~…ちゅぷ、んぅ」 | ||
207 | 春希 | Haruki | 「…美味いか?」 | ||
208 | 千晶 | Chiaki | 「甘~い♪」 | ||
209 | 春希 | Haruki | 「…だろうな」 | ||
210 | 何しろ、グッディーズ南末次店のホールスタッフの 感謝と真心と義理が詰まってるはずだから。 | ||||
211 | 千晶 | Chiaki | 「春希~、おかわりおかわり~」 | ||
212 | 春希 | Haruki | 「雛鳥の演技はやめろ。 …本物と区別がつかん」 | ||
213 | こいつ、きっと全然気づいてないよな。 …今日が2月14日だなんてこと。 | ||||
214 | 千晶 | Chiaki | 「ん、ん…ん~っ、 は、あむ…んぷ…んふふ」 | ||
215 | 春希 | Haruki | 「指ごと舐めるな」 | ||
216 | 心の中で贈り主たちへの感謝と謝罪を唱えつつ、 解けたチョコレートと千晶の唾液ごと、 俺も一粒口に放り込む。 | ||||
217 | 確かにこいつの言う通り、 過剰なまでの甘さが喉に絡みつき、 全身に行き渡っていく。 | ||||
218 | 千晶 | Chiaki | 「もっと」 | ||
219 | 春希 | Haruki | 「少しは遠慮しろ」 | ||
220 | 千晶 | Chiaki | 「ん~、はむっ。 はぅぅ…あ~染みてく~」 | ||
221 | 春希 | Haruki | 「甘いもの摂らないと頭働かないだろ。 そんな栄養失調の状態で脚本とか書けるのかよ?」 | ||
222 | 千晶 | Chiaki | 「そうなんだよねぇ… あるキャラクターがどうしても掴めなくて、 な~んか煮詰まっちゃっててさぁ」 | ||
223 | 春希 | Haruki | 「だからそういう時は、 ゆっくり寝て、何もしないで、飯食って…」 | ||
224 | 千晶 | Chiaki | 「ね、春希。 あんたから見て 小木曽雪菜ってどういう女なのかな?」 | ||
225 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
226 | 少しでも甘い顔見せたらこれだ… | ||||
227 | 人の都合も気持ちも全く考えない、 デリカシーという言葉を和訳すらできない頭の構造。 | ||||
228 | 千晶 | Chiaki | 「春希は、彼女のこと理解してる? あの複雑な性格の全部をさぁ」 | ||
229 | 春希 | Haruki | 「それを理解してたら、 俺はお前とああいう関係になんかならなかった」 | ||
230 | 千晶 | Chiaki | 「あはは…真理だ」 | ||
231 | それを俺に聞くのかよ… | ||||
232 | 千晶 | Chiaki | 「明るくて、優しくて、華やかな学園のアイドル。 控えめで、家庭的で、一途な日陰の女の子。 強がりで、強情で、一人で溜め込む厄介な女」 | ||
233 | 春希 | Haruki | 「お前…」 | ||
234 | しかも、そこまで掴んでて… | ||||
235 | 千晶 | Chiaki | 「どういう時に、どの彼女が出てくるのか予測もつかない。 打算的であるようで、自滅型でもあるようだし… あ~、ややこし~」 | ||
236 | それでも飽きたらず、 きっと、本人にもわからない心の奥まで 覗き込もうとするのかよ。 | ||||
237 | 千晶 | Chiaki | 「ほんっと、悩ませてくれるよ彼女。 でも、久々にやりがいのある役だよね」 | ||
238 | 俺のときも、こうやって深くまで覗き込んでたのか。 | ||||
239 | 俺が力いっぱい抱きしめてるときも、こいつは喘ぎながら、 覚めた目で俺の吐息の意味まで推し量ってたんだろうか。 | ||||
240 | 千晶 | Chiaki | 「ね、春希」 | ||
241 | 春希 | Haruki | 「え…」 | ||
242 | 千晶 | Chiaki | 「あたし、本物の小木曽雪菜になってみせるよ。 彼女の本当の気持ちをあんたに伝えてあげるからね?」 | ||
243 | 春希 | Haruki | 「っ…」 | ||
244 | 寒気がした。 | ||||
245 | 俺の膝の上で、幸せそうに目を閉じて、 遠慮なく甘えてくる女に、 どうしようもなくやるせない感情がわき起こる。 | ||||
246 | 武也が以前、こいつを評して言った 『宇宙人』という表現が、 具体的なビジュアルイメージをかたどっていく。 | ||||
247 | 春希 | Haruki | 「千晶…」 | ||
248 | 千晶 | Chiaki | 「ん~?」 | ||
249 | 春希 | Haruki | 「そういうこと、考えなしに言うなよ…」 | ||
250 | 千晶 | Chiaki | 「めちゃくちゃ考えてるって~。 もう頭の中パンクしそうなくらい、 彼女のことで一杯なんだから~」 | ||
251 | 春希 | Haruki | 「そういう意味じゃない。 …って、もちろんわざとはぐらかしてるんだよな?」 | ||
252 | 千晶 | Chiaki | 「…ん~」 | ||
253 | 春希 | Haruki | 「そこまで人の気持ちが読めるのに、 どうして人の気持ちが思いやれないんだよ…」 | ||
254 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
255 | 春希 | Haruki | 「相手が辛い、悲しいってわかったら、 少しは自分も辛い、悲しいって感じないのか? どうしたらそんな人間になるんだよ…」 | ||
256 | 千晶 | Chiaki | 「別に、理由なんかない。 生まれつきこんなもんだよ?」 | ||
257 | 春希 | Haruki | 「お前、怖いよ。 …虚しいよ」 | ||
258 | 千晶 | Chiaki | 「あ、そ」 | ||
259 | 春希 | Haruki | 「俺には、雪菜よりお前の方が理解できないよ。 何がしたいんだよ一体」 | ||
260 | 千晶 | Chiaki | 「なんなんだろねぇ」 | ||
261 | 俺がここまで言ってしまっても、 千晶はまだ、俺の膝の上で平気な顔をしてる。 | ||||
262 | 春希 | Haruki | 「自分を一番犠牲にして、 その結果人を不幸にして。 …たかが芝居のために」 | ||
263 | 千晶 | Chiaki | 「“たかが”はやめようよ…」 | ||
264 | 春希 | Haruki | 「“たかが春希”と思ってるくせに」 | ||
265 | 千晶 | Chiaki | 「あたし、これでも男に関しては、 春希しか見えてないんだけどなぁ」 | ||
266 | 春希 | Haruki | 「実験動物としてな。 三年間、メス持ってわくわくしてたんだろ」 | ||
267 | 千晶 | Chiaki | 「そう思うなら思えばいい。 実験動物に欲情して悪いなんて法律はないもんね」 | ||
268 | 春希 | Haruki | 「お前、人として最低だよ」 | ||
269 | 千晶 | Chiaki | 「どうせ人間じゃないもん。 役者だも~ん」 | ||
270 | 春希 | Haruki | 「そんなことばっかり言っててさ… お前が何も変わらないまま、もし芝居を失ったら、 この先どうやって生きてくつもりだよ」 | ||
271 | 千晶 | Chiaki | 「考えたこともないし考える気もないし、 考える必要もない。 あたしの才能、なめんなよ?」 | ||
272 | 春希 | Haruki | 「それでも俺は… 才能も何もない普通の人間の俺は、 普通じゃないお前のことが心配でたまらない!」 | ||
273 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
274 | そうやって飄々と演技を続ける千晶に、俺は… | ||||
275 | 雪菜に対するものとも、かずさに対するものとも違う、 今までにない、異質の感情を抱いてしまう。 | ||||
276 | 恐怖と、怒りと、焦燥と… そして自分勝手な憐憫を。 | ||||
277 | 千晶 | Chiaki | 「…今の、もらった。 “和希”の台詞として使わせてもらうね」 | ||
278 | 春希 | Haruki | 「千晶…っ」 | ||
279 | たとえ届かないってわかってても、 誰にでもお節介な俺を、今さらやめるわけにいかない。 | ||||
280 | 春希 | Haruki | 「誰もが成功する道じゃないだろ。 それどころか、一握りの人間しか上に行けない世界だろ」 | ||
281 | 千晶 | Chiaki | 「あたしならその一握りになれるって」 | ||
282 | 春希 | Haruki | 「成功したら何もかも上手く行く訳じゃないだろ。 役者と人間、両方持ってて損なんかしないだろ」 | ||
283 | 千晶 | Chiaki | 「守りに入る人生なんて嫌いだ。 もしそれで破滅したら、その時はその時」 | ||
284 | 春希 | Haruki | 「俺はお前が破滅するところなんか見たくない」 | ||
285 | 千晶 | Chiaki | 「…どうして、あたしが破滅するところを見るの? あたしの数年先にいるつもりなの? 春希」 | ||
286 | 春希 | Haruki | 「本当は嫌だけど… でも、お前がそんなんじゃ、 どうしようもないじゃないか」 | ||
287 | 千晶 | Chiaki | 「…なんだかなぁ」 | ||
288 | 春希 | Haruki | 「もしお前が道を踏み外したら… 今までのお前じゃ通用しない、 新しい道を探さなくちゃならなくなったとしたら…」 | ||
289 | 千晶 | Chiaki | 「だからさ、あたしは…」 | ||
290 | 春希 | Haruki | 「誰がお前を新しい道に導いてやれるんだ? 別の人生、歩ませてやれるんだよ?」 | ||
291 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
292 | 千晶までもが、呆れてる。 | ||||
293 | 今まで、俺のお節介を当然のように享受して、 それどころか、この俺を呆れさせるほどの 世話焼かれだった奴さえ退かせるほどの干渉に。 | ||||
294 | やっぱ馬鹿なのかな、俺。 | ||||
295 | 千晶 | Chiaki | 「春希って、ものすごい悲観主義者だよね」 | ||
296 | 春希 | Haruki | 「つい最近、 ものすごく悲観的になるような体験をしたんだよ」 | ||
297 | 千晶 | Chiaki | 「飼い猫だと思ってた女に思いっきり引っ掻かれたもんね」 | ||
298 | 春希 | Haruki | 「それでも、自分を引っ掻いた猫が心配なんだよ。 …だって、ずっと可愛がってきたんだぞ?」 | ||
299 | 千晶 | Chiaki | 「………にゃあん」 | ||
300 | 春希 | Haruki | 「やめろ…馬鹿」 | ||
301 | けど、千晶の反応は、 何ともこいつらしく、やっぱり意味不明で。 | ||||
302 | 俺の膝に顔を埋めて、頬を擦りつけ、 ぺろぺろと舌を這わせる。 | ||||
303 | 千晶 | Chiaki | 「みぃ、みぃぃ…嬉しい、大好き。 ご主人様に愛されて、あたしは幸せだにゃぁ」 | ||
304 | 雛鳥から、今度は子猫へ。 | ||||
305 | 人から動物から、とにかく自分以外を演じないと 本音を話せないんだろうか、こいつ… | ||||
306 | 春希 | Haruki | 「ふざけるな馬鹿野郎。 俺のこと散々弄んでズタズタにしやがって。 でも………救ってくれてありがとな」 | ||
307 | だったら俺は、猫に話しかけるしかない。 | ||||
308 | 恨み言も、未練も、感謝も… 相手に伝わらないと信じて話しかけるしかない。 | ||||
309 | 千晶 | Chiaki | 「春希にそんな嬉しいこと言われたら… なんだか欲情してきたにゃぁ」 | ||
310 | 春希 | Haruki | 「猫が人語を解するな」 | ||
311 | なんて、俺が決めたルールなんか、 律儀に守る奴じゃないけれど。 | ||||
312 | 千晶 | Chiaki | 「ね、春希…交尾しよっか? 獣みたいに、すっごいやらしく交わろっか?」 | ||
313 | 春希 | Haruki | 「猫が人を誘うな、馬鹿」 | ||
314 | 千晶 | Chiaki | 「じゃ先っぽだけ。 ほんの少し入れるだけでいいから…」 | ||
315 | 春希 | Haruki | 「それは男の台詞だろ」 | ||
316 | 千晶 | Chiaki | 「ちょっとメス猫の本能に 忠実になってみただけじゃないかぁ…」 | ||
317 | どれだけ人が真剣に向かい合っても、 まるっきり誠意を返す奴じゃないけれど。 | ||||
318 | 千晶 | Chiaki | 「あたし最近さぁ、食欲がない代わりに性欲が凄くてさ、 ホン書きに詰まると、ついついしちゃうんだよね。 …激しいオナニー」 | ||
319 | 春希 | Haruki | 「知るか、そんなこと…」 | ||
320 | 千晶 | Chiaki | 「じゃあ、今から知る? あたしのオナニー、見てみる?」 | ||
321 | 春希 | Haruki | 「無意味だ… 俺、もうお前相手になんか立たないから」 | ||
322 | 千晶 | Chiaki | 「あらら、トラウマっちゃった?」 | ||
323 | 春希 | Haruki | 「どうしていつもそうやって茶化すんだよ… 真面目な話しに来たんだぞ、俺」 | ||
324 | 千晶 | Chiaki | 「だって…」 | ||
325 | 春希 | Haruki | 「そんなんじゃ俺、いつまで経っても、 お前を許せない!」 | ||
326 | 千晶 | Chiaki | 「っ…」 | ||
327 | 春希 | Haruki | 「いつまで経っても お前を見放せないじゃないか…」 | ||
328 | 千晶 | Chiaki | 「………………………うみゅぅ…やっぱ欲情したぁ」 | ||
329 | 春希 | Haruki | 「だから、ふざけんな…っ」 | ||
330 | 一人テンパる俺をよそに、 やっぱり千晶はふざけたままだった。 | ||||
331 | 俺の膝に、ぴったりと抱きつき、荒い息を吐き、 全身を震わせ、そしていつの間にか寝息を立て… 必死に懐いてくる子猫を完璧に演じ切った。 | ||||
332 | で、そんな投げっぱなしの猫芝居で逃げられた俺は… | ||||
333 | 結局、千晶の枕という屈辱的な役目を投げ出せず、 寝息を立てる捨て猫の頭をずっと撫でていた。 | ||||
334 | 本当に何やってんだろうな、俺。 俺のことを、これ以上ないくらい裏切った奴に… | ||||
335 | あそこまでコケにされたくせに、 どうしてまだ、こんな想いを抱いてしまうんだろうな… |
Script Chart
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Introductory Chapter | ||||||
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1001 | 1008 | 1009 | 1010 | 1011 | 1012 | 1013 |
1002 | 1008_020 | 1009_020 | 1010_020 | 1011_020 | 1012_020 | |
1003 | 1008_030 | 1009_030 | 1010_030 | 1011_030 | 1012_030 | |
1004 | 1008_040 | 1010_040 | 1012_030_2 | |||
1005 | 1008_050 | 1010_050 | ||||
1006 | 1010_060 | |||||
1006_2 | 1010_070 | |||||
1007 |
Closing Chapter | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Common | Setsuna | Koharu | Chiaki | Mari | ||||||
2001 | 2011 | 2020 | 2027 | 2301 | 2309 | 2316 | 2401 | 2408 | 2501 | 2510 |
2002 | 2012 | 2021 | 2028 | 2302 | 2310 | 2317 | 2402 | 2409 | 2502 | 2511 |
2003 | 2013 | 2022 | 2029 | 2303 | 2311 | 2318 | 2403 | 2410 | 2503 | 2512 |
2004 | 2014 | 2023 | 2030 | 2304 | 2312 | 2319 | 2404 | 2411 | 2504 | 2513 |
2005 | 2015 | 2024 | 2031 | 2305 | 2313 | 2320 | 2405 | 2412 | 2505 | 2514 |
2006 | 2016 | 2025 | 2032 | 2306 | 2314 | 2321 | 2406 | 2413 | 2506 | 2515 |
2007 | 2017 | 2026 | 2033 | 2307 | 2315 | 2322 | 2407 | 2507 | 2516 | |
2008 | 2018 | 2308 | 2508 | 2517 | ||||||
2009 | 2019 | 2509 | ||||||||
2010 | ||||||||||
Setsuna | Koharu | Chiaki | Mari | |||||||
2031_2 | 2312_2 | 2401_2 | 2504_2 | 2511_2 | ||||||
2031_3 | 2313_2 | 2402_2 | 2507_2 | 2513_2 | ||||||
2031_4 | 2313_3 | 2402_3 |
Coda | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Common | Kazusa (True) | Setsuna (True) | Kazusa (Normal) | ||||||
3001 | 3008 | 3014_2 | 3020 | 3101 | 3107 | 3201 | 3207 | 3901 | 3907 |
3002 | 3009 | 3014_3 | 3021 | 3102 | 3108 | 3202 | 3208 | 3902 | 3908 |
3003 | 3010 | 3015 | 3022 | 3103 | 3109 | 3203 | 3209 | 3903 | 3909 |
3004 | 3011 | 3016 | 3023 | 3104 | 3110 | 3204 | 3210 | 3904 | |
3005 | 3012 | 3017 | 3024 | 3105 | 3111 | 3205 | 3211 | 3905 | |
3006 | 3013 | 3018 | 3106 | 3206 | 3906 | ||||
3007 | 3014 | 3019 | |||||||
Common | Setsuna (True) | Kazusa (Normal) | |||||||
3001_2 | 3210_2 | 3901_2 | 3906_2 | ||||||
3015_2 | 3902_2 | 3907_2 | |||||||
3902_3 | 3907_3 | ||||||||
3904_2 |
Mini After Story and Extra Episode | |||
---|---|---|---|
The Path Back to Happiness | The Path Forward to Happiness | Dear Mortal Enemy | |
6001 | 6101 | 4000 | 4005 |
6002 | 6102 | 4001 | 4006 |
6003 | 6103 | 4002 | 4007 |
6004 | 6104 | 4003 | 4008 |
6005 | 4004 | 4009 |
Novels | |||||
---|---|---|---|---|---|
The Snow Melts, And Until The Snow Falls | The Idol Who Forgot How to Sing | Twinkle Snow ~Reverie~ | After the Festival ~Setsuna's Thirty Minutes~ | His God, Her Savior | |
5000 | 5100 | 5200 | 5205 | 5300 | 5400 |
5001 | 5101 | 5201 | 5206 | 5301 | 5401 |
5002 | 5102 | 5202 | 5207 | 5302 | |
5003 | 5103 | 5203 | 5208 | 5303 | |
5004 | 5104 | 5204 | 5209 |
Short Stories | |||
---|---|---|---|
Princess Setsuna's Distress and Her Minister's Sinister Plan | Koharu Climate After the Passing of the Typhoon | This isn't the Season for White Album | Todokanai Koi, Todoita |
7000 | 7100 | 7200 | 7300 |