White Album 2/Script/2503
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Text
Speaker | Text | Comment | |||
---|---|---|---|---|---|
Line # | JP | EN | JP | EN | |
1 | 春希 | Haruki | 「ん~…悪い、今からはダメだわ。 バイト中」 | ||
2 | 武也 | Takeya | 「…大晦日だぞ?」 | ||
3 | 春希 | Haruki | 「人が働いてない時こそ稼ぎ時。 何しろこっちは餅代もないからな」 | ||
4 | 武也 | Takeya | 「じゃあ、年が明けたら…」 | ||
5 | 春希 | Haruki | 「そっちもなぁ…二日からバイト入れてある。 だからさすがに明日はゆっくり寝てたいし」 | ||
6 | 武也 | Takeya | 「お前…働きすぎじゃね?」 | ||
7 | 春希 | Haruki | 「こんなことできるのも大学が休みの時くらいだしな。 来月末は試験だし、今のうちに詰めてあるんだよ」 | ||
8 | 武也 | Takeya | 「………なぁ、春希」 | ||
9 | 春希 | Haruki | 「ん~?」 | ||
10 | 武也 | Takeya | 「本当に大丈夫なんだよな? 今のお前」 | ||
11 | 春希 | Haruki | 「お前が何を心配してるのかわかんないけど…」 | ||
12 | 武也 | Takeya | 「もしかして俺、余計なことしちまったか? 24日の夜、お前たち一体…」 | ||
13 | 春希 | Haruki | 「…最後まで言わせろよ。 何も変わってないよ、俺は」 | ||
14 | 武也 | Takeya | 「春希…」 | ||
15 | 春希 | Haruki | 「何もなかった。 本当に、なんでもないんだって」 | ||
16 | 武也 | Takeya | 「…雪菜ちゃんも同じこと言ってたけどさ」 | ||
17 | 春希 | Haruki | 「ほら見ろ、共通認識じゃないか。 映画は楽しかったし食事は美味かった。 楽しかったよ。お膳立てサンキューな」 | ||
18 | 武也 | Takeya | 「食事の後は…」 | ||
19 | 春希 | Haruki | 「武也」 | ||
20 | 武也 | Takeya | 「っ…」 | ||
21 | 春希 | Haruki | 「とりあえず、今もバイト中だから切るな。 今日中に上げなくちゃならない資料が残ってる」 | ||
22 | 武也 | Takeya | 「…わかったよ。 じゃあ、来年もよろしくな、春希」 | ||
23 | 春希 | Haruki | 「ああ、こっちこそよろしく。 じゃあな」 | ||
24 | 春希 | Haruki | 「………悪い、武也」 | ||
25 | 『あの日』以降、毎日連絡をくれる武也に対して、 あしらい気味に扱ってしまいつつ、 電話を切ってから詫びるの繰り返し。 | ||||
26 | あいつと依緒にとっては、 今現在の俺と雪菜の状況が見えないことが、 色々と不安を掻き立ててるんだろう。 | ||||
27 | そういった気持ちはありがたい。 ずっと友達を続けてきてよかったって、 心の底から思える優しさが嬉しい。 | ||||
28 | 春希 | Haruki | 「はい、開桜社『開桜グラフ』編集部です」 | ||
29 | それでも今は、 あいつらにだけは、放っておいてもらいたい… | ||||
30 | それが俺の、正直で率直で、 そして、友達甲斐のない残酷な気持ちだった。 | ||||
31 | 春希 | Haruki | 「木崎は… 申し訳ありません。 昨日から冬期休暇に入っておりまして」 | ||
32 | 雪菜のことを… 俺たち二人のことを近くで見てきた人間に、 今の俺たちの距離を話す気にはなれない。 | ||||
33 | きっと、わかっているからこそ的を射た… | ||||
34 | そして俺たちができるはずのない 解決策を言ってくるだろうから。 | ||||
35 | 春希 | Haruki | 「ああ、そちらの申請でしたら、 私、北原が承っております。 ええ、遅くても年明けの二日までには…はい」 | ||
36 | 踏み越えられない壁を、 無理やり踏み越える方向にしか導いてくれないから。 | ||||
37 | 休むことも、逃げることも、目を背けることも、 絶対に、許しはしてくれないから。 | ||||
38 | 春希 | Haruki | 「ええ、連絡はこちらの電話番号で結構です。 北原…です。東西南北の北に野原の原。 メールアドレスは…」 | ||
39 | 今の俺が話を聞いて欲しいのは、 俺たち二人のことを知らない、 俺たちのことを客観的に見られる人。 | ||||
40 | それでいて、優しくて、熱意があって、 一生懸命俺のために骨を折ってくれる人。 | ||||
41 | そして、これは本当に卑怯だって。 逃げだってわかっているけれど… | ||||
42 | できれば俺を…ほんの少しでいいから、 ひいきしてくれるひと。 | ||||
43 | 春希 | Haruki | 「今後ともよろしくお願いします。 それでは、失礼します」 | ||
44 | けれど今の俺の目の前には、 しばらくはそんな人は現れない。 だから、誰にも頼らず一人で頑張っていくしかない。 | ||||
45 | …少なくとも、あと一週間は。 | ||||
46 | 春希 | Haruki | 「さて、と…」 | ||
47 | だから、編集部が大晦日まで開いてくれてて、 本当に助かった。 | ||||
48 | さすがに仕事納めの後にまで出勤してくる人は 少なかったけど、それでもゼロじゃなかったから、 俺は今日も、こうして忙しさにかまけることができる。 | ||||
49 | 昨日までに、社内にある全部の編集部を巡って、 大量の雑務を拾ってきた。 | ||||
50 | 締め切り、量、内容それこそ色々だったけど、 年内だけでなく、年明け後も数日分… 麻理さんが帰ってくるまでの仕事量は確保できた。 | ||||
51 | 何しろ、今まで関係のなかった編集部に顔を出しても 『ああ、風岡の所ね…』と、 どこでもあっさり仕事を回してくれた。 | ||||
52 | それだけ麻理さんの勇名と信用と前例が 全社中にとどろいてる訳で、 俺としても少々誇らしかった。 | ||||
53 | …彼らはきっと知らないんだろう。 これが俺の独断なんて。 麻理さんの後ろ盾なんて何もないんだって。 | ||||
54 | だからこそ、その信用を裏切る訳にはいかない。 どの仕事も納期通り、質を下げず、量を削らず、 丁寧に、そして確実にこなしていかないと… | ||||
55 | 男性編集部員 | Male Editor | 「あれ? グラフさんもまだ残ってるのいたか」 | ||
56 | 春希 | Haruki | 「あ、お疲れさまです」 | ||
57 | 男性編集部員 | Male Editor | 「上の階はもう誰もいなくなったけど… まだやってくかい?」 | ||
58 | 春希 | Haruki | 「あ、ええと…」 | ||
59 | ふと時計を見ると、まだ八時半。 | ||||
60 | いつもなら、帰ってる人を探す方が難しい時間だけど、 さすがに今日明日はこの時間まで残ってる人も稀だ。 | ||||
61 | 男性編集部員 | Male Editor | 「会社で年越すのはやめといた方がいいぞ。 ちょっとだけ死にたくなる」 | ||
62 | 春希 | Haruki | 「あ、あはは…」 | ||
63 | 手元のタスクは、それはもうとんでもないことに なってるけど、それでも今日中に終わらせないと いけない案件は全て片づけてしまった。 | ||||
64 | 確かにこの人の言う通り、 二年越しの夜くらいは部屋に帰っても、 今より寂しいことにはならないかもしれない。 | ||||
65 | 男性編集部員 | Male Editor | 「帰るなら待ってるぞ。 鍵、一緒に返しておくから」 | ||
66 | 春希 | Haruki | 「すいません。 それじゃ………あ」 | ||
67 | …なんて腰を浮かせかけたところで、 机の上に無造作に置かれていた、 一枚の紙切れが目に留まる。 | ||||
68 | 正確には、その紙面に印刷された 『冬馬曜子』の文字が。 | ||||
69 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
70 | いまは、八時半。 | ||||
71 | 開演時間を30分過ぎてしまったけれど、 まだ『少々の遅刻』で済むレベル。 | ||||
72 | 会場は御宿芸術文化ホール。 ここから徒歩数分。 …思いっきり駅に向かう途中にある。 | ||||
73 | 興味がないと言えば嘘になる。 | ||||
74 | 世界的なピアニストの生演奏。プレミア席。 しかも、俺の初仕事が認められての特別招待。 | ||||
75 | …けれど、冬馬曜子本人と、 その演奏を目の当たりにすれば、 きっと嫌でも思い出してしまう。 | ||||
76 | 彼女の血と才能を受け継ぎ、 きっと海の向こうで同じように舞台に立って、 同じように観客の視線を一手に集めている… | ||||
77 | いや、これから集めるであろう“あいつ”のことを。 | ||||
78 | 男性編集部員 | Male Editor | 「どうした? まだ帰らないのか?」 | ||
79 | 春希 | Haruki | 「それは、その…」 | ||
80 | もしかしたら、冬馬曜子は俺のこと覚えてるだろうか? | ||||
81 | もし忘れてても、あの記事を書いた記者だと言って、 控え室に押しかければ会ってくれるかもしれない。 | ||||
82 | そして、俺の顔を見たら思い出してくれるかもしれない。 | ||||
83 | そしたら彼女は、娘に俺のことを伝えるだろうか? | ||||
84 | 俺とかずさの接点が、もう一度… もう一度、かずさに会える道筋ができるかもしれない… | ||||
85 | 1.コンサートに行く | Choice | |||
86 | 2.ここに残る | Choice | |||
87 | 春希 | Haruki | 「…すいません。 切りのいいところまで進めておきたいんで」 | ||
88 | 男性編集部員 | Male Editor | 「そっか… じゃあ、鍵は守衛に直接返してくれよな」 | ||
89 | 春希 | Haruki | 「お疲れさまでした。 よいお年を」 | ||
90 | 男性編集部員 | Male Editor | 「ああ、よいお年を」 | ||
91 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
92 | もうやめよう。 | ||||
93 | 雪菜を裏切ったまま、 “冬馬”という姓を引きずるのは。 | ||||
94 | ……… | .........
| |||
95 | …… | ......
| |||
96 | … | ...
| |||
97 | 佐和子 | Sawako | 「お~い麻理! こっちこっち~!」 | ||
98 | 麻理 | Mari | 「あ…」 | ||
99 | 佐和子 | Sawako | 「日本より1時間早くハッピーニューイヤー! ギリギリ大晦日のうちに合流できたね~」 | ||
100 | 麻理 | Mari | 「佐和子…」 | ||
101 | 佐和子 | Sawako | 「出張はどうだった? ちゃんと仕事納めた? …わたしの方は何もかも放り出して来ちゃったけど」 | ||
102 | 麻理 | Mari | 「…うん、終わった。 思ったよりも順調だった」 | ||
103 | 佐和子 | Sawako | 「そっかそっか…とりあえず良かった。 去年なんてお互い仕事引きずっちゃって、 合流できたの帰る前の日だったもんね~」 | ||
104 | 麻理 | Mari | 「………」 | "........."
| |
105 | 佐和子 | Sawako | 「さて、それじゃ早速ホテルに移動しようか。 着いたら死ぬまで飲んで、寝正月を満喫しよ!」 | ||
106 | 麻理 | Mari | 「う、ん…」 | ||
107 | 佐和子 | Sawako | 「…どうしたの麻理? ひょっとして風邪でもひいた?」 | ||
108 | 麻理 | Mari | 「ううん、そういうわけじゃないけど…」 | ||
109 | 佐和子 | Sawako | 「じゃあ、何?」 | ||
110 | 麻理 | Mari | 「うん…早く帰る日にならないかなぁって」 | ||
111 | 佐和子 | Sawako | 「………は?」 | ||
112 | 麻理 | Mari | 「あ~、あと5日もあるのかぁ。 旅行なんか来なきゃよかった…」 | ||
113 | 佐和子 | Sawako | 「…あんたわたしに喧嘩売ってる?」 | ||
114 | ……… | .........
| |||
115 | 春希 | Haruki | 「あ…」 | ||
116 | 何度も守衛さんに見回られて、 さすがに気まずくなって編集部を出たのが10分前。 | ||||
117 | 気づいたらそこは、 御宿芸術文化ホールの目の前だった。 | ||||
118 | ホールの階段から沢山の人たちが溢れ出てきて、 俺の目の前に、いきなり人の波が出来上がる。 | ||||
119 | どうやらたった今終わったらしい。 携帯の時計を見ると、今の時刻は23時59分。 | ||||
120 | …ニューイヤーコンサートというには、 ほんの少しだけ時間が足りなかったらしい。 | ||||
121 | 駅へと向かう人の波に飲み込まれ、 急に歩調がゆっくりになる。 | ||||
122 | ホールから出てきた人たちは皆、一様に顔を紅潮させ、 そのコンサートの凄さを口々に語っていた。 | ||||
123 | 除夜の鐘を掻き消すような興奮が俺の周囲に蔓延して、 ほんの少しだけ居心地の悪さを感じたけれど。 | ||||
124 | それだけ素晴らしいコンサートだったんだろう。 …ほんの少しだけ、すっぽかしたことを後悔する。 | ||||
125 | そんな浮ついた喧騒に身を委ねていると… | ||||
126 | ちょうどその瞬間、 新しい年が訪れた。 | ||||
127 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
128 | だから俺は、心の中の小さな声で、 『あけましておめでとう』を呟く。 | ||||
129 | 旧年中、お世話になった人たちに。 今年もお世話になるはずの人たちに。 | ||||
130 | 大切な友人たちに。 | ||||
131 | 頼もしく自分を支えてくれる人に。 | ||||
132 | 頼んでもいないのに支えようとする人に。 嫌だと言っても支えられようとする人に。 | ||||
133 | いつも近くにいたのに、 ずっと、悲しませてばかりの大切な人に。 | ||||
134 | もう何年も会ってない、 これからも会うはずのない大切な人に。 | ||||
135 | ……… | .........
| |||
136 | ??? | ??? | 「お疲れさん」 | ||
137 | ??? | ??? | 「え? なに? 感想? …あたしにそういうこと聞く?」 | ||
138 | ??? | ??? | 「わかってる。 悔しいけど、まだまだ勝てそうにない」 | ||
139 | ??? | ??? | 「それじゃ、あたし先にホテルに帰るけど、 そっちは…え?」 | ||
140 | ??? | ??? | 「隣の席?」 | ||
141 | 曜子 | Youko | 「そうよ。あんたの左側。 誰かいなかった?」 | ||
142 | ??? | ??? | 「…そういえば、最初から最後まで空席だったな」 | ||
143 | 曜子 | Youko | 「………そう」 | ||
144 | ??? | ??? | 「なに? 誰か知り合いでも呼んだの?」 | ||
145 | 曜子 | Youko | 「まぁね…さすがに来てくれなかったか」 | ||
146 | ??? | ??? | 「最初の旦那? 二番目の旦那? それとも………あたしの父親?」 | ||
147 | 曜子 | Youko | 「…似たようなものかもね」 | ||
148 | ??? | ??? | 「よしてよ。 あたし今さらそんな相手に会っても、 どんな顔したらいいのかわかんないよ」 | ||
149 | 曜子 | Youko | 「そっかぁぁ…ダメだったか… そっかぁぁ…」 | ||
150 | ??? | ??? | 「…母さん?」 | ||
151 | 曜子 | Youko | 「ねぇ、ホテル帰ったら飲まない? …かずさ」 | ||
152 | かずさ | Kazusa | 「…なに言ってるの急に?」 | ||
153 | 曜子 | Youko | 「いいじゃん…あんたももうハタチ超えてるんだし。 娘と飲むの、夢だったのよね~」 | ||
154 | かずさ | Kazusa | 「…家でいつも飲んでるような気がするけど」 | ||
155 | 曜子 | Youko | 「日本でってのが重要なのよ。 せっかく帰国してるんだから、 こう、お銚子で熱燗とかさぁ」 | ||
156 | かずさ | Kazusa | 「年寄り臭いなぁ… ピアノはあんなに乱暴なくせに」 | ||
157 | 曜子 | Youko | 「もしかして用事でもある? …誰か会いたい人でもいる?」 | ||
158 | かずさ | Kazusa | 「………」 | "........."
| |
159 | 曜子 | Youko | 「かずさ、あんたさ…」 | ||
160 | かずさ | Kazusa | 「この国に、あたしの居場所はないんだよ、もう」 | ||
161 | 曜子 | Youko | 「………」 | "........."
| |
162 | かずさ | Kazusa | 「うん、わかった。 母さんの愚痴に付き合うのも久しぶりだし。 いいよ。朝まで飲もう?」 | ||
163 | 曜子 | Youko | 「何言ってんのよ~。大成功だったじゃない! 祝杯よ祝杯。よ~し、今日は寝かせないからね~」 | ||
164 | かずさ | Kazusa | 「そうだね…おめでとう。 それと、今年もよろしくね、母さん」 | ||
165 | 曜子 | Youko | 「うん、じゃ、ホテルでね。 挨拶済ませたらすぐに行くから」 | ||
166 | かずさ | Kazusa | 「わかった、じゃ」 | ||
167 | かずさ | Kazusa | 「………」 | "........."
| |
168 | かずさ | Kazusa | 「…辛気くさい鐘。 本当に日本なんだなぁ」 | ||
169 | かずさ | Kazusa | 「なぁ…元気でやってるか?」 | ||
170 | かずさ | Kazusa | 「あけましておめでと。 今年もよろしくな」 | ||
171 | かずさ | Kazusa | 「………もう、会うこともないけど、な」 | ||
172 | ……… | .........
| |||
173 | ……… | .........
| |||
174 | 佐和子 | Sawako | 「ぶっ!?」 | ||
175 | 麻理 | Mari | 「きゃっ!? や…きったないなぁ。 なによ、もう酔ったの?」 | ||
176 | 佐和子 | Sawako | 「そ、そ、そ…」 | ||
177 | 麻理 | Mari | 「ソーセージなら、ほら」 | ||
178 | 佐和子 | Sawako | 「それって告白じゃない! やった麻理。やった~…」 | ||
179 | 麻理 | Mari | 「それがさぁ… その時はテンパっちゃったんだけど、 後から考えると結構微妙なニュアンスだったのよ」 | ||
180 | 佐和子 | Sawako | 「どんなふうに?」 | ||
181 | 麻理 | Mari | 「いや、ま… ちょっと状況を整理するとね」 | ||
182 | ……… | .........
| |||
183 | 佐和子 | Sawako | 「う~ん…微妙?」 | ||
184 | 麻理 | Mari | 「微妙なのよぉ」 | ||
185 | 佐和子 | Sawako | 「つまり彼は、昔の女が今でも好きで、 麻理にそれを知っておいてもらいたかったと?」 | ||
186 | 麻理 | Mari | 「ま、額面通りに受け取れば」 | ||
187 | 佐和子 | Sawako | 「で…その程度の打ち明け話に コメントできないくらい動揺しまくる、 麻理のそういうウブなところが好きだって?」 | ||
188 | 麻理 | Mari | 「そこまで具体的なこと言ってない。 て言うかどさくさに紛れて親友をこき下ろすな」 | ||
189 | 佐和子 | Sawako | 「で、どうすんの?」 | ||
190 | 麻理 | Mari | 「どうしていいかわかんないから話したんじゃない… ねぇ、どう思う? やっぱ私、からかわれてるのかなぁ? …ちょっと年下の、しかも大学生なのよ? あいつ」 | ||
191 | 佐和子 | Sawako | 「『ちょっと年下』とか曖昧に誤魔化すんじゃないの。 向こう今21なんだからきっかりいつ…」 | ||
192 | 麻理 | Mari | 「わ~! わ~! わぁぁぁぁ~!」 | ||
193 | 佐和子 | Sawako | 「あ~…耳がキンキンした~」 | ||
194 | 麻理 | Mari | 「余計なこと口にした天罰よ。 同い年のくせに」 | ||
195 | 佐和子 | Sawako | 「あけましてお誕生日おめでと~麻理。 また一つ年取ったねぇ」 | ||
196 | 麻理 | Mari | 「あんた本当に懲りないわね」 | ||
197 | 佐和子 | Sawako | 「大体さぁ、そんなに気になるんだったら、 どうして日本発つ前に気持ち確かめておかないのよ?」 | ||
198 | 麻理 | Mari | 「そ、それは…」 | ||
199 | 佐和子 | Sawako | 「『あんた私に気があるの?』 ってさらっと聞けば済む話じゃない」 | ||
200 | 麻理 | Mari | 「き、聞けるかそんなこと!」 | ||
201 | 佐和子 | Sawako | 「え~、なんで?」 | ||
202 | 麻理 | Mari | 「気がなかったらどうするのよ… それ、立場的にものすごく痛い勘違い女じゃない? 年上で、上司で…セクハラでパワハラ一直線よこれ」 | ||
203 | 佐和子 | Sawako | 「で、逃げ出しておきながら、 結局その時のことが気になって気になって、 今度は会いたくてしょうがないという訳か…笑える~」 | ||
204 | 麻理 | Mari | 「ほんっとにもう… 女同士って遠慮がなさすぎるから嫌」 | ||
205 | 佐和子 | Sawako | 「でも、ま、いい傾向じゃない?」 | ||
206 | 麻理 | Mari | 「どこがよ… こんなモヤモヤした気持ち、たまんないわよ…」 | ||
207 | 佐和子 | Sawako | 「モヤモヤしてることがよ。 男と真剣に向き合おうとしてることがよ」 | ||
208 | 麻理 | Mari | 「え…」 | ||
209 | 佐和子 | Sawako | 「『告白だったらいいのに』って、 期待してるところがよ」 | ||
210 | 麻理 | Mari | 「そんなことは…」 | ||
211 | 佐和子 | Sawako | 「何年ぶりかな、こんな麻理見るの。 あんたが無理して男寄せ付けなくなってから、 結構心配してたんだよ?」 | ||
212 | 麻理 | Mari | 「………」 | "........."
| |
213 | 佐和子 | Sawako | 「そろそろじゃない? 女、思い出してもいいんじゃない?」 | ||
214 | 麻理 | Mari | 「私、は…」 | ||
215 | 佐和子 | Sawako | 「盲点だったなぁ…麻理が実は、 年下の男に、若さに任せて ガンガン突き上げられちゃうのに弱いとは」 | ||
216 | 麻理 | Mari | 「いちいち表現がやらしいなぁ」 | ||
217 | ……… | .........
| |||
218 | 佐和子 | Sawako | 「ふぅ…」 | ||
219 | 麻理 | Mari | 「本当に酔っちゃった? そろそろ寝ようか?」 | ||
220 | 佐和子 | Sawako | 「何時間くらい飲んでたかなぁ… 麻理、時計持ってない?」 | ||
221 | 麻理 | Mari | 「あ~、手元にないなぁ」 | ||
222 | 佐和子 | Sawako | 「じゃ、携帯でいいや。 ちょっと貸して」 | ||
223 | 麻理 | Mari | 「ああ、うん。 一応、現地時間に合わせてあるから」 | ||
224 | 佐和子 | Sawako | 「ありがと。 ええと…」 | ||
225 | 麻理 | Mari | 「飲み始めたのが日付変わってからだもんね。 もうずいぶん遅…」 | ||
226 | 佐和子 | Sawako | 「北原、北原…と」 | ||
227 | 麻理 | Mari | 「っ!?」 | ||
228 | 佐和子 | Sawako | 「お~、あったあった。 北原春希君~♪」 | ||
229 | 麻理 | Mari | 「な、な、な…何をしたっ!?」 | ||
230 | 佐和子 | Sawako | 「こんな大事なときに女二人で飲んでる場合じゃない。 今すぐ確かめちゃおうよ、春希君に」 | ||
231 | 麻理 | Mari | 「何言ってるんだ!? やめろ! 向こう今何時だと思ってる!」 | ||
232 | 佐和子 | Sawako | 「だ~いじょうぶだいじょぶ。 時差、1時間しかないんだから」 | ||
233 | 麻理 | Mari | 「そもそもこっちからして真夜中じゃないか!」 | ||
234 | 佐和子 | Sawako | 「お~呼び出してる呼び出してる。 早く出ろ~春希君。 麻理が今か今かと待ちこがれてるぞ~」 | ||
235 | 麻理 | Mari | 「や、やめろ… 何も話すことなんかない。 というかそんな急に話せないよ!」 | ||
236 | 佐和子 | Sawako | 「でもあんた帰りたがってたじゃない。 今すぐ会いたがってたじゃない。 もしかしたら、相手もそうかもよ?」 | ||
237 | 麻理 | Mari | 「大学生だぞ? 5つも年下なんだぞ!?」 | ||
238 | 佐和子 | Sawako | 「そんなに重く考えることないじゃない。 ちょっとしたお遊び程度でも…」 | ||
239 | 麻理 | Mari | 「北原はそんな軽い奴じゃない! 失礼なこと言うな!」 | ||
240 | 佐和子 | Sawako | 「麻理…あんた」 | ||
241 | 麻理 | Mari | 「だ、だから私は… ほら、さっき話しただろ。 今はそういうことしてる場合じゃ」 | ||
242 | 佐和子 | Sawako | 「………」 | "........."
| |
243 | 麻理 | Mari | 「わかってくれた? 佐和子」 | ||
244 | 佐和子 | Sawako | 「うん、わかった」 | ||
245 | 麻理 | Mari | 「そっか、良かっ…」 | ||
246 | 佐和子 | Sawako | 「あんたたちはとにかく一度、 とことん話し合う必要があるってことがね。 | ||
247 | 佐和子 | Sawako | あ、もしもし、春希君?」 | ||
248 | 麻理 | Mari | 「うわああああっ!?」 | ||
249 | 佐和子 | Sawako | 「きゃっ!? ちょ、ちょっと…離せ麻理!」 | ||
250 | ……… | .........
| |||
251 | 春希 | Haruki | 「な…?」 | ||
252 | 目をこすりつつ、寝ぼけ眼で見た枕元の時計は、 三時をとうに過ぎていた。 | ||||
253 | 除夜の鐘が鳴る中部屋に帰り、 熱いシャワーを浴びて、飲みたくもない酒を飲み、 無理やりベッドに入って一時間。 | ||||
254 | ここ数日訪れることのなかった睡魔が、 やっと俺の体をじわじわと浸食しはじめ、 心からの安堵とともに意識を失った…のに。 | ||||
255 | 春希 | Haruki | 「け、携帯…」 | ||
256 | 暗闇に手を伸ばし、 充電器の上で点滅している端末をやっと拾い上げ、 その蓋を開けて… | ||||
257 | 春希 | Haruki | 「あ…っ!」 | ||
258 | 長い時間かけて手に入れた睡魔を、 一瞬で手放すことになった。 | ||||
259 | ディスプレイにあった発信者の名前は、 『ずっと待ってたのに』とか『どうして今ごろ』とか、 『海外にいるはずじゃ』という疑問や不満を乗り越えて… | ||||
260 | 春希 | Haruki | 「ま、麻理さんっ!」 | ||
261 | 『麻理さんが、俺に』という、 劇的な感情の昂揚へと繋がっていったから。 | ||||
262 | けれど… | ||||
263 | ??? | ??? | 「うわああああっ!?」 | ||
264 | ??? | ??? | 「きゃっ!? ちょ、ちょっと…離せ麻理!」 | ||
265 | 春希 | Haruki | 「え…?」 | ||
266 | 春希 | Haruki | 「………え?」 | ||
267 | 勢い込んで着信ボタンを押した俺の耳に届いたのは、 まったく意味不明の三秒間だった。 | ||||
268 | ……… | .........
| |||
269 | 麻理 | Mari | 「あ…」 | ||
270 | 佐和子 | Sawako | 「いたたたた…もう、この馬鹿力」 | ||
271 | 麻理 | Mari | 「どこ…? 私の携帯、どこ行った!?」 | ||
272 | 佐和子 | Sawako | 「知らないわよぉ。 思いっきり突き飛ばすんだもん」 | ||
273 | 麻理 | Mari | 「鳴ってるじゃない! きっと北原からのコールバックだ… 早く、早く出ないと…」 | ||
274 | 佐和子 | Sawako | 「何も話すことなんかないんじゃなかったっけ?」 | ||
275 | 麻理 | Mari | 「人の揚げ足を取ってる暇があったら、 あんたも一緒に探しなさい!」 | ||
276 | 佐和子 | Sawako | 「はいはい、ええと………あ」 | ||
277 | 麻理 | Mari | 「な、なに? 見つけた?」 | ||
278 | 佐和子 | Sawako | 「うん…でも」 | ||
279 | 麻理 | Mari | 「ど、どこ…? テーブルの上には見当たらないんだけど…」 | ||
280 | 佐和子 | Sawako | 「ううん、テーブルの上………のデキャンタの中。 ほら、ワインの海に沈み行くところ」 | ||
281 | 麻理 | Mari | 「あああああ~!?」 | ||
282 | 春希 | Haruki | 「なんで…」 | ||
283 | これで5回目となるリトライも、 虚しい電子音に拒絶されてしまった。 | ||||
284 | せっかく待ち焦がれた麻理さんからの着信だったのに… | ||||
285 | その電話は、勢い込んで出た俺を嘲笑うかのように、 出て3秒もしないうちに切れてしまったかと思えば、 今度はこちらから掛け直しても応答がない。 | ||||
286 | 海外だから繋がらない…なんてことはないはず。 だって、一度は向こうからかかってきたんだから。 | ||||
287 | そもそも、何度も海外出張を経験してる麻理さんが、 連絡が取れなくなるなんてミスを犯すはずがない。 | ||||
288 | 午前三時を少し回った時間。 | ||||
289 | 除夜の鐘はとっくに鳴り終わり、 初日の出にもまだ遠い時間。 | ||||
290 | けれど俺の心は、 新春とか一年の計とか謹賀とか、 そういうおめでたい単語からかけ離れたところにいた。 | ||||
291 | 諦めて、我慢して、割り切って、 ようやく心を落ち着かせたかと思ったところにこの仕打ち。 | ||||
292 | もう一度、頭から布団をかぶって固く目を閉じても、 このもやもやした気持ちのままでは、 一度去ってしまった睡魔を呼び戻す自信がない。 | ||||
293 | だからきっと、今日もまた、眠れない夜を過ごすしかない。 …頭の中からネガティブな思考を追い出せないままに。 | ||||
294 | 春希 | Haruki | 「っ…」 | ||
295 | ………なんでですか、麻理さん。 | ||||
296 | なんで今ごろになって突然電話してきたんですか。 夜中の三時過ぎですよ? しかも元日ですよ? | ||||
297 | 出張に出かける前だって、 いくらでも話す時間はあったはずじゃないですか。 直接会えたかもしれないじゃないですか。 | ||||
298 | …謎すぎますよ、こんなの。 | ||||
299 | しかも、こっちが出たらいきなり切るなんて。 こっちから掛け直しても今度は頑なに出ないなんて。 一体どんな嫌がらせですか。 | ||||
300 | 俺、そんなにあなたに嫌われるようなことしましたか? 避けられるようなことしたんですか? | ||||
301 | 俺はただ、あなたに俺のこと、 わかって欲しかっただけなのに… | ||||
302 | ……… | .........
| |||
303 | …… | ......
| |||
304 | … | ...
| |||
305 | 春希 | Haruki | 「っ!?」 | ||
306 | 待てよ… | ||||
307 | 電話が切れる寸前に聞こえた 悲鳴みたいな声は一体なんだったんだ…? | ||||
308 | こっちが真夜中なのに構わず電話をかけてきて、 けれど突然切れて、そして、彼女は今海外にいる。 | ||||
309 | もしかして麻理さん… 現地で何かトラブルに巻き込まれたんじゃ? | ||||
310 | ……… | .........
| |||
311 | 麻理 | Mari | 「~っ」 | ||
312 | 佐和子 | Sawako | 「…どう?」 | ||
313 | 麻理 | Mari | 「…どのボタンも利かない。 完全にイっちゃったみたい」 | ||
314 | 佐和子 | Sawako | 「あ、そ、そう…」 | ||
315 | 麻理 | Mari | 「でも液晶だけはかすかに映る。 …北原から何度もコールバック来てる」 | ||
316 | 佐和子 | Sawako | 「そ、そなんだ~」 | ||
317 | 麻理 | Mari | 「なのに受けられない。 こっちから掛け直すこともできない…」 | ||
318 | 佐和子 | Sawako | 「ツ、ツイてなかったね、あはは…」 | ||
319 | 麻理 | Mari | 「あ、あ…あぁぁぁぁ~」 | ||
320 | 佐和子 | Sawako | 「麻理…」 | ||
321 | 麻理 | Mari | 「はぁぁぁぁ~…どうしよう。 あ~もうっ、どうしたらいいんだろ…」 | ||
322 | 佐和子 | Sawako | 「あ、あのさぁ… わたしの携帯貸したげるから…」 | ||
323 | 麻理 | Mari | 「番号なんて覚えてる訳ないじゃない。 …あんたまさか北原の番号知ってたりとか?」 | ||
324 | 佐和子 | Sawako | 「いや、知らないけど」 | ||
325 | 麻理 | Mari | 「なら、よし。 | ||
326 | 麻理 | Mari | ………あああああ~、どうしよ」 | ||
327 | 佐和子 | Sawako | 「…なんて難儀な」 | ||
328 | 麻理 | Mari | 「人の携帯をワイン漬けにした奴に言われたくない」 | ||
329 | 佐和子 | Sawako | 「じゃ、じゃあさ… わたし鈴木ちゃんの番号なら知ってるから、 彼女にかけて北原君の番号聞くってのは?」 | ||
330 | 麻理 | Mari | 「駄目! 鈴木そういうことになると勘鋭いんだから! きっと私たちのこと誤解される」 | ||
331 | 佐和子 | Sawako | [F16「誤解じゃないからいいじゃん…」] | ||
332 | 麻理 | Mari | 「はぁぁぁぁ~」 | ||
333 | ……… | .........
| |||
334 | 鈴木 | Suzuki | 「ふぁぁぁ…そのことならちょうどメール来てた。 佐和子さんから」 | ||
335 | 春希 | Haruki | 「………え?」 | ||
336 | 鈴木 | Suzuki | 「えっとね~… 麻理さん携帯壊して連絡取れなくなっちゃったんだって。 だから仕事関係で急用があったら佐和子さんにって」 | ||
337 | 春希 | Haruki | 「携帯壊した…?」 | ||
338 | 鈴木 | Suzuki | 「あははは…ふぁぁぁぁ~。 麻理さんらしくない失敗だね~」 | ||
339 | 春希 | Haruki | 「は、はぁ…」 | ||
340 | 鈴木 | Suzuki | 「ちょうどいいや、いま北原君編集部なんでしょ? 麻理さんへの緊急連絡はわたしが取り次ぐって、 みんなにメールで展開しといて~」 | ||
341 | 春希 | Haruki | 「………わかりました」 | ||
342 | あの後、すぐに着替えて部屋を飛び出した。 | ||||
343 | 浜田さんか鈴木さんに頼んで、 麻理さんの滞在先に連絡してもらい、 彼女たちの安否を確かめてもらうために。 | ||||
344 | 今日だけ終夜運転してる電車には目もくれず、 タクシーで編集部まで飛ばして、 守衛さんに嫌がられつつも編集部の鍵を開けてもらい。 | ||||
345 | 自分のメールボックスを探し回り、 やっと鈴木さんの携帯番号を見つけたのが四時半過ぎ。 | ||||
346 | そして今… 事態は予想を上回る陳腐な結末に辿り着いた。 | ||||
347 | 鈴木 | Suzuki | 「…にしてもさぁ、 今、何日の何時だと思ってる? 北原君なんでこんな時まで働いてんの~?」 | ||
348 | 春希 | Haruki | 「それは、その… 暇でしたから」 | ||
349 | 鈴木 | Suzuki | 「松っちゃんに言ってやってよその台詞。 あいつ一生かかっても北原君に追いつけないよね」 | ||
350 | …なんて、 そんな舞台裏を正直に話せる訳なんかなくて、 ただ、人知れず唇を噛みしめる。 | ||||
351 | そりゃ、万が一とは思ってた。 | ||||
352 | 俺の描いた最悪の状況なんて、 ほぼ100%杞憂で間違いないってわかってた。 | ||||
353 | 春希 | Haruki | 「えっと…麻理さんからのメールですけど、 他に何か連絡とかありませんでした?」 | ||
354 | 鈴木 | Suzuki | 「ん…ないよ。 携帯壊れたことと、新しい連絡先のことだけ」 | ||
355 | 春希 | Haruki | 「その…俺に伝言とかは?」 | ||
356 | 鈴木 | Suzuki | 「だからないって、全然」 | ||
357 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
358 | それでも、ここまで肩すかしで、 自分に何の見返りもない結果になるなんて、 さすがに思ってなかった。 | ||||
359 | 鈴木 | Suzuki | 「なに? 急用? それとも、麻理さんの声が聞きたくて 我慢できなくなっちゃった?」 | ||
360 | 春希 | Haruki | 「またそうやっていい加減なことを…」 | ||
361 | 麻理さんの声が聞きたい。 | ||||
362 | 鈴木 | Suzuki | 「正直に言ってみ? 今すぐ麻理さんに愛の告白したいって。 そしたら佐和子さんの番号教えてあげるよ?」 | ||
363 | 春希 | Haruki | 「だからぁ… 俺に回せる仕事ないかなって思っただけですよ。 出張の方は終わったみたいだし」 | ||
364 | ほんの少しだけでいい。 | ||||
365 | 優しい言葉じゃなくていい。 叱ってくれるだけでもいい。 | ||||
366 | 鈴木 | Suzuki | 「…年越しの朝まで仕事してて、 この上まだ新しい仕事を探しますか君は。 いい加減にしないと抜けるよ色々?」 | ||
367 | 春希 | Haruki | 「それは勘弁…」 | ||
368 | なのに… | ||||
369 | また、肩すかしですか? | ||||
370 | 鈴木 | Suzuki | 「ふぁぁぁぁ~。 あ~、やっぱまだ真っ暗か」 | ||
371 | 春希 | Haruki | 「すいませんでした。 こんな時間に起こしちゃって」 | ||
372 | あのクリスマスの夜以降、 わざと俺を苦しめてませんか、麻理さん? | ||||
373 | もう、何が何だか、わからないです… | ||||
374 | 鈴木 | Suzuki | 「いいよもう。 せっかく起きたからご来光拝みに行く。 都庁の展望台にでも」 | ||
375 | 春希 | Haruki | 「お疲れさまです。 …あけましておめでとうございます」 | ||
376 | あなたが俺をからかってるのか、俺を避けてるのか、 俺を嫌ってるのか、俺を嘲笑ってるのか、 俺を騙してるのか、全然わからないです… | ||||
377 | 鈴木 | Suzuki | 「そっちこそお疲れさま。 本年もよろしくお願いします。 それじゃ~ね~」 | ||
378 | 鈴木さんの眠たげな声も消えて、 また編集部に静寂が戻る。 | ||||
379 | 誰もいないこの部屋にぽつんと一人… 自業自得の孤独を噛みしめて、天井を見上げる。 | ||||
380 | 男性編集部員 | Male Editor | 『会社で年越すのはやめといた方がいいぞ。 ちょっとだけ死にたくなる』 | ||
381 | そういえば… あれは、ほんの数時間前に聞いた言葉だったっけ。 | ||||
382 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
383 | …別に、あの言葉が突き刺さった訳じゃない。 現に俺は、今だってカケラもそんなこと思ってない。 | ||||
384 | 今までどれだけ辛い目に遭っても、 どんなに辛い目に遭わせても、 そう思うことこそが罪だと信じてたから。 | ||||
385 | だから、今もこれからも、 そんな不謹慎なことは考えない。 想像していいはずがない。 | ||||
386 | だから… | ||||
387 | 春希 | Haruki | 「っ…」 | ||
388 | 少しくらい… | ||||
389 | 物にあたるくらいなら、 許して欲しい。 |
Script Chart
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Introductory Chapter | ||||||
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1001 | 1008 | 1009 | 1010 | 1011 | 1012 | 1013 |
1002 | 1008_020 | 1009_020 | 1010_020 | 1011_020 | 1012_020 | |
1003 | 1008_030 | 1009_030 | 1010_030 | 1011_030 | 1012_030 | |
1004 | 1008_040 | 1010_040 | 1012_030_2 | |||
1005 | 1008_050 | 1010_050 | ||||
1006 | 1010_060 | |||||
1006_2 | 1010_070 | |||||
1007 |
Closing Chapter | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Common | Setsuna | Koharu | Chiaki | Mari | ||||||
2001 | 2011 | 2020 | 2027 | 2301 | 2309 | 2316 | 2401 | 2408 | 2501 | 2510 |
2002 | 2012 | 2021 | 2028 | 2302 | 2310 | 2317 | 2402 | 2409 | 2502 | 2511 |
2003 | 2013 | 2022 | 2029 | 2303 | 2311 | 2318 | 2403 | 2410 | 2503 | 2512 |
2004 | 2014 | 2023 | 2030 | 2304 | 2312 | 2319 | 2404 | 2411 | 2504 | 2513 |
2005 | 2015 | 2024 | 2031 | 2305 | 2313 | 2320 | 2405 | 2412 | 2505 | 2514 |
2006 | 2016 | 2025 | 2032 | 2306 | 2314 | 2321 | 2406 | 2413 | 2506 | 2515 |
2007 | 2017 | 2026 | 2033 | 2307 | 2315 | 2322 | 2407 | 2507 | 2516 | |
2008 | 2018 | 2308 | 2508 | 2517 | ||||||
2009 | 2019 | 2509 | ||||||||
2010 | ||||||||||
Setsuna | Koharu | Chiaki | Mari | |||||||
2031_2 | 2312_2 | 2401_2 | 2504_2 | 2511_2 | ||||||
2031_3 | 2313_2 | 2402_2 | 2507_2 | 2513_2 | ||||||
2031_4 | 2313_3 | 2402_3 |
Coda | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Common | Kazusa (True) | Setsuna (True) | Kazusa (Normal) | ||||||
3001 | 3008 | 3014_2 | 3020 | 3101 | 3107 | 3201 | 3207 | 3901 | 3907 |
3002 | 3009 | 3014_3 | 3021 | 3102 | 3108 | 3202 | 3208 | 3902 | 3908 |
3003 | 3010 | 3015 | 3022 | 3103 | 3109 | 3203 | 3209 | 3903 | 3909 |
3004 | 3011 | 3016 | 3023 | 3104 | 3110 | 3204 | 3210 | 3904 | |
3005 | 3012 | 3017 | 3024 | 3105 | 3111 | 3205 | 3211 | 3905 | |
3006 | 3013 | 3018 | 3106 | 3206 | 3906 | ||||
3007 | 3014 | 3019 | |||||||
Common | Setsuna (True) | Kazusa (Normal) | |||||||
3001_2 | 3210_2 | 3901_2 | 3906_2 | ||||||
3015_2 | 3902_2 | 3907_2 | |||||||
3902_3 | 3907_3 | ||||||||
3904_2 |
Mini After Story and Extra Episode | |||
---|---|---|---|
The Path Back to Happiness | The Path Forward to Happiness | Dear Mortal Enemy | |
6001 | 6101 | 4000 | 4005 |
6002 | 6102 | 4001 | 4006 |
6003 | 6103 | 4002 | 4007 |
6004 | 6104 | 4003 | 4008 |
6005 | 4004 | 4009 |
Novels | |||||
---|---|---|---|---|---|
The Snow Melts, And Until The Snow Falls | The Idol Who Forgot How to Sing | Twinkle Snow ~Reverie~ | After the Festival ~Setsuna's Thirty Minutes~ | His God, Her Savior | |
5000 | 5100 | 5200 | 5205 | 5300 | 5400 |
5001 | 5101 | 5201 | 5206 | 5301 | 5401 |
5002 | 5102 | 5202 | 5207 | 5302 | |
5003 | 5103 | 5203 | 5208 | 5303 | |
5004 | 5104 | 5204 | 5209 |
Short Stories | |||
---|---|---|---|
Princess Setsuna's Distress and Her Minister's Sinister Plan | Koharu Climate After the Passing of the Typhoon | This isn't the Season for White Album | Todokanai Koi, Todoita |
7000 | 7100 | 7200 | 7300 |