White Album 2/Script/3002
Revision as of 08:47, 6 March 2017 by Jonathanasdf (talk | contribs)
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Translation Notes
Text
Speaker | Text | Comment | |||
---|---|---|---|---|---|
Line # | JP | EN | JP | EN | |
1 | 武也 | Takeya | 「それじゃ、週明けから初の海外出張へと旅立つ 北原春希君の健康と無事と仕事の失敗を祈って…」 | ||
2 | 春希 | Haruki | 「おい」 | ||
3 | 武也 | Takeya | 「生意気なんだよ一年目で海外出張なんて。 かんぱ~い!」 | ||
4 | 全員 | Member | 「かんぱ~い!」 | ||
5 | 武也の、壮行会に相応しくない音頭とともに、 皆のグラスが一斉に傾けられた。 | ||||
6 | 金曜の夜… | ||||
7 | 来週から出張だと言うことで、 奇跡的に早く帰らせてもらった俺は、 久々にいつものメンバーといつもの馬鹿話に興じる。 | ||||
8 | 雪菜 | Setsuna | 「ね、春希くん、なに頼む? わたし冷や奴と揚げ豆腐と豆腐サラダと…」 | ||
9 | 春希 | Haruki | 「…冷や奴と揚げ餅とシーザーサラダにしないか?」 | ||
10 | もちろん、雪菜はいつも通り俺の隣に寄り添い。 | ||||
11 | 依緒 | Io | 「あ、ほっけと串盛り合わせと牛肉コロッケよろしく。 ………っ、\k | ||
12 | 依緒 | Io | と、生追加」 | ||
13 | 春希 | Haruki | 「いきなりピッチ上げるな。 俺はお前のチキンレースには付き合わんからな」 | ||
14 | 依緒も、相変わらず慣れないヒールで駆けつけてくれた。 …って、こいつはそうやってすぐ走ろうとするから、 いつまで経ってもヒールと相性が悪いんだろうな。 | ||||
15 | 武也 | Takeya | 「あんま飲み過ぎんなよ依緒。 もし意識を失ったら、目覚めた時 俺が隣で気怠げに煙草吸ってんぞ?」 | ||
16 | そして、すっかり落ち着いた… というか、意外なことに社会人が板についてる武也も、 当然のように俺との友情を続けてくれていた。 | ||||
17 | こんな、大学時代から… いや、付属時代から変わらない、俺たち四人… | ||||
18 | 朋 | Tomo | 「北原さんわたしシャ○ルのバッグ! 後で型番メールするから間違えないでね?」 | ||
19 | 春希 | Haruki | 「………日本にだって売ってるし通販でも買えるから」 | ||
20 | 武也 | Takeya | 「…なんでお前がここにいるんだよ?」 | ||
21 | 朋 | Tomo | 「あ、わたしウーロン茶おかわり。 あと、トマトスライスと海藻サラダ。 サラダはドレッシング抜きで」 | ||
22 | 依緒 | Io | 「相変わらず人の話を聞かないコだよね…」 | ||
23 | …ちょっとだけ訂正。 | ||||
24 | こんな、大学時代から変わらない… そして、付属時代からちょっとだけ変わった、俺たち五人。 | ||||
25 | 朋 | Tomo | 「いいじゃないですか、今日はめでたい日なんですから。 実はですねぇ、わたし先月… 土壇場でようやく東亜テレビに内定決まったんですよ~」 | ||
26 | 春希 | Haruki | 「…マジ? キー局じゃないか」 | ||
27 | 雪菜 | Setsuna | 「…うん、マジみたい。 内定通知、10回くらい見せられたし」 | ||
28 | あのコンサート以来、 いつの間にか俺たちの輪の中に、 華やかで刺々しい薔薇が混じるようになっていた。 | ||||
29 | 武也 | Takeya | 「意外と粘るな。 そろそろ脱ぐ頃だと思ってたんだけど」 | ||
30 | 依緒 | Io | 「そもそもグラビアアイドルとかやってた人間を よく採用する気になったよねテレビ局が」 | ||
31 | 朋 | Tomo | 「ま、そこは普段からたゆまぬ努力の賜と言いますか、 可能な限り人脈と弱みは握っておくに限ると言いますか」 | ||
32 | 柳原朋。 峰城大学商学部四回生。 | ||||
33 | 二年前のミス峰城は、今でもキャンパス内で、 その存在感をケバケバしいほどに示しているらしい。 | ||||
34 | 武也 | Takeya | 「…その時の光景が目に浮かぶようだ」 | ||
35 | 依緒 | Io | 「後でスキャンダルにならなきゃいいけど…」 | ||
36 | 朋 | Tomo | 「スキャンダルも話題作りとして利用すればいいんです。 どうせ最終目標は早めに退社してフリーになって、 女優やアーティストとしても活躍することなんだし」 | ||
37 | 雪菜 | Setsuna | 「口ではこんなこと言ってるけど、 彼女、本当に死に物狂いで努力してたんだよ? ボイストレーニングも、英会話も、もちろん勉強も」 | ||
38 | 春希 | Haruki | 「…信じがたいけど、そうらしいな」 | ||
39 | あれからも柳原朋は、相変わらず雪菜を弄ってた。 | ||||
40 | けれど、二人の奇妙な友情… というのかもわからない関係は、 雪菜が大学を卒業した今も続いている。 | ||||
41 | 小木曽家のホームパーティに何度も顔を出したり、 雪菜がレコード会社を希望していると知るや、 自分のコネを最大限に利用しようと走り回ったり。 | ||||
42 | 雪菜の歌に更に磨きをかけようと、 趣味半分の雪菜以上の本気をもって、 一緒にボイストレーニングに通ったり。 | ||||
43 | さらに今でも“あの歌”をメジャーに売り込もうと、 例の人脈とやらにデモCDを配ったりとかもしてるらしく、 その執念には雪菜も武也も呆れるばかりだとか。 | ||||
44 | …いつまで経っても、 いい奴なんだか悪い奴なんだかわからない、変な奴。 | ||||
45 | ……… | .........
| |||
46 | 武也 | Takeya | 「だからな、大学で勉強ばっかしてた奴らは 結局会社じゃ役に立たないんだよ」 | ||
47 | 雪菜 | Setsuna | 「そ、そうなの…かな?」 | ||
48 | 武也 | Takeya | 「大学生ってのはさ、 遊ぶことによって社会と触れあってんだよ。 馬鹿やって人との付き合い方がわかってくんだよ」 | ||
49 | 朋 | Tomo | 「まぁ、確かに飯塚先輩は 七年間馬鹿しかやってこなかったですけど」 | ||
50 | 武也 | Takeya | 「…で、そうやってると、 自然と社会人としてのスキルが磨かれてくんだって。 研究に明け暮れてんなら大学に残った方がよっぽどいい」 | ||
51 | 依緒 | Io | 「営業の視点だけ、それもたった半年かじっただけで、 そんなわかったようなこと言われてもねぇ」 | ||
52 | 武也 | Takeya | 「いや基本どの仕事もおんなじだって。 やっぱ会社に属する以上、人とコミュニケーションが 取れてナンボってとこあるじゃん?」 | ||
53 | 依緒 | Io | 「けどさぁ、春希は勉強しまくってたけど、 十分役に立ってるみたいじゃん?」 | ||
54 | 武也 | Takeya | 「こいつはおかしいんだよ。突然変異」 | ||
55 | 春希 | Haruki | 「酷い言われようだな、おい」 | ||
56 | 武也 | Takeya | 「そもそもこんな根暗でオタクっぽい奴が、 大学一のアイドルとらぶらぶだって時点で、 何かおかしいってことに気づけよ」 | ||
57 | 依緒 | Io | 「卑怯だぞ武也… それ言われたら論破のしようがないじゃないか」 | ||
58 | 春希 | Haruki | 「…をい」 | ||
59 | 朋 | Tomo | 「雪菜が大学一…ってのには、 やっぱりまだ異議を唱えたい自分がいるんですけど~」 | ||
60 | 雪菜 | Setsuna | 「みんなやだなぁ、恥ずかしいからやめてよ… 別に、アイドルとかそういうんじゃないよ、全然」 | ||
61 | 武也 | Takeya | 「しかも“らぶらぶ”の方は照れないし…」 | ||
62 | 春希 | Haruki | 「そういうのを恣意的報道と言うんだ。 もうちょっと公平な視点でものを見ろ。 使える社会人だって言うんなら」 | ||
63 | 雪菜 | Setsuna | 「もしかして春希くん照れてる?」 | ||
64 | 春希 | Haruki | 「だから後ろから撃たないで雪菜…」 | ||
65 | 乾杯から1時間… | ||||
66 | お酒の注文を三度、四度と重ねるうち、 皆の口の方もかなり滑らかになってきて。 | ||||
67 | 俺たちは、昔と同じように、 真面目に、適当に、熱く、ゆるく騒ぎ合う。 | ||||
68 | それは、大学時代の馴れ合いの延長なのか、 それとも普段のストレスの発散なのか… | ||||
69 | 春希 | Haruki | 「にしてもさ… 俺たちが飲み会の席で仕事の愚痴を言い合うなんてな」 | ||
70 | 雪菜 | Setsuna | 「五年前からじゃ想像もできなかったよね」 | ||
71 | 依緒 | Io | 「あたしは一年前でも想像してなかったよ」 | ||
72 | 朋 | Tomo | 「わたし正直、まだちょっとついていけてません」 | ||
73 | 武也 | Takeya | 「そうか? そういうもんかな…」 | ||
74 | 春希 | Haruki | 「ほら、特に武也。 お前、妙に語るようになったよなぁ。 仕事とか会社とか社会とか…」 | ||
75 | 依緒 | Io | 「なんかダサい…」 | ||
76 | 武也 | Takeya | 「ダサい人間嫌いかよ? 去年まではチャラい人間嫌いだって言ってたくせによ」 | ||
77 | 依緒 | Io | 「え? あ、あぁ…ええと… あたしは…その時その時の武也の性格が 一番嫌いって言うか…」 | ||
78 | 武也 | Takeya | 「あ~あ~そうですかそうですか。 どうすりゃいいんでしょうかね俺は~」 | ||
79 | 春希 | Haruki | 「よせ、武也…」 | ||
80 | で、やっぱり乾杯から一時間ってことで… | ||||
81 | 五杯、六杯と重ねていくうちに、 普段ならさらりと流す相手の毒舌が、 どうしても癇に障ってしまったり… | ||||
82 | 依緒 | Io | 「違うよ、春希。 …今のはあたしが悪い」 | ||
83 | 雪菜 | Setsuna | 「依緒…」 | ||
84 | 普段ならギャグっぽく言うべき言葉を、 ぼそりと本音っぽく呟いてしまったり、する。 | ||||
85 | 依緒 | Io | 「あたしさ… 実はちょっと嫉妬してるんだ。みんなに」 | ||
86 | 春希 | Haruki | 「お前、何を…」 | ||
87 | 依緒 | Io | 「だってさ… 多分、仕事に対して本気で不満持ってるの、 この中じゃあたしだけだって気がするもん」 | ||
88 | 武也 | Takeya | 「………」 | "........."
| |
89 | 依緒 | Io | 「雪菜は会社でも、やっぱり看板背負ってる。 春希は最初から期待値が高くて、しかもそれに応えてる。 武也だって、大学時代からは信じられない高評価」 | ||
90 | 毎日、違う場所で過ごし、違う時間に生きて、 違う毎日を送ってる俺たちは… | ||||
91 | 『昔と同じように』ふざけ合うことなんて、 もう、二度とできないのかもしれない。 | ||||
92 | 依緒 | Io | 「朋だって、前途洋々な未来が開けてさ… なんか、あたしだけ… あたしだけ」 | ||
93 | 朋 | Tomo | 「水沢さん…」 | ||
94 | 依緒は…第一志望だった スポーツ用品メーカーに就職した。 | ||||
95 | 企画職を希望してたけど、なかなか競争率が高いらしく、 今は人事部で事務仕事に忙殺される毎日だとか。 | ||||
96 | つまり、それはきっと、 自らが思い描いた将来の姿とは少なからず離れてて… | ||||
97 | 依緒 | Io | 「あ~あ、なんだかなぁ。 あたし、本当はこんなこと言うつもりなんか…」 | ||
98 | 武也 | Takeya | 「嫌ならやめちまえ。 別にお前の進む道が一つだなんて決めた奴はいねぇだろ」 | ||
99 | 依緒 | Io | 「…なんだって?」 | ||
100 | 春希 | Haruki | 「だから、武也…」 | ||
101 | 武也 | Takeya | 「自分から変えてやろうとかもしないくせに、 与えられたことに不満持ってぶちぶち…誰だよお前」 | ||
102 | けれど、そんな弱気な依緒を一番見たくない奴は、 間違いなくこの中にいるわけで。 | ||||
103 | 武也 | Takeya | 「そうだ、なんなら結婚退職しちゃうか? お前の相手になってやってもいいって言う酔狂な奴も、 世界中でたった一人くらいならいるかも…」 | ||
104 | 依緒 | Io | 「………黙れ」 | ||
105 | 雪菜 | Setsuna | 「い、依緒…」 | ||
106 | 依緒 | Io | 「あたしのこと、武也にだけはとやかく言われたくない。 …世界中でたった一人、心底気にくわない奴からは」 | ||
107 | 武也 | Takeya | 「………久々にやるかぁ?」 | ||
108 | 依緒 | Io | 「………望むところだね」 | ||
109 | 春希 | Haruki | 「あ~あ…」 | ||
110 | 場が、変なふうに盛り上がってしまった。 | ||||
111 | 二人は、昔とは違い、 真面目にふざけ、適当に戯言を飛ばし、 熱く罵り合い、ゆるく睨み合う。 | ||||
112 | 大学時代の馴れ合いでもなく、 普段のストレス発散でもなく。 | ||||
113 | きっとそれは、付属の頃よりも… 俺がまだ、二人と会うよりも前の… | ||||
114 | 雪菜 | Setsuna | 「は、春希くん…っ」 | ||
115 | 朋 | Tomo | 「北原さん… なんとかしてくださいよ、あの二人…」 | ||
116 | 俺の両隣の二人が、殺伐とした場の空気に押され、 心細そうに俺の両袖を掴む。 | ||||
117 | だから俺は、 この不毛な争いに決着をつけるべく… | ||||
118 | 春希 | Haruki | 「すいません、店員さん…」 | ||
119 | 店員 | Clerk | 「はい、お伺いしま~す」 | ||
120 | 春希 | Haruki | 「飲み物メニュー、いただけますか?」 | ||
121 | 雪菜&朋 | Setsuna & Tomo | 「………え?」 | ||
122 | ……… | .........
| |||
123 | …… | ......
| |||
124 | … | ...
| |||
125 | 武也 | Takeya | 「よ~しそんじゃもう一軒行こうかもう一軒~! 今度こそ完全決着つけてやるからな~」 | ||
126 | 雪菜 | Setsuna | 「ちょ、ちょっと武也くん… しっかりして」 | ||
127 | 朋 | Tomo | 「…ほんっとおっさんくさくなったなぁ飯塚さん。 これでネクタイ頭に巻いてたら完璧」 | ||
128 | 武也 | Takeya | 「どこ行こっか雪菜ちゃん? 今度はもうちょっと静かに飲めるとこがいいかな~」 | ||
129 | 雪菜 | Setsuna | 「もう帰った方がいいって。 タクシーで家まで送ってあげるから」 | ||
130 | 武也 | Takeya | 「何言ってんの? せっかくの週末じゃん。 俺たちの夜は、まだまだこれからだ…ってかぁ」 | ||
131 | 朋 | Tomo | 「わたし、通りでタクシー捕まえてくるから、 雪菜はここでちょっと見てて…」 | ||
132 | 武也 | Takeya | 「よし、そんじゃこうしよう。 二次会はカラオケってことで。 雪菜ちゃん、一人で歌いたいだけ歌っていいからさ」 | ||
133 | 雪菜 | Setsuna | 「………そ、そう? それじゃあ」 | ||
134 | 朋 | Tomo | 「…何流されそうになってんのよ雪菜」 | ||
135 | 雪菜 | Setsuna | 「い、いい加減わたしだけ呼び捨てはやめてよ!」 | ||
136 | ……… | .........
| |||
137 | 依緒 | Io | 「…ごめん」 | ||
138 | 春希 | Haruki | 「何が?」 | ||
139 | 依緒 | Io | 「見苦しいとこ、見せちゃって…」 | ||
140 | 春希 | Haruki | 「潰れてないだけマシだ。 [R武也^あのバカ]みたいに」 | ||
141 | とはいえ、潰したのは実質俺だけどな… | ||||
142 | 睨み合う二人が見せる、やるせない表情は、 笑って済ませられる雰囲気を超えていた。 …多分、揉め事の本題とは違う方向で。 | ||||
143 | だから俺は、二人の言葉での争いに、 無理やり水を…いや、酒を差した。 | ||||
144 | 俺の提示したルールに、ほっとしたように頷いた二人は、 次から次へとやって来るグラスを次から次へと空にした。 | ||||
145 | 厳格な審判は、決してピッチを上げることを許さず、 そして1時間にもわたる勝負の末… | ||||
146 | 結局、両者の腕が審判によって掲げられ、 そこで一次会はお開きになった。 | ||||
147 | 依緒 | Io | 「最近、あいつとは結構あんな風になっちゃうんだよね。 だからなるべく二人では会わないようにしてるんだけど」 | ||
148 | 春希 | Haruki | 「でも、あいつは会いたがってるんだろ? それも原因の一つなんじゃないのか?」 | ||
149 | 依緒 | Io | 「…正直、戸惑ってるんだよ。 だってあいつ、変わっちゃったんだもん」 | ||
150 | 春希 | Haruki | 「誰のために変わったのか、 本当はわかってるよな?」 | ||
151 | 依緒 | Io | 「………」 | "........."
| |
152 | 依緒の言う通り、武也は変わった。 | ||||
153 | 大学の時には 『○曜日の彼女』なんて言い方が通用するくらい、 多彩な女性関係を誇ってた。 | ||||
154 | それも、俺たち…特に[R誰かさん^いお]に見せつける意図が強く、 その件に関してだけは、誰もがあいつのことを 痛々しく見ていた部分があった。 | ||||
155 | けれど今、武也の回りに女の影は微塵もない。 | ||||
156 | それは本来、喜ぶべきことで… 俺たちも、今の武也の公私ともどもの頑張りぶりは、 心の底から応援してる。 | ||||
157 | 依緒 | Io | 「誰のためかなんて知らない。 けど、誰のせいかってのは知ってる。 …春希のせいだよ」 | ||
158 | 春希 | Haruki | 「“せい”って…」 | ||
159 | 仲間うちの、ただ一人を除いて。 | ||||
160 | 依緒 | Io | 「春希がさ、自分の三年越しの想いを… そして、雪菜の三年越しの想いを実らせちゃったから」 | ||
161 | 春希 | Haruki | 「“ちゃった”って…」 | ||
162 | 依緒 | Io | 「だからさぁ… な~んか、変な影響受けちゃったみたいなんだよねぇ」 | ||
163 | 春希 | Haruki | 「それって…俺が悪いって言うのか?」 | ||
164 | 依緒 | Io | 「ううん、悪くない。 むしろあたしだって、とっても嬉しかった。 …ずっと雪菜の側で、あの子の涙、見てきたからね」 | ||
165 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
166 | 依緒 | Io | 「けどさぁ…まさかこんなふうに、 武也が、あたしたちのケースに当てはめようとするなんて、 思いもしなかったんだよねぇ」 | ||
167 | 武也と依緒は、知り合ってもう10年になる。 | ||||
168 | 依緒 | Io | 「あのさ… あたしたちが春希と知り合う前に、 あたしがあいつに何したか知ってる?」 | ||
169 | 春希 | Haruki | 「ああ… 親友、だから」 | ||
170 | 依緒 | Io | 「そっか… なら、あたしがためらうのも少しはわかるよね?」 | ||
171 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
172 | 依緒 | Io | 「あんたなら…わかるよね。 雪菜のこと、三年も避け続けたあんたなら」 | ||
173 | 俺が武也と知り合ったとき、 二人はとっくに腐れ縁だった。 | ||||
174 | 春希 | Haruki | 「武也のこと…嫌いか?」 | ||
175 | 依緒 | Io | 「嫌いな奴と10年一緒にいるほど、 あたしは自分の人生を捨ててない」 | ||
176 | 春希 | Haruki | 「そう、か」 | ||
177 | つまり、俺と雪菜なんかよりよっぽど歴史のある、 由緒正しい腐れ縁なんだ。 | ||||
178 | 雪菜 | Setsuna | 「ねぇ、春希く~ん!」 | ||
179 | 春希 | Haruki | 「なんだ~?」 | ||
180 | 雪菜 | Setsuna | 「あのさぁ、 こっち多数決でカラオケって流れになってるんだけど、 そっちの二票はどうかなぁ?」 | ||
181 | 春希 | Haruki | 「………だってよ」 | ||
182 | 依緒 | Io | 「………」 | "........."
| |
183 | 春希 | Haruki | 「勝手にしろ~!」 | ||
184 | 雪菜 | Setsuna | 「りょうか~い! 今からお店押さえてきま~す!」 | ||
185 | 朋 | Tomo | 「行くのは構わないけどさぁ、 せめて雪菜が5曲入れる間に1曲くらいは歌わせてよ?」 | ||
186 | 雪菜 | Setsuna | 「デュエットしようよデュエット! あと、コーラス入れてくれてもいいし」 | ||
187 | 朋 | Tomo | 「…自分が遠慮するという選択肢はないのね」 | ||
188 | 依緒 | Io | 「…ねぇ、春希」 | ||
189 | 春希 | Haruki | 「ん?」 | ||
190 | 大きく手を振る雪菜に、苦笑混じりで振り返しながら、 また、依緒がぽつりと呟く。 | ||||
191 | 依緒 | Io | 「あんたは、これからどうするの? 雪菜とのこと…どうするつもり?」 | ||
192 | 春希 | Haruki | 「…今さらそんなこと聞くのかよ?」 | ||
193 | それも結構、核心中の核心を。 | ||||
194 | 依緒 | Io | 「きっと、あんたらがもう一つ先に進んだら、 決定的な結論を出したらさ… 武也は、今よりもっと決意を固めると思うんだ」 | ||
195 | 春希 | Haruki | 「ん…」 | ||
196 | 依緒の、武也に関する認識は、 傲慢なほどに揺るぎない。 | ||||
197 | けどそれは、今のこの二人を見ていたら、 誰もが一時間で辿り着く結論でもあったりして。 | ||||
198 | 依緒 | Io | 「そしたらさ… あたしの方も、そろそろ腹くくらなくちゃ…」 | ||
199 | 春希 | Haruki | 「え…?」 | ||
200 | 依緒 | Io | 「ね、春希」 | ||
201 | そして今、依緒は… | ||||
202 | 誰もが結構見抜けなかった結論を、 さらりと口に出したような気がしないでもなかった。 | ||||
203 | 依緒 | Io | 「あんたは…いつ、決心するの?」 | ||
204 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
205 | 決心…か。 | ||||
206 | 依緒 | Io | 「あれから二年、だよね。 もう、完全に独り立ちできてるよね。 雪菜…待ってるよね?」 | ||
207 | 決心なんて… そんなの、とっくの昔にできてる。 | ||||
208 | 後はタイミングだけ。 ただ、それだけなんだ。 | ||||
209 | 春希 | Haruki | 「依緒、俺は…」 | ||
210 | 依緒 | Io | 「クリスマスにヨーロッパかぁ… いいよねぇ、あんたたちはロマンチックで。 あたし、有海誘われてんだよ。定番過ぎない?」 | ||
211 | 春希 | Haruki | 「………それはヤバかったな。 出張がなければ俺たちも有海だった」 | ||
212 | 依緒 | Io | 「勘弁してよあんたたち…」 | ||
213 | 春希 | Haruki | 「しょうがないだろ。 あいつ、俺のそっち方面の師匠でもあるんだから」 | ||
214 | そっか。 『クリスマスにヨーロッパ』か… | ||||
215 | つまりその“タイミング”ってのは… | ||||
216 | すぐそこにまで、迫ってきてるって、こと。 |
Script Chart
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If you are below the age of consent in your respective country, you are advised to not read any adult content (marked by cells with red backgrounds) where applicable. Otherwise, you are agreeing to the terms of our Disclaimer.
Introductory Chapter | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
1001 | 1008 | 1009 | 1010 | 1011 | 1012 | 1013 |
1002 | 1008_020 | 1009_020 | 1010_020 | 1011_020 | 1012_020 | |
1003 | 1008_030 | 1009_030 | 1010_030 | 1011_030 | 1012_030 | |
1004 | 1008_040 | 1010_040 | 1012_030_2 | |||
1005 | 1008_050 | 1010_050 | ||||
1006 | 1010_060 | |||||
1006_2 | 1010_070 | |||||
1007 |
Closing Chapter | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Common | Setsuna | Koharu | Chiaki | Mari | ||||||
2001 | 2011 | 2020 | 2027 | 2301 | 2309 | 2316 | 2401 | 2408 | 2501 | 2510 |
2002 | 2012 | 2021 | 2028 | 2302 | 2310 | 2317 | 2402 | 2409 | 2502 | 2511 |
2003 | 2013 | 2022 | 2029 | 2303 | 2311 | 2318 | 2403 | 2410 | 2503 | 2512 |
2004 | 2014 | 2023 | 2030 | 2304 | 2312 | 2319 | 2404 | 2411 | 2504 | 2513 |
2005 | 2015 | 2024 | 2031 | 2305 | 2313 | 2320 | 2405 | 2412 | 2505 | 2514 |
2006 | 2016 | 2025 | 2032 | 2306 | 2314 | 2321 | 2406 | 2413 | 2506 | 2515 |
2007 | 2017 | 2026 | 2033 | 2307 | 2315 | 2322 | 2407 | 2507 | 2516 | |
2008 | 2018 | 2308 | 2508 | 2517 | ||||||
2009 | 2019 | 2509 | ||||||||
2010 | ||||||||||
Setsuna | Koharu | Chiaki | Mari | |||||||
2031_2 | 2312_2 | 2401_2 | 2504_2 | 2511_2 | ||||||
2031_3 | 2313_2 | 2402_2 | 2507_2 | 2513_2 | ||||||
2031_4 | 2313_3 | 2402_3 |
Coda | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Common | Kazusa (True) | Setsuna (True) | Kazusa (Normal) | ||||||
3001 | 3008 | 3014_2 | 3020 | 3101 | 3107 | 3201 | 3207 | 3901 | 3907 |
3002 | 3009 | 3014_3 | 3021 | 3102 | 3108 | 3202 | 3208 | 3902 | 3908 |
3003 | 3010 | 3015 | 3022 | 3103 | 3109 | 3203 | 3209 | 3903 | 3909 |
3004 | 3011 | 3016 | 3023 | 3104 | 3110 | 3204 | 3210 | 3904 | |
3005 | 3012 | 3017 | 3024 | 3105 | 3111 | 3205 | 3211 | 3905 | |
3006 | 3013 | 3018 | 3106 | 3206 | 3906 | ||||
3007 | 3014 | 3019 | |||||||
Common | Setsuna (True) | Kazusa (Normal) | |||||||
3001_2 | 3210_2 | 3901_2 | 3906_2 | ||||||
3015_2 | 3902_2 | 3907_2 | |||||||
3902_3 | 3907_3 | ||||||||
3904_2 |
Mini After Story and Extra Episode | |||
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The Path Back to Happiness | The Path Forward to Happiness | Dear Mortal Enemy | |
6001 | 6101 | 4000 | 4005 |
6002 | 6102 | 4001 | 4006 |
6003 | 6103 | 4002 | 4007 |
6004 | 6104 | 4003 | 4008 |
6005 | 4004 | 4009 |
Novels | |||||
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The Snow Melts, And Until The Snow Falls | The Idol Who Forgot How to Sing | Twinkle Snow ~Reverie~ | After the Festival ~Setsuna's Thirty Minutes~ | His God, Her Savior | |
5000 | 5100 | 5200 | 5205 | 5300 | 5400 |
5001 | 5101 | 5201 | 5206 | 5301 | 5401 |
5002 | 5102 | 5202 | 5207 | 5302 | |
5003 | 5103 | 5203 | 5208 | 5303 | |
5004 | 5104 | 5204 | 5209 |
Short Stories | |||
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Princess Setsuna's Distress and Her Minister's Sinister Plan | Koharu Climate After the Passing of the Typhoon | This isn't the Season for White Album | Todokanai Koi, Todoita |
7000 | 7100 | 7200 | 7300 |