White Album 2/Script/6004
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Translation Notes[edit]
Text[edit]
Speaker | Text | Comment | |||
---|---|---|---|---|---|
Line # | JP | EN | JP | EN | |
1 | かずさ | Kazusa | 「相変わらず日本の電車は…… なんでこんなに混んでるんだ」 | ||
2 | 春希 | Haruki | 「そうやって他と比べられるほど、 向こうで電車乗ってないだろお前。 ほとんど出歩かないし、タクシーばっかだし」 | ||
3 | かずさ | Kazusa | 「ちゃんと領収証もらってるだろ。 マネージャーにとやかく言われる筋合いはないぞ」 | ||
4 | 春希 | Haruki | 「必要経費だって無尽蔵じゃないんだぞ…… お前ら親子はもう少し浪費癖をなんとかだな」 | ||
5 | かずさ | Kazusa | 「大丈夫、そのためのお前や美代ちゃんだ。 二人がいる限り冬馬曜子オフィスは安泰だな」 | ||
6 | ……などと、すでに本質とはかけ離れた会話をしつつ、 俺たちは、数年ぶりの車窓の風景に見入っていた。 | ||||
7 | 日本に戻って来てから数日。 あと二日で今年も終わる12月30日。 | ||||
8 | 俺たちは相変わらず、突然訪れた、 宙に浮いたような先の見えない休暇の中にいた。 | ||||
9 | 車内アナウンス | Train Announcement | 「岩津町、岩津町です。 お降りの方はドアにお気をつけください」 | ||
10 | かずさ | Kazusa | 「ほら、降りるぞ。 さっさとしろ」 | ||
11 | 春希 | Haruki | 「わかってる。 わかってるからネクタイは引っ張るなよ? あれ危険だからな」 | ||
12 | かずさ | Kazusa | 「よくもまぁ、そんな昔のこと覚えてるもんだな」 | ||
13 | 春希 | Haruki | 「そう言えるお前だって覚えてんじゃないか」 | ||
14 | かずさ | Kazusa | 「…………」 | ||
15 | 春希 | Haruki | 「懐かしいか?」 | ||
16 | かずさ | Kazusa | 「さすがにな。 子供の頃からずっと使ってた駅だし」 | ||
17 | そんな俺たちが今日訪れたのは、 電車のアナウンスにもあった通り、岩津町。 | ||||
18 | かずさが、高校を卒業するまで住んでいた街。 | ||||
19 | かずさ | Kazusa | 「あ、そうだ。 手土産どうする? 手ぶらってわけにはいかないだろ」 | ||
20 | 春希 | Haruki | 「そういう気遣いができるようになったのは評価するが、 御宿にいる時に言ってくれ。 ここら辺だとコンビニくらいしかないぞ」 | ||
21 | かずさ | Kazusa | 「春希、お前、コンビニスイーツを甘く見てるだろ。 昔と違って、十分によそ行きのお土産レベルのものも あるんだぞ?」 | ||
22 | 春希 | Haruki | 「ただそれ買いだけだろお前。 そうなんだろ」 | ||
23 | そして、今は…… | ||||
24 | ………… | ||||
25 | かずさ | Kazusa | 「…………」 | ||
26 | 春希 | Haruki | 「…………」 | ||
27 | わかってはいたことだけど…… | ||||
28 | こうして目の当たりにすると、やっぱり言葉が出ない。 | ||||
29 | だって、俺たちはかつて、 廃墟寸前だったこの家を見ているんだから。 | ||||
30 | 表札がなくなってて、 売家の看板があって、 庭は荒れ放題で。 | ||||
31 | かずさ | Kazusa | 「本当に、元通りなんだな」 | ||
32 | 春希 | Haruki | 「……だな」 | ||
33 | でも、今のこの場所は、 その頃よりもさらに古い記憶を呼び覚ます。 | ||||
34 | その大きさに、呆れて見上げたあの日のことを。 | ||||
35 | その豪華さに、戸惑いつつ上がったあの日のことを。 | ||||
36 | そして、そんな豪邸にたった一人で住む少女に、 憧れと、尊敬と、シンパシーを感じた、あの日のことを。 | ||||
37 | 春希 | Haruki | 「行こうか」 | ||
38 | かずさ | Kazusa | 「うん」 | ||
39 | そんな、色々な懐かしさを抱えながら、 俺たちは、かつての彼女の家のチャイムを押した。 | ||||
40 | ……チャイムの音も、昔通りだった。 | ||||
41 | 曜子 | Youko | 「よく来たわね二人とも、お久しぶり~」 | ||
42 | かずさ | Kazusa | 「昨日も一昨日も一緒に食事しただろ」 | ||
43 | 曜子 | Youko | 「やぁねかずさ、社交辞令じゃない、通過儀礼じゃない、 お約束じゃない~」 | ||
44 | 玄関で俺たちを出迎えてくれたのは、 この家の“現在の”オーナーだった。 | ||||
45 | いや、昔からずっとオーナーではあったんだけど。 | ||||
46 | 春希 | Haruki | 「本当に、帰ってきたんですね」 | ||
47 | 曜子 | Youko | 「まあね、結局何年経っても売れなかったし」 | ||
48 | 曜子さんがこの家に再び住むのを決めたのは半年前。 | ||||
49 | それから先月までかけて改装し、 今日がやっと、俺たちへのお披露目の日となった。 | ||||
50 | いつもなら、『経費の無駄遣い』とか言って 猛反対するはずの俺も工藤さんも、 このワガママだけは、見過ごさない訳にはいかなかった。 | ||||
51 | かずさ | Kazusa | 「なんか、変わってないな……」 | ||
52 | 曜子 | Youko | 「変えなかったのよ、全部。 かえってお金かかっちゃったけどね」 | ||
53 | 内装も、完全に元通りだった。 | ||||
54 | 俺がこの家に足を踏み入れたのは、 ほんの数日間だったけれど。 | ||||
55 | それでも、一気に懐かしさがこみ上げてくるくらいには、 俺の記憶の底には、この家の原風景が鮮明に残っていた。 | ||||
56 | 曜子 | Youko | 「本当は美代ちゃんも一緒に住むことになってるんだけど、 今日は『親子水入らずでどうぞ』って、 実家に帰っちゃっててさ」 | ||
57 | かずさ | Kazusa | 「別に遠慮しなくてもよかったのに」 | ||
58 | 曜子 | Youko | 「本当にね~。 あの子、実家に帰ったって、親に『結婚しろ』って うるさく言われるだけなのに」 | ||
59 | 春希 | Haruki | 「あなたは少し遠慮しましょうね。言動とか」 | ||
60 | まぁ、あの頃のこの家には、 こんな愉快な親子漫才はなかったけれど。 | ||||
61 | ………… | ||||
62 | 曜子 | Youko | 「どう?」 | ||
63 | かずさ | Kazusa | 「……駄目だ、全然甘くない」 | ||
64 | 曜子 | Youko | 「おっかしいわねぇ。 こんなに砂糖ぶち込んでるのに」 | ||
65 | かずさ | Kazusa | 「試しにメープルシロップ入れてみるか?」 | ||
66 | 曜子 | Youko | 「あら、なんか水飴みたいになってきたわね。 ま、これはこれで……」 | ||
67 | 春希 | Haruki | 「いや、黒豆を煮るのはさ、 もうちょっと弱火で時間をかけて…… だいたい、そんなに煮詰めると皮が破れて……」 | ||
68 | かずさ | Kazusa | 「口だけ野郎は黙ってろ」 | ||
69 | 曜子 | Youko | 「ほんと、男ってこれだから…… 普段料理なんかしないくせに、 文句だけは一人前でね~」 | ||
70 | 春希 | Haruki | 「あなたたちよりはやってるよ! だから手伝わせてよ!?」 | ||
71 | 改装したばかりの真新しいキッチンは、 今、まさに蹂躙されようとしていた。 | ||||
72 | どぎついまでの甘い臭いが立ち込め、 白くねばつきそうな湯気が漂う。 | ||||
73 | テーブル上の食材や調味料は無造作に散らかりまくり、 もう、誰の手をもってしても元通りにするのは不可能。 | ||||
74 | 曜子 | Youko | 「あなたは邪魔をしないの。 おせち料理ってのは、 母親から娘に受け継ぐものなんだから」 | ||
75 | 春希 | Haruki | 「そもそも受け継いでない母親が 何を娘に伝えようっていうんですか……」 | ||
76 | かずさ | Kazusa | 「だいたい、正月におせち食べたいって 最初に言い出したのはお前じゃないか。 ほんと、訳わかんない奴だな」 | ||
77 | 春希 | Haruki | 「食べたいとは言ったけど、 作って欲しいとは一度も言ってないんだけど……」 | ||
78 | だってこうなることはわかってたし。 | ||||
79 | きっと後片付けの頃には すっかり飽きてるんだろうな……二人とも。 | ||||
80 | かずさ | Kazusa | 「とにかく、お前はしばらく昼寝でもしてろ。 夕飯の時間になったら起こしてやるから」 | ||
81 | 春希 | Haruki | 「わかったよ……」 | ||
82 | と、これ以上ハラハラするのも精神衛生上よくないので、 絶望するのは後回しにして、 俺はリビングから離れることにした。 | ||||
83 | 曜子 | Youko | 「あら? 栗きんとん用の甘露煮がなくなってる…… ちょっとかずさ!」 | ||
84 | かずさ | Kazusa | 「最後に食べたのあたしじゃないぞ。 ちゃんと二個残しておいた」 | ||
85 | 曜子 | Youko | 「私だって五個くらいしかつまんでないわよ?」 | ||
86 | 春希 | Haruki | 「…………」 | ||
87 | 少なくとも完成はするだろうと思ってたけど、 ちょっとばかり認識を改めないといけないのかもしれない。 | ||||
88 | ………… | ||||
89 | 春希 | Haruki | 「あ……」 | ||
90 | 地下への階段を下りて、 普通のより数倍は分厚いドアを押し開くと…… | ||||
91 | そこには、昔と全く同じ光景が広がっていた。 | ||||
92 | 防音の行き届いた、だだっ広いスタジオの片隅には、 今でもかずさが愛用しているのと同じメーカーのピアノ。 | ||||
93 | ギターに、ドラムに、サックスに…… たくさんの種類の楽器が、所狭しと転がって。 | ||||
94 | 大きな防音ガラスの窓で仕切られたコントロールルームも、 ちゃんと新しい機材が入っているようだった。 | ||||
95 | ……本当に使うかもわからないってのに。 | ||||
96 | そんな、あまりにも元通りなこだわりに、 ついつい、困惑気味の笑みが自然と浮かんでしまう。 | ||||
97 | 数年前、俺がまだ、付属の学生だった頃。 | ||||
98 | この家には、この部屋には、 ひねくれた孤独な少女が一人いただけだった。 | ||||
99 | その子は、他人にはまるで関心がない様子だったけれど、 でも、楽器をへたくそに弾く奴にだけには違ってた。 | ||||
100 | 音楽に真面目に向き合わない不届きものを この部屋に連れてきて、 弾いて、弾かせて、罵倒して…… | ||||
101 | そして、いっちょまえの演奏ができるようになるまで、 つきっきりで鍛えてくれた。 | ||||
102 | だから不届きものの俺は、 そんな厳しい彼女に頼って、甘えて、つきまとって。 | ||||
103 | 何度もこの部屋に来て、何度も弾いて、 何度もうたた寝して、何度も朝を迎えて。 | ||||
104 | そして五年以上もかけて、夢を叶えた。 | ||||
105 | その、ひねくれた少女と仲良くなるという、 とてもハードルの高い、夢を。 | ||||
106 | かずさ | Kazusa | 「なんだよ、ここにいたのか」 | ||
107 | 春希 | Haruki | 「あ……」 | ||
108 | その声を聞いた瞬間、 俺は、自分の手の中のギターを、 ぎこちなくスタンドに戻した。 | ||||
109 | かずさ | Kazusa | 「へぇ…… よくもまぁ、ここまで再現したもんだ」 | ||
110 | 春希 | Haruki | 「そ、そうだな」 | ||
111 | でもかずさは、そんな俺の不自然な挙動に、 見て見ぬふりをしてくれた。 | ||||
112 | 多分だけど…… 俺が、かずさの前で二度とギターを弾かない理由を、 理解してくれているから。 | ||||
113 | かずさ | Kazusa | 「へぇ、ちゃんと調律もしてある。 あの人の凝り性も大概だな」 | ||
114 | けれどかずさは、 そんな、俺に対する気遣いをおくびにも出さず、 懐かしそうにピアノを撫でる。 | ||||
115 | 春希 | Haruki | 「やっぱ、ここも懐かしいか?」 | ||
116 | かずさ | Kazusa | 「ま、どこもかしこも懐かしいけど、 ここは、日本で一番長い時間を過ごした場所だから、な」 | ||
117 | 春希 | Haruki | 「そっか……そうだよな」 | ||
118 | 昔ここにあった、あのピアノは、 今はウィーンで、未だかずさの側にあるけれど。 | ||||
119 | それでも、あのピアノに相対するのと同じ表情で、 かずさは新しいピアノに、軽く挨拶をした。 | ||||
120 | かずさ | Kazusa | 「あ、ところで春希、 そろそろ晩ご飯だぞ。 今、ピザが届いたから呼びに来たんだ」 | ||
121 | 春希 | Haruki | 「……さっきまで何か作ってなかったか?」 | ||
122 | かずさ | Kazusa | 「わかってないな。 おせちは正月料理だろ。 年を越す前に食べてどうする」 | ||
123 | 春希 | Haruki | 「別に、味見くらいしたっていいだろ」 | ||
124 | かずさ | Kazusa | 「それは明日以降にしろ。 ……またチャレンジするから」 | ||
125 | 春希 | Haruki | 「……いや、いい」 | ||
126 | 春希 | Haruki | 「じゃ、俺は客間で寝てきますから」 | ||
127 | 冬馬家のリビングで、三人で食卓を囲み、 くっだらないバラエティを文句言いながら見て、 くっだらない話に花を咲かせて。 | ||||
128 | こんなふうに、この人たちと、 穏やかで無駄な時間を過ごすなんて、 かつては想像もできなかったけれど…… | ||||
129 | それでも、というか、だからこそ、 貴重で大切は時間は速く過ぎるもので、 置時計の表示は、そろそろ日付を変えようとしていた。 | ||||
130 | いよいよ、今年最後の日へと。 | ||||
131 | 曜子 | Youko | 「何よ、ここにいればいいじゃない。 眠くなったらみんなで雑魚寝すればいいんだし」 | ||
132 | 春希 | Haruki | 「いえ、今日は久しぶりに親子水入らずでどうぞ」 | ||
133 | 曜子 | Youko | 「え~、本当に行っちゃうんだ。 別にどっち襲っちゃっても構わないのに~」 | ||
134 | かずさ | Kazusa | 「あたしが構うんだよ母さん……」 | ||
135 | 曜子 | Youko | 「うわガチだ。 我が子ながら引くわ~」 | ||
136 | なお、どこまで年の瀬が差し迫って来ていても、 冬馬家の親子漫才はとどまるところを知らなかった。 | ||||
137 | 春希 | Haruki | 「じゃ、かずさ、明日な」 | ||
138 | かずさ | Kazusa | 「朝方にそっち行くから」 | ||
139 | 春希 | Haruki | 「わかった、おやすみ」 | ||
140 | かずさ | Kazusa | 「うん」 | ||
141 | お酒と食事と、そんな仲睦まじいやり取りでお腹を満たし、 安堵と苦笑と、そして、ほんのちょっとの嫉妬を交えつつ、 俺は、リビングを後にする。 | ||||
142 | いよいよ迫った、今年最後の日のために。 そして、…………のために。 | ||||
143 | ………… | ||||
144 | 曜子 | Youko | 「ほんっと、ウザいくらい仲いい夫婦…… いい男捕まえたわよね、あなたは」 | ||
145 | かずさ | Kazusa | 「そんなことないぞ? 細かくて、うるさくて、鬱陶しくて、酷い奴だ」 | ||
146 | 曜子 | Youko | 「ふぅん?」 | ||
147 | かずさ | Kazusa | 「ただ…… あたしにとって、たった一人の男ってだけだ」 | ||
148 | 曜子 | Youko | 「……私はそういうふうに、 男に手札を全部晒すような真似はしなかったけどね」 | ||
149 | かずさ | Kazusa | 「なんでだ?」 | ||
150 | 曜子 | Youko | 「いや、だから恋愛ってのはね…… はぁ、やっぱり育てかた間違えたかしら」 | ||
151 | ………… | ||||
152 | かずさ | Kazusa | 「……ふぅ」 | ||
153 | 曜子 | Youko | 「もっと飲む?」 | ||
154 | かずさ | Kazusa | 「母さんはもうやめとけ」 | ||
155 | 曜子 | Youko | 「じゃ、そろそろ寝ましょうか? 一緒のお布団で」 | ||
156 | かずさ | Kazusa | 「……子供の頃だって、 一度もそんなことしなかったじゃないか。 なに今になっていい親の顔してるんだよ」 | ||
157 | 曜子 | Youko | 「違うわよ……これはね、『今まで子供を 散々放っておいたくせに、老後の面倒だけは 見させようって腹黒い親の顔』ってやつ」 | ||
158 | かずさ | Kazusa | 「あたしは……」 | ||
159 | 曜子 | Youko | 「そうよ、私は腹黒いのよ。 だから、あなたたちが帰る家を、用意したの」 | ||
160 | かずさ | Kazusa | 「やっぱりそのためか……この家に戻ったのって」 | ||
161 | 曜子 | Youko | 「いつでも戻ってきなさい。 私は、本気よ?」 | ||
162 | かずさ | Kazusa | 「母さん……」 | ||
163 | 曜子 | Youko | 「それに、これはあなたたちにとってもチャンスよ?」 | ||
164 | かずさ | Kazusa | 「何がだよ」 | ||
165 | 曜子 | Youko | 「だって、もし、私の病気が治ったとしても、 あなたよりも先に逝くのは確実なんだから…… そしたら労せずにこの家が手に入るわよ?」 | ||
166 | かずさ | Kazusa | 「莫大な相続税で首が回らなくなる未来しか見えないね」 | ||
167 | 曜子 | Youko | 「そのくらいは、あなたの愛する旦那に、 鵜飼いでもして稼いでもらいなさいな」 | ||
168 | かずさ | Kazusa | 「なぁ、念のために聞くけど、 そこで言う『鵜』ってさ……」 | ||
169 | ………… | ||||
170 | かずさ | Kazusa | 「っ……やっぱり、無理だよ」 | ||
171 | 曜子 | Youko | 「どうして? ここは、あなたが生まれた場所なのよ?」 | ||
172 | かずさ | Kazusa | 「知ってるだろ? あたしたちには、本当はここにいちゃいけない訳が……」 | ||
173 | 曜子 | Youko | 「ない! ……もう、ない」 | ||
174 | かずさ | Kazusa | 「母さん……?」 | ||
175 | 曜子 | Youko | 「あなたにも、彼にも、もう、そんなものは、ない。 とっくに、許されてる」 | ||
176 | かずさ | Kazusa | 「だ、だけど、あたしは……」 | ||
177 | 曜子 | Youko | 「向こうの家に、何度も通ったわ」 | ||
178 | かずさ | Kazusa | 「え……」 | ||
179 | 曜子 | Youko | 「最初の頃は全然会ってくれなかったけれど、 五回目で、やっと家に上げてくれた」 | ||
180 | かずさ | Kazusa | 「母さん……?」 | ||
181 | 曜子 | Youko | 「それからも、何度会ったか覚えてないけれど…… でも、向こうの娘さんも一緒に説得してくれてね。 それで、今は……」 | ||
182 | かずさ | Kazusa | 「何、やってんだよ……」 | ||
183 | 曜子 | Youko | 「『何やってんのよ』ってのは、 本当は、こっちの台詞なんだけどね」 | ||
184 | かずさ | Kazusa | 「なんで母さんが、そんな……」 | ||
185 | 曜子 | Youko | 「そりゃ、子供がやらかしちゃったんだもの、 親が謝らない訳にはね」 | ||
186 | かずさ | Kazusa | 「そんなこと、母さんがしちゃ駄目だろ。 だって、あたしはもう、大人なんだぞ?」 | ||
187 | 曜子 | Youko | 「いくつになっても、子供は子供。 それにあなたの場合、精神年齢の方は、ねぇ?」 | ||
188 | かずさ | Kazusa | 「……っ」 | ||
189 | 曜子 | Youko | 「や~、久しぶり、っていうか、 生まれて初めて『あ~親やってんな~』って、 心から実感できた瞬間だったかもね」 | ||
190 | かずさ | Kazusa | 「馬鹿……馬鹿ぁっ」 | ||
191 | 曜子 | Youko | 「ま、そんなわけでね…… 私の野望を阻むものは、もう、この国にはいない訳よ」 | ||
192 | かずさ | Kazusa | 「ぅ、ぅぅ……っ」 | ||
193 | 曜子 | Youko | 「だからかずさ…… いつでもいいから、ここに帰ってきてよね……?」 | ||
194 | 曜子 | Youko | 「日本でコンサートやったり、 お盆や正月に帰省したり、 友達に会いに来る時だけでもいいからさ」 | ||
195 | 曜子 | Youko | 「あと、あと…… ちょっとでもホームシックにかかったりしたら、 遠慮なく、とっとと帰ってきなさい」 | ||
196 | かずさ | Kazusa | 「母さん……母さん……っ」 | ||
197 | 曜子 | Youko | 「なぁに? もうおねむ? じゃあ、一緒に寝よ?」 | ||
198 | かずさ | Kazusa | 「ううん…… その前に、さ」 | ||
199 | 曜子 | Youko | 「え?」 | ||
200 | かずさ | Kazusa | 「お母さん……」 | ||
201 | 曜子 | Youko | 「え、え?」 | ||
202 | かずさ | Kazusa | 「長い間……お世話になりました」 | ||
203 | 曜子 | Youko | 「…………」 | ||
204 | かずさ | Kazusa | 「…………」 | ||
205 | 曜子 | Youko | 「…………ぷっ、 く、くくく……あははっ」 | ||
206 | かずさ | Kazusa | 「な、なんだよ……」 | ||
207 | 曜子 | Youko | 「だ、だって、だって! かずさが、あのかずさが……っ、 三つ指ついて『お世話になりました~』だって~!」 | ||
208 | かずさ | Kazusa | 「先に似合わないことやったのそっちだろ!」 | ||
209 | 曜子 | Youko | 「だってだってだって~! あ、あはは、あはははははは~っ」 | ||
210 | かずさ | Kazusa | 「うるさい、うるさいっ! あたし、あんたがしてくれたこと、 一生忘れないからな!」 | ||
211 | 曜子 | Youko | 「私も、私も……っ、 さっきのかずさ、一生忘れないから~、 あっははははは~、ひぅっ、ん、あははは……っ」 | ||
212 | かずさ | Kazusa | 「か、母さんの、馬鹿……っ、 ふえぇぇぇ……う、あはははは……っ」 |
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Introductory Chapter | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
1001 | 1008 | 1009 | 1010 | 1011 | 1012 | 1013 |
1002 | 1008_020 | 1009_020 | 1010_020 | 1011_020 | 1012_020 | |
1003 | 1008_030 | 1009_030 | 1010_030 | 1011_030 | 1012_030 | |
1004 | 1008_040 | 1010_040 | 1012_030_2 | |||
1005 | 1008_050 | 1010_050 | ||||
1006 | 1010_060 | |||||
1006_2 | 1010_070 | |||||
1007 |
Closing Chapter | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Common | Setsuna | Koharu | Chiaki | Mari | ||||||
2001 | 2011 | 2020 | 2027 | 2301 | 2309 | 2316 | 2401 | 2408 | 2501 | 2510 |
2002 | 2012 | 2021 | 2028 | 2302 | 2310 | 2317 | 2402 | 2409 | 2502 | 2511 |
2003 | 2013 | 2022 | 2029 | 2303 | 2311 | 2318 | 2403 | 2410 | 2503 | 2512 |
2004 | 2014 | 2023 | 2030 | 2304 | 2312 | 2319 | 2404 | 2411 | 2504 | 2513 |
2005 | 2015 | 2024 | 2031 | 2305 | 2313 | 2320 | 2405 | 2412 | 2505 | 2514 |
2006 | 2016 | 2025 | 2032 | 2306 | 2314 | 2321 | 2406 | 2413 | 2506 | 2515 |
2007 | 2017 | 2026 | 2033 | 2307 | 2315 | 2322 | 2407 | 2507 | 2516 | |
2008 | 2018 | 2308 | 2508 | 2517 | ||||||
2009 | 2019 | 2509 | ||||||||
2010 | ||||||||||
Setsuna | Koharu | Chiaki | Mari | |||||||
2031_2 | 2312_2 | 2401_2 | 2504_2 | 2511_2 | ||||||
2031_3 | 2313_2 | 2402_2 | 2507_2 | 2513_2 | ||||||
2031_4 | 2313_3 | 2402_3 |
Coda | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Common | Kazusa (True) | Setsuna (True) | Kazusa (Normal) | ||||||
3001 | 3008 | 3014_2 | 3020 | 3101 | 3107 | 3201 | 3207 | 3901 | 3907 |
3002 | 3009 | 3014_3 | 3021 | 3102 | 3108 | 3202 | 3208 | 3902 | 3908 |
3003 | 3010 | 3015 | 3022 | 3103 | 3109 | 3203 | 3209 | 3903 | 3909 |
3004 | 3011 | 3016 | 3023 | 3104 | 3110 | 3204 | 3210 | 3904 | |
3005 | 3012 | 3017 | 3024 | 3105 | 3111 | 3205 | 3211 | 3905 | |
3006 | 3013 | 3018 | 3106 | 3206 | 3906 | ||||
3007 | 3014 | 3019 | |||||||
Common | Setsuna (True) | Kazusa (Normal) | |||||||
3001_2 | 3210_2 | 3901_2 | 3906_2 | ||||||
3015_2 | 3902_2 | 3907_2 | |||||||
3902_3 | 3907_3 | ||||||||
3904_2 |
Mini After Story and Extra Episode | |||
---|---|---|---|
The Path Back to Happiness | The Path Forward to Happiness | Dear Mortal Enemy | |
6001 | 6101 | 4000 | 4005 |
6002 | 6102 | 4001 | 4006 |
6003 | 6103 | 4002 | 4007 |
6004 | 6104 | 4003 | 4008 |
6005 | 4004 | 4009 |
Novels | |||||
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The Snow Melts, And Until The Snow Falls | The Idol Who Forgot How to Sing | Twinkle Snow ~Reverie~ | After the Festival ~Setsuna's Thirty Minutes~ | His God, Her Savior | |
5000 | 5100 | 5200 | 5205 | 5300 | 5400 |
5001 | 5101 | 5201 | 5206 | 5301 | 5401 |
5002 | 5102 | 5202 | 5207 | 5302 | |
5003 | 5103 | 5203 | 5208 | 5303 | |
5004 | 5104 | 5204 | 5209 |
Short Stories | |||
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Princess Setsuna's Distress and Her Minister's Sinister Plan | Koharu Climate After the Passing of the Typhoon | This isn't the Season for White Album | Todokanai Koi, Todoita |
7000 | 7100 | 7200 | 7300 |