White Album 2/Script/3211

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1	？？？	???	「え…ないんですか？」
2	書店員	Bookstore Clerk	「申し訳ありません。 アンサンブル増刊号は、在庫は予約分だけで… 一般販売分は昨日のうちに完売してしまいました」
3	？？？	???	「昨日って… 発売日、今日だって聞いてたけど？」
4	書店員	Bookstore Clerk	「そうなんですけど… 大変申し訳ありません」
5	？？？	???	「…参ったな。 これで５軒目なんだけど」
6	書店員	Bookstore Clerk	「あの…よろしければご注文お承りしますけど？」
7	？？？	???	「注文かぁ…」
8	書店員	Bookstore Clerk	「問屋から増版が決まったとの連絡も来ていますし、 それほどお待たせすることもないと思いますが…」
9	？？？	???	「どうしようかな… 待ってれば別方面から手に入るんだけど」
10	書店員	Bookstore Clerk	「あ、あの…キャンセルも効きますから、 念のためということでいかがですか？」
11	？？？	???	「…店員さんがそんなこと言っていいの？」
12	書店員	Bookstore Clerk	「ええ、もちろん。 当店ではお客様にご満足いただくことが第一ですから」
13	？？？	???	「…そうだな。これも記念だ。 それじゃ、注文お願いします」
14	書店員	Bookstore Clerk	「ありがとうございます！ では、お取り置きいたしますので、 こちらにお名前をお願いします」
15	？？？	???	「…これ、色紙だけど？」
16	書店員	Bookstore Clerk	「………ご本人ですよね？ サインお願いします」
17	かずさ	Kazusa	「………」	"........."
18			………	.........
19	春希	Haruki	「え…？」
20	浜田	Hamada	「すまん！ 見本誌手に入らなかった」
21	春希	Haruki	「そんな… 三冊頼んでおいたのに、一冊もですか？」
22	浜田	Hamada	「書店の発注数がこっちの予想を完全に越えててな… サンプルも全部持ってかれたんだよ」
23	春希	Haruki	「…そんなに？」
24			アンサンブル特別増刊号、冬馬かずさ特集…
25	浜田	Hamada	「だからこっちの手元どころか、 冬馬曜子オフィスにすら送れてないらしいんだ。 ある意味酷い話だよなぁ」
26	春希	Haruki	「は、はは…」
27			その記念すべき発売日に知らされた真実は、 作った本人たちすら手に入らないという、 ある意味ものすごい朗報だった。
28	春希	Haruki	「仕方ないですね… それじゃ昼休みに本屋に…」
29	浜田	Hamada	「多分、無駄だと思うぞ？ 昨日フライング販売したところは、 軒並み午前中でなくなったらしいからな」
30	春希	Haruki	「…マジですか？」
31	浜田	Hamada	「編集長、満面の笑顔で営業を怒鳴り倒してたな。 それでも本誌の３倍刷ったんだから、 出荷数ミスったとも言い切れないんだけどな」
32	春希	Haruki	「三倍が瞬殺…？」
33	浜田	Hamada	「…いつもこれだけ売れてくれりゃ、 クラシック誌ってジャンルも安泰なのにな」
34	春希	Haruki	「あはは、あはははは…」
35			ついでに、開桜社の見込みの甘さというか、 普段のアンサンブルの見くびられ方というか…
36	浜田	Hamada	「これも先週の追加公演の効果かもな。 前回酷評してた東経新聞の評論家も、 今度は手放しで大絶賛してたし」
37			そして…
38			今さらながら、冬馬かずさというピアニストの人気と、 その人気を確固たるものにした実力というか…
39			やったな、かずさ。 お前の…俺たちの勝ちだ。
40	浜田	Hamada	「夏の全国ツアーも決まったしな！ 今年のクラシック界は、 間違いなく冬馬かずさを中心に回っていくぞ」
41	春希	Haruki	「はい…」
42			かずさが活動拠点を日本に移すという電撃発表は、 追加公演の高い評価も相まって、 マスコミや世間にも好意的に受け止められた。
43			そしてその後の、ブルーレイ発売、Ｍ響との共演、 全国ツアー開催などの畳み掛けるような発表で、 来日時のフィーバーが一気に再燃してしまった。
44			当の本人といえば、それらを仕掛けた[R黒幕^ようこさん]の、 病人とは思えない圧倒的なバイタリティに、 思わず苦虫を噛み潰したりもしてたけど…
45	浜田	Hamada	「そんな訳で、 お前もまた彼女絡みで仕事増えるかもしれないな。 そん時はどうする？」
46	春希	Haruki	「もちろん頑張ります。 他社には絶対負けない独占スクープを 連発してみせますとも」
47			もし本当に、またあんな仕事が来たら、 あいつは俺のこと、 相当ウザがるかもしれないけれど…
48			その時俺は、こう答えるつもりだ。 『お前、マスコミを何だと思ってるんだよ』と…
49			………	.........
50	孝宏	Takahiro	「さすが姉ちゃん！ どこ探しても全然売ってなかったんだよこれ！」
51	雪菜	Setsuna	「かずさの人気を考えたら予約が常識でしょ？ もう、みんな見通しが甘いんだから」
52	雪菜の母	Setsuna's Mother	「ほんと信じられないわよねぇ… この子が雪菜の同級生だったなんて…」
53	孝宏	Takahiro	「それどころかウチに遊びに来たこともあるんだもんな。 …それが５年でこうも差がつくとは」
54	雪菜	Setsuna	「やっぱり見せるのやめようかな。 傷とかつけられたら嫌だし」
55	孝宏	Takahiro	「姉ちゃんも凄いから！ ナイツレコード期待の星だから！」
56	雪菜	Setsuna	「…汚さないでよ？」
57	孝宏	Takahiro	「サンキュ！ それじゃ早速部屋で聴かせてもらおうっと」
58	雪菜	Setsuna	「あ、ＣＤなら[Rリビング^ここ]で聴いてて。 これから友達呼んで鑑賞会なんだから」
59	雪菜の母	Setsuna's Mother	「北原さん？」
60	雪菜	Setsuna	「うん。春希くんも結局買えなかったんだって」
61	孝宏	Takahiro	「自分の会社が出した本なのに…」
62	雪菜	Setsuna	「あ、もう待ち合わせの時間だ。 ちょっと駅まで迎えに行ってくるね！」
63	雪菜の母	Setsuna's Mother	「ちょっと待ちなさい雪菜！ お客さんのお夕飯どうするのよ？ もう、そういうことは早く言ってくれないと…」
64	雪菜	Setsuna	「早くも何も… 来るって決まったのがついさっきなんだもん」
65	雪菜の母	Setsuna's Mother	「とりあえず五人分作っておけばいいのかしら？」
66	雪菜	Setsuna	「ええと…あ、違う。 お母さんは三人分でいい」
67	雪菜の母	Setsuna's Mother	「あら、外食？」
68	雪菜	Setsuna	「ううん…自分たち三人の分はわたしが作る。 それで、できれば材料だけ残しておいてくれると…」
69	雪菜の母	Setsuna's Mother	「もう…それだったら余計早く言いなさいよ。 冷凍庫のお肉、解凍しておかないと」
70	雪菜	Setsuna	「ごめんごめん。 それじゃわたし、ちょっと出てくるね！」
71	孝宏	Takahiro	「三人って…姉ちゃんと北原さんと、誰？」
72	雪菜	Setsuna	「………びっくりするよ～？」
73	雪菜の母	Setsuna's Mother	「…あわただしい子ねぇ、いつまで経っても。 あんなので北原さん本当に貰ってくれるのかしら」
74	孝宏	Takahiro	「それより父さんへの連絡どうする？ いきなり北原さんがいたらめっちゃ機嫌悪くなるだろ？」
75	雪菜の母	Setsuna's Mother	「そうね、電話しておきますか。 …お夕飯、また一人分減りそうだけど」
76	孝宏	Takahiro	「さってと、それじゃ早速かけてみますか。 冬馬かずさの日本初アルバム…雑誌のおまけだけど」
77	雪菜の母	Setsuna's Mother	「でもクラシックなんでしょ？ 聴いても眠くなっちゃいそう」
78	孝宏	Takahiro	「それがさ、友達に教えてもらったんだけど、 ボーナストラックになぜかポップスが入ってるんだって。 それもボーカル付きで」
79	雪菜の母	Setsuna's Mother	「そうなの？」
80	孝宏	Takahiro	「しかも冬馬かずさが ピアノだけじゃなく作曲もしてるらしいんだ。 ネットじゃかなり話題になってんだよ」
81	雪菜の母	Setsuna's Mother	「へ～、歌が入ってるならまだわかるかも。 何しろ昔から雪菜にどれだけ聴かされたか…」
82	孝宏	Takahiro	「ええと…７トラック目…と」
83	春希	Haruki	「…もう大丈夫だな？ 今度こそ泣きやんだな？」
84	雪菜	Setsuna	「あ、あ、あ～… こんな一枚の葉もつけない、枯れた木にもキセキはおきる。 うん、大丈夫。鼻声も治った」
85	春希	Haruki	「…よし、それじゃ本番行けるな？」
86	雪菜	Setsuna	「うん…ごめんね二人とも」
87	かずさ	Kazusa	「………何はともあれ、残り時間は１５分。 これからは一つのミスも許されないぞ」
88	春希	Haruki	「こんな事態に陥ったのも 全部お前の悪ふざけのせいだから」
89	かずさ	Kazusa	「誰かの作詞が一日遅れたのは 何年前の話だったっけ？」
90	雪菜	Setsuna	「ほ、本当にごめんなさい！ わ、わたしが泣いたりしなければ…っ」
91	春希	Haruki	「…そんなことより残り時間は１４分５０秒。 もう、こんな無駄話してる余裕もないぞ」
92	かずさ	Kazusa	「…春希の言う通りだな。 さっさとスタンバイしようか」
93	雪菜	Setsuna	「う、うん、わかった… 山口さんお待たせしました！ 始めちゃってくださ～い！」
94			………	.........
95	かずさ	Kazusa	「それで、二人とも自信は？」
96	雪菜	Setsuna	「それは…完璧？」
97	春希	Haruki	「完璧とはとても言えないけど、 ８０パーセントくらい？」
98	かずさ	Kazusa	「ま、口ではそんなとこだろうな… まったく、頼りになる相棒たちだこと」
99	春希	Haruki	「お前俺たちのこと全然信じてないだろ。 そうなんだろ」
100	雪菜	Setsuna	「ま、何はともあれ楽しくやろうね？」
101	かずさ	Kazusa	「それしか取り柄はないからな。 …我が軽音楽同好会は」
102	春希	Haruki	「え…」
103	雪菜	Setsuna	「頑張ろうね…わたしたちの『付属祭』のために」
104	春希	Haruki	「あ…」
105	雪菜	Setsuna	『楽しくやろうね？ そして、みんなをびっくりさせてあげようね？』
106	かずさ	Kazusa	『二人とも、迷ったらあたしの音だけ聴け。 なんとか導いてやるから』
107	春希	Haruki	「………」	"........."
108	雪菜	Setsuna	「…春希くん？」
109	春希	Haruki	「え？　あ、あれ…？」
110	かずさ	Kazusa	「何だよ？ ぼっとしてんなよ」
111	春希	Haruki	「い、いや…」
112			今のは、なんだったんだろう…
113			あの、脳天気な、 そして無敵な…
114			まるで失敗する気を起こさせない、 最強の、イメージは…
115	雪菜	Setsuna	「それじゃ…行こう、みんな」
116	かずさ	Kazusa	「二人とも、あたしについてこいよ？」
117	春希	Haruki	「………任せとけよ」

Script Chart

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