Difference between revisions of "White Album 2/Script/2410"
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Editing
Translation Notes
Text
Speaker | Text | Comment | |||
---|---|---|---|---|---|
Line # | JP | EN | JP | EN | |
1 | 雪菜 | Setsuna | 「バイトお疲れさま」 | ||
2 | 春希 | Haruki | 「うん、ただいま」 | ||
3 | 雪菜 | Setsuna | 「今はもう部屋?」 | ||
4 | 春希 | Haruki | 「いや、駅出たところ。 戻ってからだと遅くなるから」 | ||
5 | 雪菜 | Setsuna | 「あ、本当だ、電車の音聞こえる」 | ||
6 | 春希 | Haruki | 「ああ、あれ? 今、俺が乗ってきた終電」 | ||
7 | 雪菜 | Setsuna | 「…遅くまでご苦労様でした」 | ||
8 | 春希 | Haruki | 「終電に乗って帰れるなんて早い方だって。 土曜の夜なんて、普通は始発帰りだし」 | ||
9 | 雪菜 | Setsuna | 「相変わらず凄い職場だね。 出版社ってほんと大変そう」 | ||
10 | 春希 | Haruki | 「大変だけど、本当にやりがいあるし。 今や、バイトじゃ考えられない権限もらってるし」 | ||
11 | 雪菜 | Setsuna | 「そういえば、記事も任されてたんだよね…」 | ||
12 | 春希 | Haruki | 「あ…ごめん」 | ||
13 | 雪菜 | Setsuna | 「…何が?」 | ||
14 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
15 | 雪菜 | Setsuna | 「………」 | "........."
| |
16 | 春希 | Haruki | 「久しぶり、雪菜」 | ||
17 | 雪菜 | Setsuna | 「うん、春希くん」 | ||
18 | 自然に話が弾んだので忘れてたけど、 一月ぶりの雪菜との会話だった。 | ||||
19 | なけなしの勇気を振り絞って雪菜に送った、 用件だけを書き連ねた簡潔なメール。 | ||||
20 | 彼女にとってその素っ気なさはいたく不満だったようで、 すぐに来た返信は意趣返しのように簡潔なものだった。 | ||||
21 | 『今から電話していい?』 | ||||
22 | 結局、そのメールに応えるために、 またしてもなけなしの勇気を振り絞って、 通話ボタンを押したのがついさっきのこと。 | ||||
23 | ……… | .........
| |||
24 | 雪菜 | Setsuna | 「え…本当なの? 開桜社、入れそうなんだ!」 | ||
25 | 春希 | Haruki | 「いや、全然違うって。 ただ、今の上司の人が人事に推薦してくれるって…」 | ||
26 | 結局… | ||||
27 | 雪菜と連絡を取った本当の目的は、 最初の一分で達成されてしまった。 | ||||
28 | 雪菜 | Setsuna | 「それだけでも凄いことだよ。 だって、職場の人に認められたってことでしょ? 内定出たも同然じゃない」 | ||
29 | 春希 | Haruki | 「さすがにそこまでは… ほんのちょっとフライングスタートできたって感じかな」 | ||
30 | けれど、だからって 『じゃあ、さよなら』で済ませられるほど、 俺たちはお互いを、そんな風に割り切れない。 | ||||
31 | 雪菜 | Setsuna | 「その上司の人、すごく優秀なんだよね、確か。 前に春希くんが言ってた、 若手で一番の出世頭の[R女性^ひと]でしょ?」 | ||
32 | 春希 | Haruki | 「ま、とにかく、その人の手前もあるし、 情けない結果にだけはならないようにするさ」 | ||
33 | だから… 『俺が部屋に帰り着くまで』という約束で、 ちょっとだけ無駄話しようって。 | ||||
34 | 雪菜 | Setsuna | 「…気づいてる? それ内定宣言だよ?」 | ||
35 | 春希 | Haruki | 「…そういうことになるなぁ」 | ||
36 | 本当にとりとめもないことを話した。 | ||||
37 | 進級の話、テストの話、バイトの話、卒論の話。 …そして、今は就職活動の話。 | ||||
38 | 雪菜 | Setsuna | 「ふふ…相変わらずそういうところは自信満々だね」 | ||
39 | 春希 | Haruki | 「この時のためにいい成績取っておいたし、 バイトで社会経験も十分に積んだし、 ビジネスコミュニケーションのセミナーにも通った」 | ||
40 | 特に今日、麻理さんから告げられた“将来の話”は、 さっきまでの俺と同じように、雪菜を興奮させた。 | ||||
41 | 雪菜 | Setsuna | 「頭でっかちって思われるかも?」 | ||
42 | 春希 | Haruki | 「頭がでかくて何が悪い。 支える体だってあることをアピールするまで。 …主に体力面とは違う意味で」 | ||
43 | 自然、足は遅くなり、 いつもなら5分で辿り着くはずのマンションまで、 15分もかかり。 | ||||
44 | それでもこの会話を終わらせてしまうのが惜しくて、 一度、近所の公園までまわり道をした。 | ||||
45 | 雪菜 | Setsuna | 「そっか…わかってたけど、春希くんは本当に凄いな。 わたしなんか卒業後のこと、まだ何も決めてないのに」 | ||
46 | 春希 | Haruki | 「早く決めることイコールいいことじゃないって。 雪菜は持ち時間全部使って考えればいいと思う」 | ||
47 | 雪菜だって、もう気づいてる。 俺が約束を破って、引き延ばし工作に入ってるって。 …持ち時間を全部使ってるって。 | ||||
48 | それでも、まるっきり気づかないそぶりで、 そろそろ30分に及ぶ無駄話を 一生懸命続けてくれていた。 | ||||
49 | 雪菜 | Setsuna | 「時間切れで負けになっちゃったりして」 | ||
50 | 春希 | Haruki | 「雪菜なら大丈夫。 しっかり考えて、必ず自分の道を見つけるって。 …俺が保証する」 | ||
51 | それでも、時は無常にも流れ、 どれだけまわり道をしても限界は訪れ。 | ||||
52 | 雪菜 | Setsuna | 「おめでとう…はまだ早いんだったね。 頑張れ、春希くん」 | ||
53 | 春希 | Haruki | 「ありがと………あ」 | ||
54 | そして… | ||||
55 | 雪菜 | Setsuna | 「どうしたの?」 | ||
56 | 春希 | Haruki | 「………着いた」 | ||
57 | 雪菜 | Setsuna | 「…そっか」 | ||
58 | 春希 | Haruki | 「ごめんな、こんな遅くまで」 | ||
59 | 雪菜 | Setsuna | 「最初からの約束通りだよ。 春希くんが家に着くまでの、暇つぶし」 | ||
60 | 春希 | Haruki | 「…そうだったな」 | ||
61 | 雪菜 | Setsuna | 「うん…」 | ||
62 | 春希 | Haruki | 「じゃあ…」 | ||
63 | 雪菜 | Setsuna | 「おやすみなさい」 | ||
64 | 春希 | Haruki | 「おやすみ」 | ||
65 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
66 | 千晶 | Chiaki | 「…小木曽さん?」 | ||
67 | 春希 | Haruki | 「ああ」 | ||
68 | 話をしなくちゃならないもう一人は、 相変わらず気まぐれで俺の目の前に現れた。 | ||||
69 | 千晶 | Chiaki | 「ずいぶん堂々としてたね。 あたし見つけたとき、慌てると思ったのに」 | ||
70 | 春希 | Haruki | 「別に、今さら隠すことなんかない。 千晶がここにいるって言っても構わなかったよ」 | ||
71 | 千晶 | Chiaki | 「へぇ… 完全に仲直りしたんだ、彼女と」 | ||
72 | 春希 | Haruki | 「今日は何だ?」 | ||
73 | 千晶 | Chiaki | 「話があるって言ってたのはそっちじゃなかったっけ?」 | ||
74 | 春希 | Haruki | 「あれからメール出してもシカトしてたくせに…」 | ||
75 | 千晶 | Chiaki | 「べっつに~」 | ||
76 | 春希 | Haruki | 「何が別にだ。 答えになってないだろ」 | ||
77 | 千晶 | Chiaki | 「ふん」 | ||
78 | ついでに、なんかふてくされてた。 | ||||
79 | 春希 | Haruki | 「いつから待ってた?」 | ||
80 | 千晶 | Chiaki | 「30秒前」 | ||
81 | 春希 | Haruki | 「嘘だな」 | ||
82 | 千晶 | Chiaki | 「さわんな」 | ||
83 | ちょっと触れてみた頬の冷たいこと… 数分のレベルじゃない冷え方だった。 | ||||
84 | 春希 | Haruki | 「寒いだろ。早く部屋に入るぞ。 すぐに風呂湧かすから」 | ||
85 | 千晶 | Chiaki | 「へぇ…さっさと帰れとか言わないんだ」 | ||
86 | 春希 | Haruki | 「今日は妙に突っかかるな?」 | ||
87 | 千晶 | Chiaki | 「べっつに~」 | ||
88 | 千晶は、この前会ったときの捨て猫のままだった。 | ||||
89 | …この前と違って、俺に懐いてないけれど。 | ||||
90 | 春希 | Haruki | 「ほら、行くぞ。 俺も寒いんだ」 | ||
91 | 千晶 | Chiaki | 「ん~…」 | ||
92 | 春希 | Haruki | 「風邪ひいたらどうすんだ? お前、もうすぐ定期公演なんだろ?」 | ||
93 | 千晶 | Chiaki | 「春希が心配すべきは、 実はそんなことじゃないんだけどねぇ」 | ||
94 | 春希 | Haruki | 「…本当に何なんだよ今日は」 | ||
95 | 千晶 | Chiaki | [F16「流産しちゃったらどう責任取るつもりだ…」] | ||
96 | 春希 | Haruki | 「立てほら! さっさと歩く」 | ||
97 | 千晶 | Chiaki | 「う~、ううううう~」 | ||
98 | 春希 | Haruki | 「わざわざ人の部屋の前まで来といて、 そこからテコでも動かないってのはどういう了見だよ!」 | ||
99 | 本当に、気まぐれな奴… | ||||
100 | ……… | .........
| |||
101 | 千晶 | Chiaki | 「あめんぼ赤いなあいうえお~!」 | ||
102 | 春希 | Haruki | 「やめろ! 近所迷惑だ!」 | ||
103 | さすがに本気で冷え切っていたらしく、 風呂に湯を張ると、千晶は大人しく 浴室へと消えていった。 | ||||
104 | …脱がせるのまで俺にやらせたり、 風呂に入ってからはちっとも大人しくしてないのは、 まぁ、『千晶だから』で片づけるしかないけど。 | ||||
105 | それにしても、千晶の奴… 今日はいつにも増してワガママにも程がある。 | ||||
106 | 最初から妙に不機嫌で、 まるで喧嘩をふっかけてるみたいな態度だったし。 もしかして、公演を間近に控えてプレッシャーが… | ||||
107 | ………それはないな。 | ||||
108 | 春希 | Haruki | 「おっと」 | ||
109 | それとも… | ||||
110 | もしかして今日は、 今までにみせたのとはまた違う『新たな役』なのかな? | ||||
111 | ……… | .........
| |||
112 | 千晶 | Chiaki | 「………(がつがつ)」 | ||
113 | 春希 | Haruki | 「『いただきます』くらい言え。 この恩知らず」 | ||
114 | 千晶 | Chiaki | 「醤油~」 | ||
115 | 春希 | Haruki | 「夜も遅いから味薄くしてんだよ。 我慢しろ」 | ||
116 | 千晶 | Chiaki | 「…油はぎっとりだけどね」 | ||
117 | 春希 | Haruki | 「嫌なら食わなくていいんだぞ」 | ||
118 | 千晶 | Chiaki | 「………(もぐもぐ)」 | ||
119 | 春希 | Haruki | 「都合の悪いことには返事しねえんだもんなぁ」 | ||
120 | 千晶 | Chiaki | 「………っ!? むぐ…っ」 | ||
121 | 春希 | Haruki | 「あ~、ほらっ、お茶」 | ||
122 | 千晶 | Chiaki | 「う、ううん………違う。 詰まってない」 | ||
123 | 春希 | Haruki | 「じゃあ…そんなに不味かったか?」 | ||
124 | 千晶 | Chiaki | 「それも…違う。 久しぶりにお腹にモノ入れたせい。 大丈夫、もう治まった」 | ||
125 | 春希 | Haruki | 「そか…」 | ||
126 | 千晶 | Chiaki | 「うん…」 | ||
127 | 千晶がようやくペースを落としたため、 微かにキャベツを噛みしめる音が聞こえてくる。 | ||||
128 | どんだけ腹減ってたらこんな食い方になるんだか… | ||||
129 | 春希 | Haruki | 「相変わらず、まともに飯食ってないのかよ」 | ||
130 | 千晶 | Chiaki | 「明後日が初日だかんね」 | ||
131 | 春希 | Haruki | 「だからこそ栄養つけるべきだろ… あと、ちゃんと寝てるか?」 | ||
132 | 千晶 | Chiaki | 「明後日が…」 | ||
133 | 春希 | Haruki | 「あ~、わかったわかった! 今日はここで寝てけ。 稽古の時間に間に合うように起こしてやるから」 | ||
134 | 千晶 | Chiaki | 「稽古なら今でもやってるよ、夜通しで」 | ||
135 | 春希 | Haruki | 「…なんだって?」 | ||
136 | 千晶 | Chiaki | 「きっと今ごろみんなパニックだね。 あたし、主役下ろされるかも」 | ||
137 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
138 | そう呟きつつも、相変わらずその表情は飄々としてる。 | ||||
139 | ウァトスの脚本兼主演女優は、 自分が示した最悪の事態を まるで想定していなさそうだった。 | ||||
140 | 春希 | Haruki | 「そんなどうしようもない状況なのに、 なんでわざわざここに来たんだよ?」 | ||
141 | 千晶 | Chiaki | [F16「なんでって…」] | ||
142 | 春希 | Haruki | 「この前、脚本が遅れ気味って言ってたろ。 だから皆、その遅れを取り戻すために、 夜通し頑張ってんじゃないのか?」 | ||
143 | 千晶 | Chiaki | 「いや、この時期ならいつものことだけど…」 | ||
144 | 春希 | Haruki | 「だからって、主役が抜けてどうすんだよ… ウァトスはお前がいなくちゃ成り立たないんだろ? お前は、あの劇団に大きな責任があるんだろ?」 | ||
145 | 千晶 | Chiaki | 「そりゃ、あたしがいなけりゃ三流もいいとこだけど」 | ||
146 | 春希 | Haruki | 「そんな一流のお前が、皆に迷惑かけたあげく、 更にワガママを重ねるのか?」 | ||
147 | 千晶 | Chiaki | 「春希がそれを心配するかね… あたしらがどんな劇やろうとしてるか知ってるよね?」 | ||
148 | 春希 | Haruki | 「そんなこと関係ない。 ただ、能力があるのに自分の責任を果たさない奴は 見ててイライラするだけだ」 | ||
149 | 千晶 | Chiaki | 「…っとに、難儀な奴だね」 | ||
150 | 春希 | Haruki | 「ほっとけ」 | ||
151 | よりにもよって、千晶に呆れられるなんてな。 ま、自覚はあるけど… | ||||
152 | 千晶 | Chiaki | 「すぐに戻るよ。ほんの二時間なら大丈夫だって」 | ||
153 | 春希 | Haruki | 「…その二時間、 俺を待ってる間に食いつぶしてないか?」 | ||
154 | 千晶 | Chiaki | 「だから大したことじゃないんだって。 ただあたしは…ほんのちょっとだけ…」 | ||
155 | 春希 | Haruki | 「ほんのちょっとだけ、なんだよ?」 | ||
156 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
157 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
158 | 千晶 | Chiaki | 「~っ!」 | ||
159 | 春希 | Haruki | 「…千晶?」 | ||
160 | 千晶 | Chiaki | 「………ボツ」 | ||
161 | 春希 | Haruki | 「は、はぁ?」 | ||
162 | 千晶 | Chiaki | 「言おうと思った理由が、 あまりにもありきたりだったからボツにした。 ちょっと待って、もっかい考えるから!」 | ||
163 | 春希 | Haruki | 「………お前な」 | ||
164 | 演技の練習でもしてるのかと思うくらい、 懊悩、閃き、驚き、戸惑い、悔しさ、ふて腐れと、 次から次へと表情を切り替えて… | ||||
165 | 結局出てきた言葉は、 まったく無関係の意味不明さだった。 | ||||
166 | 千晶 | Chiaki | 「あ、そだ、これで行こう!」 | ||
167 | 春希 | Haruki | 「これで行こうって…」 | ||
168 | その後もう一度、 懊悩、照れ、否定、嫌悪、閃きという流れで 千晶らしくなく落ち着かない挙動を繰り返し… | ||||
169 | 千晶 | Chiaki | 「はい、チケット」 | ||
170 | 最終的にバッグをまさぐると、 中から一枚の封筒を取りだした。 | ||||
171 | 千晶 | Chiaki | 「春希にはまだ渡してなかったよね? 何枚いる? 5枚までならなんとかなるけど…」 | ||
172 | 春希 | Haruki | 「…俺に見に来いってのかよ?」 | ||
173 | 俺が大切な人を裏切り、皆を不幸にした物語を? | ||||
174 | 三年前の雪菜とかずさが 俺の記憶に忠実に再現された、 そんなやるせなさ過ぎる物語を? | ||||
175 | 千晶 | Chiaki | 「普通の劇団はさ、団員にノルマあるんだよ。 1人20枚さばけとかさ。 でもウチは逆に身内でも確保するのが難しいくらいで」 | ||
176 | 春希 | Haruki | 「そんな話してないだろ…」 | ||
177 | 千晶 | Chiaki | 「舞台の前にあんたのところに来ないと、 そっちの方が無責任だと思ったからね」 | ||
178 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
179 | やっぱこいつ、何も変わってない… | ||||
180 | 千晶 | Chiaki | 「脚本、いい出来なんだよ。 少なくとも春希の人物造型に関しては完璧だと思う」 | ||
181 | 人がどう感じるかをわかってて、 けれどその感情の動きに興味がない。 | ||||
182 | 見る人を引き込む舞台を、 物語と演技の両面から作り込めるほど、 人の感情を動かすことが得意なのに… | ||||
183 | 千晶 | Chiaki | 「ここまで来れば、あとは演じるだけ。 台詞は書いてるうちに全部覚えたし、 あたしに関してはもう大丈夫」 | ||
184 | 人が悲しんでるのがわかる。辛いのが理解できる。 けれど、『だから何?』という感想が変わることはない。 | ||||
185 | きっと、他人だけじゃなく、自分に対しても。 | ||||
186 | 千晶 | Chiaki | 「後は他の連中がどれだけ上手くやるかだけど… ま、基本的に観客はあたし見に来てるし問題ないかな」 | ||
187 | 誰とも、段階を経て想いを深めていくことができない。 だって次の瞬間には配役が変わってる。 | ||||
188 | 気のおけない友達から、気のおけない恋人へ。 そこまで進んでおきながら、いきなり次が赤の他人。 気が向いたら仇敵同士、気づいてみたら詐欺師と被害者… | ||||
189 | 本当に、本当に… お前って奴はさ… | ||||
190 | 春希 | Haruki | 「そっか、よかったな。 完成、おめでとう」 | ||
191 | 千晶 | Chiaki | 「楽しみにしてていいよ。 きっと退屈はさせないからさ」 | ||
192 | 春希 | Haruki | 「…これでもう、俺に嘘つかなくてもいいもんな。 『春まで』の期限、やっと終わったんだな」 | ||
193 | 千晶 | Chiaki | 「………春?」 | ||
194 | 春希 | Haruki | 「舞台がはねたら終わりなんだろ…何もかも」 | ||
195 | 千晶 | Chiaki | 「………あ」 | ||
196 | 千晶 | Chiaki | 『ええと、ええと………大丈夫! きっと春になったら、何もかも元に戻るよ』 | ||
197 | 千晶 | Chiaki | 『春までは引きずると思ったんだけどなぁ』 | ||
198 | 雪菜 | Setsuna | 『前にもそんなこと言ってたよね。 春に何かあるのかな?』 | ||
199 | 千晶 | Chiaki | [F16『だって、そういうスケジュールなんだもん』] | ||
200 | 千晶 | Chiaki | 「そっか…そっか… もう、そうゆうことまで話せるようになっちゃったんだ」 | ||
201 | 春希 | Haruki | 「昔からそうなんだろ…」 | ||
202 | 『あの女は舞台が終わったら全部捨てるから』 | ||||
203 | …って、何度武也に警告されたことか。 | ||||
204 | その度に『もしかしたら今度だけは』って、 かすかな希望にすがってたこともあったけど… | ||||
205 | 千晶 | Chiaki | 「…そんなに早く終わって欲しかった?」 | ||
206 | 春希 | Haruki | 「終わりたかったのは千晶の方なんだろ」 | ||
207 | 千晶 | Chiaki | 「そだよね~。 これでやっと仲直りできるもんね。小木曽さんと」 | ||
208 | 春希 | Haruki | 「ちゃんと会話しろよ…」 | ||
209 | 千晶 | Chiaki | 「結局、小木曽さんの計算通りになっちゃったかぁ。 う~ん、結構したたかな女だよねぇ」 | ||
210 | 春希 | Haruki | 「しかも作ってんじゃねえよ」 | ||
211 | 千晶 | Chiaki | 「いや彼女ってそういうとこあるって~。 あたしの解釈だと絶対そうなるもん」 | ||
212 | そうやって自分から終わらせておきながら、 まだ、俺をからかうのか… | ||||
213 | 千晶 | Chiaki | 「何があっても春希は自分のところに帰ってくるって… そう、わかってるから、簡単にあたしを許すんだ。 …ムカつくよね」 | ||
214 | 春希 | Haruki | 「言ってろ…」 | ||
215 | なら俺は、こいつのペースに乗せられちゃいけない。 こいつの前では、乾いたままでいなくちゃいけない。 | ||||
216 | 千晶 | Chiaki | 「今まで、たくさんの他人を演じてきた。 原作つきも、オリジナルも、誰かをモデルにしたときも、 全部が全部、そのキャラクターになりきることができた」 | ||
217 | これ以上、惨めな想いをしないためには。 未練を、断ち切るためには… | ||||
218 | 千晶 | Chiaki | 「でも… 小木曽雪菜ほど感情移入できないヒロインはいなかった」 | ||
219 | 和泉千晶を憎み、 瀬之内晶を憐れむしかない。 | ||||
220 | 千晶 | Chiaki | 「そこはあたしの負け… 結局、本物の小木曽雪菜にはなれなかった。 理解はできたけど、共感はできなかった」 | ||
221 | だって、共感も理解もできないんだから。 | ||||
222 | 千晶 | Chiaki | 「ま、それでも完璧に演じてみせるけどね。 いつもとはちょっと勝手が違うけど、 その程度の思い入れに左右されるあたしじゃないし」 | ||
223 | 俺は宇宙人に捕まって生体実験された。 | ||||
224 | だったら後は… 捕まっていた数日間の記憶をなくすのが、 ここ地球でのルールだろう? | ||||
225 | 宇宙人と意思疎通することなんか無理なんだ。 昔からテレビ番組が幾度も証明してるじゃないか。 | ||||
226 | だから… | ||||
227 | 春希 | Haruki | 「俺、やっぱり… お前の舞台には行かない」 | ||
228 | 千晶 | Chiaki | 「そ…っか」 | ||
229 | 春希 | Haruki | 「なんか薄っぺらそうでさ。 多分、俺が見たら馬鹿馬鹿しく感じるだろうから」 | ||
230 | 千晶 | Chiaki | 「………へ~」 | ||
231 | だからって… 宇宙戦争を仕掛けようなんて訳じゃないんだけどな。 本当は。 | ||||
232 | 春希 | Haruki | 「浅いぞ、その造形… 雪菜のこと、何もわかってない。 共感どころか、理解すらできてないだろ本当は」 | ||
233 | 千晶 | Chiaki | 「三年つきあってきた男ですら 理解できないんだもんね~」 | ||
234 | 春希 | Haruki | 「そんな雪菜役…雪菜が見たら笑うぞ?」 | ||
235 | 千晶 | Chiaki | 「…そこまで言うなら、 春希の解釈を聞こうか?」 | ||
236 | 春希 | Haruki | 「ほら、やっぱ理解できてない」 | ||
237 | 千晶 | Chiaki | 「はぁ?」 | ||
238 | 春希 | Haruki | 「雪菜が、人を嘲笑うなんてできるわけないだろ。 …だからお前の雪菜は、雪菜じゃないって言うんだ」 | ||
239 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
240 | だけど、同じ地球人の雪菜のことで 宇宙人の千晶には負けたくない。 | ||||
241 | 自分でも何を言ってるのかわからなくなりそうだけど、 それでも、理屈抜きで雪菜を否定されたくない。 | ||||
242 | 春希 | Haruki | 「雪菜が、俺や千晶たちのこと許すのはさ… 怖いから、なんだと思う」 | ||
243 | 千晶 | Chiaki | 「それが、春希の解釈?」 | ||
244 | 春希 | Haruki | 「当たってるかどうかはわからない。 けど、お前のよりは正解に近いと思う」 | ||
245 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
246 | そして、理屈抜きで… 千晶にそういうことをして欲しくない。 | ||||
247 | 春希 | Haruki | 「ほんのちょっとした誤解やすれ違いで 今まで触れあえてた人たちと触れ合えなくなることが、 怖くて、本当に怖くて仕方ないんだと思う」 | ||
248 | 千晶 | Chiaki | 「『思う』ばっかりだね」 | ||
249 | 春希 | Haruki | 「俺と同じ体験をしてきた雪菜だからさ、 俺と同じ恐怖が植えつけられてるんだと『思う』」 | ||
250 | ずっと見てきたんだ、俺は。 | ||||
251 | ずっと見てきたのに… どうして今ごろになって気づくんだ? | ||||
252 | 春希 | Haruki | 「お前、知らないだろ? かけがえのない人を、物理的にだけじゃなく、 精神的に失うことの怖さってさ」 | ||
253 | 雪菜も、俺と同じだったなんて… | ||||
254 | 千晶 | Chiaki | 「…逃げてばかりじゃ、おびえてばかりじゃ、 何も得られないと思うんだけどなぁ」 | ||
255 | 春希 | Haruki | 「それは、一度も失ったことのない奴の台詞だ。 …いや、一度も失ったことに気づいたことのない、かな」 | ||
256 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
257 | 春希 | Haruki | 「つまり、お前が雪菜のこと理解できないのは… それが、お前には存在しない感情だから」 | ||
258 | 春希 | Haruki | 「…だと思う」 | ||
259 | 心が近づけば近づくほど、 本当の深い気持ちを吐き出せなくなる。 | ||||
260 | そうやって、雪菜と俺は、 上辺だけで許しあい、 触れあった瞬間に、お互いの心の棘が突き刺さる。 | ||||
261 | 千晶 | Chiaki | 「熱いね、春希…」 | ||
262 | 春希 | Haruki | 「なんでこんなこと喋ってんだろうな…」 | ||
263 | 別にベッドの中で騙されてる訳じゃないのに。 それどころか、あからさまに痛いこと聞かれてるのに。 | ||||
264 | 千晶 | Chiaki | 「本気で好きなんだ? 彼女のこと」 | ||
265 | 春希 | Haruki | 「今までお前がその質問をしてきたとき、 俺が一度でも否定したことあったか?」 | ||
266 | 千晶 | Chiaki | 「っ…」 | ||
267 | なんで俺、またこいつにこんなこと… | ||||
268 | もう、慰めてもくれない、肯定してもくれない、 …抱きしめてもくれないこんな奴に。 | ||||
269 | 千晶 | Chiaki | 「そっか、そっかぁ…おめでと春希。 や~っと素直になったねぇ。 もしかしたら、三年ぶりに仲直りできるかもね」 | ||
270 | 千晶の拍手が白々しい。 | ||||
271 | 気づかせない演技をかなぐり捨て、 はっきりした悪意をわざと剥き出しにさせる。 | ||||
272 | 千晶 | Chiaki | 「でも…い~のかなぁ? あたしにそんなこと言っちゃってぇ」 | ||
273 | 春希 | Haruki | 「聞いてきたのは千晶の方だろ」 | ||
274 | 千晶 | Chiaki | 「それにしてもさぁ、 答え方ってものがあるんじゃない?」 | ||
275 | 春希 | Haruki | 「気に入らなかったか?」 | ||
276 | こういう時の千晶は… 偽悪的な千晶は、ちょっとだけ地球人が入る。 | ||||
277 | だからもしかしたら、ほんの少しだけ 俺にも理解できているのかもしれない。 | ||||
278 | 千晶 | Chiaki | 「ま、仕方ないよね。 だって春希は知らないんだ。 今のあたしに、とんでもない切り札があるってこと…」 | ||
279 | 春希 | Haruki | 「ああ、知らないな。 ついでに、場に出してもらわないと後悔もできない」 | ||
280 | 千晶 | Chiaki | 「い~んだ、出して」 | ||
281 | その切り札そのものを読むことはできない。 | ||||
282 | けど、彼女がそれを出せば、 一気に場が荒れるということはきちんと読み取れる。 | ||||
283 | 春希 | Haruki | 「言えよ。俺は何でも受け入れる」 | ||
284 | そして、ちゃんと理解してる。 | ||||
285 | 今の俺が、その荒れ場を望んでいるということを。 | ||||
286 | 千晶 | Chiaki | 「あのね、あたし…」 | ||
287 | 上原 | Uehara | 「………検査したのか?」 | ||
288 | 千晶 | Chiaki | 「ううん」 | ||
289 | 上原 | Uehara | 「じゃ、なんで…」 | ||
290 | 千晶 | Chiaki | 「最近、すぐ吐き気するし」 | ||
291 | 上原 | Uehara | 「ホン書きと稽古で寝てないからだろ」 | ||
292 | 千晶 | Chiaki | 「今年に入って生理一度も来てないんだ…」 | ||
293 | 上原 | Uehara | 「公演前はいっつもそうだって言ってただろ。 めちゃめちゃ不規則になるって… 今回も同じだ。身体が女を忘れてるんだよ」 | ||
294 | 千晶 | Chiaki | 「でも今回は女としての心当たりが… て言うか、できてなきゃおかしいくらい やっちゃってたと言うか…」 | ||
295 | 上原 | Uehara | 「そこまで言うなら病院で見てもらってくれ。 なんなら検査薬買ってこようか?」 | ||
296 | 千晶 | Chiaki | 「…ううん、いい」 | ||
297 | 上原 | Uehara | 「なんでだよ? もしそれが本当だったら、公演見直さないと。 姫が無理なら代役立てて…」 | ||
298 | 千晶 | Chiaki | 「ってなるからいいって言ってんの!」 | ||
299 | 上原 | Uehara | 「姫…」 | ||
300 | 千晶 | Chiaki | 「…知ってるよ、あたし。 あんたがとっくに代役を用意してるってこと。 通し稽古が終わってから、皆頑張ってるよねぇ」 | ||
301 | 上原 | Uehara | 「座長としては当然の判断だろ。 姫、今回は始まる前からボロボロだったし。 …まさかこんな事態は想定してなかったけど」 | ||
302 | 千晶 | Chiaki | 「それでも今回だけは絶対に譲らない。 初日の舞台に立つのはこのあたし。 …たとえ舞台の上で力尽きたとしてもね」 | ||
303 | 上原 | Uehara | 「俺もそう願ってはいるけどな… いや力尽きる方じゃなくて」 | ||
304 | 千晶 | Chiaki | 「それにさ…」 | ||
305 | 上原 | Uehara | 「ん?」 | ||
306 | 千晶 | Chiaki | 「もし違ってたら、男繋ぎ止めるのに使えないじゃん。 こういうのはハッキリさせない方がいいんだよ」 | ||
307 | 上原 | Uehara | 「………」 | "........."
| |
308 | 千晶 | Chiaki | 「女になって、今度は母になってさ… また演技の幅、広がるかなぁ?」 | ||
309 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
310 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
311 | 千晶が、俺の上にのしかかってきた。 | ||||
312 | 突然でも何でもなく、 抵抗できないほど力強くもなかったけど、 俺は、されるがままにした。 | ||||
313 | だって、千晶が“切り札”を使うためなら… | ||||
314 | 千晶 | Chiaki | 「………ボツ」 | ||
315 | 春希 | Haruki | 「…え?」 | ||
316 | 千晶 | Chiaki | 「んっ…」 | ||
317 | 春希 | Haruki | 「っ!?」 | ||
318 | しばらく俺を見下ろしてた千晶が、 何かをぼそりと呟くと、 そのまま、開いた口で俺の唇を塞ぐ。 | ||||
319 | 千晶 | Chiaki | 「ん、んぅ…ちゅぷ…んぅっ」 | ||
320 | 春希 | Haruki | 「ん…くっ」 | ||
321 | そのまま俺の口中に、強引に舌を割り入れ、 激しく動かして、俺の舌と絡ませる。 | ||||
322 | 千晶の唾液が大量に流し込まれ、 息もできないほどに喉を覆い尽くす。 | ||||
323 | 千晶 | Chiaki | 「はぁむっ、あ、あむぁ…ん、ちゅ… んぅぅ…は、はぁぁ…んぷっ、く、ぅぁ…」 | ||
324 | 今度は音を立てて俺の唇を吸い上げ、 自分の唾液と混ざった俺の唾液まで舌ですくい取り、 喉を鳴らして飲み込む。 | ||||
325 | その間、俺は全てされるがままで、 千晶の突然の激しい愛撫を、黙って受け入れていた。 | ||||
326 | 千晶 | Chiaki | 「ん、く…ぷぁ…あ…」 | ||
327 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
328 | 口だけじゃなく、体も黙ったまま… | ||||
329 | 千晶 | Chiaki | 「は、はぁ、はぁ、はぁぁ…ど? 春希。 気持ちいいっしょ?」 | ||
330 | 春希 | Haruki | 「…これが切り札なのか?」 | ||
331 | 千晶 | Chiaki | 「どれだけ口では嫌がってても、 体は正直だからね」 | ||
332 | 春希 | Haruki | 「男の台詞だろ、それ」 | ||
333 | 千晶 | Chiaki | 「別にあたし、男役もやれるよ?」 | ||
334 | 春希 | Haruki | 「俺に女役は無理」 | ||
335 | 千晶 | Chiaki | 「別に男でもいいよ、春希なら… ん、んぅ…は、あむ…」 | ||
336 | 春希 | Haruki | 「っ…」 | ||
337 | また千晶が唇を重ねる。 | ||||
338 | ざらりとした舌先の感触が、 俺の口の中全てを蹂躙して、 徐々にねっとりと蠢いていく。 | ||||
339 | 俺がまるで動かないのをいいことに、 舌だけでなく、歯茎、顎の裏、頬の裏まで、 丹念に舐め回し、荒い息を吹きかける。 | ||||
340 | けれど… | ||||
341 | 千晶 | Chiaki | 「っ………どして?」 | ||
342 | 春希 | Haruki | 「何が?」 | ||
343 | 千晶 | Chiaki | 「どして、吸ってくんないの? 返してくんないの?」 | ||
344 | 春希 | Haruki | 「…気持ちよくないからに決まってんだろ」 | ||
345 | 千晶 | Chiaki | 「へぇぇ…前はあんなに気持ちよさそうだったのに? 体のどこも馴染んでたってのに?」 | ||
346 | 春希 | Haruki | 「心の通ってない、身体だけの繋がりなんて… ただ粘膜で摩擦係数が減って滑らかになった反復運動だろ。 気持ちいいとか、訳わかんないね」 | ||
347 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
348 | 口の端から、二人の唾液を垂らしながら… | ||||
349 | でも俺は、精一杯の強がりか、醒めきった捨て台詞か、 そんな、自分でもどちらとも取れる台詞を呟く。 | ||||
350 | 千晶 | Chiaki | 「………ぷっ」 | ||
351 | それを千晶は、やっぱり強がりと解釈したみたいだった。 | ||||
352 | 千晶 | Chiaki | 「あは、あはは…何言ってんの春希ぃ。 そんなの、初めての時からずっとそうだったよ?」 | ||
353 | 春希 | Haruki | 「………そっか」 | ||
354 | 本気で言って欲しくなかった言葉だけど、 絶対にこいつは言うだろうなぁと覚悟だけはしてた。 | ||||
355 | 春希 | Haruki | 「あの時のお前…全部、演技だったのか? ほんの少しでさえも本気が混ざってなかったって 言い切れるのか?」 | ||
356 | 千晶 | Chiaki | 「完璧にね」 | ||
357 | 春希 | Haruki | 「あの無責任で適当な笑顔も?」 | ||
358 | 千晶 | Chiaki | 「ほら、今やってみせようか?」 | ||
359 | 春希 | Haruki | 「あの、あったかさも?」 | ||
360 | 千晶 | Chiaki | 「裸で抱きあえば、誰でもあったかくなるよ? あ、摩擦係数は高い方がいいかな?」 | ||
361 | 春希 | Haruki | 「あの時の…あの表情も?」 | ||
362 | 千晶 | Chiaki | 「初めてにしちゃいい感じだったでしょ? 微妙に痛そうで、けど泣き叫ぶほどでもなくってさ」 | ||
363 | 春希 | Haruki | 「………千晶ぃ」 | ||
364 | 千晶 | Chiaki | 「なに、また泣いてんの春希?」 | ||
365 | 春希 | Haruki | 「人の心読むなよ…」 | ||
366 | まだ、目に涙は溜まってなかった。 | ||||
367 | けれど千晶には、俺の表情から心の内を読むなんて、 今まで何度もしてきたアドリブのための スキルの一つに過ぎなかった。 | ||||
368 | 千晶 | Chiaki | 「でもさぁ… 今さらあんたがショックを受ける 理由なんかないんだよ?」 | ||
369 | 春希 | Haruki | 「どうして…」 | ||
370 | 千晶 | Chiaki | 「だって他でもない、春希がそう言ったんだよ? 『あたしはずっと演技してる』って」 | ||
371 | 演技の千晶を拒絶した俺が、 本音の千晶に否定されていく。 | ||||
372 | 嘘だと思いたいけれど、 でも、こいつが演技だと言うなら、そうなんだ。 | ||||
373 | 今のこいつが演技していない限り、 あの時のこいつは演技だったんだ。 | ||||
374 | ………なんて訳のわからない矛盾。 | ||||
375 | 千晶 | Chiaki | 「あたしに表現できない感情なんかない。 だから、あたしに騙されない人間はいない」 | ||
376 | 千晶の手のひらが、また俺の頬を執拗に撫でる。 | ||||
377 | 千晶 | Chiaki | 「それがたとえ、演技だとバレてても、 引き込んでしまえばこっちのもの」 | ||
378 | 潤んだ目が俺を激しく求めるように見下ろし、 情けなくうろたえる俺の顔が映る。 | ||||
379 | 千晶 | Chiaki | 「特に、春希のことを愛する気持ちなら大得意… 何しろここ半年、ずっとその想いに縛られるように、 心をカスタマイズしてたんだから」 | ||
380 | もし俺が、千晶と同じスキルを持ってたら、 その潤んだ目から涙がこぼれるイメージを 連想できるんだろうか? | ||||
381 | 千晶 | Chiaki | 「だから春希… あたしの気持ちが演技なのか本気なのかなんて、 そんなの些細な問題じゃん?」 | ||
382 | けど、連想できたからってどうだって言うんだ? | ||||
383 | 千晶の涙なんて、演技か本気かわからない… いや、絶対に演技だから、本気なんかわからない。 | ||||
384 | 千晶 | Chiaki | 「ね、抱いてよ」 | ||
385 | それがバレてることがわかってるのに、 どうして千晶は、俺にその現実を しつこく突きつけてくるんだろう? | ||||
386 | 俺を、誘惑してるんじゃなかったのか? 本当は何がしたいんだ? | ||||
387 | 切り札って、なんなんだよ…? | ||||
388 | 春希 | Haruki | 「もうお前じゃ立たないって…言っただろ?」 | ||
389 | 千晶 | Chiaki | 「じゃ、試してみよっか?」 | ||
390 | 春希 | Haruki | 「千晶…っ」 | ||
391 | 千晶の手が、俺のズボンの前を這い回る。 | ||||
392 | 千晶 | Chiaki | 「春希があたしで本当に立たないのか… 触っても、舐めても、口に含んであげても、 本当に全然反応しないのか、確かめたげる」 | ||
393 | 慣れた手つきで俺のベルトを外し、 ジッパーを下ろし… | ||||
394 | 千晶 | Chiaki | 「そんかわり、あたしの口でおっきくなったら あんたの負け。そんときはペナルティとして、 ちゃんと中に出してもらうからね?」 | ||
395 | 春希 | Haruki | 「いい加減に…」 | ||
396 | 今抵抗すると、さっきの言葉が強がりだったってバレ… いや、誤解されるから、身をよじることしかできない。 | ||||
397 | 千晶 | Chiaki | 「あは…久しぶりだなぁ、この匂い。 なんだかこれだけで濡れてきちゃったみたい」 | ||
398 | 春希 | Haruki | 「やめろ…千晶。 お前、もう明後日舞台だろ」 | ||
399 | 千晶 | Chiaki | 「もうすぐ舞台だからこそ、 春希の感触、思い出しておかないと」 | ||
400 | 春希 | Haruki | 「どうして…っ」 | ||
401 | 千晶 | Chiaki | 「小木曽雪菜を完璧に再現するためだよ。 彼女の気持ちになって、春希に抱かれて…」 | ||
402 | 春希 | Haruki | 「そんなの…なれるわけないだろ」 | ||
403 | 千晶 | Chiaki | 「どして?」 | ||
404 | 春希 | Haruki | 「俺………雪菜を抱いたことなんかないから」 | ||
405 | 千晶 | Chiaki | 「………ぇ」 | ||
406 | 春希 | Haruki | 「だから今俺に抱かれると雪菜になれなくなるぞ? …それでもいいのかよ?」 | ||
407 | 今度は、推測なんかじゃない。 | ||||
408 | 目尻の端から、涙が零れた。 | ||||
409 | 悔しかったから。 | ||||
410 | 情けない告白をしたことも。 | ||||
411 | 大切な人との、二人だけで抱えるべき秘密を、 また他人に話してしまったことも。 | ||||
412 | 千晶 | Chiaki | 「…一度も?」 | ||
413 | 春希 | Haruki | 「そんなこと聞き返すな!」 | ||
414 | そんな秘密を、禁忌を破って話してしまった相手が、 ちっとも大切な人みたいに振舞ってくれないことも。 | ||||
415 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
416 | けれど、それでも千晶の手がぴたりと止まった。 | ||||
417 | それは、ちょっと際どくて、 ちょっと間抜けな構図だったけど、 そのことを笑える人間は、今この部屋にはいなかった。 | ||||
418 | 瞳は、相変わらず俺を捉え、 そこにはうつむく俺の顔が映ってるんだと思う。 | ||||
419 | でも俺には見えない。 だってもう、千晶の顔を正面から見据えられない。 | ||||
420 | 千晶 | Chiaki | [F16「タチ悪いなぁ。 ][F16プラトニックであれかよ…」] | ||
421 | 春希 | Haruki | 「あ…」 | ||
422 | そんな、間の悪い間が数秒間続いたかと思うと… | ||||
423 | 唐突に、千晶の身体が俺から離れていく。 | ||||
424 | 千晶 | Chiaki | 「あ~あ、本当に立たないんだもんな~。 このインポめぇ」 | ||
425 | 春希 | Haruki | 「千晶…」 | ||
426 | 千晶 | Chiaki | 「なんてね。 そうしちゃったのはあたしか」 | ||
427 | 呆れたか、諦めたか、それとも別の理由からか… | ||||
428 | いつものやる気のない声と表情に戻り、 千晶がのろのろと立ち上がる。 | ||||
429 | 千晶 | Chiaki | 「あ~あ… せっかく身体の相性良かったのになぁ。 初めての男にしとくにはもったいないくらいにさ~」 | ||
430 | はだけた服を元に戻し、バッグを肩に抱え。 けれど、チケットの入った封筒だけは、 テーブルの上に置いたまま。 | ||||
431 | 千晶 | Chiaki | 「しょ~がない。今日は大人しく帰るわ。 明日は最後の追い込みだしね」 | ||
432 | 言葉の内容も、その態度に合わせたものに変わり、 もう俺への興味が失われたことを全身で表現してた。 | ||||
433 | その態度が、もしも演技でないのなら、だけど。 | ||||
434 | 春希 | Haruki | 「っ…?」 | ||
435 | …演技で、ないならば? | ||||
436 | 千晶 | Chiaki | 「じゃあねぇ~」 | ||
437 | 春希 | Haruki | 「千晶!」 | ||
438 | 俺の叫びは、ほんの少し遅すぎた。 千晶は既に出ていった後だった。 | ||||
439 | けれど… | ||||
440 | 千晶 | Chiaki | 「…やっぱ、する気になった?」 | ||
441 | 数瞬後、再びドアを開けた千晶は、 ちょっとバツが悪そうに、俺に問いかけた。 | ||||
442 | 春希 | Haruki | 「今日のお前…本当に、全部演技だったのか?」 | ||
443 | 千晶 | Chiaki | 「へ…?」 | ||
444 | バツが悪いに決まってる。 だって今のは…演技にしては、ちょっとカッコ悪かった。 | ||||
445 | 春希 | Haruki | 「ほんの少しでさえも本気が混ざってなかったって、 言い切れるのか?」 | ||
446 | 千晶 | Chiaki | 「いや、それはさ…」 | ||
447 | 演技だったら、ドア閉じるのもう少し待っただろ。 俺が引き留めるタイミング、計算しただろ? | ||||
448 | 春希 | Haruki | 「もし演技じゃないのなら、そう言ってくれ!」 | ||
449 | 千晶 | Chiaki | 「っ…春希?」 | ||
450 | さっきの帰り際の態度が、もしも演技でないのなら、 千晶はもう、俺への興味を失っていた。 | ||||
451 | けど、演技だったなら…? | ||||
452 | 春希 | Haruki | 「本当のこと、真実を語るって宣誓してから言ってくれ。 でないと俺、やっぱりお前の言ってること信じられない」 | ||
453 | もし今の態度が演技だとしたら、 本当の千晶は、俺に興味を失ってる訳じゃない。 | ||||
454 | 千晶 | Chiaki | 「そんなこと言われたってさ… あたしが何言っても、春希もう信じてくれないじゃん」 | ||
455 | もし俺を押し倒してからの言動が演技だとしたら、 本当の千晶は、身体の繋がりだけを求めてる訳じゃない。 | ||||
456 | 春希 | Haruki | 「じゃあ、じゃあさ…本当のこと言うときは合図くれよ。 例えばさ、両手を胸に当てるとか」 | ||
457 | もし今日ここに来てからの行動が演技だとしたら、 本当の千晶は、こんないつもの千晶のままじゃない。 | ||||
458 | 千晶 | Chiaki | 「なんなのそれ… 意味わかんない」 | ||
459 | もし今日、ここに来ることそのものが演技だったなら… ここに来た理由そのものに説明がつかない。 | ||||
460 | 春希 | Haruki | 「俺と約束してくれ… 俺が信じられる千晶を、一つだけでも残してくれ」 | ||
461 | 千晶 | Chiaki | 「春希…」 | ||
462 | それは、クレタ人のパラドックス。 和泉千晶は嘘つきだと、和泉千晶が言いました… | ||||
463 | 春希 | Haruki | 「でないと、冷たく突き放す千晶を見捨てていいのか、 優しく抱きしめてくれる千晶を求めていいのか… わかんないんだよ、俺」 | ||
464 | 今日の千晶には、矛盾がありすぎる。 | ||||
465 | こいつのしていることに、何の意味も目的もない。 こいつが欺きたかったものが何なのかわからない。 | ||||
466 | 千晶 | Chiaki | 「………あたしの方から、すがれっての? 泣きながら、あんたに許しを請えっての?」 | ||
467 | 春希 | Haruki | 「演技じゃなくてって制限がつくけどな…」 | ||
468 | 千晶 | Chiaki | 「はは…はははっ、 馬鹿じゃないのあんた?」 | ||
469 | 春希 | Haruki | 「それ…演技か? 合図がないけど」 | ||
470 | 千晶 | Chiaki | 「っ!? 信じる信じないは、あんたの問題でしょ! 演技だろうが本気だろうが、それがあたしの言葉だ!」 | ||
471 | 春希 | Haruki | 「千晶…」 | ||
472 | 千晶 | Chiaki | 「そこまで言うなら、見分け方教えてあげるよ。 信じられないのは、あたしの演技が下手だったとき。 信じられるのは、あたしの演技が完璧だったとき!」 | ||
473 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
474 | 千晶 | Chiaki | 「ただ、それだけの違いだよ」 | ||
475 | らしくない… | ||||
476 | こんなに心に突き刺さらない罵倒… こいつの演技力からじゃ、考えられない。 | ||||
477 | やっぱり、今日の千晶はおかしい。 俺の心をどう動かしたいのかわからない。 | ||||
478 | もし、怒らせたかったのだとしても、 その結果どうなりたいのかが見えてこない。 | ||||
479 | 千晶 | Chiaki | 「話はそんだけ? じゃ、今度こそ帰るね」 | ||
480 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
481 | 今度は引き留めなかった。 千晶は激しくドアを鳴らして出ていった。 | ||||
482 | そして… | ||||
483 | 千晶 | Chiaki | 「ああ、そう… 一つだけ言い忘れてた」 | ||
484 | またしても千晶は、 カッコ悪い演技を重ねてしまう。 | ||||
485 | 千晶 | Chiaki | 「愛してたよ、春希。 あたしほどあんたをわかってる人間は他にいない…」 | ||
486 | 最後まで、胸に手を当てる合図はしなかった… |
Script Chart
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Introductory Chapter | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
1001 | 1008 | 1009 | 1010 | 1011 | 1012 | 1013 |
1002 | 1008_020 | 1009_020 | 1010_020 | 1011_020 | 1012_020 | |
1003 | 1008_030 | 1009_030 | 1010_030 | 1011_030 | 1012_030 | |
1004 | 1008_040 | 1010_040 | 1012_030_2 | |||
1005 | 1008_050 | 1010_050 | ||||
1006 | 1010_060 | |||||
1006_2 | 1010_070 | |||||
1007 |
Closing Chapter | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Common | Setsuna | Koharu | Chiaki | Mari | ||||||
2001 | 2011 | 2020 | 2027 | 2301 | 2309 | 2316 | 2401 | 2408 | 2501 | 2510 |
2002 | 2012 | 2021 | 2028 | 2302 | 2310 | 2317 | 2402 | 2409 | 2502 | 2511 |
2003 | 2013 | 2022 | 2029 | 2303 | 2311 | 2318 | 2403 | 2410 | 2503 | 2512 |
2004 | 2014 | 2023 | 2030 | 2304 | 2312 | 2319 | 2404 | 2411 | 2504 | 2513 |
2005 | 2015 | 2024 | 2031 | 2305 | 2313 | 2320 | 2405 | 2412 | 2505 | 2514 |
2006 | 2016 | 2025 | 2032 | 2306 | 2314 | 2321 | 2406 | 2413 | 2506 | 2515 |
2007 | 2017 | 2026 | 2033 | 2307 | 2315 | 2322 | 2407 | 2507 | 2516 | |
2008 | 2018 | 2308 | 2508 | 2517 | ||||||
2009 | 2019 | 2509 | ||||||||
2010 | ||||||||||
Setsuna | Koharu | Chiaki | Mari | |||||||
2031_2 | 2312_2 | 2401_2 | 2504_2 | 2511_2 | ||||||
2031_3 | 2313_2 | 2402_2 | 2507_2 | 2513_2 | ||||||
2031_4 | 2313_3 | 2402_3 |
Coda | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Common | Kazusa (True) | Setsuna (True) | Kazusa (Normal) | ||||||
3001 | 3008 | 3014_2 | 3020 | 3101 | 3107 | 3201 | 3207 | 3901 | 3907 |
3002 | 3009 | 3014_3 | 3021 | 3102 | 3108 | 3202 | 3208 | 3902 | 3908 |
3003 | 3010 | 3015 | 3022 | 3103 | 3109 | 3203 | 3209 | 3903 | 3909 |
3004 | 3011 | 3016 | 3023 | 3104 | 3110 | 3204 | 3210 | 3904 | |
3005 | 3012 | 3017 | 3024 | 3105 | 3111 | 3205 | 3211 | 3905 | |
3006 | 3013 | 3018 | 3106 | 3206 | 3906 | ||||
3007 | 3014 | 3019 | |||||||
Common | Setsuna (True) | Kazusa (Normal) | |||||||
3001_2 | 3210_2 | 3901_2 | 3906_2 | ||||||
3015_2 | 3902_2 | 3907_2 | |||||||
3902_3 | 3907_3 | ||||||||
3904_2 |
Mini After Story and Extra Episode | |||
---|---|---|---|
The Path Back to Happiness | The Path Forward to Happiness | Dear Mortal Enemy | |
6001 | 6101 | 4000 | 4005 |
6002 | 6102 | 4001 | 4006 |
6003 | 6103 | 4002 | 4007 |
6004 | 6104 | 4003 | 4008 |
6005 | 4004 | 4009 |
Novels | |||||
---|---|---|---|---|---|
The Snow Melts, And Until The Snow Falls | The Idol Who Forgot How to Sing | Twinkle Snow ~Reverie~ | After the Festival ~Setsuna's Thirty Minutes~ | His God, Her Savior | |
5000 | 5100 | 5200 | 5205 | 5300 | 5400 |
5001 | 5101 | 5201 | 5206 | 5301 | 5401 |
5002 | 5102 | 5202 | 5207 | 5302 | |
5003 | 5103 | 5203 | 5208 | 5303 | |
5004 | 5104 | 5204 | 5209 |
Short Stories | |||
---|---|---|---|
Princess Setsuna's Distress and Her Minister's Sinister Plan | Koharu Climate After the Passing of the Typhoon | This isn't the Season for White Album | Todokanai Koi, Todoita |
7000 | 7100 | 7200 | 7300 |